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特許7599583ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 13/12 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
F28F13/12 B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023557876
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 JP2021040523
(87)【国際公開番号】W WO2023079608
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栃山 繁信
(72)【発明者】
【氏名】田村 正佳
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-282969(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235069(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0108100(US,A1)
【文献】特開2013-175526(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109387096(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0080166(US,A1)
【文献】特開2008-171840(JP,A)
【文献】特開平10-261886(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080502(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 13/12
H01L 23/473
H05K 7/20
F28F 13/02
F28F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプレートが積層方向に積層されたフィン部を有するヒートシンクにおいて、
前記ヒートシンクに導入される冷却液の流通方向は、前記積層方向と直交する方向であり、
各前記プレートは、複数個の孔がそれぞれ形成され、
各前記プレートが前記積層方向に積層されると、前記プレートの前記孔同士が前記積層方向および前記流通方向において繋がり形成される流路は、前記流通方向に向かって螺旋状にて形成され、
前記流路の螺旋状の中心の螺旋中心軸は、前記積層方向に1列のみ形成されているヒートシンク。
【請求項2】
前記フィン部は、前記孔のパターンが異なる複数種類の前記プレートを有する請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記プレートの合計枚数をN枚(Nは、奇数の場合は7以上の整数、偶数の場合は6以上の整数)とすると、
前記Nが奇数の場合は、前記パターンの種類の数は、((N-1)/2)+1種類であり、
前記Nが偶数の場合は、前記パターンの種類の数は、N/2種類である請求項2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記流路は、前記積層方向および前記流通方向と直交する直交方向に複数列形成される請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記流路は、前記直交方向に隣接する前記流路同士が一部で繋がって形成される請求項4に記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記ヒートシンクには複数の発熱体が実装可能であり、かつ、前記流路は、各前記発熱体から入熱する各領域にのみに形成される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項7】
前記積層方向に隣接する前記プレート同士は、前記積層方向からの加圧密着にて形成される請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項8】
前記積層方向に隣接する前記プレート同士の接触する箇所に接合部が形成される請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項9】
前記接合部は、ろう付けにて形成される請求項8に記載のヒートシンク。
【請求項10】
前記接合部は、拡散接合にて形成される請求項8に記載のヒートシンク。
【請求項11】
前記接合部は、摩擦攪拌接合にて形成される請求項8に記載のヒートシンク。
【請求項12】
前記プレートは、隣接する前記孔間の最短距離が、前記プレートの厚さ以上にて形成される請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のヒートシンクの製造方法であって、
各前記プレートに複数の前記孔を形成する第1工程と、
各前記プレートを前記積層方向に積層し、各前記プレートの前記孔同士が前記積層方向および前記流通方向で繋がることで前記流通方向に向かって螺旋状の前記流路を形成する第2工程とを備えるヒートシンクの製造方法。
【請求項14】
前記第2工程の後に、前記積層方向から加圧して前記積層方向に隣接する前記プレート同士を加圧密着させる第3工程を備える請求項13に記載のヒートシンクの製造方法。
【請求項15】
前記第2工程の後に、前記積層方向に隣接する前記プレート同士が接触する箇所を、ろう付け接合する第3工程を備える請求項13に記載のヒートシンクの製造方法。
【請求項16】
前記第2工程の後に、前記積層方向に隣接する前記プレート同士が接触する箇所を、拡散接合する第3工程を備える請求項13に記載のヒートシンクの製造方法。
【請求項17】
前記第2工程の後に、前記積層方向に隣接する前記プレート同士が接触する箇所を、摩擦攪拌接合する第3工程を備える請求項13に記載のヒートシンクの製造方法。
【請求項18】
前記フィン部の面積の2倍以上の面積を有するプレート部材を用いて、前記第1工程から前記第3工程までを行ってフィン部材を形成した後、
前記フィン部材から複数の前記フィン部を切り出す第4工程を備える請求項14から請求項17のいずれか1項に記載のヒートシンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のヒートシンクには、冷却対象の発熱体が接触する本体を冷媒で冷却することにより、発熱体を冷却する液冷式のものがある。このような液冷式のヒートシンクでは、冷媒を流すため、本体内部に流路が形成されている。例えば、特許文献1には、金属板の打ち抜き成形による平板状の第1プレートと、第2プレートとの積層体からなり、両プレートには、冷却液の流れ方向に直交する方向に互いに平行に離間して並列されると共に、それぞれ冷却液の流れ方向に位置された細長い多数の縦部材と、隣り合う縦部材間を斜めに接続する斜め部材とが一体に形成され、両プレートは、それぞれの各縦部材が整合して重なり、夫々の斜め部材は前記流れ方向に互いに離間して配置されると共に、その向きが互いに逆向きに配置されたヒートシンクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-114174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法は、冷却液が流路に沿って規則的に蛇行し、螺旋状に回転して熱伝達を促進させている。従来の構成においては、螺旋状に回転した流れが積層方向に複数列発生する。積層されたプレートの最上層に配置された発熱体(被冷却物)で発生した熱は、積層されたプレートに伝わり、冷却液に放熱される。発熱体に近いプレートの温度が最も高温で、発熱体から遠ざかるほど、プレートの温度は低くなる。
【0005】
プレートの温度と冷却液の温度差が大きい程プレートからの放熱量は大きくなるため、発熱体の近傍では、局所的に発生した螺旋状に回転した流れによって冷却液に多くの熱量が放熱され、発熱体から遠い領域では、前述の螺旋状に回転した流れとは別の列に存在する螺旋状に回転した流れよって発熱体近傍と比較して少ない熱量が放熱される。
【0006】
ゆえに、発熱体に近い領域に存在する冷却液は高温となり、発熱体から遠い領域に存在する冷却液は低温となる。しかしながら本来、プレートの温度と冷却液の温度差が最も生じる発熱体に近い領域において、冷却液の温度が集中的に高温になると、放熱効率が低下するという問題点があった。
【0007】
さらに、冷却液に放熱するべき熱は、冷却液に到達するまでに金属内を伝導するため、金属内の熱経路の断面積が大きければ大きいほど発熱体から遠いところまで熱を伝えやすく、放熱性能は高くなる。一方で、金属内の熱経路の断面積を大きくすると、冷却液と金属の接触面積、すなわち放熱面積を大きくしにくく放熱効率が低くなるという問題点があった。
【0008】
さらに、隣り合うプレート同士が接触している箇所は限定的であり、隙間があるため、放熱面積は大きくなるが、金属内の熱伝導経路断面積は狭く、発熱体から遠い領域まで熱を伝導させることが難しく放熱効率が低下するという問題点があった。
【0009】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、放熱効率が向上できるヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示されるヒートシンクは、
複数のプレートが積層方向に積層されたフィン部を有するヒートシンクにおいて、
前記ヒートシンクに導入される冷却液の流通方向は、前記積層方向と直交する方向であり、
各前記プレートは、複数個の孔がそれぞれ形成され、
各前記プレートが前記積層方向に積層されると、前記プレートの前記孔同士が前記積層方向および前記流通方向において繋がり形成される流路は、前記流通方向に向かって螺旋状にて形成され、
前記流路の螺旋状の中心の螺旋中心軸は、前記積層方向に1列のみ形成されているものである。
また、本願に開示されるヒートシンクの製造方法は、上記記載のヒートシンクの製造方法において、
各前記プレートに複数の前記孔を形成する第1工程と、
各前記プレートを前記積層方向に積層し、各前記プレートの前記孔同士が前記積層方向および前記流通方向で繋がることで前記流通方向に向かって螺旋状の前記流路を形成する第2工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示されるヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法によれば、
ヒートシンクの放熱効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aは、実施の形態1によるヒートシンクの構成を示す斜視図、図1B図1Aに示したヒートシンクの構成を示す断面図である。
図2図2Aは、図1に示したヒートシンクからベース部とフィン部とそれに実装された発熱体を抜き出した正面図、図2Bは、図3Aに示すヒートシンクのベース部とフィン部とそれに実装された発熱体を矢印K側から見た拡大側面図である。
図3図2に示したヒートシンクのベース部とフィン部とそれに実装された発熱体の構成を示す分解斜視図である。
図4図2に示したヒートシンクのベース部とフィン部のフィン部を上にして示した斜視図である。
図5図5Aは、図4に示したヒートシンクのフィン部を構成するプレートの構成を示す拡大上面図、図5Bは、図4に示したヒートシンクのフィン部を構成するプレートの構成を示す拡大上面図、図5Cは、図4に示したヒートシンクのフィン部を構成するプレートの構成を示す拡大上面図、図5Dは、図4に示したヒートシンクのフィン部を構成するプレートの構成を示す拡大上面図、図5Eは、図4に示したヒートシンクのフィン部を構成するプレートの構成を示す拡大上面図、図5Fは、図4に示したヒートシンクのフィン部を構成するプレートの構成を示す拡大上面図、図5Gは、図4に示したヒートシンクのフィン部を構成するプレートの構成を示す拡大上面図、図5Hは、図4に示したヒートシンクのフィン部を構成するプレートの構成を示す拡大上面図、図5Iは、図4に示したヒートシンクのフィン部を構成するプレートの構成を示す拡大上面図である。
図6図2に示したヒートシンクのベース部とフィン部を抜き出した正面図である。
図7図7Aは、図6に示したベース部とフィン部とのKA-KA線断面図、図7B図6に示したベース部とフィン部とのKB-KB線断面図、図7C図6に示したベース部とフィン部とのKC-KC線断面図、図7D図6に示したベース部とフィン部とのKD-KD線断面図、図7E図6に示したベース部とフィン部とのKE-KE線断面図である。
図8図8Aは、図7Aに示したフィン部の一部の構成を示す拡大図、図8Bは、図7Bに示したフィン部の一部の構成を示す拡大図、図8Cは、図7Cに示した一部の構成を示す拡大図、図8Dは、図7Dに示した一部の構成を示す拡大図、図8Eは、図7Eに示した一部の構成を示す拡大図である。
図9図1に示したヒートシンクのプレートの孔同士が繋がることで形成される流路内部の冷却液の流れを示した図である。
図10図1に示したヒートシンクの冷却液の流れの流線を3次元流体シミュレーションによって導出し、速度に応じた濃淡で示したコンター図である。
図11図11Aは、実施の形態2によるヒートシンクのベース部とそれに実装された発熱体の平面図、図11Bは、図11Aに示したヒートシンクのベース部とフィン部とそれに実装された発熱体の拡大左側面図である。
図12図12Aは、実施の形態3によるヒートシンクのプレートの構成を示す平面図、図12Bは、図12Aに示した破線部分の拡大平面図である。
図13】実施の形態3によるヒートシンクのプレートの側面図である。
図14図14Aは、実施の形態5によるヒートシンクのフィン部材の構成を示す平面図、図14Bは、図14Aから切り出されたフィン部の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、図中、同一または同等の部分には同一の符号を付してその説明は適宜省略する。また、ヒートシンクにおける各方向を、後述するプレートが積層する方向を積層方向Y、積層方向Yに直交する方向であって冷却液の流通する方向を流通方向Z、積層方向Yおよび流通方向Zに直交する方向を直交方向Xとして示す。よって、ヒートシンクを構成する部分においては、これらの方向を基準として各方向を示して説明する。また、このことは以下の全実施の形態において同様であるため、その説明は適宜省略する。
【0014】
実施の形態1.
図1Aは、実施の形態1によるヒートシンクの構成を示す斜視図である。図1B図1Aに示したヒートシンクの構成を示す断面図である。図2Aは、図1に示したヒートシンクのベース部とフィン部とそれに実装された発熱体との構成を示す正面図である。図2Bは、図2Aに示したヒートシンクのベース部とフィン部とそれに実装された発熱体を矢印K側から見た構成を示す側面図である。
【0015】
図3は、図2に示したヒートシンクのベース部とフィン部と発熱体との分解斜視図である。図4は、図2に示したヒートシンクのフィン部を上面側にして示した斜視図である。図5Aから図5Iは、図5に示したフィン部を構成する各プレートの上面図である。図6は、図1に示したヒートシンクのベース部とフィン部を抜き出した構成を示す正面図である。
【0016】
図7Aは、図6に示したベース部とフィン部とのKA-KA線断面図である。図7Bは、図6に示したベース部とフィン部とのKB-KB線断面図である。図7Cは、図6に示したベース部とフィン部とのKC-KC線断面図である。図7Dは、図6に示したベース部とフィン部とのKD-KD線断面図である。図7Eは、図6に示したベース部とフィン部とのKE-KE線断面図である。図8Aは、図7Aに示した流路断面の部分810の構成を示す拡大図である。図8Bは、図7Bに示した流路断面の部分811の構成を示す拡大図である。図8Cは、図7Cに示した流路断面の部分812の構成を示す拡大図である。図8Dは、図7Dに示した流路断面の部分813の構成を示す拡大図である。図8Eは、図7Eに示した流路断面の部分814の構成を示す拡大図である。
【0017】
図9は、図1に示したヒートシンクのプレートの孔同士が繋がることで形成される流路内部の冷却液の流れを示した図である。図10は、図1に示したヒートシンクの冷却液の流れの流線を3次元流体シミュレーションによって導出し、速度に応じた濃淡で示したコンター図である。
【0018】
図1および図2に示すように、実施の形態1によるヒートシンク100は、発熱体2が一面に実装され、かつ発熱体2と反対側の面に後述する流路800(図8参照)を有するフィン部8が設けられたベース部1を、ウォータージャケット7に組み込むことで構成される。ベース部1とウォータージャケット7の間の水密は、ベース部1がOリング17を介してウォータージャケット7の上に配置され、締結板3によってウォータージャケット7に押し付けられボルト4にて締結されることで保たれている。
【0019】
ウォータージャケット7には、冷却液を供給する供給路5、および冷却液を排出する排出路6が接続されている。冷却液は、供給路5から流入し、流路入口9(図2B)を通じてフィン部8の流路800に流入、通過して、排出路6から排出される。
【0020】
図3図4図5に示すように、パターンが異なる孔151、152、153、154、155、156、157、158、159(以下、これら全ての孔をさす場合には、孔151~159と称し、いずれかの孔をさす場合には、孔150と称する)がそれぞれ開口されたプレート81、82、83、84、85、86、87、88、89(以下、これら全てのプレートをさす場合には、プレート81~89と称し、いずれかのプレートをさす場合には、プレート80と称する)を積層することで、所定の孔150同士が積層方向Yおよび流通方向Zに繋がり、フィン部8の流路800が形成される。
【0021】
流路800について図6図7図8図9を用いて説明する。所定の孔150同士が積層方向Y、および、流通方向Zに向かって繋がって流路800(部分810、811、812、813、814、815参照)が形成される。そしてフィン部8内には、図9に示すように、冷却液の流通方向Zに向かって延伸する複数の螺旋状の流路800が形成される。
【0022】
そして、螺旋状の流路800の螺旋中心軸13は、図7に示すように、フィン部8のプレート81~89の積層方向Yには1列のみ形成され、かつ、プレート81~89の積層方向Yおよび冷却液の流通方向Zと直交する直交方向Xには複数列形成される。なお、本実施の形態1および以下の実施の形態における各図(図9を除く)において、当該螺旋中心軸13は、黒丸にてその箇所を示している。
【0023】
そして、直交方向Xに隣り合う螺旋状の流路800は絡み合って形成される。具体的には、図8図9に示すように、螺旋状の流路800の実線矢印で示す螺旋R1および破線矢印で示す螺旋R2のように、途中で絡み合い一部が繋がっている。なお、図9にて示した、螺旋R1、R2は、1例を示したものであり、他の箇所も同様の関係にて形成されている。
【0024】
この流路800に冷却液を流通させたときに、冷却液の流れがどのような振る舞いをするかを検証するため、3次元流体シミュレーションで数値計算した結果を図10に示す。図10に示すように、冷却液の流線16はプレート81~89の直交方向Xに沿って複数列が螺旋状に形成されていることが分かる。発熱体2から発せられた熱は、図8Aから図8Eに示すように、ベース部1とフィン部8を構成するプレート81~89に伝導し、流路800の壁面から冷却液へと放熱される。
【0025】
ヒートシンク100において、冷却液には温度ムラが発生せず、発熱体2の近傍から積層方向Yの遠い領域までを一定温度にできることで、ヒートシンク100の放熱性能を高める。このことから、如何に冷却液に温度ムラを発生させないようにするかが重要である。当該実施の形態1によるヒートシンク100によれば、プレート81~89の所定の孔150同士が積層方向Yおよび流通方向Zにおいて繋がることで形成される螺旋状の流路800の螺旋中心軸13が、積層方向Yに1列のみ形成されるため、フィン部8における冷却液の流れは、発熱体2の近傍から遠い領域まで一筆書きで確実に拡散される。
【0026】
よって、発熱体2の近傍から遠い領域まで、冷却液が一様に攪拌されることで冷却液の温度ムラが解消され、放熱性能は高くなる。このように構成すれば、フィン部8内の、熱伝導経路断面積の確保、および、放熱面積の確保を簡便に得ることができる。
【0027】
また、螺旋中心軸13はフィン部8の直交方向Xに複数列形成され、かつ、平面上において隣り合う螺旋状の流路800は絡み合って形成されているために、積層方向Yの隣接するプレートの孔150の位置を僅かにずらして配置することで、流路800には、図8Cに示すような階段状の段差部19が形成され、放熱面積を増加できる。かつ、積層方向Yに隣接するプレート81~89は隙間なく繋がっているため、熱伝導経路の断面積も大きくでき、放熱性能を向上できる。
【0028】
また、発熱体2が実装されるベース部1は冷却液の流通方向Zに対して平行であり、かつ、一般的にプレート81~89の1枚あたりの厚さT(図13参照)に比べて、発熱体2が実装される側の実装面の1辺の長さW(図2参照)は十分に長い。このことから、プレートの積層方向を、長さWの方向とすれば、プレートの必要枚数が増加するが、本願においては、プレート80の積層方向Yを冷却液の流通方向Zおよび直交方向Xに対して直交する方向に設定しているため、プレート80の必要枚数を低減できるとともに、プレート81~89同士の接触面、または接合面を減らすことができ、製造性の向上と、熱抵抗の低減すなわち放熱性能を向上させることが可能となる。
【0029】
プレート80は、例えばアルミまたは銅等の良熱伝導性材料が用いられる。また、プレート80を積層する際には、圧力を加えることで、積層方向Yに隣接するプレート80同士が加圧密着され、接触面同士の熱抵抗を低減し、放熱性能が向上する。この際、カシメ等によりプレート80同士が密着して離れないようにしてもよい。または、プレート80同士をろう付けまたは拡散接合、もしくは摩擦攪拌接合によって金属的に接合した接合部を形成することにより、接触熱抵抗をゼロにすることができ、さらに放熱性能の向上の効果を得ることができる。
【0030】
図5に示す孔150の形状およびプレート80の枚数は、1例である。プレート80の孔150同士が積層方向Yおよび流通方向Zに繋がることで形成される流路800が螺旋状であり、螺旋中心軸13がプレート80の積層方向Yには1列のみ形成され、かつ、螺旋中心軸13はフィン部8の直交方向Xには複数列形成され、かつ、直交方向Xに隣り合う螺旋状の流路800は絡み合って一部が繋がって形成されていれば、孔150の形状およびプレート80の枚数は問わない。
【0031】
また、ベース部1とウォータージャケット7の締結と水密性の確保は、必ずしも締結板3を用いる必要はなく、ベース部1とウォータージャケット7を直接ボルト4で締結してもよく、Oリング17を用いずに液体ガスケットを用いてもよいし、ベース部1とウォータージャケット7をろう付けまたは摩擦攪拌接合により直接接合してもよい。
【0032】
また、ベース部1とウォータージャケット7を用いず、孔が形成されていないプレートを、プレート81~89の積層方向Yの上下面それぞれにろう付けし、水密性を確保して流路800を形成してもよい。図7図8図9に示した流路800は、途中で一部隣り合う流路800同士が絡み合っている部分があるが、必ずしも絡み合わせる必要はなく、常に離間していてもよい。
【0033】
次に、上記のように構成された実施の形態1のヒートシンクの製造方法について説明する。各プレート81~89にそれぞれ異なった孔151~159を多数開口して、各プレート81~89をそれぞれ形成する(第1工程)。次に、各プレート81~89を積層方向Yに積層し、各プレート81~89の所定の孔150同士が積層方向Yおよび流通方向Zに繋がる螺旋状の流路800を形成する(第2工程)。
【0034】
そして、第2工程の後に、第3工程として、積層方向Yから加圧して、積層方向Yに隣接するプレート81~89同士を加圧密着させる。または、積層方向Yに隣接するプレート81~89同士が接触する箇所を接合部としてろう付け接合する。または、積層方向Yに隣接するプレート81~89同士が接触する箇所を、接合部として拡散接合する。または、積層方向Yに隣接するプレート81~89同士が接触する箇所を、接合部として摩擦攪拌接合する。そして、フィン部8を形成する。そして、当該フィン部8を用いてヒートシンク100を形成する。
【0035】
上記のように構成された実施の形態1のヒートシンクによれば、
複数のプレートが積層方向に積層されたフィン部を有するヒートシンクにおいて、
前記ヒートシンクに導入される冷却液の流通方向は、前記積層方向と直交する方向であり、
各前記プレートは、複数個の孔がそれぞれ形成され、
各前記プレートが前記積層方向に積層されると、前記プレートの前記孔同士が前記積層方向および前記流通方向において繋がり形成される流路は、前記流通方向に向かって螺旋状にて形成され、
前記流路の螺旋状の中心の螺旋中心軸は、前記積層方向に1列のみ形成されているので、
また、上記のように構成された実施の形態1のヒートシンクの製造方法によれば、
上記ヒートシンクの製造方法において、
各前記プレートに複数の前記孔を形成する第1工程と、
各前記プレートを前記積層方向に積層し、各前記プレートの前記孔同士が前記積層方向および前記流通方向で繋がることで前記流通方向に向かって螺旋状の前記流路を形成する第2工程とを備えるので、
プレートの孔同士が繋がることで形成される螺旋状の冷却液の流路は螺旋の螺旋中心軸が積層方向には1列のみ形成され、冷却液の流れは積層方向において発熱体の近傍から遠い領域まで一筆書きで確実に拡散される。よって、発熱体の近傍から遠い領域まで一様に冷却液が攪拌されることで温度ムラが解消され、放熱性能は高くなる。
【0036】
さらに、実施の形態1のヒートシンクによれば、
前記フィン部は、前記孔のパターンが異なる複数種類の前記プレートを有するので、
螺旋状の流路を簡便に構成できる。
【0037】
さらに、実施の形態1のヒートシンクによれば、
前記流路は、前記積層方向および前記流通方向と直交する直交方向に複数列形成されるので、
螺旋中心軸は直交方向に複数列形成されるため、放熱面積を簡便に増加できる。
【0038】
さらに、実施の形態1のヒートシンクによれば、
前記流路は、前記直交方向に隣接する前記流路同士が一部で繋がって形成されるので、
直交方向に隣接する流路同士の絡み合い一部が繋がるため放熱面積をさらに増加できる。
【0039】
さらに、実施の形態1のヒートシンクによれば、
前記積層方向に隣接する前記プレート同士は、前記積層方向からの加圧密着にて形成されるので、
さらに、実施の形態1のヒートシンクの製造方法によれば、
前記第2工程の後に、前記積層方向から加圧して前記積層方向に隣接する前記プレート同士を加圧密着させる第3工程を備えるので、
積層方向に隣接するプレート間の隙間なく繋がっているため、熱伝導経路の断面積も大きくすることができ、放熱性能を向上させることができる。
【0040】
さらに、実施の形態1のヒートシンクによれば、
前記積層方向に隣接する前記プレート同士の接触する箇所に接合部が形成されるので、
プレート同士を積層方向に確実に接続できる。
【0041】
さらに、実施の形態1のヒートシンクによれば、
前記接合部は、ろう付けにて形成されるので、
さらに、実施の形態1のヒートシンクの製造方法によれば、
前記第2工程の後に、前記積層方向に隣接する前記プレート同士が接触する箇所を、ろう付け接合する第3工程を備えるので、
接触熱抵抗をゼロにすることができ、さらに放熱性能の向上の効果が得られる。
【0042】
さらに、実施の形態1のヒートシンクによれば、
前記接合部は、拡散接合にて形成されるので、
さらに、実施の形態1のヒートシンクの製造方法によれば、
前記第2工程の後に、前記積層方向に隣接する前記プレート同士が接触する箇所を、拡散接合する第3工程を備えるので、
接触熱抵抗をゼロにすることができ、さらに放熱性能の向上の効果が得られる。
【0043】
さらに、実施の形態1のヒートシンクによれば、
前記接合部は、摩擦攪拌接合にて形成されるので、
さらに、実施の形態1のヒートシンクの製造方法によれば、
前記第2工程の後に、前記積層方向に隣接する前記プレート同士が接触する箇所を、摩擦攪拌接合する第3工程を備えるので、
接触熱抵抗をゼロにすることができ、さらに放熱性能の向上の効果が得られる。
【0044】
なお、以下の実施の形態においては、上記実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。よって、上記実施の形態1と同様の部分の説明は適宜省略する。
【0045】
実施の形態2.
図11Aは、実施の形態2によるヒートシンクのベース部とそれに実装された発熱体との構成を示す平面図である。図11Bは、図11Aに示したヒートシンクのベース部とフィン部とそれに実装された発熱体の拡大左側面図である。
【0046】
上記実施の形態1のヒートシンクと本実施の形態2のヒートシンクとの異なる点は、ヒートシンクにて冷却すべき発熱体2が複数個実装される点である。そして、各発熱体2から入熱するフィン部8のそれぞれの領域に、少なくともフィン部8の流路800の螺旋中心軸13が1本以上存在する。図11Bにおいては、1個の発熱体2あたり、螺旋中心軸13を7本それぞれ有する例を示している。よって、ヒートシンク100の全体で、螺旋中心軸13を14本有する、すなわち、螺旋状の流路800が14箇所に形成されている。
【0047】
冷却すべき発熱体2が存在しない領域には、敢えて流路800を設ける必要はない。発熱体2から入熱するフィン部8の領域に、集中的に流路800の螺旋中心軸13を設けることにより、発熱体2から入熱しないフィン部8の領域にも流路800を設ける場合と比べて、1つあたりの流路800に流入する冷却液の流量を向上でき、結果、冷却液の流速を向上できる。熱伝達率は冷却液の流速が速ければ速いほど大きくなるため、放熱性能を向上できる。
【0048】
上記の様に構成された実施の形態2のヒートシンクによれば、
上記実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、
前記ヒートシンクには複数の発熱体が実装可能であり、かつ、前記流路は、各前記発熱体から入熱する各領域にのみに形成されるので、
1つあたりの流路に流入する冷却液の流量を向上でき、結果、冷却液の流速を向上できる。熱伝達率は冷却液の流速が速ければ速いほど大きくなるため、放熱性能を向上できる。
【0049】
実施の形態3.
図12Aは、実施の形態3によるヒートシンクのプレートの構成を示す平面図である。図12Bは、図12Aに示したプレートの破線部分Jの構成を示す拡大平面図である。図13は、実施の形態3によるヒートシンクのプレートの側面図である。
【0050】
本実施の形態3によるヒートシンク100によれば、プレート80に空いた隣接する孔150同士の最短距離Lが、プレート80の厚さT(図13)以上にて形成される。例えば、プレート80の孔150を打ち抜きで形成する場合、隣り合う孔150同士の最短距離Lをプレート80の厚さT以上に形成すれば、隣接する孔150同士の最短距離Lを有する部分で、千切れまたはダレが発生することを抑制できる。
【0051】
上記実施の形態3のように構成されたヒートシンクによれば、
上記実施の形態と同様の効果を奏するとともに、
前記プレートは、隣接する前記孔間の最短距離が、前記プレートの厚さ以上にて形成されるので、
プレートに千切れまたはダレが発生することを抑制できる。
【0052】
実施の形態4.
実施の形態4によるヒートシンクでは、積層されるプレート80の合計枚数をN枚(Nは、奇数の場合は7以上の整数、偶数の場合は6以上の整数)とする。Nが奇数の場合は、プレート80の孔150のパターンの種類が((N-1)/2)+1種類である。また、Nが偶数の場合は、プレート80の孔150の種類がN/2種類である。
【0053】
螺旋状の流路800の形状は、図7図8図9に示すように、螺旋中心軸13およびプレート80の積層方向Yに対して対称の形状を有する。このことから、プレート80の厚さTを適切に選び、各積層方向Yのプレート80の孔150の形状が螺旋中心軸13を中心に対称となるように積層すると螺旋状に形成できる。よって、N枚が奇数の場合は、プレート80の孔150のパターンの種類を((N-1)/2)+1種類用意すればよい。N枚が偶数の場合は、プレート80の孔150のパターンの種類をN/2種類用意すればよい。
【0054】
このことにより、N枚全てのプレート80の孔150のパターンの種類が異なるように形成する場合と比較して、プレート80の孔150のパターンの種類が削減でき、生産性が向上する。
【0055】
上記実施の形態4のように構成されたヒートシンクによれば、
上記実施の形態と同様の効果を奏するとともに、
前記プレートの合計枚数をN枚(Nは、奇数の場合は7以上の整数、偶数の場合は6以上の整数)とすると、
前記Nが奇数の場合は、前記パターンの種類の数は、((N-1)/2)+1種類であり、
前記Nが偶数の場合は、前記パターンの種類の数は、N/2種類であるので、
プレートの孔のパターンの種類が削減でき、製造性が向上する。
【0056】
実施の形態5.
図14Aは、実施の形態5によるヒートシンクのフィン部8を製造するためのフィン部材888の構成を示す平面図である。図14Bは、図14Aに示すフィン部材888から切り出されたフィン部8の構成を示す平面図である。実施の形態5の場合、例えば、図5に示したような孔151~159のパターンを有するプレート81~89であって、平面上の面積が、フィン部8の面積の2倍以上の大きさを有するプレート部材を形成する(第1工程)。
【0057】
次に、各プレート部材を積層方向Yに積層する(第2工程)とともに密着工程、もしくは接合工程を行い、フィン部材888として製造する(図14A、第3工程)。次に、フィン部材888から、流路800の所望の大きさに合わせて、必要となる大きさ(図14Bの破線部分)にて切り出しフィン部8を製造する(図14B、第4工程)。
【0058】
流路800を有するフィン部8の製造において、プレート80同士を積層方向Yにおいて、加圧密着、ろう付け、拡散接合、もしくは摩擦攪拌接合する工程が最も工数が多く、コストが発生する。よって、本実施の形態5においては、あらかじめ、必要となる流路800を有するフィン部8の大きさより、大きなフィン部材888を上記に示したように製造する。
【0059】
その後、あらかじめ設定された大きさのフィン部8を複数個切り出す。このように製造すれば、必要となる流路800が形成された複数個のフィン部8を形成する場合、最も工数が発生する加圧密着、ろう付け、拡散接合、もしくは摩擦攪拌接合の工程が一度で済み、工程数を大幅に削減できる。
【0060】
上記実施の形態5のように構成されたヒートシンクによれば、
上記実施の形態と同様の効果を奏するとともに、
前記フィン部の面積の2倍以上の面積を有するプレート部材を用いて、前記第1工程から前記第3工程までを行ってフィン部材を形成した後、
前記フィン部材から複数の前記フィン部を切り出す第4工程を備えるので、
複数のヒートシンクを製造する場合、工程数を大幅に削減できる。
【0061】
本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらに、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0062】
1 ベース部、100 ヒートシンク、13 螺旋中心軸、150 孔、151 孔、152 孔、153 孔、154 孔、155 孔、156 孔、157 孔、158 孔、159 孔、16 流線、17 Oリング、19 段差部、2 発熱体、3 締結板、4 ボルト、5 供給路、6 排出路、7 ウォータージャケット、8 フィン部、80 プレート、800 流路、81 プレート、82 プレート、83 プレート、84 プレート、85 プレート、86 プレート、87 プレート、88 プレート、89 プレート、810 部分、811 部分、812 部分、813 部分、814 部分、888 フィン部材、9 流路入口、L 最短距離、T 厚さ、Y 積層方向、X 直交方向、Z 流通方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14