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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   F01D 3/02 20060101AFI20241206BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20241206BHJP
   F01D 17/08 20060101ALI20241206BHJP
   F01D 17/10 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
F01D3/02
F01D17/00 N
F01D17/08
F01D17/10 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023564755
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2022035945
(87)【国際公開番号】W WO2023100457
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2021194470
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大内 敏昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭介
(72)【発明者】
【氏名】中村 建樹
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-008291(JP,A)
【文献】特開2014-202136(JP,A)
【文献】特開2012-007610(JP,A)
【文献】特開昭60-040703(JP,A)
【文献】国際公開第2018/167907(WO,A1)
【文献】特開2018-091224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 3/02
F01D 17/00ー17/10
F01D 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1調節弁を介して第1入口から供給された第1蒸気を利用して回転する第1タービンの前記第1調節弁からみて前記第1入口側の前記第1蒸気の圧力値を第1入口圧として取得するとともに、第2調節弁を介して第2入口から供給された第2蒸気を利用して前記第1タービンと同一の回転軸で回転する第2タービンの前記第2調節弁からみて前記第2入口側の前記第2蒸気の圧力値を第2入口圧として取得する取得部と、
前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記回転軸に掛かるスラスト力が適正となる前記第1入口圧と前記第2入口圧の対応関係に基づく前記対応関係についての所定の範囲を基準として、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節し、
前記制御部は、前記範囲を、横軸を前記第1入口圧と前記第2入口圧の一方、縦軸を前記第1入口圧と前記第2入口圧の他方とする直交座標で表した場合に、前記範囲の上側の境界線側を基準として前記第1調節弁と前記第2調節弁の一方を絞る方向に調節し、前記範囲の下側の境界線側を基準として前記第1調節弁と前記第2調節弁の他方を絞る方向に調節する、
制御装置。
【請求項2】
前記範囲は、前記第1タービンによるスラスト力と前記第2タービンによるスラスト力とが釣り合う前記第1入口圧と前記第2入口圧の組み合わせから、前記第1入口圧または前記第2入口圧の一方を偏らせた場合の前記スラスト力が最大許容値以下である領域に対応する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記領域の境界から前記領域の内側へ所定の定数を減じた領域を前記範囲として、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節する
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1調節弁の弁開度の上限値と前記第2調節弁の弁開度の上限値を調節することで、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節する
請求項1から3のいずれか1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度の各上限値を、選択的に、前記各弁開度の最大値、前記第1入口圧と前記第2入口圧の各現在値から所定量増加させた各値、または、前記範囲を基準とする各値のいずれかとすることで、前記第1調節弁の弁開度の上限値と前記第2調節弁の弁開度の上限値を調節する
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
第1調節弁を介して第1入口から供給された第1蒸気を利用して回転する第1タービンの前記第1調節弁からみて前記第1入口側の前記第1蒸気の圧力値を第1入口圧として取得するとともに、第2調節弁を介して第2入口から供給された第2蒸気を利用して前記第1タービンと同一の回転軸で回転する第2タービンの前記第2調節弁からみて前記第2入口側の前記第2蒸気の圧力値を第2入口圧として取得するステップと、
前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節するステップと、を含み、
前記調節するステップでは、前記回転軸に掛かるスラスト力が適正となる前記第1入口圧と前記第2入口圧の対応関係に基づく前記対応関係についての所定の範囲を基準として、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節し、
前記調節するステップでは、さらに、前記範囲を、横軸を前記第1入口圧と前記第2入口圧の一方、縦軸を前記第1入口圧と前記第2入口圧の他方とする直交座標で表した場合に、前記範囲の上側の境界線側を基準として前記第1調節弁と前記第2調節弁の一方を絞る方向に調節し、前記範囲の下側の境界線側を基準として前記第1調節弁と前記第2調節弁の他方を絞る方向に調節する、
制御方法。
【請求項7】
第1調節弁と、
第2調節弁と、
前記第1調節弁を介して第1入口から供給された第1蒸気を利用して回転する第1タービンと、
前記第2調節弁を介して第2入口から供給された第2蒸気を利用して前記第1タービンと同一の回転軸で回転する第2タービンと、
前記第1調節弁からみて前記第1入口側の前記第1蒸気の圧力値を第1入口圧として取得するとともに、前記第2調節弁からみて前記第2入口側の前記第2蒸気の圧力値を第2入口圧として取得する取得部と、
前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記回転軸に掛かるスラスト力が適正となる前記第1入口圧と前記第2入口圧の対応関係に基づく前記対応関係についての所定の範囲を基準として、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節し、
前記制御部は、前記範囲を、横軸を前記第1入口圧と前記第2入口圧の一方、縦軸を前記第1入口圧と前記第2入口圧の他方とする直交座標で表した場合に、前記範囲の上側の境界線側を基準として前記第1調節弁と前記第2調節弁の一方を絞る方向に調節し、前記範囲の下側の境界線側を基準として前記第1調節弁と前記第2調節弁の他方を絞る方向に調節する、
システム。
【請求項8】
第1調節弁を介して第1入口から供給された第1蒸気を利用して回転する第1タービンの前記第1調節弁からみて前記第1入口側の前記第1蒸気の圧力値を第1入口圧として取得するとともに、第2調節弁を介して第2入口から供給された第2蒸気を利用して前記第1タービンと同一の回転軸で回転する第2タービンの前記第2調節弁からみて前記第2入口側の前記第2蒸気の圧力値を第2入口圧として取得する取得部と、
前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記回転軸に掛かるスラスト力が適正となる前記第1入口圧と前記第2入口圧の対応関係に基づく前記対応関係についての所定の範囲を基準として、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節し、
前記制御部は、前記第1調節弁の弁開度の上限値と前記第2調節弁の弁開度の上限値を調節することで、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節し、
前記制御部は、前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度の各上限値を、選択的に、前記各弁開度の最大値、前記第1入口圧と前記第2入口圧の各現在値から所定量増加させた各値、または、前記範囲を基準とする各値のいずれかとすることで、前記第1調節弁の弁開度の上限値と前記第2調節弁の弁開度の上限値を調節する、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法およびシステムに関する。本願は、2021年11月30日に、日本に出願された特願2021-194470号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
抽気あるいは混圧蒸気タービンにおいては、ロータに加わるスラスト力を許容値内に抑えなければならないという課題がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/167907号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、蒸気タービンにおけるスラスト力を許容値内に制御することができる制御装置、制御方法およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示に係る制御装置は、第1調節弁を介して第1入口から供給された第1蒸気を利用して回転する第1タービンの前記第1調節弁からみて前記第1入口側の前記第1蒸気の圧力値を第1入口圧として取得するとともに、第2調節弁を介して第2入口から供給された第2蒸気を利用して前記第1タービンと同一の回転軸で回転する第2タービンの前記第2調節弁からみて前記第2入口側の前記第2蒸気の圧力値を第2入口圧として取得する取得部と、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節する制御部とを備える。
【0006】
本開示に係る制御方法は、第1調節弁を介して第1入口から供給された第1蒸気を利用して回転する第1タービンの前記第1調節弁からみて前記第1入口側の前記第1蒸気の圧力値を第1入口圧として取得するとともに、第2調節弁を介して第2入口から供給された第2蒸気を利用して前記第1タービンと同一の回転軸で回転する第2タービンの前記第2調節弁からみて前記第2入口側の前記第2蒸気の圧力値を第2入口圧として取得するステップと、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節するステップとを含む。
【0007】
本開示に係るシステムは、第1調節弁と、第2調節弁と、前記第1調節弁を介して第1入口から供給された第1蒸気を利用して回転する第1タービンと、前記第2調節弁を介して第2入口から供給された第2蒸気を利用して前記第1タービンと同一の回転軸で回転する第2タービンと、前記第1調節弁からみて前記第1入口側の前記第1蒸気の圧力値を第1入口圧として取得するとともに、前記第2調節弁からみて前記第2入口側の前記第2蒸気の圧力値を第2入口圧として取得する取得部と、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の制御装置、制御方法およびシステムによれば、蒸気タービンにおけるスラスト力を許容値内に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態に係るシステムの系統図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る制御装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る制御装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図5】本開示の第1実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
図6】本開示の第1実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
図7】本開示の第2実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。
図8】本開示の第2実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図9】本開示の第3実施形態に係る制御装置を説明するための模式図である。
図10】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態に係る制御装置、制御方法およびシステムについて説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0011】
<第1実施形態>
(システムおよび制御装置)
図1図6を参照して、本開示の第1実施形態に係るシステムおよび制御装置の構成および動作例について説明する。図1は、本開示の第1実施形態に係るシステムの系統図である。図2および図5図6は、本開示の第1実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。図3および図4は、本開示の第1実施形態に係る制御装置の構成例を説明するためのブロック図である。
【0012】
図1は、本開示の第1実施形態に係るシステムを、ガスタービン・コンバインドサイクル発電プラント(GTCC)に適用した場合の系統図の例を示す。図1に示すシステム1は、ガスタービン10と、排熱回収ボイラー20と、蒸気タービン30と、発電機34と、復水器35と、制御装置100とを備える。蒸気タービン30は、高圧蒸気タービン31、中圧蒸気タービン32および低圧蒸気タービン33と各タービン31、32および33の回転軸36とを備える。発電機34は、各タービン10、31、32および33に駆動されて発電する。復水器35は、低圧蒸気タービン33等から排気された蒸気を水に戻す。
【0013】
ガスタービン10は、圧縮機11と、燃焼器12と、タービン13と、燃料流量調節弁14と、回転軸15とを備える。圧縮機11は、外気を圧縮して圧縮空気を生成する。燃焼器12は、燃料ガスに圧縮空気を混合して燃焼させ高温の燃焼ガスを生成する。タービン13は、燃焼ガスにより駆動される。燃料流量調節弁14は、燃焼器12に供給する燃料流量を調節する。回転軸15は、圧縮機11とタービン13の回転軸である。燃焼器12には、燃料供給源からの燃料を燃焼器12に供給する燃料ラインが接続されている。この燃料ラインには、燃料流量調節弁14が設けられている。タービン13の排気口は排熱回収ボイラー20と排気ライン56で接続されている。
【0014】
排熱回収ボイラー20は、高圧蒸気発生部21と、中圧蒸気発生部22と、再加熱部23と、低圧蒸気発生部24とを備える。排熱回収ボイラー20は、ガスタービン10から排気される排ガスの熱で蒸気を発生する。高圧蒸気発生部21は、ドラム21aと熱交換器21bとを備え、高圧蒸気タービン31に供給する高圧蒸気を発生する。中圧蒸気発生部22は、ドラム22aと熱交換器22bとを備え、中圧蒸気タービン32に供給する中圧蒸気を発生する。再加熱部23は、中圧蒸気発生部22等から排気された蒸気を加熱する。低圧蒸気発生部24は、ドラム24aと熱交換器24bとを備え、低圧蒸気タービン33に供給する低圧蒸気を発生する。
【0015】
高圧蒸気発生部21と高圧蒸気タービン31の蒸気入口311とは、高圧蒸気止め弁42および高圧主蒸気加減弁43を介して、高圧蒸気を高圧蒸気タービン31に導く高圧主蒸気ライン41で接続されている。高圧主蒸気ライン41は、高圧蒸気タービンバイパス弁63を介して中圧主蒸気ライン62に接続されている。高圧蒸気タービン31の蒸気出口は、逆止弁64を介して中圧主蒸気ライン44に接続されるとともに、ベンチレータ弁66を介して復水器35に接続されている。中圧主蒸気ライン44は、再加熱部23の蒸気入口側で中圧蒸気発生部22からの中圧主蒸気ライン61と合流する。再加熱部23の蒸気出口側は、中圧主蒸気ライン62で、中圧蒸気止め弁45および中圧主蒸気加減弁46を介して、中圧蒸気タービン32の蒸気入口321に接続されている。中圧主蒸気ライン62は、中圧蒸気タービンバイパス弁65を介して復水器35に接続されている。低圧蒸気タービン33の蒸気入口331は、中圧蒸気タービン32の蒸気出口に中圧タービン排気ライン54で接続されるとともに、低圧蒸気止め弁52および低圧主蒸気加減弁53を介して、低圧蒸気発生部24と低圧蒸気を低圧蒸気タービン33に導く低圧主蒸気ライン51で接続されている。低圧蒸気タービン33の蒸気出口には、復水器35が接続されている。復水器35には、復水を排熱回収ボイラー20に導く給水ライン55が接続されている。
【0016】
高圧主蒸気加減弁43は、制御装置100の制御のもと、高圧蒸気タービン31への蒸気の流入量を調整する。中圧主蒸気加減弁46は、制御装置100の制御のもと、中圧蒸気タービン32への蒸気の流入量を調整する。低圧主蒸気加減弁53は、制御装置100の制御のもと、低圧蒸気タービン33への蒸気の流入量を調整する。また、高圧主蒸気加減弁43、中圧主蒸気加減弁46および低圧主蒸気加減弁53は、制御装置100から送られてきた弁開度の指令値(以下、弁開度指令値という)に基づいて、弁開度を調節する。
【0017】
高圧主蒸気加減弁43の上流側には高圧主蒸気を計測する圧力計71が設けられている。高圧主蒸気加減弁43の下流側には減圧された高圧蒸気を計測する圧力計72が設けられている。圧力計72は、高圧主蒸気加減弁43からみて蒸気入口311側の高圧蒸気の圧力値を計測する。中圧主蒸気加減弁46の上流側には中圧主蒸気を計測する圧力計73が設けられている。中圧主蒸気加減弁46の下流側には減圧された中圧蒸気を計測する圧力計74が設けられている。圧力計74は、中圧主蒸気加減弁46からみて蒸気入口321側の中圧蒸気の圧力値を計測する。低圧主蒸気加減弁53の上流側には低圧主蒸気を計測する圧力計75が設けられている。低圧主蒸気加減弁53の下流側には減圧された低圧蒸気を計測する圧力計76が設けられている。圧力計76は、低圧主蒸気加減弁53からみて蒸気入口331側の低圧蒸気の圧力値を計測する。
【0018】
なお、以下の説明および図面では、圧力計72が計測した蒸気入口311側の高圧蒸気の圧力値を、HPST入口圧ともいう。また、圧力計74が計測した蒸気入口321側の中圧蒸気の圧力値を、IPST入口圧ともいう。また、高圧主蒸気加減弁43をHPCVともいう。また、中圧主蒸気加減弁46をIPCVともいう。また、高圧主蒸気加減弁43、および、中圧主蒸気加減弁46は、HPガバナ弁およびIPガバナ弁とも表記する。なお、HPSTは高圧蒸気タービンの略語である。IPSTは中圧蒸気タービンの略語である。HPCVは高圧蒸気調節弁の略語である。IPCVは中圧蒸気調節弁の略語である。
【0019】
なお、システム1は、各部の温度、圧力、流量、回転数(回転速度)等を計測する図示していない複数のセンサを備えている。
【0020】
制御装置100は、コンピュータとそのコンピュータの周辺装置等から構成され、コンピュータ等のハードウェアと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせ等から構成される機能的構成として、取得部101と制御部102を備える。取得部101は、圧力計71~76等の各種センサの計測値を取得する。制御部102は、取得部101の取得結果等に応じてシステム1の各部を制御する。本実施形態において制御部102は、例えば、HPST入口圧とIPST入口圧とに応じてHPCVの弁開度とIPCVの弁開度とを調節する。また、制御部102は、各種の運転データや指示データ等を受け付け、ガスタービン10の出力の制御、高圧蒸気止め弁42の開閉の制御、高圧主蒸気加減弁43の弁開度の制御、中圧蒸気止め弁45の開閉の制御、中圧主蒸気加減弁46の弁開度の制御、低圧蒸気止め弁52の開閉の制御、低圧主蒸気加減弁53の弁開度の制御等による蒸気タービン30の出力制御等によって発電機34による発電を行う。また、何らかの異常等によって負荷遮断が発生した場合、制御装置100は、負荷遮断時の各種制御を行う。
【0021】
(蒸気タービンの制御の概要)
GTCCはガスタービン10の排ガスの熱エネルギーによってドラム21a、22aおよび24a内の給水を蒸気に変換し蒸気タービン30を通過させることで発電を行っている。蒸気タービン30は高圧(HP)蒸気タービン31、中圧(IP)蒸気タービン32および低圧(LP)蒸気タービン33で構成されており、特に高圧蒸気タービン31と中圧蒸気タービン32の受圧のバランスを取らないと高圧側あるいは中圧側にスラストが押し付けられ、最悪の場合スラスト焼損に至り交換に莫大な費用を要する。HPST入口圧とIPST入口圧の急激な偏りは例えば蒸気タービン30の起動時のベンチレータ弁66の閉動作や高圧蒸気タービンバイパス弁63または中圧蒸気タービンバイパス弁65の異常開動作によって引き起こされる。通常時には、制御装置100は、例えば、主蒸気圧(例えば高圧主蒸気加減弁43の上流側圧力)を監視し、ガスタービン10の負荷等から決定する目標蒸気圧になるように圧力制御を行う。この場合に、例えばベンチレータ弁66の閉動作によって中圧主蒸気が目標値以上に上昇すると、主蒸気圧を下げるために高圧主蒸気加減弁43が開かれる。すると高圧蒸気タービン31の蒸気出口から排気された蒸気が中圧主蒸気ライン44および64を通って蒸気入口321に到達する。この状態では、IPST入口圧が上昇し、スラストアンバランスに陥ってしまうことになる。
【0022】
そこで本実施形態では、制御装置100が、HPST入口圧とIPST入口圧のバランスが許容範囲内に収まるように弁開度指令値の上限値を変化させることで、HPCVの弁開度とIPCVの弁開度を調節する。図2は、制御装置100によるHPST入口圧とIPST入口圧とに応じた制御の概要を示す。図2は、横軸にHPST入口圧、縦軸にIPST入口圧をとり、回転軸36に掛かるスラスト力が適正となるHPST入口圧とIPST入口圧の対応関係を均衡特性として破線で示す。図2において、白抜きの領域A1が所望の運転領域、網掛けして示す領域A2およびA3がスラストアンバランスの領域である。図2上側の領域A2ではIPST入口圧過大、下側の領域A3はHPST入口圧過大である。制御装置100は、上側のIPST入口圧過大の領域A2はIPCVを絞ることで対応し、下側のHPST入口圧過大の領域A3はHPCVを絞ることで目標の運転バランス(図中均衡特性を目標として)で運転する。
【0023】
なお、図2に示す領域A1は、回転軸36に掛かるスラスト力が適正となるHPST入口圧とIPST入口圧の対応関係である均衡特性に基づく、HPST入口圧とIPST入口圧の対応関係についての範囲である。この場合、領域A1(範囲)は、横軸をHPST入口圧、縦軸をIPST入口圧とする直交座標で表した場合に、領域A1(範囲)の上側の境界線B_IPSTと下側の境界線B_HPSTで挟まれた領域である。また、制御装置100は、この領域A1(範囲)を基準として、HPST入口圧とIPST入口圧とに応じてHPCVの弁開度とIPCVの弁開度とを調節する。その際、制御装置100は、領域A1の上側の境界線B_IPST側を基準としてIPCVの弁開度を調節し、下側の境界線B_HPST側を基準としてHPCVの弁開度を調節する。
【0024】
なお、図2に示す特性や領域は、IPST入口圧を横軸とし、HPST入口圧を縦軸として表してもよい。その場合、上側の境界線と下側の境界線が入れ替わることになる。
【0025】
ここで、図3図4を参照して、制御部102の構成例について説明する。図3は、HPCVの弁開度指令値を算出する算出部200の構成例を示す。図4は、IPCVの弁開度指令値を算出する算出部400の構成例を示す。図1に示す制御部102は、図3に示す算出部200と図4に示す算出部400とを含む。
【0026】
図3に示す算出部200は、弁開度上限値算出部210と、弁開度算出部220と、最小値選択器230とを含む。
【0027】
弁開度算出部220は、減算器221と、PI制御器(比例積分制御器)222と、最大値選択器224とを含む。減算器221は、高圧主蒸気目標圧(HP主蒸気目標圧)から高圧主蒸気圧(HP主蒸気圧)を減算することで、目標値に対するHP主蒸気圧の偏差を算出する。PI制御器222は、減算器221が算出した偏差を入力として、PI動作(比例積分動作)によって、HPCVの弁開度指令値を算出する。なお、弁開度指令値の範囲は0~100である。そして、最大値選択器224は、「0」223とPI制御器222の算出値のうち大きい値を出力する。最大値選択器224は、PI制御器222の算出値が0以上の場合、PI制御器222の算出値を出力する。HP主蒸気目標圧は、例えば、上述したようにガスタービン10の負荷等から決定される。HP主蒸気圧は、圧力計71が計測した高圧主蒸気加減弁43の上流側圧力である。弁開度算出部220は、フィードバック制御によって、HP主蒸気目標圧とHP主蒸気圧との偏差が無くなるようにHPCV弁開度指令値を調節する。なお、制御要素は、PI動作に限定されず、PID動作(比例積分微分動作)としたり、機械学習モデル等のモデルを用いる制御要素に代えたりしてもよい。
【0028】
弁開度上限値算出部210は、HPST入口圧閾値算出部211と、減算器212と、PI制御器213とを含む。弁開度上限値算出部210は、HPCV弁開度の上限値を算出する。この弁開度上限値算出部210が算出した弁開度上限値と、弁開度算出部220が算出したHPCVの弁開度指令値は、最小値選択器230へ入力され、小さい方の値が出力される。したがって、算出部200が出力するHPCVの弁開度指令値は、弁開度上限値算出部210が算出した弁開度上限値で制限される。
【0029】
HPST入口圧閾値算出部211は、IPST入口圧とHPST入口圧の各計測値に基づいて、図2を参照して説明したHPCVの弁開度を調節する際の基準である境界線B_HPSTを用いて、HPST入口圧閾値を算出する。HPST入口圧閾値は、上限値の調節(PI制御)を開始するか否かの判定の基準となるともに、上限値を調節する際のHPST入力圧に対する目標値となる。HPST入口圧閾値算出部211は、例えば図5に示すように、IPST入口圧がPL1であるとすると、境界線B_HPSTとの交点C10に対応するHPST入口圧を、HPST入口圧閾値として算出する。
【0030】
減算器212は、HPST入口圧閾値からHPST入口圧を減算することで、HPST入口圧閾値に対するHPST入口圧の偏差を算出する。PI制御器213は、減算器212が算出した偏差を入力として、PI動作(比例積分動作)によって、HPCVの弁開度の上限値を算出する。なお、制御要素は、PI動作に限定されず、PID動作(比例積分微分動作)としたり、機械学習モデル等のモデルを用いる制御要素に代えたりしてもよい。
【0031】
最小値選択器230は、上述したように、弁開度上限値算出部210が算出した弁開度上限値と、弁開度算出部220が算出したHPCVの弁開度指令値とを入力し、小さい方の値を出力する。
【0032】
図4に示す算出部400は、弁開度上限値算出部410と、弁開度算出部420と、最小値選択器430とを含む。
【0033】
弁開度算出部420は、減算器421と、PI制御器(比例積分制御器)422と、最大値選択器424とを含む。減算器421は、中圧主蒸気目標圧(IP主蒸気目標圧)から中圧主蒸気圧(IP主蒸気圧)を減算することで、目標値に対するIP主蒸気圧の偏差を算出する。PI制御器422は、減算器421が算出した偏差を入力として、PI動作によって、IPCVの弁開度指令値を算出する。なお、弁開度指令値の範囲は0~100である。そして、最大値選択器424は、「0」423とPI制御器422の算出値のうち大きい方を出力する。最大値選択器424は、PI制御器422の算出値が0以上の場合、PI制御器422の算出値を出力する。IP主蒸気目標圧は、例えば、ガスタービン10の負荷等から決定される。IP主蒸気圧は、圧力計73が計測した中圧主蒸気加減弁46の上流側圧力である。弁開度算出部420は、フィードバック制御によって、IP主蒸気目標圧とIP主蒸気圧との偏差が無くなるようにIPCV弁開度指令値を調節する。なお、制御要素は、PI動作に限定されず、PID動作としたり、機械学習モデル等のモデルを用いる制御要素に代えたりしてもよい。
【0034】
弁開度上限値算出部410は、IPST入口圧閾値算出部411と、減算器412と、PI制御器413とを含む。弁開度上限値算出部410は、IPCV弁開度の上限値を算出する。この弁開度上限値算出部410が算出した弁開度上限値と、弁開度算出部420が算出したIPCVの弁開度指令値は、最小値選択器430へ入力され、小さい方の値が出力される。したがって、算出部400が出力するIPCVの弁開度指令値は、弁開度上限値算出部410が算出した弁開度上限値で制限される。
【0035】
IPST入口圧閾値算出部411は、IPST入口圧とHPST入口圧の各計測値に基づいて、図2を参照して説明したIPCVの弁開度を調節する際の基準である境界線B_IPSTを用いて、IPST入口圧閾値を算出する。IPST入口圧閾値は、上限値の調節(PI制御)を開始するか否かの判定の基準となるともに、上限値を調節する際のIPST入力圧に対する目標値となる。IPST入口圧閾値算出部411は、例えば図6に示すように、HPST入口圧がPH1であるとすると、境界線B_IPSTとの交点C20に対応するIPST入口圧を、IPST入口圧閾値として算出する。
【0036】
減算器412は、IPST入口圧閾値からIPST入口圧を減算することで、IPST入口圧閾値に対するIPST入口圧の偏差を算出する。PI制御器413は、減算器412が算出した偏差を入力として、PI動作(比例積分動作)によって、IPCVの弁開度の上限値を算出する。なお、制御要素は、PI動作に限定されず、PID動作(比例積分微分動作)としたり、機械学習モデル等のモデルを用いる制御要素に代えたりしてもよい。
【0037】
最小値選択器430は、上述したように、弁開度上限値算出部410が算出した弁開度上限値と、弁開度算出部420が算出したIPCVの弁開度指令値とを入力し、小さい方の値を出力する。
【0038】
(作用・効果)
以上のように、本開示の制御装置、制御方法およびシステムによれば、HPST入口圧とIPST入口圧との対応関係が適正となるように、HPCVの弁開度とIPCVの弁開度を調節することができるので、蒸気タービン30におけるHPST入口圧とIPST入口圧が不均衡となることによるスラスト力を許容値内に制御することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、例えば、蒸気タービン30の起動時、負荷遮断、ランバック、負荷変化、ベンチレータ弁閉動作、HPタービンバイパス弁の異常開といった過渡的に系統内圧力が上昇(あるいは下降)しバランスが偏ってしまうような事象が発生しても正常なスラストバランスでSTの運転を継続できるようになる。
【0040】
<第2実施形態>
図7および図8を参照して、本開示の第2実施形態に係る制御装置について説明する。図7は、本開示の第2実施形態に係る制御装置の動作例を説明するための模式図である。図8は、本開示の第2実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【0041】
第2実施形態に係るシステム1の構成は、第1実施形態に係るシステム1の構成と基本的に同一である。ただし、第2実施形態では、図1に示す制御装置100が備える制御部102の動作が、第1実施形態と一部異なる。
【0042】
図7を参照して、第2実施形態の制御装置100の制御部102の動作例について説明する。第2実施形態において、制御部102は、(1)通常制御時、(2)後圧制御待機時、(3)後圧制御時の3つの異なるモードのいずれかを選択して、HPCVの弁開度の上限値とIPCVの弁開度の上限値を調節する。図7は、ガスタービン10の起動時におけるHPCV開度指令値の上限値と、HPCV開度指令値と、HPST入口圧の時間変化の例を示す。図7に示す例では、起動後に、(1)通常制御時、(2)後圧制御待機時、および(3)後圧制御時の順にモードが変化している。なお、後圧制御は、HPCVの下流側の圧力であるHPST入口圧によって上限値を調節する制御であり、第1実施形態の上限値の制御と同一である。HPCVの下流側の圧力に基づく制御を、後圧制御としている。なお、IPCV開度指令値の上限値の制御については、HPCV開度指令値の上限値の制御と同様であり、以下、HPCV開度指令値の上限値の制御を例として説明する。
【0043】
(1)通常制御時:蒸気タービン30の起動時、ガスタービン10の負荷とともに排熱回収ボイラー20への入熱量が上昇し、それに伴い蒸気量が増えるため、通常制御時はHPCV弁開度指令値の目標値を例えばガスタービン10の負荷の関数として増加させHPCVを徐々に開く。HP側・IP側ST入口圧が予め設定しておいた正常な範囲内に収まっている時は弁開度指令値の上限値を最大開度一定とする。
【0044】
(2)後圧制御待機時:HPST入口圧が、図5に示した境界線B_HPSTで決まるHPST入口圧閾値に近づき、HPST入口圧がHPST入口圧閾値以上になると、弁開度上限値が現在弁開度+α1に変更される。上限値を現在弁開度+α1に待機させることで、HPST入口圧が許容範囲を逸脱しそうになった際に素早く弁を閉めることが可能になる。
【0045】
(3)後圧制御時:ベンチレータ弁66閉動作や高圧蒸気タービンバイパス弁63の異常開等のイベントの発生によって、系統内圧力が急変し範囲を逸脱しそうになると、第1実施形態と同様にして弁開度上限値算出部210が出力する上限値によってHPCV弁を閉じ、HPST入口圧とIPST入口圧との対応関係を正常範囲内に収めることができる。
【0046】
図7に示す例では、時刻t0~t1で通常制御が実行される。時刻t1では、HPST入力圧が図示していないHPST入力圧閾値以上となり、後圧制御待機時となる。そして、時刻t2でHPST入力圧がHPST目標圧以上となり、後圧制御が実行される。
【0047】
通常制御時には、2点鎖線で示すHPCV弁開度指令値の上限値は最大開度一定となる。また、通常制御時には、1点鎖線で示すHPST目標圧に向けて、HPCV弁開度指令値が設定され、HPST入力圧が上昇する。後圧制御待機時には、HPCV弁開度指令値の上限値は、現在弁開度+α1%に設定される。そして、後圧制御時には、上限値のPI制御が開始され、上限値でHPCV弁開度が抑えられる。なお、後圧制御無しの前圧制御の場合のHPCV弁開度は、例えば破線で示すように上昇を継続する。ここで、前圧制御は、HPCVの上流側の圧力に基づく制御である。
【0048】
次に、図8を参照して、第2実施形態の制御装置100の制御部102における処理の流れについて説明する。なお、図8では、HPCVをHPガバナ弁と表記し、IPCVをIPガバナ弁と表記する。第2実施形態の制御部102は、ステップS11~S18の処理によるHPCV(HPガバナ弁)の弁開度の調節と、ステップS21~S28の処理によるIPCV(IPガバナ弁)の弁開度の調節とを並列的に実行する。
【0049】
制御を開始すると、制御部102は、図5に示すHPST入力圧とIPST入力圧の対応関係における境界線B_HPSTを基準として、IPST入口圧に基づき、HPST入口圧閾値を計算する(ステップS11)。なお、ステップS11の処理は所定の時間間隔で実行される。次に、制御部102は、HPST入口圧がHPST入口圧閾値以上であるか否かを判定する(ステップS12)。HPST入口圧がHPST入口圧閾値以上でない場合(ステップS12:NO)、制御部102は、弁開度上限値を最大値として、HPガバナ弁通常制御を実行し(ステップS13)、ステップS11へ戻る。HPST入口圧がHPST入口圧閾値以上である場合(ステップS12:YES)、制御部102は、弁開度上限値を現在開度+α1に設定し、HPガバナ弁後圧制御待機状態に移行し(ステップS14)、HPST入口圧が目標圧以上であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0050】
HPST入口圧が目標圧以上でない場合(ステップS15:NO)、制御部102は、処理をステップS11へ戻す。HPST入口圧が目標圧以上である場合(ステップS15:YES)、制御部102は、HPガバナ弁後圧制御実行し(ステップS16)、HPST入口圧がHPST入口圧閾値未満であるか否かを判定する(ステップS17)。HPST入口圧がHPST入口圧閾値未満でない場合(ステップS17:NO)、制御部102は、HPST入口圧閾値を計算し(ステップS18)、所定時間後に、ステップS16の処理を実行する。HPST入口圧がHPST入口圧閾値未満である場合(ステップS17:YES)、制御部102は、処理をステップS11へ戻す。
【0051】
また、制御を開始すると、上記処理と並列して、制御部102は、図6に示すHPST入力圧とIPST入力圧の対応関係における境界線B_IPSTを基準として、HPST入口圧に基づき、IPST入口圧閾値を計算する(ステップS21)。なお、ステップS21の処理は所定の時間間隔で実行される。次に、制御部102は、IPST入口圧がIPST入口圧閾値以上であるか否かを判定する(ステップS22)。IPST入口圧がIPST入口圧閾値以上でない場合(ステップS22:NO)、制御部102は、弁開度上限値を最大値として、IPガバナ弁通常制御を実行し(ステップS23)、ステップS21へ戻る。IPST入口圧がIPST入口圧閾値以上である場合(ステップS22:YES)、制御部102は、弁開度上限値を現在開度+α2に設定し、IPガバナ弁後圧制御待機状態に移行し(ステップS24)、IPST入口圧が目標圧以上であるか否かを判定する(ステップS25)。なお、α2は、α1に対応するIPST入口圧側の定数値である。
【0052】
IPST入口圧が目標圧以上でない場合(ステップS25:NO)、制御部102は、処理をステップS21へ戻す。IPST入口圧が目標圧以上である場合(ステップS25:YES)、制御部102は、IPガバナ弁後圧制御実行し(ステップS26)、IPST入口圧がIPST入口圧閾値未満であるか否かを判定する(ステップS27)。IPST入口圧がIPST入口圧閾値未満でない場合(ステップS27:NO)、制御部102は、IPST入口圧閾値を計算し(ステップS28)、所定時間後に、ステップS26の処理を実行する。IPST入口圧がIPST入口圧閾値未満である場合(ステップS27:YES)、制御部102は、処理をステップS21へ戻す。
【0053】
以上のように、本開示の制御装置、制御方法およびシステムによれば、HPST入口圧とIPST入口圧との対応関係が適正となるように、HPCVの弁開度とIPCVの弁開度を調節することができるので、蒸気タービン30におけるHPST入口圧とIPST入口圧が不均衡となることによるスラスト力を許容値内に制御することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、制御部102は、HPCVの弁開度とIPCVの弁開度の各上限値を、選択的に、各弁開度の最大値、HPST入口圧とIPST入口圧の各現在値から所定量(α1またはα2)増加させた各値、または、領域A1を基準とする各値のいずれかとすることで、HPCVの弁開度の上限値とIPCVの弁開度の上限値を調節する。この構成によれば、HPST入口圧またはIPST入口圧が許容範囲を逸脱しそうになった際に素早く弁を閉めることができる。
【0055】
<第3実施形態>
図9を参照して、本開示の第3実施形態に係る制御装置について説明する。図9は、本開示の第3実施形態に係る制御装置を説明するための模式図である。
【0056】
第3実施形態は、第1実施形態で示したスラストバランス目標範囲(図2の領域A1)の決定手順を提示する。第3実施形態では、領域A1(範囲)を以下の手順で決定する。
【0057】
(S1)HPSTとIPSTのスラスト力が釣り合うHPST入口圧およびIPST入口圧の組み合わせの点C1を複数求める。
【0058】
(S2)スラスト力が釣り合う点C1より、HP側あるいはIP側のST入口圧を偏らせたときに許容できるスラスト力の最大領域(HP側偏り、IP側偏り)を求める。図9に示す例では、組み合わせの点C1のHPST入口圧をΔHP1とΔHP2だけ偏らせた範囲と、点C1のIPST入口圧をΔIP1とΔIP2だけ偏らせた範囲を求める。各点C1について同様にしてのHPST入口圧を偏らせた範囲とIPST入口圧を偏らせた範囲を求める。そして、各点C1のHPST入口圧を偏らせた範囲とIPST入口圧を偏らせた範囲を超えないように破線で示す境界線M_HPSTと境界線M_IPSTで挟まれた領域A1aを決定する。
【0059】
(S3)(S2)で求めたHPST入口圧とIPST入口圧の境界線M_HPSTと境界線M_IPSTから定数γ(調整項)を引いたものを領域A1の境界線B_HPSTと境界線B_IPSTとする。
【0060】
以上のように、本実施形態では、図2を参照して説明した領域A1(範囲)が、HPSTによるスラスト力とIPSTによるスラスト力とが釣り合うHPST入口圧とIPST入口圧の組み合わせ点C1から、HPST入口圧またはIPST入口圧の一方を偏らせた場合のスラスト力が最大許容値以下である領域A1aに対応する。また、制御部102は、領域A1aの境界から領域A1aの内側へ所定の定数γを減じた領域A1(範囲)を基準として、HPST入口圧とIPST入口圧とに応じてHPCVの弁開度とIPCVの弁開度とを調節する。
【0061】
本実施形態によれば、スラスト力を制約の範囲に抑えることが可能である。
【0062】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0063】
〈コンピュータ構成〉
図10は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述の制御装置100は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0064】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0065】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0066】
<付記>
各実施形態に記載の制御装置100は、例えば以下のように把握される。
【0067】
(1)第1の態様に係る制御装置100は、第1調節弁(高圧主蒸気加減弁43)を介して第1入口(蒸気入口311)から供給された第1蒸気(高圧蒸気)を利用して回転する第1タービン(高圧蒸気タービン31)の前記第1調節弁からみて前記第1入口側の前記第1蒸気の圧力値を第1入口圧として取得するとともに、第2調節弁(中圧主蒸気加減弁46)を介して第2入口(蒸気入口321)から供給された第2蒸気を利用して前記第1タービンと同一の回転軸36で回転する第2タービン(中圧蒸気タービン32)の前記第2調節弁からみて前記第2入口側の前記第2蒸気の圧力値を第2入口圧として取得する取得部101と、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節する制御部102とを備える。本態様および以下の各態様によれば、蒸気タービンにおけるスラスト力を許容値内に制御することができる。
【0068】
(2)第2の態様の制御装置100は、(1)の制御装置であって、前記制御部102は、前記回転軸36に掛かるスラスト力が適正となる前記第1入口圧と前記第2入口圧の対応関係(均衡特性)に基づく前記対応関係についての所定の範囲(領域A1)を基準として、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節する。本態様によれば、第1入口圧と第2入口圧との対応関係が適正となるように、第1調節弁の弁開度と第2調節弁の弁開度を調節することができるので、蒸気タービン30における第1入口圧と第2入口圧が不均衡となることによるスラスト力を許容値内に制御することができる。
【0069】
(3)第3の態様の制御装置100は、(2)の制御装置100であって、前記制御部102は、前記範囲(領域A1)を、横軸を前記第1入口圧と前記第2入口圧の一方、縦軸を前記第1入口圧と前記第2入口圧の他方とする直交座標で表した場合に、前記範囲の上側の境界線(B_IPST)側を基準として前記第1調節弁と前記第2調節弁の一方を調節し、前記範囲の下側の境界線(B_HPST)側を基準として前記第1調節弁と前記第2調節弁の他方を調節する。
【0070】
(4)第4の態様の制御装置100は、(2)または(3)の制御装置100であって、前記範囲(領域A1)は、前記第1タービンによるスラスト力と前記第2タービンによるスラスト力とが釣り合う前記第1入口圧と前記第2入口圧の組み合わせ(C1)から、前記第1入口圧または前記第2入口圧の一方を偏らせた場合の前記スラスト力が最大許容値以下である領域A1aに対応する。
【0071】
(5)第5の態様の制御装置100は、(4)の制御装置100であって、前記制御部102は、前記領域A1aの境界から前記領域A1aの内側へ所定の定数γを減じた領域A1を前記範囲(領域A1)として、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節する。
【0072】
(6)第6の態様の制御装置100は、(2)~(5)の制御装置100であって、前記制御部102は、前記第1調節弁の弁開度の上限値と前記第2調節弁の弁開度の上限値を調節することで、前記第1入口圧と前記第2入口圧とに応じて前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度とを調節する。本態様によれば、例えば、第1調節弁の上流側の圧力の第1調節弁によるフィードバック制御や第2調節弁の上流側の圧力の第2調節弁によるフィードバック制御等と容易に組み合わせることができる。
【0073】
(7)第7の態様の制御装置100は、(6)の制御装置100であって、前記制御部102は、前記第1調節弁の弁開度と前記第2調節弁の弁開度の各上限値を、選択的に、前記各弁開度の最大値、前記第1入口圧と前記第2入口圧の各現在値から所定量(α1、α2)増加させた各値、または、前記範囲(領域A1)を基準とする各値のいずれかとすることで、前記第1調節弁の弁開度の上限値と前記第2調節弁の弁開度の上限値を調節する。本態様によれば、上限値による制御の応答性をよくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の各態様によれば、蒸気タービンにおけるスラスト力を許容値内に制御することができる。
【符号の説明】
【0075】
1…システム
10…ガスタービン
11…圧縮機
12…燃焼器
13…タービン
14…燃料流量調節弁
20…排熱回収ボイラー
21…高圧蒸気発生部
22…中圧蒸気発生部
23…再加熱部
24…低圧蒸気発生部
30…蒸気タービン
31…高圧蒸気タービン
32…中圧蒸気タービン
33…低圧蒸気タービン
34…発電機
35…復水器
41…高圧主蒸気ライン
42…高圧蒸気止め弁
43…高圧主蒸気加減弁
44、61、62…中圧主蒸気ライン
45…中圧蒸気止め弁
46…中圧主蒸気加減弁
51…低圧主蒸気ライン
52…低圧蒸気止め弁
53…低圧主蒸気加減弁
54…中圧タービン排気ライン
55…給水ライン
56…排気ライン
63…高圧蒸気タービンバイパス弁
65…中圧蒸気タービンバイパス弁
66…ベンチレータ弁
71、72、73、74、75、76…圧力計
100…制御装置
101…取得部
102…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10