(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】発振回路
(51)【国際特許分類】
H03K 3/017 20060101AFI20241206BHJP
H03K 3/03 20060101ALI20241206BHJP
H03K 3/354 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
H03K3/017
H03K3/03
H03K3/354 C
(21)【出願番号】P 2023576662
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2022043959
(87)【国際公開番号】W WO2023145242
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2022013080
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 貴大
(72)【発明者】
【氏名】小島 友和
(72)【発明者】
【氏名】上村井 明夫
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-202687(JP,A)
【文献】特開平08-116239(JP,A)
【文献】特開2005-051673(JP,A)
【文献】特開2001-223564(JP,A)
【文献】米国特許第5585765(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 3/00- 3/86
H03L 7/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ノードの電圧と反転しきい値電圧との比較結果に従って第1論理レベル又は第2論理レベルに設定される出力信号を生成する第1論理反転回路を各々が経由する様に構成された複数の信号経路と、
前記複数の信号経路のうちの1つの信号経路を選択して、前記出力信号を第1ノードへ伝達する選択部と、
第2ノードと前記第1ノードとの間に直列接続された、少なくとも1個の第2論理反転回路と、
前記第2論理反転回路のいずれかの入力側又は出力側である第3ノードと、前記入力ノードとの間に接続された帰還抵抗と、
前記第2論理反転回路のいずれかの入力側又は出力側であり、かつ、前記第3ノードとは異なる第4ノードと、前記入力ノードとの間に接続された帰還容量とを備え、
前記複数の信号経路は、当該信号経路に含まれる前記第1論理反転回路の前記反転しきい値電圧、及び、当該信号経路における前記出力信号のエッジ伝達遅延差の少なくとも一方が互いに異なる様に形成され、
前記エッジ伝達遅延差は、前記第1論理レベルから前記第2論理レベルへの第1遷移の際に生じる第1遅延時間と、前記第2論理レベルから前記第1論理レベルへの第2遷移の際に生じる第2遅延時間との差分に相当する、発振回路。
【請求項2】
前記複数の信号経路は、入力側が前記入力ノードと共通接続される一方で前記反転しきい値電圧が互いに異なる複数の前記第1論理反転回路をそれぞれ含み、
前記選択部は、前記複数の信号経路の各々において、前記入力ノード及び前記第1ノードの間に前記第1論理反転回路と直列に接続されたスイッチ回路を含み、
前記選択部は、制御信号に基づいて、選択された前記1つの信号経路において前記スイッチ回路をオンする、請求項1記載の発振回路。
【請求項3】
前記発振回路は、
選択された前記1つの信号経路において、前記出力信号の前記第1遷移及び前記第2遷移の各々に対して同等の遅延時間を付与するための第1遅延調整回路を更に含み、
前記第1遅延調整回路によって付与される前記遅延時間は、前記複数の信号経路の間で異なる、請求項2記載の発振回路。
【請求項4】
前記第1遅延調整回路は、前記複数の信号経路の各々において、前記第1論理反転回路及び前記第1ノードの間に前記スイッチ回路と直列接続された第1ダミースイッチ回路を含み、
前記第1ダミースイッチ回路は、直列接続された前記スイッチ回路とは相補にオンオフ動作することを伴って、前記出力信号の前記第1遷移及び前記第2遷移の各々に対して同等の前記遅延時間を付与する様に構成され、
前記複数の信号経路の間で、前記第1ダミースイッチ回路が付与する前記遅延時間は異なる、請求項3記載の発振回路。
【請求項5】
前記複数の信号経路は、共通の前記第1論理反転回路の前記出力信号を複数に分岐する様に構成され、
前記選択部は、前記複数の信号経路の各々において、前記入力ノード及び前記第1ノードの間に前記第1論理反転回路と直列接続されたスイッチ回路を含むとともに、制御信号に基づいて選択された前記1つの信号経路において前記スイッチ回路をオンする様に構成され、
前記発振回路は、
前記第1論理反転回路の出力側と前記第1ノードとの間に接続された第2遅延調整回路を更に備え、
前記第2遅延調整回路は、選択された前記1つの信号経路において、前記出力信号の前記第1遷移及び前記第2遷移に対して前記第1遅延時間及び前記第2遅延時間をそれぞれ付与し、
前記第2遅延調整回路によって付与される前記第1遅延時間及び前記第2遅延時間の差分は、前記複数の信号経路の間で異なる、請求項1記載の発振回路。
【請求項6】
前記複数の信号経路は、入力側が前記入力ノードと共通接続される一方で前記反転しきい値電圧が互いに異なる第1複数個の前記第1論理反転回路の出力の各々を第2複数個に分岐することによって構成され、
前記選択部は、前記複数の信号経路の各々において、前記第1複数個の第1反転論理回路のうちの1個の出力側と前記第1ノードとの間に接続されたスイッチ回路を含み、
前記選択部は、制御信号に基づいて、選択された前記1つの信号経路において前記スイッチ回路をオンし、
前記発振回路は、
選択された前記1つの信号経路において、前記出力信号の前記第1遷移及び前記第2遷移に対して前記第1遅延時間及び前記第2遅延時間を付与するための第2遅延調整回路を更に備え、
前記第2遅延調整回路によって付与される前記第1遅延時間及び前記第2遅延時間の差分は、前記複数の信号経路の間で異なる、請求項1記載の発振回路。
【請求項7】
前記第2遅延調整回路は、前記複数の信号経路の各々において、前記第1論理反転回路及び前記第1ノードの間に前記スイッチ回路と直列接続された第2ダミースイッチ回路を含み、
前記第2ダミースイッチ回路は、直列接続された前記スイッチ回路とは相補にオンオフ動作することを伴って、前記出力信号の前記第1遷移及び前記第2遷移に対して前記第1遅延時間及び前記第2遅延時間をそれぞれ付与する様に構成され、
前記複数の信号経路の間で、前記第2ダミースイッチ回路が付与する前記第1遅延時間及び前記第2遅延時間の差分は異なる、請求項
5記載の発振回路。
【請求項8】
前記第1論理反転回路は、前記入力ノードに対してゲートが共通接続されたP型電界効果トランジスタ及びN型電界効果トランジスタを有し、
前記N型電界効果トランジスタは、前記第1論理レベルに対応する第1電圧を供給する第1配線と、前記出力信号が生成される出力ノードとの間に接続され、
前記P型電界効果トランジスタは、前記第2論理レベルに対応する第2電圧を供給する第2配線と、前記出力ノードとの間に接続され、
前記反転しきい値電圧が異なる前記第1論理反転回路の間では、
前記P型電界効果トランジスタのトランジスタサイズと、前記N型電界効果トランジスタのトランジスタサイズとの比が異なる、請求項
1記載の発振回路。
【請求項9】
前記複数の信号経路は、入力側が前記入力ノードと共通接続される一方で前記反転しきい値電圧が互いに異なる複数のクロックドインバータを前記第1論理反転回路としてそれぞれ含み、
前記選択部は、制御信号に基づいて、前記複数のクロックドインバータの各々の動作及び停止を制御し、前記複数のクロックドインバータのうちの1個のクロックドインバータを動作させることで、前記1つの信号経路を選択する、請求項1記載の発振回路。
【請求項10】
前記発振回路は、
前記複数のクロックドインバータと前記第1ノードとの間に配置された第1遅延調整回路を更に含み、
前記第1遅延調整回路は、選択された前記1つの信号経路において、前記出力信号の前記第1遷移及び前記第2遷移の各々に対して同等の遅延時間を付与する様に構成され、
前記第1遅延調整回路によって付与される前記遅延時間は、前記複数の信号経路の間で異なる、請求項9記載の発振回路。
【請求項11】
前記第1遅延調整回路は、前記複数の信号経路の各々において、各前記クロックドインバータ及び前記第1ノードの間に接続された第1ダミースイッチ回路を含み、
前記第1ダミースイッチ回路は、オフ状態への固定を伴って、選択された前記1つの信号経路において前記出力信号の前記第1遷移及び前記第2遷移の各々に対して同等の前記遅延時間を付与する様に構成され、
前記複数の信号経路の間で、前記第1ダミースイッチ回路が付与する前記遅延時間は異なる、請求項10記載の発振回路。
【請求項12】
前記第1論理反転回路は、複数ビットずつの第1制御信号及び第2制御信号に応じて、前記入力ノード及び前記第1ノードとの間に、前記反転しきい値電圧が異なる複数のインバータのうちの1つのインバータが選択的に形成される様に構成され、
前記複数の信号経路は、前記複数のインバータをそれぞれ含み、
前記選択部は、前記第1制御信号及び前記第2制御信号に基づいて、前記複数のインバータから前記1つのインバータを選択することによって、選択された前記1つの信号経路を選択する、請求項1記載の発振回路。
【請求項13】
前記第1論理反転回路は、
前記第1論理レベルに対応する第1電圧を供給する第1配線と前記第2論理レベルに対応する第2電圧を供給する第2配線との間に並列接続された複数のクロックドインバータを含み、
前記複数のクロックドインバータの各々は、
前記第1配線と前記出力信号が生成される出力ノードとの間に直列接続されたN型電界効果トランジスタ及び第1スイッチトランジスタと、
前記第2配線と前記出力ノードとの間に直列接続されたP型電界効果トランジスタ及び第2スイッチトランジスタとを有し、
各前記クロックドインバータの前記N型電界効果トランジスタ及び前記P型電界効果トランジスタのゲートは、前記入力ノードと共通接続され、
前記複数のクロックドインバータにおいて、各前記第1スイッチトランジスタは前記第1制御信号の異なるビットに応じてオンオフされるともに、各前記第2スイッチトランジスタは前記第2制御信号の異なるビットに応じてオンオフされ、
前記第1論理反転回路において、前記第1制御信号に応じて、前記第1スイッチトランジスタのオンによって前記出力ノードと前記第1配線との間に並列接続される少なくとも1つの前記N型電界効果トランジスタ全体での第1トランジスタサイズが段階的に変化するとともに、前記第2制御信号に応じて、前記第2スイッチトランジスタのオンによって前記出力ノードと前記第2配線との間に並列接続される少なくとも1つの前記P型電界効果トランジスタ全体での第2トランジスタサイズが段階的に変化し、
前記複数の信号経路の間で、前記第1トランジスタサイズ及び前記第2トランジスタサイズの比は異なる、請求項12記載の発振回路。
【請求項14】
前記第2遅延調整回路は、前記複数の信号経路の各々において、前記第1論理反転回路及び前記第1ノードの間に前記スイッチ回路と直列接続された第2ダミースイッチ回路を含み、
前記第2ダミースイッチ回路は、直列接続された前記スイッチ回路とは相補にオンオフ動作することを伴って、前記出力信号の前記第1遷移及び前記第2遷移に対して前記第1遅延時間及び前記第2遅延時間をそれぞれ付与する様に構成され、
前記複数の信号経路の間で、前記第2ダミースイッチ回路が付与する前記第1遅延時間及び前記第2遅延時間の差分は異なる、請求項6記載の発振回路。
【請求項15】
前記第1論理反転回路及び前記第2論理反転回路の少なくとも一方は、イネーブル信号に応じて、イネーブルオフ期間には出力信号が前記第1論理レベル又は前記第2論理レベルのいずれか一方に固定される様に構成され、
前記発振回路は、
前記帰還容量の両側電極の少なくとも一方の電極に対応して設けられた、前記イネーブル信号に応じてオンオフする少なくとも1つの制御スイッチを更に備え、
前記少なくとも1つの制御スイッチは、前記イネーブルオフ期間の解除時には、前記帰還容量が前記第4ノード及び前記入力ノードとの間に接続される様に動作する一方で、前記イネーブルオフ期間には、前記両側電極の電圧差がゼロになる様に、前記少なくとも一方の電極の接続先を前記イネーブルオフ期間の解除時から変化させる、請求項1~
14のいずれか1項に記載の発振回路。
【請求項16】
前記少なくとも1つの制御スイッチは、前記イネーブルオフ期間において、前記帰還容量の一方又は両方の電極がグランドと接続される様に動作する、請求項
15記載の発振回路。
【請求項17】
前記少なくとも1つの制御スイッチは、前記イネーブルオフ期間において、前記帰還容量が前記第1ノード及び前記入力ノードの間に接続される様に動作する、請求項
15記載の発振回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コスト削減の目的で、水晶発振器よりも基板面積を削減できるオンチップ発振回路のニーズが高まってきている。一般的に、オンチップ型の発振回路としては、位相雑音が小さく、周波数可変性に優れるRC型発振回路が良く知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、RC型発振回路の代表的な回路構成が記載されている。具体的には、複数段のインバータに対して、信号遅延を付与するための帰還抵抗及び帰還容量による帰還経路が付与された循環ループを形成する回路構成が開示される。当該回路構成では、初段のインバータと最終段のインバータとの間で、出力信号の反転タイミングに上記信号遅延による時間差を設けることで、発振信号を生成することができる。
【0004】
RC型の発振回路は、帰還抵抗の抵抗値(R)及び帰還容量の容量値(C)の積によって発振周波数を設計できるので、発振信号の周波数調整が比較的容易である。例えば、特開2019-12944号公報(特許文献1)には、出力信号をモニタリングした結果に基づいて抵抗素子をトリミングすることによって、発振周波数を調整する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Junsoo Ko and Minjae、"A 1.8 V 18.13 MHz Inverter-Based On-Chip RC Oscillator with Flicker Noise Suppression Using Logic Transition Voltage Feedback”、2019年11月15日、MDPI (Multidisciplinary Digital Publishing Institute)、Electronics 2019, 8, 1353。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、発振信号は、論理ハイレベル(以下、単に「Hレベル」と称する)期間及び論理ローレベル期間(以下、単に「Lレベル」と称する)期間との比率であるデューティ比が50(%):50(%)に設計される。特に、発振信号がシステムの基準クロックとして用いられる場合には、当該発振信号の立上がりエッジ及び立下りエッジの両方が内部回路の動作トリガに用いられるアプリケーションも多いため、デューティ比が50(%):50(%)に近いことが求められる。
【0008】
一方で、RC型発振回路では、初段のインバータの特性、代表的には、反転しきい値電圧が製造ばらつき(プロセスばらつき)によって変動すると、発振信号のデューティ比が50(%):50(%)から外れてしまうことが懸念される。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された抵抗素子のトリミングでは、発振周波数は簡易な構成で調整できる一方で、デューティ比を調整することはできない。
【0010】
又、非特許文献1には、初段のインバータの反転しきい値電圧を一定値に制御するために、当該インバータを構成するN型トランジスタのバックゲート電位を自動的にフィードバック制御する回路構成が記載されている。しかしながら、この様なフィードバック制御の導入により、回路構成の大規模化及び消費電力の増大が懸念される。
【0011】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであって、本開示の目的は、発振信号のデューティ比を簡易な構成で調整することが可能なRC型の発振回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示のある局面によれば、発振回路が提供される。発振回路は、第1論理反転回路を各々が経由する様に構成された複数の信号経路と、選択部と、少なくとも1個の第2論理反転回路と、帰還抵抗と、帰還容量とを備える。第1論理反転回路は、入力ノードの電圧と反転しきい値電圧との比較結果に従って第1論理レベル又は第2論理レベルに設定される出力信号を生成する第1論理反転回路を各々が経由する様に構成される。選択部は、複数の信号経路のうちの1つの信号経路を選択して、出力信号を第1ノードへ伝達する。少なくとも1個の第2論理反転回路は、第2ノードと第1ノードとの間に直列接続される。帰還抵抗は、第2論理反転回路のいずれかの入力側又は出力側である第3ノードと、入力ノードとの間に接続される。帰還容量は、第4ノードと、入力ノードとの間に接続される。第4のノードは、第2論理反転回路のいずれかの入力側又は出力側であり、かつ、第3ノードとは異なる。複数の信号経路は、反転しきい値電圧、及び、出力信号のエッジ伝達遅延差の少なくとも一方が互いに異なる様に形成される。エッジ伝達遅延差は、第1論理レベルから第2論理レベルへの第1遷移の際に生じる第1遅延時間と、第2論理レベルから第1論理レベルへの第2遷移の際に生じる第2遅延時間との差分に相当する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、第1論理反転回路の特性が製造ばらつきによって変動しても複数の信号経路の選択によって、第2論理反転回路から出力される発振信号のデューティ比を所望の値とすることができるので、発振信号のデューティ比を簡易な構成で調整可能なRC型の発振回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態に係る発振回路の基本的な構成を説明するブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る発振回路の構成例を説明する回路図である。
【
図3】各インバータの構成を説明する回路図である。
【
図5】
図4に示された発振回路の動作波形図である。
【
図6】実施の形態1に係る発振回路における抵抗制御部の動作を説明する図表である。
【
図7】初段インバータの反転しきい値電圧と発振信号のデューティ比との関係を説明する動作波形図である。
【
図8】実施の形態1に係る発振回路における選択部の動作を説明する図表である。
【
図9】実施の形態1に係る発振回路におけるデューティ比調整のための制御処理のフローチャートである。
【
図10】実施の形態2に係る発振回路の構成例を説明する回路図である。
【
図11】ダミースイッチの動作を説明するための概念図である。
【
図12】実施の形態2の変形例1に係る発振回路の構成例を説明する回路図である。
【
図13】実施の形態2の変形例1に係る発振回路でのデューティ調整を説明する動作波形図である。
【
図14】実施の形態2の変形例2に係る発振回路の構成例を説明する回路図である。
【
図15】実施の形態3に係る発振回路の構成例を説明する回路図である。
【
図16】
図15に示された各クロックドインバータの構成を説明する回路図である。
【
図17】実施の形態3の変形例に係る発振回路の構成例を説明する回路図である。
【
図18】
図17に示されたクロックドインバータの構成を説明する回路図である。
【
図19】実施の形態3の変形例に係る発振回路におけるデューティ比調整のための制御信号の設定例を説明する図表である。
【
図20】実施の形態4に係る発振回路の構成例を説明する回路図である。
【
図22】実施の形態4の変形例1に係る発振回路の構成例を説明する回路図である。
【
図23】実施の形態4の変形例2に係る発振回路の構成例を説明する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る発振回路100の基本的な構成を説明するブロック図である。
【0017】
図1を参照して、発振回路100は、第1論理回路10と、選択部20と、第2論理回路30と、帰還抵抗40と、抵抗制御部45と、帰還容量50と、制御回路90とを備える。
【0018】
第1論理回路10は、1個の論理反転回路(代表的には、インバータ)で構成されて、入力ノードNaの電圧の反転論理に相当する出力電圧を生成する。第2論理回路30は、ノードNb及びノードNdの間に直列接続された少なくとも1個の論理反転回路(代表的には、インバータ)によって構成される。これにより、第2論理回路30は、ノードNbの電圧と同相又は逆相の論理レベルのパルス信号を、発振信号Voscとして生成する。
【0019】
尚、本実施の形態では、各論理反転回路がインバータで構成される例を説明するので、論理反転回路を単にインバータとも称し、特に、第1論理回路10を構成するインバータについては、初段インバータとも称する。
【0020】
本実施の形態では、入力ノードNa及びノードNbの間には、第1論理回路10を含む信号経路IPTが、複数個並列に設けられる。以下では、当該信号経路を「初段インバータ経路IPT」とも称する。
図1では、M個(M:2以上の整数)の初段インバータ経路IPT1~IPTMが並列に設けられる。
【0021】
尚、以下の説明で明らかになる様に、初段インバータ経路IPT1~IPTMは、反転しきい値電圧がそれぞれ異なる初段インバータが含まれる信号経路を並列配置することで構成されてもよく、共通の初段インバータの出力を分岐することで構成されてもよい。
【0022】
後述する様に、複数個の初段インバータ経路IPTは、当該経路に含まれる初段インバータの反転しきい値電圧、及び、初段インバータの出力信号のエッジ伝達遅延特性の少なくとも一方が互いに異なる様に構成されている。このエッジ伝達遅延特性については、実施の形態2の変形例で詳細に説明する。
【0023】
選択部20は、制御信号CNT1に従って、初段インバータ経路IPT1~IPTMのうちの1個を選択して、初段インバータの出力信号をノードNbへ伝達する。これにより、選択された初段インバータ経路に含まれる1個のインバータと、第2論理回路30に含まれる少なくとも1個のインバータとによる複数段のインバータが直列接続される。
【0024】
帰還抵抗40及び帰還容量50は、第2論理回路30と入力ノードNaとの間に、複数段のインバータからの信号帰還経路をそれぞれ形成する様に接続される。これにより、帰還抵抗40(抵抗値Roc)及び帰還容量50(容量値Coc)による信号遅延を伴う、複数段のインバータによるパルス信号の循環ループが形成されることで、RC型発振回路が構成される。
【0025】
発振信号Voscの周波数(発振周波数)は、帰還容量50の容量値Coc及び帰還抵抗40の抵抗値Rocの積(RC時定数)に依存して変化するので、発振回路100では、制御信号CNT2に基づく抵抗値Rocの可変制御によって、発振周波数を調整することができる。
【0026】
更に、後程詳細に説明する様に、発振回路100は、制御信号CNT1に基づく、初段インバータ経路IPT1~IPTMの選択制御によって、発振信号のデューティ比を調整することができる。制御回路90は、発振回路100の外部からの指示に従って、或いは、発振信号Voscの周波数及びデューティ比の実績値に従って、制御信号CNT1,CNT2を生成する。尚、発振信号Voscの周波数及びデューティ比の実績値について、発振回路100の外部から測定結果が与えられてもよい。又、制御回路90の機能は、発振回路100の外部に設けられてもよい。即ち、制御信号CNT1,CNT2は、発振回路100の外部で生成されて、選択部20及び抵抗制御部45に入力されてもよい。
【0027】
次に、発振回路の実施の形態1に係る具体的な構成例を説明する。
図2には、実施の形態1に係る発振回路100aの構成例を説明する回路図が示される。
【0028】
図2に示される様に、発振回路100aでは、
図1におけるM=3であり、第1論理回路10は、入力ノードNaに対して並列接続される、インバータINV11~INV13を有する。又、第2論理回路30は、直列接続された2個のインバータINV2及びINV3を有する。インバータINV11~INV13の各々は、「第1論理反転回路」の一実施例に対応し、インバータINV2及びINV3の各々は、「第2論理反転回路」の一実施例に対応する。又、初段インバータ経路IPT1~IPT3は、「複数の信号経路」の一実施例に対応する。
【0029】
図3は、各インバータの構成を説明する回路図である。
図3には、第1論理回路10及び第2論理回路30を構成する論理反転回路の代表例として示されるインバータINV11~INV13、INV2、及び、INV3を総称するインバータINVの回路構成が示される。
【0030】
図3に示される様に、インバータINVは、電源ラインPLと接地ラインNLの間に直列接続された、P型トランジスタMP0及びN型トランジスタMN0を有する。電源ラインPLは、Hレベルに相当する電源電圧VDDを供給し、接地ラインNLはLレベルに相当する接地電圧GNDを供給する。本実施の形態において、各トランジスタは、電界効果トランジスタ、例えば、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタによって構成することができる。
【0031】
P型トランジスタMP0は、ゲート幅Wp及びゲート長Lpを有し、N型トランジスタMN0は、ゲート幅Wn及びゲート長Lnを有するものとする。P型トランジスタMP0及びN型トランジスタMN0のゲートには、ゲート容量及び配線容量を含む寄生容量Cpp及びCpnがそれぞれ存在するので、ゲート電圧は、当該寄生容量Cpp,Cpnの充放電を伴って変化する。
【0032】
P型トランジスタMP0及びN型トランジスタMN0のゲートには、共通の入力電圧Vinが入力される。例えば、初段インバータでは、P型トランジスタMP0及びN型トランジスタMN0のゲートは、入力ノードNaと共通接続される。
【0033】
P型トランジスタMP0及びN型トランジスタMN0のドレイン同士の接続点に相当する出力ノードNoには、出力電圧Voutが生成される。インバータINVは、反転しきい値電圧Vinvを基準とした入力電圧Vinの論理レベルを反転して、出力電圧Voutを設定する。具体的には、Vin<Vinvのときには、P型トランジスタMP0のオンによりVout=Hレベルに設定する一方で、Vin≧Vinvのときには、N型トランジスタMN0のオンによりVout=Lレベルに設定する。
【0034】
本実施の形態では、Lレベル及び接地電圧GNDは「第1論理レベル」及び「第1電圧」の一実施例であり、Hレベル及び電源電圧VDDは「第2論理レベル」及び「第2電圧」の一実施例である。従って、接地ラインNLは「第1配線」の一実施例に相当し、電源ラインPLは「第2配線」の一実施例に相当する。又、インバータINVにおいて、P型トランジスタMP0は「P型電界効果トランジスタ」に対応し、N型トランジスタMN0は「N型電界効果トランジスタ」に対応する。
【0035】
ここで、N型トランジスタMN0のしきい電圧Vtn及び移動度μnと、P型トランジスタMP0のしきい電圧Vtp及び移動度μpを更に用いると、インバータINVの反転しきい値電圧Vinvは、概略的には、下記の式(1)及び(2)によって示されることが公知である。
【0036】
Vinv=(VDD-Vtp+Vtn・K)/(1+K) …(1)
K=√(Kn/Kp) …(2)
但し、式(2)中において、Kn=μn・(Wn/Ln)、Kp=μp・(Wp/Lp)である。
【0037】
従って、インバータINVの反転しきい値電圧Vinvは、P型トランジスタMP0のトランジスタサイズ(Wp/Lp)及びN型トランジスタMN0のトランジスタサイズ(Wn/Ln)の比を変えることで異なる値に作り分け可能であることが理解される。即ち、
図2中のインバータINV11~INV13は、上述したトランジスタサイズ(Wn/Ln)と(Wp/Lp)との比が異なる値を有する様に設計されており、この結果、式(2)のパラメータ値Kが互いに異なる。これにより、インバータINV11~INV13は、互いに異なる反転しきい値電圧Vinvを有する様に構成される。
【0038】
尚、本明細書では、第1論理回路10及び第2論理回路30を構成する各論理反転回路をインバータとして説明するが、
図3に示されたインバータINVと同様に、入力電圧Vin及び出力電圧Voutの間の論理反転動作が実現可能であれば、
図3に示されたインバータINV以外、例えば、一部の入力端子の電圧が固定されたNANDゲート又はNORゲート等を用いて、第1論理回路10及び第2論理回路30を構成することも可能である。NANDゲート又はNORゲートを用いる場合には、入力電圧Vinが入力されない上記一部の入力端子にイネーブル信号を入力することも可能である。ここで、イネーブル信号とは、ある機能の有効化及び無効化を制御する信号であり、イネーブル信号のオフ時には、当該機能が停止される。発振回路100aに対しては、上記イネーブル信号のオフ時には、インバータの出力がLレベル又はHレベルに固定されることで、発振が停止されて、発振信号Voscも一定の論理レベルに固定されることになる。
【0039】
再び
図2を参照して、インバータINV11~INV13の入力電圧Vin(
図2)は共通であり、入力ノードNaの電圧VAである。インバータINV11~INV13は、それぞれ異なる反転しきい値電圧Vinvを有しており、それぞれの出力電圧Vout(
図2)は、電圧V1~V3で示される。
【0040】
再び
図2を参照して、選択部20は、入力ノードNaと、インバータINV2の入力ノードに相当するノードNbとの間に、インバータINV11~INV13とそれぞれ直列に配置されたスイッチ回路ISW1~ISW3を有する。スイッチ回路ISW1~ISW3の各々は、P型トランジスタ及びN型トランジスタの少なくとも一方によるトランスファゲートによって構成することができる。
【0041】
これにより、入力ノードNaとノードNbとの間には、3個(M=3)の初段インバータ経路IPT1~IPT3が並列に接続される。
図2では、初段インバータ経路IPT1~IPT3は、反転しきい値電圧が異なるインバータINV11~INV13をそれぞれ含んで構成されている。
【0042】
例えば、スイッチ回路ISW1は、ゲートに制御信号VISW1を受けるN型トランジスタMN4と、ゲートに制御信号VISW1B(VISW1の反転信号)を受けるP型トランジスタMP4との並列接続によって構成することができる。VISW1=Hレベル(VISW1B=Lレベル)に設定することでスイッチ回路ISW1はオンされる。反対に、VISW1=Lレベル(VISW1B=Hレベル)に設定することでスイッチ回路ISW1はオフされる。
【0043】
同様に、スイッチ回路ISW2は、ゲートに制御信号VISW2を受けるN型トランジスタMN5と、ゲートに制御信号VISW2B(VISW2の反転信号)を受けるP型トランジスタMP5との並列接続によって構成される。スイッチ回路ISW3は、ゲートに制御信号VISW3を受けるN型トランジスタMN6と、ゲートに制御信号VISW3B(VISW3の反転信号)を受けるP型トランジスタMP6との並列接続によって構成される。
【0044】
スイッチ回路ISW2及びISW3についても、制御信号VISW2(VISW2B)及びVISW3(VISW3B)によってオンオフがそれぞれ制御される。
図2に示された制御信号VISW1~VISW3(VISW1B~VISW3B)によって、
図1に示された、選択部20の制御信号CNT1が構成される。
【0045】
選択部20は、制御信号CNT1によって、スイッチ回路ISW1~ISW3の1個を選択的にオンする一方で、残りの2個をオフする様に制御される。これにより、複数の初段インバータ経路IPT1~IPT3のうちの1個が選択されて、共通の入力電圧VAに対して、反転しきい値電圧が異なるインバータINV11~INV13の出力電圧V1~V3のうちの1つが、選択的にノードNbに伝達される。ノードNbの電圧VBは、インバータINV2の入力電圧Vin(
図3)となる。
【0046】
インバータINV2及びINV3は、ノードNcを介して、ノードNb及びノードNdの間に直列接続される。インバータINV2は、インバータINV2の反転しきい値電圧を基準として、ノードNbの電圧VBの論理レベルを反転した電圧VCをノードNcに生成する。インバータINV3は、インバータINV3の反転しきい値電圧を基準として、ノードNcの電圧VCの論理レベルを反転した電圧を、発振信号VoscとしてノードNdに生成する。
【0047】
帰還容量50は、ノードNc及び入力ノードNaの間に接続されたキャパシタC1(容量値Coc)を含む。帰還抵抗40は、ノードNd及び入力ノードNaの間に接続されたI個(I:自然数)の抵抗素子を含む。
図2の例では、I=3であり、帰還抵抗40は、直列接続された抵抗素子R1~R3を有する。以下では、抵抗素子R1~R3の抵抗値についても、R1~R3でそれぞれ表記するものとする。帰還抵抗40の抵抗値Rocは、抵抗制御部45によって可変制御される。
【0048】
抵抗制御部45は、I個(I=3)の抵抗素子R1~R3のそれぞれと並列接続されたトランジスタスイッチMN1~MN3を有する。トランジスタスイッチMN1~MN3のゲートには、
図1中の制御信号CNT2を構成する制御信号VRSW1~VRSW3がそれぞれ入力される。
【0049】
トランジスタスイッチMN1~MN3の各々は、オン時には、並列接続された抵抗素子R1~R3のバイパス経路を形成する。従って、トランジスタスイッチMN1~MN3の全てをオフすると、帰還抵抗40の抵抗値Roc=R1+R2+R3となる一方で、トランジスタスイッチMN1~MN3のいずれかをオンすることで、抵抗値RocはR1+R2+R3から低下する。
【0050】
この様に、制御信号VRSW1~VRSW3によるトランジスタスイッチMN1~MN3のオンオフ制御によって、帰還抵抗40の抵抗値Rocを可変制御することができる。例えば、2の階乗に従って、R1=Ru、R2=2・Ru、R3=4・Ruに設定すると、3ビットの制御信号VRSW1~VRSW3によって、帰還抵抗40の抵抗値Rocを23=8段階に可変制御することができる。
【0051】
次に、発振回路の動作について詳細に説明する。
図4は、比較例に係る発振回路100♯の回路図である。
【0052】
図4に示された発振回路100♯は、
図2に示された発振回路100aにおいて、選択部20の省略を配置して、第1論理回路10が単一のインバータINV1によって構成されており、初段インバータの反転しきい値電圧Vinvが固定された回路構成を有する。逆に言うと、実施の形態1に係る発振回路100aは、発振回路100♯において、初段のインバータINV1の反転しきい値電圧VinvをM段階に切換可能な構成を有しているものである。
【0053】
発振回路100♯では、直列接続された複数のインバータINV1~INV3による複数段のインバータに対して、発振回路100aと同様に、ノードNc及び入力ノードNaの間に帰還容量50が接続されるとともに、ノードNd及び入力ノードNaの間に帰還抵抗40が接続される。即ち、帰還容量50は、偶数段直列接続されたインバータ(論理反転回路)が間に存在する2個のノードの間に接続されており、帰還抵抗40は、奇数段直列接続されたインバータ(論理反転回路)が間に存在する2個のノードの間に接続されている。発振回路100♯では、帰還容量50の容量値Cocと、帰還抵抗40の抵抗値Rocとの両方が固定値であるものとする。
【0054】
図5は、
図4に示された発振回路100♯の動作波形図である。
図5には、入力ノードNaの電圧VA、即ち、初段インバータ(INV1)の入力電圧VAと、ノードNdに生成される発振信号Vosc、即ち、最終段のインバータ(INV3)の出力電圧との波形が示される。
【0055】
図5に示される様に、時刻taでは、出力電圧である発振信号Vosc=Hレベルであるので、入力電圧VAは、帰還抵抗40の抵抗値Roc及び帰還容量50の容量値Cocの積で示されるRC時定数(Roc・Coc)による遅延を伴って、電源電圧VDDに向かって上昇している。
【0056】
時刻tbにおいて、入力電圧VAがインバータINV1の反転しきい値電圧Vinvに達すると、インバータINV1の出力(電圧VB)がHレベルからLレベルに変化するのに応じて、インバータINV13の出力である発振信号Voscは、Hレベル(VDD)からLレベル(GND)に変化する。このとき、帰還容量50の接続先であるノードNcの電圧VCは、Lレベル(GND)からHレベル(VDD)に変化するので、入力電圧VAは、容量結合によって、反転しきい値電圧VinvからVDD上昇する。これにより、時刻tbにおいて、VA=Vinv+VDDとなる。
【0057】
時刻tb以降では、発振信号Vosc=Lレベルであるので、電圧VAは、上記RC時定数(Roc・Coc)による遅延を伴って、GNDに向けて低下する。そして、時刻tcにおいて、入力電圧VAが反転しきい値電圧Vinvまで低下すると、インバータINV1の出力(電圧VB)がLレベルからHレベルに変化するのに応じて、インバータINV13の出力である発振信号Voscは、Lレベル(GND)からHレベル(VDD)に変化する。このとき、電圧VCはHレベル(VDD)からLレベル(GND)に変化するので、入力電圧VAは、容量結合によって反転しきい値電圧VinvからVDD低下する。これにより、時刻tbにおいて、VA=Vinv-VDDとなる。
【0058】
時刻tc以降では、時刻taと同様に、入力電圧VAは、上記RC時定数(Roc・Coc)による遅延を伴って上昇し、入力電圧VAが反転しきい値電圧Vinvまで上昇した時刻tdでは、時刻tbと同様の電圧変化が、入力電圧VA及び発振信号Voscに生じる。又、時刻td~te間での入力電圧VA及び発振信号Voscの挙動は、時刻tb~tc間と同様であり、時刻te以降の入力電圧VA及び発振信号Voscの挙動は、時刻tc以降と同様である。この様な複数のインバータ段での周期的な電圧変化によって発振が生じることで、Hレベル及びLレベル間の遷移が周期的に生じる発振信号Voscが生成される。
【0059】
発振信号VoscのHレベル期間長をT1、Lレベル期間長をT2とすると、非特許文献1にも示される様に、発振信号Voscの周期長である発振周期Toscは、下記の式(3)で示される。但し、式(3)において、RC=Roc・Cocである。又、式(3)中のVX及びVYは、式(4)及び式(5)でそれぞれ示される。
【0060】
Tosc=T1+T2=RC・(ln(VX)+ln(VY)) …(3)
VX=(VDD+Vinv)/Vinv …(4)
VY=(Vinv-2・VDD)/(Vinv-VDD) …(5)
式(3)~(5)から理解されるように、発振周波数foscの逆数である発振周期Toscは、電源電圧VDD、初段インバータの反転しきい値電圧Vinv、及び、時定数RCに依存して決まる。オンチップでの抵抗値及び容量値は、プロセスばらつき及び温度による変動を含むため、RC時定数が設計値からずれることによって、発振周波数が所望の値から外れる虞がある。
【0061】
図2に示された発振回路100aでは、帰還抵抗40の抵抗値Rocを、抵抗制御部45への制御信号CNT2(VRSW1~VRSW3)によって可変に調整することができる。これにより、式(3)中のRC=Roc・Cocを変化させることによって、発振周期Toscを所望の値に維持することが可能となる。
【0062】
図6は、実施の形態1に係る発振回路100aにおける抵抗制御部45の動作を説明する図表である。
図6には、
図2に例示した、I=3のときの抵抗制御部45の動作が示される。
【0063】
図6に示される様に、制御信号VRSW1~VRSW3の“0”(Lレベル)及び“1”(Hレベル)の組み合わせによって、帰還抵抗40の抵抗値Rocは、0~7・Ruまで、Ru刻みで8段階に調整可能である。
【0064】
例えば、Roc=4・Ruを基準値として、発振周波数が所望の値となる様に各回路定数を初期設定した場合には、(VRSW1,VRSW2,VRSW3)=(0,0,1)の状態で発振回路100aを動作させて発振周期Toscをモニタした結果に応じて、制御信号VRSW1~VRSW3を設定することで、発振周波数の調整が可能となる。
【0065】
具体的には、モニタされた発振周期Toscが設計値よりも長い場合、即ち、発振周波数foscが所望の値よりも低い場合には、帰還抵抗40の抵抗値Rocが4・Ruから低下する様に、制御信号VRSW1~VRSW3を決定することで、発振周波数foscを上昇することができる。
【0066】
反対に、モニタされた発振周期Toscが設計値よりも短い場合、即ち、発振周波数foscが所望の値よりも高い場合には、帰還抵抗40の抵抗値Rocが4・Ruから上昇する様に、制御信号VRSW1~VRSW3を決定することで、発振周波数foscを低下することができる。
【0067】
図2では、I=3の例を説明したが、Iの値は任意である。同様にして、帰還抵抗40を構成するI個の抵抗素子の抵抗値を2の階乗に従って設定することで、Iビットの制御信号によって抵抗値Rocを2
I段階に可変制御することができる。
【0068】
次に、初段インバータの反転しきい値電圧Vinvの影響による発振信号Voscのデューティ比の変動について説明する。以下に説明する様に、帰還抵抗40の抵抗値Rocの調整では、このデューティ比の変動には対応することができない。
【0069】
初段インバータの反転しきい値電圧Vinv=VDD/2とすると、上述の式(4),(5)において、VX=(VDD+Vinv)/Vinv=3,VY=(Vinv-2・VDD)・(Vinv-VDD)=3となる。従って、式(3)中において、T1/RCに相当するln(VX)と、T2/RCに相当するln(VY)との間には、ln(VX)=ln(VY)が成立する。又、Tosc=RC・2ln(3)≒2.2RCとなる。
【0070】
従って、反転しきい値電圧Vinv=VDD/2とすると、
図5に示される様に、T1=T2、即ち、発振信号Voscのデューティ比は50(%):50(%)となる。
【0071】
例えば、VDD=1.8(V)、Vtp=0.7(V)、Vtn=0.7(V)のときには、式(1)において、K=1とすれば、Vinv=VDD/2=0.9(V)とすることができる。K=1とするためには、式(2)より、初段インバータを構成するP型及びN型のトランジスタの間で、(Wp/Lp)及び(Wn/Ln)との比を、移動度μp及びμnの逆比に従って設定すればよい。μn=2μpと仮定すると、(Wp/Lp)=2・(Wn/Ln)とすることでK=1とすることができる。
【0072】
尚、本実施の形態では、(μn/μp)=2に固定して、トランジスタサイズの設計例を以下に適宜説明するが、実際の(μn/μp)の値は、プロセスパラメータに依存して変化し得る。従って、本実施の形態の説明において、μp及びμnの比を、実際のプロセスでの値に読み替えることにより、任意のプロセスパラメータに適合させて本実施の形態に係る発振回路を構成することが可能である。
【0073】
Vinv=VDD/2とすると、
図5に示される様に、発振信号Voscのデューティ比を理想的な状態、即ち、50(%):50(%)とすることができる。この状態から、反転しきい値電圧VinvがVDD/2からずれると、T1及びT2に時間差が発生して、デューティ比が50(%):50(%)から崩れることになる。
【0074】
図7には、初段インバータの反転しきい値電圧と発振信号のデューティ比との関係を説明する動作波形図として、Vinv=VDD/3のときの発振回路100♯の動作波形図が示される。
【0075】
Vinv=VDD/3のとき、上述の式(4),(5)において、VX=(VDD+Vinv)/Vinv=4,VY=(Vinv-2・VDD)・(Vinv-VDD)=2.5となる。従って、式(3)中において、T1/RCに相当するln(VX)と、T2/RCに相当するln(VY)は、ln(VX)=ln(4)、ln(VY)=ln(2.5)となる。又、Tosc=RC・(ln(4)+ln(2.5))≒2.302RCとなる。
【0076】
又、T1及びT2の比は、ln(4):ln(2.5)≒1.386:0.916となる。このとき、
図7に示される様に、発振信号Voscのデューティ比は、約60(%):40(%)となって、50(%):50(%)から外れてしまう。例えば、発振信号Voscをクロック信号として使用するシステムにおいて、当該クロック信号の立上がりエッジ及び立下りエッジの両方をトリガとして回路群を動作させるアプリケーションでは、デューティ比が崩れることによって、回路動作に不具合が発生する虞がある。
【0077】
この点に対して、実施の形態1に係る発振回路100aでは、M個の初段インバータ経路IPTの選択によって、反転しきい値電圧Vinvが異なるインバータINV11~INV13のうちの1個を初段インバータとすることで、反転しきい値電圧Vinvを通じたデューティ比の調整を図るものである。
【0078】
例えば、M=3のときには、式(2)のパラメータ値Kについて、K=1,√8,√(1/8)にそれぞれ設計されたインバータINV11~INV13を設けることができる。これにより、初段インバータを構成するP型及びM型トランジスタのしきい値電圧Vtp,Vtnが、上述の設計値0.7(V)に対して、プロセスばらつきによって0.6(V)~0.8(V)の範囲で変動した場合にも、初段インバータの反転しきい値電圧VinvをVDD/2近傍に調整することが可能となる。
【0079】
まず、Vtp=0.8(V)、Vtn=0.6(V)のプロセスばらつきが発生した場合には、上述の式(1)においてK=1のときには、Vinv=0.8(V)≒0.444VDDとなってしまう。これにより、
図7と同様に、T1がT2よりも長くなる態様で、デューティ比のずれが発生することが懸念される。具体的には、式(3)~(5)にVinv=0.444VDDを代入すると、T1:T2=53.4(%):46.6(%)が得られる。即ち、Lレベル期間のデューティ比が上昇する。
【0080】
これに対して、初段インバータのP型及びN型のトランジスタにおいて、(Wp/Lp)及び(Wn/Ln)の比を、式(2)において、K=√(1/8)となる様に設計することができる。これにより、式(1)において、Vtp=0.8(V)、Vtn=0.6(V)の場合にも、VDD=1.8(V)に対して、Vinv≒0.9(V)=VDD/2とすることができる。
【0081】
反対に、Vtp=0.6(V)、Vtn=0.8(V)のプロセスばらつきが発生した場合には、上述の式(1)においてK=1のときには、Vinv=1.0(V)≒0.556VDDとなってしまう。これにより、
図7とは反対に、T2がT1よりも長くなる態様で、デューティ比のずれが発生することが懸念される。具体的には、式(3)~(5)にVinv=0.556VDDを代入すると、T1:T2=46.6(%):53.4(%)が得られる。即ち、Lレベル期間のデューティ比が低下する。
【0082】
これに対して、初段インバータのP型及びN型のトランジスタにおいて、(Wp/Lp)及び(Wn/Ln)の比を、式(2)において、K=√8とすると、式(1)において、Vtp=0.6(V)、Vtn=0.8(V)の場合にも、VDD=1.8(V)に対して、Vinv≒0.9(V)=VDD/2とすることができる。
【0083】
一例として、K=1、K=√8、K=√(1/8)となる様に、第1論理回路10のインバータINV11~INV13は、下位の様に設計することができる。
【0084】
基準となるインバータINV11については、Wn/Ln=Wmin/Lmin、Wp/Lp=2×Wmin/Lminとすることで、式(2)のK=1となる初段インバータを構成することができる。
【0085】
又、インバータINV12については、Wn/Ln=Wmin/Lmin、Wp/Lp=16×Wmin/Lminとすることで、式(2)において、K=√(1/8)となる初段インバータを構成することができる。更に、インバータINV13については、Wn/Ln=4×Wmin/Lmin、Wp/Lp=Wmin/Lminとすることで、式(2)において、K=√8となる初段インバータを構成することができる。
【0086】
図8に示される様に、選択部20は、
図2に示された制御信号VISW1~VISW3に従って、初段インバータ経路IPT1~IPT3が異なるパターンPT1~PT3を選択する。これにより、パラメータ値K=1,√(1/8),√8に対応して反転しきい値電圧Vinvがそれぞれ異なるインバータINV11~INV13を選択的に初段インバータとすることができる。
【0087】
具体的には、パターンPT1では、(VISW1,VISW2,VISW3)=(1,0,0)とすることで、K=1のインバータINV11を初段インバータとして用いることができる。これに対して、パターンPT2では、(VISW1,VISW2,VISW3)=(0,1,0)とすることで、K=√(1/8)のインバータINV12が初段インバータとして用いられる。パターンPT2の適用により、パターンPT1と比較してHレベル期間の比率を低下することができる。
【0088】
パターンPT3では、(VISW1,VISW2,VISW3)=(0,0,1)とすることで、K=√8のインバータINV13が初段インバータとして用いられる。パターンPT3の適用により、パターンPT1と比較してHレベル期間の比率を上昇することができる。
【0089】
図9には、実施の形態1に係る発振回路におけるデューティ比調整のための制御処理のフローチャートが示される。
【0090】
図9を参照して、制御回路90は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)S110により、
図8のパターンPT1で発振回路100aを動作させたときの発振信号Voscのデューティ比DT1を取得する。デューティ比DT1は、発振周期に対するLレベル期間の比、即ち、T1/(T1+T2)を示すものとする。
【0091】
上述の様に、デューティ比DT1の測定は、制御回路90で実行されても良く、発振回路100aの外部の発振信号Voscをモニタすることで実行されてもよい。この場合には、発振回路100aの外部で得られたデューティ比DT1の測定値が、制御回路90に入力される。
【0092】
制御回路90は、S120では、S110で取得されたデューティ比DT1が、50(%)を含む基準範囲内であるか否かを判定する。基準範囲は、例えば、50±DTr(%)に設定することができる。46.6(%)~53.4(%)の範囲の変動を想定した上述の例では、DTr=2(%)程度に設定することができる。
【0093】
制御回路90は、デューティ比DT1が基準範囲内であるとき(S120のNO判定時)には、S140に処理を進めて、パターンPT1を適用して発振回路100aを動作させる。
【0094】
これに対して、デューティ比DT1が基準範囲外であるとき(S120のYES判定時)には、制御回路90は、S130により、デューティ比DT1が50(%)より小さいか否かを判定する。
【0095】
制御回路90は、DT1>50(%)のときには(S130のYES判定時)には、S150に処理を進める。S150では、デューティ比を低下させるために、初段インバータのパラメータ値KがパターンPT1(K=1)よりも小さくなる、パターンPT2を適用して、発振回路100aが動作する。
【0096】
反対に、制御回路90は、DT1<50(%)のときには(S130のNO判定時)には、S160に処理を進める。S150では、デューティ比を上昇させるために、初段インバータのパラメータ値KがパターンPT1(K=1)よりも大きくなる、パターンPT3を適用して、発振回路100aが動作する。
【0097】
この様に実施の形態1に係る発振回路100aでは、反転しきい値電圧Vinvが異なる複数個のインバータを選択して初段インバータを構成することにより、簡易な構成によってRC型発振回路の発振信号のデューティ比を調整することができる。
【0098】
尚、実施の形態1では、インバータINV11~INV13を構成するP型及びN型のトランジスタのトランジスタサイズ(Wp/Lp),(Wn/Ln)の設計によって、パラメータ値Kを通じて反転しきい値電圧Vinvを異なるものとしている。
【0099】
このため、
図2において、インバータINV11~INV13とそれぞれ直列に接続されるスイッチ回路ISW1~ISW3を構成する、N型トランジスタMN4~MN6及びP型トランジスタMP4~MP6のトランジスタサイズについても、インバータINV11~INV13と協調的に設計することが好ましい。
【0100】
ここで、各インバータINV11~INV13の各々、式(2)に示された(Kn/Kp)の逆数(Kp/Kn)をインバータサイズKinvと定義する。インバータINV11、INV12及びINV13の間において、インバータサイズKinvの比は、1:8:(1/8)である。
【0101】
スイッチ回路ISW1~ISW3の各々において、N型トランジスタ(MN4~MN6)のトランジスタサイズ(Wn/Ln)と、及びP型トランジスタ(MP4~MP6)のトランジスタサイズ(Wp/Lp)との比は同等に設計される。例えば、式(2)で説明した移動度μp及びμnの逆比に従って、(Wp/Lp)=2×(Wn/Ln)とすることができる。
【0102】
一方で、スイッチ回路ISW1~ISW3の間でのトランジスタサイズの比については、直列接続されるインバータINV11~INV13のインバータサイズKinvと同等に、1:8:(1/8)とすることが好ましい。
【0103】
例えば、インバータINV13と直列接続されるスイッチ回路ISW3では、MN6のトランジスタサイズをWmin/Lmin(=Wnmin/Lmin)とする一方で、MP6のトランジスタサイズを2×Wmin/Lmin(=Wpmin/Lmin)とすることができる。即ち、Wpmin=2×Wminである。
【0104】
一方で、インバータINV11と直列接続されるスイッチ回路ISW1では、MN4のトランジスタサイズを8×Wmin/Lmin(=8×Wnmin/Lmin)とする一方で、MP4のトランジスタサイズを16×Wmin/Lmin(=8×Wpmin/Lmin)とすることで、スイッチ回路ISW1とISW3との間でトランジスタサイズの比を、インバータINV11及びINV13のインバータサイズの比である、1:(1/8)=8:1と揃えることができる。
【0105】
更に、インバータINV12と直列接続されるスイッチ回路ISW2では、MN5のトランジスタサイズを64×Wmin/Lmin(=64×Wnmin/Lmin)とする一方で、MP5のトランジスタサイズを128×Wmin/Lmin(=64×Wpmin/Lmin)とすることで、スイッチ回路ISW1とISW2との間でトランジスタサイズの比を、インバータINV11及びINV12のインバータサイズの比1:8と揃えることができる。
【0106】
又、第2論理回路30を構成するインバータINV2及びINV3についても、P型トランジスタMP0(
図3)のトランジスタサイズ(Wp/Lp)及びN型トランジスタMN0(
図3)のトランジスタサイズ(Wn/Ln)の間の比は、上述した移動度μp及びμnの逆比に従って設定される。インバータINV2では、第1論理回路10を構成するインバータINV11~INV13よりも大きい駆動力を有する様に、P型トランジスタMP0及びN型トランジスタMN0のトランジスタサイズを設計することが好ましい。
【0107】
更に、インバータINV3は、帰還抵抗40及び帰還容量50、並びに、発振信号Voscの供給先を負荷として発振信号Voscを生成する必要があるので、インバータINV2よりも更に大きい駆動力を有する様に、P型トランジスタMP0及びN型トランジスタMN0のトランジスタサイズを設計することが必要である。
【0108】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2に係る発振回路100bの構成例を説明する回路図である。
【0109】
図10に示される様に、発振回路100bは、実施の形態1に係る発振回路100a(
図2)と比較して、遅延調整回路25を更に備える点で異なる。
【0110】
遅延調整回路25は、各初段インバータ経路IPT1~IPT3において、選択部20を構成するスイッチ回路ISW1~ISW3とそれぞれ直列接続されたダミースイッチ回路DSW1~DSW3を含む。ダミースイッチ回路DSW11~DSW13の各々は、並列接続されたP型トランジスタ及びN型トランジスタを有する。当該P型トランジスタ及びN型トランジスタの各々は、ソース及びドレイン間が接続される。ダミースイッチ回路DSW11~DSW13は、初段インバータ経路IPT1~IPT3のそれぞれに、信号遅延のための調整容量を付加するために配置される。
【0111】
ダミースイッチ回路DSW1は、並列接続された、N型トランジスタMN4D及びP型トランジスタMP4Dを有する。N型トランジスタMN4Dのゲートには、ダミースイッチ回路DSW1と直列接続されたスイッチ回路ISW1のP型トランジスタMP4と共通の制御信号VISW1Bが入力される。同様に、P型トランジスタMP4Dのゲートには、スイッチ回路ISW1のN型トランジスタMN4と共通の制御信号VISW1が入力される。即ち、ダミースイッチ回路DSW1では、スイッチ回路ISW1と共通の制御信号VISW1,VISW1Bが、スイッチ回路ISW1とは反対導電型のトランジスタのゲートに入力される。これにより、ダミースイッチ回路DSW1は、スイッチ回路ISW1とは相補にオンオフ動作する。
【0112】
同様に、スイッチ回路ISW2と直列接続されるダミースイッチ回路DSW2は、並列接続された、N型トランジスタMN5D及びP型トランジスタMP5Dを有する。N型トランジスタMN5D及びP型トランジスタMP5Dのゲートには、スイッチ回路ISW2と共通の制御信号VISW2,VISW2Bが、スイッチ回路ISW2とは反対導電型のトランジスタのゲートに入力される。即ち、ダミースイッチ回路DSW2は、スイッチ回路ISW2とは相補にオンオフ動作する。
【0113】
又、スイッチ回路ISW3と直列接続されるダミースイッチ回路DSW3は、並列接続された、N型トランジスタMN6D及びP型トランジスタMP6Dを有する。N型トランジスタMN6D及びP型トランジスタMP6Dのゲートには、スイッチ回路ISW3と共通の制御信号VISW3,VISW3Bが、スイッチ回路ISW3とは反対導電型のトランジスタのゲートに入力される。即ち、ダミースイッチ回路DSW3は、スイッチ回路ISW3とは相補にオンオフ動作する。
【0114】
従って、ダミースイッチ回路DSW1~DSW3の各々において、直列接続されたスイッチ(ISW1~ISW3)のオン時には、N型トランジスタMND(MN4D~MN6Dを包括的に表記するもの)のゲートにはLレベル(GND)が入力される一方で、P型トランジスタMPD(MP4D~MP6Dを包括的に表記するもの)のゲートにはHレベル(VDD)が入力される。
【0115】
図11は、ダミースイッチの動作を説明するための概念図である。
図11に示されるダミースイッチ回路DSWは、
図10に示されたダミースイッチ回路DSW1~DSW3を包括的に表記するものであり、並列接続されたN型トランジスタMND及びP型トランジスタMPDを有する。
【0116】
ここで、ダミースイッチ回路DSWにおいて、N型トランジスタMNDのゲートにLレベル(GND)が入力され、かつ、P型トランジスタMPDのゲートにHレベル(VDD)が入力された状態で、図中左側、即ち、N型トランジスタMNDのドレイン及びP型トランジスタMPDのソースにパルス信号Splが入力されるときの動作を考える。
【0117】
パルス信号Splが、LレベルからHレベルに遷移する立上がりエッジでは、N型トランジスタMNDのゲート容量Cgdn(ゲートドレイン間の寄生容量)が充電されると、N型トランジスタMNDのソース電圧が上昇する。これにより、パルス信号Splの立上がりエッジが、ダミースイッチ回路DSWによって伝達される。
【0118】
これに対して、パルス信号Splが、HレベルからLレベルに遷移する立下りエッジでは、P型トランジスタMPDのゲート容量Cgsp(ゲートソース間の寄生容量)が充電されると、P型トランジスタMPDのドレイン電圧が低下する。これにより、パルス信号Splの立下がりエッジが、ダミースイッチ回路DSWによって伝達される。
【0119】
従って、ダミースイッチ回路DSWは、パルス信号Splの通過時に、立上がりエッジに対してはゲート容量Cgdnに依存した第1遅延時間を付与するとともに、立下がりエッジに対してはゲート容量Cgspに依存した第2遅延時間を付与することができる。本実施の形態では、立上がりエッジでのLレベルからHレベルへの遷移は「第1遷移」に対応し、立下りエッジでのHレベルからLレベルへの遷移は「第2遷移」に対応する。
【0120】
遅延調整回路25(
図10)に含まれるダミースイッチ回路DSW1~DSW3の各々では、上記第1遅延時間及び第2遅延時間が同等になる様に、ゲート容量Cgsp,Cgdnが設計される。この場合には、基本的に、ダミースイッチ回路DSW1~DSW3で付与された遅延時間は、後段のインバータINV2,INV3(第2論理回路30)において、デューティ比に影響を及ぼすことがない。即ち、遅延調整回路25は、「第1遅延調整回路」の一実施例に対応する。
【0121】
一方で、ダミースイッチ回路DSW1~DSW3の間でP型トランジスタMPD及びN型トランジスタMNDのトランジスタサイズは、初段インバータ経路IPT1~IPT3の間で異なる遅延時間が付与される様に設計される。具体的には、初段インバータ経路IPT1~IPT3の間で、スイッチ回路ISW1~ISW3とダミースイッチ回路DSW1~DSW3とのそれぞれによって付与される遅延時間の合計が均等となる様に、ダミースイッチ回路DSW1~DSW3によって付与される遅延時間が設定される。
【0122】
例えば、上述の様に、インバータINV11~INV13のインバータサイズの比に対応させて、スイッチ回路ISW1~ISW3のトランジスタサイズの間に、1:8:(1/8)の比を設けた場合には、ダミースイッチ回路DSW1~DSW3のトランジスタサイズの間には、その逆比である、1:(1/8):8を付与することができる。
【0123】
この場合には、スイッチ回路ISW2と直列接続されるダミースイッチ回路DSW2を構成するN型トランジスタMN5D及びP型トランジスタMP5Dのそれぞれのトランジスタサイズを、実施の形態1で説明した、Wnmin/Lmin及びWpmin/Lminとすることができる。
【0124】
更に、スイッチ回路ISW1と直列接続されるダミースイッチ回路DSW1を構成するN型トランジスタMN4D及びP型トランジスタMP4Dのトランジスタサイズを、それぞれ8×Wnmin/Lmin及び8×Wpmin/Lminとすることができる。これにより、ダミースイッチ回路DSW1とDSW2との間のトランジスタサイズの比を、スイッチ回路ISW1及びISW2の間のトランジスタサイズの比(1:8)の逆比(1:(1/8)=8:1とすることができる。
【0125】
同様に、スイッチ回路ISW3と直列接続されるダミースイッチ回路DSW3を構成するN型トランジスタMN6D及びP型トランジスタMP6Dのトランジスタサイズを、それぞれ64×Wnmin/Lmin及び64×Wpmin/Lminとすることができる。これにより、ダミースイッチ回路DSW1とDSW3との間のトランジスタサイズの比を、スイッチ回路ISW1及びISW3の間のトランジスタサイズの比(1:(1/8))の逆比(1:8)とすることができる。
【0126】
これにより、発振信号Voscのデューティ比調整のために選択される初段インバータ経路IPT1~IPT3の間で、インバータINV11~INV13の出力信号経路に対して付与される遅延容量の差を抑制することができる。言い換えると、スイッチ回路ISW1~ISW3のトランジスタサイズの差が大きい場合には、実施の形態1に係る発振回路100aでは、初段インバータ経路IPT1~IPT3のいずれが選択されるかに応じて、発振信号Voscの周波数が異なる虞がある。
【0127】
これに対して、実施の形態2に係る発振回路100bでは、ダミースイッチ回路DSW1~DSW3を含む遅延調整回路25の配置によって、発振信号Voscのデューティ比調整のための初段インバータ経路IPT1~IPT3の選択に依存した発振周波数の変動を抑制することができる。この結果、実施の形態1と同等の効果に加えて、発振周波数の設定精度を高めることができる。
【0128】
尚、初段インバータ経路IPT1~IPT3に対しては、直列接続されたスイッチ及びキャパシタを用いて、当該スイッチのオンオフによって容量を付加する構成を採用することも可能である。しかしながら、この様な構成では、スイッチ及びキャパシタの合成容量が選択された初段インバータ経路に付与されるため、線形性の確保が困難となる。これに対して、ダミースイッチ回路DSWを用いることで、初段インバータ経路IPT1~IPT3に付加される遅延容量の容量値の調整が容易となる。
【0129】
実施の形態2の変形例1.
実施の形態2では、各ダミースイッチ回路DSWによる第1遅延時間(立上がりエッジ)及び第2遅延時間(立下りエッジ)を同等とする例を説明したが、両者に意図的な差を設けることにより、ダミースイッチ回路DSWをデューティ比調整に用いることも可能である。
【0130】
再び
図11を参照して、ダミースイッチ回路DSWを構成するP型トランジスタMPD及びN型トランジスタMNDのゲート容量を調整することで、第1及び第2遅延時間に意図的に差異を設けることができる。
【0131】
例えば、トランジスタのゲート容量はゲート表面積に比例して変化する特性があるので、P型トランジスタMPD及びN型トランジスタMNDのトランジスタサイズ(Wp/Lp)及び(Wn/Ln)の設計により、立上がりエッジの第1遅延時間及び立下りエッジの第2遅延時間の間に意図的な差分が生じる様に、ゲート容量Cgsp及びCgdnを調整することができる。
【0132】
図12は、実施の形態2の変形例1に係る発振回路100cの構成例を説明する回路図である。
【0133】
図12を参照して、発振回路100cは、実施の形態1に係る発振回路100a(
図2)と比較して、第1論理回路10が1個のインバータINV1で構成される点、及び、遅延調整回路26を更に備える点で異なる。
【0134】
インバータINV1の出力信号は、複数個(M=3)の初段インバータ経路IPT1~IPT3に分岐される。発振回路100cでは、初段インバータとなるインバータINV1は、初段インバータ経路IPT1~IPT3で共通であり、遅延調整回路26によってデューティ比が調整される。例えば、初段インバータであるインバータINV1のP型トランジスタMP0及びN型トランジスタMN0については、最小のトランジスタサイズ(上述した、Wpmin/Lmin、及び、Wnmin/Lmin)に設計することができる。
【0135】
選択部20は、
図2と同様に、初段インバータ経路IPT1~IPT3にそれぞれ配置されたスイッチ回路ISW1~ISW3を含む。スイッチ回路ISW1~ISW3の構成は、
図2と同様であるので繰り返さない。
【0136】
遅延調整回路26は、各初段インバータ経路IPT1~IPT3において、選択部20を構成するスイッチ回路ISW1~ISW3とそれぞれ直列接続されたダミースイッチ回路DDSW1~DDSW3を含む。ダミースイッチ回路DDSW1~DDSW3は、遅延調整回路25のダミースイッチ回路DSW1~DSW3(
図10)と同様に、N型トランジスタMN4D~MN6D及びP型トランジスタMP4D~MP6Dによって構成されており、
図11に示された回路構成を有する。
【0137】
遅延調整回路26のダミースイッチ回路DDSW1~DDSW3の少なくとも一部では、第1遅延時間(立上がりエッジ)及び第2遅延時間(立下りエッジ)に差が生じる様に、ゲート容量Cgdn(MND)及びゲート容量Cgsp(MPD)が設計される。この点で、遅延調整回路26(ダミースイッチ回路DDSW1~DDSW3)は、遅延調整回路25(ダミースイッチ回路DSW1~DSW3)と異なる。
【0138】
例えば、初段インバータ経路IPT1に配置されたダミースイッチ回路DDSW1では、N型トランジスタMND及びP型トランジスタMPDのトランジスタサイズを、それぞれWnmin/Lmin及びWpmin/Lminとする。これにより、ダミースイッチ回路DDSW1では、パルス信号Splの立上がりエッジに作用する第1遅延時間と、立下りエッジに作用する第2遅延時間とが同等になる様に、初段インバータ経路IPT1に付加される遅延容量(ゲート容量Cgdn,Cgsp)が調整される。
【0139】
これに対して、初段インバータ経路IPT2に配置されたダミースイッチ回路DDSW2では、例えば、N型トランジスタMND及びP型トランジスタMPDのトランジスタサイズを、それぞれWnmin/Lmin及び2×Wpmin/Lminとする。これにより、ダミースイッチ回路DDSW2では、ダミースイッチ回路DDSW1と比較すると、ゲート容量Cgdn(MND)に対するゲート容量Cgsp(MPD)の比が増加する。これにより、ダミースイッチ回路DDSW2では、立下りエッジに作用する第2遅延時間が、立上がりエッジに作用する第1遅延時間よりも大きくなる様に、初段インバータ経路IPT2に付加される遅延容量(ゲート容量Cgdn,Cgsp)が調整される。
【0140】
更に、初段インバータ経路IPT3に配置されたダミースイッチ回路DDSW3では、N型トランジスタMND及びP型トランジスタMPDのトランジスタサイズを、それぞれWnmin/Lmin、及び(1/2)×Wpmin/Lminとする。これにより、ダミースイッチ回路DDSW2では、ダミースイッチ回路DDSW1と比較すると、ゲート容量Cgdn(MND)に対するゲート容量Cgsp(MNP)の比が減少する。これにより、ダミースイッチ回路DDSW3では、立上がりエッジに作用する第1遅延時間が、立下りエッジに作用する第2遅延時間よりも大きくなる様に、初段インバータ経路IPT3に付加される遅延容量(ゲート容量Cgdn,Cgsp)が調整される。
【0141】
発振回路100cでは、インバータINV1及びスイッチ回路ISW1~ISW3を構成する、各P型トランジスタMP0,MP4~MP6及び各N型トランジスタMN0,MN4~MN6については、最小のトランジスタサイズである、Wpmin/Lmin及びWnmin/Lminで設計することができる。一方で、遅延調整回路26を構成するダミースイッチ回路DDSW1~DDSW3を構成するP型トランジスタMP4D~MP6D及びN型トランジスタMN4D~MN6Dについては、上述した様にゲート寸法(トランジスタサイズ)を任意に設計する。これにより、初段インバータ経路IPT1~IPT3の間で、第1遅延時間及び第2遅延時間の大小関係(差分)を任意に設けることができる。即ち、遅延調整回路26は「第2遅延調整回路」の一実施例に対応する。
【0142】
図13には、実施の形態2の変形例1に係る発振回路でのデューティ調整を説明する動作波形図が示される。
【0143】
図13の例では、初段のインバータINV1の出力電圧V1は、反転しきい値電圧Vinvの変動により、Lレベル期間及びHレベル期間の比が60(%):40(%)となっており、デューティ比DT1(
図9)は、50(%)から上昇している。
【0144】
具体的には、時刻tbにおいて、入力電圧VAがインバータINV1の反転しきい値電圧Vinvまで上昇すると、インバータINV1の出力電圧V1には、Hレベル(VDD)からLレベル(GND)へ遷移する立下りエッジが生じる。第2論理回路30への入力電圧VBは、時刻tbから、初段インバータ経路IPT1~IPT3のいずれかによって付与された第2遅延時間Tdp遅れた時刻txにおいて、第2論理回路30のインバータINV2の反転しきい値電圧Vinvまで低下する。
【0145】
一方で、時刻tb以降で低下する入力電圧VAが、インバータINV1の反転しきい値電圧Vinvまで低下した時刻tcにおいて、インバータINV1の出力電圧V1には、Lレベル(GND)からHレベル(VDD)へ遷移する立上がりエッジが生じる。第2論理回路30への入力電圧VBは、時刻tcから、初段インバータ経路IPT2によって付与された第1遅延時間Tdn遅れた時刻tyにおいて、第2論理回路30のインバータINV2の反転しきい値電圧Vinvまで上昇する。
【0146】
従って、デューティ比が50(%)より大きい(T1>T2)
図13の例では、第2遅延時間Tdpが、第1遅延時間Tdnよりも大きい初段インバータ経路IPT2を選択することで、第2論理回路30への入力電圧VBのデューティ比を50(%)に近付けることができる。
【0147】
反対に、デューティ比が50(%)より小さいケース(T1<T2)では、第1遅延時間Tdnが、第2遅延時間Tdpよりも大きい初段インバータ経路IPT3を選択することで、第2論理回路30への入力電圧VBのデューティ比を50(%)に近付けることが可能である。この様に、第1遅延時間Tdn及び第2遅延時間Tdpの差分である(Tdn-Tdp)が異なる複数(M個)の初段インバータ経路の選択によっても、発振信号Voscのデューティ比調整が可能であることが理解される。
【0148】
従って、実施の形態2の変形例1に係る発振回路100cにおいても、実施の形態1で説明した
図8及び
図9と同様の手法により、発振信号Voscのデューティ比を調整することができる。具体的には、
図8のパターンPT1と同様に制御信号VISW1~VISW3を設定すると、第1遅延時間Tdn及び第2遅延時間Tdpが同等である初段インバータ経路IPT1を選択したときのデューティ比DT1を取得することができる(
図9のS110)。そして、取得されたデューティ比DT1を用いて、
図8のS120~S160の処理を実行することで、実施の形態1と同様に、簡易な構成によってRC型発振回路の発振信号のデューティ比を調整することができる。
【0149】
尚、実施の形態2の変形例1では、ダミースイッチ回路DDSWの配置個数、即ち、第1及び第2遅延時間の差が異なる初段インバータ経路の個数をM=3としたが、当該Mについても任意とすることができる。
【0150】
実施の形態2の変形例1においても、ダミースイッチ回路DDSWを用いて容量を付加することで、直列接続されたスイッチ及びキャパシタを用いる構成と比較して、初段インバータ経路IPT1~IPT3のそれぞれでの第1遅延時間Tdn及び第2遅延時間Tdpの調整が容易となる。
【0151】
実施の形態2の変形例2.
図14は、実施の形態2の変形例2に係る発振回路100dの構成例を説明する回路図である。
【0152】
図14を参照して、発振回路100dは、実施の形態1に係る発振回路100a(
図2)と比較して、第1論理回路10に含まれるインバータINV11~INV13の各々に対して、
図12に示された選択部20及び遅延調整回路26を含む回路ブロックが配置された構成を有する。
【0153】
具体的には、インバータINV11と、第2論理回路30のインバータINV2の入力ノードに相当するノードNbの間には、選択部20及び遅延調整回路26を含む回路ブロック201が配置される。選択部20及び遅延調整回路26の構成及び動作は、実施の形態2の変形例1と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。これにより、インバータINV11を含む初段インバータ経路IPT1(
図2)は、ダミースイッチ回路DDSW1~DDSW3をそれぞれ通過する初段インバータ経路IPT11~IPT13に細分化される。
【0154】
初段インバータ経路IPT11~IPT13のそれぞれに付与される遅延時間Tdn及びTdpの組み合わせは、
図12での初段インバータ経路IPT1~IPT3のそれぞれと同様に設定することができる。即ち、
図14においても、ダミースイッチ回路DDSWの配置数を3とする例が示されている。
【0155】
同様に、インバータINV12及びノードNbの間には回路ブロック202が配置され、インバータINV13及びノードNbの間には回路ブロック203が配置される。図示を省略しているが、回路ブロック202及び203の各々は、回路ブロック201と同様の選択部20及び遅延調整回路26を有する。
【0156】
従って、回路ブロック202により、インバータINV12を含む初段インバータ経路IPT2(
図2)は、初段インバータ経路IPT21~IPT23に細分化される。同様に、回路ブロック203により、インバータINV13を含む初段インバータ経路IPT3(
図2)は、初段インバータ経路IPT31~IPT33に細分化される。初段インバータ経路IPT21~IPT23及び初段インバータ経路IPT31~IPT33の各々に対しては、初段インバータ経路IPT1~IPT3のそれぞれと同様に設定された遅延時間Tdn及びTdpの組み合わせを付与することができる。
【0157】
発振回路100dでは、入力ノードNa及びノードNb(インバータINV2の入力ノード)の間で、初段インバータの並列配置個数M1(M1:2以上の整数)、及び、各初段バータの出力信号の分岐数M2(M2:2以上の整数)の乗算値に従う(M1×M2)個の初段インバータ経路が設けられる。そして、(M1×M2)個(
図14では、M1×M2=3×3=9)の初段インバータ経路のうちの1個の初段インバータ経路が選択される。
【0158】
即ち、回路ブロック201~203の間で、選択部20のスイッチ回路ISW1~ISW3を選択的にオンするための制御信号VISW1~VISW3は個別に設定される。これにより、全体では(M1×M2)個の制御信号を用いて、上述の(M1×M2)個の初段インバータ経路のうちの1個の初段インバータ経路が、当該経路中のスイッチ回路ISWがオンすることで選択される。
【0159】
一例として、発振回路100dでは、インバータINV11~INV13の反転しきい値電圧Vinvの選択によるデューティ比調整量に対して、遅延調整回路26で遅延時間Tdp及びTdnの差分によるデューティ比調整量を小さくする様に、遅延調整回路26を構成することができる。
【0160】
これにより、実施の形態2の変形例2に係る発振回路100dによれば、実施の形態1に係る発振回路100aの効果に加えて、デューティ比の更に細密な調整が可能となる。
【0161】
実施の形態3.
実施の形態3では、クロックドインバータを用いた回路構成例について説明する。
【0162】
図15は、実施の形態3に係る発振回路100eの構成例を説明する回路図である。
図15に示される様に、発振回路100eは、実施の形態2に係る発振回路100b(
図10)と比較して、第1論理回路10が、並列接続されたM個(
図15の例では、M=3)のクロックドインバータCINV11~CINV13によって構成される点で異なる。即ち、発振回路100eでは、入力ノードNa及びノードNb(第2論理回路30の入力ノード)の間に、クロックドインバータCINV11~CINV13をそれぞれ含む初段インバータ経路IPT1~IPT3が並列に形成される。
【0163】
図16は、クロックドインバータの構成を説明する回路図である。
図16には、
図15に示されたクロックドインバータCINV11~CINV13を総称するクロックドインバータCINV1の回路構成が示される。
【0164】
図16に示される様に、クロックドインバータCINV1は、
図3に示されたインバータINVの回路構成に加えて、P型のスイッチトランジスタMPSW及びN型のスイッチトランジスタMNSWを更に有する。スイッチトランジスタMPSWは、出力電圧Voutが生成される出力ノードNoと、電源ラインPLとの間に、P型トランジスタMP0と直列に接続される。同様に、スイッチトランジスタMNSWは、出力ノードNoと接地ラインNLとの間に、N型トランジスタMN0と直列に接続される。スイッチトランジスタMPSW及びMNSWのトランジスタサイズは、P型トランジスタMP0及びN型トランジスタMN0のそれぞれと同様とすることができる。
【0165】
スイッチトランジスタMPSWのゲートには、制御信号VISW1~VISW3を総称する制御信号VISWが入力される。一方で、スイッチトランジスタMNSWのゲートには、制御信号VISW1B~VISW3Bを総称する制御信号VISWBが入力される。
【0166】
制御信号VISWがHレベル(即ち、制御信号VISWBはLレベル)に設定されると、スイッチトランジスタMNSW及びMPSWがオンすることにより、クロックドインバータCINVは、
図3に示されたインバータINV1と同様に動作する。即ち、クロックドインバータCINVは、入力電圧Vinが反転しきい値電圧Vinvよりも低いときには、Vout=Hレベル(VDD)に設定する一方で、Vin≧Vinvのときには、Vout=Lレベル(GND)に設定する。
【0167】
これに対して、制御信号VISWがLレベル(即ち、制御信号VISWBはHレベル)に設定されると、スイッチトランジスタMNSW及びMPSWがオフされるので、出力ノードNoは、電源ラインPL及び接地ラインNLのいずれとも切り離される。従って、クロックドインバータCINVからは、電源電圧VDD及び接地電圧GNDのいずれも出力されない。
【0168】
再び
図15を参照して、クロックドインバータCINV11~CINV13は、実施の形態1で説明したP型トランジスタMP0及びN型トランジスタMN0のトランジスタサイズの調整により、インバータINV11~INV13のそれぞれと同様の反転しきい値電圧Vinを有する様に構成される。
【0169】
上述の様に、制御信号VISW1~VISW3(VISW1B~VISW3B)によって、クロックドインバータCINV1~CINV3の動作及び停止を制御することにより、発振回路100eでは、
図2の様なスイッチ回路ISW1~ISW3を配置することなく、選択部20の機能を実現することができる。
【0170】
更に、発振回路100eでは、クロックドインバータCINV11~CINV13の出力側と、ノードNbとの間に、
図10と同様の遅延調整回路25が配置される。遅延調整回路25は、
図10と同様のダミースイッチ回路DSW1~DSW3を有する。ダミースイッチ回路DSW1~DSW3は、クロックドインバータCINV11~CINV13の出力ノードと、第2論理回路30の入力ノードに相当するノードNbとの間にそれぞれ接続される。発振回路100eのその他の部分の構成は、
図10の発振回路100bと同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
【0171】
従って、発振回路100eでは、クロックドインバータCINV11及びダミースイッチ回路DSW1が直列接続された初段インバータ経路IPT1と、クロックドインバータCINV12及びダミースイッチ回路DSW2が直列接続された初段インバータ経路IPT2と、クロックドインバータCINV13及びダミースイッチ回路DSW3が直列接続された初段インバータ経路IPT3が、入力ノードNa及びノードNbの間に並列に設けられる。
【0172】
そして、制御信号VISW1~VISW3(制御信号VISW1B~VISW3B)に応じて、クロックドインバータCINV11~CINV13のうちの1個が選択的に動作することで、初段インバータ経路IPT1~IPT3のうちの1個が、入力ノードNa及びノードNbの間に選択的に形成される。更に、初段インバータ経路IPT1~IPT3での、インバータの反転しきい値電圧Vinv及び遅延調整回路25によって付加される調整容量は、実施の形態2に係る発振回路100bと同様である。
【0173】
従って、実施の形態3に係る発振回路100eによっても、実施の形態2に係る発振回路100bと同様に、発振信号Voscのデューティ比を調整するとともに、発振周波数の精度を高めることが可能である。
【0174】
更に、実施の形態3に係る発振回路100eでは、インバータに代えてクロックドインバータを用いることで、回路面積及び消費電流の削減を図ることができる。
【0175】
まず、クロックドインバータCINV11~CINV13では、
図10(実施の形態2)でのインバータINV11~INV13と、CMOS(Complementary MOS)スイッチであるスイッチ回路ISW1~ISW3の組み合わせと比較して、配線接続数が減少する。このため、レイアウト面から回路面積の削減を図ることができる。
【0176】
又、入力ノードNaの入力電圧VAが反転しきい値電圧Vinvの近傍であるときには、
図2等のインバータINV11~INV13の各々において、P型トランジスタMP0及びN型トランジスタMN0に貫通電流が生じる。一方で、
図5等に例示した様に、帰還抵抗40(Roc)及び帰還容量50(Coc)による時定数によって、反転しきい値電圧Vinvの近傍での入力電圧VAの変化は比較的緩やかである。この結果、M個のインバータが並列配置される実施の形態1,2等の回路構成では、上述の貫通電流によってM個のインバータの消費電流が増大することが懸念される。
【0177】
これに対して、実施の形態3に係る発振回路100eでは、並列接続されたM個のクロックドインバータのうち、制御信号VISW(VISWB)によって停止されるクロックドインバータでは、スイッチトランジスタMPSW,MNSW(
図16)がオフされることで貫通電流は発生しない。この結果、クロックドインバータの適用によって、実施の形態1,2と比較して、消費電流の削減を図ることができる。
【0178】
尚、実施の形態1及び2においても、入力ノードNaと、インバータINV11~INV13の入力ノードとの間に、初段インバータ経路IPT1~IPT3の選択と連動してオンオフ制御されるトランジスタスイッチを追加配置することで、貫通電流を抑制することは可能である。しかしながら、この様なトランジスタスイッチの追加は、回路面積の増大、並びに、無駄な寄生容量及びオン抵抗の増加による周波数補正精度の劣化を招くことが懸念される。実施の形態3に係る発振回路100eでは、クロックドインバータの適用によって、この様な問題点を生じることなく、消費電流の削減を図ることができる。
【0179】
又、実施の形態3に係る発振回路100eにおいて、
図15の例では、
図10と同様に遅延調整回路25を配置する構成例を説明したが、クロックドインバータCINV11~CINV13の選択に伴う発振周波数の変動が小さい場合には、実施の形態1に係る発振回路100a(
図2)と同様に、遅延調整回路25の配置を省略することが可能である。
【0180】
或いは、実施の形態3に係る発振回路100eでは、
図15の構成例において、遅延調整回路25に代えて、遅延調整回路26(
図12)を配置することも可能である。この場合には、
図14で説明した、実施の形態2の変形例2に係る発振回路100dと同様に、デューティ比の調整を細密化することが可能である。
【0181】
実施の形態3の変形例.
図17は、実施の形態3の変形例に係る発振回路100fの構成例を説明する回路図である。
【0182】
図17を参照して、発振回路100fは、実施の形態1に係る発振回路100aと比較して、複数のインバータINV11~INV13及び選択部20に代えて、Nビット(N:2以上の整数)の制御信号VISWN[N:1]及びVISWP[N:1]によって制御されるクロックドインバータVCINVが配置される点で異なる。発振回路100fは、実施の形態3に係る発振回路100e(
図15)と比較すると、複数のクロックドインバータCINV11~CINV13に代えて、クロックドインバータVCINVが配置されるとともに、遅延調整回路25の配置は省略された回路構成を有する。
【0183】
図18には、
図17に示されたクロックドインバータVCINVの構成を説明する回路図が示される。
【0184】
図18を参照して、クロックドインバータVCINVは、並列接続されたN個のクロックドインバータCINV1~CINVNを有する。クロックドインバータCINV1~CINVNの各々は、
図16に示されたクロックドインバータCINV1と同様の回路構成を有する。
【0185】
具体的には、クロックドインバータCINV1~CINVNは、P型トランジスタMPC1~MPCN、N型トランジスタMNC1~MNCN、P型のスイッチトランジスタMPCSW1~MPCSWN、及び、N型のスイッチトランジスタMNCSW1~MPCSWNをそれぞれ有する。
【0186】
クロックドインバータCINV1~CINVNの間で、P型トランジスタMPC1~MPCN、及び、N型トランジスタMNC1~MNCNは、トランジスタサイズが異なる。例えば、P型トランジスタMPC1~MPCN、及び、N型トランジスタMNC1~MNCNの各々のゲート長は、共通(Limn)である。一方で、P型トランジスタMPC1~MPCNのゲート幅、及び、N型トランジスタMNC1~MNCNのゲート幅は、それぞれ2の階乗に従って段階的に異なる値に設計される。
【0187】
具体的には、N型トランジスタMNC1のゲート幅は、最小値Wmin、N型トランジスタMNC2のゲート幅は、W2N=2・Wmin、N番目のN型トランジスタMNCNのゲート幅は、Wn2=2(N-1)・Wminとされる。N型のスイッチトランジスタMNCSW1~MNCSWNのトランジスタサイズは、N型トランジスタMNC1~MNCNのそれぞれと同等とされる。
【0188】
同様に、P型トランジスタMPC1のゲート幅は、Wmin、P型トランジスタMPC2のゲート幅は、Wp2=2・Wmin、N番目のP型トランジスタMPCNのゲート幅は、WpN=2(N-1)・Wminとされる。P型のスイッチトランジスタMPCSW1~MPCSWNのトランジスタサイズは、P型トランジスタMPC1~MPCNのそれぞれと同等とされる。
【0189】
N型のスイッチトランジスタMNCSW1~MNCSWNのゲートには、制御信号VISWN[1]~VISWN[N]が入力される。これにより、クロックドインバータVCINVでは、N型トランジスタMNC1~MNCNのうちの、制御信号VISWN[1]~VISWN[N]によって選択された少なくとも1個のN型トランジスタが、接地ラインNLと、クロックドインバータVCINVの出力ノードNo(
図17でのノードNbに相当)との間に並列接続される。
【0190】
例えば、制御信号VISWN[1]~VISWN[N]のすべてが「1」である場合には、N型トランジスタMNC1~MNCNの全てが接地ラインNL及びクロックドインバータVCINVの出力ノードの間に接続される。この状態は、
図3のインバータにおいて、N型トランジスタMN0のゲート幅が(2
N-1)・Wminである状態と等価である。
【0191】
同様に、P型のスイッチトランジスタMPCSW1~MPCSWNのゲートには、反転された制御信号VISWP[1]~VISWP[N]が入力される。これにより、クロックドインバータVCINVでは、P型トランジスタMPC1~MPCNのうちの、制御信号VISWP[1]~VISWP[N]によって選択された少なくとも1個のP型トランジスタが、電源ラインPLと、クロックドインバータVCINVの出力ノードNoとの間に並列接続される。
【0192】
例えば、制御信号VISWP[1]~VISWP[N]のすべてが「1」である場合には、P型トランジスタMPC1~MPCNの全てが電源ラインPL及びクロックドインバータVCINVの出力ノードの間に接続される。この状態は、
図3のインバータにおいて、N型トランジスタMN0のゲート幅が(2
N-1)・Wminである状態と等価である。
【0193】
この様に、
図18に示されたクロックドインバータVCINVでは、制御信号VISWN[1]~VISWN[N]に応じて、接地ラインNL及び出力ノードNoの間に並列接続される少なくとも1個のN型トランジスタ全体でのトランジスタサイズ(
図3のインバータINV1でのN型トランジスタMN0のトランジスタサイズに相当)を、段階的に変化することができる。
【0194】
同様に、制御信号VISWP[1]~VISWP[N]に応じて、電源ラインPL及び出力ノードNoの間に並列接続される少なくとも1個のP型トランジスタ全体でのトランジスタサイズ(
図3のインバータINV1でのP型トランジスタMP0のトランジスタサイズに相当)を、段階的に変化することができる。
【0195】
この結果、クロックドインバータVCINVでは、N型トランジスタMN0のトランジスタサイズ(Wn/Ln)と、P型トランジスタMP0のトランジスタサイズ(Wp/Lp)との比を可変制御することで、上述の式(2)中のKn,Kpを変化させることができる。
【0196】
これにより、クロックドインバータVCINVは、制御信号VISWN[1]~VISWN[N],VISWP[1]~VISWP[N]に応じて、反転しきい値電圧Vinvが異なる複数のインバータ(
図3のインバータINV相当)のうちの1つのインバータを、初段インバータとして、入力ノードNa及びノードNbとの間に選択的に形成することが可能となる。これにより、上記複数のインバータをそれぞれ通過する複数のインバータ経路の選択を等価的に実行することができる。
【0197】
図19には、クロックドインバータVCINVの制御信号の設定例が示される。
図19には、N=5のときの例が示される。
【0198】
図19を参照して、制御信号VISWP[1]=「1」とし、制御信号VISWP[2]~VISWP[5]=「0」とすることで、P型トランジスタのトランジスタサイズ(Wp/Lp)は最小値(1)となる。この状態下で、制御信号VISWN[1]~VISWn[5]の5ビットの「0」及び「1」の組み合わせによって、N型トランジスタのトランジスタサイズ(Wn/Ln)は最小値(1)から最大値(2
N-1=31)の間で段階的に設定することができる。(Wp/Lp)を固定した下で、(Wn/Ln)を段階的に上昇させると、式(2)のパラメータ値Kが上昇するのに応じて、クロックドインバータVCINVの反転しきい値電圧Vinvを段階的に低下させることができる。
【0199】
同様に、制御信号VISWN[1]=「1」とし、制御信号VISWN[2]~VISWN[5]=「0」とすることで、N型トランジスタのトランジスタサイズ(Wn/Ln)は最小値(1)となる。この状態下で、制御信号VISWP[1]~VISWP[5]の5ビットの「0」及び「1」の組み合わせによって、P型トランジスタのトランジスタサイズ(Wp/Lp)は、最小値(1)から最大値(例えば、2N-1=31)の間で段階的に設定することができる。(Wn/Ln)を固定した下で、(Wp/Lp)を段階的に上昇させると、式(2)のパラメータ値Kが低下するのに応じて、クロックドインバータVCINVの反転しきい値電圧Vinvを段階的に上昇させることができる。
【0200】
例えば、VISWP[2]=「1」,VISWP[1]=VISWP[3]~VISW[5]=「0」、かつ、VISWN[1]=「1」,VISWN[2]~VISWN[5]=「0」とすると、(Wp/Lp)=2、かつ、(Wn/Ln)=1となる。従って、クロックドインバータVCINVは、実施の形態1(
図2)でのインバータINV11(K=1)と同等の反転しきい値電圧Vinvを有するインバータを、入力ノードNa及びノードNbの間に形成した状態となる。即ち、実施の形態1(
図2)でのインバータINV11を含む初段インバータ経路IPT1が選択されたのと等価な状態が形成される。
【0201】
同様に、VISWP[5]=「1」,VISWP[1]~VISWP[4]=「0」、かつ、VISWN[1]=「1」,VISWN[2]~VISWN[5]=「0」とすると、(Wp/Lp)=16、かつ、(Wn/Ln)=1となる。従って、クロックドインバータVCINVは、実施の形態1(
図2)でのインバータINV12(K=√(1/8))と同等の反転しきい値電圧Vinvを有するインバータを、入力ノードNa及びノードNbの間に形成した状態となる。即ち、実施の形態1(
図2)でのインバータINV12を含む初段インバータ経路IPT2が選択されたのと等価な状態が形成される。
【0202】
又、VISWP[1]=「1」,VISWP[2]~VISWP[5]=「0」、かつ、VISWN[3]=「1」,VISWN[1]=VISWN[2]=VISWN[4]=VISWN[5]=「0」とすると、(Wp/Lp)=1、かつ、(Wn/Ln)=4となる。従って、クロックドインバータVCINVは、実施の形態1(
図2)でのインバータINV13(K=√8)と同等の反転しきい値電圧Vinvを有するインバータを、入力ノードNa及びノードNbの間に形成した状態となる。即ち、実施の形態1(
図2)でのインバータINV13を含む初段インバータ経路IPT3が選択されたのと等価な状態が形成される。
【0203】
この様に、クロックドインバータVCINVでは、制御信号VISWN[1]~VISWN[N],VISWP[1]~VISWP[N]に応じて、初段インバータのP型トランジスタのトランジスタサイズ及びN型トランジスタのトランジスタサイズの間の比を変えることで、反転しきい値電圧Vinvを可変に設定することが可能である。
【0204】
この結果、クロックドインバータVCINVによっても、実施の形態1でのインバータINV11~INV13及び選択部20と同様に、反転しきい値電圧Vinvが異なる複数の初段インバータ経路を選択することができる。具体的には、制御信号VISWN[N:1],VISWP[N:1]の組み合わせによって形成される、反転しきい値電圧Vinvがそれぞれ異なる複数のインバータを初段インバータとする複数の初段インバータ経路の選択が等価的に可能となる。特に、Nビットの制御信号VISWN[N:1],VISWP[N:1]の組み合わせ毎に反転しきい値電圧Vinvは異なるので、選択可能な初段インバータ経路の数が多くなる。
【0205】
又、制御信号VISWN[1]~VISWN[N],VISWP[1]~VISWP[N]の全てを「0」に設定すると、クロックドインバータVCINVの出力ノードと、電源ラインPL(VDD)及び接地ラインNL(GND)との経路が遮断されることで、クロックドインバータVCINVは停止される。この際には、貫通電流の発生が回避される。
【0206】
再び
図17を参照して、発振回路100fでは、クロックドインバータCINVの出力電圧VBが第2論理回路30の入力とされることで、実施の形態1に係る発振回路100a(
図2)と同様に、帰還抵抗40の抵抗値Roc及び帰還容量50の容量値Cocに依存した周波数の発振信号Voscが生成される。
【0207】
更に、発振回路100fにおいても、実施の形態1と同様に、K=1に対応する反転しきい値電圧Vinvが設定される様に制御信号VISWN[N:1],VISWP[N:1]を設定した状態で発振回路100fを動作させたときのデューティ比DT1(
図9のS110)を取得することができる。
【0208】
そして、取得されたデューティ比DT1が50(%)より大きいときはパラメータ値Kを低下させる一方で、デューティ比DT1が50(%)より小さいときはパラメータ値Kを上昇させる様に、制御信号VISWN[N:1],VISWP[N:1]を変更することで、実施の形態1と同様に、RC型発振回路の発振信号のデューティ比を調整することができる。
【0209】
この様に、実施の形態3の変形例に係る発振回路によれば、トランジスタサイズを可変制御可能なクロックドインバータVCINVの適用により、等価的に、反転しきい値電圧が異なる複数の初段インバータ経路の選択による発振信号Voscのデューティ調整が可能となる。クロックドインバータVCINVを用いることで、実施の形態3と同様に回路面積及び消費電流の削減を図ることができるとともに、デューティ比の調整を細密化することが容易になる。
【0210】
又、クロックドインバータCINVでの複数の初段インバータ経路の選択に応じて、当該経路の容量値が変化することで発振周波数が変動する場合には、実施の形態2で説明した遅延調整回路25を、クロックドインバータVCINVの出力ノードに対して接続する構成とすることが可能である。但し、この場合には、制御信号VISWN[N:1],VISWP[N:1]に応じて、当該出力ノードに付加される遅延容量を段階的に変化させる機構を設けることが必要となる。
【0211】
実施の形態4.
実施の形態4では、上述した、イネーブル信号の入力が可能な発振回路の構成例について説明する。
【0212】
図20は、実施の形態4に係る発振回路100gの構成例を説明する回路図である。
図20に示される様に、発振回路100gは、実施の形態1に係る発振回路100a(
図2)と比較して、帰還容量50に代えて、帰還容量50gを備える点で異なる。更に、第1論理回路10が、インバータINV11~INV13(
図2)に代えて、NANDゲートで構成された等価的なインバータINV11X~INV13Xを含む点で異なる。発振回路100gのこれら以外の構成は、発振回路100a(
図2)と同様である。
【0213】
インバータINV11X~INV13Xの各々を構成するNANDゲートの入力の一方は、イネーブル信号EN1であり、入力の他方は、インバータINV11~INV13の入力と同様の電圧VA(入力ノードNa)である。
【0214】
イネーブル信号EN1のLレベル期間(「イネーブルオフ期間」とも称する)では、発振回路100gの機能は停止されてインバータINV11X~INV13Xの各出力、及び、発振信号VoscはHレベルに固定される。これに対して、イネーブルオフが解除されて、イネーブル信号EN1がLレベルからHレベルに変化すると、発振回路100gの動作が開始されて、発振信号Voscが一定周波数でHレベル及びLレベルを繰り返す様になる。尚、インバータINV11X~INV13Xの各々は、NANDゲートに代えて、NORゲートによって構成されてもよい。NORゲートを用いる場合には、イネーブル信号EN1に代えて、イネーブル信号EN1の反転信号(イネーブルオフ期間においてHレベル)が、NORゲートの入力の一方とされる。
【0215】
通常、発振回路は、電源起動による自動的な起動方法と、イネーブル信号により制御された高速起動方法とのアプリケーションに分かれており、実施の形態1~3は、前者の電源起動のアプリケーションに適している。これに対して、実施の形態4は、近年要求の高まる後者のアプリケーションに適している。後述する様に、実施の形態4を適用することにより、イネーブルオフ解除時における入力ノードNaの瞬時的な電圧上昇を抑制することが可能となり、イネーブル信号により急速に起動するアプリケーションに好適となる。
【0216】
帰還容量50gは、帰還容量50と同様のキャパシタC1(容量値Coc)に加えて、イネーブル信号EN1に応じてオンオフされる制御スイッチISWg1を更に含む。制御スイッチISWgは、入力ノードNaと接続されるキャパシタC1の片側の電極と、接地ラインNL(
図3等)に相当するグランド(GND)との間に接続される。
【0217】
制御スイッチISWgは、イネーブル信号EN1に応じてオンオフされるP型トランジスタ及びN型トランジスタの少なくとも一方によるトランスファゲートによって構成することができる。
図20の例では、制御スイッチISWgは、イネーブル信号EN1をゲートに入力されるP型トランジスタMPg1と、イネーブル信号EN1の反転信号EN1Bをゲートに入力されるN型トランジスタMNg1とを並列接続することによって構成される。
【0218】
尚、実施の形態4及びその変形例では、キャパシタC1の極性は、入力ノードNa側を寄生容量の小さいトッププレート、逆側(ノードNc側)を寄生容量の大きいボトムプレートとして構成される例を示しているが、同様の構成を、実施の形態1~3及びそれらの変形例に適用することも可能である。或いは、各実施の形態及びその変形例において、キャパシタC1の極性は任意である場合もある。又、キャパシタC1については、代表的には、MIM(Metal Insulator Metal)構造を用いることができるが、それ以外にも、PIP(Poly-Insulator Poly)構造、MOM(Metal Oxide Metal)構造、或いは、電界効果トランジスタのゲート酸化膜容量を用いて構成することも可能である。
【0219】
ここで、
図21を用いて、発振回路100gにおいて、制御スイッチISWg1を非配置とした場合における入力ノードNaの電圧波形の比較例を説明する。
図23中には、当該比較例での電圧波形(入力電圧VA♯)が点線で示されるとともに、制御スイッチISWg1が配置された発振回路100gにおける電圧波形(入力電圧VA)が実線で示される。
【0220】
イネーブルオフ解除時において、入力ノードNaの初期電圧をVADEとし、ノードNcの初期電圧VCDEとすると、キャパシタC1には、電圧差(VADE-VCDE)と容量値Cocとの積に従う電荷量が蓄積されている。ここで、インバータINV11X~INV13Xの出力ノードとノードNcとの間には1個のインバータINV2が接続され、ノードNcと入力ノードNaとの間にも1個のインバータINVが接続される。従って、イネーブルオフ期間では、インバータINV11X~INV13Xの出力がHレベルに固定されるため、ノードNcはLレベルに固定され、ノードNd及び入力ノードNaはHレベルに固定される。
【0221】
図21に示される様に、時刻txにおいて、イネーブル信号EN1がLレベルからHレベル(VDD)に変化するとイネーブルオフが解除される。上述の様に、イネーブルオフ期間である時刻tx前において、VA♯=VDDである。又、キャパシタC1の両端間には、(VADE-VCDE)=VDDの電圧差が保持されている。
【0222】
時刻txにおいて、イネーブルオフが解除されたとき、イネーブル信号EN1がHレベルに設定されるのに応じて、インバータINV11X~INV13Xの出力がHレベルからLレベルに変化する。これに応じて、ノードNcの電圧VCはLレベルからHレベルに変化し、ノードNdの電圧はHレベルからLレベルに変化する。しかしながら、帰還抵抗40の抵抗値Roc及び帰還容量50gの容量値CocによるRC時定数(Roc・Coc)の影響で、入力ノードNaの入力電圧VA♯は、HレベルからLレベルには即座に変化しない。
【0223】
この結果、時刻txでは、入力電圧VA♯は、キャパシタC1を介した容量結合によって、キャパシタC1に保持されていた電圧差(VADE-VCDE)=VDDだけ上昇する。この結果、時刻txにおいて、入力電圧VA♯は、瞬間的にVDDの2倍まで上昇する。以降では、上述のRC時定数に従って、入力電圧VA♯がインバータの反転しきい値電圧Vinvまで低下すると、
図5の時刻tcと同様の変化が入力電圧VA♯に生じて、VA♯=Vinv-VDDとなる。その後は、
図5における時刻tc以降の入力電圧VAと同様に、比較例の入力電圧VA♯は変化する。
【0224】
この様に、イネーブル信号に応じて動作する機能を有する発振回路100eでは、制御スイッチISWg1を非配置とすると、イネーブルオフ期間(EN1=Lレベル)が、上述のRC時定数による遅延時間よりも長い場合に、イネーブルオフ解除時(
図21中の時刻tx)において、入力ノードNaに瞬時的に過電圧が発生することが懸念される。
【0225】
非特許文献1には、インバータに供給される電源電圧(VDD相当)をレギュレータによって制御可能とする構成が記載されており、この様なレギュレータを用いてイネーブルオフ期間にVDDを低く制御すれば、上述した時刻txでの過電圧を抑制することが可能である。一方で、レギュレータ及びレベルシフタ等の追加配置が必要となる。又、第1論理回路10中の論理反転回路を高耐圧素子で構成することで、過電圧に対処することも可能であるが、動作速度の低下、及び、回路面積の増加が懸念される。
【0226】
これに対して、実施の形態4に係る発振回路100gでは、イネーブルオフ期間(EN1=Lレベル)において、制御スイッチISWg1がオンすることによって、入力ノードNaはグランドと接続される。このため、
図21中において、実線で示される様に、入力電圧VA=0に固定される。これにより、キャパシタC1の両側電極の電圧差がゼロになるので、キャパシタC1の初期電荷はリセットされて、時刻tx時点においてもVA=0に維持される。
【0227】
時刻tx以降では、イネーブル信号EN1=Hレベルに設定されて、制御スイッチISWg1がオフされるので、発振回路100eは、実施の形態1に係る発振回路100a(
図2)と同様に動作する。従って、時刻tx以降での入力電圧VAの波形は、
図5での時刻ta以降の入力電圧VAの波形と同様となる。
【0228】
この様に、実施の形態4に係る発振回路では、第1論理回路10がイネーブル信号EN1に応じて動作する構成下において、イネーブルオフ期間でのキャパシタC1の保持電荷の影響による、イネーブルオフ解除時における過電圧の発生を防止することができる。
【0229】
尚、
図20では、第1論理回路10がイネーブル信号EN1に応じて動作する構成を例示したが、第2論理回路30、又は、第1論理回路10及び第2論理回路30の両方が、イネーブル信号EN1に応じて動作する構成としても、キャパシタC1の入力ノードNa側に制御スイッチISWg1を配置することで、同様に過電圧を抑制することが可能である。
【0230】
実施の形態4の変形例.
図22には、実施の形態4の変形例1に係る発振回路100hの構成例を説明する回路図が示される。
【0231】
図22に示される様に、発振回路100hは、
図20の発振回路100gと比較して、キャパシタC1の入力ノードNa側に設けられた制御スイッチISWg1に代えて、キャパシタC1のノードNc側に設けられた制御スイッチISWh0及びISWh1を備える点で異なる。
【0232】
制御スイッチISWh1は、キャパシタC1のノードNc側の片側の電極と、ノードNbとの間に接続されて、イネーブル信号EN1に応じてオンオフする。制御スイッチISWh1は、イネーブルオフ期間(EN1=Lレベル)にオンする一方で、イネーブルオフの解除期間(EN1=Hレベル)にオフされる。
【0233】
制御スイッチISWh0は、キャパシタC1のノードNc側の片側の電極と、ノードNcとの間に接続されて、イネーブル信号EN0に応じてオンオフする。イネーブル信号EN0は、イネーブル信号EN1と同様に、イネーブルオフ期間にLレベルに設定される一方で、イネーブルオフの解除期間にはHレベルに設定される。制御スイッチISWh0は、イネーブルオフ期間(EN1=Lレベル)にオフする一方で、イネーブルオフの解除期間(EN1=Hレベル)にオンされる。但し、イネーブル信号EN0及びEN1の間には、制御スイッチISWh0及びISWh1の両方がオンする期間が発生しないためのタイミング調整(デッドタイムの付与)が行われている。
【0234】
制御スイッチISWh1及びISWh0の各々は、イネーブル信号EN0又はEN1に応じてオンオフされるP型トランジスタ及びN型トランジスタの少なくとも一方によるトランスファゲートによって構成することができる。
図20の例では、制御スイッチISWh1は、イネーブル信号EN1をゲートに入力されるP型トランジスタMPh1と、イネーブル信号EN1の反転信号EN1Bをゲートに入力されるN型トランジスタMNh1とを並列接続することによって構成される。又、制御スイッチISWh0は、イネーブル信号EN0をゲートに入力されるN型トランジスタMNh0と、イネーブル信号EN0の反転信号EN0Bをゲートに入力されるP型トランジスタMPh0とを並列接続することによって構成される。
【0235】
従って、発振回路100hでは、イネーブルオフ期間(EN1=Lレベル)において、キャパシタC1は、いずれもHレベル(VDD)に固定されている入力ノードNa及びノードNbの間に接続される。この結果、キャパシタC1の両側電極の電圧差がゼロになるので、イネーブルオフ期間におけるキャパシタC1の保持電荷(初期電荷)を、実施の形態4の発振回路100eと同様にリセットすることができる。これにより、実施の形態4と同様に、イネーブルオフの解除時において、入力ノードNaにVDDを超える過電圧が発生することを防止できる。
【0236】
発振回路100hにおいても、イネーブル信号EN0=EN1=Hレベルに設定されると、制御スイッチISWh1がオフされるとともに、制御スイッチISWh0がオンされることで、回路状態は、実施の形態1に係る発振回路100a(
図2)と同様となる。従って、イネーブルオフ期間の解除後には、発振回路100hは、発振回路100aと同様に動作して、発振信号Voscを生成することができる。
【0237】
実施の形態4の変形例1に係る発振回路100hでは、実施の形態4に係る発振回路100eと同様に、イネーブルオフ解除時における入力ノードNaの過電圧を抑制することができる。更に、発振回路100iでは、発振信号Voscの生成時(EN1=Hレベル期間)において、入力ノードNaに接続されるオフ状態の制御スイッチを非配置とすることができる。この結果、発振回路100iは、発振回路100g(
図20)と比較すると、発振周波数を定める入力ノードNaに付加される寄生容量を抑制することで、発振信号Voscの周波数精度を高めることができる。
【0238】
尚、
図22中では、制御スイッチISWh1は、キャパシタC1のノードNc側の電極(入力ノードNaと反対側の電極)と、ノードNbとの間に接続される例を示したが、ノードNbに代えて、イネーブルオフ期間において入力ノードNaと同レベル(H/Lレベル)の電圧を保持する他のノードと接続されてもよい。同様に、制御スイッチISWh0についても、ノードNcに代えて、イネーブルオフの解除後において入力ノードNaと逆レベル(H/Lレベル)の電圧が現れる他のノードと、キャパシタC1のノードNc側の電極との間に接続されてもよい。
【0239】
実施の形態4の変形例2.
図23には、実施の形態4の変形例2に係る発振回路100iの構成例を説明する回路図が示される。
【0240】
図22に示される様に、発振回路100iは、
図20の発振回路100gと比較して、制御スイッチISWg1に代えて、キャパシタC1の両端に設けられた制御スイッチISWi0,ISWi1、及び、制御スイッチISWi2,ISWi3を備える点で異なる。
【0241】
制御スイッチISWi0は、キャパシタC1の入力ノードNa側の電極と、入力ノードNaとの間に接続されて、イネーブル信号EN0に応じてオンオフする。制御スイッチISWi1は、キャパシタC1の入力ノードNa側の電極と、グランド(GND)との間に接続されて、イネーブル信号EN1に応じてオンオフする。
【0242】
制御スイッチISWi0は、イネーブルオフ期間(EN0=Lレベル)にオフする一方で、イネーブルオフの解除期間(EN0=Hレベル)にオンする。反対に、制御スイッチISWi1は、イネーブルオフ期間(EN1=Lレベル)にオンする一方で、イネーブルオフの解除期間(EN1=Hレベル)にオフされる。
【0243】
制御スイッチISWi2は、キャパシタC1のノードNc側の片側電極と、ノードNcとの間に接続されて、イネーブル信号EN2に応じてオンオフする。制御スイッチISWi3は、キャパシタC1のノードNc側の片側の電極と、グランド(GND)との間に接続されて、イネーブル信号EN3に応じてオンオフする。
【0244】
制御スイッチISWi2は、イネーブルオフ期間(EN2=Lレベル)にオフする一方で、イネーブルオフの解除期間(EN2=Hレベル)にオンする。反対に、制御スイッチISWi3は、イネーブルオフ期間(EN3=Lレベル)にオンする一方で、イネーブルオフの解除期間(EN3=Hレベル)にオフされる。
【0245】
尚、イネーブル信号EN0~EN3の間には、制御スイッチISWi0及びISWi1の両方がオンする期間、制御スイッチISWi2及びISWi3の両方がオンする期間、制御スイッチISWi0及びISWi3の両方がオンする期間、及び、制御スイッチISWi1及びISWi2の両方がオンする期間のいずれもが発生しないためのタイミング調整(デッドタイム付与)が適宜行われる。
【0246】
制御スイッチISWi0~ISWi3の各々は、イネーブル信号EN0~EN3に応じてオンオフされるP型トランジスタ及びN型トランジスタの少なくとも一方によるトランスファゲートによって構成することができる。
図23の例では、制御スイッチISWi0は、イネーブル信号EN0をゲートに入力されるN型トランジスタMNi10と、イネーブル信号EN0の反転信号EN0Bをゲートに入力されるP型トランジスタMPi10とを並列接続することによって構成される。又、制御スイッチISWi1は、イネーブル信号EN1をゲートに入力されるP型トランジスタMPi11と、イネーブル信号EN1の反転信号EN1Bをゲートに入力されるN型トランジスタMNi11とを並列接続することによって構成される。
【0247】
同様に、
図23の例では、制御スイッチISWi3は、イネーブル信号EN3をゲートに入力されるP型トランジスタMPhi13と、イネーブル信号EN3の反転信号EN3Bをゲートに入力されるN型トランジスタMNi13とを並列接続することによって構成される。又、制御スイッチISWi2は、イネーブル信号EN2をゲートに入力されるN型トランジスタMNi12と、イネーブル信号EN2の反転信号EN2Bをゲートに入力されるP型トランジスタMPi12とを並列接続することによって構成される。
【0248】
従って、発振回路100iでは、イネーブルオフ期間(EN0~EN3=Lレベル)において、キャパシタC1の両端はグランド(GND)と接続されるので、キャパシタC1の両側電極の電圧差がゼロになる。この結果、イネーブルオフ期間におけるキャパシタC1の保持電荷(初期電荷)を、実施の形態4の発振回路100eと同様にリセットすることができる。これにより、実施の形態4と同様に、イネーブルオフの解除時において、入力ノードNaにVDDを超える過電圧が発生することを防止できる。
【0249】
発振回路100iにおいても、イネーブル信号EN0~EN3がHレベルに設定されると、制御スイッチISWi1,ISWi3がオフされるとともに、制御スイッチISWh0,ISWi2がオンされることで、回路状態は、実施の形態1に係る発振回路100a(
図2)と同様となる。従って、イネーブルオフ期間の解除後には、発振回路100iは、発振回路100aと同様に動作して、発振信号Voscを生成することができる。
【0250】
実施の形態4の変形例2に係る発振回路100iでは、先に説明した発振回路100g,100hと比較して、イネーブルオフ解除時におけるキャパシタC1の保持電荷(初期電荷)をより確実にリセットすることができる。
【0251】
尚、実施の形態4及びその変形例において、制御スイッチの個数は任意に調整することが可能である。又、本実施の形態1~4及びそれらの変形例において、ノードNbは「第1ノード」に対応し、ノードNdは「第2ノード」に対応し、ノードNcは「第4ノード」に対応する。尚、本実施の形態では、第2論理回路30が2個のインバータ(INV2,INV3)で構成される例を示したので、ノードNdは帰還抵抗40が接続される「第3ノード」にも対応している。
【0252】
尚、実施の形態1~4及びそれらの変形例において、第2論理回路30が2個のインバータ(論理反転回路)で構成される例を示したが、当該個数は任意である。この際に、帰還容量50は、入力ノードNaと、偶数段直列接続されたインバータ(論理反転回路)が入力ノードNaとの間に存在している、任意の論理反転回路(インバータ)の出力ノードとの間に接続することができる。同様に、帰還抵抗40は、入力ノードNaと、奇数段直列接続されたインバータ(論理反転回路)が入力ノードNaとの間に存在している、任意の論理反転回路(インバータ)の出力ノードとの間に接続することができる。
【0253】
又、発振信号Voscについても、第2論理回路30の最終段のインバータの出力とする必要はなく、第2論理回路30を構成する少なくとも1個のインバータの任意の出力信号を、発振信号Voscとすることが可能である。
【0254】
又、実施の形態1~4及びそれらの変形例では、抵抗又はインバータの接続を制御するトランジスタ(選択部20及び抵抗制御部45を構成するトランジスタ)を電界効果トランジスタで例示したが、スイッチ制御するトランジスタは、バイポーラトランジスタへ置換することも可能である。即ち、P型のスイッチトランジスタは、pnp型のバイポーラトランジスタによっても構成することが可能であり、N型のスイッチトランジスタは、npn型のバイポーラトランジスタによって構成することも可能である。
【0255】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示による技術的範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0256】
10 第1論理回路、20 選択部、25,26 遅延調整回路、30 第2論理回路、40 帰還抵抗、45 抵抗制御部、50 帰還容量、90 制御回路、100a~100i 発振回路、201~203 回路ブロック、C1 キャパシタ、CINV,CINV1~CINVN,CINV11~CINV13,VCINV クロックドインバータ、CNT1,CNT2,VISW,VISW1~VISW3,VISW1B,VISW1B~VISW3B,VISWN[N:1],VISWP[N:1],VRSW1~VRSW3 制御信号、EN0~EN3 イネーブル信号、EN0B~EN3B 反転信号(イネーブル信号)、Cgdn,Cgsp ゲート容量、Cpn,Cpp 寄生容量、Coc 容量値(帰還容量)、DDSW,DDSW1~DDSW3,DSW,DSW1~DSW3,DSW11~DSW13 ダミースイッチ回路、GND 接地電圧、INV,INV1,INV2,INV3,INV11~INV13,INV11X~INV13X インバータ、ISWg1,ISWh0~ISWh1,ISWi0~ISWi2 制御スイッチ、IPT1~IPT3,IPT11~IPT13,IPT21~IPT23,IPT31~IPT33,IPTM 初段インバータ経路、ISW,ISW1~ISW3,ISW11~ISW13 スイッチ回路、NL 接地ライン、Na 入力ノード、Nb~Nd ノード、No 出力ノード(インバータ)、PL 電源ライン、Spl パルス信号、R1~R3 抵抗素子、Roc 抵抗値(帰還抵抗)、Tdn 第1遅延時間(立上がりエッジ)、Tdp 第2遅延時間(立下りエッジ)、Tosc 発振周期、VDD 電源電圧、Vinv 反転しきい値電圧、Vosc 発振信号。