(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】サイドスタンド構造
(51)【国際特許分類】
B62H 1/02 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
B62H1/02 A
B62H1/02 E
(21)【出願番号】P 2024022445
(22)【出願日】2024-02-16
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 敬子
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-271848(JP,A)
【文献】実開平2-129980(JP,U)
【文献】実開平04-35982(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0200380(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の左右一側に軸支され、起立位置と収納位置との間で回動可能に設けられるスタンド部材(21)を備え、
前記スタンド部材(21)は、
車体に回動可能に連結される基部(22)と、
前記スタンド部材(21)が前記起立位置にあるときに地面と接触する接地部(24)と、
前記基部(22)と前記接地部(24)とを接続する板状の接続部(23)と、を備え、
前記接続部(23)は、前記スタンド部材(21)が前記収納位置にあるときに板厚方向(F3)を車幅方向に向けて配置され、
前記接続部(23)における前記基部(22)および前記接地部(24)の間に渡る延伸方向(F1)に沿う側縁部の内、前記スタンド部材(21)が前記収納位置にあるときに車両上下方向上側に位置する上縁部(23c)には、前記板厚方向(F3)で車幅方向内側に隆起する隆起部(26)を備え、
前記上縁部(23c)における前記延伸方向(F1)で前記接地部(24)側には、前記板厚方向(F3)で車幅方向外側に突出し、前記スタンド部材(21)を回動させる際の操作部となる突出部(27)を備え、
前記隆起部(26)および前記突出部(27)は、前記スタンド部材(21)が前記収納位置にあるときに車両上下方向の上方に面する隆起上面部(26a)および突出上面部(27a)をそれぞれ備え、
前記隆起上面部(26a)および前記突出上面部(27a)は、互いに平坦状に連続して形成されていることを特徴とするサイドスタンド構造。
【請求項2】
前記接続部(23)は、車幅方向外方に面する外面部(23a)と、車幅方向内方に面する内面部(23b)と、を備え、
前記内面部(23b)は、前記スタンド部材(21)が前記収納位置にあるときに前記隆起部(26)の下方に位置していることを特徴とする請求項1に記載のサイドスタンド構造。
【請求項3】
前記隆起部(26)は、前記スタンド部材(21)が前記起立位置にあるときに前記接続部(23)の車幅方向外側の端部に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載のサイドスタンド構造。
【請求項4】
前記車体におけるスタンド支持部(31)の周囲を覆う車体カバー部材(11eL)を備え、
前記車体カバー部材(11eL)は、前記収納位置にある前記スタンド部材(21)を収納する収納凹部(34)を備え、
前記収納凹部(34)の内側には、前記収納位置にある前記スタンド部材(21)の前記内面部(23b)に向けて張り出す張り出し部(36)を備えていることを特徴とする請求項2に記載のサイドスタンド構造。
【請求項5】
前記張り出し部(36)の少なくとも前記内面部(23b)側の端部(36c)は、前記スタンド部材(21)の回動領域(R1)を周方向に延長した仮想領域に近接しており、
前記張り出し部(36)の端部(36c)は、車両上下方向において前記収納位置にある前記スタンド部材(21)の前記接続部(23)よりも下方に位置していることを特徴とする請求項4に記載のサイドスタンド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドスタンド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体をバンクさせる鞍乗り型車両のサイドスタンドにおいて、サイドスタンドを鋳造又は鍛造により所望の強度および形状に形成することが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、サイドスタンドを屈強に形成する一方で、サイドスタンドの大型化および重量増加を避けつつ、かつ外観性を向上させるような構成が要望されている。
【0005】
そこで本発明は、サイドスタンドの外観性を向上させるとともに軽量化を図りながら、サイドスタンドの強度を高めることができるサイドスタンド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、車体の左右一側に軸支され、起立位置と収納位置との間で回動可能に設けられるスタンド部材(21)を備え、前記スタンド部材(21)は、車体に回動可能に連結される基部(22)と、前記スタンド部材(21)が前記起立位置にあるときに地面と接触する接地部(24)と、前記基部(22)と前記接地部(24)とを接続する板状の接続部(23)と、を備え、前記接続部(23)は、前記スタンド部材(21)が前記収納位置にあるときに板厚方向(F3)を車幅方向に向けて配置され、前記接続部(23)における前記基部(22)および前記接地部(24)の間に渡る延伸方向(F1)に沿う側縁部の内、前記スタンド部材(21)が前記収納位置にあるときに車両上下方向上側に位置する上縁部(23c)には、前記板厚方向(F3)で車幅方向内側に隆起する隆起部(26)を備え、前記上縁部(23c)における前記延伸方向(F1)で前記接地部(24)側には、前記板厚方向(F3)で車幅方向外側に突出し、前記スタンド部材(21)を回動させる際の操作部となる突出部(27)を備え、前記隆起部(26)および前記突出部(27)は、前記スタンド部材(21)が前記収納位置にあるときに車両上下方向の上方に面する隆起上面部(26a)および突出上面部(27a)をそれぞれ備え、前記隆起上面部(26a)および前記突出上面部(27a)は、互いに平坦状に連続して形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、板状の接続部(アーム部)を有するスタンド部材によって、スタンド部材の軽量化を図るとともに、接続部の板厚方向一側の広域面を外観面として外観性向上を図ることができる。接続部の補強部分である隆起部(肉厚部)とスタンド部材の回動操作部である突出部とが面一状に連なることで、スタンド操作時の入力をスタンド部材の延伸方向(長さ方向)に分散して効果的に受けることができる。
【0007】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、前記接続部(23)は、車幅方向外方に面する外面部(23a)と、車幅方向内方に面する内面部(23b)と、を備え、前記内面部(23b)は、前記スタンド部材(21)が前記収納位置にあるときに前記隆起部(26)の下方に位置していることを特徴とする。
この構成によれば、スタンド部材が収納位置にあるときに接続部の内側面が隆起部の下方に位置することで、接続部の内面側を見えにくくし、外観性を向上させることができる。
【0008】
本発明の第三の態様は、上記第一又は第二の態様において、前記隆起部(26)は、前記スタンド部材(21)が前記起立位置にあるときに前記接続部(23)の車幅方向外側の端部に位置していることを特徴とする。
この構成によれば、板状の接続部の一側縁に形成した隆起部が、スタンド起立状態で車幅方向外側の端部に位置することで、スタンド起立状態で板状の接続部を分厚く見せつつ、接続部の内面側を見えにくくし、外観性を向上させることができる。
【0009】
本発明の第四の態様は、上記第二の態様において、前記車体におけるスタンド支持部(31)の周囲を覆う車体カバー部材(11eL)を備え、前記車体カバー部材(11eL)は、前記収納位置にある前記スタンド部材(21)を収納する収納凹部(34)を備え、前記収納凹部(34)の内側には、前記収納位置にある前記スタンド部材(21)の前記内面部(23b)に向けて張り出す張り出し部(36)を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、収納位置にあるスタンド部材を収納する収納凹部に、スタンド部材の内面側に向けて張り出す張り出し部を備えることで、スタンド収納状態でスタンド部材と車体カバー部材がより接近し、スタンド部材と車体カバー部材との隙間を減らして外観性を向上させることができる。収納凹部は車外から見て凹状となるが、収納凹部の裏側に車体フレーム等の構造物が存在する場合でも、張り出し部によって構造物を覆うことで、構造物を隠してスタンド起立状態での外観性を向上させるとともに、構造物と車体カバー部材との隙間を確保して車両部品間の干渉を抑えることができる。
【0010】
本発明の第五の態様は、上記第四の態様において、前記張り出し部(36)の少なくとも前記内面部(23b)側の端部(36c)は、前記スタンド部材(21)の回動領域(R1)を周方向に延長した仮想領域に近接しており、前記張り出し部(36)の端部(36c)は、車両上下方向において前記収納位置にある前記スタンド部材(21)の前記接続部(23)よりも下方に位置していることを特徴とする。
この構成によれば、張り出し部のスタンド内面側の端部(頂部)がスタンド部材の回動領域の延長部分に近接しながら、張り出し部の頂部を接続部よりも下方に配置することで、隆起部を張り出し部の頂部より上方に配置することが可能となり、隆起部を避ける空間を効率よく確保してスタンド部材を収納することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サイドスタンドの外観性を向上させるとともに軽量化を図りながら、サイドスタンドの強度を高めることができるサイドスタンド構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態における自動二輪車の左側面図である。
【
図2】上記自動二輪車のサイドスタンド装置におけるスタンド収納状態の左側面図である。
【
図3】上記サイドスタンド装置におけるスタンド起立状態の左側面図である。
【
図6】上記サイドスタンド装置のスタンド部材を回動軸の軸方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、が示されている。以下の説明では、車体が左右に傾かず直立した停車状態にあり、かつ水平面上で空車1G状態にあるものとする。
【0014】
<車両全体>
図1は、実施形態の鞍乗り型車両の一例として、スクータ型の自動二輪車1を示している。自動二輪車1は、操舵輪である前輪3と、駆動輪である後輪4と、を備えている。前輪3は、左右一対のフロントフォーク3aに支持され、バーハンドル2によって回動(転舵)可能である。後輪4は、スイング式のパワーユニット8に支持され、パワーユニット8によって駆動可能である。
【0015】
バーハンドル2、フロントフォーク3aおよび前輪3を含むステアリング系部品は、車体フレーム16の前端部のヘッドパイプ16aに回動可能(転舵可能)に支持されている。パワーユニット8の前部は、車体フレーム16の下部に上下揺動可能に支持されている。
車体フレーム16は、ヘッドパイプ16aと、ヘッドパイプ16aから下後方へ延びるダウンフレーム16bと、ダウンフレーム16bの下部から後方へ延びるロアフレーム16cと、ロアフレーム16cの後部から後上方へ延びるリヤフレーム16dと、を備えている。
【0016】
前輪3と後輪4との間には、運転者が足を置くフロアステップ6が設けられている。フロアステップ6の前方には、フロントボディ14が設けられている。フロアステップ6の後方には、リアボディ15が設けられている。フロントボディ14およびリアボディ15の間でフロアステップ6の上方の空間K1は、運転者が車体を跨ぐ際の跨ぎ空間K1とされる。フロントボディ14の上方には、ハンドル2が配置されている。リアボディ15の上方には、乗員が着座するシート5が支持されている。フロアステップ6の下部左側には、車体を左側に傾斜させた起立状態で支持可能な可倒式のサイドスタンド装置20が備えられている。
【0017】
パワーユニット8は、例えば駆動源である電気モータMと、電気モータMで生じた駆動力を後輪4に伝達する伝動機構(例えばギヤ式減速機)Tと、を備えている。電気モータMおよび伝動機構Tは、スイングアームとしての態様をなすパワーユニット8の左アーム部に備えられている。パワーユニット8の構成は様々であり、例えば駆動源に内燃機関を備えるものでもよい。シート5の下方には、走行用の電力を蓄電する走行用バッテリBTが搭載されている。
【0018】
自動二輪車1の車体フレーム16の周囲は、車体カバー11で覆われている。車体カバー11は、フロントボディ14の外面を形成するフロントボディカバー11aと、リアボディ15の外面を形成するリアボディカバー11bと、フロアステップ6を形成するフロアカバー11cと、を備えている。フロアカバー11cは、足載せ面(フロア上面)を形成するステップボード11dと、ステップボード11dの車幅方向外側の側縁から下方に延びる左右のフロアサイドカバー11eと、フロアステップ6の下面を覆うアンダーカバー11fと、を備えている。
【0019】
<サイドスタンド装置20>
図2はサイドスタンド装置20におけるスタンド収納状態の左側面図、
図3はサイドスタンド装置20におけるスタンド起立状態の左側面図、
図4は
図2のIV-IV断面図、
図5は
図3のV-V断面図である。車体左側のフロアサイドカバー11eを符号11eLで示す。
図2から
図5に示すように、サイドスタンド装置20は、スタンド部材(スタンドバー)21の先端側(接地部24側)を回動軸25の後方に跳ね上げた収納位置(折り畳み位置、
図2、
図4参照)と、スタンド部材21の先端側を回動軸25の下方に延ばした起立位置(使用位置、
図3、
図5参照)と、の間で回動可能である。
図2、
図4の状態をスタンド収納状態、
図3、
図5の状態をスタンド起立状態という。図中線C1は回動軸25の中心軸線を示す。
【0020】
図3、
図4を参照し、サイドスタンド装置20は、左右一対のロアフレーム16cの内の左側(左ロアフレーム16cL)に取り付けられている。サイドスタンド装置20は、左ロアフレーム16cLに固定されるスタンドブラケット31と、スタンドブラケット31に回動可能に支持されるスタンド部材21と、を備えている。
【0021】
図6はスタンド部材21を回動軸25の軸方向から見た側面図、
図7は
図6のVII-VII断面図である。
以下、スタンド部材21について説明するが、特に記載がなければ、スタンド収納状態にあるスタンド部材21の態様を説明するものとする。
図2から
図7を参照し、スタンド部材21は、基端側(スタンドブラケット31側)から先端側(接地部24側)へ直線状に延びている。スタンド部材21は、車体側(スタンドブラケット31)に回動可能に連結されるピボット部(基部)22と、ピボット部22から先端側へ離間し、スタンド起立状態で地面に接地可能な接地部24と、ピボット部22と接地部24との間に渡り直線状に延び、ピボット部22と接地部24とを接続する板状の接続部(アーム部)23と、を備えている。スタンド部材21は、例えばアルミ合金製の鍛造部品として一体形成されている。
【0022】
ピボット部22は、平板状のスタンドブラケット31のスタンド連結部32を板厚方向で挟み込む二股状をなしている。ピボット部22は、二枚一対のプレート部22a,22bを備えている。両プレート部22a,22bは、スタンド連結部32の板厚方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。両プレート部22a,22bの間には、スタンド連結部32が相対回動可能に差し込まれる溝部22cが形成されている。両プレート部22a,22bには、回動軸25を挿通する軸挿通孔が互いに同軸に形成されている。車幅方向外側のプレート部22aのさらに外側には、スタンド起立状態にあることを検知するスタンドスイッチ(ロータリースイッチ)25dが同軸に配置されている。
【0023】
スタンド部材21は、ピボット部22の溝部22c内に、スタンドブラケット31のスタンド連結部32を差し込んだ状態で、ピボット部22およびスタンド連結部32を貫通する回動軸25を取り付けることで、スタンドブラケット31に回動軸25を介して回動可能に連結(支持)される。
【0024】
回動軸25は、車幅方向外側ほど上側に位置するように上向きに傾斜している。これにより、スタンド部材21がスタンド収納状態からスタンド起立状態へ回動すると、スタンド部材21が車幅方向外側へ張り出すように延びる。このため、接地部24が車幅方向外側に配置され、車体を起立状態で支持しやすくなる。また、スタンド部材21がスタンド収納状態にあるときは、スタンド部材21の車幅方向外側への張り出しが抑えられる。このため、車体をバンクさせた際にスタンド部材21が接地しにくくなる。回動軸25は、車幅方向外側ほど前側又は後側に位置する傾斜を有してもよい。
【0025】
接続部23は、スタンド収納状態において、板厚方向(図中矢印)を車幅方向に向けるように配置されている。接続部23の板厚方向は、車幅方向に対して、車幅方向外側ほど車両上下方向の上側に位置するように傾斜している。
図5中矢印F1は接続部23におけるピボット部22および接地部24の間に渡る延伸方向を示す。
図4中矢印F2は接続部23の断面における上下縁部に渡る板幅方向、矢印F3は接続部23の断面における板幅中央での板厚方向をそれぞれ示す。
【0026】
接続部23における延伸方向に沿う一対の側縁部の内、スタンド収納状態で車両上下方向上側(かつ車幅方向外側)に位置する側縁部を上縁部23c、スタンド収納状態で車両上下方向下側(かつ車幅方向内側)に位置する側縁部を下縁部23dと称する。上縁部23cは、基端側(前端側)を除き、スタンド収納状態で略水平に延びている。上縁部23cの基端側(前端側)は、接続部23の板幅を基端側ほど減少させるように、緩やかな傾斜で切り欠かれている。上縁部23cの基端側(前端側)は、板幅を狭めた上でピボット部22に接続されている。下縁部23dは、スタンド収納状態で全体的に略水平に延び、基端側(前端側)がそのままピボット部22に接続されている。
【0027】
図4、
図7を参照し、スタンド収納状態において、接続部23の上縁部23cの車幅方向内側には、板厚方向で車幅方向内側に向けて隆起する隆起部26が形成されている。隆起部26は、断面視で先細りの三角形状をなして車幅方向内側に突出し、接続部23の上縁部23cを板厚方向で肉厚にしている。隆起部26は、スタンド収納状態で車両上下方向の上方に面する略水平な隆起上面部26aを形成している。さらに隆起部26は、スタンド収納状態で車幅方向内側の端部に位置する頂部26bと、頂部26bから下方かつ車幅方向外側へ斜めに延びる隆起下面部26cと、を形成している。
【0028】
スタンド部材21の接続部23の長さ方向(延伸方向)の中間部(中央部に限らない)には、スタンドスプリング(引張りコイルスプリング)SPの一端部(後端部)を係止する係止フック29が設けられている。係止フック29は、例えば接続部23に一体形成されている(溶接でもよい)。
【0029】
接続部23の先端側には、スタンド収納状態において接地部24とともに車幅方向外側に突出し、使用者の足によるスタンド部材21の回動操作を可能とする突出部(足掛け部)27が設けられている。突出部27は、例えば接続部23および接地部24に一体形成されている(溶接でもよい)。突出部27については後に詳述する。
【0030】
接続部23は、車幅方向外方に面する外面部23aと、車幅方向内方に面する内面部23bと、を備えている。接続部23は、延伸方向に直交する断面において、車幅方向外側に凸の湾曲状の断面形状を有している。凹状の内面部23bは、スタンド収納状態で隆起部26の下方に位置している。内面部23bの上部は、隆起部26の隆起下面部26cに向けて曲率を大きくして立ち上がって合流する。内面部23bの上部と隆起下面部26cとは、断面視で鈍角をなすように配置されている。外面部23aの上部と隆起上面部26aとは、断面視で鋭角をなすように配置されている。
【0031】
凹状の内面部23bは、スタンド収納状態において、隆起部26によって上方から隠される。これにより、スタンド収納状態で使用者がスタンド周辺を上方から見下ろしても、接続部23の凹形状(肉抜き形状)が視認されない。接続部23は、スタンド収納状態で左フロアサイドカバー11eLのカバー外面11e1に沿うように湾曲しており、左フロアサイドカバー11eLと一体的な外観を形成している。接続部23は、必ずしも湾曲板状に限らず、平板状であってもよく、周辺形状に応じて適宜の形態をとり得る。
【0032】
接続部23の上縁部23cは、スタンド部材21が収納位置から起立位置に回動すると、接続部23の車幅方向外側の端部に移動する。すなわち、隆起部26は、スタンド起立状態では接続部23の車幅方向外側の端部に位置し、隆起上面部26aを車幅方向外側に向けている。接続部23の外面部23aは、スタンド起立状態では、接続部23の前方で車幅方向外側かつ前方に面している。凹状の内面部23bは、スタンド起立状態では車幅方向内側に隠される。これにより、スタンド起立状態では接続部23の肉抜き形状が視認されず、かつ隆起上面部26aによって板状の接続部23の厚さを増した外観を創出する。
【0033】
図6、
図7を参照し、接地部24は、接続部23の延伸方向から見て、接続部23の断面形状よりも大型の接地面24aを形成している。接地部24は、接続部23の延伸方向から見て、接続部23の断面形状に対して、板厚方向で車幅方向外側に広がるとともに、回動軸25の軸方向で下方かつ車幅方向内側にも一部が突出している。
【0034】
接続部23の上縁部23cにおける延伸方向で接地部24側の部位(接地部24に隣接する部位)には、接地部24の板厚方向で車幅方向外側に突出し、使用者がスタンド部材21を回動操作する際の操作部となる突出部27が形成されている。突出部27は、接地部24側の端部が接地部24の延長部分24bに接続されて一体化されている。接地部24は、突出部27に合わせて車幅方向外側に延びている。接地部24および突出部27は、接続部23の後部から車幅方向外側への突出量(延出量)が互いに同一である。接地部24の延長部分24bは、僅かに基端側に傾斜して延び、接地面24aを車幅方向外側に延長している。
【0035】
図2から
図7を参照し、突出部27は、隆起上面部26aと平行をなすように形成されて、車幅方向外側に突出している。突出部27(および接地部24の延長部分24b)は、左フロアサイドカバー11eLのカバー外面(仮想面)11e1よりも車幅方向外側に突出し、使用者が足を掛けやすくしている。突出部27は、略水平な板状をなして車幅方向外側に突出するので、走行風の流れを乱しにくい。接地部24の外面部23aの後部、突出部27の下面部27b、および接地部24の延長部分24bの前面部24cの間には、車幅方向外側から見て凹状の湾曲面部28が形成され、スタンド部材21の断面形状の変化を滑らかにしている。突出部27は、車幅方向外側ほど車両前後方向の幅(前後幅)を狭めるように、前縁部27cが車幅方向外側ほど後側に位置するように傾斜している。突出部27は、上方から見て概ね後退翼状に形成されている。突出部27の先端部は、上向きに屈曲した先端屈曲部27dが形成され、使用者がより足を掛けやすくしている。
【0036】
左フロアサイドカバー11eLのスタンド配置部位では、後述する収納凹部34を形成することで、カバー外面11e1が切り欠かれている。よってスタンド配置部位のカバー外面11e1は仮想面であるが、周囲のカバー外面11e1と連続して形成されるものとする。例えば、スタンド配置部位のカバー外面11e1は、右フロアサイドカバー11eのカバー外面11e1と左右対称に形成されるものとする。
【0037】
突出部27は、スタンド部材21が収納位置にあるときに、車両上下方向の上方に面する突出上面部27aを形成している。突出上面部27aは、隆起上面部26aと平坦状(実施形態では面一状)に連続して形成されている。突出上面部27aおよび隆起上面部26aは、相互間に段差等を有さず平坦状(面一状)に連なっている。突出上面部27aおよび隆起上面部26aは、応力集中が生じない程度の緩やかな湾曲を有してもよい。
【0038】
図3、
図5を参照し、スタンドブラケット31は、回動軸25の軸方向と直交する平板状をなし、ピボット部22の各プレート部22a,22bと同等の厚さを有する鋼板で形成され、左ロアフレーム16cLに溶接又はボルト締結により固定されている。スタンドブラケット31は、ピボット部22の溝部22cに回動可能に差し込まれるスタンド連結部32を形成している。スタンド連結部32には、回動軸25の軸部を挿通する軸挿通孔が形成されている。軸挿通孔は、スタンド連結部32をピボット部22の溝部22c内に差し込んだ状態で、ピボット部22の一対のプレート部22a,22bに設けた軸挿通孔と同軸配置される。
【0039】
スタンド連結部32の外周側には、スタンド収納状態およびスタンド起立状態の各々においてスタンド部材21の回動位置を規定するストッパ32a1,32a2が形成されている。スタンド部材21のピボット部22には、ストッパ32a1,32a2の各々に当接するストッパ当接面22d1,22d2が形成されている。
【0040】
回動軸25は、いわゆる段付きボルト25aを軸本体として備えている。段付きボルト25aは、ピボット部22およびスタンド連結部32の各挿通孔に車幅方向外側から挿脱される。段付きボルト25aは、車幅方向外側に位置する頭部と、頭部の車幅方向内側に連なる軸部と、ピボット部22の車幅方向内側に突出するネジ軸と、を備えている。
【0041】
ピボット部22の車幅方向外側のプレート部22aの軸挿通孔と、スタンド連結部32の軸挿通孔とに、段付きボルト25aの軸部が挿通される。ピボット部22の車幅方向内側のプレート部22bの軸挿通孔に、段付きボルト25aのネジ軸が挿通される。ピボット部22の車幅方向内側に突出したネジ軸に、ナット25bが螺着して締め込まれ、もって段付きボルト25aが車幅方向内側のプレート部22bに固定される。この状態で、ピボット部22がスタンド連結部32に段付きボルト25aを介して回動可能に連結(支持)される。
【0042】
スタンドブラケット31には、スタンドスプリングSPの他端部(前端部)を係止する係止部を有している。スタンドスプリングSPは、スタンド部材21の係止フック29とスタンドブラケット31の係止部との間に張設される。スタンドスプリングSPは、自身の張力によってスタンド部材21の回動位置を起立位置または収納位置に保持する。スタンドスプリングSPによるスタンド部材21の付勢方向は、回動範囲の中間位置を境に切り替わり、起立位置寄りでは起立位置に向けて付勢され、収納位置寄りでは収納位置に向けて付勢される。
【0043】
<スタンド収納凹部34>
図2から
図5を参照し、スタンドブラケット31の周囲を覆う左フロアサイドカバー11eLには、収納位置にあるスタンド部材21を収納する収納凹部34が形成されている。
断面を参照し、収納凹部34は、左フロアサイドカバー11eLにおける車幅方向外側かつ下方に凸の湾曲状のカバー外面11e1に対し、車幅方向内側に凹むように形成されている。収納凹部34は、スタンド収納空間の上端を覆う略水平な上壁部34aと、上壁部34aの車幅方向内側端から下方かつ車幅方向内側に向けて斜めに延びる内壁部34bと、を備えている。
【0044】
ここで、左右ロアフレーム16cは、側面視で収納凹部34の後部と重なる位置で、パイプ状の左ロアフレーム部材16cLを車幅方向で挟み込むように板状のフレーム部材16eが取り付けられている。このフレーム部材16eを避けるために、収納凹部34の内壁部34bには、下方かつ車幅方向外側に向けて張り出す張り出し部(膨出部)36が形成されている。張り出し部36は、上壁部34aの外側端近傍から下方に延びる縦壁部36aと、縦壁部36aの下端から車幅方向内側へ略水平に延びる横壁部36bと、を備えている。縦壁部36aおよび横壁部36bの角部は、張り出し部36の頂部36cとされる。図中符号16fは左右ロアフレーム16c同士を連結するクロスフレームを示す。
【0045】
張り出し部36は、収納位置にあるスタンド部材21の接続部23と側面視で重なる。このとき、接続部23が板厚方向を車幅方向に向けた板状をなすことで、張り出し部36との隙間が十分に確保される。張り出し部36の頂部36cは、スタンド部材21の回動領域R1の延長部分(回動領域R1を周方向に延長した仮想領域)に近接している。しかし、張り出し部36の頂部36cは、車両上下方向において収納位置にあるスタンド部材21の接続部23の上端よりも下方に位置している。このため、接続部23の上縁部23cに形成された隆起部26が張り出し部36の頂部36cに近づきにくく、張り出し部36とスタンド部材21との隙間が局部的に減少することが抑えられる。
【0046】
以上説明したように、上記実施形態におけるサイドスタンド構造は、車体の左右一側に軸支され、起立位置と収納位置との間で回動可能に設けられるスタンド部材21を備え、前記スタンド部材21は、車体に回動可能に連結されるピボット部22と、前記スタンド部材21が前記起立位置にあるときに地面と接触する接地部24と、前記ピボット部22と前記接地部24とを接続する板状の接続部23と、を備え、前記接続部23は、前記スタンド部材21が前記収納位置にあるときに板厚方向F3を車幅方向に向けて配置され、前記接続部23における前記ピボット部22および前記接地部24の間に渡る延伸方向F1に沿う側縁部の内、前記スタンド部材21が前記収納位置にあるときに車両上下方向上側に位置する上縁部23cには、前記板厚方向F3で車幅方向内側に隆起する隆起部26を備え、前記上縁部23cにおける前記延伸方向F1で前記接地部24側の部位(接地部24に隣接する部位)には、前記板厚方向F3で車幅方向外側に突出し、前記スタンド部材21を回動させる際の操作部となる突出部27を備え、前記隆起部26および前記突出部27は、前記スタンド部材21が前記収納位置にあるときに車両上下方向の上方に面する隆起上面部26aおよび突出上面部27aをそれぞれ備え、前記隆起上面部26aおよび前記突出上面部27aは、互いに面一に連続して形成されている。
【0047】
この構成によれば、板状の接続部(アーム部)23を有するスタンド部材21によって、スタンド部材21の軽量化を図るとともに、接続部23の板厚方向F3一側の広域面を外観面として外観性向上を図ることができる。接続部23の補強部分である隆起部(肉厚部)26とスタンド部材21の回動操作部27である突出部27とが面一状に連なることで、スタンド操作時の入力をスタンド部材21の延伸方向(長さ方向)F1に分散して効果的に受けることができる。
【0048】
上記サイドスタンド構造において、前記接続部23は、車幅方向外方に面する外面部23aと、車幅方向内方に面する内面部23bと、を備え、前記内面部23bは、前記スタンド部材21が前記収納位置にあるときに、前記隆起部26の下方に位置している。
この構成によれば、スタンド部材21が収納位置にあるときに、接続部23の内側面が隆起部26の下方に位置することで、接続部23の内面側を見えにくくし、外観性を向上させることができる。
【0049】
上記サイドスタンド構造において、前記隆起部26は、前記スタンド部材21が前記起立位置にあるときに、前記接続部23の車幅方向外側の端部に位置している。
この構成によれば、板状の接続部23の一側縁に形成した隆起部26が、スタンド起立状態で車幅方向外側の端部に位置することで、スタンド起立状態で板状の接続部23を分厚く見せつつ、接続部23の内面側を見えにくくし、外観性を向上させることができる。
【0050】
上記サイドスタンド構造において、前記車体におけるスタンド支持部(スタンドブラケット31)の周囲を覆う車体カバー部材(左フロアサイドカバー11eL)を備え、前記左フロアサイドカバー11eLは、前記収納位置にある前記スタンド部材21を収納する収納凹部34を備え、前記収納凹部34の内側には、前記収納位置にある前記スタンド部材21の前記内面部23bに向けて張り出す張り出し部36を備えている。
この構成によれば、収納位置にあるスタンド部材21を収納する収納凹部34に、スタンド部材21の内面側に向けて張り出す張り出し部36を備えることで、スタンド収納状態でスタンド部材21と左フロアサイドカバー11eLがより接近し、スタンド部材21と左フロアサイドカバー11eLとの隙間を減らして外観性を向上させることができる。収納凹部34は車外から見て凹状となるが、収納凹部34の裏側に車体フレーム16等の構造物が存在する場合でも、張り出し部36によって構造物を覆うことで、構造物を隠してスタンド起立状態での外観性を向上させるとともに、構造物と左フロアサイドカバー11eLとの隙間を確保して車両部品間の干渉を抑えることができる。
【0051】
上記サイドスタンド構造において、前記張り出し部36の少なくとも前記内面部23b側の端部(頂部36c)は、前記スタンド部材21の回動領域R1を周方向に延長した仮想領域に近接しており、前記張り出し部36の端部(頂部36c)は、車両上下方向において前記収納位置にある前記スタンド部材21の前記接続部23よりも下方に位置している。
この構成によれば、張り出し部36のスタンド内面側の端部(頂部36c)がスタンド部材21の回動領域R1の延長部分24bに近接しながら、張り出し部36の頂部36cを接続部23よりも下方に配置することで、隆起部26を張り出し部36の頂部36cより上方に配置することが可能となり、隆起部26を避ける空間を効率よく確保してスタンド部材21を収納することができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、本実施形態のサイドスタンド構造は、サイドスタンドを備える車両であれば、自動二輪車以外の鞍乗り型車両に適用してもよい。
前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪(四輪バギー等)の車両も含まれる。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
11eL 左フロアサイドカバー(車体カバー部材)
16 車体フレーム
20 サイドスタンド装置
21 スタンド部材
22 ピボット部(基部)
23 接続部(アーム部)
23a 外面部
23b 内面部
23c 上縁部(側縁部)
24 接地部
24b 延長部分
26 隆起部(肉厚部)
26a 隆起上面部
27 突出部(回動操作部)
27a 突出上面部
31 スタンドブラケット(スタンド支持部)
34 収納凹部
36 張り出し部
36c 頂部(端部)
F1 延伸方向(長さ方向)
F3 板厚方向
R1 回動領域
【要約】
【課題】サイドスタンドの外観性を向上させるとともに軽量化を図りながら、サイドスタンドの強度を高めることができるサイドスタンド構造を提供する。
【解決手段】スタンド部材21は、ピボット部22と接地部24とを接続する板状の接続部23を備え、接続部23は、スタンド部材21が収納位置にあるときに板厚方向を車幅方向に向けて配置され、スタンド部材21が収納位置にあるときの上縁部には、板厚方向で車幅方向内側に隆起する隆起部26を備え、上縁部における延伸方向で接地部24側の部位には、板厚方向で車幅方向外側に突出する突出部27を備え、隆起部26および突出部27は、スタンド部材21が収納位置にあるときに車両上下方向の上方に面する隆起上面部26aおよび突出上面部27aをそれぞれ備え、隆起上面部26aおよび突出上面部27aは、互いに平坦状に連続して形成されている。
【選択図】
図6