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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】ブレース
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
E04B1/58 D
E04B1/58 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024077244
(22)【出願日】2024-05-10
【審査請求日】2024-05-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中村 博志
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰教
(72)【発明者】
【氏名】引野 剛
(72)【発明者】
【氏名】川村 典久
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直弥
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-256728(JP,A)
【文献】特開2023-042167(JP,A)
【文献】特開2019-112881(JP,A)
【文献】特開2008-132530(JP,A)
【文献】特開平11-192555(JP,A)
【文献】特開2010-261219(JP,A)
【文献】特許第7482309(JP,B1)
【文献】特開2023-177225(JP,A)
【文献】特開2020-193431(JP,A)
【文献】特開2019-132046(JP,A)
【文献】特開2024-035656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0253766(US,A1)
【文献】特許第7485843(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04H 9/02
B23K 9/167
B23K 9/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁と柱とで形成される架構に取り付けられるブレースであって、
前記ブレースの長手方向の両端に位置する一対の取付部と、
前記一対の取付部の間に位置し、前記一対の取付部に連続する中央部と、
前記一対の取付部の少なくとも一方と前記中央部とを溶接により接合する溶接部と、を備えており、
前記溶接部は開先を溶接した開先溶接部であり、
前記開先溶接部として、
前記一対の取付部の一方と前記中央部とを接合する第1開先溶接部と、
前記一対の取付部の他方と前記中央部とを接合する第2開先溶接部と、を備え、
前記第1開先溶接部及び前記第2開先溶接部のそれぞれにおいて、前記中央部側の第1ベベル角度と、前記取付部側の第2ベベル角度とが異なっており、
前記第1開先溶接部の前記第1ベベル角度と前記第2開先溶接部の前記第1ベベル角度とは同じ角度であり、かつ、
前記第1開先溶接部の前記第2ベベル角度と前記第2開先溶接部の前記第2ベベル角度とが同じ角度である、ことを特徴とするブレース。
【請求項2】
前記一対の取付部と前記中央部とで一本の芯材が形成され、
前記芯材の両端を突出させた状態で前記芯材を覆う管状の拘束部材を備え、
前記取付部の前記長手方向に直交する断面における最大外形寸法が、前記拘束部材の前記長手方向に直交する断面における最大外形寸法よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載のブレース。
【請求項3】
前記中央部は、連続する一体の材料で形成され、
前記中央部は、
前記長手方向に直交する断面における形状が前記長手方向に均一である塑性化部と、
前記長手方向で前記塑性化部の両側に隣接し、前記長手方向に直交する断面の面積が前記塑性化部の前記長手方向に直交する断面の面積から拡大するように変化する拡大部と、
を備えている、ことを特徴とする請求項に記載のブレース。
【請求項4】
前記芯材は板状に形成され、
前記長手方向に延びる長尺状の副芯材が、前記芯材の板面に立設する姿勢でかつ前記長手方向の外方側の端部が前記芯材の端部と一致する状態で設けられ、
前記副芯材は、
前記長手方向で両端に位置する一対の副取付部と、
前記一対の副取付部に前記長手方向で内方側に隣接する副内方部と、
を備え、
前記一対の副取付部と前記副内方部とは、前記長手方向における前記溶接部の位置に対応する接続位置で開先溶接されており、
前記副芯材は、前記接続位置において前記溶接部と接触しないように凹入部が形成されている、ことを特徴とする請求項に記載のブレース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に開示されるように、構造物の補強材としてブレースが用いられることがある。ブレースは、両端部が構造物に取り付けられ、軸力を受ける軸力部材としての芯材と、芯材の両端を突出させた状態で芯材を覆う管状の拘束部材と、を備える。ブレースを用いることにより、建築物の耐震・制振性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7285998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸力部材は、単一ピースで構成される。特許文献1のように、ブレースが座屈拘束ブレースである場合、芯材(軸力部材)が単一ピースであると、拘束部材を、芯材の取付部が挿通可能な大きさに設定する必要があり、拘束部材が大型化する。
また、例えば、軸力部材として管状の軸力管を用いてブレースを構成する場合、軸力管の端部に取付部を形成する必要があり、端部の加工が困難である。
各種の形態を構成しやすいブレースが求められている。
【0005】
本開示は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、各種の形態を構成しやすいブレースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るブレースは、梁と柱とで形成される架構に取り付けられるブレースであって、前記ブレースの長手方向の両端に位置する一対の取付部と、前記一対の取付部の間に位置し、前記一対の取付部に連続する中央部と、前記一対の取付部の少なくとも一方と前記中央部とを溶接により接合する溶接部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、各種の形態を構成しやすいブレースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るブレースの正面図である。
図2】一実施形態に係る芯材側溶接部を示す図である。
図3図1に示すA部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1~3を参照し、本開示の一実施形態に係るブレース1を説明する。
ブレース1は、構造物における、柱と梁とで形成される架構に取り付けられ、構造物を補強するために用いられる。本実施形態において、ブレース1は、座屈拘束ブレースである。
【0010】
図1は、本実施形態に係るブレース1の正面図である。
図1に示すように、ブレース1は、芯材10と、副芯材20と、拘束部材30と、充填材40と、を備える。なお、図1において、拘束部材30は破線で示している。
【0011】
芯材10は、長尺状の部材である。芯材10は、板状に形成される。芯材10は、例えば鋼板により構成される。芯材10は、一対の取付部11と、中央部12と、を有する。一対の取付部11と中央部12とが接合されることで、一本の芯材10が形成される。芯材10は、軸力を受ける軸力部材である。
【0012】
一対の取付部11は、ブレース1の長手方向の両端に位置する。一対の取付部11には、不図示の接続部材が取り付けられる。一対の取付部11は、接続部材を介して構造物の架構に取り付けられる。
【0013】
中央部12は、長手方向で一対の取付部11の間に位置する。中央部12は、一対の取付部11に連続する。一対の取付部11と中央部12とは、開先溶接により接合されている。すなわち、一対の取付部11と中央部12との間には、開先溶接部である芯材側溶接部14(溶接部)が形成される。芯材側溶接部14として、一対の取付部11の一方と中央部12とを接合する第1芯材側開先溶接部14A(第1開先溶接部)と、一対の取付部11の他方と中央部12とを接合する第2芯材側開先溶接部14B(第2開先溶接部)と、が形成される。
【0014】
中央部12は、塑性化部12aと、広幅部12bと、拡大部12cと、を備えている。本実施形態では、中央部12は、連続する一体の材料(具体的には、1枚の平板)で形成されている。塑性化部12aを含む中央部12は、溶接部を有していない。
【0015】
塑性化部12aは、中央部12における長手方向の中央に位置している。塑性化部12aにおける、長手方向に直交する断面形状は、長手方向に亘って一定である。
広幅部12bは、中央部12における長手方向の両端に位置している。広幅部12bの長手方向の外方端が、取付部11に接合されている。
【0016】
以下の説明において、芯材10及び副芯材20の任意の部分における、長手方向に直交する断面の面積を、当該部分の断面積と称する。中央部12において、塑性化部12aの断面積は、広幅部12bの断面積よりも小さい。具体的に、塑性化部12aの板厚は、広幅部12bの板厚と同じであるとともに、塑性化部12aの板幅は、広幅部12bの板幅よりも小さい。このような形状を備えることで、芯材10に軸圧縮荷重が付加されたとき、芯材10の他の部分よりも先に塑性化部12aを変形させ、塑性化部12a以外の部分が変形することを抑えることができる。すなわち、芯材10における長手方向の中央(すなわち、塑性化部12a)が塑性化し易い領域となり、塑性化領域が前記中央に限定される。
【0017】
拡大部12cは、広幅部12bと塑性化部12aとの境界領域である。拡大部12cは、長手方向で塑性化部12aの両側に隣接する。拡大部12cの断面積は、塑性化部12a側から広幅部12b側へ拡大するように変化する。具体的に、拡大部12cの板厚は塑性化部12aの板厚と同じであるとともに、拡大部12cの幅方向の長さは、塑性化部12a側から広幅部12b側に向かうに連れ、大きくなるように変化する。拡大部12cは、例えば、芯材10に作用する付加曲げモーメントを吸収する。
【0018】
図2を参照して、取付部11と中央部12との間に形成される芯材側溶接部14について説明する。取付部11の長手方向の内方側の端部には、第1開先B1が形成されており、中央部12の長手方向の端部には、第2開先B2が形成されている。なお、取付部11の長手方向の内方側の端部、及び中央部12の長手方向の端部のうち一方のみに開先が形成されており、他方には開先が形成されていなくてもよい。
【0019】
芯材側溶接部14(第1芯材側開先溶接部14A、第2芯材側開先溶接部14B)において、取付部11側のベベル角度である第1ベベル角度θ1(すなわち、第1開先B1のベベル角度)と、中央部12側のベベル角度である第2ベベル角度θ2(すなわち、第2開先B2のベベル角度)とは異なっている。例えば、第1ベベル角度θ1に対する、第1ベベル角度θ1と第2ベベル角度θ2との差異は、±5%以上である。図示の例では、第1ベベル角度θ1は、第2ベベル角度θ2よりも小さい。なお、第1ベベル角度θ1が、第2ベベル角度θ2よりも大きくてもよい。また、詳細な図示は省略するが、第1芯材側開先溶接部14A及び第2芯材側開先溶接部14Bのそれぞれの第1ベベル角度θ1は同じ角度である。第1芯材側開先溶接部14A及び第2芯材側開先溶接部14Bのそれぞれの第2ベベル角度θ2は同じ角度である。
【0020】
図1に戻り、副芯材20は、長尺状の部材である。副芯材20は、板状に形成される。副芯材20は、例えば鋼板により構成される。本実施形態では、副芯材20は、芯材10の両端部に設けられる。副芯材20の長手方向は、芯材10の長手方向と一致する。副芯材20の長手方向の外方側の端部は、芯材10の長手方向の端部と一致する。副芯材20は、芯材10の両端部を補強し、芯材10が板厚方向に折れ曲がることを防ぐ。
【0021】
副芯材20は、芯材10の両端部における表裏面(すなわち、芯材10の両端部における板厚方向を向く板面)に設けられている。副芯材20は、芯材10の板面に立設する姿勢で設けられる。副芯材20は、芯材10の板厚方向に沿って延びる。芯材10及び副芯材20は、断面十字状を呈している。副芯材20は、芯材10に、隅肉溶接により接合される。すなわち、芯材10と副芯材20との間には、隅肉溶接部23が形成される。
【0022】
副芯材20は、一対の副取付部21と、副内方部22と、を有する。
一対の副取付部21は、ブレース1の長手方向の両端に位置する。一対の副取付部21は、接続部材を介して構造物の架構に取り付けられる。
【0023】
副内方部22は、一対の副取付部21の長手方向で内方側に隣接する。副内方部22は、長手方向に離間して配置される第1部分22a及び第2部分22bを有する。第1部分22aは、一対の副取付部21のうち一方の副取付部21の長手方向で内方側に隣接し、この副取付部21に連続する。第2部分22bは、一対の副取付部21のうち他方の副取付部21の長手方向で内方側に隣接し、この副取付部21に連続する。
【0024】
一対の副取付部21と副内方部22とは、開先溶接により接合されている。すなわち、副取付部21と副内方部22との間には、副芯材側溶接部24が形成される。副芯材側溶接部24として、一対の副取付部21の一方と第1部分22aとを接合する第1副芯材側開先溶接部24Aと、一対の副取付部21の他方と第2部分22bとを接合する第2副芯材側開先溶接部24Bと、が形成される。
【0025】
図3は、図1に示すA部の拡大図である。図3に示すように、副取付部21と副内方部22とは、長手方向における芯材側溶接部14の位置に対応する接続位置で開先溶接されている。すなわち、副芯材側溶接部24は、芯材側溶接部14と長手方向に対応する位置に形成される。副芯材20には、接続位置において、芯材側溶接部14と副芯材20との接触を防ぐための凹入部25が形成されている。
【0026】
拘束部材30は、芯材10の両端を突出させた状態で芯材10を覆う管状の部材である。拘束部材30には、例えば、鋼管が用いられる。拘束部材30は、例えば角筒形の鋼管であってもよいし、円筒形の鋼管であってもよい。
【0027】
拘束部材30の長さは、芯材10全体の長手方向に沿う長さよりも短い。拘束部材30の長さは、中央部12の長さよりも長い。芯材側溶接部14及び副芯材側溶接部24は、拘束部材30の内側に配置される。本実施形態では、取付部11における、長手方向に直交する断面の最大外形寸法は、拘束部材30における、長手方向に直交する断面の最大外形寸法よりも大きい。
【0028】
ここで、従来は、芯材が単一ピースで構成される。この場合、拘束部材を、芯材の取付部が挿通可能な大きさに設定する必要があり、拘束部材が大型化する。本実施形態では、一対の取付部11と中央部12とを接合することで一本の芯材10が構成される。したがって、中央部12を拘束部材30に挿通し、その後、取付部11を中央部12に接合することにより、拘束部材30を芯材10に挿通させることができる。したがって、拘束部材30の寸法の増加を抑えることができ、各種の形態を構成しやすい。
【0029】
充填材40は、拘束部材30と芯材10との間に充填される。充填材40の材質は、例えば、コンクリートやモルタルである。芯材10及び副芯材20のうち、拘束部材30の内側に配置される部分は、不図示の被覆部材により覆われている。被覆部材により、芯材10及び副芯材20と充填材40とが互いに付着することが防止され、芯材10及び副芯材20は、充填材40に対して相対移動可能となっている。これにより、充填材40は、芯材10の軸力が拘束部材30に伝達しないように、芯材10を拘束部材30に対して長手方向に相対移動可能に保持する。拘束部材30及び充填材40により、芯材10の長手方向を除く方向への変形が規制される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係るブレース1は、ブレース1の長手方向の両端に位置する一対の取付部11と、一対の取付部11の間に位置し、一対の取付部11に連続する中央部12と、一対の取付部11の少なくとも一方と中央部12とを溶接により接合する芯材側溶接部14と、を備えている。
上記構成によれば、一対の取付部11の少なくとも一方と中央部12とを溶接により接合することで軸力部材である芯材10を形成することができるため、各種の形態を構成しやすいブレース1を提供することができる。
【0031】
また、芯材側溶接部14は開先を溶接した開先溶接部である。
上記構成によれば、取付部11と中央部12との接合強度を確保することができる。
【0032】
また、芯材側溶接部14として、一対の取付部11の一方と中央部12とを接合する第1芯材側開先溶接部14Aと、一対の取付部11の他方と中央部12とを接合する第2芯材側開先溶接部14Bと、を備える。第1芯材側開先溶接部14A及び第2芯材側開先溶接部14Bのそれぞれにおいて、中央部12側の第1ベベル角度θ1と、取付部11側の第2ベベル角度θ2とが異なっている。第1芯材側開先溶接部14Aの第1ベベル角度θ1と第2芯材側開先溶接部14Bの第1ベベル角度θ1とは同じ角度であり、かつ、第1芯材側開先溶接部14Aの第2ベベル角度θ2と第2芯材側開先溶接部14Bの第2ベベル角度θ2とが同じ角度である。
上記構成によれば、第1芯材側開先溶接部14Aと第2芯材側開先溶接部14Bとが対称に形成されているため、第1芯材側開先溶接部14A及び第2芯材側開先溶接部14Bのいずれか一方に荷重が集中することを抑制できる。
【0033】
また、一対の取付部11と中央部12とで一本の芯材10が形成される。芯材10の両端を突出させた状態で芯材10を覆う管状の拘束部材30を備える。取付部11の長手方向に直交する断面における最大外形寸法が、拘束部材30の長手方向に直交する断面における最大外形寸法よりも大きい。
上記構成によれば、拘束部材30の寸法の増加を抑えることができ、各種の形態を構成しやすい。
【0034】
また、中央部12は、連続する一体の材料で形成される。中央部12は、長手方向に直交する断面における形状が長手方向に均一である塑性化部12aと、長手方向で塑性化部12aの両側に隣接し、長手方向に直交する断面の面積が塑性化部12aの長手方向に直交する断面の面積から拡大するように変化する拡大部12cと、を備えている。
上記構成によれば、塑性化部12aを含む中央部12は、連続する一体の材料で形成され、溶接部を有していない。したがって、軸圧縮荷重に対して芯材10の軸耐力を十分に発揮することができる。
【0035】
また、芯材10は板状に形成される。長手方向に延びる長尺状の副芯材20が、芯材10の板面に立設する姿勢でかつ長手方向の外方側の端部が芯材10の端部と一致する状態で設けられる。副芯材20は、長手方向で両端に位置する一対の副取付部21と、一対の副取付部21に長手方向で内方側に隣接する副内方部22と、を備える。一対の副取付部21と副内方部22とは、長手方向における芯材側溶接部14の位置に対応する接続位置で開先溶接されている。副芯材20は、接続位置において芯材側溶接部14と接触しないように凹入部25が形成されている。
上記構成によれば、副芯材20により、芯材10を補強することができる。芯材10と同様に、副内方部22を拘束部材30に挿通し、その後、副取付部21を中央部12に溶接することにより、副芯材20を拘束部材30に挿通させることができる。したがって、拘束部材30の寸法の増加を抑えることができる。さらに、副芯材20に凹入部25が形成されているため、副芯材20が設けられる場合であっても、取付部11と中央部12とを容易に溶接できる。
【0036】
なお、本開示は、図面を参照して説明した上記実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
【0037】
上記の実施形態では、芯材10が、一対の取付部11と中央部12とが接合されることで形成される。しかしながら、取付部11がさらに、2以上の部材が接合されることで形成されていてもよく、中央部12がさらに、2以上の部材が接合されることで形成されていてもよい。すなわち、芯材10に、芯材側溶接部14として、取付部11を構成する2以上の部材を溶接する取付部側溶接部や、中央部12を構成する2以上の部材を溶接する中央部側溶接部が形成されていてもよい。
【0038】
上記の実施形態では、副内方部22は、長手方向に離間して配置される第1部分22a及び第2部分22bを有すると説明した。しかしながら、副内方部22は、長手方向に連続する一体の材料(1枚の平板)で形成されていてもよい。すなわち、副芯材20が、芯材10の長手方向の全長に亘って形成されていてもよい。
【0039】
その他、本開示の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0040】
(付記)
前記実施形態に係るブレースは、例えば以下のように把握される。
<1>本開示の一態様に係るブレースは、梁と柱とで形成される架構に取り付けられるブレースであって、前記ブレースの長手方向の両端に位置する一対の取付部と、前記一対の取付部の間に位置し、前記一対の取付部に連続する中央部と、前記一対の取付部の少なくとも一方と前記中央部とを溶接により接合する溶接部と、を備えている、ことを特徴とするブレース。
【0041】
上記構成によれば、一対の取付部の少なくとも一方と中央部とを溶接により接合することで軸力部材を形成することができるため、各種の形態を構成しやすいブレースを提供することができる。
【0042】
<2>上記<1>に係るブレースでは、前記溶接部は開先を溶接した開先溶接部である、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
上記構成によれば、取付部と中央部との接合強度を確保することができる。
【0043】
<3>上記<2>に係るブレースでは、前記開先溶接部として、前記一対の取付部の一方と前記中央部とを接合する第1開先溶接部と、前記一対の取付部の他方と前記中央部とを接合する第2開先溶接部と、を備え、前記第1開先溶接部及び前記第2開先溶接部のそれぞれにおいて、前記中央部側の第1ベベル角度と、前記取付部側の第2ベベル角度とが異なっており、前記第1開先溶接部の前記第1ベベル角度と前記第2開先溶接部の前記第1ベベル角度とは同じ角度であり、かつ、前記第1開先溶接部の前記第2ベベル角度と前記第2開先溶接部の前記第2ベベル角度とが同じ角度である、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
上記構成によれば、第1開先溶接部と第2開先溶接部とが対称に形成されているため、第1開先溶接部及び第2開先溶接部のいずれか一方に荷重が集中することを抑制できる。
【0044】
<4>上記<1>から<3>のいずれか一態様に係るブレースでは、前記一対の取付部と前記中央部とで一本の芯材が形成され、前記芯材の両端を突出させた状態で前記芯材を覆う管状の拘束部材を備え、前記取付部の前記長手方向に直交する断面における最大外形寸法が、前記拘束部材の前記長手方向に直交する断面における最大外形寸法よりも大きい、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
上記構成によれば、拘束部材の寸法の増加を抑えることができ、各種の形態を構成しやすい。
【0045】
<5>上記<4>に係るブレースでは、前記中央部は、連続する一体の材料で形成され、前記中央部は、前記長手方向に直交する断面における形状が前記長手方向に均一である塑性化部と、前記長手方向で前記塑性化部の両側に隣接し、前記長手方向に直交する断面の面積が前記塑性化部の前記長手方向に直交する断面の面積から拡大するように変化する拡大部と、を備えている、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
上記構成によれば、塑性化部を含む中央部は、連続する一体の材料で形成され、溶接部を有していない。したがって、軸圧縮荷重に対して芯材の軸耐力を十分に発揮することができる。
【0046】
<6>上記<4>または<5>に係るブレースでは、前記芯材は板状に形成され、前記長手方向に延びる長尺状の副芯材が、前記芯材の板面に立設する姿勢でかつ前記長手方向の外方側の端部が前記芯材の端部と一致する状態で設けられ、前記副芯材は、前記長手方向で両端に位置する一対の副取付部と、前記一対の副取付部に前記長手方向で内方側に隣接する副内方部と、を備え、前記一対の副取付部と前記副内方部とは、前記長手方向における前記溶接部の位置に対応する接続位置で開先溶接されており、前記副芯材は、前記接続位置において前記溶接部と接触しないように凹入部が形成されている、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
上記構成によれば、副芯材により、芯材を補強することができる。芯材と同様に、副内方部を拘束部材に挿通し、その後、副取付部を中央部に溶接することにより、副芯材を拘束部材に挿通させることができる。したがって、拘束部材の寸法の増加を抑えることができる。さらに、副芯材に凹入部が形成されているため、副芯材が設けられる場合であっても、取付部と中央部とを容易に溶接できる。
【符号の説明】
【0047】
1 ブレース
10 芯材
11 取付部
12 中央部
12a 塑性化部
12b 広幅部
12c 拡大部
14 芯材側溶接部(溶接部)
14A 第1芯材側開先溶接部(第1開先溶接部)
14B 第2芯材側開先溶接部(第2開先溶接部)
20 副芯材
21 副取付部
22 副内方部
30 拘束部材
θ1 第1ベベル角度
θ2 第2ベベル角度
【要約】
【課題】各種の形態を構成しやすいブレースを提供すること。
【解決手段】ブレース1は、梁と柱とで形成される架構に取り付けられ、ブレース1の長手方向の両端に位置する一対の取付部11と、一対の取付部11の間に位置し、一対の取付部11に連続する中央部12と、一対の取付部11の少なくとも一方と中央部12とを溶接により接合する溶接部14と、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3