(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】リニア搬送システム
(51)【国際特許分類】
B60L 13/03 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
B60L13/03 A
(21)【出願番号】P 2024504078
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2022008807
(87)【国際公開番号】W WO2023166598
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】山口 信一
(72)【発明者】
【氏名】有田 秀哲
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/066868(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/171456(WO,A1)
【文献】特開2001-286008(JP,A)
【文献】特開2009-177888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0346379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 13/03-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路を形成する複数の固定子モジュールと、
両側の側面に配置された複数の磁石を有する可動子とを備え、
前記複数の固定子モジュールは、前記搬送路の非分岐部分の片側に配置される片側固定子モジュールと、前記搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュールとを有し、
前記片側固定子モジュール及び前記両側固定子モジュールの各々は、鉄心と、複数のコイルとを含み、
前記可動子は、前記複数のコイルからの電磁力で推進され
、
前記搬送路の前記非分岐部分に配置された前記片側固定子モジュールのコイル量と、前記搬送路の前記分岐部分に配置された前記両側固定子モジュールのコイル量とが同等である
ことを特徴とするリニア搬送システム。
【請求項2】
前記鉄心は、複数のティースを含み、
前記複数のコイルの各々は、前記複数のティースのいずれかに巻回されており、
前記両側固定子モジュールについては、複数のティースの一部分のみにコイルが配置されており、
前記片側固定子モジュールについては、複数のティースのすべてにコイルが配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のリニア搬送システム。
【請求項3】
前記鉄心は、複数のティースを含み、
前記複数のコイルの各々は、前記複数のティースのいずれかに巻回されており、
前記両側固定子モジュールが有す
る二つの固定子モジュールのうちの一方の固定子モジュールである第1固定子モジュールと前記両側固定子モジュールが有する前記二つの固定子モジュールのうちの他方の固定子モジュールである第2固定子モジュールとの各々について、前記可動子の進行方向において、コイルが巻回されているティースとコイルが巻回されていないティースとが交互に配置されており、
前記第1固定子モジュールのティースと前記第2固定子モジュールのティースとが向き合う部分については、前記第1固定子モジュールと前記第2固定子モジュールとのうちの一方のティースにはコイルが巻回されており、前記第1固定子モジュールと前記第2固定子モジュールとのうちの他方のティースにはコイルが巻回されておらず、
前記第1固定子モジュール及び前記第2固定子モジュールの各々が含むティースの数は、偶数であり、
前記片側固定子モジュールにおけるコイルの巻数と、前記第1固定子モジュール及び前記第2固定子モジュールの各々におけるコイルの巻数とは、同じである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリニア搬送システム。
【請求項4】
前記両側固定子モジュールが含む複数のコイルの各々のスロット面積に占める割合は、1/2以下である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のリニア搬送システム。
【請求項5】
前記片側固定子モジュールが含む前記複数のコイルの各々の巻回方向は、同一であり、
前記両側固定子モジュールが有す
る二つの固定子モジュールのうちの一方の固定子モジュールである第1固定子モジュールに含まれるコイルの巻回方向と、前記両側固定子モジュールが有する前記二つの固定子モジュールのうちの他方の固定子モジュールである第2固定子モジュールに含まれるコイルの巻回方向とは、逆である
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のリニア搬送システム。
【請求項6】
前記両側固定子モジュールが有す
る二つの固定子モジュールのうちの一方の固定子モジュールである第1固定子モジュールと前記両側固定子モジュールが有する前記二つの固定子モジュールのうちの他方の固定子モジュールである第2固定子モジュールとは、向き合っておらず、前記可動子の進行方向と垂直な方向であると共に前記両側固定子モジュールを進行する際の前記可動子が有する前記複数の磁石の磁力線の方向に垂直な方向において、異なる位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のリニア搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リニアモータの推力を使用するリニア搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の磁石が取り付けられた可動子が複数の固定子モジュールによって構成されるリニアガイドに沿って移動し、電磁力により経路の分岐及び合流が可能な技術が知られている。例えば特許文献1は、分岐区間において固定子のコイルが両側に配置され、片側のコイルに通電して、可動子を分岐方向に移動させる横方向の力を加える発明を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のリニア搬送システムでは、分岐部分の両側に非分岐部分と同様のコイルが配置されるため、モータの重量が増加する課題がある。さらに、分岐部分のみコイルを両側に配置して分岐部分と非分岐部分とについて同じインバータを用いる場合、分岐部分で非分岐部分と同等の推力を発生させるためには、分岐部分のコイルの半分に通電すればよく、活用されないインバータが生じる。又は、分岐部分で通電する電流が非分岐部分で通電する電流の1/2となり、インバータの性能を1/2しか活用できないため、インバータが大型化する課題がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、モータの重量とインバータの容量とを抑制すると共に小型化に寄与するリニア搬送システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るリニア搬送システムは、搬送路を形成する複数の固定子モジュールと、両側の側面に配置された複数の磁石を有する可動子とを有する。複数の固定子モジュールは、搬送路の非分岐部分の片側に配置される片側固定子モジュールと、搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュールとを有する。片側固定子モジュール及び両側固定子モジュールの各々は、鉄心と、複数のコイルとを含む。可動子は、複数のコイルからの電磁力で推進される。搬送路の非分岐部分に配置された片側固定子モジュールのコイル量と、搬送路の分岐部分に配置された両側固定子モジュールのコイル量とが同等である。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るリニア搬送システムは、モータの重量とインバータの容量とを抑制すると共に小型化に寄与することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係るリニア搬送システムの全体の構成を示す図
【
図2】実施の形態1に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュールの斜視図
【
図3】実施の形態1に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュールの断面図
【
図4】実施の形態1の第1の変形例に係るリニア搬送システムが有する可動子の断面図
【
図5】実施の形態1の第2の変形例に係るリニア搬送システムが有する可動子の断面図
【
図6】実施の形態1に係るリニア搬送システムが有する片側固定子モジュールの断面図
【
図7】実施の形態2に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュールの断面図
【
図8】実施の形態2の変形例に係るリニア搬送システムが有する可動子の断面図
【
図9】実施の形態3に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュールの断面図
【
図10】実施の形態4に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュールの断面図
【
図11】実施の形態5に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュールの斜視図
【
図12】実施の形態5に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュールの第1の断面図
【
図13】実施の形態5に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュールの第2の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態に係るリニア搬送システムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るリニア搬送システム1の全体の構成を示す図である。リニア搬送システム1は、搬送路を形成する複数の固定子モジュール2を有する。複数の固定子モジュール2は、搬送路の非分岐部分の片側に配置される片側固定子モジュール21と、搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュール22とを有する。非分岐部分の例は、直線部である。
【0011】
リニア搬送システム1は、複数の片側固定子モジュール21と複数の両側固定子モジュール22とを有する。分岐部分では、一つの搬送路が二つの搬送路に分岐したり、二つの搬送路が一つの搬送路に合流したりする。リニア搬送システム1は、両側の側面に配置された複数の磁石を有する可動子3を更に有する。リニア搬送システム1は、複数の可動子3を有する。
【0012】
図2は、実施の形態1に係るリニア搬送システム1が有する両側固定子モジュール22の斜視図である。
図3は、実施の形態1に係るリニア搬送システム1が有する両側固定子モジュール22の断面図である。
図2及び
図3には、可動子3も示されている。
図2及び
図3は、両側固定子モジュール22及び可動子3を模式的に示している。
図2及び
図3には、可動子3の進行方向も示されている。
【0013】
両側固定子モジュール22は、二つの固定子モジュールを有する。具体的には、両側固定子モジュール22は、第1固定子モジュール221と第2固定子モジュール222とを有する。第1固定子モジュール221は、両側固定子モジュール22が有する二つの固定子モジュールのうちの一方の固定子モジュールである。第2固定子モジュール222は、両側固定子モジュール22が有する二つの固定子モジュールのうちの他方の固定子モジュールである。第1固定子モジュール221は搬送路の分岐部分の一方の側に配置され、第2固定子モジュール222は搬送路の分岐部分の他方の側に配置される。
【0014】
第1固定子モジュール221は、鉄心41と、複数のコイル42とを有する。鉄心41は、複数のティース43を有する。複数のコイル42の各々は、複数のティース43のいずれかに巻回されている。第2固定子モジュール222は、鉄心51と、複数のコイル52とを有する。鉄心51は、複数のティース53を有する。複数のコイル52の各々は、複数のティース53のいずれかに巻回されている。第1固定子モジュール221が有するティース43の数及び第2固定子モジュール222が有するティース53の数は、偶数である。
【0015】
第1固定子モジュール221と第2固定子モジュール222との各々について、可動子3の進行方向において、コイル42,52が巻回されているティース43,53とコイル42,52が巻回されていないティース43,53とが交互に配置されている。更に言うと、第1固定子モジュール221のコイル42が巻回されているティース43は、第2固定子モジュール222のコイル52が巻回されているティース53と向き合っている。第1固定子モジュール221のコイル42が巻回されていないティース43は、第2固定子モジュール222のコイル52が巻回されていないティース53と向き合っている。
【0016】
可動子3は、両側の側面に配置された複数の磁石31を有する。可動子3は、搬送路の分岐部分では、第1固定子モジュール221と第2固定子モジュール222との間に位置し、第1固定子モジュール221が有する複数のコイル42又は第2固定子モジュール222が有する複数のコイル52からの電磁力で推進される。複数の可動子3の各々は、搬送路において独立して制御される。図示されていないモータ駆動制御装置が、可動子3の近傍に位置する固定子モジュール2の各コイルに電流を供給する。例えば、電流は、UVWの三相交流の電流ではなく、各相を独立に制御する単相交流の電流であり、各コイルに任意の波形で電流が供給される。
【0017】
上述の通り、可動子3は、両側の側面に配置された複数の磁石31を有する。可動子3の両側の側面における磁石配列については、可動子3の第1固定子モジュール221に面する側面と可動子3の第2固定子モジュール222に面する側面とで、磁石31の磁極方向が反転している。実施の形態1では、可動子3の第1固定子モジュール221に面する側はX側と定義され、可動子3の第2固定子モジュール222に面する側はY側と定義される。X側とY側とで磁石配列が同じであってもよい。
図4は、実施の形態1の第1の変形例に係るリニア搬送システムが有する可動子3の断面図である。
図4には、両側固定子モジュール22も示されている。
図4は、可動子3及び両側固定子モジュール22を模式的に示している。
図4には、可動子3の進行方向も示されている。
図4は、X側とY側とで磁石31の配列が同じであることを示している。X側の磁石配列とY側の磁石配列とが同じになることで、非分岐部分において推進力が発生する際に、X側に電磁力が作用する場合の電流指令とY側に電磁力が作用する場合の電流指令とが一致するため、制御が容易である。X側とY側とで磁石配列が進行方向にずれていてもよい。なお、コイル42及びコイル52が配置される位置は、
図3においてコイル42及びコイル52が配置されている位置と同じ位置であってもよい。
図5は、実施の形態1の第2の変形例に係るリニア搬送システムが有する可動子3の断面図である。
図5には、両側固定子モジュール22も示されている。
図5は、可動子3及び両側固定子モジュール22を模式的に示している。
図5には、可動子3の進行方向も示されている。
図5は、X側とY側とで磁石31の配列が進行方向に磁石ピッチの半分ずれていることを示している。X側とY側とで磁石配列が進行方向にずれることで、X側に働くコギング推力とY側に働くコギング推力とが相殺して、コギング推力を抑制することができる。コギング推力が最小となるずらし量は、
図5に示される通り、磁石ピッチの半分である。なお、コイル42及びコイル52が配置される位置は、
図3においてコイル42及びコイル52が配置されている位置と同じ位置であってもよい。
【0018】
搬送路の分岐部分では、上述の通り、可動子3は、第1固定子モジュール221と第2固定子モジュール222との間に位置する。可動子3が有する複数の磁石31の各々は、第1固定子モジュール221の側面又は第2固定子モジュール222の側面と向き合う。分岐部分における両側固定子モジュール22では、可動子3を選択された経路に導くために、可動子3の近傍のコイルが通電され、両側固定子モジュール22は、可動子3の進行方向に対して垂直な方向に電磁力を作用させる。これにより、両側固定子モジュール22は、可動子3を移動させる。
【0019】
第1固定子モジュール221と可動子3のX側との間隔が第2固定子モジュール222と可動子3のY側との間隔より小さく、リニア搬送システム1のユーザが第2固定子モジュール222と可動子3のY側との間隔が小さくなる方向の経路を選択した場合を想定する。リニア搬送システム1は、両側固定子モジュール22にX側からY側への電磁力を作用させる。それにより、第2固定子モジュール222と可動子3のY側との間隔は、第1固定子モジュール221と可動子3のX側との間隔より小さくなり、リニア搬送システム1は、第2固定子モジュール222と可動子3のY側との間隔が小さくなる方向の経路に可動子3を進行させることができる。
【0020】
図6は、実施の形態1に係るリニア搬送システム1が有する片側固定子モジュール21の断面図である。
図6には、可動子3も示されている。
図6は、片側固定子モジュール21及び可動子3を模式的に示している。
図6には、可動子3の進行方向も示されている。上述の通り、片側固定子モジュール21は、搬送路の非分岐部分の片側に配置される。つまり、非分岐部分では、片側固定子モジュール21は可動子3の片側に位置する。
【0021】
片側固定子モジュール21は、鉄心61と、複数のコイル62とを有する。鉄心61は、複数のティース63を有する。複数のコイル62の各々は、複数のティース63のいずれかに巻回されている。複数のティース63のすべてに、コイル62が巻回されている。非分岐部分では、可動子3は、複数のコイル62からの電磁力で推進される。
【0022】
搬送路の非分岐部分に配置された片側固定子モジュール21のコイル量と、搬送路の分岐部分に配置された両側固定子モジュール22のコイル量とが同等である。
【0023】
上述の通り、第1固定子モジュール221と第2固定子モジュール222との各々について、可動子3の進行方向において、コイル42,52が巻回されているティース43,53とコイル42,52が巻回されていないティース43,53とが交互に配置されている。加えて、第1固定子モジュール221が有する複数のティース43の数及び第2固定子モジュール222が有する複数のティース53の数は、偶数である。つまり、搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュール22では、コイルが巻回されているティースの数とコイルが巻回されていないティースの数とは同じである。
【0024】
搬送路の分岐部分と非分岐部分とでは、各コイルに印加される電流の実効値が同等である場合、分岐部分に配置された両側固定子モジュール22で発生する推力の合計は、非分岐部分に配置された片側固定子モジュール21で発生する推力の合計と等しくなる。
【0025】
上述の通り、実施の形態1に係るリニア搬送システム1は、搬送路の非分岐部分の片側に配置される片側固定子モジュール21と、搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュール22とを有する。両側固定子モジュール22は、第1固定子モジュール221と第2固定子モジュール222とを有する。第1固定子モジュール221と第2固定子モジュール222との各々には、コイルが巻回されていないティースが存在する。つまり、実施の形態1では、従来よりコイルが削減されている。リニア搬送システム1は、コイルの削減によってモータの重量を低減することができる。加えて、リニア搬送システム1によれば、コイルの削減によって配線作業が減り、モータの組立が容易になる。コイル数の削減により、リニア搬送システム1のインバータ(制御装置)の数を削減することができる。
【0026】
リニア搬送システム1では、搬送路の非分岐部分に配置された片側固定子モジュール21のコイル量と、搬送路の分岐部分に配置された両側固定子モジュール22のコイル量とが同等である。そのため、片側固定子モジュール21に電力を供給するインバータの容量と両側固定子モジュール22に電力を供給するインバータの容量とを同等にした場合、ある一定の推力を出力する際に分岐部分のコイルと非分岐部分のコイルとでは通電する電流の実効値が同じになる。つまり、分岐部分と非分岐部分とでインバータの負荷率が等しくなる。すなわち、リニア搬送システム1は、インバータの容量を抑制することができ、ひいては小型化に寄与することができる。
【0027】
なお、両側固定子モジュール22に含まれる複数のティース43,53について、可動子3の進行方向において、コイル42,52が巻回されているティース43,53とコイル42,52が巻回されていないティース43,53とが交互に配置されると限定されない。実施の形態1では、複数のティース43,53の一部分のみに、コイル42,52が配置されればよい。
【0028】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュール22Aの断面図である。実施の形態2に係るリニア搬送システムは、実施の形態1に係るリニア搬送システム1と同様に、片側固定子モジュール21と、搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュール22Aとを有する。実施の形態2では、片側固定子モジュール21は図示されない。実施の形態2に係るリニア搬送システムは、実施の形態1に係るリニア搬送システム1と同様に、可動子3を更に有する。
図7には、可動子3も示されている。
図7は、両側固定子モジュール22A及び可動子3を模式的に示している。
図7には、可動子3の進行方向も示されている。
【0029】
搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュール22Aは、二つの固定子モジュールを有する。具体的には、両側固定子モジュール22Aは、第1固定子モジュール221Aと第2固定子モジュール222Aとを有する。第1固定子モジュール221Aは、両側固定子モジュール22Aが有する二つの固定子モジュールのうちの一方の固定子モジュールである。第2固定子モジュール222Aは、両側固定子モジュール22Aが有する二つの固定子モジュールのうちの他方の固定子モジュールである。第1固定子モジュール221Aは搬送路の分岐部分の一方の側に配置され、第2固定子モジュール222Aは搬送路の分岐部分の他方の側に配置される。
【0030】
第1固定子モジュール221Aは、鉄心41と、複数のコイル42とを有する。鉄心41は、複数のティース43a,43bを有する。複数のコイル42の各々は、複数のティース43aのいずれかに巻回されている。第1固定子モジュール221Aには、可動子3の進行方向において、コイル42が巻回されているティース43aとコイル42が巻回されていないティース43bとが交互に配置されている。
【0031】
第2固定子モジュール222Aは、鉄心51と、複数のコイル52とを有する。鉄心51は、複数のティース53a,53bを有する。複数のコイル52の各々は、複数のティース53aのいずれかに巻回されている。第2固定子モジュール222Aには、可動子3の進行方向において、コイル52が巻回されているティース53aとコイル52が巻回されていないティース53bとが交互に配置されている。第1固定子モジュール221Aが有するティース43a,43bの数及び第2固定子モジュール222Aが有するティース53a,53bの数は、偶数である。
【0032】
第1固定子モジュール221Aのティースと第2固定子モジュール222Aのティースとが向き合う部分については、第1固定子モジュール221Aと第2固定子モジュール222Aとのうちの一方のティースにはコイルが巻回されており、第1固定子モジュール221Aと第2固定子モジュール222Aとのうちの他方のティースにはコイルは巻回されていない。X側の磁石数とY側の磁石数とは異なってもよい。
図8は、実施の形態2の変形例に係るリニア搬送システムが有する可動子3の断面図である。
図8には、両側固定子モジュール22Aも示されている。
図8は、可動子3及び両側固定子モジュール22Aを模式的に示している。
図8には、可動子3の進行方向も示されている。
図8は、X側の磁石31の数とY側の磁石31の数とが異なっていることを示している。具体的には、
図8は、X側に3個の磁石31を有しY側に5個の磁石31を有する可動子3を示している。X側の磁石数とY側の磁石数とが異なると、コイルを交互に配置した場合でも、少なくとも二つ以上のコイルに通電することで、任意の推進力と分岐横力とを発生させることができる。なお、コイル42及びコイル52が配置される位置は、
図3においてコイル42及びコイル52が配置されている位置と同じ位置であってもよい。
【0033】
上述の通り、実施の形態2に係るリニア搬送システムは、実施の形態1に係るリニア搬送システム1と同様に、片側固定子モジュール21を有する。実施の形態2では、片側固定子モジュール21におけるコイルの巻数と、両側固定子モジュール22Aにおけるコイルの巻数とは、同じである。これにより、コイルへの通電で生じる推力を電流値で除した推力定数が、分岐部分と非分岐部分とで同等となる。
【0034】
実施の形態2に係るリニア搬送システムでは、リニア搬送システムが分岐部分と非分岐部分とにおいて同等の推力を出力する場合、分岐部分に配置される両側固定子モジュール22Aに通電される電流の波形の絶対値と、非分岐部分に配置される片側固定子モジュール21に通電される電流の波形の絶対値とが等しくなる。そのため、実施の形態2に係るリニア搬送システムでは、電流の制御が容易となる。加えて、分岐部分と非分岐部分とで可動子3に作用する電磁力の滑らかさが同等となり、実施の形態2に係るリニア搬送システムは、推力リップルを低減することができる。
【0035】
実施の形態3.
図9は、実施の形態3に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュール22Bの断面図である。実施の形態3に係るリニア搬送システムは、実施の形態1に係るリニア搬送システム1と同様に、片側固定子モジュール21と、搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュール22Bとを有する。実施の形態3では、片側固定子モジュール21は図示されない。実施の形態3に係るリニア搬送システムは、実施の形態1に係るリニア搬送システム1と同様に、可動子3を更に有する。
図9には、可動子3も示されている。
図9は、両側固定子モジュール22B及び可動子3を模式的に示している。
図9には、可動子3の進行方向も示されている。
【0036】
搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュール22Bは、二つの固定子モジュールを有する。具体的には、両側固定子モジュール22Bは、第1固定子モジュール221Bと第2固定子モジュール222Bとを有する。第1固定子モジュール221Bは、両側固定子モジュール22Bが有する二つの固定子モジュールのうちの一方の固定子モジュールである。第2固定子モジュール222Bは、両側固定子モジュール22Bが有する二つの固定子モジュールのうちの他方の固定子モジュールである。第1固定子モジュール221Bは搬送路の分岐部分の一方の側に配置され、第2固定子モジュール222Bは搬送路の分岐部分の他方の側に配置される。
【0037】
第1固定子モジュール221Bは、鉄心41と、複数のコイル42とを有する。鉄心41は、複数のティース43a,43bを有する。複数のコイル42の各々は、複数のティース43aのいずれかに巻回されている。第1固定子モジュール221Bには、可動子3の進行方向において、コイル42が巻回されているティース43aとコイル42が巻回されていないティース43bとが交互に配置されている。
【0038】
第2固定子モジュール222Bは、鉄心51と、複数のコイル52とを有する。鉄心51は、複数のティース53a,53bを有する。複数のコイル52の各々は、複数のティース53aのいずれかに巻回されている。第2固定子モジュール222Bには、可動子3の進行方向において、コイル52が巻回されているティース53aとコイル52が巻回されていないティース53bとが交互に配置されている。第1固定子モジュール221Bが有するティース43a,43bの数及び第2固定子モジュール222Bが有するティース53a,53bの数は、偶数である。
【0039】
第1固定子モジュール221Bのティースと第2固定子モジュール222Bのティースとが向き合う部分については、第1固定子モジュール221Bと第2固定子モジュール222Bとのうちの一方のティースにはコイルが巻回されており、第1固定子モジュール221Bと第2固定子モジュール222Bとのうちの他方のティースにはコイルは巻回されていない。
【0040】
図9に示されるように、実施の形態3では、両側固定子モジュール22Bが含む複数のコイル42,52の各々のスロット面積44,54に占める割合は、1/2以下である。実施の形態3では、分岐部分に配置される両側固定子モジュール22B及び非分岐部分に配置される片側固定子モジュール21のコイルの線種及び線径は、同じである。
【0041】
実施の形態3では、分岐部分と非分岐部分とでコイルの種類が統一されているため、実施の形態3に係るリニア搬送システムによれば、リニア搬送システムの製造コストを低減することができる。加えて、隣り合う二つのコイルの間の絶縁距離を十分に確保することができるため、実施の形態3に係るリニア搬送システムの耐圧性能は向上する。
【0042】
実施の形態4.
図10は、実施の形態4に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュール22Cの断面図である。実施の形態4に係るリニア搬送システムは、実施の形態1に係るリニア搬送システム1と同様に、片側固定子モジュール21と、搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュール22Cとを有する。実施の形態4では、片側固定子モジュール21は図示されない。実施の形態4に係るリニア搬送システムは、実施の形態1に係るリニア搬送システム1と同様に、可動子3を更に有する。
図10には、可動子3も示されている。
図10は、両側固定子モジュール22C及び可動子3を模式的に示している。
図10には、可動子3の進行方向も示されている。
【0043】
搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュール22Cは、二つの固定子モジュールを有する。具体的には、両側固定子モジュール22Cは、第1固定子モジュール221Cと第2固定子モジュール222Cとを有する。第1固定子モジュール221Cは、両側固定子モジュール22Cが有する二つの固定子モジュールのうちの一方の固定子モジュールである。第2固定子モジュール222Cは、両側固定子モジュール22Cが有する二つの固定子モジュールのうちの他方の固定子モジュールである。第1固定子モジュール221Cは搬送路の分岐部分の一方の側に配置され、第2固定子モジュール222Cは搬送路の分岐部分の他方の側に配置される。
【0044】
第1固定子モジュール221Cは、鉄心41と、複数のコイル42とを有する。鉄心41は、複数のティース43を有する。複数のコイル42の各々は、複数のティース43のいずれかに巻回されている。第1固定子モジュール221Cには、可動子3の進行方向において、コイル42が巻回されているティース43とコイル42が巻回されていないティース43とが交互に配置されている。
【0045】
第2固定子モジュール222Cは、鉄心51と、複数のコイル52とを有する。鉄心51は、複数のティース53を有する。複数のコイル52の各々は、複数のティース53のいずれかに巻回されている。第2固定子モジュール222Cには、可動子3の進行方向において、コイル52が巻回されているティース53とコイル52が巻回されていないティース53とが交互に配置されている。第1固定子モジュール221Cが有するティース43の数及び第2固定子モジュール222Cが有するティース53の数は、偶数である。
【0046】
第1固定子モジュール221Cのティース43と第2固定子モジュール222Cのティース53とが向き合う部分については、第1固定子モジュール221Cと第2固定子モジュール222Cとのうちの一方のティースにはコイルが巻回されており、第1固定子モジュール221Cと第2固定子モジュール222Cとのうちの他方のティースにはコイルは巻回されていない。
【0047】
図10では、複数のコイル42及び複数のコイル52の各々が巻回されている方向が示されている。
図10において、白い丸と当該白い丸のなかに記載されている黒い丸とで構成される図形は、コイルのなかの当該図形が付与されている部分が紙面の裏側から表側の方向に巻回されていることを示している。白い丸と当該白い丸のなかに記載されているバツ印とで構成される図形は、コイルのなかの当該図形が付与されている部分が紙面の表側から裏側の方向に巻回されていることを示している。
【0048】
図10に示される通り、第1固定子モジュール221Cに含まれるすべてのコイル42の巻回方向は同一であり、第2固定子モジュール222Cに含まれるすべてのコイル52の巻回方向は同一である。第1固定子モジュール221Cに含まれるコイル42の巻回方向と、第2固定子モジュール222Cに含まれるコイル52の巻回方向とは、逆である。片側固定子モジュール21に含まれるすべてのコイル62の巻回方向は、同一である。
【0049】
実施の形態4に係るリニア搬送システムでは、分岐部分と非分岐部分との各コイルにおける誘起電圧の波形が同等となり、リニア搬送システムが分岐部分と非分岐部分とで同等の推力を出力する場合、搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュール22Cに通電される電流波形と、搬送路の非分岐部分に配置される片側固定子モジュール21に通電される電流波形とが等しくなり、実施の形態4に係るリニア搬送システムでは、電流の制御が更に容易となる。誘起電圧は、逆起電力である。
【0050】
両側固定子モジュール22Cでは、第2固定子モジュール222Cは、第1固定子モジュール221Cと同じ固定子モジュールを180°反転させて配置された固定子モジュールであって、第1固定子モジュール221Cと向き合っている。つまり、分岐部分の両側固定子モジュール22Cが有する二つの固定子モジュールを同一の部品で構成することができるため、実施の形態4に係るリニア搬送システムは、製造コストを低減することができる。
【0051】
実施の形態5.
図11は、実施の形態5に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュール22Dの斜視図である。実施の形態5に係るリニア搬送システムは、実施の形態1に係るリニア搬送システム1と同様に、片側固定子モジュール21と、搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュール22Dとを有する。実施の形態5では、片側固定子モジュール21は図示されない。実施の形態5に係るリニア搬送システムは、実施の形態1に係るリニア搬送システム1と同様に、可動子3を更に有する。
図11には、可動子3も示されている。
図11には、可動子3の進行方向も示されている。
図12は、実施の形態5に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュール22Dの第1の断面図である。
図12には、可動子3も示されている。
図11及び
図12は、両側固定子モジュール22D及び可動子3を模式的に示している。
【0052】
搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュール22Dは、二つの固定子モジュールを有する。具体的には、両側固定子モジュール22Dは、第1固定子モジュール221Dと第2固定子モジュール222Dとを有する。第1固定子モジュール221Dは、両側固定子モジュール22Dが有する二つの固定子モジュールのうちの一方の固定子モジュールである。第2固定子モジュール222Dは、両側固定子モジュール22Dが有する二つの固定子モジュールのうちの他方の固定子モジュールである。第1固定子モジュール221Dは搬送路の分岐部分の一方の側に配置され、第2固定子モジュール222Dは搬送路の分岐部分の他方の側に配置される。
【0053】
第1固定子モジュール221Dと第2固定子モジュール222Dとは、向き合っていない。更に言うと、第1固定子モジュール221Dと第2固定子モジュール222Dとは、可動子3の進行方向と垂直な方向であると共に両側固定子モジュール22Dを進行する際の可動子3が有する複数の磁石31の磁力線の方向と垂直な方向において、異なる位置に配置されている。
【0054】
例えば、搬送路が水平面と平行な面に設けられている場合、第1固定子モジュール221Dと第2固定子モジュール222Dとは、鉛直方向zにおいて異なる位置に配置されている。詳細については後述するが、第1固定子モジュール221D及び第2固定子モジュール222Dはいずれも鉄心を有している。例えば、上述の場合、鉛直方向zは、鉄心の高さ方向hと平行である。第1固定子モジュール221D及び第2固定子モジュール222Dの各々の高さは、搬送路の非分岐部分の片側に配置される片側固定子モジュール21の高さの1/2である。
【0055】
図13は、実施の形態5に係るリニア搬送システムが有する両側固定子モジュール22Dの第2の断面図である。
図13には、可動子3も示されている。
図13は、両側固定子モジュール22D及び可動子3を模式的に示している。
図13には、可動子3の進行方向も示されている。
【0056】
第1固定子モジュール221Dは、鉄心41と、複数のコイル42とを有する。鉄心41は、複数のティース43を有する。複数のコイル42の各々は、複数のティース43のいずれかに巻回されている。すべてのティース43に、コイル42が巻回されている。第2固定子モジュール222Dは、鉄心51と、複数のコイル52とを有する。鉄心51は、複数のティース53を有する。複数のコイル52の各々は、複数のティース53のいずれかに巻回されている。すべてのティース53に、コイル52が巻回されている。
【0057】
図13では、複数のコイル42及び複数のコイル52の各々が巻回されている方向が示されている。
図13において、白い丸と当該白い丸のなかに記載されている黒い丸とで構成される図形は、コイルのなかの当該図形が付与されている部分が紙面の裏側から表側の方向に巻回されていることを示している。白い丸と当該白い丸のなかに記載されているバツ印とで構成される図形は、コイルのなかの当該図形が付与されている部分が紙面の表側から裏側の方向に巻回されていることを示している。
【0058】
図13に示される通り、第1固定子モジュール221Dに含まれるすべてのコイル42の巻回方向は同一であり、第2固定子モジュール222Dに含まれるすべてのコイル52の巻回方向は同一である。第1固定子モジュール221Dに含まれるコイル42の巻回方向と、第2固定子モジュール222Dに含まれるコイル52の巻回方向とは、逆である。つまり、第2固定子モジュール222Dは、第1固定子モジュール221Dと同じ固定子モジュールを180°反転させた状態で配置された固定子モジュールである。片側固定子モジュール21に含まれる複数のコイル62のすべての巻回方向は、同一である。
【0059】
上述の通り、実施の形態5に係るリニア搬送システムでは、搬送路の分岐部分の両側に配置される両側固定子モジュール22Dが有する第1固定子モジュール221D及び第2固定子モジュール222Dの各々の高さは、搬送路の非分岐部分の片側に配置される片側固定子モジュール21の高さの1/2である。つまり、第1固定子モジュール221Dが有する鉄心41及び第2固定子モジュール222Dが有する鉄心51の各々の高さは、片側固定子モジュール21が有する鉄心61の高さの1/2である。そのため、実施の形態5に係るリニア搬送システムは、モータの重量を低減することができる。
【0060】
両側固定子モジュール22Dでは、第2固定子モジュール222Dは、第1固定子モジュール221Dと同じ固定子モジュールを180°反転させた状態で配置された固定子モジュールである。つまり、分岐部分の両側固定子モジュール22Dが有する二つの固定子モジュールを同一の部品で構成することができるため、実施の形態5に係るリニア搬送システムは、製造コストを低減することができる。
【0061】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略又は変更することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 リニア搬送システム、2 固定子モジュール、3 可動子、21 片側固定子モジュール、22,22A,22B,22C,22D 両側固定子モジュール、31 磁石、41,51,61 鉄心、42,52,62 コイル、43,43a,43b,53,53a,53b,63 ティース、44,54 スロット面積、221,221A,221B,221C,221D 第1固定子モジュール、222,222A,222B,222C,222D 第2固定子モジュール。