(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
F04D29/28 L
(21)【出願番号】P 2024509534
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2022013588
(87)【国際公開番号】W WO2023181193
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】岡本 一輝
(72)【発明者】
【氏名】秋場 勇児
(72)【発明者】
【氏名】宮本 和真
(72)【発明者】
【氏名】澤野 友祐
(72)【発明者】
【氏名】横山 周平
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-49799(JP,U)
【文献】国際公開第2015/083195(WO,A1)
【文献】実開昭51-163512(JP,U)
【文献】実開昭56-88999(JP,U)
【文献】特許第4591619(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/00-29/12
F04D 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、前記シャフトの一部を収容する筐体とを有するモータと、
前記シャフトのうち前記筐体の外部に位置する部分に取り付けられて前記シャフトの回転に伴って回転する主板と、前記主板の外周縁に沿って互いに間隔を空けて設けられて前記シャフトの軸方向に延びる複数の翼とを有する羽根車と、
前記主板と前記筐体との間で前記シャフトに取り付けられて、前記主板に接触して前記羽根車の前記軸方向の位置を固定する固定部材と、
前記羽根車を収容するケーシングと、
を備え、
前記主板は、前記固定部材の方を向く主板軸端面を有し、
前記主板軸端面および前記固定部材のうちいずれか一方には、前記軸方向と直交する方向である半径方向に前記シャフトと離れた位置に設けられて前記主板軸端面および前記固定部材のうちいずれか他方に接触する接触部と、前記シャフトから前記接触部に亘って設けられて前記接触部が前記主板軸端面および前記固定部材のうちいずれか他方に接触した状態で前記主板軸端面および前記固定部材のうちいずれか他方から離隔する離隔部とが形成されていることを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記接触部は、前記半径方向に前記シャフトと離れた位置に設けられて前記固定部材に接触する環状の平面であり、
前記離隔部は、前記シャフトから前記平面に亘って設けられて前記平面が前記固定部材に接触した状態で前記固定部材から離隔する凹部であることを特徴とする請求項
1に記載の送風機。
【請求項3】
前記固定部材のうち前記軸方向に沿った一方を向く面および前記軸方向に沿った他方を向く面のいずれか一方には、前記接触部と前記離隔部とが形成され、
前記固定部材のうち前記軸方向に沿った一方を向く面および前記軸方向に沿った他方を向く面のいずれか他方は、平面であることを特徴とする請求項
1に記載の送風機。
【請求項4】
前記接触部は、前記半径方向に前記シャフトと離れた位置に、かつ、前記シャフトの回転方向である周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられて、前記主板軸端面に向かって突出する複数の突出部であり、
前記離隔部は、前記シャフトから前記突出部に亘って設けられて前記突出部が前記主板軸端面に接触した状態で前記主板軸端面から離隔する平面であることを特徴とする請求項
3に記載の送風機。
【請求項5】
前記接触部は、前記半径方向に前記シャフトと離れた位置に設けられて前記主板軸端面に接触する環状の平面であり、
前記離隔部は、前記シャフトから前記平面に亘って設けられて前記半径方向外側から内側に向かうほど前記軸方向に前記主板軸端面から離隔する階段状の段差部であることを特徴とする請求項
3に記載の送風機。
【請求項6】
前記主板軸端面には、前記シャフトを中心とした同心円状に配置された複数の環状の平面が設けられ、
複数の前記平面は、前記半径方向内側に位置するものほど前記軸方向に前記筐体から離隔しており、
複数の前記平面のうち1つが前記接触部となることを特徴とする請求項
1に記載の送風機。
【請求項7】
前記主板軸端面には、前記シャフトから前記半径方向に放射状に延びて前記筐体に向かって突出する複数のリブが設けられ、
各前記リブのうち前記筐体の方を向く面には、前記半径方向に沿って配置された複数の平面が設けられ、
複数の前記平面は、前記半径方向内側に位置するものほど前記軸方向に前記筐体から離隔しており、
複数の前記平面のうち1つが前記接触部となることを特徴とする請求項
1に記載の送風機。
【請求項8】
各前記リブのうち前記筐体の方を向く面の形状は、前記シャフトの中心軸を中心とする回転非対称形状であることを特徴とする請求項
7に記載の送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、主板と複数の翼とを有する羽根車を備える送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
送風機の羽根車は、モータの回転に伴って回転する主板と、主板の外周縁に沿って互いに間隔を空けて設けられた複数の翼とを備えている。主板は、モータのシャフトに取り付けられている。以下、モータのシャフトに平行な方向を軸方向とする。一般的に、モータのシャフトに通されたワッシャーなどの固定部材を用いて、シャフトにおける主板の軸方向の位置が固定されている。
【0003】
このような送風機の羽根車において、モータが加振源となる電磁振動が羽根車の固有周波数と一致すると、共振が生じて騒音となる。共振に伴う騒音を低減させる対策として、例えば、特許文献1のように制振材を用いてモータから羽根車への振動の伝播を低減させる技術が知られている。特許文献1に開示された技術では、2つの制振材で主板を軸方向から挟んでいる。各制振材は、ゴムとゴムを挟み込む2枚の板材とからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、制振材を用いることにより、モータから羽根車への振動の伝播を低減させて共振を低減させる効果が得られるものの、部品点数の増加、製造工数の増加といった問題がある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、制振材を用いることなく共振を低減させることができる送風機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる送風機は、シャフトと、シャフトの一部を収容する筐体とを有するモータと、シャフトのうち筐体の外部に位置する部分に取り付けられてシャフトの回転に伴って回転する主板と、主板の外周縁に沿って互いに間隔を空けて設けられてシャフトの軸方向に延びる複数の翼とを有する羽根車と、主板と筐体との間でシャフトに取り付けられて、主板に接触して羽根車の軸方向の位置を固定する固定部材と、羽根車を収容するケーシングと、を備えている。主板は、固定部材の方を向く主板軸端面を有している。主板軸端面および固定部材のうちいずれか一方には、軸方向と直交する方向である半径方向にシャフトと離れた位置に設けられて主板軸端面および固定部材のうちいずれか他方に接触する接触部と、シャフトから接触部に亘って設けられて接触部が主板軸端面および固定部材のうちいずれか他方に接触した状態で主板軸端面および固定部材のうちいずれか他方から離隔する離隔部とが形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる送風機は、制振材を用いることなく共振を低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】実施の形態1にかかるモータおよび固定部材を示した斜視図
【
図5】比較例にかかる送風機を示した断面図であって、
図1に示されるII-II線に沿った断面図に相当する図
【
図7】実施の形態2にかかる送風機を示した斜視図であって、実施の形態2にかかるモータおよび固定部材を示した斜視図
【
図8】実施の形態2にかかる送風機を示した断面図であって、
図1に示されるII-II線に沿った断面図に相当する図
【
図9】実施の形態2の変形例にかかる固定部材を示した斜視図
【
図10】実施の形態3にかかる送風機を示した断面図であって、
図1に示されるII-II線に沿った断面図に相当する図
【
図11】実施の形態3にかかる羽根車を示した斜視図
【
図12】実施の形態3にかかる送風機において、固定部材の半径方向の寸法を変えた際の羽根車における軸方向の変形量と固有周波数との関係を示したグラフであって、周波数応答解析によるグラフ
【
図13】実施の形態3にかかる送風機において、固定部材の半径方向の寸法を変えた際の羽根車における周方向の変形量と固有周波数との関係を示したグラフであって、周波数応答解析によるグラフ
【
図14】実施の形態3の変形例1にかかる送風機を示した断面図であって、
図1に示されるII-II線に沿った断面図に相当する図
【
図15】実施の形態3の変形例1にかかる羽根車を示した斜視図
【
図16】実施の形態3の変形例2にかかる送風機を示した断面図であって、
図1に示されるII-II線に沿った断面図に相当する図
【
図17】実施の形態4にかかる送風機を示した断面図であって、
図1に示されるII-II線に沿った断面図に相当する図
【
図18】実施の形態4にかかる羽根車を示した斜視図
【
図19】実施の形態4の変形例1にかかる羽根車を示した斜視図
【
図20】実施の形態4の変形例2にかかる羽根車を示した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態にかかる送風機を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる送風機1を示した斜視図である。
図2は、
図1に示されるII-II線に沿った断面図である。なお、
図2では、簡略化のため筐体2bは断面ではなく外観を示している。
図1および
図2に示すように、送風機1は、モータ2と、羽根車3と、固定部材4と、ケーシング5とを備えている。
図2に示すように、モータ2は、シャフト2aと、筐体2bとを有している。シャフト2aは、中心軸Cを有する円柱形状に形成されている。
【0012】
以下、送風機1の各構成要素について方向を説明するときには、中心軸Cと平行な方向を軸方向、中心軸Cと直交する方向を半径方向、中心軸Cを中心とする回転方向を周方向とする。軸方向は、モータ2のシャフト2aの軸方向である。半径方向は、軸方向と直交する方向である。周方向は、シャフト2aの回転方向である。また、軸方向に沿ってシャフト2aから筐体2bに向かう方を軸方向に沿った一方とし、軸方向に沿った一方の反対側を軸方向に沿った他方とする。軸方向は、鉛直方向に一致してもよいし、水平方向に一致してもよいし、鉛直方向および水平方向に対して斜交してもよい。
【0013】
図1に示すように、ケーシング5は、羽根車3を収容する部材である。ケーシング5は、羽根車3が回転することにより生成される空気流を整流する。ケーシング5は、一対のケーシング側壁部5aと、ケーシング周壁部5bと、吹出口5cとを有している。
【0014】
図2に示すように、一対のケーシング側壁部5aは、羽根車3を軸方向から覆う。一対のケーシング側壁部5aは、軸方向に互いに離れている。一対のケーシング側壁部5aの間には、羽根車3が配置されている。一方のケーシング側壁部5aには、ケーシング5の内部に空気を吸い込むための吸込口5dが形成されている。他方のケーシング側壁部5aには、モータ2が取り付けられる固定孔5eが形成されている。他方のケーシング側壁部5aは、モータ2を固定するための固定壁となる。ケーシング周壁部5bは、羽根車3を半径方向から覆う。
【0015】
図1に示すように、吹出口5cは、羽根車3によって生成された空気流をケーシング5の外部に吹き出すための部分である。吹出口5cは、ケーシング周壁部5bの一部およびケーシング側壁部5aの一部を半径方向外側に張り出すことにより形成されている。ケーシング5のうち吹出口5cが形成される部分には、ケーシング周壁部5bが設けられていない。
【0016】
図2に示すように、モータ2は、ケーシング5内に配置された羽根車3を回転させる部材である。筐体2bは、モータ2の外郭を構成する金属製の部材である。具体的な図示は省略するが、筐体2bの内部には、シャフト2aの一部の他に、ステータ、ロータなどが収容される。筐体2bの外周面には、半径方向外側に延びるフランジ部2cが形成されている。筐体2bは、ケーシング5の固定孔5eに挿入されており、ケーシング5の内部と外部とに跨って設置されている。筐体2bのフランジ部2cとケーシング側壁部5aとは互いに重ね合わされて図示しないボルトなどにより固定されている。
【0017】
吸込口5dと固定孔5eとは、軸方向に互いに離れている。シャフト2aの残部は、筐体2bの外部に突出している。シャフト2aのうち筐体2bの外部に位置する部分には、羽根車3の後記する主板6が取り付けられている。主板6は、シャフト2aの回転に伴って回転する。
【0018】
羽根車3は、モータ2によって中心軸Cを回転軸として回転する部材である。羽根車3が回転することで、吸込口5dから吸い込まれた空気が空気流となって吹出口5cからケーシング5の外部に吹き出される。羽根車3の材料には、例えば、金属、樹脂が使用される。
【0019】
図3は、実施の形態1にかかる羽根車3を示した斜視図である。
図3に示すように、羽根車3は、主板6と、複数の翼7と、補強リング8とを有している。主板6の軸方向に沿って見たときの形状は、円形状である。複数の翼7は、主板6の外周縁に沿って互いに間隔を空けて設けられている。複数の翼7のそれぞれは、軸方向に延びている。補強リング8の軸方向に沿って見たときの形状は、環状である。補強リング8は、軸方向に主板6と離れた位置に設けられている。補強リング8は、複数の翼7の周囲を取り囲んでいる。
【0020】
図2に示すように、固定部材4は、主板6と筐体2bとの間でシャフト2aに取り付けられて、主板6に接触して羽根車3の軸方向の位置を固定する部材である。固定部材4の材料には、例えば、金属、樹脂が使用される。固定部材4は、例えば、ワッシャーである。
【0021】
図4は、実施の形態1にかかるモータ2および固定部材4を示した斜視図である。
図4に示すように、固定部材4の軸方向に沿って見たときの形状は、円形状である。固定部材4の中心には、シャフト2aが挿通される固定挿通孔4aが形成されている。固定部材4は、第1の固定軸端面4bと、第2の固定軸端面4cとを有している。第1の固定軸端面4bは、本実施の形態では固定部材4のうち軸方向に沿った他方を向く面である。第2の固定軸端面4cは、本実施の形態では固定部材4のうち軸方向に沿った一方を向く面である。
【0022】
次に、主板6および固定部材4についてさらに詳しく説明する。
【0023】
図2に示すように、主板6は、主板底壁部6aと、主板側壁部6bと、主板周壁部6cとを有している。主板底壁部6aは、半径方向に延びている。主板底壁部6aの軸方向に沿って見たときの形状は、円形状である。主板底壁部6aの中心には、他の部分よりも軸方向に肉厚なボス部6dが形成されている。ボス部6dには、シャフト2aが挿通される主板挿通孔6eが形成されている。主板挿通孔6eは、主板底壁部6aを軸方向に貫通して形成されている。
【0024】
主板側壁部6bは、主板底壁部6aの外周縁から筐体2bの方に向かって延びていて、筐体2bの半径方向外側まで達している。主板側壁部6bは、筐体2bと半径方向に間隔を空けて配置されている。主板側壁部6bは、主板底壁部6aの外周縁から筐体2bの方に向かうにつれて拡径するテーパ状に形成されている。主板周壁部6cは、主板側壁部6bの先端縁から半径方向外側に向かって延びている。主板周壁部6cの軸方向に沿って見たときの形状は、環状である。
【0025】
主板底壁部6aは、固定部材4の方を向く主板軸端面6fを有している。主板軸端面6fは、主板6のうち軸方向に沿った一方を向く面である。主板軸端面6fには、接触部6gと離隔部6hとが形成されている。接触部6gは、半径方向にシャフト2aと離れた位置に設けられて固定部材4に接触する。接触部6gは、本実施の形態では、環状の平面である。
【0026】
離隔部6hは、シャフト2aから接触部6gに亘って設けられて接触部6gが固定部材4に接触した状態で固定部材4から離隔する。離隔部6hは、主板挿通孔6eのうち主板軸端面6fに開口した部分の縁から接触部6gとなる平面に亘って設けられている。離隔部6hは、接触部6gよりも軸方向に沿った他方に位置する。離隔部6hは、接触部6gよりも筐体2bから離隔する側に位置している。離隔部6hは、本実施の形態では軸方向に沿った一方から他方に向かって凹んだ環状の凹部である。
【0027】
次に、本実施の形態にかかる送風機1の効果について説明する。
【0028】
図2に示される羽根車3がモータ2によって回転する際には、モータ2の電磁振動がシャフト2aから固定部材4を介して羽根車3の主板6へと伝播し、この電磁振動が羽根車3の固有周波数と一致すると共振を生じて、騒音が発生する。このとき、羽根車3において発生する振動は、主に軸振動の軸方向振動と周方向のねじり振動である。主板6が複数の翼7を保持していること、および、複数の翼7が主板6のうち外周縁に設けられていて主板6のうち外周縁の質量が重いことから、主板6が羽根車3全体の振動に与える影響が大きい。この振動に影響する主板6の、固定部材4と接触する箇所を変えれば、羽根車3の固有周波数を変えることができる。
【0029】
本実施の形態では、主板軸端面6fには、半径方向に主板挿通孔6eと離れた位置に設けられて固定部材4に接触する接触部6gと、主板挿通孔6eから接触部6gに亘って設けられて接触部6gが固定部材4に接触した状態で固定部材4から離隔する離隔部6hとが形成されている。これにより、離隔部6hの半径方向の寸法を適宜変更して、シャフト2aの中心軸Cから主板6と固定部材4とが接触する箇所までの半径方向の最短距離Lを変えることができる。そのため、モータ2の電磁振動が羽根車3へと伝播する箇所を変更して、共振周波数から外れるように羽根車3の固有周波数を変えることができる。例えば、より多くの換気風量を得るためにモータ2の出力を変更した場合のように、送風機1の使用条件が変わる場合には、モータ2の電磁振動の変化に対して、羽根車3の固有周波数を共振周波数から外すことができる。したがって、制振材を用いることなく、送風機1における共振を避けることができるか、あるいは、送風機1における共振を低減させることができる。
【0030】
また、本実施の形態では、シャフト2aの中心軸Cから主板6と固定部材4とが接触する箇所までの半径方向の最短距離Lを変えることができるため、羽根車3のうち振動の振幅が大きい領域に、主板6と固定部材4とが接触する箇所を近づけることができる。これにより、羽根車3の振動が卓越することを抑えられる。
【0031】
図5は、比較例にかかる送風機10を示した断面図であって、
図1に示されるII-II線に沿った断面図に相当する図である。
図6は、比較例にかかる羽根車3を示した斜視図である。
図5および
図6に示すように、比較例にかかる送風機10では、主板軸端面6fに離隔部6hがなく、主板軸端面6fおよび第1の固定軸端面4bが見かけ上は平面となっている。
図5に示すように、比較例にかかる送風機10では、主板6と固定部材4とが接触する箇所が主板軸端面6fおよび第1の固定軸端面4bの平面度によって変わる。そのため、シャフト2aの中心軸Cから主板6と固定部材4とが接触する箇所までの半径方向の最短距離が明確に定まらない。したがって、主板軸端面6fおよび第1の固定軸端面4bの平面度によって羽根車3の固有周波数が変わるため、モータ2の電磁振動が羽根車3へと伝播する箇所を意図的に変更して、羽根車3の固有周波数を意図的に変えることは困難である。
【0032】
これに対して、
図2に示すように、本実施の形態では、主板軸端面6fにおいて接触部6gよりも半径方向内側に離隔部6hが形成されていることにより、主板6と固定部材4とが接触する箇所の半径方向内側では、主板6と固定部材4とが確実に離れる。そのため、シャフト2aの中心軸Cから主板6と固定部材4とが接触する箇所までの半径方向の最短距離Lが明確に定まる。したがって、モータ2の電磁振動が羽根車3へと伝播する箇所を意図的に変更して、羽根車3の固有周波数を意図的に変えることができる。
【0033】
ここで、主板6と固定部材4とが接触する箇所のうち最も半径方向内側に位置する箇所は、シャフト2aの中心軸Cから半径方向外側に十分に離すことが望ましい。具体的には、シャフト2aの半径をRとしたときに、L≧2×Rの関係が成り立つようにすることが望ましい。すなわち、主板6と固定部材4とが接触する箇所のうち最も半径方向内側に位置する箇所は、シャフト2aの中心軸Cからシャフト2aの半径Rの2倍以上の位置にあることが望ましい。このようにすることで、羽根車3の固有周波数を確実に変えることができる。
【0034】
なお、主板軸端面6fおよび固定部材4のうちいずれか一方には、軸方向と直交する方向である半径方向にシャフト2aと離れた位置に設けられて主板軸端面6fおよび固定部材4のうちいずれか他方に接触する接触部6gが形成されていればよい。また、主板軸端面6fおよび固定部材4のうちいずれか一方には、シャフト2aから接触部6gに亘って設けられて接触部6gが主板軸端面6fおよび固定部材4のうちいずれか他方に接触した状態で主板軸端面6fおよび固定部材4のうちいずれか他方から離隔する離隔部6hが形成されていればよい。
【0035】
実施の形態2.
次に、
図7および
図8を参照して、実施の形態2にかかる送風機1Aについて説明する。本実施の形態では、接触部4dおよび離隔部4eを固定部材4に設けた点が前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態2では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図7は、実施の形態2にかかる送風機1Aを示した斜視図であって、実施の形態2にかかるモータ2および固定部材4を示した斜視図である。
図8は、実施の形態2にかかる送風機1Aを示した断面図であって、
図1に示されるII-II線に沿った断面図に相当する図である。
【0036】
図7に示すように、本実施の形態では、第1の固定軸端面4bが固定部材4のうち軸方向に沿った他方を向く面であり、第2の固定軸端面4cが固定部材4のうち軸方向に沿った一方を向く面である。第1の固定軸端面4bには、複数の接触部4dと、離隔部4eとが形成されている。
図8に示すように、第2の固定軸端面4cは、半径方向に延びる平面である。第1の固定軸端面4bと第2の固定軸端面4cとは、非対称形状である。すなわち、固定部材4の形状は、裏表対称となっていない。
【0037】
図8に示すように、接触部4dは、本実施の形態では主板軸端面6fに向かって突出する突出部4fである。突出部4fは、半径方向にシャフト2aと離れた位置に、かつ、周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられている。突出部4fは、主板軸端面6f側が凸状となり筐体2b側が凹状となっている。本実施の形態では、固定部材4全体の板厚を変えることなく固定部材4を局所的に折り曲げて突出部4fを設けているが、固定部材4を局所的に肉厚にして突出部4fを設けてもよい。
図7に示すように、突出部4fは、軸方向に第1の固定軸端面4bから離れるにつれて縮径する円錐台形状に形成されている。突出部4fの先端は、半径方向に延びる平面となっている。突出部4fの数は、本実施の形態では8個である。8個の突出部4fは、中心軸Cを中心とした同一円周上に配置されている。
【0038】
図8に示すように、離隔部4eは、シャフト2aから突出部4fに亘って設けられている。離隔部4eは、突出部4fが主板軸端面6fに接触した状態で主板軸端面6fから離隔する。離隔部4eは、本実施の形態では半径方向に延びる平面である。離隔部4eは、固定挿通孔4aのうち第1の固定軸端面4bに開口した部分の縁から突出部4fに亘って設けられている。固定部材4は、平座金のような金属板に突出部4fを設けることで製造されてもよいし、樹脂材料で製造されてもよい。
【0039】
本実施の形態によっても、前記した実施の形態1と同様の効果を奏することができる。本実施の形態では、第1の固定軸端面4bには、接触部4dと離隔部4eとが形成され、第2の固定軸端面4cは、半径方向に延びる平面である。これにより、第1の固定軸端面4bが主板軸端面6fの方を向くように固定部材4をシャフト2aに取り付けるか、または、第2の固定軸端面4cが主板軸端面6fの方を向くように固定部材4をシャフト2aに取り付けるだけで、シャフト2aの中心軸Cから主板6と固定部材4とが接触する箇所までの半径方向の最短距離Lを変えることができる。そのため、モータ2の電磁振動が羽根車3へと伝播する箇所を簡易に変更して、羽根車3の固有周波数を簡易に変えることができる。
【0040】
なお、
図8では、第1の固定軸端面4bが主板軸端面6fの方を向くように固定部材4をシャフト2aに取り付けた場合を図示している。第2の固定軸端面4cが主板軸端面6fの方を向くように固定部材4をシャフト2aに取り付けた場合には、第1の固定軸端面4bが固定部材4のうち軸方向に沿った一方を向く面となり、第2の固定軸端面4cが固定部材4のうち軸方向に沿った他方を向く面となる。
【0041】
固定部材4の半径方向の寸法を大きくすることで、シャフト2aの中心軸Cから主板軸端面6fと固定部材4の突出部4fとが接触する箇所までの半径方向の最短距離Lを半径方向に広げることができる。ただし、送風機1Aの大型化を抑えながら、羽根車3をケーシング5内にて回転可能とするためには、固定部材4の半径方向の寸法は、複数の翼7よりも半径方向内側に収まる大きさにすることが望ましい。
【0042】
また、主板軸端面6fと固定部材4の突出部4fとが接触する箇所は、羽根車3が回転する支点となる。したがって、羽根車3の振れを抑えて羽根車3の回転を安定させるためには、主板軸端面6fと固定部材4の突出部4fとは、互いの平面同士で接触することが望ましい。
【0043】
固定部材4は、
図9に示される構成でもよい。
図9は、実施の形態2の変形例にかかる固定部材4を示した斜視図である。接触部4dは、環状の平面である。接触部4dは、半径方向に
図8に示されるシャフト2aと離れた位置に設けられて主板軸端面6fに接触する。離隔部4eは、シャフト2aから平面である接触部4dに亘って設けられて半径方向外側から内側に向かうほど主板軸端面6fから離隔する階段状の段差部である。このようにしても、前記した実施の形態1,2と同様の効果を奏することができる。
【0044】
実施の形態3.
次に、
図10および
図11を参照して、実施の形態3にかかる送風機1Bについて説明する。本実施の形態では、接触部6gおよび離隔部6hの構成が前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態3では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図10は、実施の形態3にかかる送風機1Bを示した断面図であって、
図1に示されるII-II線に沿った断面図に相当する図である。
図11は、実施の形態3にかかる羽根車3を示した斜視図である。
【0045】
図10に示すように、主板軸端面6fのうち半径方向の中央部分は、半径方向外側から内側に向かうほど筐体2bから離隔する階段状に形成されている。主板軸端面6fには、シャフト2aを中心とした同心円状に配置された複数の環状の平面61と、隣り合う平面61同士を繋ぐ段差面62とが設けられている。なお、本実施の形態では、主板側壁部6bおよび主板周壁部6cの厚さよりも主板底壁部6aの厚さを厚くした上で、主板底壁部6aの厚みを部分的に変えることで複数の平面61を形成している。
【0046】
複数の平面61のそれぞれは、半径方向に延びている。平面61の数は、適宜増減してよいが、本実施の形態では3個である。3個の平面61を区別する場合には、半径方向外側から内側に向かって順番に、平面61a、平面61b、平面61cと称する。
【0047】
段差面62は、軸方向に延びている。段差面62は、隣り合う平面61の内周縁と平面61の外周縁とを繋いでいる。段差面62の数は、本実施の形態では2個である。段差面62の数は、平面61の数によって増減する。2個の段差面62を区別する場合には、軸方向において筐体2bに近い方から順番に、段差面62a、段差面62bと称する。段差面62aは、平面61aの内周縁と平面61bの外周縁とを繋いでいる。段差面62bは、平面61bの内周縁と平面61cの外周縁とを繋いでいる。段差面62bは、段差面62aよりも半径方向内側に位置している。
【0048】
複数の平面61は、半径方向内側に位置するものほど軸方向に筐体2bから離隔している。換言すると、シャフト2aの中心軸Cを法線とし、かつ、筐体2bを通過する平面を基準平面Sとしたとき、平面61と基準平面Sとの軸方向の距離Dは、複数の平面61のうち半径方向内側に位置するものほど長い。なお、
図10では、平面61aと基準平面Sとの軸方向の距離Dのみを図示している。
【0049】
固定部材4は、本実施の形態では平面61aに接触しているが、平面61bに接触していてもよい。すなわち、固定部材4の半径方向の寸法を変えることで、固定部材4を平面61aに接触させることが可能であるし、固定部材4を平面61bに接触させることも可能である。
【0050】
固定部材4を平面61aに接触させる場合には、平面61aが接触部6gとなり、主板軸端面6fのうち平面61aよりも半径方向内側の部分が離隔部6hとなる。一方、固定部材4を平面61bに接触させる場合には、平面61bが接触部6gとなり、主板軸端面6fのうち平面61bよりも半径方向内側の部分が離隔部6hとなる。本実施の形態では、複数の平面61a,61bのうち1つが接触部6gとなる。
【0051】
本実施の形態によっても、前記した実施の形態1と同様の効果を奏することができる。本実施の形態では、主板軸端面6fに設けられた複数の平面61は、半径方向内側に位置するものほど軸方向に筐体2bから離隔しており、複数の平面61のうち1つが接触部6gとなる。これにより、固定部材4の半径方向の寸法を変えることで、シャフト2aの中心軸Cから主板6と固定部材4とが接触する箇所までの半径方向の最短距離Lを変えることができる。そのため、モータ2の電磁振動が羽根車3へと伝播する箇所を簡易に変更して、羽根車3の固有周波数を簡易に変えることができる。
【0052】
ここで、
図12および
図13を参照して、本実施の形態の効果についてさらに説明する。
図12は、実施の形態3にかかる送風機1Bにおいて、固定部材4の半径方向の寸法を変えた際の羽根車3における軸方向の変形量と固有周波数との関係を示したグラフであって、周波数応答解析によるグラフである。
図13は、実施の形態3にかかる送風機1Bにおいて、固定部材4の半径方向の寸法を変えた際の羽根車3における周方向の変形量と固有周波数との関係を示したグラフであって、周波数応答解析によるグラフである。
図12および
図13に示される周波数応答解析は、実施の形態3における羽根車3の半径方向の寸法がφ180mm、羽根車3の軸方向の寸法が100mmの条件で行った。
【0053】
図12および
図13に示される結果より、羽根車3は、軸方向に振動する軸振動モードと、周方向にねじれるように振動するねじり振動モードとを併せ持っており、固有周波数時に振幅が大きくなることが分かる。また、固定部材4の半径方向の寸法を変えることで、羽根車3の固有周波数を変えることができることも分かる。
【0054】
本実施の形態では、
図10に示される接触部6gとなる平面61の数を増やすことで、主板6と固定部材4とが接触する箇所を細かく調整することができる。また、接触部6gとなる平面61の数を増やした場合でも、簡易な構造であるため製造コストを抑えることが可能である。また、羽根車3の材料に樹脂材料を用いれば、羽根車3と平面61とを一体成形で製造することも可能であるため、平面61の数を増やすことによる製造コストの増加を抑えることが可能である。
【0055】
なお、固定部材4の半径方向の寸法を大きくすることで、シャフト2aの中心軸Cから主板6と固定部材4とが接触する箇所までの半径方向の最短距離Lを半径方向に広げることができる。ただし、送風機1Bの大型化を抑えながら、羽根車3をケーシング5内で回転可能とするためには、固定部材4の半径方向の寸法と複数の平面61のそれぞれの半径方向の寸法とは、複数の翼7よりも半径方向内側に収まる大きさにすることが望ましい。
【0056】
複数の平面61は、
図14および
図15に示される構成でもよい。
図14は、実施の形態3の変形例1にかかる送風機1Cを示した断面図であって、
図1に示されるII-II線に沿った断面図に相当する図である。
図15は、実施の形態3の変形例1にかかる羽根車3を示した斜視図である。
【0057】
図14および
図15に示すように、主板軸端面6fには、シャフト2aを中心とした同心円状に配置された複数の円筒状のリブ63が設けられている。
図15に示すように、主板軸端面6fのうちリブ63以外の部分は、平面64となっている。リブ63は、平面64よりも筐体2bに向かって突出している。リブ63のうち筐体2bの方を向く先端部は、半径方向に延びる平面61となっている。リブ63の数は、適宜増減してよいが、本変形例では2個である。2個のリブ63を区別する場合には、半径方向外側から内側に向かって順番に、リブ63a、リブ63bと称する。複数のリブ63は、半径方向内側に位置するものほど軸方向に筐体2bから離隔している。各リブ63と基準平面Sとの軸方向の距離Dは、複数のリブ63のうち半径方向内側に位置するものほど長い。なお、
図14では、リブ63aの平面61と基準平面Sとの軸方向の距離Dのみを図示している。
【0058】
固定部材4は、本変形例ではリブ63aの平面61に接触しているが、リブ63bの平面61に接触していてもよい。すなわち、固定部材4の半径方向の寸法を変えることで、固定部材4をリブ63aの平面61に接触させることが可能であるし、固定部材4をリブ63bの平面61に接触させることも可能である。
【0059】
固定部材4をリブ63aの平面61に接触させる場合には、リブ63aの平面61が接触部6gとなり、主板軸端面6fのうちリブ63aよりも半径方向内側に位置する部分が離隔部6hとなる。一方、固定部材4をリブ63bの平面61に接触させる場合には、リブ63bの平面61が接触部6gとなり、リブ63bよりも半径方向内側に位置する部分が離隔部6hとなる。本変形例では、複数のリブ63a,63bの平面61のうち1つが接触部6gとなる。このようにしても、前記した実施の形態1,2と同様の効果を奏することができる。
【0060】
複数の平面61は、
図16に示される構成にしてもよい。
図16は、実施の形態3の変形例2にかかる送風機1Dを示した断面図であって、
図1に示されるII-II線に沿った断面図に相当する図である。
図16に示されるように、主板6全体の板厚を一定にして、主板6を局所的に折り曲げることで、複数の平面61を設けてもよい。複数の平面61は、半径方向内側に位置するものほど軸方向に筐体2bから離隔している。
【0061】
実施の形態4.
次に、
図17および
図18を参照して、実施の形態4にかかる送風機1Eについて説明する。本実施の形態では、接触部6gおよび離隔部6hの構成が前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態4では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図17は、実施の形態4にかかる送風機1Eを示した断面図であって、
図1に示されるII-II線に沿った断面図に相当する図である。
図18は、実施の形態4にかかる羽根車3を示した斜視図である。
【0062】
図17および
図18に示すように、主板軸端面6fには、シャフト2aから半径方向に放射状に延びて筐体2bに向かって突出する複数のリブ65が設けられている。
図18に示すように、複数のリブ65は、周方向に互いに間隔を空けて配置されている。リブ65の数は、適宜増減してよいが、本実施の形態では6個である。各リブ65のうち筐体2bの方を向く面には、半径方向に沿って配置された複数の矩形状の平面66と、隣り合う平面66同士を繋ぐ段差面67とが設けられている。各リブ65のうち筐体2bの方を向く面の形状は、シャフト2aの中心軸Cを対称軸とする回転対称形状である。すなわち、全てのリブ65の平面66の半径方向における位置は、同一である。
【0063】
平面66は、半径方向に延びている。平面66の数は、適宜増減してよいが、本実施の形態では3個である。3個の平面66を区別する場合には、半径方向外側から内側に向かって順番に、平面66a、平面66b、平面66cと称する。
【0064】
段差面67は、軸方向に延びている。段差面67は、隣り合う平面66の内縁と平面66の外縁とを繋いでいる。段差面67の数は、本実施の形態では2個である。段差面67の数は、平面66の数によって増減する。2個の段差面67を区別する場合には、軸方向において筐体2bに近い方から順番に、段差面67a、段差面67bと称する。段差面67aは、平面66aの内縁と平面66bの外縁とを繋いでいる。段差面67bは、平面66bの内縁と平面66cの外縁とを繋いでいる。
【0065】
図17に示すように、複数の平面66は、半径方向内側に位置するものほど軸方向に筐体2bから離隔している。各平面66と基準平面Sとの軸方向の距離Dは、複数の平面66のうち半径方向内側に位置するものほど長い。なお、
図17では、平面66aと基準平面Sとの軸方向の距離Dのみを図示している。
【0066】
固定部材4は、本実施の形態では平面66aに接触しているが、平面66bに接触していてもよい。すなわち、固定部材4の半径方向の寸法を変えることで、固定部材4を平面66aに接触させることが可能であるし、固定部材4を平面66bに接触させることも可能である。
【0067】
固定部材4を平面66aに接触させる場合には、平面66aが接触部6gとなり、主板軸端面6fのうち平面66aよりも半径方向内側の部分が離隔部6hとなる。一方、固定部材4を平面66bに接触させる場合には、平面66bが接触部6gとなり、主板軸端面6fのうち平面66bよりも半径方向内側の部分が離隔部6hとなる。本実施の形態では、複数の平面66a,66bのうち1つが接触部6gとなる。
【0068】
本実施の形態によっても、前記した実施の形態1,2,3と同様の効果を奏することができる。本実施の形態では、
図17に示すように、主板軸端面6fに設けられた複数の平面66は、半径方向内側に位置するものほど軸方向に筐体2bから離隔しており、複数の平面66のうち1つが接触部6gとなる。これにより、固定部材4の半径方向の寸法を変えることで、シャフト2aの中心軸Cから主板6と固定部材4とが接触する箇所までの半径方向の最短距離Lを変えることができる。そのため、モータ2の電磁振動が羽根車3へと伝播する箇所を簡易に変更して、羽根車3の固有周波数を簡易に変えることができる。
【0069】
本実施の形態では、主板軸端面6fには、シャフト2aから半径方向に放射状に延びて筐体2bに向かって突出する複数のリブ65が設けられ、各リブ65のうち筐体2bの方を向く面に設けられた複数の平面66は、半径方向内側に位置するものほど軸方向に筐体2bから離隔している。これにより、主板6と固定部材4とが接触する箇所を、半径方向に変更できるだけでなく、周方向においても変更できる。すなわち、シャフト2aから半径方向に放射状に延びて筐体2bに向かって突出する複数のリブ65が主板軸端面6fに設けられることで、周方向において主板6と固定部材4とが断続的に接触する。そのため、羽根車3の固有周波数をさらに細かく変えることができる。
【0070】
本実施の形態では、リブ65の数を増やしたりリブ65の幅を変えたりすることで、周方向において主板6と固定部材4とが接触する箇所を細かく調整することができるため、羽根車3の固有周波数をさらに細かく変えることができる。また、リブ65の数を増やしたりリブ65の幅を細くしたりした場合でも、簡易な構造であるため製造コストを抑えることが可能である。また、羽根車3の材料に樹脂材料を用いれば、羽根車3とリブ65とを一体成形で製造することも可能であるため、リブ65の数を増やしたりリブ65の幅を細くしたりすることによる製造コストの増加を抑えることが可能である。
【0071】
図19に示すように、各リブ65のうち筐体2bの方を向く面の形状は、シャフト2aの中心軸Cを中心とする回転非対称形状でもよい。
図19は、実施の形態4の変形例1にかかる羽根車3を示した斜視図である。
図19に示すように、各リブ65の平面66の半径方向における位置は、互いに異なっている。図示の例では、リブ65のうち半径方向の外側部分に平面66があるリブ65と、リブ65のうち半径方向の中央部に平面66があるリブ65とが、周方向に交互に配置されている。周方向に隣り合うリブ65では、平面66が半径方向にオフセットして設けられている。本変形例では、リブ65ごとにリブ65と固定部材4とが接触する箇所を個別に変えることができ、シャフト2aの中心軸Cから主板6と固定部材4とが接触する箇所までの半径方向の最短距離Lをリブ65ごとに変えることができる。
【0072】
主板6は、
図20に示される構成でもよい。
図20は、実施の形態4の変形例2にかかる羽根車3を示した斜視図である。主板側壁部6bには、主板側壁部6bを半径方向に貫通する開口部6iが設けられている。開口部6iは、モータ2を空冷するために設けられる。すなわち、吸込口5dからケーシング5内に吸い込まれた空気の一部は、開口部6iを通じてモータ2に当たることにより、モータ2が冷却される。
【0073】
本変形例では、主板6と固定部材4とが接触する箇所を、半径方向に変更できるだけでなく、周方向においても変更できる。そのため、主板6に開口部6iを設けた場合であっても、モータ2の電磁振動が羽根車3へと伝播する箇所を変更して、共振周波数から外れるように羽根車3の固有周波数を変えることができる。したがって、制振材を用いることなく、送風機1における共振を避けることができるか、あるいは、送風機1における共振を低減させることができる。
【0074】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0075】
例えば、前記した各実施の形態にかかる送風機1~1Eは、換気用途、空調用途、これら以外の用途で用いられてもよい。
【0076】
前記した各実施の形態では、羽根車3を多翼送風機に適用した場合を例示したが、多翼送風機以外の送風機に適用してもよい。すなわち、羽根車3は、遠心送風機、軸流送風機を問わず、一般の送風機に適用可能である。
【0077】
前記した各実施の形態では、送風機1~1Eは、吸込口5dを1つ備えた片吸込型であったが、吸込口5dを2つ備えた両吸込型であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1,1A,1B,1C,1D,1E,10 送風機、2 モータ、2a シャフト、2b 筐体、2c フランジ部、3 羽根車、4 固定部材、4a 固定挿通孔、4b 第1の固定軸端面、4c 第2の固定軸端面、4d,6g 接触部、4e,6h 離隔部、4f 突出部、5 ケーシング、5a ケーシング側壁部、5b ケーシング周壁部、5c 吹出口、5d 吸込口、5e 固定孔、6 主板、6a 主板底壁部、6b 主板側壁部、6c 主板周壁部、6d ボス部、6e 主板挿通孔、6f 主板軸端面、6i 開口部、7 翼、8 補強リング、61,61a,61b,61c,64,66,66a,66b,66c 平面、62,62a,62b,67,67a,67b 段差面、63,63a,63b,65 リブ。