(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】アゾ色素、染料組成物、陽極酸化アルミニウム用着色剤および着色方法、ならびに該色素の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09B 33/10 20060101AFI20241206BHJP
C09B 31/14 20060101ALI20241206BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20241206BHJP
C09B 67/44 20060101ALI20241206BHJP
C25D 11/06 20060101ALI20241206BHJP
C25D 11/18 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C09B33/10
C09B31/14
C09B67/20 K
C09B67/44 A
C25D11/06 C
C25D11/18 305
C25D11/18 301D
(21)【出願番号】P 2024523798
(86)(22)【出願日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2023033237
(87)【国際公開番号】W WO2024070669
(87)【国際公開日】2024-04-04
【審査請求日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2022159139
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023027834
(32)【優先日】2023-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大倉 友也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田口 大介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】チェコ国特許発明第00275129(CZ,B6)
【文献】米国特許第02580867(US,A)
【文献】米国特許第04537955(US,A)
【文献】米国特許第04988804(US,A)
【文献】米国特許第02551056(US,A)
【文献】スイス国特許発明第00278471(CH,B)
【文献】米国特許出願公開第2005/0155162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 33/10
C09B 31/14
C09B 67/20
C09B 67/44
C25D 11/06
C25D 11/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1
)で表されるアゾ色素
を含有する染料組成物を含有する、陽極酸化アルミニウム用着色剤。
【化1】
[式(1)中、
Xはそれぞれ独立に非発色性カチオンを表し、
Y
1
は下記式(Y
1
-1)~(Y
1
-3)のいずれかを表し、
Y
2
は下記式(Y
2
-1)~(Y
2
-9)のいずれかを表す。]
【化2】
[式(Y
1
-1)~(Y
1
-3)中、*はアゾ基との結合部位を示す。]
【化3】
[式(Y
2
-1)~(Y
2
-9)中、
Xはそれぞれ独立に非発色性カチオンを表し、
Zはそれぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子を表し、
R
21
はそれぞれ独立に、炭素原子数1~3のアルキル基、または、非発色カチオンを表し、
*はアゾ基との結合部位を示す。]
【請求項2】
Xがそれぞれ独立に、H
+、Na
+またはNH
4
+である、請求項
1に記載の
陽極酸化アルミニウム用着色剤。
【請求項3】
下記一般式(1A)で表される
、アゾ色素。
【化4】
[式(1A)中、Xは
それぞれ独立に非発色性カチオンを表す。]
【請求項4】
下記一般式(2A)で表される
、アゾ色素。
【化5】
[式(2A)中、Xは
それぞれ独立に非発色性カチオンを表す。]
【請求項5】
下記一般式(3A)で表される
、アゾ色素。
【化6】
[式(3A)中、Xは
それぞれ独立に非発色性カチオンを表し、R
21
はそれぞれ独立に、炭素原子数1~3のアルキル基、または、非発色カチオンを表す。]
【請求項6】
請求項
3~5のいずれか一項に記載のアゾ色素を含有する、染料組成物。
【請求項7】
請求項
6に記載の染料組成物を含有する、陽極酸化アルミニウム用着色剤。
【請求項8】
請求項
3~5のいずれか一項に記載のアゾ色素を、0.02~10質量%含有する染料組成物を用いることを特徴とする、陽極酸化アルミニウムまたは陽極酸化アルミニウム合金の着色方法。
【請求項9】
請求項1に記載の
陽極酸化アルミニウム用着色剤の製造方法であって、
前記一般式(1
)で表されるアゾ色素が、下記一般式(4
A)で表される化合物をジアゾ化して得られるジアゾ化物と、下記一般式
(5A)~(5H)のいずれかで表される化合物および/またはその塩とのジアゾカップリング反応により得られるものである、製造方法。
【化7】
【化8】
[式(4A)および式(5A)~(5H)中、XおよびY
1
は前記一般式(1)および前記式(Y
2
-1)~(Y
2
-8)に記載の定義と同じである。]
【請求項10】
請求項1に記載の
陽極酸化アルミニウム用着色剤の製造方法であって、
前記一般式(
1)で表されるアゾ色素が、下記一般式(
4A)で表される化合物をジアゾ化して得られるジアゾ化物と、下記一般式(8)で表される化合物および/またはその塩とのジアゾカップリング反応により得られるものである、製造方法。
【化9】
【化10】
[式
(4A)および式(8)中
、R
21、X
、Y
1
およびZは、前記一般式(
1)
および式(Y
2
-9)に記載の定義と
同じである。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極酸化アルミニウム用着色剤に適するアゾ色素および染料組成物に関するものである。また、本発明は、該色素および染料組成物を用いる陽極酸化アルミニウムの着色方法、ならびに該色素の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム(その酸化物または合金も含む)表面への着色方法として、水および適当な酸を含む電解液中でアルミニウムを陽極として通電(陽極酸化)し、表面に多孔質の酸化アルミニウム皮膜(アルマイト皮膜)を形成させた後、有機色素(または有機染料)を着色剤として表面を着色する方法が用いられている(特許文献1~6)。
【0003】
アルマイト皮膜用の含クロム染料(特許文献1~6など)は、耐光性や耐熱性に優れ、汎用的に使用されてきたが、近年、環境面から、クロムなどの重金属、および、塩素または臭素などのハロゲンを含まない、様々な色相を有する色素が求められている。
【0004】
重金属およびハロゲンを含まない、黄色、青、赤などのアルマイト皮膜用染料は存在するが、重金属を含有しない黒色や茶色系の染料は数少ない。そのため、複数の色素の混色で濃色を調製しなければならないこともある。
【0005】
重金属を含有しないアルマイト皮膜用黒色系染料としてクラリアント社のSanodye(登録商標) Black OAが知られている。しかしながら、この染料は濃色染すると耐光性が良いが淡色染すると耐光性が不十分である(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-302256号公報
【文献】国際公開第2019/189209号
【文献】国際公開第2019/189211号
【文献】特開昭60-235867号公報
【文献】特開平6-93195号公報
【文献】特表2002-522617号公報
【文献】米国特許第2580867号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の一つは、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に、耐光性に優れ、クロムなどの重金属およびハロゲンを含まない、かつ、単色(単一の色素)で黒色系または茶色系を呈する陽極酸化皮膜を形成することのできるアゾ色素を提供することである。また、本発明の目的の一つは、前記アゾ色素を含有する染料組成物、該染料組成物を含有する陽極酸化アルミニウム用着色剤、該染料を用いる陽極酸化アルミニウムまたは陽極酸化アルミニウム合金の着色方法、および、前記アゾ色素の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、陽極酸化アルミニウム上に、黒色または茶色系を単色で着色し、かつ、耐光性に優れた皮膜を形成することができるアゾ色素(染料)、染料組成物および陽極酸化アルミニウム用着色剤を見出した。すなわち本発明は、以下の内容で構成されている。
【0009】
〔1〕下記一般式(1)、(2)または(3)で表されるアゾ色素。
【0010】
【0011】
[式(1)、(2)および(3)中、
R1~R3はそれぞれ独立に、―H、炭素原子数1~3のアルキル基、―NO2、―SO2CH3、―SO2CH2CH3または―COOXを表し、
R4~R17はそれぞれ独立に、―H、―OH、―SO3X、―COOX、または、置換基を有していてもよい炭素原子数7~12のアミド基を表し、
R18~R20はそれぞれ独立に、―H、炭素原子数1~3のアルキル基、―NO2、―SO2CH3、―SO2CH2CH3、―SO3Xまたは―COOXを表し、
R21はそれぞれ独立に、炭素原子数1~3のアルキル基、または、非発色カチオンを表し、
Xはそれぞれ独立に非発色性カチオンを表し、
Zはそれぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子を表す。]
【0012】
〔2〕前記一般式(1)または(2)で表され、R1~R3のうち1個または2個が―NO2である、〔1〕に記載のアゾ色素。
【0013】
〔3〕前記一般式(1)または(2)で表され、R3が―CH3または―SO2CH3である、〔1〕または〔2〕に記載のアゾ色素。
【0014】
〔4〕前記一般式(1)で表され、R4~R10のいずれか1個または2個が―OHである、または、R4~R10のいずれか1個または2個が―SO3Naである、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のアゾ色素。
【0015】
〔5〕前記一般式(2)で表され、R11~R17のいずれか1個または2個が―OHである、または、R11~R17のいずれか1個または2個が―SO3Naである、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のアゾ色素。
【0016】
〔6〕前記一般式(3)で表され、R18~R20がそれぞれ独立に、―H、―CH3、―NO2、―SO2CH3、―SO3H、―SO3Na、―COOHまたは―COONaである、〔1〕に記載のアゾ色素。
【0017】
〔7〕Xがそれぞれ独立に、H+、Na+またはNH4
+である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のアゾ色素。
【0018】
〔8〕下記一般式(1A)で表される、〔1〕~〔4〕及び〔7〕のいずれかに記載のアゾ色素。
【化2】
[式(1A)中、Xは前記一般式(1)に記載の定義と同意義を示す。]
【0019】
〔9〕下記一般式(2A)で表される、〔1〕~〔3〕、〔5〕及び〔7〕のいずれかに記載のアゾ色素。
【化3】
[式(2A)中、Xは前記一般式(2)に記載の定義と同意義を示す。]
【0020】
〔10〕下記一般式(3A)で表される、〔1〕、〔6〕及び〔7〕のいずれかに記載のアゾ色素。
【化4】
[式(3A)中、Xは前記一般式(3)に記載の定義と同意義を示す。]
【0021】
〔11〕〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のアゾ色素を含有する染料組成物。
【0022】
〔12〕〔11〕に記載の染料組成物を含有する陽極酸化アルミニウム用着色剤。
【0023】
〔13〕〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のアゾ色素を、0.02~10質量%含有する染料組成物を用いることを特徴とする、陽極酸化アルミニウムまたは陽極酸化アルミニウム合金の着色方法。
【0024】
〔14〕〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のアゾ色素の製造方法であって、
前記一般式(1)または(2)で表されるアゾ色素が、下記一般式(4)で表される化合物をジアゾ化して得られるジアゾ化物と、下記一般式(5)または(6)で表される化合物および/またはその塩とのジアゾカップリング反応により得られるものである、製造方法。
【0025】
【0026】
[式(4)~(6)中、R1~R17およびXは、前記一般式(1)および(2)に記載の定義と同意義を示す。]
【0027】
〔15〕〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のアゾ色素の製造方法であって、
前記一般式(3)で表されるアゾ色素が、下記一般式(7)で表される化合物をジアゾ化して得られるジアゾ化物と、下記一般式(8)で表される化合物および/またはその塩とのジアゾカップリング反応により得られるものである、製造方法。
【0028】
【0029】
[式(7)および式(8)中、R18~R21、XおよびZは、前記一般式(3)に記載の定義と同意義を示す。]
【発明の効果】
【0030】
本発明により、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に、耐光性に優れ、クロムなどの重金属およびハロゲンを含まない、かつ、単色(単一の色素)で黒色から茶色系を呈する陽極酸化皮膜を形成することのできるアゾ色素を提供することができる。また、本発明により、前記アゾ色素を含有する染料組成物、該染料組成物を含有する陽極酸化アルミニウム用着色剤、該染料を用いる陽極酸化アルミニウムまたは陽極酸化アルミニウム合金の着色方法、および、前記アゾ色素の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。以下、前記一般式(1)、(2)または(3)で表されるアゾ色素について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0032】
一般式(1)、(2)および(3)において、R1~R3、R18~21で表される「炭素原子数1~3のアルキル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基があげられる。
【0033】
一般式(1)、(2)および(3)における「X」、「―SO3X」もしくは「―COOX」に含まれる「X」で表される「非発色カチオン」は、発色団(例えば、ニトロ基、アゾ基、カルボニル基)を有しないカチオンである。非発色カチオンとしては、具体的には、水素イオン(H+)、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)などのアルカリ金属イオン;NH4
+、N+R22R23R24R25で表されるアンモニウムイオンがあげられる。R22~R25としては、それぞれ独立に、炭素原子数1~3のアルキル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基)があげられる。また、一般式(1)、(2)および(3)において、複数存在するXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Xとしては、それぞれ独立に、H+、Na+またはNH4
+であることが好ましい。
【0034】
一般式(1)および(2)において、「置換基を有していてもよい炭素原子数7~12のアミド基」とは、「―(C=O)―NR31R32」と表すことができる。ここで、「R31」および「R32」は「置換基を有していてもよい炭素原子数7~12のアミド基」における「置換基」を表す。R31またはR32は、具体的に、―H、―OH、―SO3X、―COOX、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、―NO2、―SO2CH3、―SO2CH2CH3またはフェニル基があげられる。R31およびR32で表される「フェニル基」は、さらに前記「置換基」を有していてもよい。R31およびR32で表されるフェニル基が置換基を有する場合、当該置換基は、メチル基、エチル基または―NO2が好ましい。なお、一般式(1)および(2)において、「置換基を有していてもよい炭素原子数7~12のアミド基」における「炭素原子数7~12」は「置換基」に含まれる炭素原子数を含むものとする。
【0035】
一般式(1)および(2)において、R1~R3はそれぞれ独立に、―H、炭素原子数1~3のアルキル基、―NO2、―SO2CH3、―SO2CH2CH3または―COOXを表す。本発明のアゾ色素の一形態として、一般式(1)および(2)において、R1~R3のうち1個または2個が―NO2であることが好ましい。アゾ色素の別の一形態として、一般式(1)および(2)において、R3が炭素原子数1~3のアルキル基(特に好ましくは―CH3)または―SO2CH3であることが好ましい。
【0036】
R
1~R
3のうち1個または2個が―NO
2である一般式(1)または(2)で表されるアゾ色素は、下記一般式(Ia)または式(Ib)で表される構造を有することが好ましい。一般式(Ia)および式(Ib)中、*はアゾ基(-N=N-)との結合部位を示す。一般式(Ia)におけるR
1は前記一般式(1)および(2)におけるR
1と同意義を示す。一般式(Ia)におけるR
1は-Hまたは-NO
2であることが好ましく、-NO
2であることがより好ましい。
【化7】
【0037】
R
3が炭素原子数1~3のアルキル基または―SO
2CH
3である一般式(1)または(2)で表されるアゾ色素は、下記一般式(Ic)で表される構造を有することが好ましい。一般式(Ic)中、R
3aは炭素原子数1~3のアルキル基または―SO
2CH
3を表し、*はアゾ基(-N=N-)との結合部位を示す。R
3aは―CH
3または―SO
2CH
3であることが好ましく、―SO
2CH
3であることがより好ましい。
【化8】
【0038】
一般式(1)および(2)において、R4~R17はそれぞれ独立に、―H、―OH、―SO3X、―COOX、または、置換基を有してもよい炭素原子数7~12のアミド基を表し、Xはそれぞれ独立に非発色性カチオンを表す。本発明のアゾ色素の一形態として、一般式(1)において、R4~R10のいずれか1個または2個が―OHであることが好ましく、または、R4~R10のいずれか1個または2個が―SO3Naであることが好ましい。同様に、本発明のアゾ色素の一形態として、一般式(2)において、R11~R17のいずれか1個または2個が―OHであることが好ましく、または、R11~R17のいずれか1個または2個が―SO3Naであることが好ましい。
【0039】
一般式(1)で表されるアゾ色素は、R
4またはR
6が-OHであることが好ましい。例えば、一般式(1)で表されるアゾ色素は、下記一般式(IIa)または(IIb)で表される構造を有することが好ましい。式(IIa)および(IIb)中、*はアゾ基(-N=N-)との結合部位を示し、R
5~R
10は前記一般式(1)におけるR
5~R
10と同意義を示し、R
4aは―H、―SO
3X、―COOX、または、置換基を有してもよい炭素原子数7~12のアミド基を示す。
【化9】
【0040】
一般式(1)で表されるアゾ色素は一般式(IIa)で表される構造を有することが好ましく、下記一般式(IIa-1)~(IIa-3)で表される構造を有することがより好ましい。
【化10】
【0041】
一般式(2)で表されるアゾ色素は、R
11が-OHである下記一般式(III)で表される構造を有することが好ましい。一般式(III)中、*はアゾ基(-N=N-)との結合部位を示し、R
12~R
17は一般式(1)におけるR
12~R
17と同意義を示し、R
11aは―H、―SO
3X、―COOX、または、置換基を有してもよい炭素原子数7~12のアミド基を表す。
【化11】
【0042】
一般式(2)で表されるアゾ色素は、一般式(IIIa)で表される構造を有することが好ましく、下記一般式(IIIa-1)、または(IIIa-2)で表される構造を有することがより好ましい。
【化12】
【0043】
一般式(3)において、R21はそれぞれ独立に、炭素原子数1~3のアルキル基、または非発色カチオンを表す。複数存在するR21は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R21はすべて非発色カチオンであってよく、耐光性により優れる陽極酸化皮膜が得られやすいことから、R21はすべて―Hであってよい。
【0044】
一般式(3)において、Zは酸素原子または硫黄原子を表す。複数存在するZは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。一般式(3)において、Zの1~3個が酸素原子であってよく、Zの2~3個が酸素原子であってよく、耐光性により優れる陽極酸化皮膜が得られやすいことからZの3個が酸素原子であってよい。一般式(3)で表されるアゾ色素は下記一般式(IV)で表される構造を有することが好ましく、耐光性により優れる陽極酸化皮膜が得られやすいことから、下記一般式(IVa)で表される構造を有することがより好ましい。式(IV)および(IVa)中、*はアゾ基(-N=N-)との結合部位を示す。
【化13】
【0045】
一般式(3)において、R18~R20としては、それぞれ独立に、―H、―CH3、―NO2、―SO2CH3、―SO3H、―SO3Na、―COOHまたは―COONaであることが好ましい。R18~R20の1個または2個が―NO2であることが好ましい。一般式(3)で表されるアゾ色素は、前記一般式(Ia)、(Ib)、または(Ic)で表される構造を有することが好ましく、前記一般式(Ia)で表される構造を有することがより好ましい。
【0046】
一般式(1)、(2)または(3)で表される本発明のアゾ色素である化合物(以下、単に色素(1)~(3)とも表す)は、生じ得るすべての立体異性体および互変異性体を包含しており、下記の具体例化合物は平面構造式を記載している。色素(1)~(3)の好ましい具体例を下記式(G-0)~(G-105)、(A-1)~(A-39)に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
色素(1)~(3)は、下記一般式(V-1)で表される化合物であることが好ましく、一般式(V-1)で表される化合物の中でも、式(G-2)、式(G-4)または式(A-1)で表される化合物であることが特に好ましい。下記一般式(V-1)で表される化合物(特に、式(G-2)、式(G-4)または式(A-1)で表される化合物)を用いる場合、単色で黒色を呈しながら、耐光性にも優れる陽極酸化皮膜がより一層得られやすくなる。
【化63】
【0097】
一般式(V-1)中、Yは下記一般式(IIa-3)、下記一般式(IIIa-1)、または下記一般式(IVa)で表される基を示す。これらの式中、XおよびR
21は上述したXおよびR
21と同義である。
【化64】
【0098】
一般式(1)または(2)で表される化合物は、例えば、下記一般式(4)で表される化合物をジアゾ化して得られるジアゾ化物と、下記一般式(5)または(6)で表される化合物および/またはその塩とをジアゾカップリング反応させる工程(カップリング工程)を含む方法によって得ることができる。すなわち、一般式(4)で表される化合物が、一般式(4)で表される化合物をジアゾ化して得られるジアゾ化物と、下記一般式(5)または(6)で表される化合物および/またはその塩とのジアゾカップリング反応により得られるものであってよい。
【0099】
【0100】
[式(4)~(6)中、R1~R17およびXは、前記一般式(1)および(2)に記載の定義と同意義を示す。]
【0101】
前記一般式(1)または(2)で表される本発明の化合物(アゾ色素)の製造方法の一例を以下に示すが、この方法に限定されない。具体的には、最初に、前記一般式(4)で表され、適当な置換基を有する芳香族アミン誘導体を、塩酸や硫酸などの酸水溶液中で、亜硝酸ナトリウムなどを用いて調製した塩基性水溶液と適温で反応させることにより、下記一般式(4a)で表される化合物および/またはその塩(ジアゾ成分)が得られる。
【0102】
【0103】
[式(4a)中、R1~R3、および、Xは、前記一般式(1)および(2)中の定義と同意義を示す。]
【0104】
一方、前記一般式(5)または(6)で表される化合物を水酸化ナトリウムなどの水溶液中に溶解し反応させることによって、一般式(5)または(6)で表される化合物の塩(カプラー成分)が得られる。一般式(5)または(6)で表される化合物をそのままカプラー成分(単にカプラー成分(5)または(6)とも表す)として用いてもよい。
【0105】
次に、前記一般式(4a)で表されるジアゾ成分(4a)と前記カプラー成分(5)または(6)とを反応(ジアゾカップリング反応)させることにより、アゾ化合物(アゾ色素)として前記一般式(1)または(2)で表される化合物および/またはその塩が得られる。本実施形態に係る前記一般式(1)または(2)で表される化合物(アゾ色素)の製造方法は、前記のようにして得た一般式(1)または(2)で表される化合物を得る工程を備える。
【0106】
一般式(3)で表される化合物は、例えば、下記一般式(7)で表される化合物をジアゾ化して得られるジアゾ化物と、下記一般式(8)で表される化合物および/またはその塩とをジアゾカップリング反応させる工程(カップリング工程)を含む方法によって得ることができる。すなわち、一般式(7)で表される化合物が、一般式(7)で表される化合物をジアゾ化して得られるジアゾ化物と、下記一般式(8)で表される化合物および/またはその塩とのジアゾカップリング反応により得られるものであってよい。
【0107】
【0108】
[式(7)および(8)中、R18~R21、XおよびZは、前記一般式(3)中の定義と同意義を示す。]
【0109】
前記一般式(3)で表される本発明の化合物(アゾ色素)の製造方法の一例を以下に示すが、この方法に限定されない。具体的には、最初に、前記一般式(7)で表され、適当な置換基を有する芳香族アミン誘導体を、塩酸や硫酸などの酸水溶液中で、亜硝酸ナトリウムなどを用いて調製した塩基性水溶液と適温で反応させることにより、下記一般式(7a)で表される化合物および/またはその塩(ジアゾ成分)が得られる。
【0110】
【0111】
[式(7a)中、R18~R20、および、Xは、前記一般式(3)中の定義と同意義を示す。]
【0112】
一方、前記一般式(8)で表される化合物を水酸化ナトリウムなどの水溶液中に溶解し反応させることによって、一般式(8)で表される化合物の塩(カプラー成分)が得られる。一般式(8)をそのままカプラー成分(単にカプラー成分(8)とも表す)として用いてもよい。
【0113】
次に、前記一般式(7a)で表されるジアゾ成分(7a)と前記カプラー成分(8)とを反応(ジアゾカップリング反応)させることにより、アゾ化合物(アゾ色素)として前記一般式(3)で表される化合物および/またはその塩が得られる。本実施形態に係る前記一般式(3)で表される化合物(アゾ色素)の製造方法は、前記のようにして得た一般式(3)で表される化合物を得る工程を備える。
【0114】
前記色素(1)、(2)または(3)は、カラムクロマトグラフィーによる精製;シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製;溶媒による再結晶や酸などを用いた各種の晶析法などの公知の方法で精製することができる。
【0115】
本発明の色素(1)~(3)、それらの中間体、または、前記製造方法で得られた各種生成物の同定や物性評価は、紫外可視吸収スペクトル分析(UV-Vis)、熱重量測定-示差熱分析(TG-DTA)、ガスクロマトグラフィー分析(GC)、薄層クロマトグラフィー分析(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC/MS)、核磁気共鳴分析(NMR)分析などを用いて行うことができる。
【0116】
本発明における、一般式(1)~(3)で表されるアゾ色素は、染料組成物の成分として用いることができる。つまり、色素(1)~(3)は、1種類の単色の染料を単独で用いて、アルミニウムまたは繊維などを着色するための色素化合物として好適に用いることができる。色素(1)~(3)は、混色により多様な色彩を得るために2種以上を併用してもよい。染料組成物は、最適な染色(染料を用いた着色)のために、その他の成分を混合してもよい。具体的には、水、アルコール、溶剤などの液体(溶媒);界面活性剤などの添加剤;などがあげられる。溶媒としては、水が好ましい。色素(1)~(3)は、他の色素を併用して、染料組成物の成分に用いてもよい。他の色素とは、色素(1)または(2)以外の他の化合物、顔料または染料などであり、具体的に、ルテニウム錯体、クマリン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、他のキサンテン系色素などがあげられる。色素(1)~(3)と、他の成分とを組み合わせて用いる場合、色素(1)~(3)に対する他の成分の使用量を10~200質量%とするのが好ましく、20~100質量%とするのがより好ましい。
【0117】
本発明の染料組成物は、陽極酸化アルミニウム用の着色剤として応用できる。色素(1)~(3)を陽極酸化アルミニウムなどの着色剤として用いる際、その着色(染色)方法において、色素(1)~(3)を含有する染料組成物における色素(1)~(3)の濃度は、0.02~10質量%であることが好ましく、0.05~3質量%がより好ましい。化合物の濃度が低いほど淡色の着色を行うことができ、濃度が高いほど中間色~濃色の着色を行うことができる。
【0118】
ここで、陽極酸化アルミニウムとは、酸水溶液などの電解液中で、電解処理したアルミニウム表面に、細孔を有する酸化物層を形成する処理を行ったアルミニウムを意味する。陽極酸化アルミニウム用着色剤は、この細孔を有するアルミニウム表面に、色素を細孔内に吸着させることにより、着色(染色)させることができるものを意味する。通常、着色されたアルミニウム表面の耐久性、および耐光性を向上させるために、着色後に細孔を塞ぐための封孔処理が行われる。
【0119】
陽極酸化アルミニウムにおけるアルミニウムとしては、アルミニウム、酸化アルミニウム、または他の金属とのアルミニウム合金など、アルミニウムを含有する金属または金属化合物などがあげられる。
【0120】
陽極酸化アルミニウム用着色剤を用いたアルミニウムの着色方法は、アルマイト染色法として公知の方法を用いることができる。例えば、日本産業規格(JIS H 8601:1999「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜」)、特許文献1~4,6などに記載の方法を用いることができる。アルミニウムの着色方法は、特に限定されないが、以下に一例を示す。
【0121】
最初に、アルミニウム板を硫酸、シュウ酸、クロム酸、スルホン酸などの酸水溶液を用いて脱脂処理し水洗する。次に、脱脂処理したアルミニウム板を陽極として、電解液として酸水溶液を用いて電解し、アルミニウム陽極表面上に、多くの細孔を形成する陽極酸化皮膜(アルマイト皮膜)を形成させ(陽極酸化処理)、水洗する。続いて、適宜、表面調整、水洗などを陽極酸化皮膜に施した後、本発明の化合物を含有する染料組成物を含有する陽極酸化アルミニウム用着色剤水溶液などに陽極酸化皮膜を浸漬し、陽極酸化皮膜表面の細孔内に染料を吸着(染色、電解着色)させ、表面の細孔をアルミニウム酸化物水和物などで封孔し封孔物質を形成することによって、陽極酸化皮膜を着色することができる。
本発明の染料組成物を2種以上併用する場合、あるいは本発明の染料組成物を他の色素と併用する場合、使用するすべての色素の混合溶液を調製して陽極酸化アルミニウムを浸漬してもよく、また、各色素溶液を別々に調製し、各溶液に陽極酸化アルミニウムを順に浸漬してもよい。
【0122】
本発明の着色時における電解条件は、直流電解でも交流電解でもよく、直流電解が好ましい。電流密度は、0.1~10A/dm2が好ましく、0.5~3A/dm2がより好ましい。通電時間は、10秒~60分が好ましい。陽極酸化皮膜の厚さは2~20μmが好ましい。これらの陽極酸化条件は、通電時間が長く陽極酸化皮膜が厚いほど濃色の着色となるため、これらの条件を調整することで、淡色~中間色~濃色の調整が行える。
【0123】
上記の各工程の処理温度は、それぞれ適した温度が好ましく、陽極酸化時の温度は0~80℃が好ましい。染色時の温度は10~70℃が好ましい。その他の処理温度は、10~80℃が好ましい。
【0124】
本実施形態における染料組成物は、アルミニウム以外の金属を用いた陽極酸化物についても同様に使用することができる。たとえば、マグネシウム、亜鉛、チタン、ジルコニウムなど、陽極酸化した細孔に染料を吸着することができるものあれば、導電性プラスチックなどの非金属にも応用可能である。
【0125】
本実施形態の陽極酸化アルミニウム用着色剤は、アルミニウムに着色した試料の特性を、色相、耐光性などを測定することによって評価することができる。色相は、目視で色味や均一性を評価することもできる。色相は、色差計により濃度(K/Sd)、色味(L*、a*、b*)および色差(ΔE*)として測定してもよい。
【0126】
本実施形態の陽極酸化アルミニウム用着色剤を用いて表すことのできる色は、例えば、黒色または茶色系である。これらの淡色(薄黒、薄茶など)または濃色(濃黒、濃茶など)など濃淡の異なるものを表すことができる。本実施形態の陽極酸化アルミニウム用着色剤は、上述した化合物と、他の色素を併用することにより、混色したもの(中間色)を表すこともできる。
【0127】
本実施形態の陽極酸化アルミニウム用着色剤を用いて着色したアルミニウムの耐光性試験は、紫外光を含む太陽光を模した試験機などを用いて、一定時間、試料に光照射し、試験前後の着色アルミニウムの色相の変化を測定することで行ってもよい。具体的には、色差計などを用い、CIE L*a*b*表色系で色味を測定して得られた光照射試験前後の色差ΔE*
ab(またはΔE*)により評価してもよい。耐光性の判定には、着色アルミニウムの色相を、日本産業規格(JIS L 0804「変退色用グレースケール」)にて定める方法に従って、グレースケールを用いた目視による染色堅牢度判定を行ってもよい。
【0128】
本実施形態の陽極酸化アルミニウム用着色剤を用いた着色アルミニウムは、多様多種のアルミニウム板材料またはアルミニウム製外装などの製品に用いられる。
【0129】
本発明の一実施形態として、陽極酸化アルミニウムを着色するための前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物が提供される。また、本発明の一実施形態として、陽極酸化アルミニウムを着色するための前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物の使用が提供される。また、本発明の一実施形態として、陽極酸化アルミニウム用着色剤の製造のための前記一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物の使用(応用)が提供される。
【実施例】
【0130】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、以下の実施例に限定されない。合成実施例において、特に指定の無い限り、関東化学株式会社製、富士フイルム和光純薬株式会社製、東京化成工業株式会社製などの試薬を使用した。なお、合成実施例において、化合物(色素)の構造の同定は、1H-NMR(日本電子株式会社製核磁気共鳴装置、JNM-ECZ400S/L1型)により行い、下記の各合成実施例の実験結果と合わせてNMR測定データを記載した。
【0131】
[合成実施例(G-0)] 色素(G-0)の合成
(ジアゾ成分の調製1)
反応容器にピクラミン酸ナトリウム28.2gを入れ、水242mLを入れ分散し、35%塩酸6.9g(関東化学株式会社製)を添加し、氷浴下の5℃以下で2時間撹拌した。撹拌後、反応液中に40%亜硝酸ナトリウム水溶液6.4g(関東化学株式会社製)を滴下し、3時間撹拌した。撹拌後、反応液中にスルファミン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)を添加して過剰の亜硝酸ナトリウムを分解し、ジアゾ化液1を得た。
(カプラー成分の調製1~ジアゾカップリング反応1)
次に、反応容器にH酸水和物(4-アミノ-5-ヒドロキシ-2,7-ナフタレンジスルホン酸ナトリウム水和物)(東京化成工業株式会社製)38.0gを入れ、水250mLを入れ分散した後、24%水酸化ナトリウム水溶液6.8g(関東化学株式会社製)および炭酸ナトリウム9.0g(関東化学株式会社製)を加え溶解した。この溶液を氷浴下の5℃以下で撹拌し、カプラー成分液を得た。撹拌中のカプラー成分液に、先に合成した前記ジアゾ化液1を入れ、pH9.0~9.5に調整し、終夜撹拌し、ジアゾカップリング反応を行った。撹拌後、レゾルシンチェックにてジアゾ化物が残存していないことを確認し、反応終了とした。40℃に昇温し、95%硫酸(関東化学株式会社製)を添加してpH6.0~6.5に調整後、析出した固体をろ過した。得られた固体を乾燥し、下記式(3-G-0)で表される化合物を黒紫色粉末として得た(収量52.0g、収率100%)。
【0132】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=7.12(1H)、7.21(1H)、7.57(1H)、8.45(1H)、8.73(1H)
【0133】
【0134】
(ジアゾ成分の調製2)
反応容器に前記化合物(3-G-0)10.9gを入れ、水140mLを入れ分散し、35%塩酸4.1gを添加した。氷浴下の5℃以下で3時間撹拌した。撹拌後、反応液中に40%亜硝酸ナトリウム水溶液3.4gを滴下し、3時間撹拌した。撹拌後、スルファミン酸を添加して過剰の亜硝酸ナトリウムを分解し、ジアゾ化液2を得た。
(カプラー成分の調製2~ジアゾカップリング反応2)
反応容器に2-ナフトール2.74g(東京化成工業株式会社製)、水150mLを入れ、分散させた後、24%水酸化ナトリウム水溶液3.8g、炭酸ナトリウム1.9gを加え溶解した。この溶液を氷浴下にて5℃以下に撹拌し、カプラー成分液を得た。撹拌中のカプラー成分液に先に合成した前記ジアゾ化液2を入れ、pH9.0~9.5に調整し、終夜撹拌後、レゾルシンチェックにてジアゾ化物が残存していないことを確認し、反応終了とした。40℃に昇温し、95%硫酸を添加してpH6.0~6.5に調整後、ろ過した。得られた固体を乾燥し、色素(G-0)を黒色粉末として得た(収量12.7g、収率92%)。
【0135】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=6.36(1H)、7.04(2H)、7.15(1H)、7.25(1H)、7.56(1H)、7.62(1H)、8.11(1H)、8.15(1H)、8.31(1H)、8.37(1H)
【0136】
[合成実施例1] 色素(G-1)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えてR酸(3-ヒドロキシナフタレン-2,7-ジスルホン酸)を用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-1)を黒色粉末として得た(収量16.1g、収率91%)。
【0137】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=7.77(1H)、7.86(1H)、7.97(2H)、8.00(1H)、8.36(1H)、8.64(2H)、8.80(1H)
【0138】
[合成実施例2] 色素(G-2)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えて2-ナフトール-7-スルホン酸ナトリウムを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-2)を黒色粉末として得た(収量9.6g、収率61%)。
【0139】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=6.74(1H)、7.69(1H)、7.75(2H)、7.86(1H)、7.95(1H)、8.41(1H)、8.78-8.90(3H)
【0140】
[合成実施例3] 色素(G-3)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えて3,6-ジヒドロキシナフタレン-2,7-ジスルホン酸二ナトリウムを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-3)を黒色粉末として得た(収量14.1g、収率78%)。
【0141】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=7.66(2H)、7.76(1H)、7.88(1H)、7.99(1H)、8.18(1H)、8.48(1H)、8.78(1H)
【0142】
[合成実施例4] 色素(G-4)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えて1-ナフトール-3,6-ジスルホン酸二ナトリウムを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-4)を黒色粉末として得た(収量14.1g、収率80%)。
【0143】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=7.66(1H)、7.74(1H)、7.85(1H)、7.89(1H)、8.05(1H)、8.50(1H)、8.55(1H)、8.62(1H)、8.74(1H)
【0144】
[合成実施例5] 色素(G-5)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えて1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウムを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-5)を黒色粉末として得た(収量11.6g、収率71%)。
【0145】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=7.47(1H)、7.52(1H)、7.62(1H)、7.69(1H)、7.74(1H)、8.12(1H)、8.27(1H)、8.40(1H)、8.44(1H)、8.54(1H)
【0146】
[合成実施例6] 色素(G-6)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えてR酸二ナトリウムを用い、ピクラミン酸ナトリウムに代えて3-アミノ-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホンを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-6)を黒色粉末として得た(収量11.9g、収率81%)。
【0147】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=3.33(3H)、7.06(1H)、7.64(2H)、7.74(1H)、7.89(1H)、7.92(1H)、8.28(2H)、8.50(1H)、8.59(1H)
【0148】
[合成実施例7] 色素(G-7)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えて1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウムを用い、ピクラミン酸ナトリウムに代えて3-アミノ-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホンを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-7)を黒色粉末として得た(収量10.6g、収率76%)。
【0149】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=3.20(3H)、6.87(1H)、7.38(1H)、7.46-7.51(2H)、7.63(1H)、7.71(1H)、7.76(1H)、8.15-8.19(3H)、8.54(1H)
【0150】
[合成実施例8] 色素(G-8)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えて2-ナフトール-6-スルホン酸ナトリウム水和物を用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-8)を黒色粉末として得た(収量15.0g、収率95%)。
【0151】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=6.70(1H)、7.59-7.72(4H)、7.80(1H)、8.13(1H)、8.43(2H)、8.77(1H)
【0152】
[合成実施例9] 色素(G-9)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えて6,7―ジヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸ナトリウムを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-9)を黒色粉末として得た(収量14.5g、収率90%)。
【0153】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=6.88(1H)、7.39(1H)、7.06-7.66(3H)、7.86(1H)、8.64-8.70(3H)
【0154】
[合成実施例10] 色素(G-10)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えて1-ナフトール-8-スルホン酸ナトリウムを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-10)を黒色粉末として得た(収量10.8g、収率69%)。
【0155】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=6.75(1H)、7.16(1H)、7.43(1H)、7.56(2H)、7.67(1H)、7.76(1H)、7.93(1H)、7.25(1H)、8.61(1H)
【0156】
[合成実施例11] 色素(G-11)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えてクロモトロープ酸二ナトリウム二水和物を用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-11)を黒色粉末として得た(収量11.0g、収率61%)。
【0157】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=7.43(1H)、7.64(1H)、7.79(2H)、7.98(1H)、8.63(1H)、8.70(1H)、8.86(1H)
【0158】
[合成実施例12] 色素(G-12)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えて2-ナフトール-6,8-ジスルホン酸二カリウムを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-12)を黒色粉末として得た(収量3.5g、収率20%)。
【0159】
6.80(1H)、7.72(1H)、7.80(1H)、7.94(1H)8.02(1H)、8.41(1H)、8.76(1H)、8.85(1H)、8.90(1H)
【0160】
[合成実施例13] 色素(G-13)の合成
合成実施例(G-0)において、ピクラミン酸ナトリウムに代えて2-アミノ-4-ニトロフェノールを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-13)を黒色粉末として得た(収量48.7g、収率97%)。
【0161】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=6.77-6.86(2H)、6.97(2H)、7.10(2H)、7.46(1H)、7.56(1H)、7.98(2H)、8.17(1H)、8.46(1H)
【0162】
[合成実施例14] 色素(G-14)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えて1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウムを用い、ピクラミン酸ナトリウムに代えて2-アミノ-4-ニトロフェノールを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-14)を黒色粉末として得た(収量7.0g、収率55%)。
【0163】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=6.87(1H)、7.38(1H)、7.46-7.51(2H)、7.63(1H)、7.72(1H)、7.79(1H)、8.20-8.28(3H)、8.75(1H)
【0164】
[合成実施例15] 色素(G-15)の合成
合成実施例(G-0)において、ピクラミン酸ナトリウムに代えて3-アミノ-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホンを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-15)を黒色粉末として得た(収量9.2g、収率80%)。
【0165】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=3.33(3H)、6.70-6.82(2H)、6.95(2H)、7.05(2H)、7.46(1H)、7.52(1H)、7.90(2H)、8.10(1H)、8.35(1H)
【0166】
[合成実施例16] 色素(G-16)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えて2-ナフトール-7-スルホン酸ナトリウムを用い、ピクラミン酸ナトリウムに代えて3-アミノ-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホンを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-16)を黒色粉末として得た(収量10.5g、収率80%)。
【0167】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=3.32(3H)、7.05(1H)、7.39(1H)、7.48-7.53(2H)、7.59(2H)、7.80(1H)、7.88(1H)、8.07(1H)、8.46(1H)、8.70(1H)
【0168】
[合成実施例17] 色素(G-17)の合成
合成実施例(G-0)において、ピクラミン酸ナトリウムに代えて2-アミノ-p-クレゾールを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-17)を黒色粉末として得た(収量5.4g、収率44%)。
【0169】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=2.29(3H)、6.80-6.91(4H)、7.01(2H)、7.40(2H)、7.57(1H)、7.89(1H)、8.27(1H)
【0170】
[合成実施例18] 色素(G-18)の合成
合成実施例(G-0)において、2-ナフトールに代えて1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウムを用い、ピクラミン酸ナトリウムに代えて2-アミノ-4-ニトロフェノールを用いたこと以外は同様の方法で、色素(G-18)を黒色粉末として得た(収量7.5g、収率60%)。
【0171】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=6.87(1H)、7.38(1H)、7.46-7.51(2H)、7.63(1H)、7.72(1H)、7.79(1H)、8.20-8.28(3H)、8.77(1H)
【0172】
[合成実施例19] 色素(A-1)の合成
反応容器にピクラミン酸ナトリウム(28.2g)を入れ、水(242mL)中に分散して、35%塩酸(6.9g、関東化学株式会社製)を添加した。氷浴下にて5℃以下で撹拌後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液(6.4g、関東化学株式会社製)を滴下した。3時間撹拌後、スルファミン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)を添加して過剰の亜硝酸ナトリウムを除去してジアゾ化液を得た。反応容器にH酸水和物(38.0g、東京化成工業株式会社製)を投入し、水(250mL)中に分散させた後、24%水酸化ナトリウム水溶液(6.8g)、炭酸ナトリウム(9.0g、関東化学株式会社製)を加え溶解した。この溶液を氷浴下にて5℃以下に撹拌しているところに先に合成した前記ジアゾ化液を添加して、pH9.0~9.5に調製した。終夜(2時間以上)撹拌後、レゾルシンチェックにてジアゾ化物の残存がないことを確認した。40℃に昇温し、95%硫酸(関東化学株式会社製)を用いてpH6.0~6.5に調整後、ろ過した。得られた固体を乾燥することにより、下記式(2-A-1)で表される化合物を黒紫色粉末として得た(収量:52.0g、収率:100%)。
【0173】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=7.12(1H)、7.21(1H)、7.57(1H)、8.45(1H)、8.73(1H)
【0174】
【0175】
反応容器に前記化合物(2-A-1)(10.9g)を入れ、水(140mL)中に分散して、35%塩酸(4.1g、関東化学株式会社製)を添加した。氷浴下にて5℃以下で撹拌後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液(3.4g、関東化学社製)を滴下した。3時間攪拌後、スルファミン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)を添加して過剰の亜硝酸ナトリウムを除去した。反応容器にバルビツール酸(2.6g、東京化成工業株式会社製)を投入し、水(150mL)中に分散させた後、24%水酸化ナトリウム水溶液(3.8g)、炭酸ナトリウム(1.9g)を加え溶解した。この溶液を氷浴下にて5℃以下に撹拌しているところに先に合成したジアゾ化液を添加して、pH9.0~9.5に調製した。終夜(2時間以上)撹拌後、レゾルシンチェックにてジアゾ化物の残存がないことを確認した。40℃に昇温し、95%硫酸(関東化学株式会社製)にてpH6.0~6.5に調整後、ろ過した。得られた固体を乾燥することにより、色素(A-1)を黒色粉末として得た(収量:11.7g、収率:86%)。
【0176】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=4.94(1H)、7.75(1H)、7.96(1H)、8.41(1H)、8.50(1H)、8.76(1H)
【0177】
[合成実施例20] 色素(A-2)の合成
バルビツール酸に代えて2-チオバルビツール酸ナトリウムを用いたこと以外は合成実施例19と同様にして、色素(A-2)を黒色粉末として得た(収量:10.0g、収率:70%)
【0178】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=4.75(1H)、7.68(1H)、7.89(1H)、8.32(1H)、8.39(1H)、8.66(1H)
【0179】
[合成実施例21] 色素(A-3)の合成
ピクラミン酸ナトリウムに代えて2-アミノ-4-ニトロフェノールを用いたこと以外は合成実施例19と同様にして、色素(A-3)を黒色粉末として得た(収量:16.1g、収率:91%)。
【0180】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=4.82(1H)、6.63(1H)、7.72(1H)、7.96(1H)、8.00(1H)、8.44(1H)、8.58(1H)
【0181】
[合成実施例22] 色素(A-4)の合成
ピクラミン酸ナトリウムに代えて2-アミノ-5-ニトロフェノールを用いたこと以外は合成実施例19と同様にして、色素(A-4)を黒色粉末として得た(収量:9.84g、収率:78%)。
【0182】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=4.84(1H)、7.06(1H)、7.37(1H)、7.52(1H)、7.72(1H)、7.85(1H)、8.28(1H)
【0183】
[合成実施例23] 色素(A-5)の合成
ピクラミン酸ナトリウムに代えて2-アミノフェノール-4-スルホン酸を用いたこと以外は合成実施例19と同様にして、色素(A-6)を黒色粉末として得た(収量:6.1g、収率:45%)。
【0184】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=4.86(1H)、6.81(1H)、7.42(1H)、7.73(1H)、7.94(1H)、8.16(1H)、8.42(1H)
【0185】
[合成実施例24] 色素(A-6)の合成
ピクラミン酸ナトリウムに代えてニトラミン酸を用いたこと以外は合成実施例19と同様にして、色素(A-6)を黒色粉末として得た(収量:13.5 g、収率:92%)。
【0186】
1H-NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)=4.75(1H)、7.75(1H)、8.01(1H)、8.51―8.52(2H)、8.64(1H)
【0187】
[実施例1]
<着色アルミニウムの作製>
以下の手順で、アルミニウム基板上に陽極酸化処理し、着色アルミニウムを作製した。なお、陽極酸化および染色の工程で、処理時間と染料化合物濃度を設定した。
(脱脂) 脱脂用の容器に、脱脂剤(奥野製薬工業株式会社製、製品名:トップADD-100)150mL、98%硫酸70mL、水1000mLを混合したものを脱脂液として調製し、適当な寸法に裁断した染色用アルミニウム基板を浸漬し、60℃で3分間脱脂処理を行い、処理後水洗した。
(陽極酸化) 電解液用の容器に、98%硫酸を用いて180g/Lの電解液を調製し、電解装置の電極にアルミニウム基板を接続し、電解液槽に浸漬し、温度20±1℃(19~21℃)、電流密度1.0A/dm2の以下の通電時間の条件で陽極酸化を行い、以下の厚さの陽極酸化皮膜を得た。酸化後、水洗した。
陽極酸化条件:通電15分間 陽極酸化皮膜厚:5μm
(表面調整) 表面調整剤(奥野製薬工業株式会社製、TACソマール121)および水を用いて、濃度50mL/Lの表面調整液を調製し、45℃で1分間、アルミニウム基板を浸漬した。浸漬後アルミニウム基板を水洗した。
(染色) 合成実施例1で得られた色素(G-1)を用い、本発明の染料組成物としてそれぞれ下記の濃度の色素を含有する染色用水溶液を調製し、以下の染色時間で浸漬し、ともに温度(建浴温度)55℃で染色した。染色後アルミニウム基板を水洗した。
染色条件:色素濃度2.0質量% 染色時間:30秒間
(封孔) 封孔剤(奥野製薬工業株式会社製、製品名:トップシールH-298)および水を用いて40mL/Lの封孔液を調製し、約90℃で15分間封孔処理を行った。封孔処理後、温風で乾燥した。
【0188】
<色相の評価>
色素(G-1)を用いて着色した着色アルミニウム板の色相を目視と色差計(装置名:コニカミノルタ製分光色差計 型式:CM-3700A)でCIE L*a*b*表色系により評価した。評価した色相の結果を表1に示す。
【0189】
<耐光性の評価>
色素(G-1)を用いて着色した着色アルミニウム板について、次の方法で耐光性試験を行った。キセノンフェードメーター/ATLAS Ci3000+Xenon Weather Ometer(ATLAS社製)を用いて、放射照度:300~400nm、60W/m2、試験槽内温度:38℃、湿度:50%、ブラックパネル(BP)温度:63℃の条件で、着色アルミニウム板に50時間照射したものについて、色差計による色相および光照射前後の色差ΔE*の測定を行い、また、グレースケールの級数による染色堅牢度の目視判定(JIS L 0804「変退色用グレースケール」)により耐光性の判定を行った。級数は、5級が最高で、1級が最低であり、級数が高いものほど色が濃く(色差ΔE*が小さく)照射前の色相を保持していることを示す。本発明の評価方法では、級数の判定結果を3段階に分け、以下の判定基準で評価し、結果を表1に示す。
グレースケール判定基準:級数と本発明における評価との対応
5級~4級:A(特に良好な耐光性)
3級:B(通常レベルの耐光性)
2級以下:C(耐光性低い)
【0190】
[実施例2~実施例10]
色素(G-1)の代わりに、色素(G-2)~(G-7)、または(A-1)~(A-3)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、着色アルミニウム板を作製し、色相、色差ΔE*および目視による耐光性を評価した結果を表1にまとめて示す。
【0191】
[比較例1]
色素(G-1)の代わりに、本発明に属さない、下記式で表される次の色素:(D-1)について、実施例1と同様の作製条件で着色アルミニウムを作製し、色相、色差ΔE*および目視による耐光性を評価した結果を表1にまとめて示す。
【0192】
【0193】
【0194】
表1の結果から明らかなように、本発明のアゾ色素を含有する染料組成物からなる陽極酸化アルミニウム着色剤を用いることにより、アルミニウム上に、黒色または茶色系で、従来の色素を用いたものより優れた耐光性を有する皮膜を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明に係るアゾ色素を含有する染料組成物を用いることにより、耐光性に優れた、クロムなどの重金属およびハロゲンを含まない、単色(単一の色素)で黒色や茶色系の着色皮膜を形成する陽極酸化アルミニウム用着色剤を得ることができる。また、該着色剤を用いることにより、単色で黒色または茶色系に着色された、耐光性に優れた陽極酸化アルミニウム皮膜を得ることができる。