(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】結晶塑性の構成式による応力-ひずみ曲線プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
G01N3/00 Z
(21)【出願番号】P 2023018011
(22)【出願日】2023-02-09
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】720006559
【氏名又は名称】濱田 和明
(72)【発明者】
【氏名】濱田 和明
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-178168(JP,A)
【文献】特開2000-275154(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0370936(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
「構成式(式1)
(ここで、rは一結晶のすべり番号、
はrすべり番号のすべり系のせん断ひずみ速度、
は0.001、
はrすべり番号のすべり系のせん断応力、
はrすべり番号のすべり系の臨界せん断応力、
はrすべり番号のすべり系の背応力、m=0.001である)
と
(式4)
ここで、
=
ここで、NSはすべり系の総数。たとえば、面心立方格子であれば、12である。)
と
(式6)
(ここで、
、
、
はkすべり番号のすべり面の(x、y、z)の単位方位ベクトル、
、
、
はkすべり番号のすべり方向の(x、y、z)の単位方位ベクトルである。)
を用いたコンピュータプログラミングにおいて、
次の式での
(プラガー則) Cは材料定数。
背応力材 料 定 数 Cを 決 め る こ と。」
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属結晶のすべり系上の臨海せん断応力以上にすべり系せん断応力が働くと、塑性変形(すべり変形)が起きることに着目した応力とひずみの関係式(以下 構成式という)。に、背応力(結晶粒界状で、すべり変形に逆のせん断応力がかかること)を考慮する材料定数を決定する。また、塑性変形での加工硬化について、どのように進展するかを考慮した構成式の応力―ひずみ曲線プログラムを提案する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘塑性構成式にて、マクロ的な挙動で、応力―ひずみの構成式を決めて、引張圧縮試験を行っていた。ここで、結晶塑性の構成式を用い、結晶すべりを考慮して、引張圧縮試験におけるバウシンガー効果も考慮した構成式の材料定数を決めることに役立つ方法をプログラムで決めることにした。先行文献では、非特許文献 中国四国支部総会・講演会 講演論文集結晶塑性による繰り返し塑性解析では、構成式と加工硬化則が記されているが、あまり、詳細は記されていない。ここで、結晶塑性構成式を一つの結晶ごとに立てることにした。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】中国四国支部総会・講演会 講演論文集結晶塑性による繰り返し塑性解析
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単純な引張圧縮試験の構成式で、多結晶体を考慮した数値シミュレーションを作る。ここで、応力ひずみ曲線を描けることにより、バウシンガー効果(引張降伏力より、圧縮降伏力が小さく出る)という引張圧縮試験の結果があり、数値シミュレーションで、応力ひずみ曲線の背応力の材料パラメータCを決めることができる方法を挙げる。こうすることにより、バウシンガー効果を数値シミュレーションと引張圧縮試験の結果で合わすことができる。つまり、有限要素法にこの材料定数Cまたは材料定数Cかつaを入れて、プレス加工シミュレーションを行うことができる。この数値シミュレーションは、スプリングバックの数値シミュレーションも解析できる。つまり、結晶ごとの結晶方位で異方性、単結晶の引張試験で、加工硬化則を導き出して、複雑なプレス加工数値シミュレーション(スプリングバックがある)を行い、加工条件を決めることができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
結晶塑性の構成式(式1)
rは一結晶のすべり番号
はrすべり番号のすべり系のせん断ひずみ速度
=0.001(定数)
はrすべり番のすべり系のせん断応力
はrすべり番号のすべり系の臨界せん断応力
はr
すべり番号のすべり系の背応力
m=0.001(定数)において、
テイラー展開して、
(式2)
(式2)をさらに詳細にすると(式3)を得る。
(式3)
ここで、線形補間をすると
θ 線形補間定数
Δt 時間増分
(式4)
ここで、
=
である。
NSはすべり系の数(体心立方格子12)
pierceの提案した硬化則では、
はr=sのとき、1。r
のとき、0
q=1.2(定数)
材料定数は
=534[MPa]、
=0[MPa]、
=60[MPa]、
=108[MPa]である。
(プラガー則) Cは材料定数。
もしくは、
上記の式で、C、aは材料定数。背応力増分を用いてもいい。有限要素法などで、材料定数Cと材料定数aを実際の引張圧縮試験の結果を比較して求めてもよい。
ここで、結晶塑性の塑性ひずみ速度
を下記に示す。
、
、
はkすべり番号のすべり面の(x、y、z)の単位方位ベクトル、
、
、
はrすべり番号のすべり方向の(x、y、z)の単位方位ベクトル。
ここで、仮想仕事の原理より、下記の剛性マトリックスを得る。この式により、全体剛性マトリックスを作り、有限要素法を作る。
(式6)
Bマトリックスは、形状関数を局所座標変数で微分したものである。形状関数と内挿関数は同じものであるアイソメトリックス要素を使う。Dマトリックスは弾性マトリックスである。また、プログラム上は数値積分値を使う。(式6)が、結晶塑性有限要素法での要素一つ(結晶一つ)の剛性マトリックスでの増分である。これを全体結晶塑性マトリックスに直す。修正コレスキー法で解く。境界条件の節点力を与えて、変位増分uを求めることができる。
【発明の効果】
【0006】
背応力材料定数Cを有限要素法の結晶塑性構成式を用いたスプリングバック予想を行う数値シミュレーションで、プレス加工の条件を決めて、実際のスプリングバックに対処したプレス加工を行うことができる。
背応力材料定数Cまたはaでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0007】
構成式(式1)と(式4)と(式6)を用いたコンピュータ言語でプログラムをした数値シミュレーション。背応力については、
のどちらかを用いる。
【産業上の利用可能性】
【0008】
プレス加工金型ができていない設計開発段階で、数値シミュレーションを行い、設計開発の金型機構を決めるうえで、ノウハウが集約できる。スプリングバックに対しても応用できる。