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▶ コトブキシーティング株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】移動観覧席
(51)【国際特許分類】
   E04H 3/12 20060101AFI20241209BHJP
   A47C 1/12 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
E04H3/12 B
A47C1/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022550261
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035253
(87)【国際公開番号】W WO2022059131
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】510274430
【氏名又は名称】コトブキシーティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】松田 宗一
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-054153(JP,U)
【文献】国際公開第2015/181871(WO,A1)
【文献】特開2012-254111(JP,A)
【文献】実開昭62-126454(JP,U)
【文献】特開平03-021775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 3/12-3/30
A47C 1/00-1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段の床台;および
前記複数段の床台をそれぞれ水平に支持する支柱、および前記支柱の下端部で前後方向に延在し前後方向に移動可能なベースを備える複数の脚部;を備え、
前記脚部は、該脚部が支持する床台の1段下の床台の支柱と係合して、該脚部が支持する床台と前記1段下の床台を階段状にずれる状態で連動して前進可能とする第1のストッパと、
前記複数段の床台の部を上下に整列する床台の組として、該組の床台を連動して移動可能とする第2のストッパとを備え、
前記複数段の床台が全体的に上下に整列する収納位置と、前記複数段の床台が1段ずつ階段状に展開する通常使用位置または前記床台のが階段状に展開する短縮使用位置との間で、移動可能な移動観覧席であって、
各組を構成する第1の床台の脚部は、前記第2のストッパとして、各組を構成する第2の床台の脚部に向かって突出・格納可能に構成された干渉部材を備える第2のストッパ本体を備え、
前記第2の床台の脚部は、前記第2のストッパとして、前進時に、前記干渉部材と干渉して前記第1の床台と前記第2の床台とを連動させるストッパあてを備え
前記干渉部材は、前記移動観覧席が前記収納位置にあるときに、左右方向に整列するように配置され、前記収納位置において、前記干渉部材が突出位置にあるときに、前記干渉部材の突出方向の反対方向に突出して、隣接する前記干渉部材の移動を規制する展開規制部を備え、
前記展開規制部は、前記干渉部材が格納位置にある場合には、前記第2の床台の脚部の横方向の範囲内に格納されていることを特徴とすることを特徴とする移動観覧席。
【請求項2】
前記ストッパあては、前進時に、前記干渉部材と当接する当接部を備え、前記当接部はその突出長さを調整可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の移動観覧席。
【請求項3】
前記第2のストッパは、前記支柱の後方に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の移動観覧席。
【請求項4】
前記第2のストッパ本体は、前記干渉部材が前記格納位置にある場合の前記突出位置に向かう移動、および前記突出位置にある場合の前記格納位置へ向かう移動を規制する規制部を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の移動観覧席。
【請求項5】
前記規制部は、弾性部材によって付勢されることにより、前記干渉部材の前記格納位置から前記突出位置へと向かう移動を規制することを特徴とする請求項4に記載の移動観覧席。
【請求項6】
前記干渉部材は、前記格納位置において、前記脚部の前後方向に延在し、上下方向に延びる軸周りの回転運動により、前記格納位置から前記突出位置へと移動することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の移動観覧席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動観覧席に関し、より詳細には、複数段の床台が、全体的に階段状に展開された使用位置と、全体的に上下方向に整列する収納位置との間で互いに連動して前後移動可能な移動観覧席に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数段の床台が全体的に階段状に展開された使用位置と、全体的に上下方向に整列する収納位置との間で、互いに連動して前後移動可能な移動観覧席が知られている。
【0003】
特許文献1の移動観覧席は、複数段の床台と、各床台上に装着され、複数の椅子が横並びに連結された連結椅子と、各床台を水平状態で前後方向に移動可能に支持し、互いに係合することで各床台を連動させる脚部とを備える。脚部は、床台の左右方向に間隔があいた複数の部位に上端部がそれぞれ結合されてその床台から下方に延在する複数本の支柱と、各支柱の下端部に結合され、前後方向に延在するベースとを備える。
【0004】
特許文献1の移動観覧席は、最下段の床台以外の床台に結合された各脚部のベースの前端に平板状のストッパを備え、これを1段下の床台に結合された支柱と係合させることにより、連動して移動し、使用位置に展開される。
【0005】
また、特許文献1の移動観覧席は、上記ストッパのベースへの取り付け位置が変更可能である。上記ストッパと支柱との係合位置を変更することにより、複数段の床台の1部が上下方向に整列する、前後方向の長さが短縮された短縮使用位置に展開されるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/139792号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の移動観覧席では、短縮使用位置に展開するためには、ねじ止め等により取り付けられているストッパの取り付け位置をその都度変更する必要があり、作業が煩雑であった。
【0008】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、簡単な操作で床台が一段ずつ階段状に展開する通常使用位置と、複数段の床台のうち一部が上下方向に整列する、前後方向の長さが短縮された短縮使用位置とに選択的に展開することができる移動観覧席を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の1つの態様に係る移動観覧席は、複数段の床台;および前記床台をそれぞれ水平に支持する支柱、および前記支柱の下端部で前後方向に延在し前後方向に移動可能なベースを備える複数の脚部;を備え、前記脚部は、該脚部が支持する床台の1段下の床台の支柱と係合して、該床台と前記1段下の床台を階段状にずれる状態で連動して前進可能とする第1のストッパと、前記複数段の床台の1部を上下に整列する床台の組として、該組の床台を連動して移動可能とする第2のストッパとを備え、前記床台が全体的に上下に整列する収納位置と、前記床台が1段ずつ階段状に展開する通常使用位置または前記床台の前記組が階段状に展開する短縮使用位置との間で、移動可能な移動観覧席であって、各組を構成する第1の床台の脚部は、前記第2のストッパとして、各組を構成する第2の床台の脚部に向かって突出・格納可能に構成された干渉部材を備える第2のストッパ本体を備え、前記第2の床台の脚部は、前記第2のストッパとして、前進時に、前記干渉部材と干渉して前記第1の床台と前記第2の床台とを連動させるストッパあてを備える。
【0010】
上記態様において、前記ストッパあては、前進時に、前記干渉部材と当接する当接部を備え、前記当接部はその突出長さを調整可能となっていることも好ましい。
【0011】
また、上記態様において、前記第2のストッパは、前記支柱の後方に設けられていることも好ましい。
【0012】
また、上記態様において、前記第2のストッパ本体は、前記干渉部材が格納位置にある場合の突出位置に向かう移動、および前記突出位置にある場合の前記格納位置へ向かう移動を規制する規制部を備えることも好ましい。
【0013】
また、上記態様において、前記規制部は、弾性部材によって付勢されることにより、前記干渉部材の前記格納位置から前記突出位置へと向かう移動を規制することも好ましい。
【0014】
また、上記態様において、前記干渉部材は、格納位置において、前記脚部の前後方向に延在し、上下方向に延びる軸周りの回転運動により、前記格納位置から前記突出位置へと移動することも好ましい。
【0015】
また、上記態様において、前記干渉部材は、前記移動観覧席が収納位置にあるときに、左右方向に整列するように配置され、前記収納位置において、前記干渉部材が前記突出位置にあるときに、前記干渉部材の突出方向の反対方向に突出して、隣接する干渉部材の移動を規制する展開規制部を備え、前記展開規制部は、前記第2のストッパが格納位置にある場合には、脚部の横方向の範囲内に格納されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記態様に係る移動観覧席によれば、脚部に設けたストッパの干渉部材の突出および格納を切り替えるという簡単な操作で、移動観覧席を通常使用位置と、複数段の床台のうち少なくとも一部が上下方向に整列する、前後方向の長さが短縮された短縮使用位置とに展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る移動観覧席の側面図であり、(A)は収納位置における側面図、(B)は短縮使用位置における側面図、(C)は通常使用位置における側面図である。
図2】同移動観覧席の平面図であり、(A)は収納位置における平面図、(B)は短縮使用位置における平面図、(C)は通常使用位置における平面図である。
図3】同移動観覧席の通常使用位置における部分斜視図である。
図4】同移動観覧席の、各床台上に設置される連結椅子を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
図5】(A)は同移動観覧席の短縮使用位置において上下に整列する床台の組の、第2の床台に結合された脚部の平面図、(B)は同正面図、(C)は同左側面図である。
図6】(A)は同移動観覧席の短縮使用位置において上下に整列する床台の組の第1の床台に結合された脚部の平面図、(B)は同正面図、(C)は同左側面図である。
図7】同移動観覧席の脚部に第2のストッパとして設けられるストッパあての斜視図である。
図8】(A)は、同移動観覧席の左脚部に第2のストッパとして設けられる第2のストッパ本体の格納状態における左から見た斜視図であり、(B)は同右から見た斜視図である。
図9】(A)は、同第2のストッパ本体の格納状態において、規制バーを解除した状態を左から見た斜視図であり、(B)は同右から見た斜視図である。
図10】(A)は、同第2のストッパ本体の展開状態において、規制バーを解除した状態を左から見た斜視図であり、(B)は同右から見た斜視図である。
図11】(A)は、同第2のストッパ本体の展開状態を、左から見た斜視図であり、(B)は同右から見た斜視図である。
図12】同移動観覧席の収納位置において、同第2のストッパ本体の突出状態を説明する平面図である。
図13】同移動観覧席を収納位置から通常使用位置に展開する場合の、脚部の動作の詳細を説明する斜視図である。
図14】同展開動作の左側脚部全体の動作を模式的に説明する平面図である。
図15】同移動観覧席を収納位置から短縮使用位置に展開する場合の、脚部の動作を説明する図である。
図16】同展開動作の左側脚部全体の動作を模式的に説明する平面図である。
図17】(A)、(B)は、展開状態を変化させた短縮使用位置における、同移動観覧席の側面図である。
図18】本形態の1の変形例に係る移動観覧席の、第2のストッパの取付構造を説明する図であり、(A)は第1の床台に結合された脚部に取りつけられた第2のストッパ本体を示す左側面図、(B)は第2の床台に結合された脚部に取り付けられたストッパあてを示す左側面図、(C)は第2のストッパ本体の突出状態を示す平面図である。
図19】本形態のさらに別の変形例に係る移動観覧席の、第2のストッパの取付構造を説明する図であり、(A)は第1の床台に結合された脚部に取りつけらえた第2のストッパ本体を示す左側面図、(B)は第2の床台に結合された脚部に取り付けられたストッパあてを示す左側面図、(C)は第2のストッパ本体の突出状態を示す平面図である。
図20】(A)は、本形態のさらに別の変形例に係る移動観覧席の、格納状態における第2のストッパの斜視図であり、(B)は同突出状態における第2のストッパの斜視図である。
図21】同変形例における、収納位置から短縮使用位置へと移動する脚部の動作を説明する図である。
図22】(A)は、本形態のさらに別の変形例に係る第2のストッパ本体の格納状態を示す斜視図、(B)は、同突出状態を示す斜視図である。
図23】同変形例に係る第2のストッパの構成および動作を説明する図である。
図24】同変形例に係る第2のストッパの構成および動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る移動観覧席100を、図面に基づく実施例に従って詳細に説明する。なお、以下の実施の形態は例示であって本発明はこれに限定されない。また、以下の実施例および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0019】
なお、本明細書において、移動観覧席100の前方とは、移動観覧席の階段状に展開した複数段の床台10が順に低くなる方向、「後方」とは順に高くなる方向をいい、「左方向」とは、前方を向いた時の左方を、「右方向」は同右方をいう。また、各図において、前方をF、後方をB、左方をL、右方とR、上方をU、下方をDの矢印で示す。
【0020】
また、床台10は、最下段を1段目の床台10といい、上に向かって昇順に、2段目の床台10、3段目の床台10・・・と数える。
【0021】
また、各図において、複数ある同一の部材を示す符号は、必要に応じて適宜省略する。
【0022】
本実施の形態に係る移動観覧席100は、屋内競技場、各種ホール、劇場等の床面Fl上に設置されて観客席として使用される。
【0023】
図1,2に示すように、移動観覧席100は、概略として、複数の床台10と、各床台10上に配置される、複数の椅子21が横並びに連結された連結椅子20と、各床台10を水平状態で前後方向に移動可能に支持するとともに、床台10同士を互いに係合させて連動させる脚部30と、壁面内等の設置位置へと固定するための固定部40とを備える。
【0024】
なお、床台10の数、1段の床台に配置される連結椅子20の数、1の連結椅子20が備える椅子21の数は、図示の例に関わらず必要に応じて変更可能である。
【0025】
図3に示すように、各床台10は、移動観覧席100の左右方向に水平に延在する貫材11と、該貫材11の下面に後端部が支持され、貫材11の前方で横方向に水平に延在する床材12と、床台10の横方向に間隔をもって配置され、貫材11の下端部から前方向に水平に延在する2対の縦梁16とを備える。
【0026】
連結椅子20は、図4に示すように、複数の椅子21が連結管22および脚材23を介して、基部24で起倒可能に支持されたものである。また、椅子21は、図4(B),4(C)に示すように、座面21aが起立するように構成された座起立型椅子である。
【0027】
また、連結椅子20は、モータ駆動による図示しない椅子起倒装置で駆動されて、起立した使用状態と、図4(C)に破線で示す前方に倒れた収納状態との間で揺動可能になっている。
【0028】
脚部30は、図3に示すように、左右1対の支柱31と、支柱31の下端部に結合される左右1対のベース32とを備える。支柱31は、貫材11の背面に結合され、下方向かって鉛直に延在する。ベース32は、支柱31とほぼ同じ幅を有する柱形状を有し、その中間部に支柱31が固定され、移動観覧席100の前後方向に延在する。
【0029】
なお、縦梁16と同様に、支柱31およびベース32は、1対に限らず移動観覧席100の左右方向の寸法に応じて、複数対備えられていてもよい。ベース32の構造については後述する。
【0030】
脚部30は、各ベース32における支柱31の基端部の近傍から貫材11および移動観覧席100の内方に向かって斜めに延在する筋交い36を備える。筋交い36は支柱31に対応して対を成している。また、筋交い36の上端は、貫材11の背面に結合されている。このように、脚部30は、床台10を片持ち状に支持している。
【0031】
支柱31は、1段目の床台10に結合された支柱31から後方に向かって、段差分ずつ長くなっている。また、各対の支柱31の横方向の間隔は、最上段の床台10に結合されものから少しずつ狭くなっている。そして、図1(A)に示す移動観覧席100の収納位置では、上下に隣接する床台10に結合された支柱31同士が平行に横方向に並ぶようになっている。この結果、それぞれの支柱31に結合される各対のベース32同士の間隔も、最上段のものから順に少しずつ狭まっている。
【0032】
図1(A)~1(C)に示すように、固定部40は、ベース32に沿って延在する固定部材44と、固定部材44の後端で下方に向かって延在する固定支柱43と、固定支柱43の上方で固定支柱43に固定され、固定部材44と平行に前後方向に延在する固定梁42と、固定支柱43を介して最上段の床台10の上に支持される椅子のない天面床台41と、椅子のない天面床台41の後端に立設された背面壁45を備える。
【0033】
固定支柱43、固定部材44および天面床台41によって、移動観覧席100の収納スペースSが画成される。また、固定部材44の前端には、後述するベース32に備えられる第1のストッパ34が、図5,6に示す、ベース32への取り付け形態と同様にして取り付けられている。
【0034】
移動観覧席100は、図1(A),2(A)に示す収納位置と、図1(B),2(B)に示す短縮使用位置、または図1(C),2(C)に示す通常使用位置との間を選択的に設定可能になっている。収納位置では、移動観覧席100を構成する複数段の床台10が全体的に上下に整列している。一方、通常使用位置では、該複数段の床台10は、1段ずつ階段状にずれて展開している。
【0035】
短縮使用位置では、該複数段の床台10の1部が上下に整列する床台の組となって、全体的に階段状に展開されている。図示の例では、2段目と3段目、4段目と5段目・・・というように、2段目以降、上下に隣接する床台10が2段ずつ組をなして上下に整列し、各床台10の組が全体的に階段状に展開されている。この結果、短縮使用位置では、通常使用位置よりも前後方向の長さが短縮される。
【0036】
移動観覧席100は、収納スペースSの床面Fl上に、図示しない床台駆動装置を備える。該床台駆動装置は、ブレーキ付きのモータでドラムを正逆回転駆動し、ドラム上に巻かれた、各連結片に車輪をもつ帯状チェーンをそのドラムの正回転で繰り出す一方、そのドラムの逆回転で帯状チェーンをドラム上に巻き取るように機能する。
【0037】
また、帯状チェーンの先端部は、1段目の床台10に連結されている。床台駆動装置は、帯状チェーンの繰り出しおよび巻き取りにより、1段目の床台10を前後方向に移動させる。この結果、1段目の床台10とその脚部30を介して直接または間接的に係合する複数段の床台10全体が前後方向に移動可能とされている。
【0038】
次に、図5,6を参照しながら、ベース32の詳細な構成について説明する。左右1対の支柱31にそれぞれ結合される左右1対のベース32の構造は、図3に示す通り左右対称である。以下の説明では、L側のベース32について説明し、R側のベース32についての説明は省略する。
【0039】
ベース32は、1段目の床台に結合されたベース(以下、「1段目のベース」という。)32と、短縮使用位置で上下に整列する組をなす2つの床台10のうち、第2の床台である下の段の床台10に結合されたベース(以下、「下の段のベース」という。)32lと、第1の床台である上の段の床台10に結合されたベース(以下、「上の段のベース」という。)32とで構成が異なる。
【0040】
ベース32,32は、概略として、下に開口する横断面コの字形状を有し、前後方向に延在する長尺の鋼材で構成されている。開口部には、複数の走行ローラ33が直列に取り付けられている。これにより、脚部30は床台10の水平に支持した状態で、前後方向に移動可能となっている。
【0041】
ベース32,32の前端上面には、ストッパ取り付け孔(図示せず)が設けられ、板状の第1のストッパ34がねじ止めされている。第1のストッパ34は、ベース32,32から、R方向へ突出するように取り付けられている。突出部34aは、ベース32,32への取付部34bよりもやや幅細になっている。第1のストッパ34は、左右方向の中間で屈曲し、突出部34aが取付部34bよりも上方に位置するようになっている。
【0042】
また、ベース32,32の支柱31の下端部L側には、前端部に下向きの鉤爪35aと、レバー状の解除部35bとを備える係合部材35が、図5(C),6(C)に両矢印で示すように、回転軸35c周りに上下方向に揺動自在に設けられている。
【0043】
下の段のベース32の後端部の上面には、第2のストッパ50として、ストッパあて51が設けられている。
【0044】
図7に示すように、ストッパあて51は、ベース32の後端部の上面から上方へ延在し、後方へ向かって開口する断面コの字状の溝形鋼で構成される取付部52と、取付部52の前面から前方へ突出する当接部53とを備える。取付部52は、溶接、ねじ止め等適宜の手段でベース32に取り付けられている。取付部52の左右方向の幅は、ベース32の左右方向の幅よりも若干幅狭に構成されている。
【0045】
当接部53は、その軸部53aにネジ山が形成されたボルトで構成され、取付部52の前面に設けられた取付孔(図示せず)に、調整ナット53cおよび座金(図示せず)を用いて取り付けられている。ボルトの頭部は、後述する干渉部材56と当接する当接面53bとなっている。この結果、当接面53bの取付部52からの前後方向の突出量が調整可能となっている。
【0046】
当接部53は、必ずしも当接面53bの突出量が調整可能となっていなくてもよく、単に、当接面53bが所定距離だけ突出するようになっていてもよい。また、ボルト形状に関わらず他の形状となっていてもよい。
【0047】
一方、上の段のベース32の後端部の上面には、第2のストッパ50として、第2のストッパ本体(以下、単に「ストッパ本体」という。)54が設けられている。
【0048】
図8図11は、ストッパ本体54の拡大図である。図8図11の各図において、(A)はL方向から見た斜視図、(B)はR方向から見た斜視図である。また、図8,9は、ストッパ本体54の格納状態を示す。図9は、同時に規制バー59cを解除した状態を示す。また、図10,11は、ストッパ本体54の突出状態を示す。図10は、同時に規制バー59cを解除した状態を示す。
【0049】
ストッパ本体54は、ストッパあて51の取付部52と同形状の本体取付部55と、本体取付部55の前面から延在する長尺の中空の角柱状の干渉部材56と、本体取付部55から前方へ向かって干渉部材56の上下に延在する上側壁57および下側壁58を備える。干渉部材56、上側壁57および下側壁58は、そのL側面が本体取付部55のL側面と面一になるように配置されている。
【0050】
上側壁57のR側面には、本体取付部55と同幅のアングル状のリブ57d,57eが、それぞれの一方の面が、上側壁57の下辺に沿うように設けられている。また、リブ57d,57eの他方の面は対向するように配置されている。
【0051】
下側壁58のR側面には、本体取付部55と同幅の略矩形状のリブ58bが下側壁58の上辺に沿うように配置されている。リブ58bの前後方向の中央付近には、後述する規制バー59cの形状に相補する切り欠き58cが形成されている。
【0052】
リブ57dの本体取付部55近傍には、軸孔57fが形成されている。リブ58bの軸孔57fと上下方向の対向面にも軸孔(図示せず)が形成されている。また、干渉部材56にも、リブ57dの軸孔57fおよびリブ58bの軸孔(図示せず)と対応する位置に、軸孔(図示せず)が形成されている。
【0053】
これら軸孔には、回転軸62が取り付けられている。干渉部材56は、上下側壁57,58に対して、鉛直方向に延在する回転軸62周りに回転して、図8の格納位置と、図11の突出位置との間を移動可能になっている。
【0054】
また、ストッパ本体54は、前後方向に延在する円柱状の軸部59bと、軸部59bの前端に軸部59bと直交して取り付けられた円柱状のハンドル59aと、軸部59bの後端近傍に前記ハンドルと平行に取り付けられた円柱状の規制バー59cとを有する規制部59を備える。
【0055】
リブ57dとリブ57eの対向する面には、それぞれ軸孔57gと57hが形成されている。規制部59の軸部59bは、軸孔57gと57hを貫通して、規制部59全体が、軸部59bの軸線周りに回転可能に固定されて、図8,11に示す規制位置と、図9,10に実線で示す解除位置の間で移動可能となっている。
【0056】
また、軸部59bは、リブ57eの前方に、矩形のフランジ59dを備える。フランジ59dとリブ57eの間には、軸部59b周りにねじりコイルばね61が取り付けられている。ねじりコイルばね61の両端は、リブ57eおよびフランジ59dに固定されて、ハンドル59aと規制バー59cが、図8に白矢印で示す方向に付勢されている。
【0057】
これにより、規制バー59cは、図8,11の規制位置に常時保持されている。また、ハンドル59aを図9の矢印に示すように、持ち上げた場合のみ、規制バー59cが、図9,10に実線で示す解除位置に位置される。
【0058】
この結果、干渉部材56が、図8の格納位置にある場合には、干渉部材56のR方向へ回転して突出しようとするのが規制される。また、干渉部材56が、図11の突出位置にあるときは、干渉部材56がL方向へ回転して格納されようとするのが規制される。
【0059】
そして、全ての床台10が上下に整列し脚部30が左右に整列する移動観覧席100の収納位置において、上下に隣接する床台10の脚部30のベース32が左右に隣接する収納位置において、干渉部材56を突出状態とすると、図12に示すように、下の段のベース32のストッパあて51と、上の段のベース32のストッパ本体54の干渉部材56とが当接する状態となる。
【0060】
なお、1段目の床台に結合されるベース32は、係合部材35および第1のストッパ34を備えない。また、図示の例では、1段目の床台は第2のストッパ50を備えない。
【0061】
(移動観覧席の動作)
以下、移動観覧席100の動作を説明する。移動観覧席100は、通常使用位置に展開する通常使用位置モードと、短縮使用位置に展開する短縮使用位置モードとが選択的に設定可能である。
【0062】
(通常使用位置モード)
図13、14を参照しながら、通常使用位置モードでの動作を説明する。通常使用位置モードでは、全てのストッパ本体54が格納状態とされる。また、収納位置において連結椅子20は前方に倒れた収納状態とされている。
【0063】
移動観覧席100が、収納位置から通常使用位置に前進移動する際は、図13(A),14(A)に示すように、まず、固定部材44の後端位置Aから、1段目のベース32が前進移動する。ベース32の前進移動により、2段目のベース(ベース32)の第1のストッパ34は、図13(B)に示すように、ベース32の支柱に当接する。
【0064】
さらに1段目のベース32が前進を続けると、図13(C)に示すように、1段目のベース32の支柱31が、2段目のベース32を係合して、所定長さずれた状態で連動してさらに前進移動する。
【0065】
2段目のベース32の前進により3段目のベース32の第1のストッパ34が、2段目のベース32の係合部材35の前端に当接すると、係合部材35は、回転軸35c周りに上方向に揺動し、その間に第1のストッパ34は相対的に後退して、図13(D)に示すように、2段目のベース32の支柱31の前面に当接する。この時、係合部材35の鉤爪35aが3段目のベース32の第1のストッパ34の前端と係合する。
【0066】
該係合により、3段目のベース32が、2段目のベース32と所定長さずれた状態で連動して前進する。さらに前進すると、図13(E)に示すように、2段目の支柱31が、3段目のベース32の第1のストッパ34を押して、3段目のベース32が1、2段目のベース321,32と連動して前進を開始する。
【0067】
同様に、第1のストッパ34が1段上のベース32の支柱31と順次係合しながら前進することにより、1段下の段から所定長さずつずれて、図14(B)に示すように、最上段のベース32の支柱31が固定部材44前端の第1のストッパ34と係合するまで、1段目のベース32が前進移動する。その後、連結椅子20を起立させる。このようにして、移動観覧席100は、図1(C)に示す、各床台10が、1段ずつずれて全体的に階段状に展開する通常使用位置に配置される。
【0068】
一方、通常使用位置から収納位置に後退移動させる際は、図示は省略するが、まず、各床台10上の連結椅子20が前方に倒されて収納状態とされる。床台駆動装置により1段目のベース32が後退すると、一段目のベース32が2段目のベース32lと左右方向に並ぶ。
【0069】
すると、1段目の床台10の左右方向に水平に延在する貫材11が、2段目の床台10の支柱31下端部の係合部材35の解除部35bを後方に押して係合部材35を上方向に揺動させ、3段目のベース32uの前端の第1のストッパ34と係合部材35との係合を解除させる。貫材11は、さらにその支柱31を押し、これにより1段目の床台10と2段目の床台10とが一体的に後退する。
【0070】
次いで、1段目のベース32、2段目のベース32lがさらに後退して3段目の床台10のベース32uと左右方向に並ぶと、1段目の床台の貫材11が3段目の床台10の係合部材35の解除部35bを押す。そして、係合部材35を揺動させて4段目のベース32の第1のストッパ34との係合を解除させるとともにその支柱31を押す。これにより、3段目の床台10が1段目の床台10および2段目の床台10と上下方向に整列した状態で一体的に後退する。
【0071】
同様に、順次に係合部材35と1段上のベース32の第1のストッパ34との係合を解除しつつ、各段のベース32が後退すると、図1(A)に示す、複数段の床台10のベース32が左右方向に互いに整列するとともに固定部材44とも整列する収納位置に配置される。
【0072】
(短縮使用位置モード)
図15,16を参照しながら短縮使用位置モードでの動作を説明する。短縮使用位置モードでは、全てのストッパ本体54が突出状態とされる。そして、移動観覧席100の収納位置から短縮使用位置に前進する際は、図15(A),16(A)に示すように、まず、固定部材44の後端位置Aから、1段目の床台10のベース32が前進移動する。ベース32の前進移動により、2段目のベース32の第1のストッパ34は、図15(B)に示すように、1段目のベース32の支柱に当接する。
【0073】
さらに1段目のベース32が前進を続けると、1段目のベース32の支柱31が2段目のベース32lの第1のストッパ34を押して、所定長さずれた状態で前進する。
【0074】
この時、3段目のベース32の干渉部材56が、2段目のベース32lのストッパあて51の前進を干渉し、2段目のベース32lと、3段目のベース32が左右に整列した状態で、一体的に前進する。
【0075】
さらに1段目のベース32が前進すると、その前進移動により、4段目のベース32の第1のストッパ34が図13(D)と同様に、3段目のベース32の係合部材35を上方向に揺動させて、3段目のベース32の支柱31に当接させ、係合部材35の鉤爪35aと係合する。
【0076】
その後、ストッパあて51とストッパ本体54との干渉、および上の段の第1のストッパ34とその1段上のベース32の支柱31との係合を順次繰り返しながら前進することにより、2段ごとに1組となって所定長さずつずれて、図16(B)に示すように、最上段のベース32の支柱31が、固定部材44前端の第1のストッパ34と係合するまで、1段目のベース32が前進する。その後、各組の最上段(上の段)の床台10の連結椅子20を起立させる。
【0077】
このように、移動観覧席100は、図1(B)に示す、各床台10が2段ずつの組をなして上下方向に整列しながら全体的に階段状に展開する短縮使用位置に配置される。
【0078】
一方、短縮使用位置から収納位置に後退移動する際は、まず、各床台10上の連結椅子20が前方に倒されて収納状態とする。その後、1段目のベース32が後退移動して、2段目のベース32l,および3段目のベース32と左右方向に並ぶ。
【0079】
さらに、1段目のベース32が後退移動すると、1段目の貫材11が3段目の支柱31に設けられた係合部材35の解除部35bを後方に押して係合部材35を上方向に揺動させて、4段目の床台10のベース32lの前端部の第1のストッパ34との係合を解除させるとともにその支柱31を押し、これにより1~5段目の床台10が一緒に後退移動する。
【0080】
同様に、2段ごとに設けられた第1のストッパ34の係合を順次解除しつつ、各段の床台10が後退移動して、図1(A),15(A)に示すように、複数段の床台10のベース32が左右方向に互いに整列するとともに固定部材44とも整列する収納位置に配置される。
【0081】
このように、本実施の形態に係る移動観覧席100では、2段目以降の床台に結合する脚部30に1段下の床台の支柱31と係合する第1のストッパと、2段ずつの床台が組となって、組ごとに床台10の脚部30を連動して移動可能とするための第2のストッパ50を備えた。また、第2のストッパ50を、当接部53を有するストッパあて51と、前進移動時に当接部と干渉して、脚部30を連動させる干渉部材56を備えるストッパ本体54を備え、干渉部材56を突出/格納可能に構成した。上記のように構成することで、通常使用位置と短縮使用位置を切り替える際には、第2のストッパ本体の干渉部材56の突出/格納を切り替えるという簡単な操作で、通常使用位置と、短縮使用位置とを選択的に展開することができる。
【0082】
特に、本実施の形態では第2のストッパ50を、ストッパ本体54とストッパあて51とで構成した。特許文献1の移動観覧席では、短縮使用位置に展開するためのストッパは、支柱に係合するため支柱と対応する位置に該ストッパを設ける必要がある、しかし、本実施の形態では、ストッパ本体54とストッパあて51を脚部の所望の位置に取り付けることができる。
【0083】
また、第2のストッパ50,特にストッパ本体54の脚部30における支柱31の後方に配置されるように構成すると、作業者は、移動観覧席100の収納位置において、ストッパ本体54を格納位置から突出位置へ、またはその逆へ切り替える切り替え作業を、空間的に余裕を持って行うことができるので作業性が向上する。
【0084】
本実施の形態において、ストッパあて51の当接面53bの突出量を調整可能とした場合には、移動観覧席100を短縮使用位置モードで動作させる場合に、建築床の仕上がりにより影響を受ける干渉部材56との当たりを調節することが可能となる、また、動作時の衝撃や異音を防止することが可能となる。上記例のように、当接部53をボルトで構成すれば、当接面53bの突出量の調整が特に容易である。
【0085】
また、本実施の形態では、第2のストッパ本体54に干渉部材56の格納位置から突出位置への移動と、突出位置から格納位置への移動を規制する規制部59を設けた。これにより、干渉部材56が、意図せずに、突出位置と格納位置との間を移動してしまうという誤動作を防止することができる。
【0086】
また、本実施の形態では、規制部59の規制バー59cを弾性部材であるねじりコイルばね61で、干渉部材56を格納位置へと保持する方向に付勢するように構成した。これにより、作業者が規制部59を持ち上げて規制を解除しなければ、干渉部材56は格納位置から突出位置へと移動させることができず、誤動作をより確実に防止することができる。
【0087】
上記例では、短縮使用位置として、図1(B)の、1段目の床台を除く全ての床台を2段ずつの組として階段状に展開したものについて説明した。しかし、短縮使用位置の展開状態は、これに限らず、図17(A),(B)のように、1部の床台を2段ずつの組とし、残りの床台を1段ずつ、階段状に展開するように変更することもできる。
【0088】
具体的には、9,11段目の床台10に結合された脚部30のストッパ本体54を突出状態とし、3,5,7段目の床台10に結合された脚部30の第2のストッパ本体54を格納状態として、移動観覧席100を展開することで、図17(A)の展開状態とすることができる。
【0089】
また、3,5,7段目の床台10に結合された脚部30のストッパ本体54を突出状態とし、9,11段目の床台10に結合された脚部30のストッパ本体54を格納状態として、移動観覧席100を展開することで、図17(B)の展開状態とすることができる。
【0090】
(変形例)
上記実施の形態において、以下のような変形を加えてもよい。また、変形は、単独でまたは組み合わせて行うことができる。以下の説明において特に説明しない構成は、上記実施例と同一の構成である。
【0091】
変形例1
変形例1に係る移動観覧席100Aは、短縮使用位置において図1(B)と同様に、床台10が2段ずつ上下方向に整列された組をなして全体的に階段状に展開される。しかし、図18(A)に示すように、下の段のベース32には、第2のストッパ50Bのストッパ本体54Bが上記実施例とは前後逆向きに取り付けられている。また、図18(B)に示すように、上の段のベース32には、ストッパあて51がそれぞれ上記実施例とは前後逆になるように取り付けられている。したがって、変形例1では、下の段の床台10が第1の床台であり、上の段の床台10が第2の床台である。
【0092】
そして、短縮使用位置モードでは、図18(C)に示すように、ストッパ本体54の干渉部材56が突出状態とされ、L側に隣接する上の段のベースのストッパ宛て51と当接する。従って、実施例と同様に、下の段のベースが前方へと移動すると、上の段のベースと干渉して、連動して前進移動する。下の段のベースが前方へ移動する際に、上の段のベースと干渉して、下の段の脚部が、上の段の脚部と連動するようになっていれば、ストッパ本体54と、ストッパあて51は、上野段のベースと下の段のベースのいずれに取り付けられていても実施例と同じ効果を奏することができる。
【0093】
変形例2
変形例2に係る移動観覧席100Bも、短縮使用位置において、図1(B)と同様に、床台10が2段ごとに上下方向に整列された組をなして、全体的に階段状に展開される。図19(A)に示すように、第1の床台である下の段の床台に結合された脚部30には、第2のストッパ50Bであるストッパ本体54Bが、変形例1と同じ向きで取り付けられている。
【0094】
しかし、取り付けられているのは、下の段のベース32lではなく、下の段の床台10に結合された支柱31の後面である。また、図19(B)に示すように、上の段の床台10に結合された脚部30には、第2のストッパであるストッパあて51Bが、支柱31の後面に取り付けられている。なお、ストッパあて51Bは、取付部は備えず、上記実施例と同様にボルトおよびナットで構成される当接部53が直接支柱に取り付けられている。
【0095】
そして図19(C)に示すように、移動観覧席100Bは、短縮使用位置モードにおいて、1段目のベース32の前進運動に従って、下の段のストッパ本体54Bの干渉部材56に、上の段のストッパあて51Bが干渉して、実施例における移動観覧席と同様に2段ごとに所定の長さだけずれた状態で短縮使用位置に展開される。
【0096】
このように、脚部30における第2のストッパの取付位置は、支柱31の後方であれば、ベース32に限らず、支柱に取り付けられてもよい。
本変形例においても、ストッパあて51Bおよびストッパ本体54Bの干渉により、上下に整列する床台の組に結合された脚部30を、一体的に1段目のベース32の前進運動と連動して、短縮使用位置に展開することができる。
【0097】
変形例3
変形例3に係る移動観覧席100Cでは、図20に示すように、第2のストッパ50Cにおける、ストッパ本体54Cが、ストッパ本体54Cよりも前後方向に長く構成されて、突出位置における突出量が大きくなっている。具体的には、実施例に係る干渉部材56の突出量がベース32の左右方向の幅に相当する長さであるのに対して、本干渉部材56の突出量はその約2倍に構成されている。
【0098】
移動観覧席100Cでは、図21に示すように、2~4段目、5~7段目、・・・のように、上下に隣接する3段を1組として、1組のうちの第1の床台である最下段の床台のベース32lにストッパ本体54Dが、第2の床台である上2段の床台のベース32u2,32u1にストッパあて51が、変形例2と同様の向きで設けられている。
【0099】
ストッパ本体54Cの干渉部材56Cは、図21(A)に鎖線で示す格納位置と、実線で示す突出位置との間を、ストッパ本体54と同様に両矢印の方向に移動可能となっている。
【0100】
この結果、移動観覧席100Cでは、通常使用位置モードでは、移動観覧席100と同様に、各床台10が1段ずつずれて全体的に階段状に展開する。一方、短縮使用位置モードでは、図21(B)に示すように、組を成す床台10のうち上下3段の床台10のベース32l,32u2, 32u1が左右方向に整列して一体的に前進して、各組が前後方向に所定の長さずつずれて、展開される。この結果、移動観覧席100Cは、床台10が3段ずつ上下方向に整列して、全体的に階段状に展開する。
【0101】
このように、ストッパ本体の干渉部材56Cの突出量を変更し、長さに対応してストッパあて51を取り付ける脚部30を変更することで、短縮使用位置で上下に整列される床台の数を変更することができる。
【0102】
なお、本変形例の第2のストッパ50Cを、実施例と同じ向きに配置してもよい。この場合、ストッパ本体54Cは、短縮使用位置で上下に整列する組を成す3段の床台のうち、最上段の床台10のベースに取り付けられる。ストッパあて51は、下側2段の床台10のベースに取り付けられる。
【0103】
ストッパ本体54Cが突出状態で、最下段のベースが前進すると、最下段のベースのストッパあて51が最上段のベースのストッパ本体54Cと干渉して、最上段と最下段のベースが整列して前進しようとする。同時に、最上段の支柱30が、下側2段の貫材11を押して前進しようとする。この結果、上下3段の床台10のベースが左右方向に整列して一体的に前進して、各組が前後方向に所定の長さずつずれて展開される。
【0104】
変形例4
変形例4に係る移動観覧席100Dでは、第2のストッパ50Dのストッパ本体54Dは、ストッパ本体54と概略同様の構造を有する。しかし、図22(A),(B)に示すように、干渉部材56Dが、格納位置において、突出位置での突出方向(R方向)と反対方向(L方向)に突出する展開規制部56Ddを備える点で異なる。展開規制部56Ddは、格納位置において、後方に開口する、台形柱状を有する。
【0105】
また、展開規制部56Ddは、図22(B)に示すように、干渉部材56Dが突出位置にあるとき、上下側壁57,58の横方向の幅、すなわち、ベース32の左右方向の幅の範囲に格納されている。
【0106】
移動観覧席100Dは、短縮使用位置モードとして、図1(B)に示すように、2段目以降の床台が、全て2段ずつ組をなして上下方向に整列するように設定されている。
【0107】
図23(A)は、移動観覧席100Dが収納位置にある場合の、移動観覧席100Dのベース32の後端付近の拡大した平面図である。この収納位置では、実施例に係る移動観覧席100と同様に、ストッパ本体54Dが、下段から上段に向かって、右(R)から左(L)へと整列するようになっている。
【0108】
また、図23(A)では、全てのストッパ本体54Dが格納状態となる、通常使用位置モードが設定されている。
【0109】
通常使用位置モードから、各ストッパ本体54Dを突出状態とする、短縮使用位置モードへと切り替えるためのストッパ本体54Dの動作は、展開規制部56Ddにより、規制されるようになっている。
【0110】
具体的には、図23(B)に示すように、右側(すなわち下段側)に隣接する干渉部材56Dが突出位置にある場合、L側の干渉部材56Dは、障害なく格納位置から突出位置への移動が可能となっている。一方、図23(C)に示すように、R側(すなわち下段側)に隣接する干渉部材56Dが格納位置にある場合、L側の干渉部材56Dの突出部56Gaは、R側の干渉部材56Dの展開規制部56Ddと干渉して突出位置まで移動することができない。
【0111】
通常使用位置モードから短縮使用位置モードへと切り替えるためには、全てのストッパ本体54Dで、干渉部材56Dを突出位置としなければならない。従って、本変形例では、R側(すなわち下段側)からL側(すなわち上段側)に向かって順に操作を行わなければならない。
【0112】
図24(A)は、同様に、移動観覧席100Dが収納位置にある場合の、ベース32の後端付近の拡大した平面図であるが、(完全)短縮使用位置モードが設定されて全てのストッパ本体54Gが突出状態とされている。
【0113】
短縮使用位置モードから通常使用位置モードへと切り替えるためのストッパ本体54Dの動作も、展開規制部56Ddにより、規制される。
【0114】
具体的には、図24(B)に示すように、L側(下段側)に隣接する干渉部材56Dが格納位置にある場合、L側の干渉部材56Dは、障害なく突出位置から格納位置への移動できる。一方、図22(C)に示すように、L方向(下段側)に隣接する干渉部材56Dが突出位置にあると、R側の干渉部材56Dの展開規制部56Ddは、L側の干渉部材56Dの展開規制部56Ddと干渉して格納位置まで移動できない。
【0115】
短縮使用位置モードから通常使用位置モードへと切り替えるためには、全てのストッパ本体54Dで、干渉部材56Dを突出位置としなければならない。従って、本変形例ではL側(下段側)からR側(上段側)に向かって順に操作を行う必要がある。最上段のストッパ本体54Dの干渉部材56Dが突出位置となる時、全ての干渉部材56Dが突出位置となっている。
【0116】
図23(A),24(A)に示すように、3段目のベースのストッパ本体54Dには、干渉部材56Dの格納位置への移動によりONとされ、突出位置への移動によりOFFとされる第1のリミットスイッチLSが取り付けられている。また、最上段のベースに取り付けられたストッパ本体54Dには、干渉部材56Dの格納位置への移動によりOFFとされ、突出位置への移動によりONとされる第2のリミットスイッチLSが取り付けられている。
【0117】
従って、例えば、インジケータ等に接続して、表1のように、第1のリミットスイッチLS1と第2のリミットスイッチLSのON/OFFを電気信号で確認可能とすることにより、ストッパの状態が目的のモードに合致した突出/格納状態となっているかを容易に確認することができる。
【0118】
【表1】
【0119】
上記のように、干渉部材56Dに突出方向と逆方向に突出して、隣接する干渉部材56Dの動作を規制する展開規制部56Ddを設けると、全てのストッパ本体54Dを突出状態または格納状態とするために、所定の順序で操作を行うことが必要となる。従って、作業者は必ず所定の順序で操作することになり、誤操作を防止することができる。
【0120】
また、上記構成によれば、全てのストッパ本体54Dを突出状態または格納状態とするときに、最初と最後に操作されるべきストッパ本体54Dを確認するだけで、全てのストッパ本体54Dの突出/格納状態を確認することができる。従って、ストッパ本体54Dの状態確認のために全てのストッパ本体54Dにリミットスイッチを備える必要がない。リミットスイッチは、各状態の、最初と最後に操作されるべきストッパ本体にのみ取り付ければよく、製造コストを低減することが可能となる。
【0121】
その他の変形例として、移動観覧席を、短縮使用位置において、2段の床台を組として、上下に整列させるための第2のストッパを備える脚部に結合された床台の組と、異なる段数(例えば3段)の床台を組として上下に整列させるための第2のストッパを備える脚部に結合された床台の組を、組み合わせて、1つの移動観覧席として構成してもよい。
【符号の説明】
【0122】
10 床台; 30脚部; 31 支柱; 32,32,32,32u,32u1,32u2ベース; 34 第1のストッパ; 34b 取付部; 50,50A~50E 第2のストッパ; 52 取付部; 53,53A 当接部; 54,54B~54D,54F,54G 第2のストッパ本体; 56,56B~56G 干渉部材; 56Gd 展開規制部; 59 規制部, 61 ねじりコイルばね(弾性部材); 100,100B~100G 移動観覧席
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24