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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】支持脚補助具及びそれを用いた支持脚
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/024 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
E04F15/024 603E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021014393
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2021139280
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2020033614
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014029
【氏名又は名称】株式会社八木熊
(74)【代理人】
【識別番号】230124763
【弁護士】
【氏名又は名称】戸川 委久子
(72)【発明者】
【氏名】星野 敦実
(72)【発明者】
【氏名】廣部 賀崇
(72)【発明者】
【氏名】松田 健
【審査官】眞壁 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-522009(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1922021(KR,B1)
【文献】欧州特許出願公開第02816173(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00
E04F 15/00 - 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材の支持脚に用いるためのプラスチック製の支持脚補助具であって、
相互に非平行な平面状の上面部及び下面部を有する円盤状の本体部と、前記本体部から一体に突出する突出部とから構成され、
前記突出部は、支持脚の天板部材に回動自在に取り付け可能であるとともに、同一形状の他の支持脚補助具の本体部にも回動自在に取り付け可能に構成され、
同一形状の複数の支持脚補助具を積み重ねて支持脚に載置することで、最上部の支持脚補助具の上面部と支持脚の天板部材との傾斜角度を積載個数に応じて調整可能であることを特徴とする、支持脚補助具。
【請求項2】
床材の支持脚に用いるためのプラスチック製の支持脚補助具であって、
相互に非平行な平面状の上面部及び下面部を有する円盤状の本体部と、前記本体部から一体に突出する突出部とから構成され、
前記突出部は、支持脚の天板部材または他の支持脚補助具の本体部に回動自在に取り付け可能であり、
複数の支持脚補助具を積み重ねて支持脚に載置することで、最上部の支持脚補助具の上面部と支持脚の天板部材との傾斜角度を積載個数に応じて調整可能であり、
前記本体部には、円弧状あるいは円状の薄肉溝部が設けられ、
前記薄肉溝部を破断させることで本体部に開口部を形成可能であり、
支持脚の天板部材から上方向に突出したロッド部を前記開口部に挿通させた状態で支持脚に載置可能とすることを特徴とする、支持脚補助具。
【請求項3】
床材の支持脚に用いるためのプラスチック製の支持脚補助具であって、
相互に非平行な平面状の上面部及び下面部を有する円盤状の本体部と、前記本体部から一体に突出する突出部とから構成され、
前記本体部には、本体部の同心円に沿って湾曲した終端半円形の角丸長方形のねじ穴部を複数有し、
前記ねじ穴部は本体部の中心軸に対して軸対称に均等配置され、
本体部の中心とねじ穴部の2つの終端の中心とが成す角度は、180をねじ穴部の数で割った数であり、
前記突出部は、支持脚の天板部材または他の支持脚補助具の本体部に回動自在に取り付け可能であり、
複数の支持脚補助具を積み重ねて支持脚に載置することで、最上部の支持脚補助具の上面部と支持脚の天板部材との傾斜角度を積載個数に応じて調整可能であることを特徴とする、支持脚補助具。
【請求項4】
複数の支持脚補助具を積み重ねて支持脚に載置した状態において、いずれかの支持脚補助具、あるいは両方の支持脚補助具を回動することで、上側の支持脚補助具の上面部と下側の支持脚補助具の下面部、あるいは最上部の支持脚補助具の上面部と支持脚の天板部材との傾斜角度を任意に調整可能であることを特徴とする、請求項1~3の何れかに記載の支持脚補助具。
【請求項5】
基礎面上に所定大きさの隙間を空けて床材を設置する際に用いられる支持脚であって、
雌ねじ部または雄ねじ部を備えたベース部材と、このベース部材に昇降自在に取着される天板部材と、前記天板部材に載置される少なくとも1以上の支持脚補助具とから成り、
前記天板部材には、前記ベース部材の雌ねじ部または雄ねじ部に昇降自在に螺着される雄ねじ部または雌ねじ部を備えたロッド部が下方向に突設され、
前記支持脚補助具は、互いに非平行な平面状の上面部及び下面部を有する本体部と、前記本体部から一体に突出する突出部とから構成され、
前記突出部は、支持脚の天板部材に回動自在に取り付け可能であるとともに、同一形状の他の支持脚補助具の本体部にも回動自在に取り付け可能に構成され、
1以上の支持脚補助具の何れかを回動することで、床材が載置される支持脚補助具の上面部と支持脚の天面部との傾斜角度を、天板部材を回動することなく任意に調整可能であることを特徴とする、支持脚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎面と床材との隙間を埋めて傾斜した床材を敷設するために用いられる、支持脚補助具及びそれを用いた支持脚に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物のバリアフリー化の推進により、屋外デッキや段差部にスロープを設けた建築物が増加している。スロープの施工においては、基礎面に支持脚を立て、その上に床材を載置する構造が知られている。
【0003】
しかし、スロープは傾斜を有しているため、天面部が基礎面と平行である一般的な支持脚の場合には、支持脚と床材との間に不可避的に隙間が生じてしまい、床材を安定して支持することができないという問題があった。
【0004】
従来において、本件出願人は、支持脚と床材との隙間を埋めるための支持脚補助具(所謂スペーサー)を厚さ調整可能に構成する技術の開発を行っている(特許文献1参照)。
【0005】
一方、傾斜を調整することが可能な技術として、上下の部材を重ね合わせ、上部の部材を回動することで傾斜を任意に調整することができる支持脚補助具の技術が公開されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-1787号公報
【文献】特表2001-522009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の技術では、厚さを調整することは可能であっても、傾斜を調整することはできないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2の技術では、上下の部材により設定可能な範囲の傾斜角度までしか対応できないという問題があった。
また、上下を係止する構造であるため、支持脚補助具としては分厚くなり過ぎてしまい、支持脚を基礎面と傾斜した床材との接地部付近に寄せて設置できず、接地部と支持脚との間隔が長くなってしまい、人が乗ったときに床材が撓みやすくなるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、支持脚に載置することで支持脚と床材との隙間を埋めるスペーサーの機能のみならず、支持脚の傾斜角度を随意に調整可能であって、丈夫な床を効率的に施工可能とするとともに施工費用を低減することができる機能をも発揮する支持脚補助具及びそれを用いた支持脚を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(基本構成)
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段は、以下のとおりの構成である。
本発明の支持脚補助具はプラスチック素材により成形されており、相互に非平行な平面状の上面部及び下面部を有する円盤状の本体部と、前記本体部からこれと一体をなして突出する突出部とを有する構成である。
【0011】
換言すると、本発明の支持脚補助具は、平面状の上面部及び下面部を有する本体部と、本体部から突出する突出部とがプラスチック素材で一体成形された形状であり、前記本体部は、平面視において円盤状であるとともに、下面部を水平に載置した場合に上面部が一方向に傾斜することで、断面直角三角形の楔型を呈している。
【0012】
(突出部の構成)
前記突出部は、支持脚の天板部材に回動自在に取り付け可能であるとともに、同一形状の他の支持脚補助具の本体部にも回動自在に取り付け可能な構成となっている。
詳述すれば、前記突出部は、本体部の任意の位置から突出形成しており、好適には下面部から下方向にピン状に突出したり、本体部の外周部に沿って下方向にリブ状に突出したりすることも可能であるが、少なくとも下面部よりも下側に突出した部分を含んで構成されている。
また、前記突出部を下面部から下方向に突出させる場合には、上面部における突出部と対応する位置に凹面等の挿入部を形成した構成を採用することができる。
【0013】
下面部よりも下側に突出した部分を有することにより、前記突出部は、支持脚における床材等を載置する天板部材に設けられた凹面等の挿入部や前記天板部材の外周部に嵌合可能であるとともに、同一形状の他の支持脚補助具の本体部の前記挿入部や本体部の外周部にも嵌合可能である。
【0014】
このように、前記突出部を支持脚の天板部材、あるいは同一形状の他の支持脚補助具の本体部に嵌合させることで、前記突出部が位置決め及びストッパーの役割を果たし、支持脚補助具同士、あるいは支持脚と支持脚補助具との平面方向のずれが規制されることとなる。
また、前記突出部を同一形状の他の支持脚補助具の本体部に嵌合させることで、複数の支持脚補助具を積載しても、支持脚補助具同士の平面方向のずれが規制されて安定するので、複数の支持脚補助具を積み重ねることができる。
【0015】
前記突出部は、支持脚の天板部材あるいは他の支持脚補助具の本体部に設けられた、支持脚補助具の回動時の突出部との干渉を防止する(詳細は後述する)。
さらに、前記突出部は、突出部が挿入される凹面等の所定の挿入部の位置や数に応じて、突出部を本体部の任意の位置から突出させることができるだけでなく、複数の突出部を突出させることもできる。
また、支持脚の天板部材や他の支持脚補助具の外周面に突出部を嵌合させることにより本発明の支持脚補助具を支持脚に積載させたり、支持脚補助具同士を積み重ねたりする構成も採用可能である。
【0016】
このように、本発明の支持脚補助具は、支持脚に1個以上載置することにより、支持脚補助具の楔型の傾斜角度やその積載個数に応じて、最上部の支持脚補助具の上面部と支持脚の天板部材との傾斜角度を随意に調整可能としていることに特徴がある。
【0017】
ここで、前記突出部は、支持脚の天板部材及び他の支持脚補助具の本体部に回動自在に取着する構成を採用することも可能である。
突出部を回動自在に取着する前記構成においては、本発明の支持脚補助具を支持脚の天板部材に枢着することにより、支持脚に載置したままの状態において、支持脚補助具を回転させて、支持脚補助具の傾斜の向きを変更することができる。
【0018】
さらに、突出部を他の支持脚補助具の本体部に枢着することで、支持脚補助具を複数積載させた状態で支持脚同士を回動させることが可能になるので、積載された支持脚全体の傾斜角度を調整することができる。
ここで、本発明の支持脚補助具においては、本体部の最も薄い部分同士が重なるように回動した場合には、傾斜角は最大となり、一方の本体部の最も薄い部分と他方の本体部の最も厚い部分とが重なるように回動した場合には、基礎面に対して平行となるように構成されている。
換言すると、傾斜角度は、一つの支持脚補助具の傾斜角の角度に積み重ね数を乗じた角度から平行までの間で調整可能である。
【0019】
この傾斜角度の調整は、支持脚補助具を積み重ねた状態においていずれかの支持脚補助具を回動させることで調整することができるが、複数の支持脚補助具をそれぞれ回動させることによっても調整することができる。
特に、2枚の支持脚補助具を重ねた場合には、上下の支持脚補助具を相対する方向に同じ角度だけ回動させることで、全体の傾斜方向を変動させることなく、傾斜角度のみを調整することが可能である。
【0020】
(ねじ穴部の構成)
前記本体部には、本体部の同心円に沿って湾曲した終端半円形の角丸長方形のねじ穴部を複数設けることも可能である。前記ねじ穴部は本体部の中心軸に対して軸対称に均等配置し、本体部の中心とねじ穴部の2つの終端の中心とが成す角度を、180をねじ穴部の数で割った数とするのが好ましい。
【0021】
ねじ穴部を上記構成とすることで、複数の支持脚補助具を積み重ねた状態において、各々の支持脚補助具がどのような角度の位置関係にあっても、複数のねじ穴部を貫通した部分が存在することとなる。
【0022】
(薄肉溝部の構成)
本発明の支持脚補助具が載置される支持脚は、一般的に、基礎面に載置されるベース部材と、床材が載置される天板部材と、天板部材を昇降するためのねじ部が形成された支軸となるロッド部とから構成した物が用いられる。
前記支持脚においては、天板部材から下方向にロッド部が突設されたもののほか、ベース部材から上方向にロッド部が突設し、板状の天板部材に貫通して螺着され、天板部材から突出した不要な部分を切り落として使用するものがある。
後者の構成の場合、天板部材と面一に切り落とすことは困難であり、若干ロッド部が突出した状態となるのが一般的である。
【0023】
このような支持脚に支持脚補助具を載置しようとすると、若干突出したロッド部が干渉して載置することができない。
そこで、本発明の支持脚補助具における前記本体部に、円弧状あるいは円状の薄肉溝部を設ける構成が有効である。
ここにいう円弧状の薄肉溝部とは、前記ねじ穴部同士を円弧状に接続する形状の薄肉溝部である。
また、円状の薄肉溝部は、前記ねじ穴に接続されず、独立して円状に形成された薄肉溝部である。
【0024】
前記薄肉溝部は、本体部の平均的な肉厚に対して十分に薄く形成し、一般的なカッター等の刃物によって破断させることで、本体部に開口部を形成することができる。
また、刃物を用いることなく、指で本体部の中央部を強く押すことにより破断させる構成とすることも可能である。
【0025】
このように、ロッド部が天板部材から上方向に突出したタイプの支持脚に本発明の支持脚補助具を載置する場合においては、上記構成の薄肉溝部を設けることにより、前記開口部にロッド部を挿通させた状態で支持脚に載置することが可能となる。
【0026】
(本体部外周の最薄部)
また、円盤状の前記本体部において、その外周の最も薄い部分の肉厚は、0.5mm~2mmとするのが好ましく、0.5mm~1.0mm未満とするのがより好ましい。
一般的に射出成形においては、樹脂ごとに安定成形可能な肉厚の目安があるが、このような肉厚とすることで、いずれの樹脂を採用した場合であっても射出成形可能な最小厚みを確保するとともに、支持脚補助具を積載して傾斜角度を調整する際にも、本発明の支持脚補助具が適度な薄さに成形されているため、支持脚補助具を積み重ねることにより微妙な角度調整が可能になる。
【0027】
ここで、本体部は、側面視において楔型であることから、上面部と下面部とが最接近した部分の肉厚が最も薄肉となる部分であるところ、この部分に切欠部を設ける構成とするのがより好ましい。切欠部の形状としては、平面視においてV字型やU字型が好適である。
前記切欠部は、切欠き部が支持脚補助具を積み重ねて傾斜角度の調整をする際の、角度の基準位置の目安として機能する。
また、本体部外周の最薄部は、切欠部の稜線と本体部の外周の稜線とが交差する位置となる。切欠部を有する場合の前記最薄部は、切欠部が無い場合と比較して、楔型の傾斜をやや上った部分に位置するため、その分上面部と下面部とが離隔することで若干厚くなる。
それ故、切欠部を有する場合の最薄部の肉厚を、切欠部が無い場合の最薄部と同じ肉厚にする場合には、この厚さの差異だけ全体的な厚さを薄く形成することが可能となる。
【0028】
(支持脚補助具を備えた支持脚の構成)
一方、支持脚が基礎面上に所定大きさの隙間を空けて床材を設置する際に用いられる場合には、支持脚に支持脚補助具を設けた構成(支持脚補助具を備えた支持脚の構成)を採用することが可能である。
即ち、支持脚補助具を備えた支持脚の構成は、前記基礎面上に載置されるベース部材と、前記ベース部材に螺着されるロッド部が突出した天板部材と、前記天板部材に載置される少なくとも1以上の支持脚補助具とから構成される。
【0029】
前記ベース部材は、底面部から突出した部分に雌ねじ部または雄ねじ部が形成された構成としている。
また、前記天板部材には、ロッド部がベース部材の雌ねじ部または雄ねじ部に昇降自在に螺着されているとともに、前記ロッド部は雄ねじ部または雌ねじ部を備え、天板部材から下方向に突設した構成としている。
【0030】
そして、前記天板部材には支持脚補助具を取着しているところ、前記支持脚補助具は、相互に非平行な平面状の上面部及び下面部を有する本体部と、前記本体部から一体に突出する突出部とから構成されている。
【0031】
天板部材と支持脚補助具との取着においては、前記突出部が、支持脚の天板部材に回動自在に取り付け可能であるとともに、同一形状の他の支持脚補助具の本体部にも回動自在に取り付け可能に構成されている。また、天板部材と支持脚補助具とは、着脱可能または着脱不可能に枢着されている。
【0032】
前記構成の支持脚は、同一形状の他の支持脚補助具の突出部を前記天板部材に枢着された支持脚補助具の本体部に枢着することで、複数の支持脚補助具を積み重ねた構成とすることも可能である。
このような構成とすることで、1以上の支持脚補助具の何れかを回動することで、床材が載置される支持脚補助具の上面部と支持脚の天面部との傾斜角度を、天板部材を回動することなく任意に調整可能となる。
【発明の効果】
【0033】
(積載個数に応じて傾斜角度を調整できる効果)
本発明の支持脚補助具では、本体部から突出した突出部を、他の支持脚補助具の本体部に枢着することで、支持脚補助具の上面部と支持脚の天板部材との傾斜角度を積載個数に応じて調整可能である。
そのため、スロープ等の傾斜を有する床材を敷設する際に、傾斜に応じた別々の支持脚補助具を準備する必要がなく、単一の支持脚補助具の積載個数を変更するだけで、種々の傾斜角度の床に対応することができる。
【0034】
また、突出部を、支持脚の天板部材の外周面に嵌合させるのではなく、外周面よりも内側に設けられた挿入部に対して挿入する構成とする場合には、支持脚補助具の本体部の下面部が突出部を除いて平面状に構成されているため、支持脚補助具が支持脚の天板部材に載置されるのみで、突出部が外周面で位置規制されてしまうことがない。
そのため、支持脚の天板部材の外径に関わらず枢着することができ、支持脚の天板部材の外径に応じて異なる支持脚補助具を準備する必要がない。
【0035】
これらにより、支持脚補助具をスペーサーとして用いることができるだけでなく、種々の傾斜角度の床を効率的に施工することができる。
また、施工における部材のコストを低減することができるだけでなく、支持脚、及び支持脚補助具の在庫管理を効率的、かつ、容易に行うことができ、施工費用を低減することができる。
【0036】
(回動により傾斜角度を調整できる効果)
ところで、一般的な傾斜を有する床材を設置した場合、支持脚補助具の向きがばらつくために支持脚補助具の傾斜角度が合わず、支持脚補助具の上面部と傾斜した床材とが平行にならず部分的に隙間が空いてしまうことがある。このとき、支持脚補助具の向きを変えるため、支持脚の天板部材を回動させると上下方向の高さが変動してしまうことになる。
【0037】
しかし、本発明の支持脚補助具では、前記突出部を支持脚の天板部材に回動自在に取着したことにより、支持脚の天板部材を回動することなく、支持脚補助具の向きのみを変更することができるため、施工後であっても支持脚の高さを変動させることなく傾斜角度の調整が容易となり、床の傾斜角度に合わせて効率的に施工することができる。
【0038】
また、そもそも支持脚補助具の積載の組み合わせで対応できる傾斜角度と床材との角度が合致していない場合にも、支持脚補助具の上面部と床材とが平行にならず部分的に隙間が空いてしまうことがある。
このような支持脚補助具を単に積載するのみでは対応できない微妙な傾斜角度であっても、本発明の支持脚補助具では、突出部を他の支持脚補助具の本体部に回動自在に取着したことにより、一方の支持脚補助具の下面部と他方の支持脚補助具の上面部との相対的な角度が回動に応じて変化するため、支持脚の天板部材を回動することなく、積み重ねた支持脚補助具同士の傾斜角度の関係のみを随意に調整することができる。
【0039】
(ねじ穴部を設けた効果)
支持脚補助具の本体部に設けた複数のねじ穴部は、積み重ねた支持脚補助具の角度関係に関わらず、複数のねじ穴部を貫通した部分が存在することとなる。これにより、複数の支持脚補助具を積み重ねた場合であっても、角度関係に関わらず、支持脚と支持脚補助具を螺着することができ、施工中に支持脚補助具が動いて角度が変わってしまうことがない。
これにより、施工の作業性が向上し、床を効率的に施工することが可能となる。
【0040】
(薄肉溝部を設けた効果)
ロッド部が天板部材から上方向に突出したタイプの支持脚に本発明の支持脚補助具を載置する場合においては、円弧状または円状の薄肉溝部を設けたことにより、開口部にロッド部を挿通させた状態で支持脚に載置することが可能であるため、ひとつの支持脚補助具で種々のタイプの支持脚に適用することができる。
これにより、施工する支持脚に応じて複数の種類の支持脚補助具を準備する必要がなく、施工における部材のコストを低減することができるだけでなく、在庫管理も効率的に行うことができ、施工費用を低減することができる。
【0041】
(最も薄い部分を所定の厚さとした効果)
また、本体部の最も薄い部分の肉厚を0.5mm~2mmとしたことで、支持脚の天板部材に載置した場合に、傾斜の基準となる位置の厚みを最小限に抑えることができる。
これにより、スロープ等の傾斜した床材の接地部付近に寄せて配置することが可能となるため、接地部と支持脚とを近接して配置でき、接地部付近に人が乗った場合であっても床材が撓むことがないため、丈夫な床とすることができる。
【0042】
(支持脚が支持脚補助具を備えている効果)
一方、支持脚補助具を備えた本発明の支持脚は、ねじ部によって昇降自在な天板部材を有することによって、天板部材と床材との隙間を天板部材の回動により調整することができるものであるが、支持脚補助具を備えていることにより、天板部材と床材との隙間の調整のためのスペーサーの機能のみならず、傾斜角度も随意に調整可能となる。
【0043】
また、予め支持脚補助具を備えた支持脚であるため、施工時に支持脚補助具をひとつひとつ載置していく手間が省けるうえ、床材が載置される最上部の支持脚補助具の上面部と支持脚の天面部との傾斜角度を、天板部材を回動することなく任意に調整可能とすることもでき、作業性が著しく向上し、床を効率的に施工可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明における実施例1の支持脚補助具を表す正面図、側面図及び突出部の断面図である。
図2】本発明における実施例1の支持脚補助具が載置される支持脚の正面図及び平面図である。
図3】本発明における実施例1の薄肉溝部を破断させた状態の支持脚補助具を表す正面図である。
図4】本発明における実施例1の支持脚補助具が載置されるロッド部が突出した支持脚及び支持脚補助具を積み重ねて載置した支持脚を表す側面図である。
図5】本発明における実施例1の支持脚補助具を複数積み重ねた状態を表す正面図、側面図及び突出部の断面図である。
図6】本発明における実施例1の積み重ねた支持脚補助具を用いて最大傾斜角にした状態を表す正面図及び側面図である。
図7】本発明における実施例1の積み重ねた支持脚補助具を用いて基礎面と平行にした状態を表す正面図及び側面図である。
図8】本発明における実施例2の支持脚補助具を用いた支持脚を表す平面図、正面図及び突出部の断面図である。
図9】本発明における実施例2の支持脚補助具を複数積み重ねた状態を表す正面図、側面図及び突出部の断面図である。
図10】本発明における実施例3の支持脚を表す平面図、正面図及び突出部の断面図である。
図11】本発明における実施例3の支持脚を用いたスロープの側面図である。
図12】本発明における実施例4の支持脚補助具を用いた支持脚及び床を表す側面図並びに突出部の断面図である。
図13】本発明における実施例5の支持脚補助具を表す正面図及び側面図である。
図14】本発明における実施例6の支持脚補助具を表す正面図及び側面図である。
図15】本発明における実施例7の支持脚補助具を表す正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
『実施例1』
本発明の実施例1について、図1図7に基づいて説明する。なお、本発明はこれらの図面に示す態様に限定されるものではない。
【0046】
(基本構成)
本実施例における支持脚補助具1は、図1(a)(b)に示すように、円盤状の本体部2と、本体部2から一体に突出する突出部3とから構成されている。
【0047】
ここで、本実施例の支持脚補助具1は単一の材料であり、本実施例においては、安価で軽量な材料であるポリプロピレンを射出成形によって形成している。なお、安価で軽量な材料であれば他の樹脂材料を使用してもよいが、摺動性が良い材料がより好ましい。
【0048】
(本体部の構成)
本実施例の本体部2には、相互に非平行な平面状の上面部2a及び下面部2bを有しており、側面視において楔型の形状となっている。
本実施例では、本体部2の直径を約100mm、最も薄い部分の肉厚tを約0.85mmとし、上面部2aと下面部2bとの傾斜角度bを1/24の勾配(約2.4度)になるように形成されている。なお、この傾斜角度bは施工するスロープの種類や要求に応じて適宜変更することができる。
【0049】
この本体部2の下面部2bには、後述する突出部3以外に下方向に突出する部分を有していない。そのため、天面部に載置する際に支持脚の天板部材の直径や形状に制限されることがなく、多様な支持脚に用いることができる。
【0050】
また、上面部2aの中央部には、図1(a)(c)に示すように、後述する突出部3の直径より若干大きめの円筒形で窪んだ挿入部2hが形成されている。この挿入部2hは、後述する支持脚補助具1・1’…の積み重ねにおいて、突出部3を回動自在に受け入れ、一方の支持脚補助具1と他方の支持脚補助具1’とを枢着するとともに、平面方向のずれを制限する役割がある。
【0051】
挿入部2hは抜き勾配の関係で突出部3と平行な円筒形で窪んでいるが、実際に支持脚補助具1を積み重ねる際には、突出部3は挿入部2hに対して傾斜角度bの分だけ傾いて挿入されることとなる。
そのため、挿入部2hの直径は、突出部3が若干斜めに挿入されたとしても滑らかに回動可能であり、かつ、平面方向のずれを実用的な範囲で制限することができる程度の隙間が生ずるように設定され、その深さは突出部3の高さよりも十分に深くするのが好ましい。本実施例では、挿入部2hの直径は約2.7mmに設定されている。
【0052】
また、挿入部2hは、支持脚補助具1・1’…を積み重ねた状態で回動させて全体の勾配を調整するため、本体部2の中心に配置されている。
なお、本実施例の挿入部2hは、射出成形におけるピンゲートと兼ねている。
【0053】
ところで、本実施例では、本体部2の最も薄い部分には切欠部2fを設け、本体部2の上面部2aの外周部寄りには所定の角度の位置に角度表示部2j・2j…を彫刻文字と目印の直線によって設けている。
これによって、支持脚補助具1・1’同士を積み重ねた際に、上側の支持脚補助具1の切欠部2fと、下側の支持脚補助具1’の任意の角度表示部2j’の目印の直線を目視で合わせることができ、傾斜角度の調整がしやすくなる。本実施例においては、切欠部2fを、V字状の切欠きとしている。
【0054】
また、切欠部2fと対向する位置には、支持脚補助具1を回動させる際の持ち手となる摘み部2kが設けられている。本実施例の摘み部2kは2箇所の膨出部を有する波形の薄板部であり、膨出部の間に指やドライバー等の工具を入れて回動させることで、微妙な調整を容易に行うことができるようになっている。
【0055】
なお、本体部2は上面部2aが傾斜していることにより、偏肉となっている。そのため、本体部2の摘み部2k寄りの比較的厚肉となる部分には、下面部2b側から凹みを設けて肉盗みすることで、射出成型時のひけを防止するのが好ましい。
本実施例では、小さな四角形の窪みを複数所定間隔で配列した肉盗みとしているが(図示せず)、全体を一体に窪ませて肉盗みしてもよい。
【0056】
(突出部の構成)
本実施例の突出部3は、図1(b)(c)に示すように、本体部2における下面部2bの中央部から下側に向けて突出した、直径約2.5mm、高さ約1.5mmの円筒状のピンである。この突出部3は、前述のとおり積み重ねた支持脚補助具1の挿入部2hに回動自在に挿入される。
【0057】
また、この突出部3は、図2に示す支持脚補助具1が載置される支持脚7の天面部7aに整然と設けられた複数の穴部7b・7b…のうち、中心付近の穴部7bに対しても挿入することができる。
天面部7aの穴部7b・7b…は肉抜き穴であるとともに、支持脚補助具1を載置したあと、セルフタップねじを用いて、載置される支持脚7と支持脚補助具1とを螺着して固定するための四角形の下穴である。
【0058】
それ故、突出部3の直径は、この載置される支持脚7の穴部7b・7b…に対しても滑らかに回動可能、かつ、平面方向のずれを実用的な範囲で制限することができる程度の隙間が生ずるように設定するのがこのましい。
【0059】
(ねじ穴部の構成)
本体部2の上面部2aには、側壁部2cの同心円に沿って湾曲した終端半円形の角丸長方形のねじ穴部2d・2dが2か所配設されている。このねじ穴部2d・2dは、支持脚補助具1を前述した載置される支持脚7の天面部7aの穴部7b・7b…に螺着するために用いられる。
本実施例のねじ穴部2d・2dは、側壁部2cの中心軸に対して軸対称に均等配置され、側壁部2cの中心とねじ穴部2d・2dの2つの終端の中心とが成す角度aを90度としている。
【0060】
このような角度にすることで、2枚の支持脚補助具1・1’を傾斜方向が同一あるいは逆方向となるように積み重ねた場合には、ねじ穴部2d・2d’がちょうど重なった状態となって、平面視でねじ穴部2dと同一形状の貫通孔が生じる。
一方、2枚の支持脚補助具1・1’を傾斜方向が90度ずれた状態で積み重ねた場合には、ねじ穴部2d・2d’によって形成される平面視で円形の貫通孔が生じる。
また、その中間位置で積み重ねた場合には、平面視でねじ穴部2dの形状を円周方向に縮小したような形状の貫通孔が生じる。
【0061】
このように、積み重ねた2枚の支持脚補助具1・1’の角度関係に関わらず、常に貫通した状態の孔を形成することができ、支持脚補助具1を、それが載置される支持脚7に確実に螺着することができる。なお、3枚以上の支持脚補助具1・1’…を積み重ねる場合も同様であり、2以上のねじ穴部2d・2d…を設ける場合においては、角度aは180をねじ穴部2d・2d…の数で割った数とすることで、同一の効果を得ることができる。
【0062】
(薄肉溝部の構成)
前記ねじ穴部2d・2dの間には、図1(a)(d)に示すように、ねじ穴部2d・2dの円弧と同心円の円弧状の薄肉溝部2i・2iが設けられている。この薄肉溝部2i・2iは断面略V字型であり、局所的に肉厚が0.5mm以下となるように薄肉部を形成されている。
このV字の薄肉溝部2i・2iにカッターを挿入して円弧に沿って薄肉部を切り取ることにより、図3に示すように、ねじ穴部2d・2dと連通した開口部を有するドーナツ状となる。
【0063】
このように、支持脚補助具1に開口部を形成することで、図2に示すような支持脚以外にも、図4(a)に示すような、ロッド部が突出した支持脚8に対しても載置することができる。
【0064】
特に、本実施例では、薄肉溝部2i・2iの直径を、ロッド部が突出した支持脚8のロッド部8bに合わせた直径としている。そのため、図4(b)に示すように、支持脚補助具1・1’を積み重ねて載置した場合に、ロッド部8bが開口した薄肉溝部2i・2iの内壁部と嵌合して、平面方向のずれを制限することができるとともに、突出したロッド部8bによって支持脚補助具1・1’…と干渉することなく載置することが可能となる。
このように、本実施例の支持脚補助具1は、多様な種類の支持脚に載置することができる。
【0065】
本実施例の支持脚補助具1をロッド部が突出した支持脚8に載置した場合、本体部2の下面部2bに前述の肉盗みがあることにより全体的に薄肉となっていることから、上面部2aの任意の位置に直接セルフタップねじを打ち込むことで本体部2を容易に貫通させることができ、支持脚補助具1と、ロッド部が突出した支持脚8とを固定することができる。
【0066】
なお、本体部2の上面部2aに細かな打痕形状の凹部を所定の間隔で配列して設けておくこともでき、こうすることで、セルフタップねじを螺入する場合に、いずれかの打痕形状の凹部にねじの先端が誘われるため、ねじ締めを容易に、かつ、安定的に行うことができる。
【0067】
(支持脚補助具の積み重ねによる傾斜角度の調整)
次に、支持脚補助具1・1’の積み重ねによる傾斜角度の調整について、図5図7に基づいて説明する。
まず、図5(b)に示すように、本実施例では、2枚の支持脚補助具1・1’を積み重ねている。なお、本実施例では2枚重ねとしているが、3枚やそれ以上の枚数を重ねることもできる。
【0068】
本実施例では、図5(a)に示すように、上側の支持脚補助具1と下側の支持脚補助具1’とを、90度回転した状態で積み重ねている。このとき、上側の支持脚補助具1の切欠部2fの頂点と、下側の支持脚補助具1’の切欠部2f’から90度ずれた部分の角度表示部2j’(「1|17」の部分)の直線の部分を目視で合わせることで、容易に90度ずらして積み重ねることができる。
【0069】
また、図5(c)に示すように、上側の支持脚補助具1から突出した突出部3が、下側の支持脚補助具1’の挿入部2h’に挿入され、上側の支持脚補助具1の下面部2bと支持脚補助具1’の上面部2a’が密接するように積み重なっている。
【0070】
突出部3と挿入部2h’とは、若干の間隙を有しているのみであるため、ほとんどガタつきが無く嵌め合わされている。また、突出部3は円筒形であり、同じく円筒形の挿入部2h’に挿入されている。
そのため、積み重ねた状態において、上側の支持脚補助具1に平面方向の力がかかった場合であっても、上側の支持脚補助具1の突出部3と挿入部2h’の内壁部同士が当接することによって、上側の支持脚補助具1と下側の支持脚補助具1’とが平面方向にずれるのを防止することができる。
【0071】
このようにして90度ずらして積み重ねた支持脚補助具1・1’における傾斜角度bは、図5(b)に示すように1/17(約3.6度)となる。この傾斜角度bは、上側の支持脚補助具1または下側の支持脚補助具1’の少なくともいずれかを回動することによって任意に調整することができる。
【0072】
たとえば、図6(a)に示すように、上側の支持脚補助具1の方向と下側の支持脚補助具1’の方向とが一致した状態にすると、傾斜角bは1/12(約4.8度)となって、図6(b)に示すように、上側の支持脚補助具1の上面部2aと下側の支持脚補助具1’の下面部2b’の傾斜角度bは最大傾斜となる。
【0073】
一方、図7(a)に示すように、上側の支持脚補助具1と下側の支持脚補助具1’とが180度ずれた状態にすると、傾斜角度bは0度となって、図7(b)に示すように、上側の支持脚補助具1の上面部2aと下側の支持脚補助具1’の下面部2b’は平行になる。
これは、スロープの踊り場等の施工の際に水平部を構築する際に用いることができ、平行な別の支持脚補助具を準備することなく、同一の支持脚補助具1を使い分けることで在庫数の削減や施工の手間の解消に寄与することができる。
【0074】
しかし、90度ずらす場合のように0度または180度以外の角度に設定する場合には、積み重ねた状態における全体の傾斜方向が、上側の支持脚補助具1の切欠部2fと下側の支持脚補助具1’の切欠部2f’との中間の方向、すなわち90度ずらした場合においては中間の45度の方向にずれることになる。
そのため、90度ずらすように回動する場合には、上側の支持脚補助具1と下側の支持脚補助具1’とを相対する方向にそれぞれ45度ずつ回動させ、相対的に90度ずれるようにすることで、元の傾斜方向を維持したまま傾斜角度bのみを調整することができる。
【0075】
ところで、前述のとおり、上側の支持脚補助具1のねじ穴部2d・2dと、下側の支持脚補助具1’のねじ穴部2d’・2d’とは、図5図7に示すように、ずらした角度に関わらず常に貫通している状態となる。これにより、この貫通した部分から穴部7b・7b…にセルフタップねじを締め込むことで載置される支持脚7と一体に螺着することができ、傾斜角度bを保持しつつ載置される支持脚7に固定することが可能となる。
【0076】
このように、上側の支持脚補助具1または下側の支持脚補助具1’のいずれか、もしくは両方を回動することによって、傾斜角度bは無段階に調整することができ、施工するスロープの勾配に応じて、現場で容易に傾斜角度bの微調整を行う事ができる。
【0077】
『実施例2』
次に、本発明の実施例2について、図8図9に基づいて説明する。なお、実施例1と同様の構成については同一の符号を付し、重複する説明は割愛する。
【0078】
(基本構成)
本実施例における支持脚補助具1は、図8(a)(b)に示すように、円盤状の本体部2と、本体部2から一体に突出する突出部3・3…とから構成されている。
【0079】
(本体部の構成)
本実施例の本体部2には、実施例1同様、互いに非平行な平面状の上面部2a及び下面部2bを有しており、直径や最も薄い部分の肉厚t、傾斜角度bは実施例1と同様である。
【0080】
しかし、本体部2の下面部2bは平面状であるものの、この本体部2の外周面には、後述する突出部3・3…が所定間隔で設けられており、この突出部3・3…が、載置される支持脚7の天面部7aの外周や、積み重なる支持脚補助具1の側壁部2cに覆い被さるようにして嵌合する。そのため、載置される支持脚7の天面部7aの直径が限定されるものの、天面部7aを円弧状のリブで保持されることにより、平面方向に強い力がかかったとしても、支持脚補助具1が破損する恐れがなく、強度に優れるという特徴がある。
【0081】
ところで、本体部2の最も薄い部分には切欠部2fを設け、本体部2の上面部2aには本体部2の中心から放射状に所定の角度毎に複数の溝部2e・2e…を設けている。これによって、支持脚補助具1・1’同士を積み重ねた際に、上側の支持脚補助具1の切欠部2fと、下側の支持脚補助具1’の任意の溝部2e’を目視で合わせることができ、傾斜角度の調整がしやすくなる。本実施例においては、切欠部2fを、V字状の切欠きとしている。
【0082】
なお、本体部2には、所定の間隔で複数の穴部2g・2g…が貫設されている。この穴部2g・2g…は、後述するスロープ等の床材Fを螺着する際の下穴であり、任意の位置に螺着できるように本体部2の全面に亘って整然と貫設されている。
【0083】
(突出部の構成)
本実施例の突出部3・3…は、図8(c)に示すように、側壁部2cの下面部2b寄り側から径方向に突出するとともに、下面部2bの下側にも突出している。下側への突出によって形成される内壁部3a・3a…は円筒形状を有し、その内径は側壁部2cの直径よりも若干大きく設定されている。
【0084】
この突出部3・3…は、支持脚補助具1・1’…を積み重ねた際に、下側の支持脚補助具1’の側壁部2c’に覆い被さるように嵌合し、支持脚補助具1・1’…同士を回動自在に積み重ねることができる。
【0085】
また、この突出部3・3…は、図2に示す支持脚補助具1が載置される支持脚7の天面部7aの外周に覆い被さるように嵌合することもできる。これにより、載置される支持脚7の天面部7aに支持脚補助具1を回動自在に載置することができる。
【0086】
また、本実施例においては、突出部3・3…は、切欠部2fの位置を除き90度間隔で3箇所に均等配置している。ここで、突出部3・3…の周方向の大きさは、側壁部2cを充分に覆う事ができる程度に広く形成するのが望ましく、切欠部2fの位置を除いて側壁部2c全体に突出部3を形成してもよい。
【0087】
(支持脚補助具の積み重ねによる傾斜角度の調整)
次に、支持脚補助具1・1’の積み重ねによる傾斜角度の調整について、図9に基づいて説明する。
まず、図9(b)に示すように、本実施例では、実施例1同様、2枚の支持脚補助具1・1’を積み重ねている。
【0088】
本実施例では、図8(a)に示すように、上側の支持脚補助具1と下側の支持脚補助具1’とを、90度回転した状態で積み重ねている。このとき、上側の支持脚補助具1の切欠部2fと、下側の支持脚補助具1’の切欠部2f’の90度ずれた部分の溝部2e’を目視で合わせることで、容易に90度ずらして積み重ねることができる。
【0089】
また、図8(c)に示すように、上側の支持脚補助具1から突出した突出部3・3…の内壁部3a・3a…が、下側の支持脚補助具1’の側壁部2c’に沿って嵌り込み、上側の支持脚補助具1の下面部2bと支持脚補助具1’の上面部2a’が密接するように積み重なっている。
【0090】
内壁部3a・3a…と側壁部2c’とは、若干の間隙を有しているのみであるため、ほとんどガタつきが無く嵌め合わされている。また、突出部3・3…は側壁部2cに沿って所定の間隔で突出している。
そのため、積み重ねた状態において、上側の支持脚補助具1に本体部2の径方向の力がかかった場合であっても、上側の支持脚補助具1の突出部3・3…の内壁部3a・3a…が下側の支持脚補助具1’の側壁部2c’に当接することによって、上側の支持脚補助具1と下側の支持脚補助具1’とが径方向にずれるのを防止することができる。
なお、内壁部3a・3a…の高さは、内壁部3a・3a…が側壁部2c’に乗り上げてしまうのを防ぐため1mm以上であることが好ましく、積み重ねた状態において下側の突出部3’と干渉するのを防ぐため2mm以下とするのがより好ましい。
【0091】
このようにして90度ずらして積み重ねた支持脚補助具1・1’における傾斜角度bは、図8(b)に示すように1/17(約3.6度)となる。この傾斜角度bは、上側の支持脚補助具1または下側の支持脚補助具1’のいずれかを回動することによって任意に調整することができ、その他の組み合わせについては、実施例1同様である。
【0092】
なお、0度または180度以外の角度に設定する場合に、上側の支持脚補助具1と下側の支持脚補助具1’とを相対する方向にそれぞれ回動させることで傾斜方向を維持したまま傾斜角度bのみを調整することができる点も、実施例1同様である。
【0093】
『実施例3』
次に、本発明の支持脚補助具を予め取着した支持脚の実施例3について、図10図11に基づいて説明する。なお、実施例1と同様の構成については同一の符号を付し、重複する説明は割愛する。
【0094】
(基本構成)
本実施例における支持脚4は、図10(a)(b)に示すように、円盤状の本体部2と、本体部2から一体に突出する突出部3とからなる支持脚補助具1、昇降自在な天板部材6に載置して構成されている。また、本実施例における支持脚4は、天板部材6と、基礎面B上に載置される底面部5a、及び雌ねじ部(図示せず)を備えたベース部材5を備えている。そして、二つの支持脚補助具1・1’を積み重ねている。
【0095】
(支持脚補助具の構成)
本実施例における支持脚4に用いる支持脚補助具1・1’は、実施例1と同様のものを使用する。本実施例においては、支持脚補助具1・1’の本体部の最も薄い部分の肉厚tを0.85mmとしたことで、支持脚4の天面部6bに付加される下側の支持脚補助具1’としての厚みを最小限に抑えることができ、スロープ等の床材Fの接地部付近に寄せて支持脚4を配置することが可能となっている(後述する)。
【0096】
なお、支持脚補助具1・1’…は実施例2と同様のものを用いることもでき、積み重ね枚数も適宜選択することができる。
【0097】
(天板部材の構成)
本実施例の天板部材6は、このベース部材5の雌ねじ部に昇降自在に螺着される雄ねじ部6cを備えたロッド部6aが、天板部6bから突設した形状としている。なおこの雄ねじ部6cに関しては、ベース部材5側を雄ねじとする場合には、それに合わせて雌ねじに変更することもできる。
【0098】
また、天板部材6の天面部6bは円形であり、本実施例では直径を支持脚補助具1の本体部2の直径と同様の約100mmとしているが、支持脚補助具1の本体部2の直径よりも小さくても大きくても構わない。
【0099】
(支持脚補助具の積み重ねについて)
一方、本実施例では、上側の支持脚補助具1は、下側の支持脚補助具1’に対して、それぞれの方向が一致した状態で積み重ねている。また、下側の支持脚補助具1’は、突出部3’が、天板部材の中央の穴部6eに着脱自在に挿入され、下側の支持脚補助具1’の下面部2b’と天面部6bとが密接するように積み重なっている。
【0100】
ここで、本実施例では、突出部3’は中央の穴部6eに対して着脱可能に枢着されているが、突出部3’を、公知の方法を用いて中央の穴部6eに回動可能、かつ、着脱不可能に枢着されてもよい。この場合、支持脚補助具1’が天面部6bから容易に落下することがないため、作業性が向上する。
【0101】
また、図5(c)に示すように、突出部3’と穴部6e及び突出部3と挿入部2h’とは、若干の間隙を有しているのみであるため、ほとんどガタつきが無く嵌め合わされている。また、突出部3は円筒形であり、四角形の穴部6e、及び円筒形の挿入部2h’に挿入されている。
そのため、積み重ねた状態において、支持脚補助具1または支持脚補助具1’に平面方向の力がかかった場合であっても、上側の支持脚補助具1の突出部3と挿入部2h’の内壁部同士が当接することによって、または下側の支持脚補助具1’の突出部3’と穴部6eの内壁部とが当接することによって、支持脚補助具1・1’同士及び支持脚補助具1’と天面部6bとが平面方向にずれるのを防止することができる。
【0102】
このような構成の支持脚4は、図11に示すように、傾斜した床材Fと基礎面Bとの間に所定の間隔を空けて設置される。この際、床材Fが傾斜を有しているため、基礎面Bとの隙間は場所によって異なっている。そのため、支持脚4の天板部材6を回動し、ロッド部6aを昇降させることで支持脚4の全高を調整することができる。
【0103】
本実施例における支持脚4の使用方法は、まず床材Fと基礎面Bが交わる接地部付近にできるだけ寄せて配置される支持脚4’と、床材Fと基礎面Bとの隙間が最も大きくなる部分に配置される他の支持脚4’’とによって、スロープの傾斜角度を決定する。
【0104】
詳しくは、前記2つの支持脚4’・4’’の支持脚補助具1・1を所定の傾斜角度bになるように予め設定しておき、所定の位置に配置した後、床材Fを敷設するための架材Faを支持脚補助具1・1の上面部2a・2a上に載置する。これによって架材Faの傾斜角度を固定した後、支持脚4’・4’’間に任意の数の他の支持脚4・4…を順次配置していく。そして、架材Faと支持脚4・4’…をセルフタップねじ(図示せず)によって螺着し、パネル部材Fb・Fb…を架材Faにセルフタップねじ等(図示せず)で取着して施工する。
【0105】
ここで、前記2つの支持脚4’・4’’を配置する際、架材Faの反り等の影響により、予め支持脚補助具1・1の傾斜角度bを設定しても若干の角度のずれが生じる場合がある。その場合であっても、天板部材6を回動することなく、支持脚補助具1・1’のいずれかを回動するのみで傾斜角度の微調整ができ、作業性が良い。支持脚4’・4’’間に配置される任意の数の他の支持脚4・4…に関しても同様である。
【0106】
『実施例4』
本発明の実施例3について、図7に基づいて説明する。なお、本発明はこの図面に示す態様に限定されるものではない。
【0107】
本実施例における支持脚4は、図12(a)に示すように、実施例2同様の支持脚補助具1を、ベース部材5の底面部5aの下に配置して構成されている点が実施例3と相違している。ここで、図12(b)に示すように、支持脚補助具1は、下面部2bとベース部材5の底面部5aとが密接するように重なっており、施工の際には上面部2aが基礎面B上に載置されることとなる。
【0108】
また、実施例3同様、突出部3・3…の内壁部3a・3a…の内径はベース部材5の側壁部5bの直径よりも若干大きく設定されている。本実施例においては、ベース部材5の側壁部5bの直径を天板部材6の側壁部6dの直径と同じ100mmとし、内壁部3aの直径を100.5mmとすることで、同じ支持脚補助具1を天面部6bにも底面部5aにも配置することができるようになっている。
【0109】
本実施例の支持脚補助具1を用いた支持脚4は、例えば傾斜のある基礎面Bに、水平な床材Fを施工したい場合に使用することができる(図12(a)参照)。まず、支持脚補助具1を基礎面Bと床材Fとの角度と略同じ傾斜角度bになるように予め調整して底面部5aと基礎面Bとの間に設置する。
【0110】
次に、支持脚4の天板部材6を回動してロッド部6aを昇降させることによって、床材Fと基礎面Bとの隙間に合わせて支持脚4の全高を調整する。このとき、支持脚補助具1を回動することで、支持脚補助具1の傾斜角度bを基礎面Bと床材Fとの実際の角度に合うように微調整することができる。
【0111】
そして、床材Fと支持脚4の天面部6bをセルフタップねじ(図示せず)によって螺着して施工する。なお、天面部6bには、支持脚補助具1と同様、任意の位置にセルフタップねじを螺着できるように、所定の間隔で複数の穴部(図示せず)が天面部6bの全面に亘って貫設されている。
【0112】
『実施例5』
本発明の支持脚補助具1は、実施例1、2の他、図13に示すように突出部3が中心よりも若干ずれた位置から突出し、挿入部2hを、突出部3の中心からのずれ量を半径とする、ドーナツ状の溝形状としてもよい。
【0113】
この点、支持脚補助具1が載置される支持脚7において、穴部7bが、配列の都合で天面部7aの中心位置ではなく、中心よりずれた位置に設けられているものがある。
この場合、支持脚補助具1の突出部3が、本体部2の中心から突出していた場合、載置される支持脚7に対して中心がずれて載置されることとなり、施工設計した床材Fと支持脚補助具1が載置される支持脚7との隙間の値と、実際の施工時の隙間とがずれてしまうことになる。
【0114】
そこで、本実施例では、載置される支持脚7の中心位置に対する穴部7bのずれ量だけ、本体部2の中心からずらして突出させた突出部3を設けることで、このような支持脚7に対しても、天面部7aと同軸に載置することが可能となる。
【0115】
しかし、中心からずれて設けられた突出部3を、上面部2aの中心に設けられた挿入部2hに挿入して積み重ねると、今度は上下の支持脚補助具1・1’の中心軸が同軸とならない。それ故、いずれかの支持脚補助具1・1’を回動した場合に、回動の中心がずれてしまい、前記同様、施工の際、床材Fとの隙間が、支持脚補助具1・1’の回動の度に大きく変化してしまうことになる。
【0116】
そこで、本実施例では、挿入部2hを、突出部3の中心からのずれ量を半径とする、ドーナツ状の溝形状とすることで、突出部3の挿入状態を維持しつつ、積み重ねられた支持脚補助具1・1’の回動の軸を同軸とすることができる。
また、この場合であっても、平面方向に力がかかったとしても、突出部3が挿入部2hに挿入されていることにより、容易に平面方向にずれてしまうことがない。
【0117】
なお、下面部2bの中央と、ずれた位置とに複数の突出部3・3…を設けておき、載置する支持脚7の穴部7bの位置に応じて、不要な突出部3・3…をカッター等の刃物で除去して用いることも可能である。これによって、ひとつの支持脚補助具で、さらに多様な種類の支持脚に対応することが可能となる。
【0118】
『実施例6』
次に、本発明の支持脚補助具1は、図14に示すように、薄肉溝部2i・2iのV字型の薄肉部を、長穴を所定間隔で設けたミシン目形状とするようにしてもよい。
【0119】
本実施例では、薄肉溝部2i・2iに薄肉部が設けられているうえ、その薄肉部にミシン目が刻まれていることにより、薄肉部がより破断しやすくなる。
そのため、カッター等の刃物を用いることなく、本体部2の中央付近を指で強く押すことにより、本体部2に開口部を形成することができる。
【0120】
これにより、開口部を形成するたびにカッター等の刃物を準備する必要がなく、安全であり、作業性も向上する。
【0121】
『実施例7』
さらに、本発明の支持脚補助具1は、図15に示すように、薄肉溝部2i・2i…を、ねじ穴部2d・2dを連結するように設けるだけでなく、本体部2と同心円の薄肉溝部2i・2i…を複数設けることもできる。
【0122】
この場合、ロッド部が突出した支持脚8において、ロッド部8bの直径が異なる支持脚8に対しても、任意の薄肉溝部2i・2i…をカッターで切り取ることにより、ロッド部8bの直径に合った開口部を形成することができる。
【0123】
これにより、本実施例の支持脚補助具1によれば、より多様な種類の支持脚に載置することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 支持脚補助具
2 本体部
2a 上面部
2b 下面部
2c 側壁部
2d ねじ穴部
2e 溝部
2f 切欠部
2g 穴部
2h 挿入部
2i 薄肉溝部
2j 角度表示部
2k 摘み部
3 突出部
3a 内壁部
4 支持脚
5 ベース部材
5a 底面部
5b ベース部材の側壁部
6 天板部材
6a ロッド部
6b 天面部
6c 雄ねじ部
6d 天板部材の側壁部
6e 穴部
7 載置される支持脚
7a 天面部
7b 穴部
8 ロッド部が突出した支持脚
8a 天板部材
8b ロッド部
F 床材
Fa 架材
Fb パネル部材
B 基礎面
t 最も薄い部分の肉厚
a 側壁部の中心とねじ穴部の2つの終端の中心とが成す角度
b 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
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図12
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図15