(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】接近警報システム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/00 20060101AFI20241209BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20241209BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20241209BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20241209BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G08B21/00 U
G08B21/02
G08B25/04 K
B66F9/24 L
G01V3/12 A
(21)【出願番号】P 2020179946
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000159618
【氏名又は名称】吉川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原野 信也
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-174361(JP,A)
【文献】特開2019-219354(JP,A)
【文献】特開2016-115038(JP,A)
【文献】特開2020-061075(JP,A)
【文献】特開2018-032901(JP,A)
【文献】特開2013-142675(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117268(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00 - 21/02
G08B 25/04
B66F 9/24
E02F 9/24 - 9/26
G01V 3/08 - 3/12
G08G 1/09 - 1/16
G01S 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重機の運転席又はその近傍に設置された距離検知制御装置と、作業者に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグとの接近を検知して接近警報を出力する接近警報システムであって、
前記距離検知制御装置は、誘導磁界を送信する磁界送信部と、電波受信部と、前記接近警報を出力する装置警報部と、これらを制御する装置制御部とを備え、
前記磁界検知機能付きRFIDタグは、前記磁界送信部から送信される誘導磁界を検知する磁界センサ部と、当該磁界センサ部が前記誘導磁界を検知したときに磁界検知電波を送信する電波送信部と、前記接近警報を出力するタグ警報部と、これらを制御するタグ制御部とを備え、
前記タグ制御部は、前記磁界センサ部が検知した前記誘導磁界の強さが所定の閾値以上の場合、前記タグ警報部から前記接近警報を出力させないと共に、前記電波送信部から前記磁界検知電波を送信させない、接近警報システム。
【請求項2】
重機の運転席又はその近傍に設置された距離検知制御装置と、作業者に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグとの接近を検知して接近警報を出力する接近警報システムであって、
前記距離検知制御装置は、当該距離検知制御装置の装置ID情報を含む誘導磁界を送信する磁界送信部と、電波受信部と、前記接近警報を出力する装置警報部と、これらを制御する装置制御部とを備え、
前記磁界検知機能付きRFIDタグは、前記磁界送信部から送信される誘導磁界を検知する磁界センサ部と、当該磁界センサ部が前記誘導磁界を検知したときに当該磁界検知機能付きRFIDタグのタグID情報及び前記装置ID情報を含む磁界検知電波を送信する電波送信部と、前記接近警報を出力するタグ警報部と、これらを制御するタグ制御部とを備え、
前記タグ制御部は、前記磁界センサ部が検知した前記誘導磁界の強さが所定の閾値以上の場合、前記タグ警報部から前記接近警報を出力させないと共に、前記電波送信部から出力される前記磁界検知電波に、前記装置警報部が前記接近警報を出力しないようにするための警報不出力情報を付加する、接近警報システム。
【請求項3】
前記装置制御部は、前記電波受信部が前記警報不出力情報を含む前記磁界検知電波を受信したとしても、所定時間内に異なるタグID情報を含む磁界検知電波を受信した場合、前記装置警報部から前記接近警報を出力させる、請求項2に記載の接近警報システム。
【請求項4】
前記距離検知制御装置は、前記電波受信部が受信した磁界検知電波に含まれる情報を有線又は無線にてサーバーへ送信する情報送信部を備える、請求項2又は3に記載の接近警報システム。
【請求項5】
前記装置制御部は、前記磁界送信部から送信される誘導磁界に、前記閾値の情報を付加する、請求項1から4のいずれか一項に記載の接近警報システム。
【請求項6】
前記装置制御部は前記閾値を変更できる、請求項5に記載の接近警報システム。
【請求項7】
前記装置制御部は、前記磁界送信部から送信される誘導磁界の強さに応じて前記閾値を変更する、請求項6に記載の接近警報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重機の運転席又はその近傍に設置された距離検知制御装置と、作業者に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグとの接近を検知して接近警報を出力する接近警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる重機周りの接近警報システムにおいては、当該重機の運転席にいる作業者(重機運転者)が磁界検知機能付きRFIDタグを所持している場合、当該作業者(重機運転者)に対して不要な接近警報が出力されることになる。そのため、重機の運転席にいる作業者(重機運転者)に対して接近警報が出力されないようにするための仕組みが必要となる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、作業現場内の重機に当該重機周囲の近接危険域を覆う強度で重機固有IDをトリガーIDとして送出する第1発信器と当該重機の運転席範囲を覆う強度で運転席固有IDをトリガーIDとして送出する第2発信器とを設置することにより、重機の運転席にいる作業者(重機運転者)に対して接近警報が出力されないようにすることが提案されている。
また、特許文献2では、重機のオペレータが位置するシートの周囲において、エリア信号磁界をキャンセルするキャンセル信号磁界を生成するキャンセルユニットを重機に搭載することにより、重機の運転席にいる作業者(オペレータ)に対して接近警報が出力されないようにすることが提案されている。
【0004】
このように従来技術では、重機の運転席にいる作業者(重機運転者)に対して接近警報が出力されないようにするために、重機周りに接近した作業者に対して接近警報が出力されるようにするための装置(特許文献1では第1発信器、特許文献2ではエリア信号磁界発生ユニット)に加えて、別途新たな装置(特許文献1では第2発信器、特許文献2ではキャンセルユニット)を重機に設置する必要があり、その分、システム構成が複雑となりコストも高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-115038号公報
【文献】特開2020-61075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、重機周りの接近警報システムにおいて、新たな装置を追加することなく、当該重機の運転席にいる作業者(重機運転者)に対して接近警報が出力されないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、次の接近警報システムが提供される。
重機の運転席又はその近傍に設置された距離検知制御装置と、作業者に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグとの接近を検知して接近警報を出力する接近警報システムであって、
前記距離検知制御装置は、誘導磁界を送信する磁界送信部と、電波受信部と、前記接近警報を出力する装置警報部と、これらを制御する装置制御部とを備え、
前記磁界検知機能付きRFIDタグは、前記磁界送信部から送信される誘導磁界を検知する磁界センサ部と、当該磁界センサ部が前記誘導磁界を検知したときに磁界検知電波を送信する電波送信部と、前記接近警報を出力するタグ警報部と、これらを制御するタグ制御部とを備え、
前記タグ制御部は、前記磁界センサ部が検知した前記誘導磁界の強さが所定の閾値以上の場合、前記タグ警報部から前記接近警報を出力させないと共に、前記電波送信部から前記磁界検知電波を送信させない、接近警報システム。
【0008】
本発明の他の観点によれば、次の接近警報システムが提供される。
重機の運転席又はその近傍に設置された距離検知制御装置と、作業者に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグとの接近を検知して接近警報を出力する接近警報システムであって、
前記距離検知制御装置は、当該距離検知制御装置の装置ID情報を含む誘導磁界を送信する磁界送信部と、電波受信部と、前記接近警報を出力する装置警報部と、これらを制御する装置制御部とを備え、
前記磁界検知機能付きRFIDタグは、前記磁界送信部から送信される誘導磁界を検知する磁界センサ部と、当該磁界センサ部が前記誘導磁界を検知したときに当該磁界検知機能付きRFIDタグのタグID情報及び前記装置ID情報を含む磁界検知電波を送信する電波送信部と、前記接近警報を出力するタグ警報部と、これらを制御するタグ制御部とを備え、
前記タグ制御部は、前記磁界センサ部が検知した前記誘導磁界の強さが所定の閾値以上の場合、前記タグ警報部から前記接近警報を出力させないと共に、前記電波送信部から出力される前記磁界検知電波に、前記装置警報部が前記接近警報を出力しないようにするための警報不出力情報を付加する、接近警報システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、重機周りの接近警報システムにおいて、新たな装置を追加することなく、当該重機の運転席にいる作業者(重機運転者)に対して接近警報が出力されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態である接近警報システムのシステム構成図。
【
図2】
図1の接近警報システムにおける距離検知制御装置及び磁界検知機能付きRFIDタグの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、本発明の一実施形態である接近警報システムのシステム構成を示し、
図2に、この接近警報システムにおける距離検知制御装置及び磁界検知機能付きRFIDタグの構成を示している。なお、以下の説明では、「距離検知制御装置」を単に「検知機」といい、「磁界検知機能付きRFIDタグ」を単に「タグ」という。
【0012】
図1に概念的に示しているように、この接近警報システムでは、重機1(本実施形態ではフォークリフト)の運転席の近傍である天井部に検知機2が設置され、各作業者3a,3bにそれぞれタグ4a,4bが取り付けられている。なお
図1では、作業者3aが重機1の運転席におり、作業者3bが重機1に接近している様子を示している。
【0013】
図2に示すように検知機2は、誘導磁界を送信する磁界送信部と、電波受信部と、接近警報を出力する装置警報部と、これらを制御する装置制御部とを備える共に、外部電源を検知機2の稼動に適した直流電圧(12V)に変換する電圧変換部を備える。
また、タグ4a,4bの構成は共通であり、それぞれ検知機2の磁界送信部から送信される誘導磁界を検知する磁界センサ部と、当該磁界センサ部が誘導磁界を検知したときに磁界検知電波を送信する電波送信部と、接近警報を出力するタグ警報部と、これらを制御するタグ制御部とを備えると共に、外部電源を検知機A,B,Cの稼動に適した直流電圧(12V)に変換する電圧変換部を備えると共に、電源としてバッテリを備える。
【0014】
図1において検知機2は、その磁界送信部から所定の強さの誘導磁界5を送信する。誘導磁界の強さは距離の3乗に反比例して減衰するから、この誘導磁界5の強さは、検知機2近傍の重機1の運転席では強く、重機1の運転席から離れるにつれて弱くなる(
図1では、誘導磁界5の検知可能範囲を破線で示している。)。
【0015】
そこで本実施形態の一態様では、タグ制御部は、磁界センサ部が検知した誘導磁界5の強さが所定の閾値以上の場合、そのタグは重機1の運転席内にある、言い換えればそのタグは重機1の運転席にいる作業者3aに取り付けられているものであると判断し、タグ警報部から接近警報を出力させないと共に、電波送信部から磁界検知電波を送信させない。そうすると、検知機2の装置警報部からも接近警報は出力されない。
【0016】
前述の閾値は、重機1の運転席で検知される誘導磁界5の強さ(値)を基準として、この基準値以下とする。詳しくは前述の閾値は、実質的にタグが重機1の運転席内にあるときだけ、そのタグで検知される誘導磁界5の強さ(値)が当該閾値以上となるように設定することができる。言い換えると前述の閾値は、重機1に接近した作業者3bに取り付けられているタグ4bが検知する誘導磁界の強さ(値)よりも大きい値に設定することができる。そうすると、重機1に接近した作業者3bに取り付けられているタグ4bが検知する誘導磁界の強さは前述の閾値以上にはならないので、タグ4bのタグ制御部は通常通り、タグ警報部から接近警報を出力させると共に、電波送信部から磁界検知電波を送信させる。そうすると、検知機2の装置警報部からも接近警報が出力される。
なお、
図1では誘導磁界5の強さが所定の閾値以上となる領域を一点鎖線で囲んでいる。
【0017】
前述の閾値は、予めタグ制御部に記憶させておくこともできるが、検知機2から発信する誘導磁界の強さや重機1の運転席の大きさ等に応じて適宜変更できるように、検知機2の装置制御部は、その磁界送信部から送信される誘導磁界に前述の閾値の情報を付加することもできる。この場合、検知機2の装置制御部は前述の閾値を変更できるようにすることもできる。具体的には検知機2の装置制御部は、磁界送信部から送信される誘導磁界の強さに応じ前述の閾値を変更することもできる。より具体的には検知機2の装置制御部は、磁界送信部から送信される誘導磁界の強さが高いほど、前述の閾値を大きくすることもできる。
【0018】
本実施形態の他の態様では、検知機2の磁界送信部は当該検知機2の装置ID情報を含む誘導磁界5を送信する。また、タグ4a,4bの電波送信部は、その磁界センサ部が誘導磁界5を検知したときに当該タグ4a,4bのタグID情報及び検知機2の装置ID情報を含む磁界検知電波を送信する。そして、タグ4a,4bのタグ制御部は、磁界センサ部が検知した誘導磁界5の強さが所定の閾値以上の場合、タグ警報部から接近警報を出力させないと共に、電波送信部から出力される磁界検知電波に、検知機2の装置警報部が接近警報を出力しないようにするための警報不出力情報を付加する。そうすると、検知機2の装置警報部からも接近警報は出力されない。
【0019】
この態様において、検知機2の装置制御部は、電波受信部が前述の警報不出力情報を含む磁界検知電波を受信したとしても、所定時間内(例えば概ね1~3秒以内)に異なるタグID情報を含む磁界検知電波を受信した場合、装置警報部から接近警報を出力させるようにすることができる。例えば
図1では、重機1の運転席にいる作業者3aに取り付けられているタグ4aの電波送信部から、タグ4aのタグID情報及び検知機2の装置ID情報と共に警報不出力情報を含む磁界検知電波が送信され、その磁界検知電波を検知機2の電波受信部が受信する。一方、重機1に接近した作業者3bに取り付けられているタグ4bの電波送信部からは、タグ4bのタグID情報及び検知機2の装置ID情報を含む磁界検知電波が送信され、その磁界検知電波を検知機2の電波受信部が受信する。このように、検知機2の装置制御部は、電波受信部がタグ4aのタグID情報及び検知機2の装置ID情報と共に警報不出力情報を含む磁界検知電波を受信したとしても、所定時間内に異なるタグID情報であるタグ4bのタグID情報及び検知機2の装置ID情報を含む磁界検知電波を受信した場合、装置警報部から接近警報を出力させるようにすることができる。この場合、装置警報部から出力される接近警報は、重機1の運転席にいる作業者3a以外の作業者3bが重機1に接近したことを示すもので、この接近警報により重機1の運転席にいる作業者3aは、他の作業者3bが重機1に接近していることを知ることができる。また、重機1に接近した作業者3bは、自らのタグ4bのタグ警報部から接近警報が出力されるので、これにより自身が重機1に接近していることを知ることができる。
【0020】
図1では、作業者3bは誘導磁界5の強さが所定の閾値以上となる領域(一点鎖線で囲んだ領域)外にいるが、作業者3bが誘導磁界5の強さが所定の閾値以上となる領域内にいる場合、次のような動作となる。すなわち、重機1の運転席にいる作業者3aに取り付けられているタグ4aの電波送信部からは、タグ4aのタグID情報及び検知機2の装置ID情報と共に警報不出力情報を含む磁界検知電波が送信され、その磁界検知電波を検知機2の電波受信部が受信する。また、誘導磁界5の強さが所定の閾値以上となる領域内にいる作業者3bに取り付けられているタグ4bの電波送信部からは、タグ4bのタグID情報及び検知機2の装置ID情報と共に警報不出力情報を含む磁界検知電波が送信され、その磁界検知電波を検知機2の電波受信部が受信する。このように、検知機2の装置制御部は、電波受信部がタグ4aのタグID情報及び検知機2の装置ID情報と共に警報不出力情報を含む磁界検知電波を受信したとしても、所定時間内に異なるタグID情報であるタグ4bのタグID情報及び検知機2の装置ID情報と共に警報不出力情報を含む磁界検知電波を受信した場合、装置警報部から接近警報を出力させるようにすることができる。この場合、装置警報部から出力される接近警報は、重機1の運転席にいる作業者3a以外の作業者3bが重機1に接近したことを示すもので、この接近警報により重機1の運転席にいる作業者3aは、他の作業者3bが重機1に接近していることを知ることができる。なお、この場合、タグ4a及びタグ4bのそれぞれの
タグ警報部からは接近警報は出力されない。
【0021】
この態様において、検知機2は、電波受信部が受信した磁界検知電波に含まれる情報を有線又は無線にてサーバーへ送信する情報送信部をさらに備えることができる。これにより、重機1への作業者3b等の接近情報を総括的に管理することができる。なお、
図1では、2人の作業者を示したが、作業者の人数は1人の場合や、3人以上の場合もある。
【0022】
以上の通り本実施形態によれば、重機周りに接近した作業者に対して接近警報が出力されるようにするための装置(検知機2)のほかに、別途新たな装置を追加することなく、当該重機の運転席にいる作業者(重機運転者)に対して接近警報が出力されないようにすることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 重機
2 検知機(距離検知制御装置)
3a,3b 作業者
4a,4b タグ(磁界検知機能付きRFIDタグ)
5 誘導磁界