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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】プラズマ滅菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/14 20060101AFI20241209BHJP
   B01J 19/08 20060101ALN20241209BHJP
【FI】
A61L2/14
B01J19/08 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020185712
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022075126
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】392022570
【氏名又は名称】サムコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 文晴
(72)【発明者】
【氏名】大槻 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】前野 正太
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-175427(JP,A)
【文献】特開2003-080059(JP,A)
【文献】特開2004-281229(JP,A)
【文献】特開昭54-050440(JP,A)
【文献】特開2014-113534(JP,A)
【文献】国際公開第2008/146990(WO,A1)
【文献】特開2020-6261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00- 2/14
B01J19/08
H05H 1/00- 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内に配置される処理対象物に対向するように設けられる第1電極と、
前記処理対象物と前記第1電極の間に設けられる、貫通孔を有する板状の第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極の間でプラズマとなるガスを供給するガス供給部と、
前記第1電極を接地極として前記第2電極に前記ガスをプラズマ化するための高周波電力を供給する電力供給部と
前記処理対象物を載置するための接地された処理台と
を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記ガス供給部が、前記ガスを前記第1電極と前記第2電極の間に供給する請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第1電極が貫通孔を有し、前記ガス供給部が、前記ガスを前記第1電極の前記第2電極とは反対の側に供給する請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第2電極の貫通孔が前記第2電極に複数設けられている請求項1~3のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第2電極の貫通孔の平面形状が正六角形であり、前記第2電極に稠密に設けられている請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第2電極の貫通孔の平面形状が円形であり、前記第2電極に稠密に設けられている請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記ガスが水蒸気(H2O)である請求項1~6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器(薬機法に定められた医療行為に使用する器具、例えば剪刀や内視鏡など手術器具や医療行為に用いる診断機器)をプラズマを用いて滅菌或いは殺菌(以下まとめて滅菌と言う。)する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルスを始め、変性しやすく感染力の強いウイルスや、抗生物質やアルコールなどの薬剤に対し耐性を持つ薬剤耐性菌が現れ、社会の脅威となりつつある。医療機関において感染症の発生を未然に防ぐためには、医療機器製造業者の出荷前における滅菌処理や医療機器の再製造業者による再製造過程での滅菌処理が重要である。また、パンデミックの状況に陥った際には、医療機関において特例的に医療機器を再利用する場合がある。その際は、一度使用した医療機器に感染症を引き起こす病原体の付着可能性があるため、滅菌処理を行う必要がある。
【0003】
このような医療機器の滅菌処理には、一般的に高圧水蒸気や高温乾燥空気を用いる。しかし、医療機器の構成材料の中には、高温や高圧に耐性を持たない材料があり、変形や器具表面の腐食や劣化を生じる。また、エチレンオキサイドガスやホルマリン等の殺菌性のガスを用いる方法もあるが、この方法ではその殺菌性のガスが処理後も対象物に残留する恐れがあり、対象物のその後の使用に悪影響を及ぼす可能性があることから、殺菌ガスを除去するための後処理が必要となる。
【0004】
そこで、プラズマを用いた滅菌を行う方法が注目されている。これは、減圧下滅菌室内で原料をガス化し、次にガス化した原料をプラズマ化して、そのイオンを滅菌室内の対象物に照射することにより滅菌処理を行うものである。原料ガスのプラズマ化は、滅菌室内に設置された電極に高周波電力を印加することにより行われる。例えば、特許文献1には、ガス化した過酸化水素等の滅菌剤を処理室(チャンバー)に配置した円筒形の網状電極内に通し、該電極に高周波電力を投入することによりプラズマ化して、それにより該電極内に配置した対象物を滅菌している。
【0005】
一方、特許文献2や特許文献3では、処理室内の上下に平行に配置した平板電極を用いてプラズマ化するプラズマ滅菌装置を開示している。これらの滅菌装置では安全性の高い水蒸気を原料として使用し、水蒸気をプラズマ化して生成した活性種(主としてOH-イオンなど)を対象物に照射することにより滅菌を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-308675号公報
【文献】特開2003-310719号公報
【文献】特開2008-188032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
OH-イオンで対象物を滅菌すれば、有害な物質が残留するという問題は無いが、処理中にイオンを照射され続けると、イオンの衝撃により対象物の温度が上昇するという問題がある。このため、耐熱性の低い対象物の滅菌処理には適していない。
【0008】
本発明は従来技術のこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、滅菌処理に留まらず、様々な対象物に対して行うプラズマ処理において、対象物の温度を上昇させることの少ない処理を行うことのできるプラズマ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係るプラズマ処理装置は、
処理室内に配置される処理対象物に対向するように設けられる第1電極と、
前記処理対象物と前記第1電極の間に設けられる、貫通孔を有する板状の第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極の間でプラズマとなるガスを供給するガス供給部と、
前記第1電極を接地極として前記第2電極に前記ガスをプラズマ化するための高周波電力を供給する電力供給部と
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るプラズマ処理装置では、処理室内に処理対象物を配置した後、ガス供給部により第1電極と第2電極の間でプラズマとなるガス(プラズマ源ガス)を供給する。このプラズマ源ガスは、第1電極と第2電極の間に供給してもよく、或いは、第1電極に貫通孔を設け、第1電極の第2電極とは反対の側に供給してもよい。
【0011】
そして、第1電極を接地し、電力供給部により第2電極に高周波電力を供給して、プラズマ源ガスをプラズマ化する。全部又は一部がイオン化されたプラズマ源ガス(これをプラズマガスと呼ぶ)は、ガス供給源から供給されるプラズマ源ガスの後方圧力により第2電極に設けられた貫通孔を通じて処理対象物に向けて移動する。その際、この貫通孔において、第2電極に印加されている高周波電力の電位により、プラズマガス中のイオンは、一部が電荷(電子)を奪われ、或いは電荷(電子)を付与され、ラジカルとなる。これにより、処理対象物に照射されるイオンの一部がラジカルとなるため、処理対象物に対する滅菌等の所定の処理は行われる一方、処理対象物の温度上昇が低減或いは抑制される。
【0012】
ここで、第2電極の貫通孔は、その容積が、前記高周波電力の周波数及びプラズマガスに対応して、該プラズマガス中のイオンが共振する程度の大きさとなるようにすることが望ましい。
【0013】
こうすることにより、該プラズマガスがその貫通孔を通過する際にその中のイオンが貫通孔内に滞留しやすくなり、前記ラジカル化が促進される。
【0014】
前記貫通孔は第2電極に複数設けられていることが望ましい。これにより、前記ラジカル化の効率が高まり、より多くのイオンがラジカル化され、処理対象物に照射されるようになる。
【0015】
前記プラズマガスの一例として、水蒸気を挙げることができる。
【0016】
滅菌や洗浄を目的として本発明に係るプラズマ処理装置を用いる場合、このようにすることにより、仮にプラズマガスが処理対象物に残留したとしても、問題が無い。また、滅菌を目的とする場合には、プラズマガスをプラズマ化することにより生成されるOH-イオン及びそれがラジカル化されたOHラジカルが強い滅菌作用を有するため、効果的な滅菌処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るプラズマ処理装置では、処理対象物に照射されるイオンの一部がラジカルとなるため、処理対象物に対する所定のプラズマ処理は行われる一方、処理対象物の温度上昇が低減或いは抑制される。このため、耐熱性の低い処理対象物に対しても、プラズマ処理を行うことが可能となる。本発明に係るプラズマ処理装置が対象とする処理は、滅菌処理の他、様々な処理対象物に対する洗浄処理を含み、更には、エッチングや成膜等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態であるプラズマ滅菌装置の本体の断面及びそれに接続される各種周辺装置を模式的に示す図。
図2図1の実施形態のプラズマ滅菌装置の上部電極及び下部電極の拡大断面図。
図3】本発明に係るプラズマ処理装置の別の実施形態であるプラズマ滅菌装置の本体の断面及びそれに接続される各種周辺装置を模式的に示す図。
図4図3の実施形態のプラズマ滅菌装置の上部電極及び下部電極の拡大断面図。
図5】下部電極の拡大平面図。
図6】ハニカム状の電極(板)を作製するための一方法を示す説明図。
図7】処理対象物の滅菌処理を行う際のフローチャート。
図8】下部電極の貫通孔の大きさ、処理空間の圧力を様々に変えた場合のプラズマ生成の良否を調べた結果の表。
図9】様々な態様の下部電極の平面図であって、円貫通孔を稠密に配列したもの(a)、矩形網状にしたもの(b)、三角形貫通孔を稠密に配列したもの(c)、スリット状の貫通孔を配列したもの(d)、スリットの幅が規則的に変わる貫通孔を配列したもの(e)、十字形の貫通孔を規則的に配列したもの(f)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態であるプラズマ滅菌装置10について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
<1.プラズマ滅菌装置の構成>
図1は、本実施形態のプラズマ滅菌装置10の本体の断面及びそれに接続される各種周辺装置を模式的に示すものである。図1から明らかなように、本プラズマ滅菌装置10は平行平板型(容量結合型)プラズマ処理装置であり、密閉可能な筐体11内に設けられた処理台12の上部に、略平行に配置された2枚の電極(上部電極13及び下部電極14)を有する。上部電極13が前記第1電極に、下部電極14が前記第2電極に相当する。このうち、処理台12上に載置される処理対象物19に対向する下部電極14は、周囲が筐体11の周壁に絶縁体を介して接しており、筐体11内の上部空間を仕切っている。そして、下部電極14には多数の貫通孔141が穿孔されている。下部電極14については後に詳しく説明する。下部電極14よりも下の筐体11の側壁には、処理対象物19を装入し、取り出すための扉15が設けられている。筐体11内の下部電極14よりも下の空間を処理空間16と呼ぶ。
【0021】
筐体11の両電極13、14の間には、プラズマ源ガスを導入するための導入管31が設けられている。導入管31は水タンク32に接続されており、水タンク32と筐体11内の出口の間の導入管31にはヴェーパライザ(気化器)33、マスフローコントローラ34及びバルブ35がこの順に設けられており、これらがプラズマ源ガス供給部30を構成する。
【0022】
なお、図3及び図4に示すように、導入管31は筐体11と上部電極132の間に設けられてもよい。この場合は、導入管31から導入された水蒸気が拡散しつつ上部電極132と下部電極13の間の空間に均一に供給されるように、多数の貫通孔131を穿孔した上部電極132を用いる。
【0023】
筐体11の下方(すなわち、処理空間16の下方)には排気管41が設けられており、排気管41には開閉バルブ42及び排気ポンプ43が設けられている。これらが排気部40を構成する。
【0024】
2枚の電極のうち、上部電極13は接地され、下部電極14は高周波電源21に接続される。高周波電源21と下部電極14の間には、インピーダンスマッチングを行うためのマッチング部22が設けられている。
【0025】
筐体11の壁面には、処理空間16内の圧力を測定するための圧力計(P)51が、また、処理台12には、処理対象物19の温度を測定するための温度計(T)52が設けられている。
【0026】
プラズマ滅菌装置10にはまた制御部(CTRL)50が設けられており、これら圧力計51や温度計52等のセンサーからの信号を受け、予め与えられたプログラムに従って、上記プラズマ源ガス供給部30、排気部40や高周波電源21等の各部を制御することにより、処理対象物19の滅菌を行う。
【0027】
<2.下部電極の構成>
前述のとおり、下部電極14には多数の貫通孔141が穿孔されている(図2)。この貫通孔141は、図5に示すように、その平面形状を正六角形状とし、下部電極14内に貫通孔141を稠密に配列して(すなわち、ハニカム状として)、下部電極14全体中の貫通孔141の面積の割合をできるだけ大きくすることが望ましい。これにより、プラズマガスによる処理対象物19の滅菌処理の効率が向上する。
【0028】
このようなハニカム状の電極(板)は、金属製の板材に貫通孔141を穿孔することによって作製してもよいが、図6に示すように、細長い金属製の板を一定間隔で120度ずつ表裏に曲げた部品142を多数重ねることにより作製することができる。電極の金属としては、従来同様、アルミ、銅、銀等を用いることができる。
【0029】
下部電極14としては、このようなハニカム状のものの他、図9に示すような、円貫通孔を稠密に配列したもの(a)、矩形網状にしたもの(b)、三角形貫通孔を稠密に配列したもの(c)、スリット状の貫通孔を配列したもの(d)、スリットの幅が規則的に変わる貫通孔を配列したもの(e)、十字形の貫通孔を規則的に配列したもの(f) 等でもよい。貫通孔の形状をこれらの形状にすることにより、イオンがこの貫通孔に滞留する際の収容周波数帯を広げることができる。
【0030】
<3.プラズマ滅菌装置の動作>
本実施形態のプラズマ滅菌装置10を用いて処理対象物19の滅菌処理を行う際の流れを図7のフローチャートによって説明する。まず、筐体11の扉15を開け、処理対象物19を処理台12上に載置する(ステップS1)。そして扉15を閉め、排気部40により筐体11内を十分に排気する(ステップS2)。
【0031】
次にプラズマ源ガス供給部30により上部電極13と下部電極14の間の空間に水蒸気(H2O)を所定の流量で導入しつつ(ステップS3)、下部電極14に該流量の水蒸気をプラズマ化するための高周波電力を投入する(ステップS4)。これにより、上部電極13と下部電極14の間の空間の水蒸気はプラズマ化され、プラズマ化により生成したOH-やH+、H3O+等のイオン及び未だプラズマ化されていないH2O等が混合したプラズマガス18となる。プラズマガス18は導入管31から導入される水蒸気の圧力により順次、下部電極14の貫通孔141を通って処理空間16に送られ(図2)、処理対象物19に照射される。
【0032】
ここで、プラズマガス18が貫通孔141を通過する際、下部電極14から再度エネルギーを受け、水蒸気(H2O)のイオン乖離が進む。また、プラズマ化中の水素イオン(H+)は、多くが下部電極14(貫通孔141)の壁面等に衝突して消滅する一方、ヒドロキシイオン(OH-)は、下部電極14(貫通孔141)の壁面等に接触した際、下部電極14に印加されている高周波電圧によりそこに電子(e-)を放出し、中性のヒドロキシラジカル(OH*)となる。このヒドロキシラジカルは強力な滅菌作用を有するため、本実施形態のプラズマ滅菌装置10では処理対象物19に対して強力な滅菌処理を施すことができる。また、処理対象物19に照射されるプラズマガス18中のラジカルの割合が増えるため、イオンのみが照射される場合よりも処理対象物19の温度を上げることが少ない。
【0033】
こうして所定の時間だけ処理対象物19にプラズマガス18を照射した(ステップS5)後、高周波電力の投入及び水蒸気の導入を停止し、滅菌処理を終了する。なお、高周波電力の投入及び水蒸気の導入を停止した後も暫くは排気部40の動作を続け、筐体11内から殺菌性のガスを排出する。排出されるガスに対して適切な無害化処理が行われるのはもちろんである。終了処理が完全に終わった後、処理対象物19を筐体11内から取り出す(ステップS6)。
【0034】
<4.実施例>
処理対象物19を上記のような作用で十分に滅菌するためには、プラズマが安定して形成されなければならない。本プラズマ滅菌装置10では下部電極14に貫通孔141が設けられていることから、安定したプラズマ形成のための条件を探索することとした。
【0035】
使用したプラズマ滅菌装置10の下部電極14の大きさは338×648mm、厚さは10mmである。この下部電極14に様々な大きさの円形の貫通孔141を稠密に設けた。具体的には、貫通孔の直径Φを10、15、20、25、30、35、40mmとし、隣接する貫通孔間の距離dは全て2.5mmとした。貫通孔をそれらの大きさとした(そして隣接貫通孔間の距離dを2.5mmとした)場合の、各貫通孔の面積、下部電極の面積に対する貫通孔の面積率(開孔率)及び各貫通孔の容積を図8に示した。下部電極における貫通孔の開孔率は40~90%が好ましく、60~90%がより好ましい。各貫通孔の容積は100~20000mm3とするのが望ましく、100~15000mm3がより望ましい。
【0036】
そして、それぞれの下部電極14について、投入する高周波電力(周波数は13.56MHz)の大きさを300 W(0.136 W/cm2)に、両電極13、14間に導入する水蒸気の流量を20sccmに、それぞれ固定しつつ、排気部40による排気強さを変えることにより処理空間16内の圧力を50、80、90、120Paに変化させ、それぞれの場合のプラズマ生成の良否を目視により調べた。その結果を図8の表に示す。図8の表において、○はプラズマが安定して生成され、貫通孔141の中で高濃度に維持されている状態が継続したことを示す。このような状態が継続することにより、プラズマガスがやや長い時間貫通孔141内に滞留することができるため、プラズマガス中のイオンが比較的多くラジカルに変換されやすくなる。図8の表において、×はプラズマの生成が安定せず、プラズマガスが速やかに処理空間16の方に流出して、貫通孔141にはあまり滞留しない状態であったことを示す。△はプラズマガスが貫通孔141には滞留していたが、貫通孔141内での厚みが減少し、濃度が低い状態となっていたことを示す。
【0037】
貫通孔141内でのプラズマガスの滞留は、プラズマガス中のイオンの質量電荷比(m/z)と、下部電極14に印加される高周波電圧の周波数(f)と、貫通孔141の大きさ(径Φ又は容積V)に依存すると考えられる。本実施例の場合、プラズマガス中の主たるイオンはヒドロキシイオン(OH-)であるが、その場合には図8の表中の○となっている範囲の条件が滅菌等のプラズマ処理において有効に作用する条件であることがわかる。
【符号の説明】
【0038】
10…プラズマ滅菌装置
11…筐体
12…処理台
13、132…上部電極
14…下部電極
131、141…貫通孔
15…扉
16…処理空間
18…プラズマガス
19…処理対象物
21…高周波電源
22…マッチング部
30…プラズマ源ガス供給部
40…排気部
50…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9