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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】脆弱物把持用ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
B25J15/08 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020187838
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077147
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-11-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年10月10日に第38回日本ロボット学会学術講演会にて発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/フィジカル空間デジタルデータ処理基盤/サブテーマIIISociety5.0実現のための社会実装技術/CPS構築のためのセンサリッチ柔軟エンドエフェクタシステム開発と実用化、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】王 忠奎
(72)【発明者】
【氏名】川村 貞夫
(72)【発明者】
【氏名】平井 慎一
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-166121(JP,A)
【文献】実開昭63-169289(JP,U)
【文献】特開2019-136809(JP,A)
【文献】実開昭58-127100(JP,U)
【文献】特開2018-079550(JP,A)
【文献】特開2010-064169(JP,A)
【文献】特開2016-040057(JP,A)
【文献】特開2020-075305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0387678(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109623788(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源によって相互に離接近方向に往復動する2つの挟持枠体と、
該挟持枠体に前記離接近方向と直交する方向に伸縮自在となるように固定し、前記持枠体が互いに近接移動した際に載置面に載置した脆弱対象物を挟み込み把持する伸縮挟持部材と、
前記挟持枠体の下端に前記伸縮挟持部材と同方向に設け、前記脆弱対象物の底面に接する面積が大きくなるように横幅が広い薄帯状の掬い上げ部材と、
前記挟持枠体の接地時の衝撃を緩和する反力緩衝部材と、
を具備し、
前記薄帯状の掬い上げ部材は、前記持枠体の近接移動時に前記脆弱対象物の底面と前記載置面の間に滑り込んで掬い上げ、前記脆弱対象物を下方から支えることを特徴とする脆弱物把持用ロボットハンド。
【請求項2】
前記挟持枠体が、前記駆動源に固定された基幹枠と、該基幹枠の両側に下向きに固定された1対の支持柱を有する門型枠であることを特徴とする請求項1に記載の脆弱物把持用ロボットハンド。
【請求項3】
前記伸縮挟持部材が、記駆動源に固定された基幹枠と、該基幹枠の両側に下向きに固定された1対の支持柱間に両端を固定された複数の伸縮性糸状部材であることを特徴とする請求項1に記載の脆弱物把持用ロボットハンド。
【請求項4】
前記伸縮挟持部材が、記駆動源に固定された基幹枠と、該基幹枠の両側に下向きに固定された1対の支持柱間に両側を固定された伸縮性面状部材であることを特徴とする請求項1に記載の脆弱物把持用ロボットハンド。
【請求項5】
前記反力緩衝部材が、記駆動源に固定された基幹枠と、該基幹枠の両側に下向きに固定された1対の支持柱を前記基幹枠に対して下方へ付勢する弾性体であることを特徴とする請求項1に記載の脆弱物把持用ロボットハンド。
【請求項6】
前記反力緩衝部材が、記駆動源に固定された基幹枠と、該基幹枠の両側に下向きに固定された1対の支持柱の下部にその両端を固定されてなる板ばねであることを特徴とする請求項1に記載の脆弱物把持用ロボットハンド。
【請求項7】
前記板ばねが前記薄帯状の掬い上げ部材を兼ねることを特徴とする請求項6に記載の脆弱物把持用ロボットハンド。
【請求項8】
求項1乃至7のいずれか一項の脆弱物把持用ロボットハンドを用いたロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生牡蠣等の脆弱水産物等を把持することが出来る脆弱物把持用ロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から脆弱水産物のような柔らかくて壊れやすい食品は、容易に形状が変化するため、掴んでも形を変えて落ちてしまい、柔らかいものに適したハンドでも把持することは難しい。従来のものでは柔らかい素材でできたハンドが研究されているソフトグリッパがある(例えば、非特許文献1)。又、指ではなく脆弱対象物を一本の糸で取り囲んで把握し持ち上げるバインデイングハンドが考案されている(例えば、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Zhongkui Wang, Yuuki Torigoe, and Shinichi Hirai, A Prestressed Soft Gripper: Design, Modeling, Fabrication, and Tests for Food Handling, IEEE Robotics and Automation Letters, Vol.2, Issue 4, pp.1909-1916 2017.
【文献】Hisashi Iwamasa and Sinichi Hirai : “Binding of Food Materials with a Tension-Sensitive Elastic Thread”, Proc.IEEEE Int. Conf. on Robotics Automation, pp.4298-4303, 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、脆弱水産物のように柔らかくて壊れやすい食品は変形し滑りやすいので、柔らかいものに適したハンドでも把持することは難しいという問題点がある。又、一本の糸で取り囲んで把持し持ち上げるバインデイングハンドの場合には、脆弱水産物のような柔らかくて壊れやすい対象物の場合には、対象物を把持し難く且持ち上げにくいので、対象物を容器に入れたものを把持し持ち上げる必要があり、手数が掛かるという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その手段とするところは、駆動源によって相互に離接近方向に往復動する2つの挟持枠体と、該挟持枠体に前記離接近方向と直交する方向に伸縮自在となるように固定し、前記持枠体が互いに近接移動した際に載置面に載置した対象物を挟み込み把持する伸縮挟持部材と、前記挟持枠体の下端に前記伸縮挟持部材と同方向に設け、前記脆弱対象物の底面に接する面積が大きくなるように横幅が広い薄帯状の掬い上げ部材と、前記挟持枠体の接地時の衝撃を緩和する反力緩衝部材と、
を具備し、前記薄帯状の掬い上げ部材は、前記持枠体の近接移動時に前記脆弱対象物の底面と前記載置面の間に滑り込んで掬い上げ、前記脆弱対象物を下方から支えることを特徴とする脆弱物把持用ロボットハンドとしたことにある。
又、前記挟持枠体が、前記駆動源に固定された基幹枠と、該基幹枠の両側に下向きに固定された1対の支持柱を有する門型枠であることにある
更に、前記伸縮挟持部材が、前記駆動源に固定された基幹枠と、該基幹枠の両側に下向きに固定された1対の支持柱間に両端を固定された複数の伸縮性糸状部材であることにある。
更に又、前記伸縮挟持部材が、前記駆動源に固定された基幹枠と、該基幹枠の両側に下向きに固定された1対の支持柱間に両側を固定された伸縮性面状部材であることにある。
更に、前記反力緩衝部材が、前記駆動源に固定された基幹枠と、該基幹枠の両側に下向きに固定された1対の支持柱を前記基幹枠に対して下方へ付勢する弾性体であることにある。
また、前記反力緩衝部材が、前記駆動源に固定された基幹枠と、該基幹枠の両側に下向きに固定された1対の支持柱の下部にその両端を固定されてなる板ばねであることにある。
更に又、前記板ばねが前記薄帯状の掬い上げ部材を兼ねることにある。
更に、前記の脆弱物把持用ロボットハンドを用いたロボットであることにある。
【発明の効果】
【0006】
以上の構成からなるこの発明の脆弱物把持用ロボットハンドによると、脆弱水産物のような柔らかくて壊れやすい食品などの把持対象物を掴んで移動させる場合には、空中を移動する状態から2つの挟持枠体の中間に把持対象物が位置するように載置面に着地するが、その際にロボットアームの下降速度の制御にムラがあっても挟持枠体などの機器が破損しないように反力緩衝部材によって着地時の損傷が回避できる。着地後に駆動源によって2つの挟持枠体が相接近してその中間にある把持対象物を挟むが、双方の伸縮挟持部材が相接近するに従って把持対象物が硬くなったところよりも柔らかいところを伸縮挟持部材が押さえにかかるために把持対象物全体を包み込むことが出来る。
【0007】
同時に薄帯状の掬い上げ部材が把持対象物の下面と載置面との間に両側から潜り込むので、ロボットアームの上昇により把持対象物が持ち上げられる際には、把持対象物の側面や上面だけを伸縮挟持部材で囲むのではなく、底面をも同時に持ち上げるので、型崩れし易い把持対象物であっても容易に移動できる。
【0008】
又、伸縮挟持部材が複数の伸縮性糸状部材である場合には、隙間が多く出来るので、突起があるもの、不定形なものや硬めの把持対象物に好適に用いることが出来る。伸縮挟持部材が伸縮性面状部材である場合には、より脆弱なもの、小型のもの、外形が滑らかなもの、滑りやすいものなどの把持対象物に適している。伸縮性糸状部材と伸縮性面状部材とを混合して用いても良い。衝撃緩衝部材が支持柱を基幹枠に対して下方へ付勢する弾性体である場合には、挟持枠体全体を均一に緩衝出来るので、装置の長寿命化を図ることが出来る。衝撃緩衝部材が板ばねである場合には、薄帯状の掬い上げ部材と兼用できるので、装置全体の簡略化を図ることが出来る。
【0009】
このような脆弱物把持用ロボットハンドを取り付けたロボットアームを具備するロボットであると、弁当工場などの生産数が多い食品工場などにおいて人手不足解消のために有効に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】脆弱物把持用ロボットハンドの実施形態の全体斜視図
図2】脆弱物把持用ロボットハンドの他の実施形態の全体斜視図
図3図1の実施形態で脆弱対象物を挟み込んだ状態の全体斜視説明図
図4】脆弱対象物を挟み込んだ状態の他の実施形態の全体斜視説明図
図5】移動体に取付けた脆弱物把持用ロボットハンドの他の実施形態の全体斜視図
図6】掬い上げ部材の両端に衝撃緩和部材取付けた斜視図
図7図6の緩衝緩和部材を取付けた脆弱物把持用ロボットハンドの他の実施形態の下方からの全体斜視図
図8】脆弱対象物を挟み込んだ状態の縦断面説明図
図9図8の脆弱対象物を挟み込んだ状態の底面図
図10】ロボットアームに取付けた概略図
図11図1の実施形態を下方斜めから目視した図
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の脆弱物把持用ロボットハンド1は、図1に良く現れているように、空気圧の吸排によって左右方向に駆動する駆動源2である空気圧アクチュエーターが内蔵された本体3の下方位置に、前記駆動源2によって駆動する移動体21によって互いに離接近する方向に移動する2つの挟持枠体4が設けられている。この挟持枠体4が直線的に移動する離接近方向と直交する方向に伸縮挟持部材5が挟持枠体4に固定されている。そして、この挟持枠体4の下端431には前記伸縮持部材5の張り方向と同方向に薄帯状の掬い上げ部材6が固定され、更に、前記挟持枠体4には挟持枠体4の着地時の衝撃を緩和するために反力緩衝部材7が設けられている。又、この挟持枠体4は、図10に示すように、本体3がロボットアームCに接続されている場合には、図外の制御装置を介してロボットアームCを上下動制御することで上下動出来るようになっている。しかし、本体3の内部に図外の昇降装置を設けるようにして、ロボットアームCと共に又は単独で上下動できるようにしてもよい。
【0012】
前記駆動源2は空気圧アクチュエータ―以外の電気や磁気等を利用して駆動するものであっても良く特に限定されるものではない。駆動源2の駆動は、制御装置によって脆弱対象物Aの載置面B上の位置や挟持枠体4による挟み込み状態などを図外の感知装置で感知した情報を基にして、停止、左右方向即ち相接近離反方向への駆動、下降又は上昇などの上下方向駆動が制御されている。これらの駆動機構は本体3の内部に収納されているが、既知の技術を使用したものであるのでその説明を省略する。
【0013】
前記挟持枠体4は、前記駆動源2に連結されて直線方向に離接近するように本体3の下方に設けてあるレール8にガイドされながら移動するもので、前記駆動源2の移動体21
に連結固定される連結材41と、該連結材41に中間部上方を固定されて長手方向が前記移動体21の移動方向と直交するように吊り下げられる基幹枠42と、該基幹枠42の両端を突き抜けて上下動自在に支持される支持柱43を具備している。前記移動体21と連結材41とはねじ9によって着脱自在に固定されている。又、前記支持柱41には下端431が脆弱対象物Aの載置面Bに当接した際の衝撃を緩和するための衝撃緩衝部材7としてのコイルばね71が支持柱43に外嵌している。そして、このコイルばね71の上端は基幹枠42の下面に当接しており、下端は支持柱43の前記伸縮挟持部材5を固定する取付部431の上端に当接しているので、支持柱43は基幹枠42に対して下方へ常時付勢されていることからこれを所定位置で係止するためのストッパーとしての係止ねじ433が基幹枠42上方に位置に回転により上下動可能に螺合して設けられている。
【0014】
前記伸縮持部材5は、図1に示す実施形態では、伸縮自在な糸状部材51の集合からなるもので、前記基幹枠42の両端部を突き抜けて上下動自在に支持されている一対の支持柱43に両端部が係止されてなるものである。支持柱43への糸状部材51の係止の仕方は特に限定されるものではないが、一本の長い糸状部材51を一対の支持柱43の取付部432に順次巻回して上下方向に糸状部材51が張られて行くようにしても良い。一対の取付部432の内側に一本ずつ上下方向にその両端を固定するようにして張ってもよい。これら糸状部材51の上下間隔は特に限定されるものではなく、脆弱対象物Aの種類により定めれば良い。又、糸状部材51の太さや引っ張り強度更には表面の軟硬の度合いなどと同様に脆弱対象物Aの種類により定められる。更には、脆弱対象物Aに当接して挟持する割合が高い取付部432の中央部に位置する糸状部材51を伸び易い材質のものとし、上方或いは下方に位置する糸状部材51を伸び難い材質のものとするなど、取付位置よって糸状部材51の物理的特性を変えたものを使用するようにしてもよい。糸状部材51としてシリコン糸が好適に使用できる。
【0015】
また、前記伸縮持部材5は、図2に示すように、軟弱シート部材52として、その横方向の両端部を取付部432に固定するものであってもよい。軟弱シート部材52としては、合成樹脂薄シート、合成樹脂膜、繊維を縦横或いは斜め方向に編み込んだ網状部材、不織布、布地などが挙げられる。
【0016】
前記薄帯状の掬い上げ部材6は、図1~11の全ての図に現れているが特に図4,8,9に良く現われているように、前記持枠体4が互いに相接近移動した際に脆弱対象物Aの底面と当該脆弱対象物Aのコンベア表面などの載置面Bとの間に生じる摩擦力に抗して滑り込んで脆弱対象物Aを掬い上げる際に有用な部材であって、硬質合成樹脂製の薄帯状の部材が好適に使用できるが、ステンレスなどの金属製の薄板であってもよい。そして、その両端部は持枠体4の下端431でもある一対の支持柱43の下面に固定されており、下降時には載置面Bに全体が接面する。掬い上げ部材6の横幅は広い方が脆弱対象物Aの底面に接する面積が大きくなるので掬い上げ易くなるが、支持柱43の下端431の幅を合わせるように大きくできない場合には、図2に示すように、内側へ突出した取付片61を設けて掬い上げ部材6の長手方向の一方の横縁を互いに向かい合う内側へ突出させるようにしてもよい。掬い上げ部材6の裏表両面は載置面Bや脆弱対象物Aの底面と摺動するので、滑りやすい面に形成しておくのが好ましい。その厚さも出来るだけ薄くなるように成形しておくことが望まれるので、このような条件に適合する材質として前述した硬質合成樹脂板、金属製薄板の薄帯状のものが好適に使用される。
【0017】
前記衝撃緩衝部材7の図1に示す実施形態においては、コイルばね71を用いる例を説明したが、このコイルばね71に代えて、前記掬い上げ部材6と兼用できる板ばね72を使用した他の実施形態を図5に示す。この他の実施形態においては、図に良く現われているように、支持柱43の下端431に溶接などで取付固定するステンレスなどの金属製からなる掬い上げ部材6の両端部721の部分を180度湾曲させてばね機構を持たせたものである。これによって、本体3の下降によって持枠体4の下端431が載置面Bに着面した際の衝撃は板ばね72の湾曲部におけるクッション作用によって吸収緩和でき、本体3に収納されている機器類などへの悪影響を防止できる点においてコイルばね71を用いた衝撃緩衝材7と同じ衝撃緩衝効果を得られる。且つ、金属製の薄帯状若しくは薄板状であるので掬い上げ部材6としての使用が可能である。この掬い上げ部材6の場合には基幹枠42の両端の支持柱43は上下動する必要がないので固定されている。この実施形態では、金属製の薄帯状の掬い上げ部材6の両端部を湾曲させてクッション作用を得るとしたが、掬い上げ部材6の中央部分を下方に湾曲させた構造としてもよく、この場合には、クッション作用後に持枠体5に常時一定の下方への圧力をかけるようにして脆弱対象物Aの底面と載置面Bの間に掬い上げ部材6が侵入し易いように平らな直線状態にしておく必要がある。このような板ばね72の場合には、支持柱43を基幹枠42に対して上下動自在となる構造にする必要がないので、装置自体の構造が簡素化される利点がある。
【0018】
掬い上げ部材6の両端に板バネ73を使用した更に他の実施態様を図6に示す。この実施態様は同図に示すように、支持柱43の2つの下端431と掬い上げ部材6の両端の間に板バネ73を介在させて、衝撃緩和部材7とした例である。この板バネ73は掬い上げ部材6と同じ弾力性のある材質のものを使用して両端を屈曲させて作成したものであっても、別途部品として製作したものを下端431と掬い上げ部材6の両端上面の間に固定具等で連結して介在させたものであっても良い。この実施形態においては、支持柱43の下端が載置面Bに載置した時の衝突をこの板バネ73によって緩衝出来るので、他の機材への衝撃伝達が緩和される。なお、この実施形態における板バネ73に代えてコイルばねなど他の弾性体等を使用しても良い。
【0019】
なお、以上の構成の脆弱物把持用ロボットハンド1は、脆弱対象物Aを両側から挟んでかつ底面に掬い上げ部材6を潜り込ませるところに特徴があるのでその構成について説明をしたが、実際の食材配置作業等の使用時においては、このようにして把持した脆弱対象物Aを所定位置へ移動しなくてはならないので、上昇移動、回転移動、水平移動させなければならないが、図10に示すように、この動作はこの脆弱物把持用ロボットハンド1を取り付けているロボットアームCの動作によって行われるので説明を省略している。
【0020】
以上の構成からなるこの発明の脆弱物把持用ロボットハンド1の使用動作について、脆弱対象物Aが移動しているコンベヤ搬送表面、台に置かれたトレイ上面などの載置面Bにあり、それを掴んで弁当の所定位置へ置く作業をする場合について説明する。コンベアによる場合には常時搬送されているのでその移動に追従するようにロボットアームCによって制御されて事実上、載置面Bは静止しているものとする。
【0021】
図10に示されるように、ロボットアームCの先端に取付けられた脆弱物把持用ロボットハンド1が、図外の感知装置によって載置面B上の所定位置に脆弱対象物Aが存在することを確認すると、その位置情報に基づき一対の持忰体4の伸縮持部材5の間に当該脆弱対象物Aが僅かな間隔を開けて嵌まり込むように移動させる。この時感知装置は同時に脆弱対象物Aの平面視での縦横幅の測定を行い2つの持枠体4の間隔距離と載置面B上への掬い上げ部材6の接面位置を計算しておりこの情報に基づいてロボットアームCが本体3の移動を制御されて作動している。本体3の上下移動はロボットアームCに代えて本体3に昇降装置を設けて行ってもよい。持枠体4の下端431のこの接面時に発生する衝撃は衝撃緩和部材7によって吸収されて本体3へは衝撃は伝達されなく、装置全体の保全が図られている。
【0022】
次に、駆動源2の移動体21が作動して、持枠体4が互いに接近する方向に移動すると、伸縮持部材5が脆弱対象物Aを両側から挟み込む。同時に、掬い上げ部材6が脆弱対象物Aの底面と載置面Bの間に両側から滑り込む。伸縮持部材5は脆弱対象物Aの側面に当接するのみならず、図8に示すように、持枠体4が相接近するに従ってその上方側外周囲や下方側外周囲にまで当接するに及び全体を囲い込むので脆弱対象物Aを下から支える機能を有し、移動搬送時に落下や型崩れを防止できる。持枠体4の相接近するにつれて、図8図9に示すように、掬い上げ部材6も脆弱対象物Aの底面の両側と載置面Bの間から入り込む。持枠体4の互いに接近する方向への移動は、持枠体4が相向かい合う面が当接する迄であっても弱対象物Aへの当接圧力が一定以上に達した場合には移動体21は自動的に停止するように制御されている。
【0023】
上記のように持枠体4が脆弱対象物Aの外周囲全体を包み終えたことを感知装置が感知すると、ロボットアームCが持ち上がるか、もしくは本体3に昇降装置がある場合にはこれによって持ち上がり、脆弱対象物Aは載置面Bから離れてロボットアームCによって所定の場所に搬送され載置されている。例えば、脆弱対象物Aが卵焼きであってこれを多数並べられている弁当のおかず入れの所定箇所へ運び載置する場合などである。載置し終えられると、前記とは逆に一対の持枠体4が互いに離反する方向に移動して脆弱対象物Aから伸縮持部材5及び掬い上げ部材6を離反させてから空の状態で持ち上げられ次の脆弱対象物Aを掴む位置へと移動させられる。このような動作を順次繰り返し行われることによって脆弱対象物Aの掴み、移動、載置の動作を繰り返して行われ、従来、作業者が手作業で行ってきている作業をロボットに行わせることができるのである。
【0024】
脆弱対象物Aの物体全体の硬軟、外形状の大きさ等の特徴、外面の状態などの種々の要因によって、持枠体4の強度や大きさ、伸縮持部材5の糸状部材51の太さ、取付間隔距離、伸縮強度、軟弱シート部材52の厚さ、材質などを変える場合には、移動体21と持枠体4の連結材41を連結固定しているねじ9を外すことによって付替えが自在に出来るので応用範囲が広い。又、更なる本発明の効果について述べれば、掬い上げ部材6が脆弱対象物Aを掬い上げることが出来るので、側面からの把持のみでは難があった脆弱対象物Aを把持できる。又、糸や膜は柔軟性を保つために、脆弱対象物Aを包み込むように把持できる。更に、脆弱対象物Aを上下左右の全面から囲んで把持出来る。又、糸、薄板、薄膜など比較的細い又は薄い部材を用いているので、脆弱対象物A間の隙間が小さくても対象物の把持が可能となり狭い場所での利用可能性があることから応用範囲が拡大する。又、衝撃緩衝部材7によって衝突時の衝撃を軽減する機構を持つので、脆弱対象物Aの載置面Bと基幹枠42の下端431の接面時における接触も問題が生じない。
【0025】
(実験例)この発明の脆弱物把持用ロボットハンド1を用いて、脆弱対象物Aを把持した際の実験結果を表1に示す。〇印は把持に成功し所定位置への移動も成功した場合、△印は把持に成功したが移動途中に落下するなどして所定位置への移動が完了しなかった場合、X印は把持に失敗した場合をそれぞれ示す。
【表1】
(実験結果)表1から、概ね掬い込みによる安定した把持が可能であることが判る。ハンバーグやカラアゲのように比較的大きさのある対象物にたいして、バインディングの効果が高く、安定した把持が可能であることが判る。又、ハンバーグやカラアゲは載置面Bに対してなめらかではないために、掬い込みし易いことも把持に良い影響を与えていることが判る。しかし、卵焼きの場合は、掬い上げ部材が対象物の底面の下に入り込まず、対象物の側面を挟み込むことが失敗の原因であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、食品や水産物など、とくに薄くて滑りやすい脆弱物をロボットでハンドリングできるために、種々の脆弱な食品を取り扱う種々の分野において利用できる。例えば、弁当のおかず詰め作業、瀬戸物などの割れやすい容器に料理物が入っているものの配膳作業等である。更には、ガラス細工品、果物、野菜などの農産物の運搬のための箱詰めなどにも有効に利用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 脆弱物把持用ロボットハンド
2 駆動源
21 移動体
3 本体
持枠体
41 連結材
42 基幹枠
43 支持柱
431 下端
432 取付部
433 係止ねじ
5 伸縮持部材
51 糸状部材
52 軟弱シート部材
6 掬い上げ部材
7 衝撃緩和部材
71 コイルばね
72 板ばね
721 両端部
73 板ばね
8 レール
9 ネジ
A 脆弱対象物
B 載置面
C ロボットアーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11