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  • 特許-振動発生装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】振動発生装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
G01M7/02 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020196128
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084327
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593040391
【氏名又は名称】エミック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】田口 敏紀
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-127780(JP,A)
【文献】米国特許第04489612(US,A)
【文献】特開2004-286544(JP,A)
【文献】特開2014-052337(JP,A)
【文献】実開平03-027336(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/00 - 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1振動台と、
前記第1振動台を振動させる加振部と、
前記第1振動台の振動方向に直交する軸周りに回動可能に前記加振部を支持する支持部と、
前記加振部の回動に応じた向きを、前記第1振動台の振動方向が略鉛直方向になる向きと略水平方向になる向きとに、選択的に切り替える切替部と、
上向きの台であって、当該台を支える台座部に対して略水平方向に移動自在に設けられた第2振動台と、
を備え、
前記第1振動台は、
略鉛直方向に振動させる供試体を固定するための治具が着脱可能な平面部と、
前記平面部に設けられ、前記切替部により振動方向が略水平方向に切り替えられた状態で前記第2振動台の縁部が嵌り込む溝部と、
を有する
振動発生装置。
【請求項2】
前記第2振動台の前記縁部と当該縁部が嵌まり込む前記溝部を有する前記第1振動台とには、前記溝部に挿し込まれた前記縁部を固定するボルトが、前記第2振動台および前記平面部の両方に対して斜め方向に、挿し込み可能な孔が設けられている
請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記第1振動台は、前記加振部が前記第1振動台を振動させる方向に軸方向を一致させた円柱状の外観を有
請求項1に記載の振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動試験の試験対象物である供試体を振動させる振動発生装置が知られている。例えば、特許文献1,2に記載された振動発生装置は、供試体を略鉛直方向に往復させる振動試験と略水平方向に往復させる振動試験とに兼用されるものである。
【0003】
このような振動発生装置においては、振動台を振動させる加振部が、その振動方向に直交する軸周りに回動可能に設けられている。また、これらの振動発生装置は、水平移動が自在な水平振動台を備えている。水平振動台は、回動により振動方向を略水平方向に向けられた加振部に、水平振動台の連結専用のジョイントを介して連結されることにより、略水平方向に振動する。また、このような振動発生装置においては、略鉛直方向の振動試験の供試体は、専用の治具を介して、加振部に取り付けられる。
【0004】
上述のような振動発生装置による振動方向の切り替えにあたっては、加振部と水平振動台との連結/連結解除だけでなく、加振部への治具や専用ジョイントの着脱・交換にも、手作業を要している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4223372号公報
【文献】特許第4171594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
振動発生装置の振動方向の切り替えにあたって手作業が多いと煩雑である。さらに、振動試験装置の型が大きいほど、治具やジョイントも大きく重くなるため、作業の困難さが増す。また、自動化を見据えると、手作業に依存した作業箇所を減らしておくのが好適である。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、振動発生装置の振動方向の切り替えに要する手作業を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る振動発生装置は、第1振動台と、加振部と、支持部と、切替部と、第2振動台とを備える。加振部は、前記第1振動台を振動させる。支持部は、前記第1振動台の振動方向に直交する軸周りに回動可能に前記加振部を支持する。切替部は、前記加振部の回動に応じた向きを、前記第1振動台の振動方向が略鉛直方向になる向きと略水平方向になる向きとに、選択的に切り替える。第2振動台は、上向きの台であって、当該台を支える台座部に対して略水平方向に移動自在に設けられている。前記第1振動台は、平面部と、溝部と、を有する。平面部は、略鉛直方向に振動させる供試体を固定するための治具が着脱可能である。溝部は、前記平面部に設けられ、前記切替部により振動方向が略水平方向に切り替えられた状態で前記第2振動台の縁部が嵌り込む。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る振動発生装置は、振動方向の切り替えに要する手作業を減らすことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る振動発生装置の概略的な右側面図である。
図2図2は、振動発生装置の概略的な平面図である。
図3図3は、第2の使用形態での振動発生装置の概略的な右側面図である。
図4図4は、第2の使用形態での振動発生装置の概略的な平面図である。
図5A図5Aは、常設ジョイントの概略的な平面図である。
図5B図5Bは、常設ジョイントの概略的な正面図である。
図5C図5Cは、常設ジョイントの概略的な右側面図である。
図5D図5Dは、常設ジョイントの概略的な縦断左側面図である。
図6図6は、実施形態の変形例に係る常設ジョイントの概略的な縦断左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る振動発生装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態は、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものも含む。
【0012】
まず、実施形態に係る動電式の振動発生装置1の全体構成について説明する。図1は、実施形態に係る振動発生装置1の概略的な右側面図である。図2は、振動発生装置1の概略的な平面図である。以下の説明の便宜のため、X軸、Y軸、及びZ軸から構成される直交座標系を、各図に添える。図中、矢印の指し示す方向が正方向で、その逆が負方向である。X軸方向は、振動発生装置1の幅方向である。Y軸方向は、振動発生装置1の奥行き方向である。Z軸方向は、振動発生装置1の高さ方向である。
【0013】
振動発生装置1は、加振部111、支持部112、軸113、連結部114,115(図2,4参照)、空気ばね116、切替部120、常設ジョイント150、定盤190、水平振動台310、定盤390等を備えている。定盤190および定盤390は、台座部の一例である。本実施形態の定盤190と定盤390とは別体であるが、実施にあたっては一体に構成されていても構わない。
【0014】
常設ジョイント150は、第1振動台の一例である。加振部111は、常設ジョイント150を、略一定方向に振動させる。加振部111が振動を発生させる方式はコイル等を用いる周知のものであるので、詳細な説明を省略する。
【0015】
本実施形態の常設ジョイント150は、加振部111と別体の部材であって、加振部111に着脱可能(交換可能)なものであるが、実施にあたっては、第1振動台が加振部111に一体に設けられていても構わない。
【0016】
供試体を略鉛直方向に往復させる振動試験(鉛直振動試験)に際しては、常設ジョイント150に、治具200が取り付けられる。この鉛直振動試験に適する使用形態(図1および図2に示す)を、第1の使用形態とする。
【0017】
また、供試体を略水平方向に往復させる振動試験(水平振動試験)に際しては、第1の使用状態から加振部111が約90°倒されて、常設ジョイント150が水平振動台310と連結される。この水平振動試験に適する使用形態を、第2の使用形態とする。図3は、第2の使用形態での振動発生装置1の概略的な右側面図である。図4は、第2の使用形態での振動発生装置1の概略的な平面図である。
【0018】
水平振動台310は、第2振動台の一例である。水平振動台310は、上向きの平面部311を有する台であって、当該台を支える定盤390に対して略水平方向に移動自在に設けられている。水平振動台310の加振部111に近い側の縁部312は、平面部311を有する部分から突出し、所定の厚さの板状の形状を有している。
【0019】
ここで、説明の便宜のため、X´軸、Y´軸、及びZ´軸から構成される第2の直交座標系が、図1~4にさらに添えられている。図中、矢印の指し示す方向が正方向で、その逆が負方向である。X´軸方向は、加振部111及び常設ジョイント150の幅方向である。Y´軸方向は、加振部111及び常設ジョイント150の奥行き方向である。Z´軸方向は、加振部111及び常設ジョイント150の高さ方向である。鉛直振動試験時、第2の直交座標系X´Y´Zは、直交座標系XYZと一致する。水平振動試験時、第2の直交座標系X´Y´Zは、直交座標系XYZを、X軸回りに約90°回転させた状態となる(図3,4参照)。
【0020】
支持部112は、定盤190に立てられた一対の側板であって、YZ平面に略平行に設けられている。軸113は、X軸およびX´軸に略平行に設けられている。支持部112は、軸113周りに回動可能に、加振部111を支持する。
【0021】
連結部114,115および空気ばね116は、加振部111と支持部112とを、軸113に略直交する略一定方向に沿って弾性的に相対移動可能に、連結する。当該連結のための構造を次に説明する。
【0022】
軸113は、連結部114に取り付けられている。また、軸113は、支持部112に回転自在に支持されている。これにより連結部114は、支持部112に対して回転自在である。
【0023】
連結部115は、加振部111に固定されている。連結部114と連結部115とは、軸113に略直交する略一定方向に相対移動可能に、連結されている。当該移動方向は、加振部111による常設ジョイント150の振動方向に合わせられている。さらに、連結部114と連結部115との間には、空気ばね116が介在している。これにより、連結部114と連結部115との相対移動は、弾性的である。
【0024】
このように、連結部114,115および空気ばね116を介して加振部111と支持部112とが連結されていることにより、加振部111は支持部112に対して軸113に略直交する一定方向に弾性的に移動可能となっている。空気ばね116は、加振部111の振動の定盤190以下への伝達を防ぐ。
【0025】
なお、空気ばね116の作用は、加振部111の振動方向が略水平方向に切り替えられた状態(第2の使用形態)においては無用であるので、第2の使用形態においては、空気ばね116は、所定の位置に固定される。
【0026】
切替部120は、加振部111の回動に応じた向きを、常設ジョイント150の振動方向が略鉛直方向になる向きと略水平方向になる向きとに、選択的に切り替える。当該切り替えのための構造を次に説明する。
【0027】
切替部120は、ギヤ121,122、チェーン123、およびハンドル126等を備えている。ギヤ121の回転軸は軸113と一致していて、ギヤ121が回転すると軸113が回転し、加振部111が回転する。チェーン123は、ギヤ122からギヤ121に、動力を伝達する。ギヤ122の回転軸124には、切替部120がさらに備える不図示のギヤによって、回転軸125の回転が伝達される。回転軸125には、ハンドル126が連結されている。オペレータは、ハンドル126を把持して回転軸125を回すことにより、軸113を回転させることができる。
【0028】
さて、図5Aは、常設ジョイント150の概略的な平面図である。図5Bは、常設ジョイント150の概略的な正面図である。図5Cは、常設ジョイント150の概略的な右側面図である。図5Dは、常設ジョイント150の概略的な縦断左側面図である。常設ジョイント150は、振動時に応力集中が起こりにくい円柱状の外観を有している。加振部111は、常設ジョイント150の外観がなす円柱形状の軸方向に一致する方向に、常設ジョイント150を振動させる。
【0029】
常設ジョイント150は、治具200が着脱可能な平面部151と、平面部151の中央部に設けられた溝部152と、平面部151に多数形成されたねじ穴153と、溝部152内に複数並列して設けられたねじ穴154と、円筒状の側面部155と、を有する。ねじ穴153の軸方向は、平面部151に対して略垂直である。また、ねじ穴154の軸方向は、平面部151に対して斜め方向である。
【0030】
治具200は、略鉛直方向に振動させる供試体を固定するためのものであって、供試体に応じて、大きさや形状が設計され、作成される。治具200は、ねじ穴153に対応するボルトによって、平面部151に固定される。
【0031】
溝部152は、切替部120により振動方向が略水平方向に切り替えられた状態で、水平振動台310の加振部111に近い側の縁部312が嵌り込むものである。当該縁部312の厚さは、溝部152の幅と略同じ程度である。また、縁部312には、ボルトが斜めに挿し込まれるざぐり孔313が、複数並列して設けられている。溝部152に挿し込まれた縁部312は、ねじ穴154に対応するボルトによって、固定される。なお、ボルトの挿し込み方向は、平面部311の上から斜め下に向かう方向であって、縁部312の内側から外側に向かう方向である。これにより、ボルト着脱時の良好な作業性の確保が可能となる。
【0032】
以上のような構成の振動発生装置1において、鉛直振動試験を行う場合には、図1および図2に示す第1の使用形態にて稼働させる。すなわち、加振部111は、自身による常設ジョイント150および治具200の加振方向が略鉛直方向に沿うよう設置された状態で、稼働される。
【0033】
次に、上記振動発生装置1において水平振動試験を行う場合には、図3および図4に示す、加振方向が略水平方向に向けられた第2の使用形態にて、稼働させる。上記第1の使用形態から第2の使用形態への変更に際しては、常設ジョイント150からの治具200の除去と、切替部120による加振部111の加振方向の変更(加振部111を約90°倒す)と、常設ジョイント150と水平振動台310とのボルト締結と、が行われる。
【0034】
また、第2の使用形態から第1の使用形態に戻されるときには、上記手順の逆を行う。すなわち、水平振動台310と常設ジョイント150とを締結するボルトの除去と、切替部120による加振部111の加振方向の変更(加振部111を約90°起こす)と、常設ジョイント150への適切な治具200の取り付けと、が行われる。
【0035】
このように、本実施形態によれば、従来のような水平振動台連結専用のジョイントに代えて、常設ジョイント150を使用し、治具200も水平振動台310も常設ジョイント150により連結できる。これにより、振動方向の切り替えに際し、常設ジョイント150を着脱する工程がなくなる。このため、手作業を要する工程を減らすことができ、すなわち、自動化しやすくすることができる。
【0036】
従来の振動発生装置では、水平振動台310と加振部111との連結には専用のジョイントを用いていた。当該ジョイントは、上記実施形態の常設ジョイント150のような円柱状でなく例えば山型であるために治具200の取付不可で、治具200使用時には取り外されていた。これに対し、本実施形態の振動発生装置1では、水平振動台310を加振部111に連結する常設ジョイント150は、治具200を取付可能な平面部151を有する円柱状であるので、常設ジョイント150の着脱工程を削減できる。
【0037】
また、常設ジョイント150は、本実施形態においては加振部111に対して着脱自在な構成としているが、上述のように振動方向の切り替えにあたって着脱工程を要しないので、実施にあたって加振部111に一体的に設けられていても構わない。
【0038】
(変形例)
図6は、図5Dに示す常設ジョイント150の変形例である、常設ジョイント150Aの概略的な縦断左側面図である。当該変形例に係る常設ジョイント150Aは、ねじ穴154が平面部151に対して略垂直に設けられている点で、上記実施形態における常設ジョイント150と異なっている。このようなねじ穴154とボルトとの締結によって、常設ジョイント150と水平振動台310とが連結される構造であっても構わない。なお、このような向きのねじ穴154の場合には、水平振動台310の縁部312に設けられるざぐり孔313も、上記実施形態のものと異なる形状に形成される。詳しくは、ざぐり孔313は、ねじ穴154にねじ込まれるボルトの長手方向が平面部311に略平行に向いた状態でボルトの頭部を操作可能な程度に形成される。
【符号の説明】
【0039】
1 …振動発生装置
111…加振部、112…支持部、113…軸、114,115…連結部
120…切替部
121,122…ギヤ、123…チェーン、124,125…回転軸、126…ハンドル
150,150A…常設ジョイント
151…平面部、152…溝部、153,154…ねじ穴、155…側面部
190…定盤
200…治具
310…水平振動台、311…平面部、312…縁部、313…ざぐり孔
390…定盤
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6