(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】台車
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
B62B5/00 C
(21)【出願番号】P 2021019676
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】春日 一輝
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190110(JP,A)
【文献】特開2018-158650(JP,A)
【文献】特開2019-51932(JP,A)
【文献】特開2017-132309(JP,A)
【文献】特開2020-116997(JP,A)
【文献】特開2014-184801(JP,A)
【文献】特開平7-329530(JP,A)
【文献】特開平9-315315(JP,A)
【文献】特開平11-171021(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2263684(GB,A)
【文献】独国特許発明第102013107453(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00- 5/08
B60D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視四角形の台盤における縦方向の一端部から前記縦方向に突出しかつ、先端部が下方に屈曲して下向突部になっている連結部材と、
前記台盤の前記縦方向の他端部に形成されて、他の台車の前記下向突部が係合する突部受容部とを有して、複数台連結可能な台車において、
前記台盤の他端部の壁部を前記縦方向又は斜め縦方向に貫通して、前記突部受容部に前記下向突部を係合させるときに前記連結部材が通過する貫通孔を備え
、
前記連結部材が前記台盤の上面から突出しない状態を維持して、前記連結部材が前記貫通孔を通過可能でありかつ前記下向突部が前記突部受容部に係合可能である台車。
【請求項2】
平面視四角形の台盤における縦方向の一端部から前記縦方向に突出しかつ、先端部が下方に屈曲して下向突部になっている連結部材と、
前記台盤の前記縦方向の他端部に形成されて、他の台車の前記下向突部が係合する突部受容部とを有して、複数台連結可能な台車において、
前記台盤の他端部の壁部を前記縦方向又は斜め縦方向に貫通して、前記突部受容部に前記下向突部を係合させるときに前記連結部材が通過する貫通孔を備え、
前記貫通孔の内側上面には、前記縦方向で前記突部受容部に近づくに従って下る第1傾斜部が備えられている台車。
【請求項3】
平面視四角形の台盤における縦方向の一端部から前記縦方向に突出しかつ、先端部が下方に屈曲して下向突部になっている連結部材と、
前記台盤の前記縦方向の他端部に形成されて、他の台車の前記下向突部が係合する突部受容部とを有して、複数台連結可能な台車において、
前記台盤の他端部の壁部を前記縦方向又は斜め縦方向に貫通して、前記突部受容部に前記下向突部を係合させるときに前記連結部材が通過する貫通孔を備え、
前記連結部材は、上下に傾動可能に支持され、
前記貫通孔の内側下面には、前記縦方向で前記突部受容部に近づくに従って昇る第2傾斜部が備えられている台車。
【請求項4】
前記第2傾斜部と前記突部受容部との間には、前記突部受容部に向かって下る第3傾斜部が備えられている請求項
3に記載の台車。
【請求項5】
平面視四角形の台盤における縦方向の一端部から前記縦方向に突出しかつ、先端部が下方に屈曲して下向突部になっている連結部材と、
前記台盤の前記縦方向の他端部に形成されて、他の台車の前記下向突部が係合する突部受容部とを有して、複数台連結可能な台車において、
前記台盤の他端部の壁部を前記縦方向又は斜め縦方向に貫通して、前記突部受容部に前記下向突部を係合させるときに前記連結部材が通過する貫通孔を備え、
前記台盤の上面の外縁部から段付き状に突出して荷物を止めるストッパ突部が、前記貫通孔の上方を横切るように設けられてい
る台車。
【請求項6】
平面視四角形の台盤における縦方向の一端部から前記縦方向に突出しかつ、先端部が下方に屈曲して下向突部になっている連結部材と、
前記台盤の前記縦方向の他端部に形成されて、他の台車の前記下向突部が係合する突部受容部とを有して、複数台連結可能な台車において、
前記台盤の他端部の壁部を前記縦方向又は斜め縦方向に貫通して、前記突部受容部に前記下向突部を係合させるときに前記連結部材が通過する貫通孔を備え、
前記台盤の上面の外縁部のうち前記縦方向の両端部のみ又は、前記縦方向の両端部及び前記
台盤における横方向の一端部のみから段付き状に突出して荷物を止めるストッパ突部を備え、前記ストッパ突部を有しない前記台盤の上面の外縁部である開放部のみから荷物をスライド搭載可能
な台車。
【請求項7】
前記開放部になっている前記台盤の上面の外縁部には、前記ストッパ突部より低く突出して荷物との前記台盤との間の摩擦抵抗を高くして荷物の滑りを抑制する滑り防止突部が設けられている請求項6に記載の台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数台連結可能な台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の台車として、台盤から延びる連結部材によって台車の台盤同士が連結されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-315315号(
図1,4,23,24)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の台車では、台車を連結している連結部材に荷物が乗り上がって動作の自由度が制限され、走行が不安定になることがあったので、その対策が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、平面視四角形の台盤における縦方向の一端部から前記縦方向に突出しかつ、先端部が下方に屈曲して下向突部になっている連結部材と、前記台盤の前記縦方向の他端部に形成されて、他の台車の前記下向突部が係合する突部受容部とを有して、複数台連結可能な台車において、前記台盤の他端部の壁部を前記縦方向又は斜め縦方向に貫通して、前記突部受容部に前記下向突部を係合させるときに前記連結部材が通過する貫通孔を備える台車である。
【0006】
発明の第2態様は、前記貫通孔の一部と前記突部受容部とは、前記台盤における荷物載置面の下方に位置し、前記荷物載置面の外縁部で前記貫通孔の上方に位置しかつ上面が前記荷物載置面になっている天井壁を備える第1態様に記載の台車である。
【0007】
発明の第3態様は、前記貫通孔の内側上面には、前記縦方向で前記突部受容部に近づくに従って下る第1傾斜部が備えられている第1態様又は第2態様に記載の台車である。
【0008】
発明の第4態様は、前記連結部材は、上下に傾動可能に支持され、前記貫通孔の内側下面には、前記縦方向で前記突部受容部に近づくに従って昇る第2傾斜部が備えられ、前記第2傾斜部と前記突部受容部との間には、前記突部受容部に向かって下る第3傾斜部が備えられている第1態様から第3態様の何れか1の態様に記載の台車である。
【0009】
発明の第5態様は、前記台盤の上面の外縁部から段付き状に突出して荷物を止めるストッパ突部が、前記貫通孔の上方を横切るように設けられている第1態様から第4態様の何れか1の態様に記載の台車である。
【0010】
発明の第6態様は、前記台盤の上面の外縁部のうち前記縦方向の両端部のみ又は、前記縦方向の両端部及び前記台盤における横方向の一端部のみから段付き状に突出して荷物を止めるストッパ突部を備え、前記ストッパ突部を有しない前記台盤の上面の外縁部である開放部のみから荷物をスライド搭載可能な第1態様から第5態様の何れか1の態様に記載の台車である。
【0011】
発明の第7態様は、前記開放部になっている前記台盤の上面の外縁部には、前記ストッパ突部より低く突出して荷物との前記台盤との間の摩擦抵抗を高くして荷物の滑りを抑制する滑り防止突部が設けられている第6態様に記載の台車である。
【0012】
なお、本開示において「台盤の壁部」とは、台盤を構成している部材の壁を意味し、「台盤の他端部の壁部」とは、台盤のうち連結部材を有する側と反対側の端部を構成している部材の壁を意味する。
【発明の効果】
【0013】
発明の第1態様の台車では、台車同士を連結する連結部材が、台盤の縦方向の端部を貫通する貫通孔に通されて荷物の当接から保護されるので、従来のように台車を連結している連結部材に荷物が乗り上がって走行時の動作の自由度が制限されることがなくなり、連結状態の台車の走行が安定する。
【0014】
発明の第2態様の台車によれば、箱形状の荷物を傾斜姿勢にして荷物載置面をスライドさせて搭載するときに、台盤に対して最も荷重が係る荷物の角部が、荷物載置面の外縁部を通過することが想定されるが、荷物載置面の外縁部に位置する貫通孔を天井壁が上方から覆いかつその天井壁の上面が荷物載置面になっているので、貫通孔に荷物の角部が引っ掛かることが防がれ、荷物のスムーズな搭載が可能になる。
【0015】
発明の第3態様の台車は、貫通孔の内側上面に突部受容部に近づくに従って下る第1傾斜部を有するので、連結部材の先端部がスムーズに貫通孔を通過して突部受容部に係合すると共に、突部受容部に係合した連結部材は、第1傾斜部によって上方への移動を規制され、衝撃等によって連結部材が突部受容部から容易に外れることが防がれる。
【0016】
発明の第4態様の構成によれば、台車の連結部材の先端部を他の台車の貫通孔に突入させた状態で、台車を他の台車に近づけていけば、貫通孔の内側下面の第2傾斜部に連結部材の先端部が案内されて連結部材が上方に傾動し、第2傾斜部を通過すると、連結部材の先端部が第3傾斜部に案内されて連結部材が下方に傾動して突部受容部に案内される。このようにして、台車同士の連結がスムーズに行われる。
【0017】
発明の第5態様の台車では、台盤の上面の外縁部から段付き状に突出して荷物を止めるストッパ突部が、貫通孔の上方を横切り、台盤を補強する役割も果す。
【0018】
発明の第6態様の台車は、台盤の縦方向に複数並べられて連結される。そして、台盤の上面の外縁部のうち縦方向の両端部からストッパ突部が段付き状に突出しているので、台車の走行時の加減速による荷物の台盤からの脱落が防がれる。また、台盤の上面の外縁部のうち横方向の一端又は両端部は、ストッパ突部を有しない開放部になっているので、台車が連結された状態で各台車に容易に荷物をスライド搭載することができる。
【0019】
発明の第7態様の台車では、開放部に滑り防止突部を備えるので、開放部から荷物が滑り落ちることが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る台車の上面側の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、
図1~
図10を参照して本開示の第1実施形態の台車10について説明する。
図1に示された本実施形態の台車10は、平面視が長方形で樹脂製の台盤11を備える。以下、台盤11の長手方向を「縦方向H1」といい、台盤11の短手方向を「横方向H2」ということとする。また、縦方向H1のうち後述する連結部材20を有する側を「前側」といい、その反対側を「後側」ということとする。
【0022】
台盤11は、上面に主平板13を有し、その主平板13の下面に、
図2に示された格子状の下面リブ11Lを張り巡らせた構造をなしている。また、台盤11の中央部には、台盤11の縦横の全長の1/2程度の大きさの略長方形の開口部12が形成されている。さらには、台盤11の下面四隅にキャスター19が配置され、それらキャスター19の上部のベース盤19Aが、下面リブ11Lの下端部に包囲された凹部に収容された状態に固定されている。また、
図1に示すように、1つのキャスター19の真上位置となる台盤11の上面四隅には、縦方向H1に長い長方形の車輪受容凹部14が形成されている。これら車輪受容凹部14は、台車10同士を段積みしたときに、上段の台車10のキャスター19を受容して、上下の台車10のズレを規制する。なお、後側の2つの車輪受容凹部14内には、補強リブ14Aが形成されている。
【0023】
台盤11の上面の4辺の外縁部のうち横方向H2の一端の外縁部を除く3辺の外縁部からストッパ突部15~17が突出している。ストッパ突部15~17は、主平板13の上面から略垂直に起立する内側面と、水平な上面と、台盤11全体の外側面と面一の外側面とを有する。また、ストッパ突部15~17は、一部を除き、略全体が中空構造をなして内部の空間が下方に向かって開放されている。なお、前述の車輪受容凹部14は、何れのストッパ突部15~17から離れた配置になっている。
【0024】
台盤11のうちストッパ突部15~17に包囲された水平な上面は、荷物載置面11Aをなしている。また、台盤11の上面の外縁部のうちストッパ突部15~17を有しない横方向H2の一端の外縁部は、荷物載置面11Aに荷物をスライド搭載するための開放部18になっている。また、開放部18では、台盤11の上面の外縁部が、外側に向かうに従って僅かに下るように傾斜した斜面18Bになっている。さらには、縦方向H1で対向するストッパ突部15,16の内側面のうち開放部18に位置する端部が、外側に向かうに従って互いに離れるように傾斜した1対の斜面18Aになっている。
【0025】
図1及び
図3に示すように、前端部のストッパ突部16のうち横方向H2の中間部には、その縦方向H1の途中位置から前側部分を、ストッパ突部16の上端から下面リブ11Lの下端にまで亘って除去して前面凹部16Aが形成されている。
【0026】
図2及び
図3に示すように、台盤11の前端部の下面には、横方向H2の中央部において下面リブ11Lから下側突部25が下方に延設され、前面凹部16Aに下方から臨む位置まで前方に張り出している。なお、下側突部25の前面は、台盤11の全体の前面と面一に配置されている。
【0027】
図4に示すように、下側突部25には、横方向H2の中央を上下に貫通する支持孔24が備えられている。その支持孔24は、下端開口が円形である一方、上端開口は下端開口の真上位置から後方に延びた長円形になっていて、
図3に示すように、下端開口から上下方向の途中位置に亘って徐々に後方に拡がった形状をなしている。そして、支持孔24に連結部材20が取り付けられている。
【0028】
連結部材20は、例えば、金属製の丸棒の両端部を直角曲げしてなり、水平に延びる旋回部21の基端部から下方に直角曲げされた支持部22と、旋回部21の先端部から下方に直角曲げされた下向突部23とを有する。支持部22は下向突部23より下方に長く延び、その下端部には図示しない雄螺子部が形成されている。そして、支持部22が支持孔24に上方から通されて、下端部にナット22Nを螺合されることで支持孔24に抜け止めされている。また、連結部材20は、支持孔24から横方向H2の一方を向く位置と他方を向く位置の間を旋回可能になっていると共に、支持部22が垂直状態から支持孔24の後方に倒れるように傾動する。
【0029】
連結部材20は、不使用時には、横方向H2の何れか一方を向いた待機状態にされる。その待機状態になると、
図4に示すように、連結部材20の先端部が前面凹部16Aの側方に位置して台盤11の下に収まる。また、連結部材20が待機状態に上方に跳ね上がらないようにするために、前面凹部16A内の前面から、1対の突片26が張り出していて、待機状態の連結部材20の旋回部21に上方から対向するようになっている。さらに、連結部材20が待機状態から振動等によって前方に旋回しないようにするために下側突部25の上面の前縁部には、1対の突条27が形成されている。それら1対の突条27は、支持孔24の前方領域の両側に左右対称に形成されて横方向H2に延び、互いに接近するに従って高くなっている。また、連結部材20を使用する際には、旋回部21を突条27上で滑らせ、支持孔24から前方に延びる位置まで旋回すればよい。すると、1対の突条27の間に旋回部21が収まって連結部材20が台盤11から前方に突出した使用可能状態に保持される。
【0030】
図3に示すように、台盤11の後端部には、他の台車10の連結部材20を連結させることが可能な被連結部30が設けられている。その被連結部30を形成するために台盤11の後端部の下面には、
図2に示すように、横方向H2の中央部において下面リブ11Lから下側突部39が下方に延設されている。なお、
図3に示すように、下側突部39の下端面は、下側突部25の下端面と同じ高さに位置し、下側突部39の後面は、台盤11の全体の後面と面一に配置されている。
【0031】
被連結部30は、突部受容部31と貫通孔32とを含んでなる。突部受容部31は、下側突部39の下端面から荷物載置面11Aの間を上下に貫通している。また、
図2に示すように、突部受容部31の下端開口の形状は、縦方向H1に細長い二等辺三角形で、その底辺が前側に位置し、後端角部が円弧状に面取りされた形状をなしている。さらには、
図3に示すように、突部受容部31は、下端から上下方向の中間位置までが下端開口と同じ断面形状をなし、突部受容部31の上下方向の中間位置より上側部分に対して後方から貫通孔32が後述する溝部32Mを介して連通している。
【0032】
図1及び
図6に示すように、貫通孔32は、台盤11の壁部を縦方向H1に対して斜めに貫通し、四方を台盤11の壁部で囲まれている。そして、貫通孔32と、貫通孔32の上面を開放させた後述の溝部32Mとにより、連結部材20の先端部を台盤11の後面から突部受容部31に導入するための導入路32Dが形成されている。その貫通孔32の後端開口は、横長の四角形をなし、
図3に示すように、上下方向においては、下側突部39の下端寄り位置から荷物載置面11Aより僅かに下側となる位置に亘って形成され、横方向H2においては、突部受容部31を中心として左右対称に拡がり、突部受容部31の最大幅(前端の幅)の2~4倍程度の大きさをなしている。
【0033】
図5(A)に示すように、貫通孔32の内側下面36には、縦方向H1で突部受容部31に近づくに従って昇る第2傾斜部36Aが含まれ、その第2傾斜部36Aの前端から突部受容部31までが、僅かに前下がりの第3傾斜部36Bになっている。なお、第1傾斜部35Bは、後述するように貫通孔32の内側上面35に備えられている。また、第2傾斜部36Aの水平方向に対する傾斜角は30~60度であるのに対し、第3傾斜部36Bの水平方向に対する傾斜角は1~10度程度になっている。
【0034】
また、第2傾斜部36Aは、台盤11の後端からストッパ突部15の下方を超えて荷物載置面11Aの下方位置まで延びている。一方、第3傾斜部36Bは、第2傾斜部36Aに比べて縦方向H1の長さが極めて短くなっている。さらには、
図3に示すように、内側下面36のうち頂上部分となる第2傾斜部36Aと第3傾斜部36Bとの境界部は、下側突部25の上面のうち支持孔24の前側部分と同じ高さに位置している。
【0035】
そして、
図7に示すように、連結部材20を使用可能状態にした台車10を、別の台車10の被連結部30に挿入すると、後側の台車10の連結部材20における下向突部23の下端が、前側の台車10の貫通孔32における第2傾斜部36Aの後部下端寄り位置に当接する。そのまま、後側の台車10を前側の台車10に近づけていくと、
図8に示すように、下向突部23が第2傾斜部36Aに摺接して上方に移動し、連結部材20が上方に傾動していく。そして、下向突部23の下端が内側下面36の頂上部分を通過すると第3傾斜部36Bに摺接して僅かに下り、連結部材20が下方に僅かに傾動する。そして、下向突部23が突部受容部31の後端部の上方に位置すると、一気に降下して
図3に示すように下向突部23が突部受容部31に係合し、台車10同士が連結された状態になる。なお、連結された台車10同士が引っ張られたときには、突部受容部31の後端の円弧面31Aが下向突部23の側面である円弧面と当接する。
【0036】
図1及び
図6に示すように、貫通孔32の1対の内側面37は、台盤11の後面から突部受容部31のうち円弧面31Aより僅かに前側となる位置に亘って平坦に形成され、上下方向に対しては平行で、縦方向H1に対しては前方に向かうに従って接近するように傾斜している。これにより、連結部材20が貫通孔32内で横方向H2にずれたり、傾いたりしても、突部受容部31に向かうように案内される。
【0037】
図3に示すように、貫通孔32の内側上面35は、台盤11の後端から内側下面36の頂上部分の真上より僅かに前側となる位置に亘って形成されている。より詳細には、貫通孔32の後部は、ストッパ突部15の中間部分によって上方を覆われ、貫通孔32の前部は、上面が荷物載置面11Aの外縁部の一部をなした天井壁34によって上方を覆われている。そして、天井壁34の前端は、第3傾斜部36Bの真上となる範囲に収まっている。即ち、貫通孔32は、突部受容部31の手前位置まで形成され、貫通孔32の前端から突部受容部31までは、貫通孔32を上方に開放し、台盤11の上面である荷物載置面11Aに開口した溝部32Mになっている。
【0038】
なお、貫通孔32の上方を横切るストッパ突部15の中間部分は、
図6に示すように、横方向H2に延びる複数の横リブ15L1と、上下方向に延びて横リブ15L1と交差する縦リブ15L2と、横リブ15L1同士の間の空間を前方から閉塞する前面壁15Aと、ストッパ突部15の中間部分の両横の内部空間と横リブ15L1同士の間の空間とを仕切る仕切壁15Bを備えた構造をなしている。
【0039】
図5(B)に示すように、貫通孔32の内側上面35は、貫通孔32の後端から天井壁34の縦方向H1の途中位置までが第1水平部35Aをなし、第1水平部35Aから天井壁34の前端寄り位置までが前方に向かうに従って下る第1傾斜部35Bをなし、さらには、第3傾斜部36Bから天井壁34の前端までが、第2水平部35Cになっている。これにより、天井壁34の下方を通過する連結部材20の前端部が下方に誘導され、連結部材20の下向突部23が突部受容部31に係合しやすくなる。また、第1傾斜部35Bと第3傾斜部36Bとにより貫通孔32が突部受容部31に向かって窄まっているので、突部受容部31に下向突部23が係合している連結部材20が、衝撃等により上下に跳ね上がっても、その跳ね上がり量が制限され、連結部材20が不用意に突部受容部31から外れることがなくなる。
【0040】
本実施形態の台車10の構成に関する説明は以上である。次に、この台車10の作用効果について説明する。本実施形態の台車10は、単体で使用することもできるし、
図9及び
図10に示すように、複数台連結して使用することもできる。台車10同士を連結するには、上述の通り連結部材20を使用可能状態にして台車10同士を接近させればよい。すると、
図3に示すように、後側の台車10の連結部材20が、前側の台車10の貫通孔32を通過して突部受容部31と係合し、台車10同士が連結される。そして、それら台車10同士の間で、連結部材20の下向突部23を中心とする旋回が許容された状態になる。
【0041】
また、連結された複数の台車10は、それら複数の台車10の並び方向にストッパ突部15,16を有するので、走行時に加減速による荷物のズレが防がれる。それでいて、複数の台車10の並び方向と直交する一側部に開放部18を有するので、ストッパ突部15,16,17に邪魔されずに各台車10の台盤11の荷物載置面11Aに対して容易に荷物の上げ下ろしができる。また、開放部18には斜面18A,18Bが備えられているので荷物をスライドさせて荷物載置面11A上にスムーズに乗せることもできる。
【0042】
また、荷物が、
図9及び
図10に示したコンテナ70のような箱形をなしている場合、荷物が、横方向H2の一端を下げた傾斜姿勢にされて台盤11の荷物載置面11A上でスライド搭載されることがある。その際、荷物のうち傾斜姿勢で下側となった両角部から台盤11が最も大きな荷重を受け得る。これに対し、荷物載置面11A上の車輪受容凹部14は、横方向H2に延びるストッパ突部15,16から離して設けられているので、荷物の角部が車輪受容凹部14に引っ掛かることはない。また、貫通孔32もストッパ突部15の近傍では、天井壁34によって覆われてその天井壁34の上面が荷物載置面11Aの一部にもなっているので、荷物の角部が貫通孔32に引っ掛かることもない。
【0043】
また、図示しないが、荷物が袋に詰められて台車10に搭載されることもある。そのような荷物は、容易に変形して台車10同士の連結部分側に崩れて乗り上げることが考えられる。しかしながら、本実施形態の台車10では、台車10同士を連結する連結部材20が貫通孔32に通され、荷物の当接から保護されている。これにより、従来のように台車10を連結している連結部材20に荷物が乗り上がって動作の自由度が制限されることがなくなり、連結状態の台車10の走行が安定する。また、前述のストッパ突部15は、貫通孔32の上方を横切るように形成されているので、荷物のズレ防止に加え、ストッパ突部15により台盤11が補強もされる。
【0044】
[第2実施形態]
図11には、本実施形態の台車10Vが、キャスターを省略して示されている。この台車10Vの台盤11Vは、前記第1実施形態の台盤11から横方向H2の端部のストッパ突部17を切除して、横方向H2の両側に開放部18を備えている。また、各開放部18には、斜面18Bに沿った荷物載置面11A上の縁部に1対の滑り防止突部75が備えられている。滑り防止突部75は、断面が台形状をなして縦方向H1に延びる突条であって、ストッパ突部15,16に比べると荷物載置面11A上からの突出量が極めて低い。また、滑り防止突部75は水平な上面75Bと、その上面75Bより外側側に略垂直に近い斜面75Cと、その反対側に、緩やかに傾斜する斜面75Aとを備えている。
【0045】
本実施形態の台車10Vは、台盤11の上面の外縁部のうち縦方向H1の両端部からストッパ突部15,16が段付き状に突出しているので、台車10Vの走行時の加減速による荷物の台盤11からの脱落が防がれる。また、台盤11の上面の外縁部のうち横方向H2の両端部はストッパ突部15,16を有さず、ストッパ突部15,16より極めて低い滑り防止突部75を備えただけの開放部18になっているので、台車10Vが連結された状態で容易に荷物をスライド搭載することができる。また、各開放部18に滑り防止突部75を備えるので、開放部18から荷物が容易に滑り落ちることも防がれる。
【0046】
[他の実施形態]
(1)前記第2実施形態の台車10Vにおいて、各開放部18から滑り防止突部75を除去した構成としてもよい。
【0047】
(2)前記第1実施形態の台車10の連結部材20は、旋回可能に支持されていたが、連結部材20は上下に傾動するだけであってもよいし、傾動も旋回もしないように台盤11に固定されていてもよいし、台盤11に一体に形成されていてもよい。
【0048】
(3)前記第1実施形態の台車10は、突部受容部31の下端が閉じていてもよい。また、突部受容部31が荷物載置面11Aに開口しないように上端が閉じていてもよい。
【0049】
(4)前記第1実施形態では、貫通孔32と突部受容部31との間に、貫通孔32の上面が開放された形状の溝部32Mが形成されていたが、溝部32Mの上面も天井壁34で覆って貫通孔32としてもよい。また、貫通孔32のうちストッパ突部15で覆われている部分のみを残し、ストッパ突部15より前側の貫通孔32の上部全体を上方に開放して溝部32Mとしてもよい。さらには、貫通孔32より上側部分は、ストッパ突部15を有しない板状の壁部になっていてもよい。なお、貫通孔32の一部の上面を開放して溝部32Mとするか否かと、突部受容部31の上面を開放するか否かとは自由に組み合わせることができる。
【0050】
(5)前記第1実施形態では、貫通孔32の内側下面36により貫通孔32が台盤11の壁部を縦方向H1に対して斜めに貫通した構造になっていたが、貫通孔32は、台盤11の壁部を縦方向H1に対して平行に貫通した構造であってもよい。
【0051】
(6)前記第1実施形態の台車10において、ストッパ突部15~17を何れかを無くしてもよいし、全てを無くして台盤11の上面を平坦にしてもよい。また、ストッパ突部15~17は、台盤11の上面の各外縁部に沿って断続的に設けられていてもよい。さらに、前記第1実施形態の台車10では、ストッパ突部15~17の外側面と、ストッパ突部15~17より下側の台盤11の外側面とが面一であったが、面一でなくてもよい。
【0052】
(7)前記第1実施形態の貫通孔32の内側下面36における第3傾斜部36Bは、突部受容部31に向かって下るように傾斜していたが、第3傾斜部36Bが第2傾斜部36Aと異なる角度(第2傾斜部36Aより大きい角度でも小さい角度でも可)で突部受容部31に向かって昇るように傾斜していてもよい。また、第3傾斜部36Bを有さず、第2傾斜部36Aが突部受容部31まで延びていてもよいし、内側下面36のうち第3傾斜部36Bに代わりに平坦で水平な水平部を設けてもよい。第3傾斜部36Bの代わりに水平部を設けた場合には、その水平部が内側下面36の頂上部分となり、その頂上部分の範囲内に天井壁34の前端を配置してもよいし、水平部全体を天井壁34で覆ってもよい。
【0053】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0054】
10,10V 台車
11,11V 台盤
11A 荷物載置面
15~17 ストッパ突部
18 開放部
20 連結部材
23 下向突部
30 被連結部
31 突部受容部
32 貫通孔
34 天井壁
35 内側上面
35B 第1傾斜部
36 内側下面
36A 第2傾斜部
36B 第3傾斜部
37 内側面
39 下側突部
75 滑り防止突部