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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】育苗容器
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20241209BHJP
【FI】
A01G9/02 101N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021032301
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2022133561
(43)【公開日】2022-09-14
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】593049914
【氏名又は名称】株式会社東海化成
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】長沼 有亮
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-057998(JP,A)
【文献】米国特許第04173097(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁及び側壁を有し上端が開口した有底四角箱状をなす育苗容器であって、
前記側壁の外面におけるコーナー部または前記コーナー部同士の間の位置の下端部には、凹部が形成され、
前記凹部の底面には、前記側壁を貫通する排水口が形成されており、
前記側壁における前記凹部以外の部分には、前記排水口が形成されていないことを特徴とする育苗容器。
【請求項2】
前記底壁が水平面に接触するように載置したときに、前記側壁における前記凹部の底面と前記水平面とのなす角度は、前記側壁の外面における前記凹部よりも上側に位置する面である上側位置面と前記水平面とのなす角度よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の育苗容器。
【請求項3】
前記側壁における前記凹部の底面前記側壁の外面における前記凹部よりも上側に位置する面である上側位置面との間には、前記凹部の底面と交差する段差面が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の育苗容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水口を備えた育苗容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の育苗容器として、例えば特許文献1に示すような育苗ポットが知られている。こうした育苗ポットでは、下部に排水用の開口部が形成されている。この場合、開口部は、育苗ポットの側壁から底壁にかけてL字状に延びるように形成されている。そして、育苗ポットは、例えば、育苗ポットを収容可能な収容部が縦横に複数並んで配置されたシステムトレイに収容された状態で使用される。この場合、収容部は、例えば、上端部が開口を有した矩形枠状をなし且つ側壁が4つの柱によって構成されるとともに底壁が4つの柱の下端同士を繋ぐ複数の梁によって構成された略有底矩形箱状をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-204305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような育苗ポットは、排水用の開口部が当該開口部の周囲の面と面一になっている。このため、上述のような育苗ポットをシステムトレイの収容部に収容した場合には、収容部の内面によって育苗ポットの開口部が塞がれて当該開口部からの排水性が十分に確保できなくなることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する育苗容器は、底壁及び側壁を有し上端が開口した有底箱状をなす育苗容器であって、前記側壁の外面における下端部には、前記側壁の前記外面における前記下端部よりも上側に位置する上側位置面よりも内側に位置する内側位置面が形成され、前記内側位置面には、前記側壁を貫通する排水口が形成されていることを要旨とする。
【0006】
この構成によれば、排水口が育苗容器の側壁の内側位置面に形成されているため、育苗容器を例えばシステムトレイの収容部に収容しても当該収容部の内面と排水口との間には必ず隙間が形成される。このため、排水口が収容部の内面によって塞がれることが抑制されるので、排水口からの排水性を十分に確保できる。
【0007】
上記育苗容器において、前記底壁が水平面に接触するように載置したときに、前記側壁における前記内側位置面の上端と下端とを結んだ直線と前記水平面とのなす角度は、前記側壁における前記上側位置面の上端と下端とを結んだ直線と前記水平面とのなす角度よりも小さくなっていることが好ましい。
【0008】
一般に、パンチとダイによる孔あけ加工によって側壁に排水口を形成する場合には、底壁が水平面に接触するように載置したときの水平面とのなす角度が小さいほどパンチとダイによる孔あけ加工が容易になる。この点、この構成によれば、水平面とのなす角度が側壁の上側位置面よりも小さい側壁の内側位置面に排水口が形成されている。このため、パンチとダイによる孔あけ加工による排水口の形成を、側壁の上側位置面に排水口を形成する場合に比べて、容易に行うことができる。
【0009】
上記育苗容器において、前記側壁における前記内側位置面と前記上側位置面との間には、前記内側位置面と交差する段差面が形成されていることが好ましい。
この構成によれば、側壁に形成される段差面がリブとして機能するので、育苗容器の強度向上に寄与できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排水口からの排水性を十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態の育苗容器が収容されるシステムトレイの斜視図。
図2】育苗容器を上側から見たときの斜視図。
図3】育苗容器を下側から見たときの斜視図。
図4】育苗容器の平面図。
図5】育苗容器の側断面図。
図6図1の要部拡大側断面図。
図7】変更例の育苗容器を下側から見たときの斜視図。
図8】別の変更例の育苗容器を下側から見たときの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、育苗容器の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、育苗容器11は、縦横に並ぶ複数(本例では一例として15個)の収容部12を有したシステムトレイ13の収容部12にそれぞれ収容可能に構成されている。各収容部12は、一例として、上端部が開口を有した矩形枠状をなし且つ側壁が4つの柱14によって構成されるとともに底壁が4つの柱14の下端同士を繋ぐ複数の梁15によって構成された略有底四角箱状をなしている。つまり、各収容部12の側壁及び底壁は、開口部を有している。
【0013】
育苗容器11は、底壁16及び側壁17を有し且つ上端が開口した略有底四角箱状をなしており、内部に植物の苗Nが植えられた培地Gを収容する。育苗容器11は、一例として軟質の合成樹脂材料を用いた真空成型によって形成され、可撓性を持っている。育苗容器11の側壁17における4つのコーナー部18は、丸みを帯びている。
【0014】
図2及び図4に示すように、育苗容器11の側壁17は、底壁16に近づくほど側壁17の内側の面積が小さくなるように、テーパー状をなしている。育苗容器11の側壁17における4つのコーナー部18の外面の下端部には、凹部19がそれぞれ形成されている。側壁17の外面における凹部19よりも上側に位置する面は、上側位置面24とされている。凹部19の底面は、上側位置面24よりも内側に位置する内側位置面22とされている。つまり、側壁17の外面における下端部には、側壁17の外面における下端部よりも上側に位置する上側位置面24よりも内側に位置する内側位置面22が形成されている。
【0015】
側壁17の内面における各凹部19が形成された部分と対応する位置には、各凹部19と対応する凸部20が形成されている。つまり、側壁17における各凹部19が形成された部分であるコーナー部18の下端部においては、外側が凹部19の形成によって窪んだ分だけ内側が膨らんでいる。
【0016】
各内側位置面22には、側壁17を貫通する細長い排水口21が形成されている。各排水口21は、内側位置面22に沿って略上下方向に延びており、下端が底壁16の外縁部まで達している。すなわち、各排水口21は、側壁17及び底壁16に跨がるように略L字状に延びている。
【0017】
図3及び図4に示すように、側壁17における内側位置面22と上側位置面24との間には、内側位置面22と直交(交差)する段差面23が形成されている。段差面23は、凹部19の上面を構成している。
【0018】
側壁17の外面における凹部19以外の部分には、側壁17の強度を上げるべく略上下方向に延びる溝状の第1リブ25が周方向に適宜間隔を置いて複数形成されている。各第1リブ25の下端は、底壁16の外面の外縁部まで達している。すなわち、各第1リブ25は、側壁17及び底壁16に跨がるように略L字状に延びている。底壁16の外面には、底壁16の強度を上げるべく十字溝状の第2リブ26が形成されている。
【0019】
図5に示すように、育苗容器11は、底壁16が水平面Sに接触するように載置したときに、側壁17における内側位置面22と水平面Sとのなす角度Aが、側壁17の上側位置面24と水平面Sとのなす角度Bよりも小さくなるように構成されている。すなわち、側壁17における内側位置面22の上端と下端とを結んだ内側位置面22内の上下方向に延びる直線と水平面Sとのなす角度Aは、側壁17における上側位置面24の上端と下端とを結んだ上側位置面24内の上下方向に延びる直線と水平面Sとのなす角度Bよりも小さくなっている。なお、本実施形態では、一例として、内側位置面22及び上側位置面24が共に平面によって構成されている。
【0020】
次に、育苗容器11の作用について説明する。
図1及び図6に示すように、育苗容器11は、内部に植物の苗Nが植えられた培地Gを収容した状態でシステムトレイ13の各収容部12に収容されて使用される。そして、育苗容器11は、収容部12に収容されると、側壁17が収容部12の柱14の内面27にフィットするように弾性変形する。
【0021】
ここで、本実施形態の育苗容器11の代わりに側壁の下端部に凹部を形成することなく排水口を形成した従来の育苗容器を用いると、収容部12の柱14の位置と従来の育苗容器の排水口の位置とが一致した場合に排水口が収容部12の柱14によって塞がれてしまう。このため、従来の育苗容器では、内部の苗及び培土に水を与えた際の排水口からの排水性が十分に確保されなくなってしまうという問題がある。
【0022】
この点、本実施形態の育苗容器11では、排水口21が側壁17の凹部19内の内側位置面22に形成されている。このため、収容部12の柱14の位置と排水口21の位置とが一致するように育苗容器11が収容部12に収容された場合であっても、排水口21と柱14の内面27との間には、必ず隙間が形成される。したがって、育苗容器11は、収容部12に収容しても排水口21が柱14によって塞がれることがない。このため、育苗容器11では、育苗容器11内の苗N及び培土に水を与えた際の排水口21からの排水性が十分に確保される。
【0023】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)育苗容器11は、底壁16及び側壁17を有し上端が開口した有底四角箱状をなしている。側壁17における下端部には凹部19が形成され、凹部19内の内側位置面22には側壁17を貫通する排水口21が形成されている。
【0024】
この構成によれば、排水口21が育苗容器11の側壁17の凹部19内の内側位置面22に形成されているため、育苗容器11をシステムトレイ13の収容部12に収容しても収容部12の柱14の内面27と排水口21との間には必ず隙間が形成される。このため、排水口21が収容部12の柱14によって塞がれることがないので、排水口21からの排水性を十分に確保できる。
【0025】
(2)育苗容器11において、底壁16が水平面Sに接触するように載置したときに、側壁17における内側位置面22と水平面Sとのなす角度Aは、側壁17における上側位置面24と水平面Sとのなす角度Bよりも小さくなっている。
【0026】
一般に、育苗容器においては、上下方向におけるパンチとダイによる孔あけ加工によって側壁に排水口を形成する場合、底壁が水平面に接触するように載置したときの水平面とのなす角度が小さいほどパンチとダイによる孔あけ加工が容易になる。この点、本実施形態の育苗容器11では、水平面Sとのなす角度A,Bが側壁17の上側位置面24よりも小さい側壁17の内側位置面22に排水口21が形成されている。このため、上下方向におけるパンチとダイによる孔あけ加工による側壁17の内側位置面22への排水口21の形成を、上下方向におけるパンチとダイによる孔あけ加工による側壁17の上側位置面24への排水口21の形成に比べて、容易に行うことができる。
【0027】
(3)育苗容器11において、側壁17における内側位置面22と上側位置面24との間には内側位置面22と直交(交差)する段差面23が形成されている。
この構成によれば、側壁17に形成される段差面23が横に延びるリブとして機能するので、育苗容器11の強度向上に寄与できる。
【0028】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0029】
図7に示すように、育苗容器11の側壁17において、凹部19の代わりに、上側位置面24よりも内側に位置する平面によって構成された内側位置面30を設けるようにしてもよい。この場合、上側位置面24及び内側位置面30のうちの少なくとも一方を曲面によって構成してもよい。
【0030】
図8に示すように、育苗容器11の側壁17において、凹部19及び段差面23を省略し、育苗容器11の側壁17の外面の下端部における4つのコーナー部18同士の間の位置に平面によって構成された内側位置面31をそれぞれ設けるようにしてもよい。この場合、上側位置面24及び内側位置面31のうちの少なくとも一方を曲面によって構成してもよい。
【0031】
・段差面23は、省略してもよい。
・上側位置面24及び内側位置面22のうちの少なくとも一方を曲面によって構成してもよい。
【0032】
・排水口21は、凹部19内における底面及び段差面23以外の面に形成してもよい。
育苗容器11において、底壁16が水平面Sに接触するように載置したときに、側壁17における内側位置面22と水平面Sとのなす角度Aは、必ずしも側壁17の上側位置面24と水平面Sとのなす角度Bよりも小さくなっている必要はない。すなわち、角度Aは、角度Bと同じであってもよいし、角度Bより大きくてもよい。
【0033】
・凹部19は、育苗容器11の側壁17の外面の下端部におけるコーナー部18同士の間の位置に形成してもよい。
・凹部19の数、大きさ、及び形状は、適宜変更してもよい。
【0034】
・排水口21の幅や長さは、適宜変更してもよい。
・排水口21の形状は、例えば長楕円形状などに適宜変更してもよい。
・育苗容器11の形状は、例えば有底円形箱状や有底楕円形箱状などに適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0035】
11…育苗容器
12…収容部
13…システムトレイ
14…柱
15…梁
16…底壁
17…側壁
18…コーナー部
19…凹部
20…凸部
21…排水口
22,30,31…内側位置面
23…段差面
24…上側位置面
25…第1リブ
26…第2リブ
27…内面
A,B…角度
G…培地
N…苗
S…水平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8