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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】フライヤー
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/12 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
A47J37/12 321
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021067315
(22)【出願日】2021-04-12
(65)【公開番号】P2022162449
(43)【公開日】2022-10-24
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】雉本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 雄大
(72)【発明者】
【氏名】木内 直樹
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-022577(JP,A)
【文献】特開平05-031035(JP,A)
【文献】実開平05-056036(JP,U)
【文献】特開2002-336136(JP,A)
【文献】特開平11-342084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器体内に支持されて所定量の調理油を収容し、上方へ向かうに従って前方へ延びる傾斜状の前壁を有する油槽と、
前記油槽内の調理油を加熱する加熱手段と、
調理油を貯留する足し油タンクと、
前記足し油タンクと前記油槽とを接続する足し油管と、を備えるフライヤーであって、
前記油槽の前記前壁に、前記足し油管が接続される足し油口が設けられると共に、前記足し油口は、前記油槽に前記所定量の調理油が供給された際の油面よりも上側に配置されていることを特徴とするフライヤー。
【請求項2】
前記足し油口は、前記前壁から突出して後向きに開口する筒状であることを特徴とする請求項1に記載のフライヤー。
【請求項3】
前記器体には、前記足し油口を上方から覆うカバーが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフライヤー。
【請求項4】
前記油槽には、前記油槽の周囲を上方から覆う枠状の油槽カバーが設けられており、前記カバーは、前記油槽カバーと一体に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のフライヤー。
【請求項5】
前記油槽内の調理油をフィルタリングするフィルタリングタンクと、前記フィルタリングタンクでフィルタリングされた調理油を前記油槽に戻す給油管とを備え、
前記給油管は、前記油槽の後部に接続されていることを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載のフライヤー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調理油を油槽内で加熱し、当該油槽に被調理物を投入して加熱調理する業務用のフライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
フライヤーは、油槽に収容した調理油をバーナやパルス燃焼器等の加熱手段によって所定の調理温度まで加熱することで、油槽に投入された被調理物を加熱調理する。
この加熱調理の時間や回数が増加すると、調理油中に蓄積される不純物の量が増加して調理油が劣化し、調理品質の低下を招く。また、被調理物に吸収される油によって調理油の量が減少する。よって、フライヤーの使用に際しては、調理時間や回数等に応じて定期的に調理油を濾過したり、新しい調理油を補給(足し油)したりする必要が生じる。
そこで、特許文献1には、油槽に、ポンプの吐出側と接続される給油管(足し油管)を接続し、ポンプの吸込側に、補給用の一斗缶(足し油タンク)から延びる配管と、フィルタリングタンクから延びる配管とを合流させた吸込管を接続させたフライヤーが開示されている。このフライヤーによれば、油槽内の調理油が減少すると、一斗缶から新しい調理油を補給することができると共に、油槽内に不純物が増加すると、油槽からフィルタリングタンクに排出した調理油をフィルタリングして油槽に戻すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-119995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のフライヤーでは、油槽に接続される給油管の位置によっては、油槽内の調理油が給油管を逆流し、一斗缶側の配管に流れてしまうおそれがあった。また、フィルタリングタンクから延びる配管からも調理油が逆流して一斗缶側の配管に流れてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本開示は、油槽に、足し油タンクから新しい調理油を補給する足し油管を接続したものであっても、油槽側から調理油が足し油タンク側に逆流することを防止できるフライヤーを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、器体内に支持されて所定量の調理油を収容し、上方へ向かうに従って前方へ延びる傾斜状の前壁を有する油槽と、
前記油槽内の調理油を加熱する加熱手段と、
調理油を貯留する足し油タンクと、
前記足し油タンクと前記油槽とを接続する足し油管と、を備えるフライヤーであって、
前記油槽の前記前壁に、前記足し油管が接続される足し油口が設けられると共に、前記足し油口は、前記油槽に前記所定量の調理油が供給された際の油面よりも上側に配置されていることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記足し油口は、前記前壁から突出して後向きに開口する筒状であることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記器体には、前記足し油口を上方から覆うカバーが設けられていることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記油槽には、前記油槽の周囲を上方から覆う枠状の油槽カバーが設けられており、前記カバーは、前記油槽カバーと一体に設けられていることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記油槽内の調理油をフィルタリングするフィルタリングタンクと、前記フィルタリングタンクでフィルタリングされた調理油を前記油槽に戻す給油管とを備え、
前記給油管は、前記油槽の後部に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、足し油口が調理油の油面よりも上側に配置されているので、油槽内の調理油が足し油管内に侵入することを防止できる。よって、油槽に、足し油タンクから新しい調理油を補給する足し油管を接続したものであっても、油槽側から調理油が足し油タンク側に逆流することを防止できる。また、足し油口から供給される調理油は前壁を伝って緩やかに油槽内に流れるため、足し油の際に調理油の跳ねが生じにくくなる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、足し油口は、前壁から突出して後向きに開口する筒状であるので、前壁に出口を設ける場合に比べて開口面積を小さくすることができる。よって、調理油が足し油口から逆流する可能性をより小さくすることができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、器体には、足し油口を上方から覆うカバーが設けられているので、足し油口を隠すことができる。このため、被調理物を油槽に投入する際にバスケット等が足し油口に当接して損傷等させるおそれがなくなる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、油槽内の調理油をフィルタリングするフィルタリングタンクと、フィルタリングタンクでフィルタリングされた調理油を油槽に戻す給油管とを備え、給油管は、油槽の後部に接続されているので、油槽において、給油管の接続口と足し油口とを前後に大きく離間させて配置することができる。このため、フィルタリングされた調理油が足し油口に回り込むことがなく、足し油管側への調理油の逆流のおそれをさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】フライヤーの斜視図である。
図2】フライヤーの正面図である。
図3】フライヤーの側面図である。
図4】フライヤーの平面図である。
図5】油槽カバーを取り外したフライヤーの上部の分解斜視図である。
図6図4のA-A線断面における足し油口部分の拡大図である。
図7】フライコントローラ及び油槽カバー等を省略したフライヤーの斜視図である。
図8】油槽カバーを取り外した変更例のフライヤーの上部の分解斜視図である。
図9】フライコントローラ及び油槽カバー等を省略した変更例のフライヤーの正面図である。
図10】フライコントローラ及び油槽カバー等を省略した変更例のフライヤーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、フライヤーの一例を示す斜視図である。図2は、フライヤーの正面図である。図3は、フライヤーの側面図である。図4は、フライヤーの平面図である。
フライヤー1は、フレーム3に図示しない外板を取り付けてなる四角箱状の器体2を有する。器体2内の上部には、左右一対の油槽4,4が設けられている。器体2の下面には、複数のキャスタ5,5・・が設けられている。
フライヤー1の構成は、各油槽4に対して左右略同じであるため、特に言及する場合を除いて主に左側の油槽4について説明する。また、構成部の左右を区別する場合は、右側がA,左側がB(例えば油槽4であれば右側が油槽4A、左側が油槽4B)となる符号を付して説明する。
油槽4内の底部には、燃焼手段としての左右一対のパルス燃焼器6,6が設けられている。各パルス燃焼器6は、燃焼室7とテールパイプ8とをそれぞれ備えている。油槽4内でパルス燃焼器6,6の上側には、網体9が設けられている。
【0010】
油槽4の正面側外部には、エアチャンバ10が設けられている。エアチャンバ10内には、燃焼室7と連通する図示しない混合室が設けられている。混合室には、ガス電磁弁12を備えたガス導管11が接続されて、燃料ガスが供給される。
また、混合室には、給気管13が接続されている。給気管13は、器体2の後側底部に設けられたファン14に接続されて、燃焼用空気が供給される。
パルス燃焼器6,6のテールパイプ8,8は、油槽4の下部で蛇行状に配設された後、油槽4の外部でエアチャンバ10から引き出される左右一対の排気管15,15に接続されている。排気管15,15は、器体2の後部へ引き回された後、油槽4の後方で上向きに延びて、燃焼排気を排出可能となっている。排気管15,15における上向きの下流端部には、図5にも示すように、円筒形のマフラー16,16がそれぞれ設けられている。マフラー16,16の上部は、排気管カバー17に上方から覆われて、排気管15,15の上端を排気アダプタ18内に突出させている。
【0011】
排気管カバー17の内部でマフラー16,16の前側には、油槽4に調理油を補給するための増油タンク20(図5)が収容されている。マフラー16,16は、増油タンク20の後面と接触している。
増油タンク20は、増油バルブ22を備えた増油管21を介して油槽4と接続されている。増油バルブ22は、手動操作により開弁する常閉弁で、落とし込みレバー23によって正面側から開弁操作可能となっている。よって、落とし込みレバー23を介して増油バルブ22を開弁操作すると、増油タンク20内の調理油を油槽4に補給することができる。但し、増油タンク20の貯留量を越えて供給される調理油は、増油タンク20の前面からオーバーフローし、油槽4の後端上側に設けたオーバーフロー口24から油槽4内に流入可能となっている。
【0012】
油槽4は、第1調理部25と第2調理部26とを有している。第1調理部25は、パルス燃焼器6の上側に形成され、上下方向に開口面積が変化しない角筒状となっている。第2調理部26は、第1調理部25の上側に位置し、第1調理部25の上端から上方へ行くに従って前後左右へ拡開するテーパ状に形成されている。第2調理部26の前壁27は、左右及び後部よりも長く延びる傾斜状となっている。第2調理部26の上側には、図5にも示すように、第2調理部26の上端から上方へ立ち上がり、上下方向に開口面積が変化しない開口部28となっている。開口部28の左右の側縁と前端縁とには、それぞれ外側へ折り返される折り返し片29,29・・が形成されている。各折り返し片29は、フレーム3上に係止してネジ止めされている。開口部28の後端縁は、上方へ延びて増油タンク20にネジ止めされている。オーバーフロー口24は、開口部28の後端縁の中央に形成されている。
第1調理部25には、第1油面温度センサ31が設けられている。第2調理部26には、第2油面温度センサ32が設けられている。網体9の下方で油槽4内には、調理用温度センサ33が設けられている。
【0013】
油槽4の第2調理部26の前壁27において、右前のコーナー部には、図5及び図6に示すように、足し油口35が設けられている。足し油口35は、第2調理部26での最大油量の油面位置Lよりも上方に位置している。足し油口35は、前壁27に形成された透孔36を貫通して前壁27と直交する姿勢で上下に突出する円形の筒体である。但し、足し油口35の上面は閉塞されて、内部流路37は、前壁27の上側で後方へ折曲される逆L字状となっている。よって、内部流路37の出口38は、足し油口35の後面に開口している。
前壁27の下方で足し油口35には、分岐管40が接続されている。分岐管40は、足し油口35の下端に上端が同軸で接続されて下向きに延びている。分岐管40には、分岐管40内の流路を開閉する足し油電磁弁41が設けられている。分岐管40の下端には、ブロック状の管継手42が接続されている。
右側の分岐管40Aの管継手42Aには、後述する一斗缶76に接続される足し油管43と、左側の分岐管40Bの管継手42Bに接続される渡り管44とが接続されている。よって、足し油管43から供給される調理油は、管継手42A内で分岐管40Aと渡り管44とに分岐して流れることになる。
【0014】
分岐管40Aは、図7に示すように、正面視が横向きの長円状となる右側のエアチャンバ10Aの右上側に配置されている。分岐管40Bは、左側のエアチャンバ10Bの右上側に配置されている。分岐管40A,40Bは、取付金具45を介してフレーム3にそれぞれ固定されている。
よって、管継手42Aと管継手42Bとを繋ぐ渡り管44は、エアチャンバ10Aの右外周に沿って左上側へ傾斜状に上昇した後、エアチャンバ10Aの上面に沿って左側へ水平移動する。その後、渡り管44は、エアチャンバ10Aの左外周に沿って左下側へ傾斜状に下降した後、左側へ水平移動して管継手42Bに繋がる正面視台形状に屈曲している。すなわち、渡り管44は、エアチャンバ10Aの外周面に近接した状態で左右方向に配設されている。
渡り管44の上側で前壁27の下面には、板状の断熱材46(図3)が設けられている。後述するフライコントローラ90の背面にも、渡り管44の上側に位置する板状の断熱材47(図6)が設けられている。
【0015】
フレーム3上には、枠状の油槽カバー50が設けられている。油槽カバー50は、図4及び図5に示すように、左カバー51と、右カバー52と、中央カバー53と、前カバー54と、後カバー55とを有する。左右カバー51,52は、油槽4,4の左右外側の折り返し片29,29をそれぞれ覆って前後方向に延びる。中央カバー53は、油槽4,4の間の折り返し片29を覆って前後方向に延びる。前カバー54は、油槽4,4の前側の折り返し片29,29を覆って左右方向に延びる。
前カバー54には、左右カバー51,52と中央カバー53との前端がそれぞれ連結されている。前カバー54の上面は、最前方が左右カバー51,52と同じ高さで形成される平面部56と、平面部56から後方へ向かうに従って徐々に下降する前後に幅広い傾斜面部57とを有している。
後カバー55は、左右の排気管カバー17,17の前面を前方から覆う横長の板状である。後カバー55の下端には、左右カバー51,52と中央カバー53との後端がそれぞれ連結されている。後カバー55の前面には、バスケットハンガー58,58が固定されている。後カバー55の下端には、油槽4,4のオーバーフロー口24,24を露出させる窓部59,59が形成されている。
こうして油槽カバー50は、油槽4,4の周囲及び中央を上方から覆う格好でフレーム3上に固定されている。
【0016】
器体2の底部で左側の油槽4Bの下方には、底部にフィルタを備えたフィルタリングタンク65が設けられている。フィルタリングタンク65の上方には、油槽4,4の底部に設けた排油管66,66と接続される集合管67が左右方向に設けられている。集合管67の下流端がフィルタリングタンク65に接続されて、集合管67を介して各油槽4内の調理油をフィルタリングタンク65に排出可能となっている。排油管66,66には、常閉弁である排油バルブ(図示略)がそれぞれ設けられている。各排油バルブは、正面側に設けた排油レバー68の手動操作で開弁することができる。
器体2の下部には、図3に示すように、フィルタリングポンプ69が設けられている。フィルタリングポンプ69の吸込側は、フィルタリングタンク65の底部に吸込管70を介して接続されている。フィルタリングポンプ69の吐出側は、各油槽4ごとに分岐している。各油槽4に接続される分岐管は、第1給油管71aと、第2給油管71bとにそれぞれ分岐している。
第1給油管71aは、増油管21に接続されている。第1給油管71aには、常閉弁である第1給油バルブ72が設けられている。第1給油バルブ72は、正面側に設けた増油レバー73の手動操作で開弁することができる。第2給油管71bは、油槽4の後面下部に接続されている。第2給油管71bには、常閉弁である図示しない第2給油バルブが設けられている。第2給油バルブも、正面側に設けた給油レバー74の手動操作で開弁することができる。
【0017】
右側の油槽4Aの下方には、一斗缶置き台75が設けられている。一斗缶置き台75は、器体2の下部で前方へ引き出し可能に設けられている。一斗缶置き台75には、足し油タンクとなる一斗缶76が設けられて、図示しない保温ヒータによって一斗缶76を保温可能となっている。一斗缶76には、一斗缶蓋77が被せられて、一斗缶蓋77に設けた足し油パイプ78が一斗缶76内に差し込まれている。
足し油パイプ78の上端は、足し油ポンプ80の吸込側に接続されている。足し油ポンプ80の吐出側には、足し油管43が接続されている。足し油管43は、右側のエアチャンバ10Aの右外側で上方へ引き回されて、右側の管継手42Aに接続されている。
器体2の正面上部には、フライコントローラ90が設けられている。フライコントローラ90は、操作パネル91を備えている。操作パネル91では、所定の調理モード及びメンテナンスメニューの設定等が可能となっている。
器体2の下部には、バーナコントローラ92が設けられている。バーナコントローラ92には、各センサ等の検出信号が入力される。バーナコントローラ92は、フライコントローラ90からの指示に従い、パルス燃焼器6、ファン14、各ポンプ、保温ヒータ、各電磁弁を制御して被調理物の調理や調理油のフィルタリング等を行う。
【0018】
以上の如く構成されたフライヤー1では、一度に調理する被調理物の量が、第1定格量と、それよりも多い第2定格量との2種類に規定されている。増油タンク20内には、満杯状態(第1油量から第2油量への増油分)の調理油が収容される。
まず、第1定格量の被調理物を調理する場合、油槽4に第1調理部25の上端まで調理油(第1油量)を貯留する。この状態で、ユーザが操作パネル91の運転スイッチをONする。すると、バーナコントローラ92は、燃焼室7内で混合ガスを断続的に燃焼させてパルス燃焼器6をON/OFF動作させる。すなわち、燃焼室7内で混合ガスに点火して燃焼室7内で爆発燃焼させ、その燃焼に伴う燃焼室7内の圧力上昇によって燃焼排気をテールパイプ8へ強制的に排出する。そして、その燃焼排気の排出により負圧となる燃焼室7内に燃料ガスと燃焼用空気とを吸入する。このON/OFF動作が繰り返されることで、油槽4に貯留された調理油が加熱される。
【0019】
バーナコントローラ92は、調理用温度センサ33から得られる検出温度を監視する。検出温度が所定の調理温度(例えば180~182℃)に到達すると、フライコントローラ90は、操作パネル91に調理OKの表示を出力する等して報知する。この報知がなされたら、調理者は第1定格量の被調理物を入れたバスケットを油槽4に投入する。
そして、操作パネル91の操作で第1調理モードを選択し、調理開始ボタンを押し操作すると、バーナコントローラ92は、第1定格量に対応して予め設定された第1調理時間とパルス燃焼器6の第1熱量とで被調理物の加熱調理を行う。タイムアップしたら、フライコントローラ90は、アラームを鳴らして調理終了を報知する。
このとき、パルス燃焼器6から発生する燃焼排気は、排気管15,15を通って油槽4の後側に移動し、マフラー16,16を介して排気アダプタ18内に排出され、排気アダプタ18から前方へ排出される。
こうして燃焼排気がマフラー16,16を通過する際、燃焼排気の熱量が、マフラー16,16と接触する増油タンク20を介して内部の調理油に付与される。よって、燃焼排気の排気熱を利用して調理油の温度を効果的に上げることができる。
【0020】
第1調理モードから第2調理モードへ切り替える場合、増油タンク20から調理油を増油させる必要がある。よって、ユーザが落とし込みレバー23を操作して増油バルブ22を開弁させると、増油タンク20内の増油分の調理油が、増油管21を介して油槽4に供給される。増油タンク20は空となる。
こうして調理油が第2調理部26の油面位置L(第2油量)まで供給され、バーナコントローラ92が、調理用温度センサ33により調理油の温度が調理温度に到達したことを確認すると、フライコントローラ90は、操作パネル91に調理OKの表示を出力する等して報知する。この報知がなされたら、ユーザは第2定格量の被調理物を入れたバスケットを油槽4に投入する。
そして、操作パネル91で第2調理モードを選択して調理開始ボタンを押し操作すると、バーナコントローラ92は、第2定格量に対応して予め設定された第2調理時間と、第1調理モードの際の第1熱量よりも大きい第2熱量とで被調理物の加熱調理を行う。タイムアップしたら、フライコントローラ90は、アラームを鳴らして調理終了を報知する。
なお、各調理モードでの調理中は、足し油電磁弁41は閉弁している。よって、被調理物を油槽4に投入した際に油面が足し油口35に達することがあっても、足し油管43側へ逆流することはない。
【0021】
一方、バーナコントローラ92は、第1、第2調理モードでの運転中は、一斗缶置き台75に設けた図示しないタンク温度センサから得られる検出温度を監視する。そして、一斗缶76で所定の保温温度が維持されるように保温ヒータをON/OFF制御する。
第1、第2油面温度センサ31,32によって第1、第2調理モードの何れかで必要な調理油の減少を検知するか、或いは所定の調理回数に達するかすると、バーナコントローラ92は、足し油ポンプ80を駆動させて該当する油槽4A,4Bの足し油電磁弁41A,41Bの何れか又は両方を開弁させる。
例えば、右側の油槽4Aで足し油が必要と判断すると、足し油ポンプ80の駆動と共に足し油電磁弁41Aが開弁される。すると、一斗缶76内で液化された調理油が、足し油パイプ78から吸い込まれ、足し油ポンプ80から足し油管43、管継手42A、分岐管40Aを介して足し油口35Aまで流れる。よって、調理油は、足し油口35Aの出口38から、前壁27の上面を伝って油槽4A内に供給されることになる。
【0022】
このとき、左側の足し油電磁弁41Bは閉弁しているので、渡り管44から管継手42Bに調理油が流れても、分岐管40Bに調理油は流れない。
渡り管44は、エアチャンバ10Aに上方から近接しているので、エアチャンバ10Aから発生する熱が渡り管44に伝わる。よって、渡り管44内の調理油が固化しにくくなる。また、渡り管44の上方には断熱材46,47が設けられているので、エアチャンバ10Aから発生する熱を逃がさずに効率よく渡り管44に伝えることができる。
左側の油槽4Bで足し油が必要と判断されると、足し油ポンプ80の駆動と共に足し油電磁弁41Bが開弁される。すると、一斗缶76内の調理油が、足し油パイプ78、足し油ポンプ80、足し油管43、管継手42A、渡り管44、管継手42B、分岐管40Bを介して足し油口35Bまで流れる。よって、調理油は、足し油口35Bの出口38から、前壁27の上面を伝って油槽4B内に供給されることになる。
この場合も渡り管44は、エアチャンバ10Aからの伝熱によって加熱されているので、渡り管44内の調理油は固化することなく、或いは一部が固化していても速やかに液化して、足し油口35Bまで供給される。
なお、左右両側の油槽4A,4Bで足し油が必要と判断すると、足し油ポンプ80の駆動と共に足し油電磁弁41A,41Bが共に開弁し、上述の通り足し油口35A,35Bの各出口38から各油槽4に供給される。
【0023】
また、ユーザによる所定のタイミングで、増油タンク20から調理油を供給することもできる。この場合、ユーザは、落とし込みレバー23の操作によって増油管21の増油バルブ22を開弁させる。すると、増油タンク20内の調理油が増油管21を介して油槽4に供給される。増油バルブ22を閉弁させれば調理油の供給は停止される。
【0024】
そして、第2調理モードから油量の少ない第1調理モードへ切り替える際、ユーザは、該当する油槽4の排油レバー68を操作して排油バルブを開弁させて、油槽4内の調理油を集合管67を介して全てフィルタリングタンク65に落とし込む。
次に、増油レバー73の操作により、第1給油管71aの第1給油バルブ72を開弁状態として、操作パネル91でフィルタリングを選択する。すると、バーナコントローラ92は、フィルタリングポンプ69を駆動させ、フィルタリングタンク65内の調理油をフィルタリングした後、第1給油管71a及び増油管21を介して増油タンク20に供給させる。
増油タンク20に供給された調理油が満杯状態(増油分)を越えると、増油タンク20からオーバーフローし、調理油がオーバーフロー口24から油槽4内に落とし込まれる。フィルタリングタンク65が空になると、第2油量の調理油は、第1油量からの増油分のみが増油タンク20に残る。すなわち、第1調理モードで使用される第1油量の調理油が油槽4に収容されることになる。
【0025】
(足し油口の配置に係る開示の効果)
上記形態のフライヤー1は、器体2内に支持されて所定量の調理油を収容し、上方へ向かうに従って前方へ延びる前壁27を有する油槽4と、油槽4内の調理油を加熱するパルス燃焼器6(加熱手段)と、調理油を貯留する一斗缶76(足し油タンク)と、一斗缶76と油槽4とを接続する足し油管43と、を備える。そして、油槽4の前壁27に、足し油管43が接続される足し油口35が設けられると共に、足し油口35は、油槽4に所定量(第1油量及び第2油量)の調理油が供給された際の油面よりも上側に配置されている。
この構成によれば、油槽4内の調理油が足し油管43内に侵入することを防止できる。よって、油槽4に、一斗缶76から新しい調理油を補給する足し油管43を接続したものであっても、油槽4側から調理油が一斗缶76側に逆流することを防止できる。また、足し油口35から供給される調理油は前壁27を伝って緩やかに油槽4内に流れるため、足し油の際に調理油の跳ねが生じにくくなる。
【0026】
足し油口35は、前壁27から突出して出口38が後向きに開口する筒状である。このため、前壁27に出口を設ける場合に比べて開口面積を小さくすることができる。よって、調理油が出口38から逆流する可能性をより小さくすることができる。
器体2には、足し油口35を上方から覆う油槽カバー50(カバー)が設けられているので、足し油口35を隠すことができる。よって、被調理物を油槽4に投入する際にバスケット等が足し油口35に当接して損傷等させるおそれがなくなる。
油槽4内の調理油をフィルタリングするフィルタリングタンク65と、フィルタリングタンク65でフィルタリングされた調理油を油槽4に戻す第2給油管71b(給油管)とを備え、第2給油管71bは、油槽4の後部に接続されている。よって、油槽4において、第2給油管71bの接続口と足し油口35とを前後に大きく離間させて配置することができる。このため、フィルタリングされた調理油が足し油口35に回り込むことがなく、足し油管43側への調理油の逆流のおそれをさらに低減することができる。
【0027】
足し油口の配置に係る開示については、以下の変更が可能である。
足し油口は、内部流路が逆L字状でなくてもよい。足し油口自体が逆L字状の筒体であってもよい。
足し油口の位置は、上記形態に限らず、第1及び第2油量の油面よりも高ければ、適宜変更できる。
足し油口は、前壁から突出させず、前壁に形成した開口であってもよい。
足し油口は、後ろ向きに開口させなくてもよい。
足し油口を覆うカバーの形状は、上記形態に限らない。カバーはなくてもよい。
フィルタリングタンクを含むフィルタリング機能は、なくてもよい。
足し油タンクは、一斗缶以外のものも使用できる。足し油タンクは、複数あってもよい。
加熱手段は、パルス燃焼器に限らない。電気ヒータやバーナ、これらの組み合わせであってもよい。
上記形態では、左右に2つの油槽を並設しているが、本開示は、3つ以上の油槽を並設したフライヤーや、油槽が1つであるフライヤーであっても適用可能である。この場合、分岐管を介さずに足し油管が直接足し油口に接続される。
本開示は、油槽の開口を蓋体で閉塞する圧力フライヤーであっても適用可能である。
【0028】
(複数の分岐管同士を繋ぐ渡り管に係る開示の効果)
上記形態のフライヤー1は、調理油を収容して左右方向に並列配置される複数の油槽4,4と、各油槽4内の調理油を加熱するパルス燃焼器6(燃焼加熱手段)と、調理油を貯留する一斗缶76(足し油タンク)と、一斗缶76から各油槽4に調理油を供給する足し油手段とを備える。また、パルス燃焼器6は、各油槽4の外部にそれぞれ設けられて燃焼排気が通過するエアチャンバ10(燃焼排気通過部)を備える。さらに、足し油手段は、一斗缶76に接続される足し油管43と、足し油管43に設けられる足し油ポンプ80と、各油槽4にそれぞれ接続される複数の分岐管40A,40Bと、左右方向に隣接する油槽4A,4B間で分岐管40A,40B同士を繋ぎ、足し油ポンプ80の下流側で足し油管43に接続される渡り管44と、を含む。そして、渡り管44は、エアチャンバ10Aの外面と近接するように配設されている。
【0029】
この構成によれば、油槽4Aのパルス燃焼器6が作動することで、その熱がエアチャンバ10Aから渡り管44及び分岐管40A,40Bへ効率よく伝達される。よって、配管内部の固形油を速やかに液化させることができ、油槽4の調理油が減少した際の足し油を迅速に行うことができる。また、一方の油槽4Aのみを使用し、他方の油槽4Bを使用しない場合でも、使用中の油槽A側の熱が未使用の油槽4B側の分岐管40Bまで伝達される。よって、油槽4Bの使用を開始して足し油が可能となるまでの時間を短縮することができる。
特に、渡り管44が配設されるエアチャンバ10Aの上側には、エアチャンバ10Aと渡り管44とを上方から覆う断熱材46,47が設けられているので、エアチャンバ10Aの周囲の熱を逃がさずに渡り管44に伝えることができる。よって、より速やかな足し油が可能となる。
燃焼加熱手段は、油槽4内に燃焼室7とテールパイプ8とを有するパルス燃焼器6であり、燃焼排気通過部は、油槽4の外部に引き出されたテールパイプ8が貫通するエアチャンバ10Aである。よって、テールパイプ8を通過する燃焼排気の熱をエアチャンバ10Aを利用して渡り管44へ効率よく伝えることができる。
【0030】
複数の分岐管同士を繋ぐ渡り管に係る開示については、以下の変更が可能である。
渡り管は、エアチャンバへ部分的に当接させてもよい。
渡り管は、エアチャンバの上面以外に当接又は近接させてもよい。
エアチャンバの形状は、上記形態に限らない。よって、渡り管も、エアチャンバの形状に合わせて適宜変更可能である。
燃焼排気通過部は、エアチャンバに限らない。燃焼室やテールパイプが油槽の外部に露出していれば、燃焼室やテールパイプに渡り管を当接又は近接させてもよい。
断熱材の形状や大きさは、適宜変更可能である。前壁の下面及びフライコントローラの背面以外に設けることもできる。断熱材を省略することもできる。
上記形態では、足し油管を、右側の分岐管の管継手に接続しているが、一斗缶の位置によっては、左側の管継手に接続してもよい。また、足し油管を渡り管に接続して分岐させてもよい。
【0031】
一方、足し油タンクは、一斗缶以外のものも使用できる。足し油タンクは、複数あってもよい。
燃焼加熱手段は、パルス燃焼器に限らない。バーナも使用できる。
上記形態では、2つの油槽が並設されるフライヤーを例示しているが、3つ以上の油槽が並設されるフライヤーであっても、本開示は適用可能である。この場合は複数のエアチャンバ(燃焼排気通過部)にそれぞれ渡り管が配設される。
また、図8図9及び図10に示すフライヤー1aのように、各油槽4内の左右方向の中央に仕切板60がそれぞれ設けられて、各油槽4がそれぞれパルス燃焼器6を有する分割油槽4a,4aに2分割される構造であっても、本開示は適用可能である。
この場合、足し油口35及び分岐管40は、各分割油槽4aごとにそれぞれ設けられる。また、各分岐管40に設けられる管継手42は、3つの渡り管44,44・・によって右側から順番に接続される。勿論接続する順番は適宜変更できる。
このように、分岐管40が、仕切板60を挟んで左右に分割された分割油槽4aごとにそれぞれ接続されて、渡り管44によって接続される構造でも、各分割油槽4a内の調理油が減少したときには、足し油ポンプ80の駆動と共に対応する分岐管40の足し油電磁弁41を開弁すれば、速やかに足し油を行うことができる。
本開示は、油槽の開口を蓋体で閉塞する圧力フライヤーであっても適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1,1a・・フライヤー、2・・器体、3・・フレーム、4・・油槽、6・・パルス燃焼器、7・・燃焼室、8・・テールパイプ、10・・エアチャンバ、25・・第1調理部、26・・第2調理部、27・・前壁、28・・開口部、35・・足し油口、37・・内部流路、38・・出口、40・・分岐管、41・・足し油電磁弁、42・・管継手、43・・足し油管、44・・渡り管、46,47・・断熱材、50・・油槽カバー、51・・左カバー、52・・右カバー、53・・中央カバー、54・・前カバー、55・・後カバー、57・・傾斜面部、60・・仕切板、65・・フィルタリングタンク、71a・・第1給油管、75・・一斗缶置き台、76・・一斗缶、78・・足し油パイプ、80・・足し油ポンプ、90・・フライコントローラ、91・・操作パネル、92・・バーナコントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10