(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】ハイドロゲルからの薬物送達
(51)【国際特許分類】
A61K 9/10 20060101AFI20241209BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241209BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241209BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
A61K9/10
A61K47/10
A61K47/18
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2023012843
(22)【出願日】2023-01-31
(62)【分割の表示】P 2021080387の分割
【原出願日】2016-05-12
【審査請求日】2023-01-31
(32)【優先日】2015-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512156316
【氏名又は名称】インセプト・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】INCEPT,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジャレット
(72)【発明者】
【氏名】ラミ・エル-ハイエク
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・エス・ジャレット
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ディ・ブリザード
(72)【発明者】
【氏名】アマルプリート・エス・ソーニー
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-533225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
求核基を含む第1の前駆体、求電子基を含む第2の前駆体、治療薬剤、緩衝剤、および水性希釈剤を組み合わせることによって
溶液を形成することが、ハイドロゲル中に分散した治療薬剤を有する共有結合架橋ハイドロゲルを形成することを含む、
眼内注射のための医療用材料の製造方法であって、
前記第1の前駆体が、アミン末端を有するHCl塩ポリエチレングリコールを有する複数のアームを含み、前記第2の前駆体が、求電子基末端を有するポリ(エチレングリコール)アームを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の前駆体および前記第2の前駆体がそれぞれ独立して、マルチアームポリ(エチレングリコール)含有前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の前駆体が、4~8アームおよび5,000~50,000ダルトンの分子量を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の前駆体、前記第2の前駆体、前記治療薬剤、および/または前記緩衝剤が、粉末として提供される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の前駆体、前記第2の前駆体、および前記治療薬剤が、凍結乾燥混合物として提供される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記緩衝剤が、リン酸塩、炭酸水素塩、又は炭酸塩である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液のpHが、6.8~7.2である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶液のpHが、6.8~7.2となるように調節することをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ハイドロゲルが、
2~5分で
眼内で形成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
求核基を含む第1の前駆体、求電子基を含む第2の前駆体、治療薬剤、緩衝剤、および水性希釈剤を組み合わせて溶液を形成することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ハイドロゲルのマトリックスの一部を形成しないヒアルロン酸又は親水性ポリマーを溶液に加えることをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年5月12日に出願された米国仮特許出願第62/160,394号明細書に対する優先権を主張し、この特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野は、概して、様々な病状に使用されるハイドロゲルを伴う薬物送達に関し、且つ長期の薬物放出時間を有する眼内に形成されるハイドロゲルを含む。
【背景技術】
【0003】
加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫(DME)、後部ぶどう膜炎、脈絡膜新生血管(CNV)及び嚢胞黄斑浮腫(CME)は、失明の恐れがある眼底疾患である。加齢黄斑変性及び糖尿病網膜症は、米国及びその他の国で視力障害の重要な原因であり、これらの病状は、一般に、血管新生(眼内の不要な血管成長)によって起こり、こうした血管新生は網膜を損傷し、最終的に失明を招き得る。後部ぶどう膜炎は慢性炎症性病状であり、これは、米国における失明の約10%の原因である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示される1つの発明は、インサイチュー(in situ)で形成される架橋ハイドロゲルであり、これは、例えば、眼底疾患を治療するために使用することができる治療薬剤を放出する。この実施形態では、水性ポリマー前駆体が流動性濃度/粘度で薬剤と組み合わされ、小さいゲージのニードルを通して眼に注射され、ここで、前駆体は、経時的に薬物を放出する架橋インサイチューハイドロゲルを形成する。ハイドロゲルは、それ自体に又は眼内の若しくは眼の周囲の組織に付着して、薬物放出効果及び安定性を高め、炎症を起こすことなく生分解性成分に分解し、適所で架橋するように製剤化され得る。こうして形成された形状安定性ハイドロゲルは、効果的に薬剤を送達すると共に、有利には、十分に制御されたサイズ、形状、及び表面積を有する。ハイドロゲルは、薬物の放出後に分解するように製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図4】眼のインプラントのための様々な送達代替法を描写する。
【
図6】眼房内又は硝子体内空間においてインサイチューで形成されたハイドロゲルからの薬剤の放出を描写する。
【
図7】外部の制約なしにハイドロゲルが分解するのにつれたハイドロゲル体積の膨潤のプロットである。
【
図8】
図7のハイドロゲルデポの寸法のプロットである。
【
図9】インビボでの配置直後(パネルa)、生理緩衝食塩水(PBS)中40時間後(パネルb)、1週間後(パネルc)又は12日後(パネルd)において示される、インサイチューで形成された薬剤放出ハイドロゲルのモンタージュ写真である。
【
図10】PBS中で、放出のためのインプラント内に捕捉された薬剤を含むハイドロゲルインプラントの写真である。
【
図11A】ハイドロゲルデポ内に捕捉された又はPBS中に直接導入された薬剤のPBS中の放出プロフィールのプロットである。
【
図11C】ハイドロゲルから放出された難溶性又は極めて難溶性の薬剤について、薬剤溶解度と線形関係を有するものとしてHiguchi係数、Kを示す
図11Aのデータのグラフである。
【
図12】経時的な薬剤のクリアランスを示す、ハイドロゲルデポからの薬剤の制御放出のモンタージュ写真である。
【
図13】PBS中のハイドロゲルデポからのエタボン酸ロテプレデノールのゾーンクリアランスの一例である。
【
図14】PBS中のハイドロゲルデポからのプレドニゾロンのゾーンクリアランスの一例である。
【
図15】経時的な薬剤のクリアランスを示す、ハイドロゲルデポからのデキサメタゾンの制御放出のモンタージュ写真である。
【
図16】表示した時点でハイドロゲルから放出された様々な薬剤のモンタージュ写真であり、これは、PBSなどの放出媒体中のハイドロゲルデポからの薬剤のゾーンクリアランスが経時的な放出媒体中の薬物溶解度と視覚的に相関することを示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の一実施形態は、組織、特に眼への薬物送達方法であり、これは、ハイドロゲル中に治療薬剤を含む(例えば、溶解、懸濁、全体に分散させて)ハイドロゲルインプラントをインサイチューで形成するステップを含み、治療薬剤は、低水溶性を有する。
【0007】
眼への薬物送達は活発な分野である。眼の疾患の治療のための薬物の向上により、制御放出装置をはじめとする患者のための新たな選択肢がもたらされた。眼の持続放出のための1つのアプローチは、分解性粒子に薬物を導入し、これを眼に注射するものであった。しかしながら、場合により、網膜上に定着する粒子には問題があり、接触毒性を引き起こすことがあった。他のアプローチでは、薬物を含浸させて眼に挿入する乳酸グリコール共重合体(PLA/PGA)の生分解性ロッドである小型薬物送達装置が作製された。それらが腐食するにつれて、薬物はPLA/PGAから移動することができ、このようにして分解が放出速度を制御する。これらの装置は、眼内の水溶液によって腐食するにつれて持続放出を提供する。別のアプローチは、米国特許出願公開第2009/0252781号明細書に記載されているように、インサイチューで形成される特定のハイドロゲルの使用を含むものであった。これらは、特定の状況では有用であるが、生分解性を向上させ、制御放出装置で実施することができる臨床治療の範囲を広げるために用いることができるさらに別の技術がある。
【0008】
特に、制御された様式で長時間にわたって薬剤を放出するデポ(インプラントとも称される)を製造して、毒性レベルに達することなく有効な濃度を達成するために、ハイドロゲルの特定の特性と組み合わせて薬剤自体の特性を使用する機会がある。難溶性薬剤は、ハイドロゲル内で特にゆっくりと溶液中に進入することができる。ハイドロゲルは、薬剤の放出のために、ハイドロゲルの分解(生体内分解)を必要とせずに、拡散を容易に可能にするように製造することができる。ハイドロゲルの特性は、薬剤の溶解性を利用して、放出を制御するように設計することができる。このような特性として、生体内分解に依存することなく薬剤の拡散を達成するマトリックス構造、ハイドロゲル内での薬剤の分散を可能にするハイドロゲルの製法、並びに例えばミクロ及び/若しくはナノ粒子又は液滴として懸濁させる薬剤の達成が挙げられる。薬剤は、粒子内に封入したり、又は他にそれらを放出するために生体内分解を要する材料と組み合わせたりする必要がない。さらに、送達が制御されて、薬剤の最終バーストの放出が潜在的毒性効果を回避する範囲内に維持されるように、ハイドロゲルは、それが達する薬剤よりも長く持続するように製造することができる。
【0009】
いくつかの実施形態は、特に眼の外部で、非封入薬剤の代わりか又は追加として、粒子内への薬剤の封入を達成する。これらの粒子は、それらの周囲にハイドロゲルを形成する1つ又は複数の前駆体と混合することができる。粒子の封入については、以下にさらに詳しく論じる。
【0010】
一般に、眼は、競合する設計要件を有する環境を提示する。一方では、眼の体積は限られているため、大きい体積のデポは好ましくない。他方では、例えば、注射によるデポの眼内への配置は、ある程度の不快感と外傷とを伴うことから、大型デポは、配置の頻度を最小限にする上で役立つ。さらに、眼は、一般に敏感であり、有効な視覚のための要件を妨害する位置にデポを配置する場合、小型デポの製造が目標となる。さらに、治療薬剤は、有効である最小濃度を必要とするが、濃度が高すぎると毒性作用を有し得る。従って、薬剤は、インプラントの寿命全体を通して過度に高速で放出されることなく、有効であるために十分に迅速且つ一貫して放出されなければならない。薬剤周囲のハイドロゲルの使用は、インプラントに体積を加えるという課題を呈する。薬剤の拡散を可能にする内部空間を有するハイドロゲルの場合、眼を擦ったり若しくは偶発的な力が加わったりすること、又は薬剤の標的である特定の疾病に存在する高い眼圧など、眼に加わる機械的力に耐えるインプラントを製造するのに機械的課題がある。開放的な軽度に架橋したハイドロゲル構造は、高い柔軟性を有する傾向があるが、より近接した架橋を有する比較的閉じたハイドロゲルと比較して機械的強度が低い。
【0011】
しかし、眼の小さい体積を短所ではなく、利点として利用することが可能である。薬剤の拡散を可能にするハイドロゲルは、ハイドロゲル内の薬剤の濃度だけでなく、眼の限られた体積内の薬剤の濃度にも影響される。従って、放出される薬剤の量がさらに放出を制限し得ることから、比較的開放的なマトリックスを用いたハイドロゲルデポは、放出を制御するパラメータとして眼の小さい体積を利用することができる。このように、ハイドロゲル構造、サイズ、形状、充填、及び材料の選択を薬剤の特性と組み合わせて均衡させることにより、有効な制御放出インプラント装置を提供することができる。実際に、これらの様々な競合する設計特徴を調和させて、薬剤の有毒な過剰放出を回避しながら、ある期間にわたり有効濃度の薬剤の送達を達成することができる。
【0012】
薬剤の拡散を可能にするハイドロゲルとは対照的に、腐食性ハイドロゲルは、マトリックスが腐食するまで拡散を阻止する。このような設計は、薬剤の放出速度を直接制御するという利点を有する。こうした設計は、比較的高密度に架橋されたマトリックスを有するため、例えば、患者が眼を擦ったり若しくは偶発的な力が加わったりすること、又は薬剤の標的である特定の疾病の場合の眼の内部応力などにより、その挿入中又は挿入後に伴う機械的力に耐えるように、それらを機械的に堅固なものにすることができる。
【0013】
水溶液中の前駆体からインサイチューで作製した局所形成ハイドロゲルは、眼の薬剤送達又は他の部位への薬剤送達のための薬物又はその他の治療薬剤のデポとして役立ち得る。本明細書には、組織又は器官上においてインサイチューで形成されて、薬剤を送達することができるハイドロゲルが記載される。組織上という用語は広義であり、組織との、組織内、組織の周囲、組織空隙又は欠損内、身体の潜在空間内などでの接触を含む。1つの器官は組織である。器官上という用語は広義であり、器官内、器官上、器官の周囲などを含む。インサイチューは、材料を配置することが意図される部位で材料を形成することを指す。従って、ハイドロゲルは、例えば、制御放出のための薬物デポとしてハイドロゲルを使用することが意図される部位で、患者においてインサイチューで形成され得る。一部のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)などの特定の薬物は、眼の組織と直接接触するため、点眼薬の形態であっても角膜毒性を有することが明らかにされている。ハイドロゲルの利点は、ハイドロゲルが、例えば、固体粒子又は懸濁形態の薬剤との接触から組織を保護することである。薬剤は、拡散形態でハイドロゲルからゆっくりと放出される。
【0014】
別の実施形態は、身体の外部で形成されて、身体に、例えば、硝子体内に挿入されるハイドロゲルを含む。実施例1には、5%又は10%w/wPEGの固形物濃度のポリエチレングリコール(PEG)マトリックスを用いて製造された2つのハイドロゲルの膨潤及び持続性を記載する(表3を参照されたい)。ハイドロゲルは、求電子末端基(スクシンイミジルアゼレート、SAZ)を有する第1のPEG前駆体と、求核末端基(アミン)を有する第2のPEG前駆体とから製造された。PEGは、4又は8つのアームを有し、各々20kの公称分子量を有した。これらは、多糖(1%w/wのヒアルロン酸、HA)の存在下において緩衝溶液中で組み合わされた。この組合せは、スモールボアニードルによる注射に適した低粘度を有することが判明し、得られたハイドロゲルマトリックスは、空間ゲル化、例えば、眼房内、硝子体内、又はその他の位置でその形状及び機械的完全性を維持する構造を提供した。前駆体は、注射針通過性(syringeability)及び優れた凝集性を有する。HAは、高分子量非ニュートン線状分子であり;前駆体溶液の粘度を高めると共に、高せん断状況(細いゲージニードルの通過)下でも良好に機能した。約1%w/wで850kDa HAの様々な希釈物を試験したところ、この場合、優れた結果をもたらした。各前駆体を溶解するのに用いた緩衝剤は、混合すると中性pHを生成し、SAZ前駆体を含む緩衝剤は、溶液中のポリマーの安定性を維持する(前加水分解を回避する)ために低pHであった。これらの成分の各々は、一緒に混合すると、形状安定性及び体積安定性を維持するハイドロゲルを形成し、2~3分でハイドロゲルを形成するまで空間内でその形状及び位置を保持した。
図7及び8は、生理学的緩衝液(PBS)にインビトロで導入されたこれらのハイドロゲルデポについて、膨潤及び寸法変化のプロットをそれぞれ描写する。さらに、ハイドロゲルが分解するにつれて、液化前の1000%に向かう上方線形トレンドで膨潤し続けることも観察された。ほとんどの寸法変化は、最初の1時間以内に起こる。ハイドロゲルが分解するにつれて、ハイドロゲルは機械的に弱くなり、膨潤した。これらの試験は非抑制領域で実施されたが、インビボで形成されれば、周囲の機械的力が膨潤を制限する条件下においてインビボで最小限に膨潤するであろう。
【0015】
実施例2では、実施例1の組成物のハイドロゲルは、視覚化のための少量のフルオレセインをさらに含み、眼内に体積約25μLの薬剤デキサメタゾンがインサイチューで形成された。デポを外植し、過剰量のPBS中に配置して、薬剤の放出及びハイドロゲルの持続性を観察した。薬剤は、ハイドロゲルから内側方向に排出されることが認められ、インプラントの辺縁は薬剤の濃度が最も低く、ハイドロゲル内側は最も高い濃度を有した(
図9)。ハイドロゲルは、12日の観測期間中、実質的に持続性であり、視覚観察は、本明細書のプロットに示す放出量及び持続性データと一致していた。ハイドロゲルは、ハイドロゲルの操作に基づき、安定した形状及び一貫した機械的性質を有した。実施例3~8は、様々なハイドロゲル及び薬剤の作製及び使用の詳細な例を提供する。実施例9は、薬剤を放出するためのハイドロゲルをインビボで製造するためのキットの製造方法の一例である。当業者は、本開示の他の箇所に記載されるあらゆる種類の前駆体、薬剤、及び適用部位を用いてハイドロゲルを製造及び使用するために、これらの実施例及びより広く全ての実施例を応用する方法を容易に理解することができる。
【0016】
実施例10は、多様な例示的薬剤、フルニソリド(溶解度90μg/mL)、ベタメタゾンリン酸ナトリウム(水に易溶性)、ブデソニド(30μg/mL)、及びトリアムシノロンアセトニド(20μg/mL)の放出プロフィールを示す。これらの薬剤をPBS中に導入するか、又はPBS中に導入したハイドロゲル(
図10)内に分散させ、求電子基を有する親水性前駆体(4アームPEG)及び求核基を有する小親水性前駆体(トリリシン)からハイドロゲルを作製した。薬剤含有ハイドロゲルデポからの放出速度を非希釈製剤中の同量の薬剤の溶解プロフィールと比較した(
図11A)。
【0017】
図11B及び11Cは、実施例10のデータのプロットである。
図11Bは、時間の平方根に対する薬物放出が、薬物溶解度、薬物拡散度、初期薬物濃度、デポ表面積、及びその他のデポ設計因子に比例する傾き(傾きは、Higuchi係数、Kに等しい)を有する線形関係であることを示す、Higuchiプロットである。
図11Cは、同じ初期薬物濃度及びその他のデポ設計因子について、Kに対する溶解度の線形関数を示す。例示的な薬剤(フルニソリド)について、経時的なデポからの薬物放出の視覚的表示を
図12に示す。結果から、ハイドロゲルの閉鎖空間内への等質量の薬剤の捕捉は、等量の溶出溶媒に容易に分散した薬剤と比較して薬剤の放出速度をかなり遅延させることと、漸減薬物放出プロフィールは、薬物溶解度と相関することとが明らかになった。
【0018】
これらのデータは、インサイチューデポからの持続的放出速度をさらに確立すると共に、インビボ条件をモデル化するものである。例示的薬剤(ステロイド)の懸濁液を含有するプレハイドロゲル材料を粘性硝子体の閉鎖空間中に注射すると、注射部位に球状ハイドロゲルデポを生成することが観察された。インビトロで形成されたこれらのデポ例は、類似した球状ハイドロゲルデポを生成した(例えば、
図10)。これらのインビトロで形成されたデポからの薬物放出データにより、インビボ薬物放出速度の予測が可能になる。このタイプの構築物からの放出についてのHiguchiの式は、以下(Siepmann,J.;Peppas,N.A.Modeling of Drug Release from Delivery Systems Based on Hydroxypropyl Methylcellulose(HPMC).Adv.Drug Deliv.Rev.2012,64,Supplement,163-174):
【数1】
によって表すことができる。
【0019】
M
tが時間tで溶出した薬物の質量である場合、Aは表面積、C
0は初期薬物濃度、C
sは薬物溶解度、Dは拡散係数である。この式は、C
0>>C
s、辺縁効果を無視することができ、ハイドロゲルデポの膨潤又は溶解を無視することができ、拡散性は一定であり、温度及びpHは一定であり、完全なシンク条件が維持されることを想定する。より一般的には、この式は、
【数2】
のように表すことができる。
【0020】
M∞が無限時間で放出された累積薬物である場合、kは、デポ設計変数を表す定数(Higuchi係数)である。従って、薬物又は薬物画分放出プロフィールは、時間に対してプロットされると漸減するが、時間の平方根に対してプロットされると線形である。
【0021】
このように、難溶解性薬剤の放出は、ハイドロゲル内の生理学的環境での薬剤の限定的な溶解度により、また、生理学的環境とのハイドロゲル界面での濃度勾配(完全なシンク条件下で薬剤溶解度と等しくなる)により調節される。濃度勾配の前線が界面から遠ざかるにつれ、漸減薬物放出プロフィールが形成される。この退行前線は、デポ周辺で漸増する透明なゾーンとして認めることができる。従って、デポ内の難溶性薬剤の量を調節すれば、薬剤放出の持続時間を調節することができる。硝子体内のデポからの薬物放出速度は、硝子体内への非制約の非希釈ステロイドの注射と比較して延長され、これにより、眼内の薬物の作用の持続時間が長くなることが期待される。別の利点は、眼内で移動する不溶性薬物粒子が、粒子が視軸に進入すると有害な組織反応又は視覚障害を起こし得るのに対し、薬物の粒子がハイドロゲル内に捕捉されることである。インサイチューで形成されるハイドロゲルデポからの薬物放出速度に影響を与えることが予想される因子として、以下のものが挙げられる:薬物溶解度、薬物粒子(液体又は固体)サイズ、一般的な溶解度因子(pH、温度、塩類など)、様々な濃度及び勾配を生成するデポ内の薬物量、デポ内の薬物の均質性、デポ表面積、デポ界面での流体ターンオーバー又は交換速度、ハイドロゲル分解及び溶解、デポ添加剤(界面活性剤など)、及び場合により薬剤の溶解度を改変することが知られているその他の因子。
【0022】
実施例11に記載される類似の構築物では、架橋され、円筒状デポとして形成された親水性ハイドロゲル前駆体溶液中に様々な薬剤を懸濁させた。薬剤懸濁ゲルをチューブから取り出し、溶出溶媒中でエクスビボ放出を開始した。デポ界面からの内部へのゾーンクリアランス(放出されたステロイド)を観察し、視覚的に記録した。
図13~16を参照されたい。同様の観察が、インビボ薬剤放出中に経時的に起こると予想される。
【0023】
実施例12~14は、バーストで放出された薬剤の潜在的毒性を試験する実験の結果を詳述する。ハイドロゲルデポは、ある期間にわたり有効濃度の薬剤を一貫して放出する。この期間後、ハイドロゲルは機械的完全性を喪失し、マトリックス構造は組織が緩くなる。この分解段階中に残留する薬剤があれば、薬剤は、より高速に又はバーストで放出される可能性があり、その結果、薬剤は、有効性に必要なものよりも高い濃度となるか、又は恐らく局部組織に対して有毒な量となる。総量及び残留量の薬剤に関してどの程度の持続性が必要となるかを理解するために、眼のインビボ試験を実施して、バースト放出の潜在効果を測定した。送達プロセスに関与する多数の設計変数を考慮すると、本明細書に記載される送達方法が眼の空間に適切であることを証明するために、いくつかの実験が必要であった。結果から、様々な設計変数を満たしながら、持続的期間にわたって薬物を有効に送達するための好適な持続性、充填、及びその他の因子と共に、デポを設計することができることがわかる。
【0024】
ハイドロゲルデポは、使用が意図されるその部位に有効濃度の薬剤を提供するように設計される。有効量又は有効濃度又は治療有効/濃度という用語は、有益又は所望の結果をもたらす上で十分な薬剤の量を指す。有効量は、治療しようとする被験者及び病状、被験者の体重及び年齢、病状の重症度、投与方法などのうちの1つ又は複数に応じて変動し得るが、これは、当業者が容易に決定することができる。有効濃度は、薬物動態効果によって示すことができる。代替案として、計算有効量を提供してもよく、これは、基質に対する薬剤のIC50の50~100倍の量を意味し;当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、50、60、70、80、90、又は100のいずれも上限又は加減として使用可能であることを直ちに認識するであろう。IC50は、半数阻害濃度(作用を50%低減する濃度)、例えば、不要な病理学的作用の阻害を指す。
【0025】
眼の解剖学
哺乳類の眼の構造は、3つの主要な層又は被膜:線維膜、血管膜、及び神経膜に分けることができる。線維膜、別名眼球強膜は、角膜及び強膜からなる眼球の外層である。強膜は、眼球の支持膜であり、眼にその白色の大部分を付与する。これは、角膜(眼の透明な前面部分)から眼底の視神経に延びている。強膜は、密に充填されたコラーゲン繊維から構成される、約70%含水率の繊維質で弾性がある保護組織である。
【0026】
線維膜の上に結膜がある。結膜は、強膜(眼の白い部分)を覆う膜であり、瞼の内面を覆っている。結膜は、強膜を効果的に取り囲み、覆い、且つ強膜に付着する。それは、細胞組織及び結合組織を有し、幾分弾性があり、除いたり、細かく裂いたり、他の方法で取り除いて、強膜の表面部分を露出させることができる。血管膜、別名眼球血管膜は、虹彩、毛様体、及び脈絡膜を含む中間の血管付きの層である。脈絡膜は、網膜細胞に酸素を提供し、呼吸の老廃物を除去する血管を含む。
【0027】
神経膜、別名眼球神経膜は、網膜を含む内部感覚器官(inner sensory)である。網膜は、感光性の桿体及び錐体細胞並びに関連するニューロンを含む。網膜は、比較的なめらかな(しかし、湾曲した)層である。それは、異なる2つの点;中心窩及び視神経乳頭を有する。中心窩は、レンズのまさに反対側にある網膜のくぼみであり、錐体細胞が密に詰まっている。中心窩は黄斑の一部である。中心窩は、主としてヒトの色覚を担い、読むのに必要な高い視力を可能にする。視神経乳頭は、視神経が網膜を突き抜け、その内側で神経細胞と結合している網膜上の点である。
【0028】
哺乳類の眼は、2つの主なセグメント:前部及び後部にも分けることができる。前部は、前眼房及び後眼房からなる。前眼房は、虹彩の前で、角膜内皮の後ろに位置し、瞳孔、虹彩、毛様体及び房水を含む。後眼房は、虹彩の後ろで、硝子体表面の前に位置し、そこで、水晶レンズ及び小帯線維が水性環境中の水晶体前嚢と水晶体後嚢との間に位置している。
【0029】
光は目に入り、角膜を通って、2つの体液のうちの第1体液、すなわち房水へと入る。眼の屈折力全体のおよそ2/3は、一定の曲率を有する角膜に由来する。房水は、角膜を眼のレンズと結び付ける透明な塊であり、角膜の凸形状を維持するのに役立ち(レンズでの光の集中に必要である)、角膜内皮に栄養を提供する。
【0030】
後部は、水晶体の後ろで、網膜の前に位置する。それは、前部硝子体膜と、硝子体液、網膜、及び視神経を含むその後ろの全構造とを含む眼の約2/3を占める。レンズの反対側に、第2体液である硝子体液があり、これは、あらゆる方向でレンズ、毛様体、提靭帯及び網膜により拘束されている。それは、屈折なしで光を通し、眼の形状を維持する上で役立ち、脆弱なレンズを浮遊させている。
【0031】
図1は、強膜12、虹彩14、瞳孔16、及び瞼18を有する眼10を描写する。
図2は、眼10の斜視図を描写し、レンズ20、下斜筋21、下直筋23、及び視神経25を描写する部分的断面図を含む。
図3は、眼10の断面であり、光学的に透明で、光を虹彩14に通し、レンズ20を通過させる角膜22を描写している。前眼房24は、角膜22の下にあり、後眼房26は、虹彩14とレンズ20との間にある。毛様体28はレンズ20に接続している。
図3は、強膜12の上にある結膜30の一部を描写する。硝子体32は、ゼリー状の硝子体液を含み、硝子体管34がその中にある。中心窩36は黄斑中にあり、網膜38は、脈絡膜37上にある。小帯隙42が描写されている。
【0032】
図4は、様々な硝子体内配置の概略図を描写する。複数のデポを形成してもよく、又は1つでもよい。デポは、多様な形状、例えば、細長、楕円形、球形、実質的に球形、長円形、円柱状、実質的に円柱状、円板状、又は実質的に円板状を有し得る。実質的に球形という用語は、ハイドロゲルが、ハイドロゲルの周りに描かれる球体の体積の少なくとも70%を占めることを意味する。球形という用語は、ハイドロゲルが、ハイドロゲルの周りに描かれる球体の体積の少なくとも85%を占めることを意味する。実質的に円板状という用語は、ハイドロゲルが、ハイドロゲルの周りに描かれる円柱の体積の少なくとも70%を占め、円柱の高さが円柱の直径未満であることを意味する。実質的に円板状という用語は、ハイドロゲルが、ハイドロゲルの周りに描かれる円柱の体積の少なくとも85%を占め、円柱の高さが円柱の直径以下であることを意味する。実質的に円柱状という用語は、ハイドロゲルが、ハイドロゲルの周りに描かれる円柱の体積の少なくとも70%を占め、円柱の高さが円柱の直径より大きいことを意味する。実質的に円柱状という用語は、ハイドロゲルが、ハイドロゲルの周りに描かれる円柱の体積の少なくとも85%を占め、円柱の高さが円柱の直径より大きいことを意味する。他の形状及びサイズも部位及び適用に合わせて選択することができ、不規則な形状も企図される。本明細書の他の箇所に記載される体積、例えば、1ml未満、0.005~5mlなども適用可能であり;当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、10、20、25、50、100、150、200、250μL;0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2、3、4、5mlのいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。1つ又は複数のこのようなデポを形成することができる。
図5は、脈絡膜上の配置を示す。以下により詳しく説明するように、他の器官もハイドロゲルの配置部位となり得る。例えば、ハイドロゲルは、癌が除去された又は位置する他の部位など、天然若しくは手術空隙又は潜在空隙内に形成してもよい。部位は、例えば、前立腺癌の治療のための前立腺又は乳癌などの癌の部位へのハイドロゲル材料の配置を含む。
【0033】
インサイチューでハイドロゲルを形成するための前駆体の適用
眼底疾患は、例えば、局所、全身、眼内及び結膜下送達経路を使用して薬物で治療することができる。全身及び局所薬物送達法では、後部疾患を治療するための治療薬レベルの送達を達成できない可能性がある。これらの薬物送達方法は、眼内及び全身系の固有の解剖学的な障壁のために拡散及び薬物希釈の問題に直面し、有意な患者の副作用(1日あたりの多回投与による)、乏しいバイオアベイラビリティ及びコンプライアンスの問題を招く。眼内薬物送達インプラントを配置するための送達位置は、一般に、治療を必要とする疾患及び薬物療法の種類に左右される。
【0034】
後部眼疾患における網膜への薬物の治療量の送達には依然として課題が残っている。抗VEGF剤の硝子体腔への硝子体内注射は、黄斑変性などの加齢による慢性疾患を停止し、場合により逆転させる見込みを示したが、これらの技法及び手順にリスク及び副作用がないわけではない。硝子体腔への治療薬剤の硝子体内投与は、白内障、眼内炎及び網膜剥離を引き起こし得る。この形態の療法では、多くの患者が12ヵ月の期間にわたって毎月抗VEGF剤の硝子体内注射を受ける必要があるため、感染症、硝子体嵌頓及び網膜剥離のリスクが増加する。インサイチューハイドロゲル生分解性薬物インプラントを対象とする実施形態は、眼疾患の有効な代替治療を提供し、繰り返される硝子体内注射に伴う共通の副作用を低減することが期待される。硝子体内、前眼房内又はその他の眼の生分解性薬物送達インプラントシステムの実施形態を以下に要約する。
【0035】
図4及び5は、眼10又はその付近のいくつかの送達地点を示す。位置は、前眼房内、硝子体内若しくは網膜又はその付近を含む。ハイドロゲルは、網膜上に載せることができるが、網膜からいくらかの間隔を有するのが有用である。間隔は、例えば、0.1~10mmであってよく;当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0036】
他のセクションでさらに詳しく説明するように、インサイチューハイドロゲル薬物送達インプラントの薬物デポは、例えば、約1~約12又は36ヵ月の範囲の制御された長期薬物送達のために設計することができ;任意選択で、例えば、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞及び嚢胞黄斑浮腫をはじめとする眼底疾患の治療を対象とし得る。装置は、様々な病状のための多種の治療薬剤の薬物ペイロードを担持し得る。
【0037】
適用の一様式は、前駆体と他の材料(例えば、治療薬剤、増粘剤、加速剤、開始剤)との混合物をニードル、カニューレ、カテーテル、又は中空のワイヤーに通して、眼内又は眼の付近の部位に加えることである。混合物は、例えば、手作業で制御されるシリンジ又は機械的に制御されるシリンジ、例えば、シリンジポンプを使用して送達できる。或いは、デュアルシリンジ又は多筒式シリンジ又はマルチルーメン系を用いて、前駆体を部位又は部位の近くで混合することができる。必要に応じてシリンジ-シリンジ混合を使用してもよい。
【0038】
薬物送達デポが形成され得る部位としては、とりわけ、眼、前眼房、硝子体、強膜上、後部テノン嚢下腔(下結膜円蓋)、結膜下、テノン嚢下、網膜、網膜下、小管内、眼房内、硝子体内、強膜内、脈絡膜、脈絡膜上、網膜、網膜下、又はレンズ、角膜若しくは結膜の表面が挙げられる。従って、実施形態は、このような部位に有効量又は計算有効量を、例えば、眼、前眼房、硝子体、強膜上、後部テノン嚢下腔(下結膜円蓋)、結膜下、テノン嚢下、網膜、網膜下、小管内、眼房内、硝子体内、強膜内、脈絡膜、脈絡膜上、網膜、網膜下、又はレンズ、角膜若しくは結膜の表面に提供することを含む。
【0039】
ハイドロゲルデポ形成のための部位として、さらに、組織、管腔、空隙、潜在空隙、動物(ヒト若しくはその他)内部、又は動物の表面が挙げられる。組織という用語は広義である。部位には、医原病部位、組織が除去された部位、及び手術部位が含まれる。部位としては、癌組織又はその付近、歯系組織、歯肉、歯周、副鼻腔、脳、血管内、動脈瘤、及び疾病部位が挙げられる。
【0040】
増粘剤
増粘剤は、薬剤と共に眼内又は眼の上に形成されるハイドロゲルに有用となり得、ハイドロゲルが形成する間、溶液がその配置部位に付着するか、又は粘着性塊を維持するのを促進する。増粘剤の選択は、発生する架橋の種類を考慮して実施しなければならない。増粘剤は、前駆体と一緒に用いることができる。一般に、増粘剤は、前駆体と反応して共有結合を形成しない。一般にこうした結合がない前駆体が場合により不要な副反応に関与し得ることが認識されているが、これらは、ハイドロゲルにはほとんど影響を及ぼさないため、前駆体にはこうした反応が「ない」。例えば、前駆体が求電子基-求核基反応により反応する場合、増粘剤は、低レベルの不要な副反応が幾分あるにしても、前駆体の官能基と共有結合を形成し得る求電子基又は求核基を含まないであろう。増粘剤は、一般に、分子量が少なくとも20,000、100,000又は約100,000~約2,000,000ダルトンの親水性ポリマーであり;当業者は、これらの明示される値間のあらゆる数値及び範囲、例えば、少なくとも約100,000、200,000、500,000超、550,000超、600,000が記載されることを直ちに認識するであろう。例えば、約5%~約25%の濃度を使用してよい。例えば、PEG(例えば、M.W.100,000~250,000)が有用である。増粘剤は、求電子基/求核基を含まなくてもよい。増粘剤は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、又はチオールなどの1つ又は複数の官能基を含まなくてもよい。増粘剤は、前駆体について本明細書に記載するような1つ又は複数の生分解性結合を含んでいてもよい。増粘剤は、前駆体が架橋してゲルを形成するまで、前駆体が組織部位から流れ落ちるのを防ぐ上で有用となり得る。
【0041】
別の考察事項は、薬剤が小さい直径のシリンジ又はカテーテルを通過しなければならないか否かという注射通過性と呼ばれる特性である。チキソトロープ増粘剤を使用することができ、これにより、増粘剤は、移動中、ほとんど抵抗をもたらさないが、静止状態では濃厚ゲルを形成する。ヒアルロン酸(HA)は、有用なチキソトロープ増粘剤であることが判明した。100,000~2,500,000の分子量(平均w/w)が試験されている。これらの結果は、より高いMW(例えば、5000k)も使用できることを示している。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、100k、200k、300k、400k、500k、600k、700k、800k、900k、1000k、1500k、1800k、2000k、2500k、3000k、4000k、5000kのいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。その他のチキソトロープ増粘剤としては、高分子量多糖、又は親水性ポリマー、又はPEGが挙げられる。0.3~2.5%w/wのパーセンテージが試験され、最適なパーセンテージは、試験されるMWに左右される。一般に、0.2~5%の範囲の多糖をハイドロゲル/ハイドロゲル前駆体に添加してよいが、当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5w/wパーセントのいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0042】
ハイドロゲル特徴及び特性
ハイドロゲルは、一実施形態では、架橋を形成してハイドロゲルを架橋し、これにより、ハイドロゲルを形成する官能基を有する前駆体から形成される。架橋は、本質的に共有結合性及び/又は物理的であり得る。ハイドロゲルは、眼又はその他の部位に薬物を送達する。いくつかの実施形態では、高度に流動性の前駆体を使用し、これは、十分に低速でゲル化するため、非常に小さい口径のカニューレ又はニードルを通過して、実質的に注射後にのみ架橋するが、切開の跡を戻って移動しないように十分迅速にゲル化する。ゲルは、生分解性であり、酸性ではない成分に分解することにより、炎症を引き起こすことなく眼内又は眼の周りの生理液中で分解する。いくつかの実施形態では、ゲルは組織に付着する。
【0043】
ハイドロゲルは、その治療薬剤内容物を放出するか、又は内容物を実質的に放出するまで持続させるか、又は実質的に持続させることができる。ハイドロゲルは、薬剤がハイドロゲルから拡散することができるように製造されるのが好ましい。一方、ゲルから薬剤を拡散させると、薬物送達の速度を制御する選択肢がなくなる。そのため、分解性材料からの薬物送達の実施の場合、通常、薬物を放出することができるように材料が分解することが要求される。ハイドロゲルの場合、架橋間の距離は、ハイドロゲルが腐食するまで薬物がそれを通過して移動できないように十分に小さくすることができる。放出を制御するのは生体内分解速度である。それでもなお、生体内分解に基づくアプローチの放棄は有用となり得る。従って、本発明の実施形態は、ハイドロゲルを通して治療薬剤の拡散を可能にするハイドロゲルを用いて実施することができる。マトリックスは、拡散を可能にする架橋間の間隔と共に製造することができる。
【0044】
実質的に放出されるという用語は、別に記載のない限り、約97%w/wiの薬物が放出されることを意味し、これは、測定時、ハイドロゲル中の薬物が初期重量wi及び重量、wを有したことを意味する。他のエンドポイント、例えば、50~100パーセント持続性を選択してもよく;当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5、99.9、99.99パーセントのいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。範囲という用語は、別に記載のない限り、数値が範囲内のあらゆる値となり得ることを意味する。実質的に持続するという用語は、別に記載のない限り、ハイドロゲルの乾燥重量の約97%w/wiが保持されることを意味し、これは、測定時、ハイドロゲルが初期重量wi及び乾燥重量、wを有したことを意味する。他のエンドポイント、例えば、50~100パーセントを選択してもよく;当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5、99.9、99.99パーセントのいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。持続性は、ハイドロゲルの初期乾燥重量に対するハイドロゲルの乾燥重量であり;これは、外植されたハイドロゲルを洗浄し、組織浸潤の重量を計上した直後に、例えば、デポを消化し、組織浸潤を除去した後のハイドロゲルマトリックスの含量を計量することによって測定することができる。さらに、持続性/放出の範囲/値は、混合及び組み合わせることができる。例えば、薬物が99%放出されるとき、ハイドロゲル持続性は95%である。明らかなように、これらのパーセンテージ値は全て別に記載のない限り、w/wである。
【0045】
また、様々な時点での持続性及び放出に関して、ハイドロゲル/薬剤の組合せについて述べることも有用である。例えば、薬剤の放出が50%であるとき、特定の持続性を有することが望ましいであろう。従って、既に示した持続性/放出の組合せ以外に、0%~100%の持続性の範囲及び0%~100%の放出の範囲があり得;当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、0、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、49.9、50、50.1、55、65、70、75、80、85、90、95、100(これらは全てw/wパーセンテージである)のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。薬物は広義の用語であり、本明細書では治療薬剤という用語と置き換え可能に用いられる。
【0046】
安定性及び機械的完全性は、ハイドロゲルの制御に関与する2つのさらなる因子である。これに関して、安定性は、形状の安定性である。ハイドロゲルは形成の時点で安定していても、後に機械的完全性を失い、その形状を変え、変形され、伸張又は収縮するに従って安定性を喪失し得る。安定性の1つの測度は、体積の変化(体積安定性)である。ハイドロゲルは、インサイチューで水和すると、初期体積を有することになる。ハイドロゲルは、局所流体と十分に均衡しており、2週間以上の期間で分解するゲルの場合、実質的に分解が起こっていないことから、通常、配置から24時間後の体積が初期体積の優れた測度である。従って、ハイドロゲルは、100%の初期体積で製造することができ、完全に生分解されると、最終的に0%の体積に達することになる。もう1つの安定性の測定基準は、初期形状の位置の変化率である。ある時点での形状の重なりを初期形状と比較する(形状安定性)。完全な安定性を100%、安定性の完全な終了を0%として、移動しておらず、消失していない初期形状の体積量を計算する。安定性は、日数、週数、又は月数などの時間に関して表すことができる。及び/又は安定性は、薬剤の放出に関して表すこともできる。粘着性塊として配置するように設計されたハイドロゲルをインビボで使用する場合、ハイドロゲルに作用する力は、典型的に、ハイドロゲルがその初期機械的完全性を保持する限り、ハイドロゲルをその初期形状から変形させないであろう。従って、安定性は、多くの場合、機械的完全性の代わりに使用することができる。実質的に安定しているとは、形状又は体積測度による約97%超を意味する。形状又は体積安定性は、持続性又は放出を考慮して設定することができ、従って、放出が0~100パーセントであるとき、例えば、80~100パーセントの値であるように選択することができ;当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、0、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、49.9、50、50.1、55、65、70、75、80、85、90、95、100(これらは全て形状又は体積のパーセンテージ又はw/w放出パーセンテージである)のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0047】
また、安定性及び機械的完全性を用いて、前駆体を含み、注射からゲル化まで空間(硝子体内、又はその他の位置にかかわらず)内で形状及び機械的完全性を維持する注射液を参照として表示することもできる。別の空間の例として、点(涙小管、上/下涙小管)、結膜円蓋、上/下結膜円蓋、テノン嚢下腔、脈絡膜、脈絡膜上、テノン嚢、角膜、癌組織、器官、前立腺、乳房、手術により生じた空隙又は傷害、空隙、及び潜在空隙がある。いくつかの実施形態は、涙点プラグのインサイチュー形成を含み、前駆体を涙小管中に導入して、そこで涙点プラグを形成する。従って、前述した形状及び体積安定性が溶液のために考慮される。
【0048】
一般に、本明細書に記載するように、眼若しくは他の組織内又はその付近で前駆体を組み合わせることにより、治療薬剤を含む架橋ハイドロゲルを作製してもよく、治療薬剤は、疾患を治療するために好適な期間にわたって眼内に放出される。ハイドロゲルは低膨潤性であってもよく、これは、形成時のハイドロゲルの重量と比較して、生理液に24時間曝露した後、約10%又は約50%以下の重量増加を有するハイドロゲルによって測定可能であり;当業者は、明示される範囲内のあらゆる範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。ハイドロゲルはまた、ハイドロゲル中の水分解性基の分解によって過剰量の水にインビトロで溶解可能なハイドロゲルによって測定可能であるように水分解性であり得る。そこで混合された前駆体を含む組成物は、小ゲージニードルを通して導入することができ、その際、組成物は、好適な粘性を有するものとし、この粘性は、前駆体の特性、濃度、及び化学に左右される。さらに、ハイドロゲルの機械的強度及び反応時間は、前駆体及び官能基の制御により調節される。前駆体及びハイドロゲルは、有効な装置を製造するための考察事項による指針に従って、混合及び組み合わせることができる様々な特徴を備えることができ、以下のセクションでこれらの特徴の一部を説明する。
【0049】
前駆体材料
ハイドロゲルは、前駆体から製造される。前駆体は、結果として生じるハイドロゲルに望まれる性質を考慮して選択される。ハイドロゲルの製造に使用するための種々の好適な前駆体がある。前駆体という用語は、架橋されてハイドロゲルマトリックスを形成する分子を指す。治療薬剤又は充填剤などの他の材料がハイドロゲル中に存在することがあるが、それらは前駆体ではない。マトリックスという用語は、ハイドロゲルに適用することができる。そのようなマトリックスには、含水率が約20%w/wを超えるマトリックスもあり;当業者は、パーセンテージがw/wであり、ハイドロゲルの溶媒が水であるとして、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、20%、99%、80%、95%、少なくとも50%などのいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。ハイドロゲルは、水溶性分子を架橋して、実質的に無限の分子量のネットワークを形成することによって形成され得る。高含水量のハイドロゲルは、典型的には、柔らかく柔軟な材料である。米国特許出願公開第2009/0017097号明細書、米国特許出願公開第2011/0142936号明細書、及び米国特許出願公開第2012/0071865号明細書に記載されるハイドロゲル及び薬物送達系は、本明細書に提供される指針に従うことにより、本明細書の材料及び方法と共に使用するために改変でき、これらの引用文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれ、矛盾のある場合には本明細書が優先する。
【0050】
ハイドロゲルは、天然ポリマーからでも、合成ポリマーからでも、生合成ポリマーからでも形成できる。天然ポリマーは、グリコサミノグリカン、多糖類、及びタンパク質を含み得る。グリコサミノグリカンのいくつかの例には、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸、硫酸コンドロイチン、キチン、ヘパリン、ケラタン硫酸、ケラト硫酸、及びその誘導体がある。一般に、グリコサミノグリカンは、天然源から抽出され、精製され、誘導体化される。しかし、それらは、合成により製造されることも、細菌などの修飾された微生物により合成されることもある。これらの材料は、自然には可溶性の状態から、部分的に可溶性若しくは水膨潤性、又はハイドロゲル状態に合成により修飾できる。この修飾は、連結又はカルボキシル及び/若しくはヒドロキシル若しくはアミン基などのイオン化可能若しくは水素結合可能な官能基の、より疎水性の他の基による置換などの種々の周知の技法により達成できる。
【0051】
例えば、ヒアルロン酸上のカルボキシル基は、アルコールによりエステル化されて、ヒアルロン酸の溶解度を低下させる。そのようなプロセスは、ヒアルロン酸製品の種々の製造業者(Genzyme Corp.,Cambridge,MAなど)により利用されて、ハイドロゲルを形成するヒアルロン酸系のシート、繊維、及び布地が形成される。他の天然の多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロース又は酸化再生セルロース、天然ゴム、寒天、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、フコイダン、ファーセレラン、ラミナラン、イバラノリ、キリンサイ、アラビアゴム、ガッチゴム、カラヤゴム、トラガカントゴム、ローカストビーンゴム、アラビノガラクタン、ペクチン、アミロペクチン、ゼラチン、プロピレングリコールなどのポリオールと架橋されたカルボキシメチルセルロースガム又はアルギネートガムなどの親水コロイドなども、水性の環境と接触するとハイドロゲルを形成する。
【0052】
ハイドロゲルは、生物学的安定性でも生分解性でもあり得る。生物学的安定な親水性ポリマー性材料の例は、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリラート)、ポリ(電解質錯体)、加水分解性又は他の方法で分解可能な結合と架橋されたポリ(酢酸ビニル)、及び水膨張性N-ビニルラクタムである。他のハイドロゲルには、カーボポール(登録商標)として知られる親水性ハイドロゲル、酸性カルボキシポリマー(カルボマー樹脂は、C10-C30アルキルアクリラートにより変性された、高分子量、アリルペンタエリスリトール架橋されたアクリル酸系ポリマーである)、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、スターチグラフトコポリマー、アクリラートポリマー、エステル架橋ポリグルカンがある。そのようなハイドロゲルは、例えば、Etesの米国特許第3,640,741号明細書、Hartopの米国特許第3,865,108号明細書、Denzingerらの米国特許第3,992,562号明細書、Manningらの米国特許第4,002,173号明細書、Arnoldの米国特許第4,014,335号明細書、及びMichaelsの米国特許第4,207,893号明細書に記載されており、全て参照により本明細書に組み込まれるが、矛盾のある場合には本明細書が優先する。
【0053】
ハイドロゲルは前駆体から製造できる。前駆体は、互いに架橋する。架橋は、共有結合によっても、物理的結合によっても形成できる。物理的結合の例は、イオン結合、前駆体分子セグメントの疎水性会合、及び前駆体分子セグメントの結晶化である。前駆体を反応するように誘発して、架橋されたハイドロゲルを形成できる。前駆体は重合性のことがあり、常にではないが多くの場合に重合性の前駆体である架橋剤を含む。そのため、重合性前駆体は、互いに反応してマトリックス及び/又は反復単位からできたポリマーを形成する官能基を有する前駆体である。前駆体はポリマーであり得る。
【0054】
前駆体の一部は、例えば、付加重合とも称される連鎖成長重合により反応し、二重又は三重化学結合を組み込んでいるモノマーの連結を含む。これらの不飽和モノマーは、分解し他のモノマーと結合して反復鎖を形成できる余分な内部結合を有する。モノマーは、他の基と反応してポリマーを形成する少なくとも1つの基を有する重合性分子である。マクロモノマー(又はマクロマー)は、それがモノマーとして作用することを可能とする少なくとも1つの反応性基を多くの場合に末端に有するポリマー又はオリゴマーである。各マクロモノマー分子は、反応性基の反応によりポリマーに結合する。従って、2つ以上のモノマー又は他の官能基を有するマクロモノマーは、共有結合性の架橋を形成する傾向がある。付加重合は、例えば、ポリプロピレン又はポリ塩化ビニルの製造に関与している。付加重合の1タイプがリビング重合である。
【0055】
前駆体の一部は、例えば、モノマーが縮合反応により結合する場合に起こる縮合重合により反応する。典型的には、これらの反応は、アルコール、アミン又はカルボン酸(又は他のカルボキシル誘導体)官能基を組み込んでいる分子を反応させることにより達成できる。アミンがカルボン酸と反応すると、アミド又はペプチド結合が形成され、水が放出される。縮合反応の一部は、例えば、本明細書に明確に開示されている内容と矛盾しない範囲で参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,958,212号明細書にある通り、求核アシル置換に従う。前駆体の一部は、連鎖成長機構により反応する。連鎖成長ポリマーは、反応中心を有するモノマー又はマクロモノマーの反応により形成されるポリマーであると定義される。反応中心は、化学化合物が関与する反応の開始剤であるその化合物内の特定の位置である。連鎖成長ポリマー化学作用において、これは成長鎖の成長点である。反応中心は、通常、本質的にアニオン性又はカチオン性であるラジカルであるが、他の形態もとり得る。連鎖成長系にはフリーラジカル重合があり、開始、成長、及び停止のプロセスを含む。開始は、ラジカル開始剤、例えば、有機ペルオキシド分子から作られる、成長に必要なフリーラジカルの生成である。停止は、ラジカルがさらなる成長を妨げるように反応するときに起こる。最も通常の停止の方法は、2つのラジカル種が互いに反応して単一の分子を形成するカップリングによるものである。前駆体の一部は、逐次成長機構により反応し、モノマーの官能基間の逐次反応により形成されたポリマーである。ほとんどの逐次成長ポリマーは、縮合ポリマーと分類されるが、全ての逐次成長ポリマーが縮合物を放出するわけではない。モノマーは、ポリマーでも小分子でもよい。ポリマーは、多くの小分子(モノマー)を規則的なパターンで合わせることにより形成された高分子量分子である。オリゴマーは、約20未満のモノマー性反復単位を有するポリマーである。小分子は、一般に、約2000ダルトン未満の分子を指す。このように、前駆体は、アクリル酸又はビニルカプロラクタムなどの小分子であることも、アクリラートによりキャップされたポリエチレングリコール(PEG-ジアクリラート)などの重合性基を含むより大きい分子であることも、本明細書に明確に開示されている内容と矛盾しない範囲で参照により全体として本明細書にそれぞれ組み込まれるDunnらの米国特許第4,938,763号明細書、Cohnらの米国特許第5,100,992号明細書及び米国特許第4,826,945号明細書、又はDeLucaらの米国特許第4,741,872号明細書及び米国特許第5,160,745号明細書のものなど、エチレン型不飽和基を含む他のポリマーでもあり得る。
【0056】
共有結合的に架橋されたハイドロゲルを形成するには、前駆体は共有結合的に架橋されなければならない。一般に、ポリマー性前駆体は、2点以上で他のポリマー性前駆体と接続するポリマーであり、各点は、同じ又は異なるポリマーへの連結である。少なくとも2つの反応中心(例えば、フリーラジカル重合において)を有する前駆体は、各反応基が異なる成長ポリマー鎖の形成に関係し得るため、架橋剤として作用できる。反応中心を有さない官能基の場合、とりわけ、架橋には、前駆体タイプの少なくとも1つの上に3つ以上のそのような官能基が必要である。例えば、多くの求電子求核反応は、求電子官能基及び求核官能基を消費するため、前駆体が架橋を形成するには第3の官能基が必要である。そのため、そのような前駆体は、3つ以上の官能基を有することがあり、2つ以上の官能基を有する前駆体により架橋され得る。架橋された分子は、イオン結合又は共有結合によっても、物理的な力によっても、他の引力によっても架橋され得る。しかし、共有結合の架橋は、典型的には、反応物生成物設計において安定性及び予測可能性を与える。
【0057】
いくつかの実施形態において各前駆体は多官能性であり、それは、1つの前駆体にある求核官能基が別の前駆体にある求電子官能基と反応して共有結合を形成できるように、それが2つ以上の求電子官能基又は求核官能基を含むことを意味する。前駆体の少なくとも1種は、3つ以上の官能基を含むため、求電子求核反応の結果として、前駆体は結合して、架橋されたポリマー性生成物を形成する。
【0058】
前駆体は、生物学的に不活性で親水性の部分、例えばコアを有し得る。分岐鎖ポリマーの場合、コアは、コアから伸びるアームに結合する分子の隣接部分を指し、アームは官能基を有し、それは多くの場合に分岐の末端にある。親水性分子、例えば前駆体又は前駆体部分は、水溶液に少なくとも1g/100mLの溶解度を有する。親水性部分は、例えば、ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド(PPO)、コ-ポリエチレンオキシドブロック又はランダムコポリマーなどのポリアルキレンオキシド、及びポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(ビニルピロリジノン)(PVP)、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、又はタンパク質であり得る。前駆体は、ポリアルキレングリコール部分を有することがあり、ポリエチレングリコール系であり得、ポリマーの少なくとも約80重量%又は90重量%はポリエチレンオキシド反復を含む。ポリエーテル及びより詳細にはポリ(オキシアルキレン)又はポリ(エチレングリコール)又はポリエチレングリコールは一般的に親水性である。当技術分野で通常である通り、PEGという用語は、ヒドロキシル末端基の有無にかかわらずPEOを指すように使用される。
【0059】
前駆体は、高分子(又はマクロマー)でもあり得、これは千~数百万の範囲の分子量を有する分子である。ハイドロゲルは、約1000Da以下(或いは2000Da以下)の小分子としての前駆体の少なくとも1種により製造され得る。高分子は、小分子(約1000Da以下/200Da以下の)と組み合わせて反応する場合、好ましくは小分子より分子量で少なくとも5~50倍であり、好ましくは約60,000Da未満である。当業者は、明示された範囲内の全ての範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。より好ましい範囲は、架橋剤よりも分子量で約7~約30倍の高分子であり、最も好ましい範囲は、重量で約10~20倍の差である。さらに、5,000~50,000の高分子の分子量が有用であり、7,000~40,000の分子量又は10,000~20,000の分子量も同様である。反応の完了のための拡散率など、小分子を有することに特定の利点がある。
【0060】
特定のマクロマー性前駆体は、明確に開示されている内容と矛盾しない範囲で参照により本明細書に全体として組み込まれるHubbellらの米国特許第5,410,016号明細書に記載された架橋性、生分解性、水溶性マクロマーである。これらのマクロマーは、少なくとも1つの分解性領域により分離している少なくとも2つの重合性基を有するという特徴がある。
【0061】
合成前駆体が使用できる。合成は、天然にはなく、通常、ヒトにもない分子を指す。いくつかの合成前駆体は、アミノ酸を含まず、天然にあるアミノ酸配列を含まない。いくつかの合成前駆体は、天然にはなく、通常、ヒトの体内にないポリペプチド、例えば、ジ-、トリ-、又はテトラ-リジンである。いくつかの合成分子はアミノ酸残基を有するが、連続する1、2、又は3個を有するのみであり、アミノ酸又はそのクラスターは、非天然のポリマー又は基により分離している。そのため、多糖類又はそれらの誘導体は合成ではない。
【0062】
或いは、天然のタンパク質又は多糖類、例えば、コラーゲン、フィブリン(フィブリノーゲン)、アルブミン、アルギナート、ヒアルロン酸、及びヘパリンは、これらの方法による使用のために改変され得る。これらの天然分子は、化学的誘導体化、例えば、合成ポリマー装飾をさらに含み得る。天然分子は、その自然の求核剤によっても、例えば、本明細書に明確に開示される内容と矛盾しない範囲で参照により本明細書にそれぞれ組み込まれる米国特許第5,304,595号明細書、米国特許第5,324,775号明細書、米国特許第6,371,975号明細書、及び米国特許第7,129,210号明細書にある通り、それが官能基により誘導体化された後でも架橋できる。天然は、天然にみられる分子を指す。天然ポリマー、例えばタンパク質又はグリコサミノグリカン、例えば、コラーゲン、フィブリノーゲン、アルブミン、及びフィブリンは、求電子官能基を有する反応性前駆体種を使用して架橋できる。通常、体内に見られる天然のポリマーは、体内に存在するプロテアーゼによりタンパク質分解的に分解する。そのようなポリマーは、そのアミノ酸上にあるアミン、チオール、又はカルボキシルなどの官能基により反応することも、誘導体化されて活性化可能な官能基を有することもある。天然のポリマーがハイドロゲルに使用され得るが、そのゲル化時間及び最終的な機械的性質は、追加の官能基の適切な導入及び好適な反応条件、例えばpHの選択により制御されなければならない。
【0063】
前駆体は、生じるハイドロゲルが、必要な量の水、例えば、少なくとも約20%を保持する場合に疎水性部分と共に製造され得る。いくつかの場合、前駆体は、親水性部分も有するためにそれでもなお水溶性である。他の場合、前駆体は水に分散する(懸濁液)が、それでもなお反応可能であり架橋された材料を形成する。いくつかの疎水性部分は、複数のアルキル、ポリプロピレン、アルキル鎖、又は他の基を含み得る。疎水性部分を有する一部の前駆体は、商品名PLURONIC F68、JEFFAMINE、又はTECTRONICで販売されている。疎水性分子又はコポリマーなどの疎水性部分は、その分子(例えば、ポリマー又はコポリマー)を凝集させて、ミセル若しくは疎水性領域が水性連続相中にあるミクロ相を形成するほど十分に疎水性なもの、又はそれのみで試験される場合、pHが約7~約7.5で温度が摂氏約30~約50度の水の水溶液から沈殿するか、若しくはその中で他の方法で相を変えるほど十分に疎水性であるものである。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載される通り、難溶性薬剤又は他の溶解性の薬剤を選択するステップと、疎水性及び親水性部分を含む前駆体を選択するステップとを含む。疎水性/親水性前駆体は、1つ又は複数の官能基:求核基又は求電子基を含んでもよい。こうした官能基を受けるために、親水性部分、疎水性部分、又はその両方を選択してもよい。
【0065】
前駆体の一部がデンドリマー又は他の高度に分岐された材料であり得ることを念頭に置くと、前駆体は、例えば2~100個のアームを有することがあり、各アームは末端を有する。ハイドロゲル前駆体上のアームは、架橋性官能基をポリマーコアに接続する直鎖の化学基を指す。いくつかの実施形態は、3~300個のアームを有する前駆体である。当業者は、明示された範囲内の全ての範囲及び値、例えば4~16、8~100、又は少なくとも6アームが企図されることを直ちに認識するであろう。
【0066】
従って、例えば、ハイドロゲルは、例えば、第1組の官能基を有するマルチアームの前駆体及び第2組の官能基を有する低分子量前駆体から製造できる。例えば、6アーム又は8アームの前駆体は、親水性アーム、例えば、末端が一級アミンになっているポリエチレングリコールを有し得、アームの分子量は約1,000~約40,000である。当業者は、明示された範囲内の全範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。そのような前駆体は、比較的小さい前駆体、例えば、少なくとも約3つの官能基、又は約3~約16個の官能基を有する、約100~約5000、又は約800、1000、2000、又は5000以下の分子量を有する分子と混合され得る。当業者は、これらの明確に示された値の間の全範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。そのような小さい分子は、ポリマーでも非ポリマーでもよく、天然でも合成でもよい。
【0067】
デンドリマーでない前駆体を使用できる。樹枝状分子は、原子が中心コアから放射状に広がる多くのアーム及びサブアーム中に配置されている、高度に分岐した放射対称ポリマーである。デンドリマーは、対称性と多分散性との両方の評価に基づいたその構造完全性の程度という特徴があり、合成に特別な化学プロセスが必要である。従って、当業者は、デンドリマー前駆体を非デンドリマー前駆体から容易に区別できる。デンドリマーは、典型的には所与の環境中でのその成分ポリマーの溶解度に依存し、その周囲の溶媒又は溶質、例えば、温度、pH、又はイオン量の変化によって大幅に変わり得る形状を有する。
【0068】
前駆体は、例えば、米国特許出願公開第2004/0086479号明細書及び米国特許出願公開第2004/0131582号明細書、並びにPCT公報国際公開第2007005249号パンフレット、国際公開第2007001926号パンフレット、及び国際公開第2006031358号パンフレット、又はその米国対応特許にあるようにデンドリマーであり得る。デンドリマーは、例えば、米国特許出願公開第2004/0131582号明細書及び米国特許出願公開第2004/0086479号明細書並びにPCT公報国際公開第06031388号パンフレットにあるように多官能性前駆体として有用であり、US及びPCT出願のそれぞれは、本明細書に明確に開示されている内容と矛盾しない範囲で参照により本明細書に全体として組み込まれる。デンドリマーは高秩序で、高い表面積対体積比を有し、起こり得る官能化のための多くの末端基を示す。実施形態は、デンドリマーでない多官能性前駆体を含む。
【0069】
いくつかの実施形態は、5残基以下のオリゴペプチド配列、例えば、少なくとも1つのアミン、チオール、カルボキシル、又はヒドロキシル側鎖を含むアミノ酸から実質的になる前駆体を含む。残基は、天然又はその誘導体化されたアミノ酸である。そのようなオリゴペプチドの骨格は、天然でも合成でもよい。いくつかの実施形態において、2つ以上のアミノ酸のペプチドは合成の骨格と合わせられて前駆体を作る。そのような前駆体の特定の実施形態は、約100~約10,000又は約300~約500の範囲の分子量を有する。当業者は、これらの明確に示された範囲の間の全範囲及び値が企図されることを直ちに認識するであろう。
【0070】
前駆体は、メタロプロテイナーゼ及び/又はコラゲナーゼによる付着を受けやすい配列を含まないことを含む、導入の部位に存在する酵素により切断可能なアミノ酸配列を含まないように調製され得る。さらに、前駆体は、全アミノ酸を含まないようにも、約50、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは又は1を超えるアミノ酸のアミノ酸配列を含まないようにも製造できる。前駆体は非タンパク質でよく、それは、それらが天然のタンパク質でなく、天然のタンパク質を切断することにより製造できず、合成材料をタンパク質に加えることにより製造できないことを意味する。前駆体は、非コラーゲン、非フィブリン、非フィブリノーゲン、及び非アルブミンでよく、それは、それらがこれらのタンパク質の1つでなく、これらのタンパク質の1つの化学的誘導体でないことを意味する。非タンパク質前駆体の使用及びアミノ酸配列の制限された使用は、免疫反応を回避するため、望まれない細胞認識を回避するため、及び天然源から誘導されたタンパク質の使用に関連する危険を回避するために有用になり得る。前駆体は、非糖類(糖類を含まない)でも実質的に非糖類でもよい(w/wで前駆体分子量の約5%を超える糖類を含まない。そのため、前駆体は、例えば、ヒアルロン酸、ヘパリン、又はゲランを除外し得る。前駆体は、非タンパク質と非糖類との両方にもなり得る。
【0071】
ペプチドは前駆体として使用され得る。一般に、より大きい配列(例えば、タンパク質)が使用され得るが、約10残基未満のペプチドが好ましい。当業者は、これらの明確な範囲内の全ての範囲及び値、例えば1~10、2~9、3~10、1、2、3、4、5、6、又は7が含まれることを直ちに認識するであろう。アミノ酸の一部は、求核基(例えば、一級アミン又はチオール)又は必要に応じて求核基若しくは求電子基(例えば、カルボキシル又はヒドロキシル)を組み込むように誘導体化できる基を有する。合成により製造されたポリアミノ酸ポリマーは、通常、それらが天然に存在せず、天然の生体分子と同一とならないように操作されている場合、合成であると考えられる。
【0072】
ハイドロゲルの一部は、ポリエチレングリコール含有前駆体により製造される。ポリエチレングリコール(PEG、高分子量で存在する場合にはポリエチレンオキシドとも称される)は、反復基(CH2CH2O)nを有し、nが少なくとも3であるポリマーを指す。そのため、ポリエチレングリコールを有するポリマー性前駆体は、直線に連続して互いに結合したこれらの反復基の少なくとも3つを有する。ポリマー又はアームのポリエチレングリコール含量は、ポリエチレングリコール基間に他の基がある場合でも、ポリマー又はアーム上のポリエチレングリコール基の全てを合計することにより計算される。そのため、少なくとも1000MWのポリエチレングリコールを有するアームは、少なくとも1000MWの合計に十分なCH2CH2O基を有する。当技術分野における通常の術語である通り、ポリエチレングリコールポリマーは、必ずしも末端がヒドロキシル基である分子を指さない。分子量は、記号kを使用して、1000を単位に略記され、例えば15Kは15,000分子量、すなわち15,000ダルトンを意味する。本明細書で表される分子量は、別に記載のない限り、数平均分子量である。NH2は、アミン末端を指す。SGは、グルタル酸スクシンイミジルを指す。SSは、コハク酸スクシンイミジルを指す。SAPは、アジピン酸スクシンイミジルを指す。SAZは、アゼライン酸スクシンイミジルを指す。SS、SG、SAP及びSAZは、水中で加水分解により分解するエステル基を有するスクシンイミジルエステルである。このように、加水分解性又は水分解性は、水が過多にあると、分解を媒介する酵素又は細胞が全く存在しなくてもインビトロで自然に分解する材料を指す。分解の時間は、肉眼により判断して材料の事実上の消失を指す。トリリジン(LLLとも略される)は合成トリペプチドである。PEG及び/又はハイドロゲル、並びにそれを含む組成物は、薬学的に許容できる形態で提供でき、それは高度に精製され、混在物、例えばパイロジェンを含まないことを意味する。
【0073】
ハイドロゲル構造
ハイドロゲルの構造及びハイドロゲルの前駆体の物質組成は、その性質を決める。前駆体因子には、生体適合性、水溶性、親水性、分子量、アーム長さ、アーム数、官能基、架橋間距離、分解性などの性質がある。溶媒の選択、反応スキーム、反応物濃度、固形分などを含む反応条件の選択もハイドロゲルの構造及び性質をもたらす。特定の性質又は性質の組み合わせを達成するための種々の方法があり得る。他方で、性質の一部は互いに拮抗し、例えば、もろさは、架橋間距離又は固形分が増加するにつれて増加し得る。強さは、架橋数の増加により増加し得るが、膨潤はそれにより減少し得る。特定の性質の達成を、関与する前駆体の一般的な種類に単に基づいて仮定すべきではないように、同じ材料を使用して、非常に異なる機械的性質及び性能を有する幅広い範囲の構造を有するマトリックスを製造できることを当業者は認識するであろう。
【0074】
ハイドロゲルの分子ストランド間の空間(マトリックス)は、分子の拡散速度を含む、いくつかのハイドロゲルの性質に影響する。架橋密度は、架橋剤として使用される前駆体及び他の前駆体の全体の分子量の選択、並びに1前駆体分子あたりに利用可能な官能基の数により制御できる。200などのより低い架橋間分子量は、500,000などのより高い架橋間分子量に比べてはるかに高い架橋密度を与える。当業者は、この範囲内の全範囲及び値、例えば200~250,000、500~400,000、5,000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000などが企図及び支持されることを直ちに認識するであろう。架橋密度は、架橋剤及び官能性ポリマーの溶液の全体の固形分パーセントによっても制御できる。架橋密度を制御するさらに別の方法は、求電子官能基に対する求核官能基の化学量論を調整することによる。1対1の比率は、最高の架橋密度をもたらす。架橋可能な部位間の距離がより長い前駆体は、一般的により柔らかく、しなやかで、弾力性のあるゲルを形成する。そのため、ポリエチレングリコールなどの水溶性セグメントの長さが増加すると、弾力性が増加して望ましい物性をもたらす傾向がある。そのため、特定の実施形態は、2,000~100,000の範囲の分子量を有する水溶性セグメントを有する前駆体を対象とする。当業者は、明示された範囲内の全ての範囲及び値、例えば5,000~35,000が企図されることを直ちに認識するであろう。ハイドロゲルの固形分は、その機械的性質及び生体適合性に影響することがあり、競合する要件間のバランスを反映している。比較的低い固形分、例えば、その間の全範囲及び値、例えば、約2.5%~約10%、約5%~約15%、又は約15%未満を含む、約2.5%~約20%が有用である。
【0075】
遅延が制御又は最小限にされるように材料を構成する一方法は、薬剤の拡散の異なる速度を有するハイドロゲルを設計することである。多くの場合、薬剤の分子量(MW)は、支配的な変数である。ハイドロゲルの性質を拡散と関係付ける手法がいくつかある。これらには、自由体積理論、流体力学理論、障害理論、組み合わせ理論、及びメッシュサイズ、ふるいの条件(sieving terms)、鎖間の隙間の分布などのパラメータがある(Amsden,Macromolecules(1998)31:8382-8395)。しかし、実際には、ハイドロゲルを、その架橋間の種々の距離をもって製造し、特定の分子について試験して、所望の拡散速度を与えるハイドロゲルを作ることができる。一般に、分子の大きさに比べて大きい架橋間距離は高い拡散速度を与え、分子の大きさに比べて小さい架橋間距離はゆっくりした拡散を与え、分子よりも小さい架橋間距離は実質的に拡散を与えない。分子の分子量は、一般に、その大きさの有用な尺度である。重要になり得る他の因子があり、それらがハイドロゲルを作る際に説明され得る:例えば、親和力又は電荷対電荷などの分子とハイドロゲルとの間の相互作用及び分子の疎水性などの溶媒効果。
【0076】
反応速度は、一般に、外部開始剤又は連鎖移動剤が必要とされない限り、具体的な官能基を考慮して制御されるが、外部開始剤又は連鎖移動剤が必要な場合、開始剤のトリガー又は移動剤の操作が制御ステップをとなり得る。いくつかの実施形態では、前駆体の分子量を用いて反応時間に影響を与える。低分子量の前駆体は反応を加速する傾向があるため、いくつかの実施形態は、分子量が少なくとも5,000~50,000又は150,000ダルトンの少なくとも1つの前駆体を有する。約0.1~約10分又は約30分以内に、ゲル化を招く架橋反応が起こるのが好ましく;当業者は、明示される範囲内のあらゆる範囲及び値、例えば、少なくとも120秒、又は5~600秒、例えば、5、10、30、60、100、200、300秒が企図されることを直ちに認識するであろう。ゲル化時間は、前駆体を平面に適用し、平面を約60度の角度(すなわち、直角に近い急勾配)で傾斜させて、表面上での下方への流動が実質的になくなる時間を決定することによって測定される。
【0077】
ハイドロゲルは、一般に、低膨潤性であり、これは、形成時のハイドロゲルの重量と比較して、生理液に24時間曝露した後、約0~約10%又は約50%以下の重量増加を有するハイドロゲルによって測定可能である。膨潤を低減する一実施形態では、架橋の数を増加するが、その際、架橋が剛性又は脆性を高め得ることに留意されたい。別の実施形態では、架橋間の平均鎖距離を縮小する。別の実施形態では、以下に説明するように、多数のアームを有する前駆体を使用する。
【0078】
膨潤を低減する別の実施形態では、膨潤し難い低親水性材料を用いて親水性の程度を調節し;例えば、PEOなどの高度に親水性材料をPPOなどの低親水性材料、又はアルキルなどの疎水基と組み合わせることができる。
【0079】
膨潤を低減する別の実施形態では、架橋時に高度の溶媒和を有するが、後に低溶媒和となり、実質的に減少する溶媒和の範囲を有する前駆体を選択する。換言すれば、前駆体は、架橋時に溶液中に広がるが、その後、収縮する。pH、温度、固形物濃度、及び溶媒環境への変化がそうした変化を引き起こすことができ;さらに、分岐の数の増加(他の因子は実質的に一定に保持される)もこの作用を有する傾向がある。アーム数は、互いに立体障害して、架橋前に広がると考えられるが、これらの立体作用は、重合後、他の因子によって相殺される。いくつかの実施形態では、前駆体は、これらの作用を達成するように、複数の類似電荷、例えば、陰電荷を有する複数の官能基、陽電荷を有する複数のアームを有するか、又は各アームが架橋若しくは他の反応前に類似の電荷の官能基を有する。
【0080】
本明細書に記載するハイドロゲルは、配置後、最小限に膨潤するハイドロゲルを含み得る。このような医療用低膨潤性ハイドロゲルは、生理液への曝露時に平衡含水率に達すると、例えば、約50重量%、約10重量%、約5重量%、約0重量%以下だけ増加するか、又は例えば少なくとも約5%、少なくとも約10%、若しくはそれを超えて縮小(重量及び体積が減少)する重量を有し得る。当業者は、明示される範囲内、又はそうでなければそうした範囲に関連するあらゆる範囲及び値が本明細書に開示されることを直ちに認識するであろう。別に記載のない限り、ハイドロゲルの膨潤は、架橋が実質的に完了したその形成時点から、24時間にわたって非制約状態で生理液中にインビトロで配置された後の時点(この時点でその平衡膨潤状態に達したことが合理的に想定され得る)までの体積(又は重量)の変化に関連する。ほとんどの実施形態について、架橋は、わずか約15分以内に実質的に完了するため、初期重量は、一般に、初期形成時の重量として、形成から約15分後に記録することができる。従って、次の式が使用される:%膨潤=[(24時間時点の重量-初期形成時点の重量)/初期形成時点の重量]*100。24時間を超えて実質的な分解を有するハイドロゲルの場合、24時間重量ではなく、例えば、連続計測を実施することにより測定されるような最大重量を使用してもよい。ハイドロゲルの重量は、ハイドロゲル中の溶液の重量を含む。制約されている位置で形成されるハイドロゲルは、必ずしも低膨潤性ハイドロゲルでなくてもよい。例えば、体内で形成される膨潤性ハイドロゲルは、その周囲によって膨潤が制約されるが、それでもなお、制約がないときのその膨潤及び/又は制約に対する力の測定により明らかにされるように、高度に膨潤性のあるハイドロゲルであり得る。
【0081】
官能基
共有結合性の架橋の前駆体は、患者の外側又はインサイチューで互いに反応して共有結合により材料を形成する官能基を有する。官能基は、一般的に、フリーラジカル、付加、及び縮合重合を包含する広い分類である重合性であり、並びに求電子求核反応の基もある。重合反応の種々の態様が本明細書の前駆体の項で議論される。
【0082】
そのため、いくつかの実施形態において、前駆体は、重合分野で使用される光開始若しくはレドックス系により活性化される重合性基又は求電子官能基、例えば、本明細書に明確に開示されている内容と矛盾しない範囲でそれぞれ参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,410,016号明細書若しくは米国特許第6,149,931号明細書にあるカルボジイミダゾール、塩化スルホニル、クロロカーボネート、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、又はスルファスクシンイミジルエステルを有する。求核官能基は、例えば、アミン、ヒドロキシル、カルボキシル、及びチオールであり得る。別のクラスの求電子剤は、例えば米国特許第6,958,212号明細書にある通りのアシルであり、それは、とりわけポリマーを反応させるマイケル付加のスキームを記載している。
【0083】
アルコール又はカルボン酸などの特定の官能基は、生理的条件(例えば、pH7.2~11.0、37℃)下でアミンなどの他の官能基と通常反応しない。しかし、そのような官能基は、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの活性化基を使用することにより、反応性を高めることができる。特定の活性化基には、カルボニルジイミダゾール、塩化スルホニル、アリールハライド、スルホスクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、イミドエステルなどがある。N-ヒドロキシスクシンイミドエステル又はN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)基は、タンパク質又はアミン含有ポリマー、例えば、アミノ末端ポリエチレングリコールの架橋に有用な基である。NHS-アミン反応の利点は、反応速度が好都合であることであるが、ゲル化速度はpH又は濃度により調整できる。NHS-アミン架橋反応は、副生成物としてN-ヒドロキシスクシンイミドの形成をもたらす。N-ヒドロキシスクシンイミドのスルホン化又はエトキシ化形態は、比較的高い水への溶解度を有し、そのため、身体からの迅速なクリアランスを有する。NHS-アミン架橋反応は、水溶液中、及び緩衝液、例えば、リン酸緩衝液(pH5.0~7.5)、トリエタノールアミン緩衝液(pH7.5~9.0)、又はホウ酸緩衝液(pH9.0~12)、又は炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.0~10.0)の存在下で実施できる。NHS系架橋剤及び官能性ポリマーの水溶液は、NHS基と水との反応のため、好ましくは架橋反応の直前に作られる。これらの基の反応速度は、これらの溶液をより低いpH(pH4~7)に保つことにより遅くさせることができる。緩衝液はまた、体内に導入されるハイドロゲルに含めてよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、求核前駆体と求電子前駆体との両方が架橋反応に使用される限り、各前駆体は、求核官能基のみ又は求電子官能基のみを含む。そのため、例えば、架橋剤がアミンなどの求核官能基を有する場合、官能性ポリマーは、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの求電子官能基を有し得る。他方で、架橋剤がスルホスクシンイミドなどの求電子官能基を有する場合、官能性ポリマーは、アミン又はチオールなどの求核官能基を有し得る。例えば、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、又はアミン末端二官能性若しくは多官能性のポリ(エチレングリコール)などの官能性ポリマーを使用できる。
【0085】
一実施形態は、それぞれ2~16個の求核官能基を有する反応性前駆体種及びそれぞれ2~16個の求電子官能基を有する反応性前駆体種を有する。当業者は、明示された範囲内の全ての範囲及び値、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16個の基が企図されることを直ちに認識するであろう。
【0086】
官能基は、例えば、求核剤と反応可能な求電子剤、特定の求核剤、例えば一級アミンと反応可能な基、生体液中で材料とアミド結合を形成する基、カルボキシルとアミド結合を形成する基、活性化された酸官能基、又はこれらの組み合わせでよい。官能基は、例えば、強い求電子官能基であり得、これは、pH9.0の室温室圧の水溶液中で一級アミンと共有結合を有効に形成する求電子官能基及び/又はマイケルタイプ反応により反応する求電子基を意味する。強い求電子剤は、マイケルズ(Michaels)タイプ反応に関与しないタイプのことも、マイケルズタイプ反応に関与するタイプのこともある。
【0087】
マイケルタイプ反応は、求核剤の共役不飽和系に対する1,4付加反応を指す。付加機構は純粋に極性であり得るか、ラジカル様中間体状態により進行し得る。ルイス酸又は適切に設計された水素結合種が触媒として作用し得る。コンジュゲーションという用語は、炭素-炭素、炭素-ヘテロ原子、若しくはヘテロ原子-ヘテロ原子の多重結合と単結合とが交互にあることと、合成ポリマー若しくはタンパク質などの高分子への官能基の連結との両方を指し得る。マイケルタイプ反応は、本明細書に明確に開示されている内容と矛盾しない範囲であらゆる目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,958,212号明細書において詳細に議論されている。
【0088】
マイケルズタイプ反応に関与しない強い求電子剤の例は、スクシンイミド、スクシンイミジルエステル、又はNHS-エステルである。マイケルタイプ求電子剤の例は、アクリラート、メタクリラート、メチルメタクリラート、及び他の不飽和重合性基である。
【0089】
開始系
前駆体の一部は開始剤を使用して反応する。開始剤基は、フリーラジカル重合反応を開始することができる化学基である。例えば、それは別の成分としても、前駆体上のペンダント基としても存在し得る。開始剤基には、熱開始剤、光活性化可能な開始剤、及び酸化還元(レドックス)系がある。長波UV及び可視光光活性化可能な開始剤には、例えば、エチルエオシン基、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン基、他のアセトフェノン誘導体、チオキサントン基、ベンゾフェノン基、及びカンファキノン基がある。熱反応性開始剤の例には、4,4’アゾビス(4-シアノペンタン酸)基、及びベンゾイルペルオキシド基の類似物がある。Wako Chemicals USA,Inc.,Richmond,Vaから利用可能なV-044などのいくつかの市販の低温フリーラジカル開始剤を使用して、体温でフリーラジカル架橋反応を開始して、ハイドロゲルコーティングを上述のモノマーと共に形成できる。
【0090】
金属イオンをレドックス開始系における酸化剤又は還元体として使用できる。例えば、二価の鉄イオンをペルオキシド又はヒドロペルオキシドと組み合わせて使用して重合を開始することも、重合系の一部として使用することもできる。この場合、二価の鉄イオンは還元体として作用するであろう。或いは、金属イオンは、酸化体として作用し得る。例えば、セリウムイオン(セリウムの4+原子価状態)は、カルボン酸及びウレタンを含む種々の有機基と相互作用して、電子を金属イオンへと除去し、開始ラジカルを有機基上に残す。そのような系では、金属イオンは酸化剤として作用する。いずれの役割でも潜在的に好適な金属イオンは、遷移金属イオン、ランタニド、及びアクチニドのいずれでもあり、それらは少なくとも2つの容易に利用可能な酸化状態を有する。特に有用な金属イオンは、1つのみの電荷の違いにより別れている少なくとも2つの状態を有する。これらのうち、最も普通に使用されるのは、三価鉄/二価鉄;二価銅/一価銅;四価セリウム/三価セリウム;三価コバルト/二価コバルト;バナジデートV対IV;ペルマンガナート;及び三価マンガン/二価マンガンである。過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、クミルペルオキシドを含むペルオキシド及びヒドロペルオキシドなどの過酸素(Peroxygen)含有化合物を使用できる。
【0091】
開始剤系の例は、ある溶液中の過酸素化合物と別の溶液中の遷移金属などの反応性イオンとの組み合わせである。この場合、重合の外部開始剤は全く必要なく、重合は、2つの相補的な反応性官能基含有部分が利用部位で相互作用すると、自然に、外部エネルギーを加えたり外部エネルギー源を使用したりせずに進行する。
【0092】
ハイドロゲルを製造するための前駆体及び/又は前駆体から製造されたハイドロゲルは、開始剤、光励起性基、及び可視化剤、イメージング剤のうちの1つ又は複数を含有しなくてもよい。
【0093】
可視化剤
可視化剤がハイドロゲル中に存在し得る。それは、ハイドロゲルを施す使用者が、物体が有効量の作用物質を含んだときに物体を観察できるように、ヒトの眼に検出可能な波長で光を反射又は発する。画像化のために機械的補助が必要な化学物質は、本明細書ではイメージング剤と称され、例には、放射線不透過造影剤及び超音波造影剤がある。いくつかの生体適合性可視化剤は、FD&Cブルー1番、FD&Cブルー2番、及びメチレンブルーがある。これらの作用物質は、使用される場合、好ましくは、最終的な求電子-求核反応性前駆体種ミックス中に、0.05mg/mlを超える濃度で、好ましくは少なくとも0.1~約12mg/mlの濃度範囲で、より好ましくは0.1~4.0mg/mlの範囲で存在するが、可視化剤の溶解度の限界までのより高い濃度も潜在的には利用され得る。可視化剤は、キセロゲル/ハイドロゲルの分子ネットワークに共有結合でき、そのため、患者に使用した後、ハイドロゲルが加水分解して溶解するまで可視化を保つ。可視化剤は、FD&Cブルー染料3及び6、エオシン、メチレンブルー、インドシアニングリーン、又は合成縫合糸に通常みられる着色染料など、医療用埋め込み型医療装置における使用に好適な種々の非毒性の着色物質のいずれからも選択できる。NHS-フルオレセインなどの反応性の造影剤をキセロゲル/ハイドロゲルの分子ネットワークに組み込むことができる。フルオレセインは、機械の補助なしに可視化するのに十分な濃度であれば、別に記載のない限り、典型的にはイメージング剤である。可視化剤は、いずれの反応性前駆体種、例えば、架橋剤又は官能性ポリマー溶液と共に存在してもよい。好ましい着色物質は、ハイドロゲルに化学結合することも化学結合しないこともある。
【0094】
生分解
ハイドロゲルは、生理溶液中で水和すると、ハイドロゲルがその機械的強度を失って最終的には過剰な水中で水分解性基の加水分解によりインビトロで消散することにより、測定可能な水分解性のハイドロゲルが形成されるように形成できる。この試験は、細胞又はプロテアーゼにより推進される分解とは対照的なプロセスである、加水分解により推進されるインビボの溶解を予想するものである。しかし、重要なことに、ポリ無水物又は分解して酸性成分になる従来使用される他の分解性の材料は、組織に炎症を起こす傾向がある。しかしながら、ハイドロゲルは、そのような材料を排除できることから、ポリ無水物、無水物結合、及び/又は分解して酸又は二酸になる前駆体、及び/又はPLA、PLGA、PLA/PLGAを含有しなくてもよい。
【0095】
例えば、SG(グルタル酸N-ヒドロキシスクシンイミジル)、SS(コハク酸N-ヒドロキシスクシンイミジル)、SC(炭酸N-ヒドロキシスクシンイミジル)、SAP(アジピン酸N-ヒドロキシスクシンイミジル)又はSAZ(アゼライン酸N-ヒドロキシスクシンイミジル)などの求電子基を使用でき、加水分解的に不安定なエステル結合を有する。ピメリン酸エステル、スベリン酸エステル、アゼライン酸エステル、又はセバシン酸エステル結合などのより直線的な疎水性結合も使用でき、これらの結合は、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、又はアジピン酸エステル結合よりも分解性が低い。分岐鎖の、環式の、又は他の疎水性結合も使用できる。ポリエチレングリコール及び他の前駆体は、これらの基と共に調製され得る。架橋されたハイドロゲル分解は、水分解性材料が使用される場合、生分解性セグメントの水により推進される加水分解により進行し得る。エステル結合を含むポリマーは、所望の分解速度を与えるように含まれてよく、分解速度を増加又は減少させるためにエステルの近くで基が追加又は引き去られる。このように、分解性セグメントを使用して、数日~数か月の所望の分解プロファイルを有するハイドロゲルを構築することが可能である。ポリグリコラートが生分解性セグメントとして使用される場合、例えば、架橋されたポリマーは、ネットワークの架橋密度次第で、約1~約30日で分解するように製造できる。同様に、ポリカプロラクトン系の架橋されたネットワークは、約1~約8か月で分解するように製造できる。分解時間は、一般的に、使用される分解性セグメントの種類により様々であり、以下の順序:ポリグリコラート<ポリラクタート<ポリトリメチレンカーボナート<ポリカプロラクトンである。このように、分解性セグメントを使用して、数日~数か月の所望の分解プロファイルを有するハイドロゲルを構築することが可能である。いくつかの実施形態は、隣接するエステル基を含まず、且つ/又は前駆体の1つ以上に1アームあたりにわずか1つのエステル基のみを有する前駆体を含む。エステルの数及び位置の制御は、ハイドロゲルの均一な分解を支援し得る。
【0096】
オルガノゲル及び/又はキセロゲル及び/又はハイドロゲル及び/又は前駆体中の生分解性結合は、水分解性でも酵素的に分解性でもよい。例示的な水分解性生分解性結合には、グリコリド、dl-ラクチド、l-ラクチド、ジオキサノン、エステル、カーボナート、及びトリメチレンカーボナートのポリマー、コポリマー及びオリゴマーがある。例示的な酵素的に生分解性の結合には、メタロプロテイナーゼ及びコラゲナーゼにより切断可能なペプチド結合がある。生分解性結合の例には、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルト炭酸エステル)、ポリ(無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(炭酸エステル)、及びポリ(ホスホン酸エステル)のポリマー及びコポリマーがある。
【0097】
生体適合性架橋マトリックスが生分解性又は吸収性であることが望まれる場合、官能基間に生分解性結合(又は1つのみの生分解性結合、例えばエステル)が存在する1種以上の前駆体を使用できる。生分解性結合は、任意選択で、マトリックスの製造に使用される1種以上の前駆体の水溶性コアとしても作用し得る。各手法で、生分解性結合は、生じた生分解性生体適合性架橋ポリマーが所望の期間で分解又は吸収されるように選択され得る。
【0098】
眼は非常に敏感な器官である。本発明者らは、眼内の生分解性インプラントの断片化が生体適合性と相反する特定の因子であることを見出した。その感受性以外に、眼の内部は小さい空間であるため、長期の放出が目標であれば、薬剤は高濃度で存在しなければならない。単一の理論に拘束されるわけではないが、この環境では、特に、インプラントが断片化される段階に達したとき、薬物の存在は、材料に対する生体応答を悪化させると考えられる。マクロファージは、断片が細胞のサイズになるか、又は細菌のサイズになると、薬物を外来物質として認識し始める可能性がある。生物製剤は、このような反応を引き起こす傾向があるが、小分子剤であっても不要な増大作用を有すると考えられる。従って、インプラントの持続性を最小にするのではなく、いくつかの実施形態は、生体適合性を高める、長い持続性時間を有するハイドロゲルを含む。持続性時間は、ハイドロゲル中の薬剤が完全に放出されるまで延長することができる。このアプローチは生体適合性を高める。
【0099】
送達のための薬物又は他の治療薬剤
治療薬剤には、例えば、炎症性又は異常な血管の状態から生じ得る病態、網膜静脈閉塞症、地図状萎縮、色素性網膜炎、網膜芽細胞腫などを治療するための薬剤がある。癌の場合、薬剤は、例えば、抗癌薬、抗VEGF、又は癌治療に使用されることが知られている薬物であってよい。
【0100】
治療薬剤は、例えば、抗VEGF剤、VEGFR1遮断剤、VEGFR2遮断剤、VEGFR3遮断剤、抗PDGF剤、抗血管新生剤、スニチニブ、E7080、Takeda-6d、チボザニブ、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、アキシチニブ、ニンテダニブ、セジラニブ、バタラニブ、モテサニブ、マクロライド、シロリムス、エベロリムス、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、イマチニブ(グリーベック)ゲフィニチブ(イレッサ)、トセラニブ(パラディア)、エルロチニブ(タルセバ)、ラパチニブ(タイケルブ)ニロチニブ、ボスチニブ、ネラチニブ、ラパチニブ、バタラニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマクサニブ、トセラニブ、バンデタニブであるものであり得る。
【0101】
治療薬剤は、高分子、例えば、抗体又は抗体断片を含み得る。治療用の高分子は、VEGF阻害剤、例えばラニビズマブ、市販のルセンティス(商標)中の有効成分を含み得る。VEGF(血管内皮細胞成長因子)阻害剤は、眼の硝子体液中に放出されると、異常な血管の退縮及び視力の改善を起こすことができる。VEGF阻害剤の例には、ルセンティス(商標)(ラニビズマブ)、アイリーア(商標)(アフリベルセプト又はVEGFトラップ)、アバスチン(商標)(ベバシズマブ)、マクジェン(商標)(ペガプタニブ)がある。血小板由来成長因子(PDGF)阻害剤、例えば、フォビスタ(商標)、抗PGDFアプタマーも送達できる。
【0102】
治療薬剤は、ステロイド又はコルチコステロイド及びそのアナログなどの小分子も含み得る。例えば、治療用コルチコステロイドは、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、デキサメタゾン酢酸エステル、フルオシノロン、フルオシノロン酢酸エステル、エタボン酸ロテプレドノール、又はそのアナログの1つ以上を含み得る。或いは又は組み合わせで、治療薬剤の小分子は、チロシンキナーゼ阻害剤を含み得る。
【0103】
治療薬剤は、抗VEGF治療薬剤を含み得る。抗VEGF剤の療法及び薬剤を特定の癌の治療において及び加齢黄斑変性において使用できる。本明細書に記載される実施形態による使用に好適な抗VEGF治療薬剤の例には、ベバシズマブ(アバスチン(商標))などのモノクローナル抗体若しくはラニビズマブ(ルセンティス(商標))などの抗体誘導体、又はラパチニブ(タイケルブ(商標))、スニチニブ(スーテント(商標))、ソラフェニブ(ネクサバール(商標))、アキシチニブ、若しくはパゾパニブなど、VEGFにより刺激されるチロシンキナーゼを阻害する小分子の1つ以上がある。
【0104】
治療薬剤は、シロリムス(商標)(ラパマイシン)、コパキソン(商標)(グラチラマー酢酸塩)、オセラ(Othera)(商標)、補体C5aRブロッカー、毛様体神経栄養因子、フェンレチニド又はレオフェレシス(Rheopheresis)の1つ以上など、ドライ型AMDの治療に好適な治療薬剤を含み得る。
【0105】
治療薬剤は、REDD14NP(クォーク(Quark))、シロリムス(商標)(ラパマイシン)、ATG003;リジェネロン(商標)(VEGFトラップ)又は補体阻害剤(POT-4)の1つ以上など、ウェット型AMDの治療に好適な治療薬剤を含み得る。
【0106】
治療薬剤は、BIBW 2992(EGFR/Erb2を標的にする小分子)、イマチニブ(小分子)、トラスツズマブ(モノクローナル抗体)、ゲフィチニブ(小分子)、ラニビズマブ(モノクローナル抗体)、ペガプタニブ(小分子)、ソラフェニブ(小分子)、ダサチニブ(小分子)、スニチニブ(小分子)、エルロチニブ(小分子)、ニロチニブ(小分子)、ラパチニブ(小分子)、パニツムマブ(モノクローナル抗体)、バンデタニブ(小分子)、又はE7080(Esai,Co.から市販の小分子)の1つ以上などのキナーゼ阻害剤を含み得る。
【0107】
治療薬剤は、種々のクラスの薬物を含み得る。薬物には、例えば、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、抗癌薬、抗生物質、抗炎症薬(例えば、ジクロフェナク)、鎮痛剤(例えば、ブピバカイン)、カルシウムチャネル遮断剤(例えば、ニフェジピン)、抗生物質(例えば、シプロフロキサシン)、細胞周期阻害剤(例えば、シンバスタチン)、タンパク質(例えば、インスリン)がある。治療薬剤は、例えば、ステロイド、NSAIDS、抗生物質、鎮痛剤、血管内皮細胞成長因子(VEGF)の阻害剤、化学療法剤、抗ウイルス薬を含む複数のクラスの薬物を含み得る。NSAIDSの例は、イブプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、サルサレート、スリンダク、トルメチンナトリウム、ケトプロフェン、ジフルニサル、ピロキシカム、ナプロキセン、エトドラク、フルルビプロフェン、フェノプロフェンカルシウム、インドメタシン、セロキシブ(celoxib)、ケトロラック、及びネパフェナクである。ステロイドの例として、フルニソリド(溶解度90μg/mL)、ベタメタゾンリン酸ナトリウム(水易溶性)、ブデソニド(30μg/mL)、及びトリアムシノロンアセトニド(20μg/mL)がある。薬物自体は、小分子、タンパク質、RNA断片、タンパク質、グリコサミノグリカン、炭水化物、核酸、無機及び有機の生物活性のある化合物であり得、具体的な生物活性薬剤には、酵素、抗生物質、抗新生物剤、局所麻酔、ホルモン、血管新生剤、抗血管新生剤、成長因子、抗体、神経伝達物質、向精神薬、抗癌薬、化学療法薬、生殖器に影響する薬物、遺伝子、及びオリゴヌクレオチド、又は他の構成があるが、これらに限定されない。
【0108】
治療薬剤は、タンパク質又は他の水溶性生物製剤を含み得る。これらには、ペプチド及びタンパク質がある。本明細書でのタンパク質という用語は、少なくとも約5000ダルトンのペプチドを指す。本明細書でのペプチドという用語は、あらゆる大きさのペプチドを指す。オリゴペプチドという用語は、約5000ダルトンまでの質量を有するペプチドを指す。ペプチドには、治療用のタンパク質及びペプチド、抗体、抗体断片、短鎖可変断片(scFv)、成長因子、血管新生因子、及びインスリンがある。他の水溶性生物製剤は、炭水化物、多糖類、核酸、アンチセンス核酸、RNA、DNA、低分子干渉RNA(siRNA)、及びアプタマーである。
【0109】
治療薬剤は、示された病態を治療する方法又は示された病態を治療するための組成物を製造する方法の一部として使用できる。例えば、AZOPT(ブリンゾラミド眼科用懸濁剤)を高眼圧又は開放隅角緑内障の患者の眼内圧亢進の治療の治療に使用できる。ポビドン-ヨウ素眼科用液剤中のベタジンを眼球周囲領域の準備をすること(prepping)及び眼表面の洗浄に使用できる。ベトプティック(ベタキソロールHCl)を、眼内圧を下げるために又は慢性開放隅角緑内障及び/若しくは高眼圧に使用できる。シロクサン(シプロフロキサシンHCl眼科用液剤))を使用して、感受性のある微生物の株により起こる感染症を治療できる。ナタシン(ナタマイシン眼科用懸濁剤)を真菌性眼瞼炎、結膜炎、及び角膜炎の治療に使用できる。ネバナック(ネパフェナク(Nepanfenac)眼科用懸濁剤)を白内障手術に関連する疼痛及び炎症の治療に使用できる。トラバタン(トラボプロスト眼科用液剤)を、眼内圧亢進を下げるために使用できる - 開放隅角緑内障又は高眼圧。FML FORTE(フルオロメトロン眼科用懸濁剤)を眼瞼及び眼球結膜、角膜及び眼球前部のコルチコステロイド反応性炎症の治療に使用できる。ルミガン(ビマトプロスト眼科用液剤)を、眼内圧亢進を下げるために使用できる - 開放隅角緑内障又は高眼圧。プレド・フォルテ(酢酸プレドニゾロン)を眼瞼及び眼球結膜、角膜及び眼球前部のステロイド反応性炎症の治療に使用できる。プロピン(ジピベフリン塩酸塩)を慢性開放隅角緑内障における眼内圧の制御に使用できる。レスタシス(シクロスポリン眼科用乳剤)を使用して、患者、例えば、乾性角結膜炎と関連する眼炎症を有する患者の涙液産生を増加させることができる。アルレックス(ALREX)(エタボン酸ロテプレドノール眼科用懸濁剤)を季節性アレルギー性結膜炎の一時的な緩和に使用できる。ロテマックス(エタボン酸ロテプレドノール眼科用懸濁剤)を眼瞼及び眼球結膜、角膜及び眼球前部のステロイド反応性炎症の治療に使用できる。マクジェン(ペガプタニブナトリウム注射液)を血管新生(ウェット型)加齢黄斑変性の治療に使用できる。オプティバール(アゼラスチン塩酸塩)をアレルギー性結膜炎と関連する眼の痒みの治療に使用できる。キサラタン(ラタノプロスト眼科用液剤)を使用して、例えば、開放隅角緑内障又は高眼圧を有する患者の眼内圧亢進を低下させることができる。ベチモール(チモロール眼科用液剤)を、高眼圧又は開放隅角緑内障を有する患者の眼内圧亢進の治療に使用できる。ラタノプロストは、遊離酸形態のプロドラッグであり、プロスタノイド選択的FP受容体作動剤である。ラタノプロストは、緑内障患者の眼内圧を下げ、副作用がほとんどない。ラタノプロストは、水溶液に対して溶解度が比較的低いが、溶媒蒸発を利用して典型的にミクロスフィアの製造に利用される有機溶媒には容易に溶ける。
【0110】
送達のための治療薬剤のさらなる実施形態には、標的ペプチドとインビボで特異的に結合して、標的ペプチドと天然の受容体又は他のリガンドとの相互作用を防ぐものがある。例えば、アバスチンは、VEGFと結合する抗体であるベバシズマブを含有する。また、アフリベルセプトは、VEGFを捕捉するVEGF受容体の一部を含む融合タンパク質である。IL-1受容体の細胞外ドメインを利用するIL-1トラップも公知である。トラップは、IL-1が細胞表面の受容体に結合し活性化させるのを阻止する。送達のための薬剤の実施形態には、核酸、例えば、アプタマーがある。ペガプタニブ(マクジェン)は、例えば、ペグ化された抗VEGFアプタマーである。フォビスタは、ペグ化された抗PDGFアプタマーである。粒子とハイドロゲルの送達プロセスの利点は、アプタマーが放出されるまでインビボ環境から保護されることである。送達のための薬剤のさらなる実施形態には高分子薬物があり、これは、古典的な小分子薬物よりも著しく大きい薬物を指す用語であり、すなわちオリゴヌクレオチド(アプタマー、アンチセンス、RNAi)、リボザイム、遺伝子治療核酸、組換え型ペプチド、及び抗体などの薬物である。
【0111】
一実施形態は、アレルギー性結膜炎のための医薬品の延長放出を含む。例えば、ケトチフェン、抗ヒスタミン剤及び肥満細胞安定剤は、粒子中に与えられて、アレルギー性結膜炎を治療する有効量で本明細書に記載される通り眼に放出され得る。季節性アレルギー性結膜炎(SAC)及び通年性アレルギー性結膜炎(PAC)はアレルギー性結膜疾患である。症状には、かゆみ及びピンクから赤色の眼がある。これらの2つの眼の状態は肥満細胞により媒介される。症状を改善する非特異的な処置には、従来、冷湿布、代用涙液による洗眼、及びアレルゲンの回避がある。治療は、従来、抗ヒスタミン肥満細胞安定剤、二重機構抗アレルゲン剤、又は局所抗ヒスタミン剤からなる。コルチコステロイドは有効であり得るが、副作用のため、春季角結膜炎(VKC)及びアトピー性角結膜炎(AKC)などのより重症な形態のアレルギー性結膜炎のために控えられている。
【0112】
オキシフロキサシン(Oxifloxacin)は、ベガモックス中の有効成分であり、眼の細菌感染の治療又は予防に使用するために認可されたフルオロキノロンである。用量は、典型的には0.5%液剤の一滴であり、1週間以上の期間で1日3回投与される。VKC及びAKCは、好酸球、結膜線維芽細胞、上皮細胞、肥満細胞、及び/又はTH2リンパ球が結膜の生化学的特徴及び組織構造を悪化させる慢性アレルギー性疾患である。VKC及びAKCは、アレルギー性結膜炎を抑制するために使用される医薬により治療できる。浸透剤は作用物質であり、やはり本明細書に記載されるゲル、ハイドロゲル、オルガノゲル、キセロゲル、及び生体材料に含めることができる。これらは、意図される組織への薬物の浸透を支援する作用物質である。浸透剤は、組織に対して必要に応じて選択でき、例えば、皮膚用の浸透剤、鼓膜用の浸透剤、眼用の浸透剤である。
【0113】
治療薬剤の溶解度
本発明の実施形態は、組織、眼、眼房内空間、又は本明細書に記載するその他の部位への薬物送達の方法を含み、これは、ハイドロゲル中に薬物を(例えば、溶解、懸濁、液体、固体、又は全体に分散させて)含むハイドロゲルをインサイチューで形成するステップを含み、薬物は、水への溶解度が低いか、又は本明細書に記載する他の溶解度を有する。このような薬剤の例として、一般に、TKIがある。難溶性は広義の用語であり、25℃の水に200μg/ml以下だけ溶解することを意味し、水は純水であり、薬物は実質的に純粋であるか、又は塩である。同様に、極めて難溶性は、25℃の水に50μg/ml以下だけ溶解することを意味する広義の用語である。他の記述用語は、表1に示され、そこに記載される定義を有し、上限を有するものとして定義される実質的に不溶性又は不溶性の場合を除き、複数の溶解度域に向けられる。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、以下の溶解度:200,000、100,000、33,000、10,000、1,000、225、200、150、100、50、25、20、1、例えば、100未満若しくは50未満、又は20μg/ml未満の水溶性、又は0.001~225、1~200、2~125μg/mlの水溶性のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0114】
米国薬局方(United States Pharmacopeia)は、様々な一覧物質の記述用語で相対溶解度を定義しており、これらの記述用語は、表1に示すように、1ミリリットルあたりのマイクログラムの単位を用いた定量的溶解度に変換することができる。様々な形態の薬物が、インサイチューで形成されるハイドロゲルデポからの持続的放出に好適である。好適な薬物としては、小分子及び大(適用可能であれば)分子サイズの両方の、例えば、本明細書に記載されるような様々な薬剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗血管新生剤、抗アレルギー剤、ステロイド、免疫抑制剤、緑内障剤、NSAIDなどが挙げられる。
【0115】
デポからの小分子の持続的放出は、それらの限定的な溶解度によって制御することができ、難溶解性、実質的に不溶性、又は不溶性として分類される薬剤は、表2に例示する通り、一般に好ましい候補となる。記述用語を支持するために、実験による水溶性(科学文献から入手可能である場合)が表に追加されている。この実験による水溶解度及び/又は水溶性は、試験条件(pH、温度)に左右されることが多く、これらの条件下での変動が実験による溶解度の値を変え得ることは理解されよう。溶解度は、多くの因子によって制御され、特に興味深いことに、同じ親薬物分子の多様な塩形態の溶解度が異なることを理解すべきである。例えば、デキサメタゾンリン酸ナトリウム塩形態は、可溶性であると考えられるが、デキサメタゾンアルコール又は酢酸デキサメタゾンは、表2に示す通り、実質的に不溶性であるか又は不溶性であると考えられる。
【0116】
全ての薬物は、二次形態の封入を用いて、ハイドロゲルデポから放出して、より適合した薬物放出プロフィールを提供することができ、これは、薬物の溶解度ではなく、むしろマイクロ粒子の分解によって調節されることを理解すべきである。例えば、難溶性から極めて溶けやすいとして分類される薬物は、持続的放出を提供するために、封入(例えば、マイクロカプセル)の二次形態を必要とする可能性が非常に高い。
【0117】
ハイドロゲルは、PEGアームの架橋中に形成されるため、限定的な分子サイズの規定孔隙率を有するネットワーク構造を形成する。そのため、限定的な分子サイズを超える、表2に示す抗血管新生薬などの大きい高分子の捕捉は、ハイドロゲルネットワーク内に物理的に捕捉される。従って、ゲルネットワークの分解は、これらの高分子が可溶性から極めて溶けやすいと考えられるとしても、捕捉された大きい高分子を放出するために必要である。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
眼の病態
本明細書に記載される材料を使用して、薬物又は他の治療薬剤(例えば、イメージング剤又はマーカー)を眼又は近くの組織に送達できる。病態のいくつかは、眼底疾患である。眼底疾患という用語は、努力傾注分野の当業者により認識されており、一般的に、網膜、黄斑又は脈絡膜の脈管構造及び完全性に影響を与え、視力障害、視覚喪失、又は失明をもたらす後部のあらゆる眼疾患を指す。後部の病態は、年齢、外傷、外科的介入、及び遺伝因子により生じ得る。疾患は、全般的に疾病を含む広義の用語である。いくつかの眼底疾患は、加齢黄斑変性(AMD)嚢胞様黄斑浮腫(CME)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、後部ぶどう膜炎、及び糖尿病性網膜症である。いくつかの眼底疾患は、黄斑変性又は糖尿病性網膜症など、望ましくない血管新生又は血管の増殖から生じる。これら及び他の病態の薬物治療選択肢は、本明細書の他の箇所でさらに議論される。
【0124】
薬剤のハイドロゲル充填;粒子としての調製
ハイドロゲルには、ハイドロゲル内に直接及び/又は間接的に配置される1種又は複数種の薬剤を充填することができる。状況によっては粒子への封入は好ましくないが、特に、眼の外部で薬剤を粒子中に導入する上で有用となり得る。封入は、薬剤を生分解性材料と混合するステップを含み得る。直接とは、例えば、固体又は可溶性形態の薬剤の存在下でマトリックスを形成することにより、薬剤をマトリックスと直接接触させて配置することを指す。間接的充填方法は、例えば、薬剤を粒子中に導入し、粒子の周囲にハイドロゲルを形成するため、薬剤は、粒子の内部にあり、形成時にマトリックスと直接接触しない。活性薬剤が存在する生分解性ビヒクルとしては、封入ビヒクル、例えば、マイクロ粒子、ミクロスフェア、マイクロビーズ、マイクロペレットが挙げられ、ここで、活性薬剤は、例えば、ポリマー及びコポリマーなど、以下のような生体内分解性又は生分解性ポリマー中に封入される:ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(炭酸トリメチレン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)-コ-ポリ(グリコール酸)、ポリ(オルトカルボン酸)、ポリ(カプロラクトン)、フィブリン糊又はフィブリンシーラントなどの架橋生分解性ハイドロゲルネットワーク、シクロデキストリンなどのケージング及び捕捉分子、分子篩など。ポリ(ラクトン)及びポリ(ヒドロキシ酸)のポリマー及びコポリマーから製造されるミクロスフェアは、生分解性封入ビヒクルとして有用である。治療薬剤又は封入治療薬剤は、溶液又は懸濁形態で存在してもよい。さらに、結合剤、非ペプチドポリマー、界面活性剤、油、脂肪、蝋、疎水性ポリマー、4つのCH2基より長いアルキル鎖を含むポリマー、リン脂質、ミセル形成ポリマー、ミセル形成組成物、両親媒性物質、多糖、3つ以上の糖からなる多糖、脂肪酸、及び脂質のうちの1つ又は複数を含まない粒子を製造してもよい。凍結乾燥、噴霧乾燥又は他の方法で加工されたタンパク質は、タンパク質を調製するために用いられる凍結乾燥又は他のプロセスを通してタンパク質を安定化させるために、トレハロースなどの糖類と一緒に製剤化されることが多い。これらの糖類は、オルガノゲル/キセロゲルプロセス全体を通して粒子中に残してもよい。粒子は、約10%~約100%(乾燥w/w)のタンパク質を含むように製造でき;当業者は、明示された範囲内のあらゆる範囲及び値、例えば、約40%~約80%、又は少なくとも50%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも約99%が企図されることを直ちに認識するであろう。
【0125】
ゲル又はオルガノゲル又はハイドロゲルは、薬剤の周りに形成され、次いで封入粒子にされ、それがその後処理されて、有機又は水性の溶媒又は複数の溶媒が除去されてキセロゲルが形成し得る。注射剤の形態の場合、オルガノゲル又はハイドロゲルは、冷浸され、均質化され、押し出され、スクリーニングされ、細断され、さいの目に切断されるか、又は他の方法で粒状形態にすることができる。或いは、オルガノゲル又はハイドロゲルは、液滴としても、懸濁しているタンパク質粒子を含む成形品としても形成することができる。そのような粒子を製造する1つのプロセスは、分解されて粒子を形成する材料を生成するステップを含む。
【0126】
これらの粒子は、種々の方法により、所望のサイズ範囲及びサイズの分布を有する集合に分離してもよい。非常に精密な分粒の制御が利用可能であり、サイズは、1ミクロン~数mmの範囲であり、粒径の平均及び範囲が狭い分布と共に制御可能である。当業者は、明示された範囲内のあらゆる範囲及び値、例えば、約1~約10μm又は約1~約30μmが企図されることを直ちに認識するであろう。約1~約500ミクロンは、有用であるそのような別の範囲であり、サイズは範囲全体に及び範囲内の1つの値の平均サイズを有し、標準偏差が平均値の周辺に集中し、例えば、約1%~約100%である。粒子を分粒する簡単な方法は、特別注文又は標準化された篩メッシュサイズを利用することを含む。粒子という用語は広義であり、球形、円柱状、円板状、及び不規則な形状の粒子を含む。いくつかの実施形態は、インビボで異なる分解速度を有する複数の粒子の集合を製造するステップと、所望の分解性能を得るために集合を混合するステップを含む。
【0127】
キット又は系
ハイドロゲルを製造するキット又は系を調製することができる。キットは、医学的に許容できる条件を利用して製造され、薬学的に許容できる無菌状態、純度及び調製を有する前駆体を含む。キットは、必要に応じてアプリケーター及び指示書を含み得る。治療薬剤は、予備混合されて、又は混合のために利用可能な状態で含まれ得る。溶媒/溶液は、キット内又は別々に提供されてもよく、又は成分が溶媒と予備混合されていてもよい。キットは、混合及び/又は送達用のシリンジ及び/又はニードルを含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1つの前駆体とアプリケーターとを有する。視覚化又はイメージング剤が材料に組み込まれていてもよい。キットは、予備混合された又は他の成分とは個別の増粘剤、例えば、ヒアルロン酸を含み得る。実施形態は、本明細書に記載される1つ又は複数の前駆体及び本明細書に記載される1種又は複数種の薬剤を、任意選択で、アプリケーター並びに前駆体及び/又は薬剤の溶液を調製するための溶媒(例えば、水)と共に含むキットを包含する。
【0128】
1つ又は複数の前駆体は、乾燥形態(例えば、ケーク、粉末、固定化ペレット)で提供してもよい。前駆体用の希釈剤、例えば、水性希釈剤などを含んでもよい。緩衝剤は、乾燥材料、希釈剤、又はその両方のいずれに存在してもよい。乾燥前駆体を製造するための方法は、例えば、有機溶液中で前駆体を製造するか、又は溶液中に前駆体を溶解させる。官能基が求電子基である場合、求電子基が非反応性となるように溶媒及び/又はpHを選択することができる。前駆体が、様々な形態のエステルなど、加水分解的に不安定な基を含む場合、溶媒は、非含水、例えば、乾燥有機溶媒、炭酸ジメチル(DMC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、極性非プロトン溶媒であるよう選択することができる。前駆体は、凍結及び凍結乾燥してもよい。凍結乾燥物を摩砕するか、又は他の方法で粉末にして、ケークに圧縮し、ペレットに製造するか、又はその最終用途容器内で凍結乾燥することができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、治療薬剤と共にインサイチューでハイドロゲルを形成する必要があるような前駆体及びその他の材料を有するキットは、本明細書に記載されるものをはじめとする構成要素と一緒に提供され得る。いくつかの実施形態では、ハイドロゲルの特徴は、従って、最小限の膨潤で小さいニードルを通して送達され、水性低粘性調製物に導入されて、配置後にゲル化し得るハイドロゲルを製造するように選択することができる。流動性水性前駆体を使用して生分解性薬物デポを形成することにより、小さい(例えば、30ゲージ)ニードルを通した投与が可能になる。また、ハイドロゲルは、酸性副産物に分解しないように製造することができるため、薬物デポは、眼などの感受性組織の忍容性が良好である。
【0130】
このため、インプラントは、従来の生分解性ポリマーから製造されるインプラント(通常、はるかに小さい)と比較して、サイズをかなり大きくして(例えば、眼に関して1ml容量)製造することができる。他方で、小さいデポも有用となり得る。従って、いくつかの実施形態は、約0.005~約5mlの体積を有するハイドロゲルであり;当業者は、明示された範囲内のあらゆる範囲及び値、例えば、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5mlが企図されることを直ちに認識するであろう。
【実施例】
【0131】
前駆体の一部は、naxxKpppfffの命名法により呼ばれる、ここで、nはアームの数であり、xxは分子量(MW)であり、pppはポリマーであり、fffは官能性末端基である。例えば、8a15KPEGSAPは、15,000g/mol=15KPEGのMWを有する8アームのポリエチレングリコール(PEG)を指す。アジピン酸スクシンイミジルはSAPである。グルタル酸スクシンイミジルはSGである。アゼライン酸スクシンイミジルはSAZである。
【0132】
実施例1
この実施例は、5%及び10%PEG製剤の膨潤及び持続性の評価に関する。これは、空間が硝子体内又は他の位置のいずれであるにかかわらず、空間内で形状及び機械的完全性を維持し得る注射液を提供する。前駆体は、注射針通過性及び優れた凝集性を有する。ヒアルロン酸(HA)は、高分子量非ニュートン線状分子であり;これは、前駆体溶液の粘性を増大すると共に、高せん断状況(細いゲージニードルの通過)下で良好に機能した。850kDa HAの様々な異なる希釈物を試験したところ、この場合、約1%が好適であった。各前駆体を溶解させるのに使用した緩衝剤は、混合すると中性pHを生成し、SAZ前駆体の緩衝剤は、溶液中のポリマーの安定性を維持する(前加水分解を回避する)ために低pHでなければならない。これらの成分の各々は、一緒に混合すると、その形状安定性及び体積安定性を維持し、2~3分でハイドロゲルが形成するまで空間内でその形状及び位置を保持した(表3)。
【0133】
手順:
4.8%PEG製剤化
各PEGを溶解させるのに使用するために、2つのストックバッファーを調製した:
- 10mLのPEGアミン緩衝剤(8a20k NH3
+と共に使用するため)の調製。
- 105mgの四ホウ酸ナトリウム十水和物を10.0mLのWFIに導入し、溶液状になるまでボルテックスした。
- TD20攪拌装置内で200mgの850kDa HAを9.8mLのホウ酸塩/WFI溶液中に導入した。6000RPMで15分間攪拌した(完全に溶液状になるまで)。
- 10mLのPEGエステル緩衝剤(4a20K SAZと共に使用するため)の調製。
- 70mgの一塩基性リン酸ナトリウムを10.0mLのWFIに導入し、溶液状になるまでボルテックスした。
- 32mgの8a20k NH3
+を3mLのベクトン・ディッキンソン(Beckton Dickinson)(BD)シリンジに導入した後、968μLのPEGアミン緩衝剤と共にルアー同士を接続した。緩衝剤を粉末に添加し、溶液状になるまでシリンジ間で混合した。
- 64mgの4a20K SAZを3mLのBDシリンジに導入した後、946μLのPEGエステル緩衝剤と共にルアー同士を接続した。緩衝剤を粉末に添加し、溶液状になるまでシリンジ間で混合した。
- 500mgの8a20k NH3
+溶液を3mLのBDシリンジに導入して、500mgの4a20K SAZ溶液と共にルアー同士を接続し、30秒かけて前後に混合した後、ゲル時間試験のためにアルミニウム重量ボート上に分散させた。デポは、それが固体状態を取り始め、もはや液体ではなくなるときにゲルと呼ぶ。
- ゲル時間は広く、2:30分~3:00分の全範囲に及んだ。
【0134】
9.6%PEG製剤化
各PEGを溶解させるのに使用するために、2つのストックバッファーを調製した:
- 10mLのPEGアミン緩衝剤(8a20k NH3
+と共に使用するため)の調製。
- 105mgの四ホウ酸ナトリウム十水和物を10.0mLのWFIに導入し、溶液状になるまでボルテックスした。
- TD20攪拌装置内で200mgの850kDa HAを9.8mLのホウ酸塩/WFI溶液中に導入した。6000RPMで15分間攪拌した(完全に溶液状になるまで)。
- 10mLのPEGエステル緩衝剤(4a20K SAZと共に使用するため)の調製。
- 70mgの一塩基性リン酸ナトリウムを10.0mLのWFIに導入し、溶液状になるまでボルテックスした。
- 64mgの8a20k NH3
+を3mLのBDシリンジに導入した後、946μLのPEGアミン緩衝剤と共にルアー同士を接続した。緩衝剤を粉末に添加し、溶液状になるまでシリンジ間で混合した。
- 128mgの4a20K SAZを3mLのBDシリンジに導入した後、872μLのPEGエステル緩衝剤と共にルアー同士を接続した。緩衝剤を粉末に添加し、溶液状になるまでシリンジ同士を混合した。
- 500mgの8a20k NH3
+溶液を3mLのBDシリンジに導入して、500mgの4a20K SAZ溶液と共にルアー同士を接続し、30秒かけて前後に混合した後、ゲル時間試験のためにアルミニウム重量ボート上に分散させた。デポは、それが固体状態を取り始め、もはや液体ではなくなるときにゲルと呼ぶ。
【0135】
【0136】
観察:
4.8%PEGでは、ホウ酸塩濃度とゲル時間との間に線形関係があり、そのシリンジについて優れた標的範囲を可能にする:
y=-0.2223x+2.6816(式中、x=[ホウ酸塩]及びy=ゲル時間である)
10.7mg/mL(2分GT)≧x≧9.35mg/mL(4分GT)。
【0137】
膨潤及び寸法分析:
図7及び8は、生理緩衝液(PBS)中にインビトロで導入されたハイドロゲルデポについて、膨潤及び寸法変化のプロットをそれぞれ描写する。ハイドロゲルが分解するにつれて、それらは、液化前の1000%に向かう上方線形トレンドで膨潤し続けた。膨潤性調製物の場合、製剤を2mmIDシリコンチューブ内に流し込み、37℃の100%RH環境で24時間放置して硬化させた後、1×PBS pH7.2中に導入した。デポは、t=1時間及び24時間で集合してバーストを捕捉し、その後、より低い頻度になった。
【0138】
寸法分析の場合、製剤2(9.8%PEG)を2mmIDシリコンチューブ内に流し込み、37℃の100%RH環境で24時間放置して硬化させた後、1×PBS pH7.2中に導入した。大部分の寸法変化は、最初の1時間以内に起こる。
【0139】
実施例2
(1ドライシリンジ、1ウェットシリンジ)
手順:
20%デキサメタゾン充填、10%PEG製剤(一体型製剤)。
【0140】
炭酸ジメチル(DMC)4a20K SAZ/8a20k NH3
+懸濁液の調製:
乾燥条件下で以下の調製を実施した:
- 1.00gの4a20K SAZを予め計量した10mLのガラスバイアルに導入。
- 同じガラスバイアルへの0.50gの8a20k NH3
+の添加。
- ガラスバイアルをラバーストッパーで密封する。計量シリンジを用いて、8.50mLのDMCを添加。
- 懸濁液が均質になるまでバイアルをボルテックスする。
【0141】
デキサメタゾン粉末を含むシリンジの調製:
- 40mgのデキサメタゾン粉末を1mLのSoft-jectシリンジ中に計量して導入した。
- 133μLの事前に調製した4a20K SAZ/8a20k NH3
+の炭酸ジメチル懸濁液を、計量シリンジ及びニードルを用い、Soft-jectシリンジのルアーを通して添加した。
- 次に、シリンジをキャップし、その直後にカスタム化トート(-50℃)上で凍結させた。
- 凍結したらシリンジキャップを取り外し、トートを凍結乾燥器内に配置した。
- 次に、シリンジを一晩乾燥させて、残留する溶媒を全て除去した。
【0142】
希釈剤の調製:
- 2.56gの一塩基性リン酸ナトリウム、2.56gの二塩基性リン酸ナトリウム、8.50gの塩化ナトリウム、及び0.50gの四ホウ酸ナトリウム十水和物を1L容積のフラスコに添加し、WFIを用いて容積を満たした。
- 次に、6N塩酸を用いて溶液のpHを6.8に調節した。
- 希釈剤を調製するために、400μLの調製済緩衝液を1600μLのProvisc(1%HA 2000kDa)とシリンジ間で混合して、2mLのストック希釈剤溶液を得た。
【0143】
ゲルの生成:
- 40mgのデキサメタゾン及び20mgの乾燥PEG粉末(4a20K SAZ/8a20k NH3
+)を140μLの調製希釈剤溶液と約30秒間混合した。
- 得られた懸濁液をゲル時間試験のためにアルミニウム重量ボート上に分散させた。
- デポは、それが固体状態を取り始め、もはや液体ではなくなるときにゲルと呼ぶ。これらのデポのゲル時間は3~6分である。
【0144】
インビボ注射:
- PARFでのインビボ注射のために20%Dex製剤(蛍光標識したアミンを含む)を使用した。27G1/2”RNを有する50μLハミルトン(Hamilton)シリンジを用いて、25μLを注射した。溶液は、高度に注射通過性である。一部のデポは、インビボ放出のために残した。1つのデポは、インビトロ放出のために注射後直ちに外植した(dexクリアランスを視覚的に追跡)。結果を
図9に示す。過剰量のPBS中にデポを表示時間にわたって配置し、写真を撮影し、薬剤の放出について観察した。マトリックスは蛍光標識され、黄色の外観を有した。薬剤の存在によってマトリックスは不透明に見えた。薬剤が放出されるにつれて、デポは半透明になっていった。デポは、中央部分でより濃くなり、画像では、マトリックスの着色がより不透明な外観をそれに付与している。薬剤の放出は、辺縁で最も容易に観察される。
【0145】
実施例3:デキサメタゾン硝子体内デポ
この実施例は、薬剤放出のためのハイドロゲルを製造、試験又は使用するために用いることができる方法を詳述する。
【0146】
A.以下の成分を混合する。
・20mgの4アーム20K PEG SAZ
・10mgの8アーム20K PEGアミンHCl塩
・30mgの微粉化デキサメタゾン
・240mgの炭酸ジメチル
この混合物を凍結乾燥して、乾燥した凍結乾燥物を形成する。
【0147】
B.水性緩衝液を次のように調製する。
・8mg/mLのヒアルロン酸ナトリウム(850KDa)
・0.1mg/mLの四ホウ酸ナトリウム十水和物
・0.51mg/mLの一塩基性リン酸ナトリウム
・0.51mg/mLの二塩基性リン酸ナトリウム
・1.7mg/mLの塩化ナトリウム
・6N塩酸溶液を用いてpHを6.8に調節する。
【0148】
シリンジ内で10mgのAと40mgのBとを合わせてから、後眼房に注射する。実質的に球体の形状が眼内に形成され、これは、約2~5分でハイドロゲルに凝固する。デキサメタゾンは、硝子体液中にゆっくりと放出され、隣接する組織、例えば、網膜、毛様体、前眼房及び脈絡膜中に徐々に移動して、治療利益が得られる。
【0149】
実施例4:ロテプレデノールエタボン酸塩硝子体内デポ
この実施例は、薬剤放出のためのハイドロゲルを製造、試験又は使用するために用いることができる方法を詳述する。
【0150】
A.以下の成分を混合する。
・20mgの4アーム20K PEG SAZ
・10mgの8アーム20K PEGアミンHCl塩
・30mgの微粉化デキサメタゾン
・240mgの炭酸ジメチル
この混合物を凍結乾燥して、乾燥した凍結乾燥物を形成する。
【0151】
B.水性緩衝液を次のように調製する。
・8mg/mLのヒアルロン酸ナトリウム(850KDa)
・0.1mg/mLの四ホウ酸ナトリウム十水和物
・0.51mg/mLの一塩基性リン酸ナトリウム
・0.51mg/mLの二塩基性リン酸ナトリウム
・1.7mg/mLの塩化ナトリウム
・6N塩酸溶液を用いてpHを6.8に調節する。
【0152】
シリンジ内で10mgのAと40mgのBとを合わせてから、後眼房に注射する。実質的に球体の形状が眼内に形成され、これは、約2~5分でハイドロゲルに凝固する。ロテプレデノールエタボン酸塩は、硝子体液中にゆっくりと放出され、隣接する組織、例えば、網膜、毛様体、前眼房及び脈絡膜中に徐々に移動して、治療利益が得られる。
【0153】
実施例5:アキシチニブ硝子体内デポ
この実施例は、薬剤放出のためのハイドロゲルを製造、試験又は使用するために用いることができる方法を詳述する。
【0154】
A.以下の成分を混合する。
・20mgの4アーム20K PEG SAZ
・10mgの8アーム20K PEGアミンHCl塩
・30mgの微粉化ロテプレデノールエタボン酸塩
・240mgの炭酸ジメチル
この混合物を凍結乾燥して、乾燥した凍結乾燥物を形成する。
【0155】
B.水性緩衝液を次のように調製する。
・8mg/mLのヒアルロン酸ナトリウム(850KDa)
・0.1mg/mLの四ホウ酸ナトリウム十水和物
・0.51mg/mLの一塩基性リン酸ナトリウム
・0.51mg/mLの二塩基性リン酸ナトリウム
・1.7mg/mLの塩化ナトリウム
・6N塩酸溶液を用いてpHを6.8に調節する。
【0156】
シリンジ内で10mgのAと40mgのBとを合わせてから、後眼房に注射する。実質的に球体の形状が眼内に形成され、これは、約2~5分でハイドロゲルに凝固する。アキシチニブは、硝子体液中にゆっくりと放出され、隣接する組織、例えば、網膜、毛様体、前眼房及び脈絡膜中に徐々に移動して、治療利益が得られる。
【0157】
実施例6:ゲル化トリガーを有するアキシチニブ硝子体内デポ
この実施例は、薬剤放出のためのハイドロゲルを製造、試験又は使用するために用いることができる方法を詳述する。
【0158】
A.以下の成分を混合する。
・20mgの4アーム20K PEG SAZ
・10mgの8アーム20K PEGアミンHCl塩
・30mgの微粉化ロテプレデノールエタボン酸塩
・240mgの炭酸ジメチル
この混合物を凍結乾燥して、乾燥した凍結乾燥物を形成する。
【0159】
B.水性緩衝液を次のように調製する。
・8mg/mLのヒアルロン酸ナトリウム(850KDa)
・1.7mg/mLの塩化ナトリウム
【0160】
C.水溶液を次のように調製する。
・0.1mg/mLの四ホウ酸ナトリウム十水和物
・0.51mg/mLの一塩基性リン酸ナトリウム
・0.51mg/mLの二塩基性リン酸ナトリウム
・50mg/mLのポリエチレングリコール(8KDa)
【0161】
長さ3.25mm、外径3.02mm、内径1.26mmのポリエチレンチューブをCでコーティングし、乾かして表面全体に被膜を形成する。コーティングチューブをNipro30ゲージ薄肉ルアーロック(Luer Lok)ニードルのハブ内に配置する。
【0162】
シリンジ内で10mgのAと40mgのBとを合わせてから、コーティングチューブを含むニードルを装着する。約2秒間の滑らかな移動でシリンジ内容物を後眼房に注射する。実質的に球体の形状が眼内に形成され、これは、約2~5分でハイドロゲルに凝固する。アキシチニブは、硝子体液中にゆっくりと放出され、隣接する組織、例えば、網膜、毛様体、前眼房及び脈絡膜中に徐々に移動して、治療利益が得られる。
【0163】
実施例7:ゲル化トリガーを有するアキシチニブ硝子体内デポ
この実施例は、薬剤放出のためのハイドロゲルを製造、試験又は使用するために用いることができる方法を詳述する。
【0164】
A.以下の成分を混合する。
・20mgの4アーム20K PEG SAZ
・10mgの8アーム20K PEGアミンHCl塩
・30mgの微粉化ロテプレデノールエタボン酸塩
・240mgの炭酸ジメチル
この混合物を凍結乾燥して、乾燥した凍結乾燥物を形成する。
【0165】
B.水性緩衝液を次のように調製する。
・11mg/mLのヒアルロン酸ナトリウム(850KDa)
・2.3mg/mLの塩化ナトリウム
【0166】
C.水溶液を次のように調製する。
・0.4mg/mLの四ホウ酸ナトリウム十水和物
・2.0mg/mLの一塩基性リン酸ナトリウム
・2.0mg/mLの二塩基性リン酸ナトリウム
【0167】
2:1の注射筒比を有し、スタティック混合要素を備えるニードルを有する2筒型シリンジの大きい方の管腔内で10mgのAと30mgのBとを合わせる。約2秒間の滑らかな移動でシリンジ内容物を後眼房に注射する。実質的に球体の形状が眼内に形成され、これは、約2~5分でハイドロゲルに凝固する。アキシチニブは、硝子体液中にゆっくりと放出され、隣接する組織、例えば、網膜、毛様体、前眼房及び脈絡膜中に徐々に移動して、治療利益が得られる。
【0168】
実施例8:アキシチニブ硝子体内デポ
この実施例は、薬剤放出のためのハイドロゲルを製造、試験又は使用するために用いることができる方法を詳述する。
【0169】
A.以下の成分を混合する。
・20mgの4アーム20K PEG SAZ
・10mgの8アーム20K PEGアミンHCl塩
・30mgの微粉化アキシチニブ
・240mgの炭酸ジメチル
この混合物を凍結乾燥して、乾燥した凍結乾燥物を形成する。
【0170】
B.0.1N塩酸溶液を用いて注射液のpHを4.0に調節することにより、水溶液を調製する。
【0171】
シリンジ内で10mgのAと40mgのBとを合わせてから、後眼房に注射する。実質的に球体の形状が眼内に形成され、これは、局所pHが硝子体液のpH、約7.2と等しくなるまで増加するにつれて、ハイドロゲルに凝固する。アキシチニブは、硝子体液中にゆっくりと放出され、隣接する組織、例えば、網膜、毛様体、前眼房及び脈絡膜中に徐々に移動して、治療利益が得られる。
【0172】
実施例9:キットの調製及び試験
エンベロープPEG及び無水炭酸ジメチル懸濁液の調製
- 500mgの4アーム20K SAZを予め計量したバイアス中に集めた。
- 250mgの8アーム20K NH3
+を同じバイアル中に集めた。
- 9.25mLの無水炭酸ジメチルを窒素下で、懸濁液が均質になるまで粉末に添加した(これにより、5%:2.5%4アーム20K SAZ:8アーム20K NH3
+調製物が生成された)。
- 2.5mLのPEG/DMC懸濁液を小アルミニウム重量ボート中に注ぎ込んだ。
- 次に、グローブバッグの下に配置した重量ボートを低温アルミニウム表面(-40℃の冷凍庫から取り出した直後)上に配置して、PEG/DMCが大気に曝されずに凍結できるようにした。
- 依然として凍結している状態で重量ボートを凍結乾燥器棚に移して、サイクルを実行して溶媒を全て除去した。
【0173】
ニードルハブ内でのPEGの調製:
- 27G1/2”ニードルを乾燥条件下において秤で予め計量した。
- 事前に調製したPEG粉末を、生検パンチとしてニードルを用いることにより、ニードルハブ内に移した(標的は3~6mgのPEGであった)。
- 4.96mgのエンベロープPEGを計量してニードル中に導入した。これは、将来の使用のために取っておいた。
【0174】
キセロゲルの調製:
- 以下の成分を炭酸ジメチルに溶解させた:
- DMC中11.4%の8アーム20k NH2
- DMC中8.6%の8アーム15k SG
- DFE Pharma製の無水マイクロファインラクトース1600mgを11.4%の8アーム20k NH2(前述)に懸濁させた。
- バルクゲルが形成されるまで、このシリンジを4200μLの8.6%の8アーム15k SGとシリンジ間で混合した。
- 次に、ホモジナイザーを作動することにより、バルクゲルの粒径を減少させた。
- 次に、フィルター乾燥器を用いて粒子を乾燥させて、DMC及び微粉を除去した。
- 最終粒径は430umのd50であった。
【0175】
希釈剤の調製:
- 一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム十水和物を1L容積フラスコに添加し、水を用いて容積を満たした。
- 6N塩酸を用いて溶液のpHを7.2に調節した。
- 希釈剤を調製するために、1120μLの調製済緩衝液を、880μLのProvisc(1%HA 2000kDa)を用いてシリンジ間で混合して、2mLのストック希釈剤溶液を得た。
【0176】
ハイドロゲルスラリーの調製:
- 212mgの事前に調製したキセロゲル(前述)をシリンジに集めた。
- 次に、1.829gの事前に調製した希釈剤(前述)をシリンジ間で混合して、完全に均質になるまでハイドロゲル懸濁液を混合した。
【0177】
注射及びゲル化:
表4は、キット成分を含む各調製物と、得られたゲル時間とを示す。ゲル化は、アルミニウム重量ボート上にニードルを通してスラリーを注射することによって達成する。
【0178】
【0179】
実施例10
ステロイド候補
1.フルニソリド、無水、USP
2.微粉化ブデソニド
3.ベタメタゾンリン酸ナトリウム、USP
4.トリアムシノロンアセトニド、粉末、USP。
【0180】
ステロイド溶解度試験
ステロイド候補の溶解度は、室温の溶出溶媒(PBS、pH6.3)中で68時間評価した。可溶性ステロイドのUV検出は、標準曲線に対して決定した。決定された最大溶解度を以下に示す:
・PBS、pH6.3中のフルニソリドの最大溶解度=90μg/mL(245nm)。
・PBS、pH6.3中のベタメタゾンリン酸ナトリウムの最大溶解度≧100,000μg/mL(水に易溶性)(241nm)。
・PBS、pH6.3中のブデソニドの最大溶解度=30μg/mL(247nm)。
・PBS、pH6.3中のトリアムシノロンアセトニドの最大溶解度=20μg/mL(241nm)。
【0181】
デポ製剤化
シリンジ1:10mgのステロイドと、42mgの4アーム20,000分子量PEGグルタル酸スクシンイミジル(4a20KSG)とを計量してシリンジに導入した後、1mgのトリリシン(LLL)を含有する1mg/mLの一塩基性リン酸ナトリウム233μLに溶解させた。低pH(約4.5)は、PEG及びLLL成分間の反応性を阻止する。
【0182】
シリンジ2:6mgの四ホウ酸ナトリウムを計量してシリンジに導入し、233μLの注射液(WFI)に溶解させた。
【0183】
2つのシリンジを、ルアーコネクターを用いてシリンジ間で混合してから、スタープレート(stir plate)上の小型攪拌子を備える10mmのホウケイ酸チューブ内に注入した。混合により、ハイドロゲル形成中に十分な粘性が達成されるまでステロイド懸濁液が沈殿するのを防いだ。これにより、9%ハイドロゲル(w/v)に捕捉された体積約0.45mLの10mgのステロイドが得られた。デポ形状の視覚的表示を
図10に示す。
【0184】
インビトロデポからの放出速度
各ステロイド候補について、室温で穏やかに攪拌しながら、1LのPBS、pH6.3中にハイドロゲルデポを含有する10mgのステロイドからの放出速度を実施して、等量の溶出溶媒中に分散させた10mgの非希釈薬物の溶解プロフィールと比較した(
図11)。フルニソリドステロイド候補について、経時的な薬物デポからの放出の視覚的表示が
図12で観察される。
【0185】
実施例11
類似の構築物において、エタボン酸ロテプレデノール、デキサメタゾン、微粉化デキサメタゾン、プレドニゾロン及びプレドニゾロン酢酸塩をPEGハイドロゲル前駆体溶液に懸濁させた後、チューブ内に注入して、ゲルをハイドロゲルとして共有結合架橋させた後、樽型のデポに切断した。ステロイド懸濁ゲルをチューブから取り出し、エクスビボ放出を溶出溶媒中で開始した。デポ界面から内側へのゾーンクリアランス(放出されたステロイド)を観察し、視覚的に記録した。
図13~16を参照されたい。
【0186】
実施例12:100μgの微粉化アキシチニブ懸濁液注射
緩衝剤調製
10×PBS(VWR International)を水で1:10に希釈し、0.01N NaOH及び0.01N HClを用いてpHを7.2にした。次に、この溶液を、0.2μmフィルターを通して2mL/分の速度で濾過することより、全てのエンドドキシン又はバイオバーデンを除去した。
【0187】
懸濁液の調製
200μgの微粉化アキシチニブを計量して50mLのアンバーバイアル中に導入した。これを乾燥させ、栓をして圧着した後、γ線照射により滅菌した。照射後、9.80mLの緩衝剤をバイアルに添加した。次に、懸濁液を音波浴中に20分間配置して微粉化粒子を均質に分散させた。
【0188】
材料の注射
次に、50μLの2%アキシチニブ懸濁液を、21G1.5”ニードルを用いて100μLのルアーロックハミルトン(Hamilton)シリンジ内に注入した。ニードルを新しい27G1/2”TWニードル(Nipro)に取り換えた。続いて、50μLの懸濁液を雄ニュージーランドホワイトウサギの硝子体内の6時位置に注射した。1ヵ月後、眼を外植し、組織学のために準備した。
【0189】
組織学の方法
2つの眼を固定(デビッドソン)、ブロック、切断、マウントしてから、認定獣医病理学者による顕微鏡検査のために染色した。次のスキームに従って眼を切断した。縫合は、採取時の方位で12時の位置に配置した。典型的に、眼は、正中線に沿って、レンズ及び視神経を通り12時~6時の平面で半分に切断した。これにより、可能な限り多くの眼の構造が捉えられる。この切断した眼を大まかに調べて異常を記録した。切断された半分の眼球各々をそれぞれのカセット内に包埋した。カセットAは、常に眼の鼻側部分であり、カセットBは、常に眼の側頭側部分である。各ブロックについて、6枚のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色スライドを調製したが、これらは1000ミクロン(1mm)だけ隔てられていた。各スライドに2つの連続した眼の切片を載せた。スライドは、全てCharter Preclinical Servicesの認定獣医病理学者によって評価された。組織を0~5の半定量的なスケールで任意の異常に関して評点した。
【0190】
炎症の兆候又はその他の有害な所見についてのいくつかのカテゴリーで眼を評点した。炎症スコアは、以下の通りである:
0 - 変化なし;正常
1 - 極めて少ない変化の中心;最少
2 - 軽度なびまん性変化又はより顕著な巣状変化
3 - 中程度のびまん性変化
4 - 顕著なびまん性変化
5 - 重度のびまん性変化。
【0191】
組織学結果:
硝子体眼房内の炎症:0.0±0.0
注射した材料周囲の炎症:0.04±0.29
他の有害な所見(網膜、強膜、レンズなど):なし。
【0192】
実施例13:200μgの微粉化アキシチニブ懸濁液注射
アキシチニブ溶解
195mgのアキシチニブ(LGM Pharma製、GMPグレード)をガラスバイアル内の110mLのエタノール(Sigma Aldrich)中に溶解させ、キャップをして圧着した(1.77mgのアキシチニブ/mLエタノール)。次に、溶液を光から保護するために、このバイアルをアルミホイルで包み、完全に溶解するまで音波処理した。続いて、アルミホイルで包んだ2つの60mLポリエチレン(PE)ルアーロックシリンジ(BD)中に溶液を吸引した。
【0193】
アキシチニブ沈殿
1800mLの滅菌注射液(Water For Injection)(WFI)を計量して2Lビーカーに導入し、攪拌子により600RPMで攪拌するスタープレート上に配置し、ビーカーの中心に大きいWFIボルテックスを生成した。エタノール中にアキシチニブを含有する1つの60mL BDシリンジを、WFIビーカー上方に固定されたシリンジポンプ上に配置した。皮下注射針(21G、BD)をシリンジに接続し、アキシチニブ溶液投与のためのボルテックスの中心に向けた。アキシチニブ溶液をWFIに一滴ずつ添加して、微粉化アキシチニブを沈殿させた。
【0194】
アキシチニブ懸濁液の濾過及び収集
微粉化後、5.7%エタノール/94.3%WFIに懸濁させたアキシチニブを0.2umの真空フィルター(Thermo Scientific)を通して濾過した後、100mLのWFIで3回すすいだ。濾過後、へらを用いてフィルターからアキシチニブ粉末を収集し、10mLのガラスバイアル内で一晩真空乾燥することより、余剰溶媒を全て除去した。
【0195】
粒径分析
ベックマン・コールターLS120粒径分析装置(Beckman Coulter LS 120 Particle Size Analyzer)を用いて粒径を分析した。分析前にサンプルを脱イオン水中で15分間音波処理した。平均して、粒度分布は、d10=0.773um、d50=2.605um、d90=6.535umである。
【0196】
懸濁液の調製
40μgの微粉化アキシチニブを計量して滅菌3mL BDルアーロックシリンジ中に導入した。960μLのProvisc(Alcon,Inc.,1%2000kDa ヒアルロン酸溶液)を新しい3mL BDルアーロックシリンジに添加した。ルアーコネクターを用いて2つのシリンジを混合した。
【0197】
材料の注射
次に、50μLの4%アキシチニブ懸濁液を、21G1.5”ニードルを用いて100μLのルアーロックハミルトン(Hamilton)シリンジ内に注入した。ニードルを新しい27G1/2”TWニードル(Nipro)に取り換えた。続いて、50μLの懸濁液を雄ニュージーランドホワイトウサギの硝子体内の6時の位置に注射した。1ヵ月後、眼を外植し、組織学のために準備した。
【0198】
組織学の方法
2つの眼を固定(デビッドソン固定液)、ブロック、切断、マウントしてから、認定獣医病理学者による顕微鏡検査のために染色した。次のスキームに従って眼を切断した。縫合は、採取時の方位で12時の位置に配置した。典型的に、眼は、正中線に沿って、レンズ及び視神経を通り12時~6時の平面で半分に切断した。これにより、可能な限り多くの眼の構造が捉えられる。この切断された眼を大まかに調べて異常を記録した。切断された半分の眼球各々をそれぞれのカセット内に包埋した。カセットAは、常に眼の鼻側部分であり、カセットBは、常に眼の側頭側部分である。各ブロックについて、6枚のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色スライドを調製したが、これらは1000ミクロン(1mm)だけ隔てられていた。各スライドに2つの連続した眼の切片を載せた。スライドは、全てCharter Preclinical Servicesの認定獣医病理学者によって評価された。組織を0~5の半定量的なスケールで任意の異常に関して評点した。
【0199】
前述のように、炎症の兆候又はその他の有害な所見についてのいくつかのカテゴリーで眼を評点した。
【0200】
組織学結果
硝子体眼房内の炎症:0.14±0.35
注射した材料周囲の炎症:0.08±0.37
他の有害な所見(網膜、強膜、レンズなど):なし。
【0201】
実施例14:400μgの微粉化アキシチニブ懸濁液注射
アキシチニブ溶解
195mgのアキシチニブ(LGM Pharma製、GMPグレード)をガラスバイアル内の110mLのエタノール(Sigma Aldrich)中に溶解させ、キャップをして圧着した(1.77mgのアキシチニブ/mLエタノール)。次に、溶液を光から保護するために、このバイアルをアルミホイルで包み、完全に溶解するまで音波処理した。続いて、アルミホイルで包んだ2つの60mLポリエチレン(PE)ルアーロックシリンジ(BD)中に溶液を吸引した。
【0202】
アキシチニブ沈殿
1800mLの滅菌注射液(Water For Injection)(WFI)を計量して2Lビーカーに導入し、攪拌子により600RPMで攪拌するスタープレート上に配置し、ビーカーの中心に大きいWFIボルテックスを生成した。エタノール中にアキシチニブを含有する1つの60mL BDシリンジを、WFIビーカー上方に固定されたシリンジポンプ上に配置した。皮下注射針(21G、BD)をシリンジに接続し、アキシチニブ溶液投与のためのボルテックスの中心に向けた。次に、アキシチニブ溶液をWFIに一滴ずつ添加するために、シリンジポンプを7.5mL/分で作動させて微粉化アキシチニブを沈殿させた。
【0203】
アキシチニブ懸濁液の濾過及び収集
微粉化後、5.7%エタノール/94.3%WFIに懸濁させたアキシチニブを0.2umの真空フィルター(Thermo Scientific)を通して濾過した後、100mLのWFIで3回すすいだ。濾過後、へらを用いてフィルターからアキシチニブ粉末を収集し、10mLのガラスバイアル内で一晩真空乾燥することより、余剰溶媒を全て除去した。
【0204】
粒径分析
ベックマン・コールターLS120粒径分析装置を用いて粒径を分析した。分析前にサンプルを脱イオン水中で15分間音波処理した。平均して、粒度分布は、d10=0.773um、d50=2.605um、d90=6.535umである。
【0205】
懸濁液の調製
80μgの微粉化アキシチニブを計量して滅菌3mL BDルアーロックシリンジ中に導入した。960μLのProvisc(Alcon,Inc.,1%2000kDa ヒアルロン酸溶液)を新しい3mL BDルアーロックシリンジに添加した。ルアーコネクターを用いて2つのシリンジを混合した。
【0206】
材料の注射
次に、50μLの8%アキシチニブ懸濁液を、21G1.5”ニードルを用いて100μLのルアーロックハミルトン(Hamilton)シリンジ中に注入した。ニードルを新しい27G1/2”TWニードル(Nipro)に取り換えた。続いて、50μLの懸濁液を雄ニュージーランドホワイトウサギの両眼の硝子体内の6時の位置に注射した。1ヵ月後、眼を外植し、組織学のために準備した。
【0207】
組織学の方法
2つの眼を固定(デビッドソン固定液)、ブロック、切断、マウントしてから、認定獣医病理学者による顕微鏡検査のために染色した。次のスキームに従って眼を切断した。縫合は、採取時の方位で12時の位置に配置した。典型的に、眼は、正中線に沿って、レンズ及び視神経を通り12時~6時の平面で半分に切断した。これにより、可能な限り多くの眼の構造が捉えられる。この切断された眼を大まかに調べて異常を記録した。切断された半分の眼球各々をそれぞれのカセット内に包埋した。カセットAは、常に眼の鼻側部分であり、カセットBは、常に眼の側頭側部分である。各ブロックについて、6枚のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色スライドを調製したが、これらは1000ミクロン(1mm)だけ隔てられていた。各スライドに2つの連続した眼の切片を載せた。スライドは、全てCharter Preclinical Servicesの認定獣医病理学者によって評価された。組織を0~5の半定量的なスケールで任意の異常に関して評点した。
【0208】
前述のように、炎症の兆候又はその他の有害な所見についてのいくつかのカテゴリーで眼を評点した。
【0209】
組織学結果
硝子体眼房内の炎症:0.14±0.35
注射した材料周囲の炎症:0.14±0.35
他の有害な所見(網膜、強膜、レンズなど):なし。
【0210】
さらなる開示
1.組織への薬剤送達の方法であって、ハイドロゲル中の治療薬剤(例えば、溶解、懸濁、全体的に分散した)と共にハイドロゲルインプラントをインサイチューで形成するステップを含み、治療薬剤が、低水溶性又は難水溶性を有する方法。部位は、例えば、眼内、眼の組織内、眼房内、又は硝子体内であってよい。
【0211】
2.ハイドロゲルが、水分解性基の分解によって過剰量の水にインビトロで溶解可能なハイドロゲルによって測定可能であるように水分解性である、1に記載の方法。
【0212】
3.薬剤が実質的に放出されるまでハイドロゲルが実質的に持続する、1又は2に記載の方法。
【0213】
4.ハイドロゲルが100%~90%持続性であるとき、薬剤の50%~100%w/w(当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%、例えば、90%~99%、又は55%~99%のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう)が放出される、1又は2に記載の方法。或いは、ハイドロゲルが100%~80%持続性であるときである。
【0214】
5.ハイドロゲルが、インサイチューでのハイドロゲルの形成から1~36ヵ月の範囲である期間にわたり治療有効濃度で薬剤を送達する、1~4のいずれかに記載の方法。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36ヵ月のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。より短い期間、例えば、1~31日を使用することもでき;当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、20、25、30、又は31日のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0215】
6.その期間後に、ハイドロゲルが薬剤の全部を放出しており、且つ少なくとも80%持続性である、5に記載の方法。
【0216】
7.その期間後に、ハイドロゲルが、非毒性である、ある量の薬剤を放出する、5に記載の方法。
【0217】
8.その期間後に、ハイドロゲルが最終1%~20%w/wの薬剤を送達する、5又は7に記載の方法。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、1、2、3、4、5、10、15、16、17、18、19%w/wのいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0218】
9.ハイドロゲルが、ハイドロゲルの分解により最終1%~20%w/wの薬剤を送達する、1~8のいずれかに記載の方法。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、1、2、3、4、5、10、15、16、17、18、19%w/wのいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0219】
10.ハイドロゲルが、インサイチューでのハイドロゲルの形成後、1~36ヵ月の範囲である期間にわたり10%以下だけ分解する(或いは15%、20%、又は25%以下だけ分解する)、1~9のいずれかに記載の方法。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36ヵ月のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0220】
11.インサイチューでのハイドロゲルの形成後、1~20ヵ月の範囲の時点で50%w/wiの薬物が送達される、1~10のいずれかに記載の方法。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヵ月のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0221】
12.インサイチューでのハイドロゲルの形成後、1~20ヵ月の範囲の時点で50%w/wiのハイドロゲルが分解される、1~11のいずれかに記載の方法。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヵ月のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0222】
13.ハイドロゲルの形成の組織及び/又は部位が、眼、小管内、テノン嚢下、眼房内、硝子体内、強膜内、脈絡膜、脈絡膜上、網膜、網膜下、レンズ、組織、管腔、空隙、潜在空隙、動物(ヒト若しくはその他)内部、又は動物の表面上、医原病部位、組織が除去された部位、手術部位、癌組織、癌組織若しくはその付近、歯系組織、歯肉、歯周、副鼻腔、脳、血管内、動脈瘤、又は疾病部位である、1~12のいずれかに記載の方法。
【0223】
14.薬剤が眼底疾患の治療のためのものである、1~13のいずれかに記載の方法。
【0224】
15.眼底疾患が、加齢黄斑変性(AMD)、嚢胞黄斑浮腫(CME)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、後部ぶどう膜炎、糖尿病網膜症、網膜血管閉塞、又は緑内障である、14に記載の方法。
【0225】
16.組織が、網膜、レンズ、角膜、又は強膜である、1~15のいずれかに記載の方法。
【0226】
17.薬剤が、抗VEGF剤、VEGFR1遮断剤、VEGFR2遮断剤、VEGFR3遮断剤、抗PDGF剤、抗PDGF-R剤、PDGFRβ遮断剤、抗血管新生剤、スニチニブ、E7080、Takeda-6d、チボザニブ、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、アキシチニブ、ニンテダニブ、セジラニブ、バタラニブ、モテサニブ、マクロライド、シロリムス、エベロリムス、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、イマチニブ(グリーベック)、ゲフィニチブ(イレッサ)、トセラニブ(パラディア)、エルロチニブ(タルセバ)、ラパチニブ(タイケルブ)、ニロチニブ、ボスチニブ、ネラチニブ、ラパチニブ、又はバタラニブを含む、1~16のいずれかに記載の方法。また、ここで、薬剤は、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、抗生剤、又は鎮痛剤である。
【0227】
18.薬剤が、緑内障のための難溶性プロスタグランジンアナログ、ぶどう膜炎のためのネパフェナク、AMD/CNVのmTOR受容体を遮断するための、ラパマイシン、シロリムス、タクロリムスなどのマクロライドを含む、1~17のいずれかに記載の方法。
【0228】
19.薬剤が、ハイドロゲル中の懸濁体(液体又は固体)である、1~18のいずれかに記載の方法。例えば、粒子状の薬剤又は液滴状の薬剤、粒子又は液滴は、マイクロスケール(1~500ミクロン径)及び/又はナノスケール(1ミクロン径未満)である。
【0229】
20.薬剤がハイドロゲル全体に分散されている、1~19のいずれかに記載の方法。
【0230】
21.ハイドロゲルの体積が1~1000μLである、1~20のいずれかに記載の方法。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、1、10、20、50、100、200、300、400、500、900、1000μLのいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0231】
22.ハイドロゲルが第1のハイドロゲルであり、方法が、第2のハイドロゲルを、第2のハイドロゲル中の第2の薬剤と共にインサイチューで形成するステップをさらに含み、第2の薬剤が、任意選択で、低水溶性を有する、1~21のいずれかに記載の方法。
【0232】
23.第1の薬剤と第2の薬剤とが同じ活性成分を有する、22に記載の方法。
【0233】
24.第1の薬剤と第2の薬剤とが異なるエナンチオマー、塩、又は遊離塩基を有する、22又は23に記載の方法。
【0234】
25.第1の薬剤と第2の薬剤とが同一の化学構造を有する、22又は23に記載の方法。
【0235】
26.第1のハイドロゲルが第2のハイドロゲルよりも迅速に薬剤を放出する、22~25のいずれかに記載の方法。
【0236】
27.第1のハイドロゲルが第2のハイドロゲルよりも大きい表面積を有する、22~26のいずれかに記載の方法。
【0237】
28.第1のハイドロゲルが第2のハイドロゲルと比較してより高速の薬剤拡散を提供する、22~27のいずれかに記載の方法。
【0238】
29.第1の薬剤と第2の薬剤とが異なる化学部分である、22~28のいずれかに記載の方法。
【0239】
30.ハイドロゲルが、互いに反応してハイドロゲルを形成する第1の前駆体と第2の前駆体とを組み合わせることにより形成される、22~29のいずれかに記載の方法。
【0240】
31.ハイドロゲルが、第1の前駆体と第2の前駆体との間の共有結合架橋なしに形成される、30に記載の方法。
【0241】
32.ハイドロゲルが、求核基を含む第1の前駆体と、求電子基を含む第2の前駆体とを組み合わせて、求核基と求電子基との反応により共有結合架橋を形成してハイドロゲルを形成することによって形成される、1~31のいずれかに記載の方法。
【0242】
33.前駆体の水性混合物を部位に注射するステップを含む、30~32のいずれかに記載の方法。
【0243】
34.第1の前駆体と第2の前駆体とが親水性である、30~33のいずれかに記載の方法。
【0244】
35.第1の前駆体及び/又は第2の前駆体がポリ(エチレン)グリコール反復配列を含む、30~34のいずれかに記載の方法。
【0245】
36.ハイドロゲルのマトリックスの一部を形成しないヒアルロン酸又は親水性ポリマーをさらに含む、1~35のいずれかに記載の方法。
【0246】
37.前駆体を活性化してハイドロゲルを形成するステップを含む、1~36のいずれかに記載の方法。
【0247】
38.複数の前駆体を混合して複数の前駆体間の化学反応を開始させるステップを含み、複数の前駆体が互いに反応してハイドロゲルを形成する、1~37のいずれかに記載の方法。
【0248】
39.部位への配置前、その後、又はその間に前駆体が活性化及び/又は混合される、32~38のいずれかに記載の方法。
【0249】
40.緩衝剤をさらに含む、1~39のいずれかに記載の方法。
【0250】
41.緩衝剤が固体である、40に記載の方法。
【0251】
42.固体が、ハイドロゲル前駆体を部位に配置するためのアプリケーター内に配置され、前駆体がアプリケーターを通過する際に前駆体が固体と接触する、41に記載の方法。
【0252】
43.固体が、前駆体を受けるアプリケーターの管腔内に配置されるか、ニードルのハブ内に配置されるか、シリンジ内に配置されるか、又はアプリケーター内に配置されるペレットである、41又は42のいずれかに記載の方法。
【0253】
44.緩衝液が、リン酸塩、炭酸水素塩、又は炭酸塩を含む、40~43のいずれかに記載の方法。
【0254】
45.部位及び/又は組織が、腫瘍、損傷組織、疾患組織、感染組織、器官、血管、外膜、動脈、静脈、又は神経である、1~44のいずれかに記載の方法。
【0255】
46.ハイドロゲルが、細長であるか、楕円形であるか、球形であるか、実質的に球形であるか、長円形であるか、円柱状であるか、実質的に円柱状であるか、円板状であるか、又は実質的に円板状である、1~45のいずれかに記載の方法。
【0256】
47.薬剤が有効量又は計算有効量で送達される、1~46のいずれかに記載の方法。
【0257】
51.ハイドロゲル中に治療薬剤(例えば、溶解、懸濁、全体的に分散した)を含むハイドロゲルインプラントであって、薬剤が低水溶性又は難水溶性を有する、ハイドロゲルインプラント。この部位は、例えば、眼内、眼の組織内、眼房内、又は硝子体内であってよい。
【0258】
52.ハイドロゲルが、水分解性基の分解によって過剰量の水にインビトロで溶解可能なハイドロゲルによって測定可能であるように水分解性である、51に記載のハイドロゲル。
【0259】
53.薬剤が実質的に放出されるまでハイドロゲルが実質的に持続する、51又は52に記載のハイドロゲル。
【0260】
54.ハイドロゲルが100%~90%持続性であるとき、薬剤の50%~100%w/w(当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%、例えば、90%~99%、又は55%~99%のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう)が放出される、51又は52に記載のハイドロゲル。或いは、ハイドロゲルが100%~80%持続性であるときである。
【0261】
55.ハイドロゲルが、インサイチューでのハイドロゲルの形成から1~36ヵ月の範囲である期間にわたり治療有効濃度で薬剤を送達する、51~54のいずれかに記載のハイドロゲル。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36ヵ月のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。より短い期間、例えば、1~31日を使用することもでき;当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、20、25、30、又は31日のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0262】
56.その期間後に、ハイドロゲルが薬剤の全部を放出しており、且つ少なくとも80%持続性である、55に記載のハイドロゲル。
【0263】
57.その期間後に、ハイドロゲルが、非毒性である、ある量の薬剤を放出する、55に記載のハイドロゲル。
【0264】
58.その期間後に、ハイドロゲルが最終1%~20%w/wの薬剤を送達する、55又は57に記載のハイドロゲル。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、1、2、3、4、5、10、15、16、17、18、19%w/wのいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0265】
59.ハイドロゲルが、ハイドロゲルの分解により最終1%~20%w/wの薬剤を送達する、1~8のいずれかに記載のハイドロゲル。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、1、2、3、4、5、10、15、16、17、18、19%w/wのいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0266】
60.ハイドロゲルが、インサイチューでのハイドロゲルの形成後、1~36ヵ月の範囲である期間にわたり10%以下だけ分解する(或いは15%、20%、又は25%以下だけ分解する)、51~59のいずれかに記載の方法。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36ヵ月のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0267】
61.インサイチューでのハイドロゲルの形成後、1~20ヵ月の範囲の時点で50%w/wiの薬物が送達される、51~60のいずれかに記載のハイドロゲル。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヵ月のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0268】
62.インサイチューでのハイドロゲルの形成後、1~20ヵ月の範囲の時点で50%w/wiのハイドロゲルが分解される、51~61のいずれかに記載のハイドロゲル。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヵ月のいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0269】
63.ハイドロゲルの形成の組織及び/又は部位が、眼、小管内、テノン嚢下、眼房内、硝子体内、強膜内、脈絡膜、脈絡膜上、網膜、網膜下、レンズ、組織、管腔、空隙、潜在空隙、動物(ヒト若しくはその他)内部、又は動物の表面上、医原病部位、組織が除去された部位、手術部位、癌組織、癌組織若しくはその付近、歯系組織、歯肉、歯周、副鼻腔、脳、血管内、動脈瘤、又は疾病部位である、51~62のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0270】
64.薬剤が眼底疾患の治療のためのものである、51~63のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0271】
65.眼底疾患が、加齢黄斑変性(AMD)、嚢胞黄斑浮腫(CME)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、後部ぶどう膜炎、糖尿病網膜症、網膜血管閉塞、又は緑内障である、64に記載のハイドロゲル。
【0272】
66.組織が、網膜、レンズ、角膜、又は強膜である、51~65のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0273】
67.薬剤が、抗VEGF剤、VEGFR1遮断剤、VEGFR2遮断剤、VEGFR3遮断剤、抗PDGF剤、抗PDGF-R剤、PDGFRβ遮断剤、抗血管新生剤、スニチニブ、E7080、Takeda-6d、チボザニブ、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、アキシチニブ、ニンテダニブ、セジラニブ、バタラニブ、モテサニブ、マクロライド、シロリムス、エベロリムス、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、イマチニブ(グリーベック)、ゲフィニチブ(イレッサ)、トセラニブ(パラディア)、エルロチニブ(タルセバ)、ラパチニブ(タイケルブ)、ニロチニブ、ボスチニブ、ネラチニブ、ラパチニブ、又はバタラニブを含む、51~66のいずれかに記載のハイドロゲル。また、ここで、薬剤は、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、抗生剤、又は鎮痛剤である。
【0274】
68.薬剤が、緑内障のための難溶性プロスタグランジンアナログ、ぶどう膜炎のためのネパフェナク、AMD/CNVのmTOR受容体を遮断するための、ラパマイシン、シロリムス、タクロリムスなどのマクロライドを含む、51~67のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0275】
69.薬剤がハイドロゲル中の懸濁体(液体又は固体)である、51~68のいずれかに記載のハイドロゲル。例えば、粒子状の薬剤又は液滴状の薬剤、粒子又は液滴は、マイクロスケール(1~500ミクロン径)及び/又はナノスケール(1ミクロン径未満)である。
【0276】
70.薬剤がハイドロゲル全体に分散されている、1~19のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0277】
71.ハイドロゲルの体積が1~1000μLである、1~70のいずれかに記載のハイドロゲル。当業者は、明示される境界間のあらゆる範囲及び値が企図され、例えば、1、10、20、50、100、200、300、400、500、900、1000μLのいずれも上限又は下限として使用可能であることを直ちに認識するであろう。
【0278】
72.ハイドロゲルが第1のハイドロゲルであり、ハイドロゲルが、第2のハイドロゲルを、第2のハイドロゲル中の第2の薬剤と共にインサイチューで形成することをさらに含み、第2の薬剤が、任意選択で、低水溶性を有する、1~71のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0279】
73.第1の薬剤と第2の薬剤とが同じ活性成分を有する、72に記載のハイドロゲル。
【0280】
74.第1の薬剤と第2の薬剤とが異なるエナンチオマー、塩、又は遊離塩基を有する、72に記載のハイドロゲル。
【0281】
75.第1の薬剤と第2の薬剤とが同一の化学構造を有する、72又は73に記載のハイドロゲル。
【0282】
76.第1のハイドロゲルが第2のハイドロゲルよりも迅速に薬剤を放出する、72~75のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0283】
77.第1のハイドロゲルが第2のハイドロゲルよりも大きい表面積を有する、72~76のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0284】
78.第1のハイドロゲルが第2のハイドロゲルと比較してより高速の薬剤拡散を提供する、72~77のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0285】
79.第1の薬剤と第2の薬剤とが異なる化学部分である、72~78のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0286】
80.ハイドロゲルが、互いに反応してハイドロゲルを形成する第1の前駆体と第2の前駆体とを組み合わせることにより形成される、72~79のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0287】
81.ハイドロゲルが、第1の前駆体と第2の前駆体との間の共有結合架橋なしに形成される、80に記載のハイドロゲル。
【0288】
82.ハイドロゲルが、求核基を含む第1の前駆体と、求電子基を含む第2の前駆体とを組み合わせて、求核基と求電子基との反応により共有結合架橋を形成してハイドロゲルを形成することによって形成される、1~81のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0289】
83.前駆体の水性混合物を部位に注射するステップを含む、80~82のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0290】
84.第1の前駆体と第2の前駆体とが親水性である、80~83のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0291】
85.第1の前駆体及び/又は第2の前駆体がポリ(エチレン)グリコール反復配列を含む、80~84のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0292】
86.ハイドロゲルのマトリックスの一部を形成しないヒアルロン酸又は親水性ポリマーをさらに含む、51~85のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0293】
87.前駆体を活性化してハイドロゲルを形成することを含む、51~86のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0294】
88.複数の前駆体を混合して複数の前駆体間の化学反応を開始させることを含み、複数の前駆体が互いに反応してハイドロゲルを形成する、51~87のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0295】
89.部位への配置前、その後、又はその間に前駆体が活性化及び/又は混合される、82~88のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0296】
90.緩衝剤をさらに含む、81~88のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0297】
91.緩衝剤が固体である、90に記載のハイドロゲル。
【0298】
92.固体が、ハイドロゲル前駆体を部位に配置するためのアプリケーター内に配置され、前駆体がアプリケーターを通過する際に前駆体が固体と接触する、91に記載のハイドロゲル。
【0299】
93.固体が、前駆体を受けるアプリケーターの管腔内に配置されるか、ニードルのハブ内に配置されるか、シリンジ内に配置されるか、又はアプリケーター内に配置されるペレットである、91又は92のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0300】
94.緩衝液が、リン酸塩、炭酸水素塩、又は炭酸塩を含む、90~93のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0301】
95.部位及び/又は組織が、腫瘍、損傷組織、疾患組織、感染組織、器官、血管、外膜、動脈、静脈、又は神経である、1~94のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0302】
96.ハイドロゲルが、細長であるか、楕円形であるか、球形であるか、実質的に球形であるか、長円形であるか、円柱状であるか、実質的に円柱状であるか、円板状であるか、又は実質的に円板状である、1~95のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0303】
97.薬剤が有効量又は計算有効量で送達される、1~96のいずれかに記載のハイドロゲル。
【0304】
98.1~97のいずれかに記載の方法又はハイドロゲルの使用。
【0305】
99.有効量の薬剤の送達のための1~97のいずれかに記載の方法又はハイドロゲルの使用。例えば、疾患を治療するためである。例えば、1~97のいずれかに記載の眼の疾患を治療するためである。
【0306】
100.有効量の薬剤の組織への送達のための1~97のいずれかに記載の方法又はハイドロゲルの使用。例えば、疾患を治療するためである。
【0307】
101.1~97のいずれかに記載の病状の治療のための1~97のいずれかに記載の薬剤。本明細書又は1~97のいずれかに記載の病状の治療のための、本明細書又は1~97のいずれかに記載の薬剤の使用。
【0308】
102.1~101のいずれかに記載の又は本明細書に記載の前駆体及び薬剤を組み合わせたキット。
【0309】
103.1~101のいずれかに記載の任意の方法、使用、又は薬剤のためのキットであって、前駆体及び薬剤を組み合わせたキット。
【0310】
104.102~103のいずれかに記載のキットを製造するプロセス。
【0311】
105.51~97のいずれかに記載のハイドロゲルを製造するプロセス。
【0312】
106.1~49のいずれかに記載の方法を含む、105に記載のプロセス。
【0313】
107.本明細書又は1~97のいずれかに記載の前駆体を調製するステップを含む、105に記載のプロセス。
【0314】
108.前駆体に薬剤を添加するステップをさらに含む、107に記載のプロセス。
【0315】
109.51~97のいずれかに記載のハイドロゲルを製造するステップを含むか、又は1~50のいずれかに記載の方法を含む、医薬品を製造するプロセス。
【0316】
110.病状、例えば、本明細書又は1~97のいずれかに記載の病状を治療するための109に記載のプロセス。
【0317】
多くの実施形態が本明細書に記載されている。一般に、実施形態の構成要素は、機能性実施形態を製造する必要性についての指針に従って互いに混合及び組み合わせることができる。本明細書に記載される特許出願、特許、雑誌論文、及び刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が生じる場合には本明細書が優先する。