(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の耐光性向上剤、及び、皮膜の耐光性を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
C25D 11/18 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
C25D11/18 305
C25D11/18 A
(21)【出願番号】P 2023503941
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2022009055
(87)【国際公開番号】W WO2022186320
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2021035712
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森口 朋
(72)【発明者】
【氏名】本郷 亜弓
(72)【発明者】
【氏名】保田 徳
(72)【発明者】
【氏名】平井 建太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 克幸
(72)【発明者】
【氏名】原 健二
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107236980(CN,A)
【文献】特表2005-517090(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058648(WO,A1)
【文献】特開昭63-216996(JP,A)
【文献】特開昭50-009543(JP,A)
【文献】特表2015-509416(JP,A)
【文献】特開平03-082794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 11/18-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膜の耐光性向上剤であって、
前記皮膜は、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜であり、
リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含み、
更に、染料を含
み、
前記リン酸類は、亜リン酸、及び次亜リン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン酸類である、
耐光性向上剤。
【請求項2】
前記リン酸塩は、リン酸、亜リン酸、及び次亜リン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン酸類の、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩、及び金属塩から成る群から選ばれる少なくとも1種の塩である、請求項1に記載の耐光性向上剤。
【請求項3】
前記リンを有するキレート剤は、無機系キレート剤、及び有機系キレート剤から成る群から選ばれる少なくとも1種のキレート剤である、請求項1に記載の耐光性向上剤。
【請求項4】
前記リン系化合物を、1mg/L~5,000mg/L含む、請求項1~
3のいずれかに記載の耐光性向上剤。
【請求項5】
前記染料は、有機染料である、請求項1~
4のいずれかに記載の耐光性向上剤。
【請求項6】
皮膜の耐光性を向上させる方法であって、
前記皮膜は、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜であり、
(1)皮膜を、リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン系化合物、更に、染料を含む、耐光性向上剤に浸漬する工程、
を有
し、
前記リン酸類は、亜リン酸、及び次亜リン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン酸類である、
方法。
【請求項7】
前記リン酸塩は、リン酸、亜リン酸、及び次亜リン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン酸類の、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩、及び金属塩から成る群から選ばれる少なくとも1種の塩である、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記リンを有するキレート剤は、無機系キレート剤、及び有機系キレート剤から成る群から選ばれる少なくとも1種のキレート剤である、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
皮膜の耐光性を向上させる方法であって、
前記皮膜は、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜であり、
(1)皮膜を、染色する工程、及び、
(2)前記工程(1)に依り得られた皮膜を、リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含む、耐光性向上剤に浸漬する工程、
を有
し、
前記リン酸類は、亜リン酸、及び次亜リン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン酸類であり、
前記リン酸塩は、リン酸、亜リン酸、及び次亜リン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン酸類の、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、及びアルカリ土類金属塩から成る群から選ばれる少なくとも1種の塩である、
方法。
【請求項10】
前記リンを有するキレート剤は、無機系キレート剤、及び有機系キレート剤から成る群から選ばれる少なくとも1種のキレート剤である、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記耐光性向上剤は、前記リン系化合物を、1mg/L~5,000mg/L含む、請求項
6~10のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の耐光性向上剤、及び、皮膜の耐光性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム、アルミニウム合金等の軽金属に、陽極酸化皮膜を形成し、陽極酸化皮膜を形成した軽金属を様々な用途に用いる。この様なアルミニウム等に形成された陽極酸化皮膜には、用途に依って、有機染料等の染料に依る染色(着色)が行われる。染料を用いて陽極酸化皮膜に染色処理を施した後、紫外線等の光に曝される事に因り、染料の色が薄く成り退色する等、色味(色合い)が変化する問題が生じる場合が有る。
【0003】
染料に依り染色処理された、アルミニウム、アルミニウム合金等の軽金属、陽極酸化皮膜等の皮膜の退色を抑制し、意匠性を維持する観点から、耐光性を向上させる事が出来る表面処理の技術が求められている。
【0004】
また、昨今、環境負荷物質の使用を削減する観点から、ハロゲン化合物、硝酸系窒素等を含有しない表面処理の技術が求められている。
【0005】
特許文献1には、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金の陽極で形成された表面を
含浸する方法であって、着色または未着色表面を、スルホン酸基、ホスホン酸基及び/又は亜ホスホン酸基の少なくとも一つを含む下記アニオン性界面活性化合物の一種以上を含む水溶液に接触させることを特徴とする方法が開示されている。
【0006】
本出願人は、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜に優れた染色定着性を付与する事が出来、且つ、陽極酸化皮膜に光が照射された際の退色が抑制されて、優れた耐光性を示す事が出来る技術として、染色された、アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の表面処理剤であって、フッ化ジルコニウム塩を含有し、pHが3.4以下であることを特徴とする、表面処理剤を開発している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表平04-502647
【文献】特許6490878号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新たに、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の耐光性を向上させる技術を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、リン酸塩、若しくは、構造内にリンを有するキレート剤を含む表面処理剤を用いる事に依り、良好に耐光性を向上させる事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、次の耐光性を向上させる技術に関する。
【0011】
項1.
皮膜の耐光性向上剤であって、
前記皮膜は、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜であり、
リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含む、耐光性向上剤。
【0012】
項2.
前記リン酸類は、リン酸、亜リン酸、及び次亜リン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン酸類である、前記項1に記載の耐光性向上剤。
【0013】
項3.
前記リン酸塩は、リン酸、亜リン酸、及び次亜リン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン酸類の、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩、及び金属塩から成る群から選ばれる少なくとも1種の塩である、前記項1に記載の耐光性向上剤。
【0014】
項4.
前記リンを有するキレート剤は、無機系キレート剤、及び有機系キレート剤から成る群から選ばれる少なくとも1種のキレート剤である、前記項1に記載の耐光性向上剤。
【0015】
項5.
前記リン系化合物を、1mg/L~5,000mg/L含む、前記項1~4のいずれかに記載の耐光性向上剤。
【0016】
項6.
更に、染料を含む、前記項1~5のいずれかに記載の耐光性向上剤。
【0017】
項7.
染料を用いる染色の前処理剤である、前記項1~5のいずれかに記載の耐光性向上剤。
【0018】
項8.
染料を用いる染色の後処理剤である、前記項1~5のいずれかに記載の耐光性向上剤。
【0019】
項9.
前記染料は、有機染料である、前記項6~8のいずれかに記載の耐光性向上剤。
【0020】
項10.
皮膜の耐光性を向上させる方法であって、
前記皮膜は、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜であり、
(1)皮膜を、リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選
ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含む、耐光性向上剤に浸漬する工程
を有する、方法。
【0021】
項11.
皮膜の耐光性を向上させる方法であって、
前記皮膜は、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜であり、
(1)皮膜を、リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選
ばれる少なくとも1種のリン系化合物、更に、染料を含む、耐光性向上剤に浸漬する工程
、
を有する、方法。
【0022】
項12.
皮膜の耐光性を向上させる方法であって、
前記皮膜は、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜であり、
(1)皮膜を、リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選
ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含む、耐光性向上剤に浸漬する工程、及び、
(2)前記工程(1)に依り得られた皮膜を、染色する工程、
を有する、方法。
【0023】
項13.
皮膜の耐光性を向上させる方法であって、
前記皮膜は、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜であり、
(1)皮膜を、染色する工程、及び、
(2)前記工程(1)に依り得られた皮膜を、リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含む、耐光性向上剤
に浸漬する工程、
を有する、方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の耐光性を向上させる技術を提供する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0026】
(1)皮膜の耐光性向上剤
本発明は、皮膜の耐光性向上剤である。
【0027】
本発明において、前記皮膜は、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜である。
【0028】
本発明の皮膜の耐光性向上剤(単に、「耐光性向上剤」と記す時も有る。)は、リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含む。
【0029】
本発明の耐光性向上剤を用いると、皮膜の表面処理として、皮膜の耐光性を向上させる事が出来る。
【0030】
本発明は、皮膜の耐光性を向上させる事が出来るので、好ましくは、その表面処理の後、封孔処理を行う事に依り、封孔処理後の皮膜に光が照射された際の退色が抑制されて、優れた耐光性を示す事が出来る。
【0031】
本発明は、皮膜の耐光性を向上させる事が出来、好ましくは、封孔処理が施されている事から、得られる物品は、物品の皮膜に光が照射された際の退色が抑制されて、優れた耐光性を表す事が出来る。
【0032】
前記染色は、好ましくは、有機染料に依る染色である。
【0033】
本発明は、染料に依り染色処理された、アルミニウム、アルミニウム合金等の軽金属、陽極酸化皮膜等の皮膜の退色を抑制し、耐光性を向上させる事が出来、意匠性を維持する事が出来る表面処理の技術である。本発明は、必ずしも、ハロゲン化合物、硝酸系窒素等を含有しない表面処理の方法であり、環境負荷物質の使用を削減する事が出来る表面処理の技術である。
【0034】
リン酸類、及びリン酸塩
本発明の耐光性向上剤が含むリン酸類は、好ましくは、リン酸、亜リン酸、及び次亜リン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン酸類である。
【0035】
本発明の耐光性向上剤が含むリン酸塩は、好ましくは、リン酸、亜リン酸、及び次亜リン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン酸類の、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩、及び金属塩から成る群から選ばれる少なくとも1種の塩である。
【0036】
本発明の耐光性向上剤が含むリン酸類は、皮膜の耐光性がより一層優れる点で、好ましくは、リン酸のナトリウム塩を用いる。
【0037】
リンを有するキレート剤
本発明の耐光性向上剤が含むリンを有するキレート剤は、好ましくは、無機系キレート剤、及び有機系キレート剤から成る群から選ばれる少なくとも1種のキレート剤である。
【0038】
前記リンを有するキレート剤の内、無機系のリンを有するキレート剤は、特に限定されない。無機系のリンを有するキレート剤は、好ましくは、ピロリン酸、及びその塩;ポリリン酸、及びその塩;ヘキサメタリン酸、及びその塩;メタリン酸、及びその塩;トリポリリン酸、及びその塩;テトラポリリン酸、及びその塩等である。
【0039】
前記無機系のリンを有するキレート剤の塩は、特に限定されず、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩、又は金属塩から成る群から選ばれる少なくとも1種の塩である。
【0040】
前記リンを有するキレート剤の内、有機系のリンを有するキレート剤は、特に限定されない。有機系のリンを有するキレート剤は、好ましくは、アミノトリメチレンホスホン酸、及びその塩;ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、及びその塩;ニトリロトリスメチレンホスホン酸、及びその塩;ホスホノブタントリカルボン酸、及びその塩;エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、及びその塩;ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、及びその塩;ビニルホスホン酸、及びその塩;フェニルリン酸、及びその塩;βグリセロリン酸、及びその塩;DL-2-アミノホスホノ酪酸、及びその塩;ジフェニルホス
ホン酸、及びその塩;アミノメチルホスホン酸、及びその塩;ホスホノギ酸、及びその塩等である。
【0041】
前記有機系のリンを有するキレート剤の塩は、特に限定されず、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩、又は金属塩から成る群から選ばれる少なくとも1種の塩である。
【0042】
本発明の耐光性向上剤が含むリンを有するキレート剤は、皮膜の耐光性がより一層優れる点で、好ましくは、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、及びそのナトリウム塩;ホスホノブタントリカルボン酸、及びそのナトリウム塩を用いる。
【0043】
本発明の耐光性向上剤は、前記リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン系化合物を、1種単独で、又は2種以上を混合
して用いる事が出来る。
【0044】
リン系化合物の含有量
本発明の耐光性向上剤が含むリン系化合物の含有量は、好ましくは、1mg/L~5,000mg
/Lであり、より好ましくは、10mg/L~200mg/Lである。
【0045】
リン系化合物の含有量を、好ましくは、1mg/L以上に調整する事に依り、耐光性をより向上させる事が出来る。リン系化合物の含有量を、好ましくは、5,000mg/L以下に調整する事に依り、耐光性をより向上させる事が出来る。
【0046】
本発明の耐光性向上剤は、リン系化合物を前記好ましい条件の範囲とする事に依り、表面処理の際、皮膜の色抜けを抑制する事が出来る点、陽極酸化皮膜の表面の粉吹きやカブリ外観不良を抑制する事が出来る点等で優れている。
【0047】
pH
本発明の耐光性向上剤のpHは、好ましくは、2~9であり、より好ましくは、4~7である。
【0048】
耐光性向上剤のpHを、好ましくは、4以上に調整する事に依り、耐光性をより向上させ
る事ができ、併せて、ムラの無い、均一な染色外観を得る事が出来る。耐光性向上剤のpHを、好ましくは、7以下に調整する事に依り、耐光性をより向上させる事ができ、併せて
、染料の脱離による色抜けを抑制し、均一な染色外観を得る事ができる。
【0049】
水溶液
本発明の耐光性向上剤は、好ましくは、水溶液である。
【0050】
その他の成分
本発明の耐光性向上剤は、表面処理の際に、耐光性を更に向上する点、耐光性向上剤の使用実用性を更に向上する点等で、必要に応じて、好ましくは、pH緩衝剤、pH調整剤、界面活性剤、防カビ剤等の添加剤成分を含む事ができる。
【0051】
添加剤としては、好ましくは、例えば、安息香酸、安息香酸塩等の防カビ剤等を用いる。防カビ剤は、市販の防カビ剤、好ましくは、例えば「TACカビコロン」(奥野製薬工業
株式会社製)を用いる。
【0052】
染色液
本発明の耐光性向上剤は、好ましくは、更に、染料を含む。本発明の耐光性向上剤は、好ましくは、染色液として使用する。
【0053】
染色前処理剤
本発明の耐光性向上剤は、好ましくは、染料を用いる染色の前処理で用いる前処理剤である。本発明の耐光性向上剤は、好ましくは、染色前処理剤として使用する。
【0054】
染色後処理剤
本発明の耐光性向上剤は、好ましくは、染料を用いる染色の後処理で用いる後処理剤である。本発明の耐光性向上剤は、好ましくは、染色後処理剤として使用する。
【0055】
染料
本発明の耐光性向上剤が適用する染色に用いる染料は、好ましくは、有機染料である。
【0056】
前記有機染料は、特に限定されず、好ましくはアゾ系、金属錯塩型アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、キサンテン系、キノリン系の有機染料である。
【0057】
皮膜
本発明の耐光性向上剤が適用する皮膜は、アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜、若しくは、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜である。
【0058】
(2)皮膜の耐光性を向上させる方法
本発明は、皮膜の耐光性を向上させる方法である。
【0059】
前記皮膜は、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜である。
【0060】
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、
(1)皮膜を、リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選
ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含む、耐光性向上剤に浸漬する工程、を有する。
【0061】
本発明の耐光性向上剤を染色浴に添加する場合
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、好ましくは、
(1)皮膜を、リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選
ばれる少なくとも1種のリン系化合物、更に、染料を含む、耐光性向上剤に浸漬する工程、を有する。
【0062】
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、染色液の機能を発揮する。
【0063】
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、皮膜を、前記リン系化合物、更に、染料を含む、耐光性向上剤(染色浴)に浸漬する(染色する)工程を有する事に依り、皮膜の耐光性が向上する。
【0064】
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、好ましくは、皮膜に対して、順に、前処理、陽極酸化処理、耐光性向上剤及び染料を含む染色浴に依る染色処理、及び封孔処理を施す。
【0065】
本発明の耐光性向上剤を染色前に適用する場合
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、好ましくは、
(1)皮膜を、リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選
ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含む、耐光性向上剤に浸漬する工程、及び、
(2)前記工程(1)に依り得られた皮膜を、染色する工程、を有する。
【0066】
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、染料を用いる染色の前処理で用いる前処理剤の機能を発揮する。
【0067】
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、皮膜の染色処理前に、皮膜を、前記リン系化合物を溶解した溶液に浸漬する工程を有する事に依り、この工程が耐光性向上処理と成り、皮膜の耐光性が向上する。
【0068】
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、好ましくは、皮膜に対して、順に、前処理、陽極酸化処理、耐光性向上処理、染料を含む染色浴に依る染色処理、及び封孔処理を施す。
【0069】
本発明の耐光性向上剤を染色後に適用する場合
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、好ましくは、
(1)皮膜を、染色する工程、及び、
(2)前記工程(1)に依り得られた皮膜を、リン酸類、リン酸塩、及び、リンを有するキレート剤から成る群から選ばれる少なくとも1種のリン系化合物を含む、耐光性向上剤に浸漬する工程、を有する。
【0070】
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、染料を用いる染色の後処理で用いる後処理剤の機能を発揮する。
【0071】
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、皮膜の染色処理後に、皮膜を、前記リン系化合物を溶解した溶液に浸漬する工程を有する事に依り、この工程が耐光性向上処理と成り、皮膜の耐光性が向上する。
【0072】
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、好ましくは、皮膜に対して、順に、前処理、陽極酸化処理、染料を含む染色浴に依る染色処理、耐光性向上処理、及び封孔処理を施す。
【0073】
前記耐光性向上剤が含むリン系化合物、染料等は、前記耐光性向上剤の項目で説明した内容を適用する。
【0074】
陽極酸化処理
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法において、アルミニウム又はアルミニウム合金に陽極酸化皮膜を形成する工程である。
【0075】
陽極酸化処理は、好ましくは、従来公知の方法を適応すれば良く、陽極酸化処理液中に被処理物であるアルミニウム又はアルミニウム合金を浸漬して陽極酸化を行う。
【0076】
陽極酸化処理に使用する電解液は、特に限定されず、好ましくは、例えば、硫酸水溶液系、シュウ酸水溶液系、クロム酸水溶液系、スルホン酸水溶液系等の電解液を使用する。前記電解液(処理液)の液温は、好ましくは、例えば、0℃~80℃程度、より好ましくは
、10℃~40℃程度である。
【0077】
電解方法は、交流及び直流のいずれでも良い。電解方法は、好ましくは、皮膜成長が早く、厚膜を容易に得る事ができる点で、直流電解である。
【0078】
電流密度は、例えば、0.1A/dm2~10A/dm2程度、好ましくは、0.5~3 A/dm2程度である
。通電時間は、通常、10分間~100分間程度である。
【0079】
陽極酸化によって形成される皮膜の厚みは、好ましくは、2μm~50μm程度、より好ま
しくは、5μm~20μm程度であり、用途に応じて任意に設定する。
【0080】
陽極酸化処理を行う前に、先ず、処理対象のアルミニウム又はアルミニウム合金に対して、付着物を除去する為の前処理を行う。前処理方法は、特に限定的でなく、素材の種類、付着物の状態に応じて、好ましくは、溶剤洗浄、酸洗浄、弱アルカリ洗浄、酸エッチング、アルカリエッチング、デスマット、化学研磨等の公知の処理方法を適宜適応する。
【0081】
アルミニウム又はアルミニウム合金に対して上記陽極酸化処理を施した後、本発明の耐光性向上剤を含む染色液、若しくは染色液により染色を行う。又は、本発明の耐光性向上剤を含む染色前処理剤にて処理した後、染色液により染色を行う。
【0082】
染色処理
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法において、皮膜を染色処理する工程である。前記皮膜は、好ましくは、アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜である。
【0083】
染色処理の処理対象である皮膜、好ましくは、アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜は、一般的なアルミニウム、アルミニウム合金に硫酸、シュウ酸等を用いた公知の陽極酸化法を適用して得られた陽極酸化皮膜であればよい。
【0084】
アルミニウム合金は、特に限定されず、各種のアルミニウム主体の合金を陽極酸化の対象とすることができる。アルミニウム合金、好ましくは、具体的には、JISに規定されて
いるJIS-A 1,000番台~7,000番台で示される展伸材系合金、AC、ADCの各番程で示される
鋳物材、ダイカスト材等を代表とするアルミニウム主体の各種合金群等である。
【0085】
染色処理は、特に限定されず、染料による着色が挙げられる。染料による着色としては、従来公知の染料水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法が挙げられる。染料は、好ましくは、アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用染料として市販されているものを用いる。染料は、好ましくは、例えば、アニオン系染料等を用いる。
【0086】
染色には、好ましくは、染料を含む水溶液(染色浴、染色液等)を用いる。
【0087】
染料を含む水溶液の温度は、好ましくは、10℃~70℃であり、より好ましくは、20℃~60℃である。
【0088】
染料を含む水溶液中の染料の濃度及び浸漬時間は、要望される染色の色調、色の濃さに応じて、適宜設定する事が出来る。
【0089】
前記説明した染色処理に依り、アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜が染色処理される。
【0090】
耐光性向上処理
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法において、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の耐光性を向上する工程である。
【0091】
耐光性向上処理は、本発明のリン系化合物を含む、耐光性向上剤に浸漬して表面処理を行う工程である。
【0092】
耐光性向上処理は、前記の通り、本発明の耐光性向上剤を、好ましくは、
染料を含む染色浴に添加する(耐光性向上剤が染料を含む)場合、
染料を含む染色浴を用いる染色処理前に適用する場合、及び/又は、
染料を含む染色浴を用いる染色処理後に適用する場合である。
【0093】
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、耐光性向上処理に依り、皮膜の耐光性が向上する。
【0094】
耐光性向上剤が染料を含む場合
耐光性向上剤が染料を含む場合、耐光性向上剤の温度は、好ましくは、10℃~80℃であり、より好ましくは、20℃~60℃である。耐光性向上剤の温度を、前記範囲に調整する事に依り、耐光性をより一層向上する事が出来る。
【0095】
浸漬時間は、特に限定されず、好ましくは、30秒~30分であり、より好ましくは、1分
~10分であり、目標とする色調が得られる浸漬時間を適宜設定する。浸漬時間を、前記範囲に調整する事に依り、生産効率に優れる範囲で、陽極酸化皮膜の耐光性をより一層向上する事が出来る。
【0096】
耐光性向上剤を染色処理前に適用する場合
耐光性向上剤を染色処理前に適用する場合、耐光性向上剤の温度は、好ましくは、10℃~80℃であり、より好ましくは、20℃~60℃である。耐光性向上剤の温度を、前記範囲に調整する事に依り、耐光性をより一層向上する事が出来る。
【0097】
浸漬時間は、好ましくは、30秒~30分であり、より好ましくは、1分~10分である。浸
漬時間を、前記範囲に調整する事に依り、生産効率に優れる範囲で、陽極酸化皮膜の耐光性をより一層向上する事が出来る。
【0098】
上記耐光性向上処理を行った後、皮膜の水洗を行い、次工程の染色液に浸漬し、皮膜を染色する。この場合の耐光性向上処理と染色処理の間の水洗は省略する事が出来る。
【0099】
耐光性向上剤を染色処理後に適用する場合
耐光性向上剤を染色処理後に適用する場合、染色処理した後に、染色された皮膜を十分に水洗した後、本発明の耐光性向上剤に浸漬する。
【0100】
耐光性向上剤の温度は、好ましくは、10℃~80℃であり、より好ましくは、20℃~60℃である。耐光性向上剤の温度を、前記範囲に調整する事に依り、耐光性をより一層向上する事が出来る。
【0101】
浸漬時間は、好ましくは、30秒~30分であり、より好ましくは、1分~10分である。浸
漬時間を、前記範囲に調整する事に依り、生産効率に優れる範囲で、陽極酸化皮膜の耐光性をより一層向上する事が出来る。
【0102】
前記説明した耐光性向上処理に依り、皮膜が耐光性向上処理される。
【0103】
(3)封孔処理方法
本発明の皮膜の耐光性を向上させる方法は、好ましくは、皮膜に対して、前処理、陽極酸化処理、染料を含む染色浴に依る染色処理、耐光性向上処理等を施し、好ましくは、その後、封孔処理を施す。
【0104】
封孔処理方法は、前記耐光性向上処理により表面処理された皮膜を封孔処理する工程である。前記皮膜は、好ましくは、アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜である。
【0105】
封孔処理としては、特に限定されず、好ましくは、従来公知の封孔処理方法により処理する。封孔処理方法は、好ましくは、耐光性向上処理に依り表面処理された皮膜(好ましくは、アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜)を封孔処理液に浸漬する。
【0106】
封孔処理液は、特に限定されず、好ましくは、金属塩を含有する封孔処理液を用いる。前記金属塩に含まれる金属は、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等である。前記金属は、好ましくは、具体的には、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Cs
、Ba、Fr、Ra、Zr、Mn、Fe、Ni、Co等を用いる。前記金属塩の内、封孔処理された皮膜(好ましくは、アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜)が耐食性に優れる点で、好ましくは、Na、Mg、K、Ca、Ba、Mn、Ni等の金属塩であり、より好ましくは、Mg、Ca
、Mn、Niの金属塩である。
【0107】
封孔処理液は、前記金属塩を、1種単独で、又は2種以上を混合して用いる事が出来る。
【0108】
封孔処理液中の金属塩の濃度は、特に限定されず、好ましくは、0.001モル/L~1モル
/Lであり、より好ましくは、0.003モル/L~0.3モル/Lである。封孔処理液中の金属塩
の濃度を、前記範囲に調整する事に依り、封孔処理液が十分な封孔性能を発揮する事が出来、封孔処理液により封孔処理された皮膜の耐食性をより一層向上する事が出来る。
【0109】
封孔処理液は、封孔性能(外観、耐食性等)を向上する目的で、好ましくは、更に、pH緩衝剤、界面活性剤等の添加剤成分を含む。添加剤は、例えば、酢酸、酢酸塩、硝酸、硝酸塩、安息香酸、安息香酸塩等のpH緩衝剤又はpH調整剤;ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩等のスルホン酸系分散剤等である。
【0110】
封孔処理液のpHは、好ましくは、5.0~8.0であり、より好ましくは、5.3~6.0である。封孔処理液のpHは、好ましくは、例えば、酢酸、硝酸、安息香酸、硫酸等の酸類;水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水等のアルカリ類を用いて、前記pHの範囲に調整する。
【0111】
封孔処理液の温度(処理温度)は、好ましくは、80℃~沸点であり、より好ましくは、85℃~沸点である。
【0112】
封孔処理液の浸漬時間は、好ましくは、1分~60分であり、より好ましくは、3分~30分程度である。
【0113】
封孔処理液を用いる処理温度及び浸漬時間を前記範囲に調整する事に依り、封孔後の皮膜が粉吹き状態に成るのを防ぐと共に、皮膜の耐汚染性を向上し、また耐食性を得る事が出来る。
【0114】
封孔処理液は、封孔性能や液の使用実用性を向上する目的で、好ましくは、必要に応じて、防カビ剤等の添加剤成分を含む。添加剤は、好ましくは、例えば、安息香酸、安息香酸塩等の防カビ剤;を用いる。防カビ剤は、市販の防カビ剤、好ましくは、例えば「TAC
カビコロン」(奥野製薬工業株式会社製)を用いる。
【0115】
封孔処理液は、好ましくは、前記金属塩、pH緩衝剤、及び界面活性剤等を含有する事に依り、その他の成分は、特に限定されず、好ましくは、水溶液である。
【0116】
前記説明した封孔処理方法に依り、皮膜は前記耐光性向上処理により表面処理されており、封孔処理後の皮膜に光が照射された際の退色が抑制されて、優れた耐光性を示すことが出来る。
【0117】
本発明の皮膜の耐光性を向上する方法は、前記好ましい条件の範囲とする事に依り、表面処理の際、陽極酸化皮膜の表面の粉吹きやカブリ外観不良を抑制する事が出来る点等で優れている。
【0118】
(4)物品
本発明の耐光性向上剤を適用する事に依り得られる物品、本発明の皮膜の耐光性を向上する方法を適用する事に依り得られる物品は、好ましくは、前記封孔処理方法に依り封孔処理された、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品である。
【0119】
物品は、前記封孔処理方法に依り封孔処理された、染色されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有している事に依り、その用途は、特に限定されず、好ましくは、例えば、電子機器の外装、化粧製品の外装等である。
【0120】
本発明の物品は、前記耐光性向上処理により表面処理されたアルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜が、前記封孔処理方法により封孔処理されているので、物品の陽極酸化皮膜は染色定着性に優れており、且つ、物品の陽極酸化皮膜に光が照射された際の退色が抑制されて、優れた耐光性を示すことができる。
【0121】
本発明の耐光性向上剤を用いると、皮膜の表面処理として、皮膜の耐光性を向上させる事が出来る。
【0122】
本発明は、皮膜の耐光性を向上させる事が出来るので、封孔処理後の皮膜に光が照射された際の退色が抑制されて、優れた耐光性を示す事が出来る。
【0123】
本発明は、皮膜の耐光性を向上させる事が出来、好ましくは、封孔処理が施されている事から、得られる物品は、物品の皮膜に光が照射された際の退色が抑制されて、優れた耐光性を表す事が出来る。
【0124】
前記染色は、好ましくは、有機染料に依る染色である。
【0125】
本発明は、染料に依り染色処理された、アルミニウム、アルミニウム合金等の陽極酸化皮膜等の退色を抑制し、耐光性を向上させる事が出来、意匠性を維持する事が出来る表面処理の技術である。本発明は、必ずしも、ハロゲン化合物、硝酸系窒素等を含有しない表面処理の方法であり、環境負荷物質の使用を削減する事が出来る表面処理の技術である。
【実施例】
【0126】
以下に、本発明を、実施例及び比較例を示して、具体的に説明する。但し、本発明は、実施例に限定されない。
【0127】
以下の製造条件に従って、下記の実施例及び比較例に用いる陽極酸化処理、及び染色処理を施したアルミニウム合金試験片を製造した。
【0128】
陽極酸化処理
アルミニウム合金の試験片(JIS A1050P板)を、弱アルカリ性脱脂液(奥野製薬工業(株)製トップアルクリーン404(商品名)30g/Lの水溶液、浴温60℃)に5分間浸漬し、脱脂処理した。
【0129】
次に、脱脂処理したアルミニウム合金の試験片を水洗し、水洗したアルミニウム合金の試験片を、硫酸を主成分とする陽極酸化浴(遊離硫酸180g/L及び溶存アルミ8.0g/Lを含む)を用いて、陽極酸化処理(浴温20℃±1℃、陽極電流密度:1A/dm2、電解時間:30分間、膜厚:約10μm)を行った。
【0130】
染色処理
次に、得られた陽極酸化皮膜を水洗し、水洗後に、下記の染料を含む染色液(水溶液)(浴温55℃)に1分間浸漬して染色し、水洗する事に依り、陽極酸化及び染色を施したア
ルミニウム合金試験片を得た。
【0131】
染色に用いた染料は、奥野製薬工業(株)製TAC染料、TAC BLACK-GRLH(420)、またはTAC BLACK-GLH(402)である。
【0132】
耐光性試験方法
試験機:サンテストXLS+ (ATLAS社製)、光源:キセノンランプ
放射強度:550W/m2、照射温度:65℃
照射時間:0hr、25hr、50hr、100hr、及び300hr
色差測定:積分球分光測色計SP-64(X-rite社製)
色差測定項目:ΔL* Δa* Δb* ΔE*ab
耐光性試験時間0hrを基準とし、試験後の色差を確認した。
【0133】
ΔE*abが小さい程、皮膜の耐光性が良好である事を表す。
【0134】
ΔE*ab = √{(ΔL*)2+ (Δa*)2+ (Δb*)2}
表1及び2の実施例及び比較例
染色液に、本発明の耐光性向上剤を添加した場合の耐光性試験結果である。
【0135】
染色浴の染料は、TAC BLACK-GRLH(420)を用い、同程度の色調が得られるようにpH5.5、55℃、染料濃度変化、浸漬時間変化で染色処理を行った。
【0136】
表1:リン酸塩
比較例1は、染料のみの染色浴にて染色した。
【0137】
比較例2は、リンを含有しない無機塩を添加した染色浴にて染色した。
【0138】
実施例1、及び2は、リン酸塩を添加した染色浴にて染色した。
【0139】
表2:リンを有するキレート剤
比較例3、4、及び5は、リンを含有しないキレート剤を添加した染色浴にて染色した。
【0140】
実施例3~9は、リンを有するキレート剤を添加した染色浴にて染色した。
【0141】
表3の実施例及び比較例
染色処理の前後に、本発明の耐光性向上処理を実施した場合の耐光性試験結果である。
【0142】
比較例6は、染料のみの染色浴にて染色した。
【0143】
実施例10は、染色液に、リンを有するキレート剤として、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸25mg/Lを添加した。
【0144】
実施例11は、染色前に耐光性向上処理を実施した。
【0145】
実施例12は、染色後に耐光性向上処理を実施した。
【0146】
実施例11、12共に、耐光性向上処理に、リンを有するキレート剤として、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸25mg/L水溶液、pH5.5、55℃、2分を用いた。染色処理は、同程度の色調が得られる様に、TAC BLACK-GLH(402) 2g/L 55℃、浸漬時間変化で行った。
【0147】
表1~3の耐光性試験結果に表れる通り、本発明は、本発明の耐光性向上剤を用いる事に依り、アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の耐光性を向上する事が出来る点で優れている。
【0148】
【0149】
【0150】