(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】ガス分析装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
H01J 49/00 20060101AFI20241209BHJP
H01J 49/14 20060101ALI20241209BHJP
H01J 49/10 20060101ALI20241209BHJP
H01J 49/24 20060101ALI20241209BHJP
H01J 49/26 20060101ALI20241209BHJP
G01N 21/68 20060101ALI20241209BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20241209BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20241209BHJP
【FI】
H01J49/00 360
H01J49/14 700
H01J49/10 500
H01J49/24
H01J49/00 400
H01J49/00 310
H01J49/26
G01N21/68
G01N21/27 Z
G01N27/62 D
(21)【出願番号】P 2023556354
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2022038848
(87)【国際公開番号】W WO2023074480
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2024-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2021178175
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509339821
【氏名又は名称】アトナープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】長尾 博文
(72)【発明者】
【氏名】三木 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ムルティ プラカッシ スリダラ
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/196452(WO,A1)
【文献】特開平09-092200(JP,A)
【文献】特開平08-152408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00-49/48
G01N 21/27、27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電性の壁体構造を備え、測定対象のサンプルガスが流入するサンプルチェンバーと、
前記誘電性の壁体構造を介して電場および/または磁場により、減圧された前記サンプルチェンバー内でプラズマを生成するプラズマ生成機構と、
前記サンプルチェンバーに、
プラズマプロセスが実施されるプロセスチェンバーから供給される前記サンプルガスのみが流入するように構成されたガス入力装置と、
生成された前記プラズマ中のイオン化したガスをフィルタリングして前記プラズマ中の前記サンプルガスに含まれる成分を検出する第1の検出器と、
前記サンプルチェンバーの前記プラズマ中のイオンの発光を分析し、前記第1の検出器の第1の検出結果と同期した、前記サンプルガスに含まれる成分の第2の検出結果を出力可能とする第2の検出器とを有するガス分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
時間分割により取得されたマススペクトルを含む前記第1の検出結果と、前記第1の検出結果と同期して比較可能な発光スペクトルを含む前記第2の検出結果とを関連させた分析用データを生成する生成装置を有する、ガス分析装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記マススペクトルは関心領域に限定されたマススペクトルを含む、ガス分析装置。
【請求項4】
請求項
1において、
前記第1の検出結果と、前記第1の検出結果と当該ガス分析装置により規定される時間間隔を設けて同期した前記第2の検出結果とにより、前記サンプルガスを分析する第1の分析器を有する、ガス分析装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記サンプルチェンバーの一方の端から前記第1の検出器に前記イオン化したガスを供給する第1の経路と、
前記サンプルチェンバーの他方の端から前記第2の検出器による分光分析のための光を供給する第2の経路とを有する、ガス分析装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記サンプルチェンバーの第1の軸に沿った一方の端から前記第1の検出器に前記イオン化したガスを供給する第1の経路と、
前記サンプルチェンバーの前記第1の軸に直交する方向に前記第2の検出器による分光分析のための光を供給する第3の経路とを有する、ガス分析装置。
【請求項7】
請求項1ないし
4のいずれかにおいて、
前記誘電性の壁体構造は、石英、酸化アルミニウムおよび窒化ケイ素の少なくともいずれかを含み、
前記誘電性の壁体構造を介して前記サンプルチェンバーの中の前記プラズマからの光を前記第2の検出器に導く導光路を含む、ガス分析装置。
【請求項8】
請求項1ないし
4のいずれかにおいて、
前記第2の検出器は、前記サンプルチェンバーに光ファイバーを介して接続された発光分析器を含む、ガス分析装置。
【請求項9】
請求項1ないし
4のいずれかにおいて、
前記サンプルチェンバーは、全長が1-100mm、直径が1-100mmである、ガス分析装置。
【請求項10】
請求項1ないし
4のいずれかにおいて、
前記プラズマ生成機構は、誘電結合プラズマ、誘電体バリア放電および電子サイクロトロン共鳴の少なくともいずれかによりプラズマを発生する機構を含む、ガス分析装置。
【請求項11】
請求項1ないし
4のいずれかにおいて、
前記サンプルチェンバーから排気する排気装置を有する、ガス分析装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記排気装置は、前記サンプルチェンバーから前記第1の検出器をバイパスして排気する第1の排気路を含む、ガス分析装置。
【請求項13】
請求項1ないし
4のいずれかにおいて、
前記サンプルチェンバーからのガスおよび/または前記ガス入力装置からのサンプルガスを電子イオン化して前記第1の検出器に供給する電子イオン化装置を有する、ガス分析装置。
【請求項14】
請求項13において、
第1の検出器による前記プラズマ中の成分の検出と、前記第2の検出器による発光分析とを並行に行う第1のモードと、
前記第1の検出器による、前記プラズマから派生されたガスを前記電子イオン化装置によりイオン化することによる成分の検出と、前記第2の検出器による前記発光分析とを並行に行う第2のモードと、
前記第1の検出器による、前記プラズマを介さずに、前記サンプルガスを前記電子イオン化装置よりイオン化することによる成分の検出と、前記第2の検出器による前記発光分析とを並行に行う第3のモードとを選択して行う第2の分析器を有する、ガス分析装置。
【請求項15】
請求項1ないし
4のいずれかに記載のガス分析装置を有する、プロセスモニタリング装置。
【請求項16】
請求項1ないし
4のいずれかに記載のガス分析装置と、
プラズマプロセスが実施されるプロセスチェンバーであって、前記ガス分析装置に前記サンプルガスが供給されるプロセスチェンバーとを有するシステム。
【請求項17】
請求項16において、
前記プロセスチェンバー内で実施される少なくとも1つのプラズマプロセスを、前記ガス分析装置の測定結果に基づいて制御するプロセス制御装置を有する、システム。
【請求項18】
請求項17において、
前記プロセス制御装置は、前記少なくとも1つのプラズマプロセスのエンドポイントを、前記少なくとも1つのプラズマプロセスの副生成物の前記ガス分析装置による測定結果により判断する装置を含む、システム。
【請求項19】
ガス分析装置を有するシステムを制御する方法であって、
前記ガス分析装置は、誘電性の壁体構造を備え、測定対象のサンプルガスが流入するサンプルチェンバーと、前記誘電性の壁体構造を介して電場および/または磁場により、減圧された前記サンプルチェンバー内でプラズマを生成するプラズマ生成機構と、前記サンプルチェンバーに、
プラズマプロセスが実施されるプロセスチェンバーから供給される前記サンプルガスのみが流入するように構成されたガス入力装置と、生成された前記プラズマ中のイオン化したガスをフィルタリングして前記プラズマ中の前記サンプルガスに含まれる成分を検出
する第1の検出器と、前記サンプルチェンバーの前記プラズマ中のイオンの発光を分析した前記サンプルガスに含まれる成分の結果を出力する第2の検出器とを含み、
当該方法は、前記第1の検出器の第1の検出結果と、前記第2の検出器の第2の検出結果とを同期して出力することを含む、方法。
【請求項20】
請求項19において、
前記同期して出力することは、時分割で取得されたマススペクトルを含む前記第1の検出結果と、前記第1の検出結果と同期して比較可能な発光スペクトルを含む前記第2の検出結果とを関連して出力することを含む、方法。
【請求項21】
請求項20において、
前記マススペクトルは関心領域に限定されたマススペクトルを含む、方法。
【請求項22】
請求項
19において、
前記第1の検出結果と、前記第1の検出結果と当該ガス分析装置により規定される時間間隔を設けて同期した前記第2の検出結果とにより、前記サンプルガスを分析することを有する、方法。
【請求項23】
請求項19ないし22のいずれかにおいて、
前記ガス分析装置は、前記サンプルチェンバーからのガスおよび/または前記ガス入力装置からのサンプルガスを電子イオン化して前記第1の検出器に供給する電子イオン化装置を含み、
当該方法は、第1の検出器による前記プラズマ中の成分の検出と、前記第2の検出器による発光分析とを並行に行う第1のモードと、
前記第1の検出器による、前記プラズマから派生されたガスを前記電子イオン化装置によりイオン化することによる成分の検出と、前記第2の検出器による前記発光分析とを並行に行う第2のモードと、
前記第1の検出器による、前記プラズマを介さずに、前記サンプルガスを前記電子イオン化装置よりイオン化することによる成分の検出と、前記第2の検出器による前記発光分析とを並行に行う第3のモードとを選択して行うことを有する、方法。
【請求項24】
請求項19ないし
22のいずれかにおいて、
前記システムは、プラズマプロセスを実施するプロセスチェンバーであって、前記ガス入力装置を介してサンプルガスを前記ガス分析装置に供給可能なプロセスチェンバーを有し、
当該方法は、
前記サンプルチェンバーにおいて前記プロセスチェンバーとは独立したプラズマを生成した前記ガス分析装置の検出結果に基づいて前記プロセスチェンバー内で実施されるプラズマプロセスを制御することを有する、方法。
【請求項25】
請求項24において、
前記プラズマプロセスを制御することは、少なくとも1つのプラズマプロセスのエンドポイントを、前記少なくとも1つのプラズマプロセスの副生成物の前記ガス分析装置による検出結果により判断することを含む、方法。
【請求項26】
請求項25において、
前記少なくとも1つのプラズマプロセスは、エッチング、膜生成、およびクリーニングの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項27】
請求項19ないし
22のいずれかに記載のガス分析装置を有するシステムを制御する方法により、前記システムをコンピュータにより制御するためのプログラムであって、
請求項19ないし
22のいずれかに記載の方法を実行するための命令を有する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分析装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国特開2016-27327号公報には、グロー放電発光分析装置(GD-OES、Glow discharge optical emission spectrometry)において、試料ホルダは、試料固定面を有する電極(第2電極)と、試料固定面を内側に配置した外筒部及び内筒部(当接部)とを備える。グロー放電管の開口部から試料が離れた状態で、内筒部の開口端が開口部の周縁に当接される。連通したグロー放電管と外筒部及び内筒部との内部を減圧し、アルゴンガスを供給する。次に、内筒部を外筒部に対して動かして試料をグロー放電管の陽極(第1電極)の円筒部(端部)の先端に近づけ、流路(冷却部)に冷媒を流して試料を冷却し、電極に電圧を印加して、グロー放電発光分析を行うことが記載されている。
【発明の開示】
【0003】
サンプルガスをイオン化してサンプルガスに含まれる成分を検出する分析装置において、さらに安定した、または、さらに精度の高い検出が可能なガス分析装置が要望されている。
【0004】
本発明の一態様は、誘電性の壁体構造を備え、測定対象のサンプルガスが流入するサンプルチェンバーと、誘電性の壁体構造を介して電場および/または磁場により、減圧されたサンプルチェンバー内でプラズマを生成するプラズマ生成機構と、サンプルチェンバーに、プロセスからのサンプルガスのみが流入するように構成されたガス入力装置と、生成されたプラズマ中のイオン化したガスをフィルタリングしてプラズマ中の成分を検出する第1の検出器と、サンプルチェンバーのプラズマ中のイオンの発光を分析し、第1の検出器の第1の検出結果と同期した第2の検出結果を出力可能とする第2の検出器とを有するガス分析装置である。このガス分析装置においては、第1の検出器のイオン源となるプラズマを第2の検出器により発光分析することができる。このため、共通のイオン化されたサンプルを同期して、すなわち、同時に並行して、または、このガス分析装置に固有の、予め設定可能な限られた時間間隔(レイテンシー)または時差で、異なる方法で分析でき、それらの異なる方法による検出結果を関連させた分析用データを生成できる。
【0005】
典型的には、第1の検出結果は、フィルターで検出する条件を変える必要があるために、時間分割(時間経過)により取得された、すなわち、シリアル(シーケンシャル)に取得されるマススペクトルを含む。一方、第2の検出結果は、分光により、パラレルに取得可能な発光スペクトルを含む。このガス分析装置においては、イオン源および発光源となる共通したプラズマをプロセスとは別に生成するサンプルチェンバーを含み、そのサンプルチェンバーに対して予めルートが固定された第1および第2の検出器を含む。したがって、サンプルチェンバー内に生成される共通のプラズマに対する、シリアルな第1の検出結果と、パラレルな第2の検出結果とを同期して取得でき、それらを関連させて分析用データとして生成・出力することができる。このため、例えば、シリアルに取得される第1の検出結果が得られている時間間隔の間の、パラレルに取得される第2の検出結果の変動を確認することにより、第1の検出結果が同一の条件、例えば、同一の条件のプロセスあるいは同一の条件で維持されたプラズマからの情報であることを検証することが可能となり、さらに信頼性の高い分析結果を得ることができる。
【0006】
また、ガス分析装置のサンプルチェンバーにマイクロプラズマを生成することにより、検出対象となる共通のイオン源および発光源の体積を縮小でき、同一の対象に対する第1の検出結果および第2の検出結果を得ることができる。さらに、シリアルに得られるマススペクトルを関心領域(ROI)に限定することも可能であり、広範囲な情報はパラレルで得られる第2の検出結果で確認し、ROIについては第1の検出結果によりシリアルに取得することにより、広範囲の情報を確認しながら、ROIについては短い時間間隔で、時間的な変動も含めて、さらに精度の高い分析結果を得ることが可能となる。
【0007】
ガス分析装置は、第1の検出結果と、第1の検出結果とガス分析装置により規定される時間間隔を設けて同期した第2の検出結果とにより、サンプルガスを分析する第1の分析器を有してもよい。第1の検出結果と第2の検出結果のスペクトル干渉の相違から、それらの検出結果を協働させることにより、より精度の高い分析が可能となる。
【0008】
本発明の他の態様の1つは、ガス分析装置を有するシステムを制御する方法であって、第1の検出器の第1の検出結果と、第2の検出器の第2の検出結果とを同期して出力することを含む。同期して出力することは、時分割(シリアル)で取得されたマススペクトルを含む第1の検出結果と、第1の検出結果と同期して比較可能な(パラレルな)発光スペクトルを含む第2の検出結果とを関連して出力することを含んでもよい。マススペクトルは関心領域(ROI)に限定されたマススペクトルを含んでもよい。
【0009】
本発明のさらに異なる他の発明の1つは、上記のガス分析装置を有するシステムを制御する方法により、このシステムをコンピュータにより制御するためのプログラム(プログラムプロダクト)である。プログラムは、システムの制御を実行するための命令を含む。プログラムは、コンピュータに読み取り可能な適当な媒体に記録して提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ガス分析装置を含むプロセスモニタリングシステムの概略構成を示すブロック図。
【
図3】プロセスモニターの動作の概要を示すフローチャート。
【
図4】ガス分析装置を含むプロセスモニタリングシステムの異なる例を示す図。
【
図5】ガス分析装置を含むプロセスモニタリングシステムのさらに異なる例を示す図。
【発明の実施の形態】
【0011】
図1に、ガス分析装置1を含むシステムの一例として、プロセスモニタリングシステム100の概略構成を示している。ガス分析装置1は、プラズマプロセス102が実施されるプロセスチェンバー101から供給されるサンプルガス9を分析する。プロセスチェンバー101において実施されるプラズマプロセス102は、典型的には、様々な種類の膜あるいは層を基板の上に生成する工程や、基板をエッチングする工程であり、CVD(化学蒸着、Chemical Vapor Deposition)またはPVD(物理蒸着、Physical Vapor Deposition)を含む。プラズマプロセス102は、半導体製造に関するプロセスに限らず、レンズ、フィルターなどの光学部品を基板として様々な種類の薄膜を積層するプロセスであってもよい。
【0012】
例えば、半導体においては、近年では、記憶容量の増大、ロジック速度の向上、低電力化などの要求から、半導体チップ構造が三次元化している。このため、半導体プロセス制御では、プロセスがさらに複雑になり、原子レベルの品質が求められ、計測およびモニタリングに要するコストが増大することが課題となっている。プロセスマッチング、成膜時の遷移点計測、エッチングのエンドポイントの検出には反応物や副生成物を含むガスの監視が重要であり、現在標準的に採用されているプラズマ発光計測(Optical Emission Spectroscopy、OES)では、総合的にプロセスをモニターすることは難しいとされている。一方で、通常の熱フィラメントを採用したイオン源の残留ガス分析計、質量分析計では、半導体ガスによるダメージによる寿命が問題となる。
【0013】
本例のガス分析装置1を用いたプロセスモニタリングシステム100においては、過酷な環境下においてもリアルタイムモニターを行い、信頼性の高い測定結果を提供することで革新的なプロセス制御を提供できる。ガス分析装置1は、半導体チップ製造におけるスループットを劇的に向上させ、歩留まり率を最大化することを目的に開発されたトータルソリューションプラットホームとして機能する。上記のように、本例のガス分析装置1は、非常に小さな設置面積であることから、チェンバー101に直接接続することが可能である。また、現在、半導体製造プロセス装置で主に取り入れられている標準的なプロトコル、例えば、Either CatプロトコルをPLC50に搭載することができ、プロセス機器制御システム100に統合することが可能である。
【0014】
ガス分析装置1は、サンプルガス9のイオン(イオン流)17を生成するイオン化装置10と、イオン化装置10から供給される、またはイオン化装置10において生成されるイオンを検出するセンサー群(センサーグループ、センサースイート、分析群)90とを含む。イオン化装置10は、プロセス102からサンプル入力3aを介して供給される測定対象のサンプルガス9のプラズマ19を生成するプラズマ生成ユニット(プラズマ生成装置)11を含む。プラズマ生成ユニット11は、誘電性の壁体構造12aを備え、測定対象のサンプルガス9が流入するチェンバー(サンプルチェンバー)12と、誘電性の壁体構造12aを介して高周波電場および/または磁場により、減圧されたサンプルチェンバー12内でプラズマ19を生成する高周波供給機構(RF供給機構、プラズマ生成機構)13と、高周波の周波数および電力を制御するプラズマコントローラ16とを含む。サンプルチェンバー12の一方の端に設けられた開口18からプラズマ19がイオン流17として後述する第1の検出器20に供給される。ガス分析装置1は、サンプルチェンバー12に、プラズマプロセス102が実施されるプロセスチェンバー101からのサンプルガス9のみが流入するように構成されたガス入力装置5を含む。
【0015】
ガス分析センサー群90は、イオン(イオン流)17として供給されるプラズマ19中のイオン化したガスをフィルタリングしてプラズマ中の成分を検出する第1の検出器20と、サンプルチェンバー12のプラズマ19中のイオンの発光を分析(分光分析)する第2の検出器80とを含む。第1の検出器(第1のセンサー、第1の検出計、第1の測定装置)20の一例は質量分析型の検出器(質量分析計、Mass Spectrometer、MS)である。第1の検出器20は、イオン化されたサンプルガス(サンプルガスイオン)17を質量電荷比によりフィルタリングするフィルターユニット(質量フィルター、本例においては四重極フィルター)25と、フィルタリングされたイオンを検出するディテクタ26とを含む。ガス分析装置1は、さらに、フィルターユニット25およびディテクタ26を収納した真空容器(ハウジング)40と、ハウジング40の内部を適当な負圧条件(真空条件)に維持する排気システム60を含む。
【0016】
本例の排気システム60は、ターボモレキュラポンプ(TMP)61と、ルーツポンプ62とを含む。排気システム60は、プラズマ生成装置11のサンプルチェンバー12の内圧も制御するスプリットフロータイプである。排気システム60の多段のTMP61のうち、チェンバー12の内圧に適した負圧となる段、またはルーツポンプ62の入力がチェンバー12と連通し、チェンバー12の内圧が制御されるようになっている。
【0017】
したがって、本例のガス分析装置1は、サンプルチェンバー12から排気する排気装置60を有し、排気装置60は、サンプルチェンバー12から第1の検出器20をバイパスして排気する第1の排気路65と、第1の検出器20を介して排気する第2の排気路66とを含む。サンプルチェンバー12から第1の検出器20をバイパスして排気する第1の排気路65を設けることにより、第1の検出器20にフィルタリングのために流すガス流量とは別に、サンプルチェンバー12にサンプルガス9を導き、サンプルチェンバー12の内圧を制御することが可能となる。このため、第1の検出器20を流れるガス量を安定化でき、その検出精度を安定にできる。その一方、サンプルチェンバー12に十分なサンプルガス9をプロセスからガス入力装置5を介して引き込むことができるので、プロセスチェンバー101内の状態(変動)をリアルタイムにモニタリングできるガス分析装置1を提供できる。
【0018】
本例の質量フィルター25は、質量電荷比によるフィルタリング用の双曲電場を形成するために内側が双曲面に仕上げられた4本の円筒または円柱状の電極25aを含む。四重極タイプの質量フィルター25は、複数の疑似双曲電場を形成するように多数、例えば9本の円柱状の電極を、マトリクス(アレイ)を形成するように配置したものであってもよい。ディテクタ26は、ファラデーカップ(Faraday Cap)と二次電子増倍器(Secondary Electron Multiplier)とを含み、これらを組み合わせて、または、切り替えて使用してもよい。ディテクタ26は、チャンネル型二次電子増倍器(Channel Electron Multiplier)、マイクロチャンネルプレート(Microchannel Plate)などの他のタイプであってもよい。
【0019】
本例のプラズマ生成装置11は、ハウジング40の内部に一体に組み込まれたプラズマ生成用のサンプルチェンバー12を含む。チェンバー12の外郭はハステロイ製であり、内部に絶縁された円筒電極が挿入され、その内部でプラズマ19が生成される。減圧されたサンプルチェンバー12には、監視対象のプロセス102が行われるプロセスチェンバー101からガス入力装置5を介してサンプル入力3aからサンプルガス9のみが流入し、サンプルチェンバー12の内部でプラズマ19が形成される。すなわち、プラズマ生成装置11においては、アルゴンガスなどのアシストガス(サポートガス)は用いられずに、サンプルガス9のみにより分析用のプラズマ19が生成される。サンプルチェンバー12の壁体12aは誘電性の部材(誘電体)から構成されており、その一例は、石英(Quartz)、酸化アルミニウム(Al2O3)および窒化ケイ素(SiN3)などのプラズマに対して耐久性が高い透光性の誘電体である。
【0020】
プラズマ生成装置11において、具体的にプラズマを生成する機構(RF供給機構)13は、サンプルチェンバー12の内部で、プラズマトーチを用いずに、誘電性の壁体構造12aを介して電場および/または磁場によりプラズマ19を生成する。RF供給機構13の一例は高周波(RF、Radio Frequency)電力でプラズマ19を励起する機構である。RF供給機構13の例としては、誘電結合プラズマ(ICP、Inductively Coupled Plasma)、誘電体バリア放電(DBD、Dielectric Barrier Discharge)、電子サイクロトロン共鳴(ECR、Electron Cyclotron Resonance)などの方式を挙げることができる。これらの方式のプラズマ生成機構13は、高周波電源と、RF場形成ユニットとを含んでもよい。RF場形成ユニットの典型的なものは、サンプルチェンバー12に沿って配置されたコイルを含む。本例のプラズマ生成装置11は、RF場の周波数を変化させることでマッチングの状態を変化させて点火する機能を含む。例えば、パルス状に高周波電力を投入してプラズマを点火後、定常動作状態に移行することでプラズマを生成して維持できる。なお、プラズマ生成装置11は、アルゴンガスなどのアシストガスによる誘導結合プラズマ(ICP)を形成しサンプルガスを導入してイオン化するタイプであってもよいが、サンプルガスのみでプラズマ19を形成することが望ましく、マイクロプラズマを生成することによりアシストガスを不要としてもよい。
【0021】
本例のサンプルチェンバー12の内圧は、プラズマが生成しやすい圧力、例えば、0.01-1kPaの範囲であってもよい。プロセスチェンバー101の内圧が1-数100Pa程度に管理される場合、サンプルチェンバー12の内圧は、それより低い圧力、例えば、0.1-数10Pa程度に管理されてもよく、0.1Pa以上、または0.5Pa以上、10Pa以下、または5Pa以下に管理されてもよい。例えば、サンプルチェンバー12は内部が、1-10mTorr(0.13-1.3Pa)程度に減圧されてもよい。サンプルチェンバー12を上記の程度の減圧に維持することにより、サンプルガス9のみで、低温でプラズマ19を生成することが可能である。サンプルチェンバー12は、プラズマ19を生成できる程度の小型の、例えば、全長が1~100mm、直径が1~100mmのチェンバーであってもよく、数mmから数10mm程度のチェンバー(ミニチュアチェンバー)であってもよい。サンプルチェンバー12の容量を小さくすることにより、リアルタイム性に優れたガス分析装置1を提供できる。サンプルチェンバー12は、円筒状であってもよい。
【0022】
ガス分析装置1はイオン化装置10として、さらに、プロセス102からガス入力装置5を介してサンプル入力3bから供給される測定対象のサンプルガス9を電子衝撃によりイオン化(電子イオン化)する電子イオン化装置(フィラメント、EIイオン源)15を含む。EIイオン源15は高真空で動作し、モニタリング対象のプロセスチェンバー101におけるプロセスが高真空でマイクロプラズマ19の生成が難しい条件の場合でも、ガス分析装置1の到達圧力で動作、さらには、感度補正を目的として使用できる。ガス供給装置5は、プロセスチェンバー101と接続された接続パイプ5cと、接続パイプ5cとプラズマイオン化用のサンプル入力3aとの間のサンプルガス9のフローを制御するバルブ5aと、接続パイプ5cとEIイオン化用のサンプル入力3bとの間のサンプルガス9のフローを制御するバルブ5bとを含む。プロセスコントローラ105によりバルブ5aおよび5bを切り替えることにより、ガス分析装置1の検出モード(測定モード)を自動的に、または手動で切り替えることができる。EIイオン源15は、サンプル入力3bとフィルターユニット25との間に設けられており、サンプルチェンバー12内に形成されるプラズマ(マイクロプラズマ)19からのイオンフロー17の流路と共通する流路に面している。したがって、EIイオン源15は、ガス入力装置5からのサンプルガス9を電子イオン化することも可能であり、サンプルチェンバー12からのガス(プラズマ19の派生ガス)をイオン化して第1の検出器20に供給することも可能である。
【0023】
一実施例では、プロセスコントローラ105が、プロセスチェンバー101の内圧が高い、例えば、1Pa以上の状態で,反応性の高いプロセス102を実行する場合には、バルブ5aを開いてガス分析装置1にサンプルガス9を供給する。ガス分析装置1の制御装置50は、サンプルガス9により、プロセス102とは異なる、サンプルガス9のプラズマ(マイクロプラズマ)19を生成し、マイクロプラズマ19からイオン17を引き出して質量分析を行う。この際、EIイオン源(フィラメント)15は点灯せず、バルブ(ポート)5bは閉鎖される。プロセスチェンバー101の内圧が低い、例えば、到達圧力などで測定するときには、プラズマ側のポート(バルブ)15aを閉じて、EI側のポート5bを開いてサンプルガス9を供給し、フィラメントを点灯する(EI作動させる)ことによりプロセスチェンバー101の内部の状態をモニタリングしてもよい。
【0024】
ガス分析装置1は、EIイオン化源15とフィルター25との間に配置されたエネルギーフィルター28とを含んでもよい。エネルギーフィルター28は、ベッセルボックス(Bessel-Box)であってもよく、CMA(Cylindrical Mirror Analyzer)であってもよく、CHA(Concentric Hemispherical Analyzer)であってもよい。ベッセルボックスタイプのエネルギーフィルター28は、円筒電極と円筒電極の中心部に配置した円板形電極(円筒電極と同電位)、円筒電極の両端に配置した電極とから構成され、円筒電極と両端電極の電位差Vbaによって作られる電場と円筒電極の電位Vbeとによって特定の運動エネルギーを持つイオンのみを通過させるバンドパスフィルターとして動作する。また、プラズマ生成の際に発生する軟X線や気体イオン化の際に発生する光が円筒電極中心に配置されている円板形電極により直接イオン検出器(ディテクタ)26に入射することを阻止でき、ノイズを低減できる。また、エネルギーフィルター28により、イオン生成部あるいは外部で生成され、フィルターユニット25に対して中心軸と平行に入射するイオンや中性粒子なども排除できるので、それらの検出を抑制できる構造となっている。
【0025】
第2の検出器(検出計、分析計、センサー)80の一例は発光分析型の検出器であり、典型的には発光分光分析装置(発光分光分析装置、Optical Emission Spectrometer、OES、Atomic Emission Spectrometry、AES)である。OES80の一例は、サンプルチェンバー12の透光性の誘電性の壁体構造12aに、RF供給機構13と並列に、あるいはRF供給機構13のコイルと同軸に取り付けられた対物レンズなどの受光または集光素子81と、集光素子81からの光を導く光ファイバー82と、光ファイバー82により供給された光を分光分析する分光分析ユニット(OESユニット、OES検出装置)85とを含む。分光分析ユニット85は、シーケンシャル型、マルチチャンネル型など、OES80に採用されるいずれかのタイプの検出装置であってもよい。
【0026】
ガス分析装置1は、PCL50の下で分析ユニット20の各モジュールを制御する制御モジュール30を含む。制御モジュール30は、質量分析器20の制御を行う制御モジュール35を含み、プラズマ19の引き出しを制御するユニット31と、電子イオン化装置15を制御するユニット32と、質量フィルター25のRFおよびDC電圧を制御してフィルター25で測定する対象物(イオン)の領域(関心領域、ROI)を選択するフィルター制御機能(フィルター制御装置)33と、ディテクタ26を制御して検出電流を取得する機能(強度検出装置)34とを含む。制御モジュール35は、質量分析器20のレンズ群の電位を制御する機能、エネルギーフィルター28の電位を制御する機能などを含んでいてもよい。EIユニット15の制御ユニット32は、フィラメント電流および電圧を制御するフィラメント制御機能をふくんでいてもよい。
【0027】
ガス分析装置1を制御するPLC(制御装置)50は、CPU56およびメモリ55などのコンピュータ資源を含み、プログラム(プログラム製品)59をロードして実行することによりガス分析装置1を制御する。プログラム59は、PLC50に以下に説明する各機能を実装し、稼働させるための命令を含む。PLC50は、第1の検出器20の第1の検出結果51と、第2の検出器80の第2の検出結果52とを関連させて、同期させた分析用データ53を生成する生成装置57bとしての機能を含む。プログラム59はコンピュータに読み取り可能な媒体に記録して提供することができる。
【0028】
図2に、第1の検出結果51と、第2の検出結果52とを模式的に示している。第1の検出器20の一例は、プラズマ内でイオン化された元素の質量と強度を測定する質量分析器(Mass Spectrometer、MS)である。第1の検出結果51の一例は、質量電荷比(m/z)に対する強度である。第2の検出器80の一例は、プラズマ内で励起された元素から放出される光の波長と強度を測定する光検出器(OES)である。第2の検出結果52の一例は、波長に対する強度である。第1の検出器(MS)20の第2の検出器(OES)80に対する特徴(利点)としては、高感度、幅広いダイナミックレンズ、多元素の定量測定、同位体比測定、スペクトルが単純であることなどが挙げられる。欠点としては、質量スペクトル干渉による分離能力の低下が挙げられる。
【0029】
すなわち、感度としてはMS20が優れており、OES80がサブppb程度であるのに対し、MS20はサブpptの検出が可能である。一方、測定時間としては、OES80の出力は発光スペクトルであるので、第2の検出結果52は基本的にスペクトルメータの感度で取得でき、サンプルガス9に含まれる元素(成分)の数が増えても測定時間(検出時間)に変換はない。また、第2の検出結果52には、スペクトルを得られる範囲であれば、全ての元素(成分)の情報が含まれる。MS20では、フィルター25の条件を時分割で変えて測定するために、測定時間は、測定元素・質量数の数に依存し、第1の検出結果51には、測定対象とした(測定質量数)のデータのみが含まれる。スペクトル干渉の点からは、MS20は、同一の質量電荷比m/zを有する元素(成分)の分離はできず、OES80は周波数が同一または近接するスペクトルを備えた元素(成分)の分離が難しい。
【0030】
したがって、測定時間に着目すると、
図2に示すように、第1の検出結果51は、時間分割(時間経過)により取得された、すなわち、シリアル(シーケンシャル)に取得されるマススペクトルを含む。すなわち、時刻t1にスペクトルの取得を開始すると(51a)、時刻t2に示すように、順番に質量電荷比m/zをサーチし(51b)、時刻tnに所望の質量電荷m/z(関心領域、ROI)51rのスペクトルを備えた検出結果(質量スペクトル51c)を得ることができる。比較的高速なMSであっても、1つのm/zにフィルターの条件を設定した測定に1ms程度が必要であり、1秒で1000ポイント(m/z)の測定が可能であるが、OES80と比較すると測定時間は大幅に増加する。さらに、検出感度(定量測定感度)を向上しようとすると、1つのポイントにおける測定時間が増加するために時間を消費する。一方、時間を消費すれば高精度の測定が可能であり、所望のROIに限定して成分を測定することにより、高感度の測定結果(検出結果)51を得ることができる。
【0031】
一方、第2の検出結果52は、分光により、パラレルに、少なくとも第1の検出結果51に対して瞬時に(ms以下のオーダーで)取得可能な発光スペクトルを含む。したがって、時刻t1、t2およびtnにおいて取得される第2の検出結果52a、52bおよび52cは、マイクロプラズマ19の状態が変わらなければ同一である。したがって、シリアルに取得される第1の検出結果51の信頼性を、パラレルに取得される第2の検出結果52と第1の検出結果51とを同期させて関連付けしておくことにより担保できる。第1の検出結果51と第2の検出結果52との同期には、このガス分析装置1に固有の2つのレイテンシが主に関係する。
【0032】
時間差が発生する1つの要因は、第1の検出結果51がマイクロプラズマ19から供給されたイオン流17をフィルター25により選別した結果であり、イオンが物理的にディテクタ26に到達する必要があることである。すなわち、マイクロプラズマ19に変動があると、その変動を検出するには、イオンが物理的に第1の検出器20のディテクタ26に到達するまでの時間が必要となり、プラズマ19の状態とは時間差(レイテンシ)がある。
【0033】
これに対して、第2の検出結果52は、発光スペクトルであり、マイクロプラズマ19の状態に変動があれば、時間差なく検出結果に表れる。しかしながら、ガス分析装置1は、固定されたサンプルチェンバー12に生成されるマイクロプラズマ19が、第1の検出器20と第2の検出器80との検査対象であり、第1の検出結果51と第2の検出結果52との時間差は、ガス分析装置1の固有の値として事前に設定が可能である。したがって、第1の検出結果51と第2の検出結果52との時間差は、生成装置57bにおいて判明しており、第1の検出結果51と第2の検出結果52とを同期した状態で分析用データ53として生成することができる。これにより、同じ時刻のマイクロプラズマ19の異なる方法による検出結果を精度よく得ることができる。
【0034】
もう1つの要因は、上述したように、第1の検出器20においては、所望のROIを含む第1の検出結果(スキャン済みの第1の検出結果、質量スペクトル)51cを取得するために所定の時間を要することである。例えば、質量スペクトルをスキャンしている間に、マイクロプラズマ19の状態に変換があれば、時刻tnに得られた質量スペクトル51cは、時刻tnのマイクロプラズマ19の状態を反映しているとは言えない可能性がある。一方、質量スペクトルをスキャンしている間の第2の検出結果52a~52cに変化がなければ、時刻tnに得られた質量スペクトル51cが、時刻tnのマイクロプラズマ19の状態を反映していることを担保できる。生成装置57bは、質量スペクトル51の信頼性を担保するために、質量スペクトル51を取得している間の第2の検出結果52の全てを同期させて分析用データ53として生成してもよい。生成装置57bは、質量スペクトル51を取得している間の、全ての第2の検出結果52a~52cが同じことを検証し、全ての第2の検出結果52a~52cが同じときの質量スペクトル51cのみを、第2の検出結果52cと同期させて分析用データ53として生成してもよく、条件を満たさないときは質量スペクトル51cを破棄するようにしてもよい。生成装置57bは、このようにして生成した分析用データ53をメモリ55に蓄積したり、通信装置57dを介して外部のサーバーまたはプロセスコントローラ105に出力してもよい。
【0035】
すなわち、このガス分析装置1においては、イオン源および発光源となる共通したプラズマ19を、プロセス102とは別に生成するサンプルチェンバー12を含み、そのサンプルチェンバー12に対して予めルートが固定された第1の検出器20および第2の検出器80を含む。したがって、サンプルチェンバー12内に生成される共通のプラズマ19に対する、シリアルな第1の検出結果51と、パラレルな第2の検出結果52とを同期して取得でき、生成装置57bにより、それらを関連させて分析用データ53として生成し、出力できる。このため、シリアルに取得される第1の検出結果51が得られている時間間隔の間の、パラレルに取得される第2の検出結果52の変動を確認することにより、第1の検出結果51が同一の条件、例えば、同一の条件のプロセスあるいは同一の条件で維持されたプラズマ19からの情報であることを検証することが可能となり、さらに信頼性の高い分析結果を得ることができる。
【0036】
また、ガス分析装置1のサンプルチェンバー12には微小なマイクロプラズマ19が生成される。このため、第1の検出器20および第2の検出器80の検出対象となる共通のイオン源および発光源の体積を縮小でき、プラズマ中の偏りなどを削減し、同一の対象に対する第1の検出結果51および第2の検出結果52を得ることができる。さらに、シリアルに得られるマススペクトル51を関心領域(ROI)51rに限定することも可能であり、広範囲な情報はパラレルで得られる第2の検出結果52で確認し、ROIについては第1の検出結果51によりシリアルに、時間をかけて取得することも可能である。すなわち、第1の検出結果51は、
図2に示したように、マススペクトル51cを含み、特に、ROI51rに限定されたマススペクトル51cのみを含んでいてもよい。このため、広範囲の情報を確認しながら、ROIについては短い時間間隔であっても、さらに精度の高い分析結果を得ることが可能となる。
【0037】
PLC50は、さらに、プラズマコントローラ16を介してマイクロプラズマ19の生成状態を管理するプラズマ生成制御装置57aと、第1の検出器20のフィルター25を所望のROIの範囲のマススペクトルが得られるように制御するROI制御装置57c、有線および/または無線によりプロセスコントローラ105および/または外部のサーバーなどと通信を行うための通信制御装置57dとを含んでいてもよい。
【0038】
PCL50は、さらに、第1の検出結果51および第2の検出結果52を含む分析用データ53に基づき、サンプルガス9に含まれる成分(元素)を分析する分析装置(分析ユニット、分析機能)70を含んでいてもよい。分析装置70は、第1の検出結果51と、第1の検出結果51と当該ガス分析装置1により規定される時間間隔を設けて同期した第2の検出結果52とにより、サンプルガス9を分析する第1の分析器(第1の分析ユニット)71を備えていてもよい。
【0039】
上述したように、スペクトル干渉の点からは、第1の検出器(MS)20は、同一の質量電荷比m/zを有する元素(成分)の分離はできず、第2の検出器(OES)80は周波数が同一または近接するスペクトルを備えた元素(成分)の分離が難しい。逆に、第1の検出器20の第1の検出結果51において分離できない成分については、第2の検出器80の第2の検出結果52では分離でき、第2の検出器80の第2の検出結果52において分離できない成分については、第1の検出器20の第1の検出結果51では分離できる可能性がある。さらに、本例の分析装置1においては、時間的に同期し、さらに、信頼性の高い第1の検出結果51と第2の検出結果52とを組み合わせた分析用データ53が得られる。したがって、第1の分析器71においては、これらのデータを協調して解析することにより、サンプルガス9の成分をより高い精度で分析することが可能となる。
【0040】
分析装置(協調制御モジュール)70は、第1の検出器20の検出結果51と、第2の検出器80の検出結果52とを並列に、または、当該ガス分析装置1により規定される時間間隔を設けて処理した分析結果を取得する処理を行う。この処理においては、ガス分析装置1は、サンプルチェンバー12の他に電子イオン化装置15を備えているので、以下の処理方法(処理モード)を選択できるようにしてもよく、分析装置70は、以下のモードM1、M2およびM3のいずれかを選択して分析を行う第2の分析器72を備えていてもよい。
(1)第1の検出器20による、プラズマ19中のイオン化された成分検出と、第2の検出器80による発光分析とを並行に行う(第1のモード、M1)。
(2)第1の検出器20による、プラズマ19から派生されたガスを電子イオン化装置15によりイオン化することによる成分の検出と、第2の検出器80による発光分析とを並行に行う(第2のモード、M2)。
(3)第1の検出器20による、プラズマ19を介さずに、サンプル入力3bを介して供給されたサンプルガス9を電子イオン化装置15によりイオン化することによる成分の検出と、第2の検出器80によるプラズマ19の発光分析とを並行で行う(第3のモード、M3)。
これらの処理を選択したり、組み合わせることにより、サンプルガス9の成分、状態、各成分の濃度、時間変化などを精度よく測定することができる。
【0041】
なお、第3のモード以外では、サンプル入力3bは上流のバルブ5bにより閉である。また、プロセスチェンバー101の内部がプラズマ19を生成が困難な程度に負圧(真空)になっている場合は、サンプル入力3aを上流のバルブ5aにより閉とし、サンプル入力3bからサンプルガス9を供給して電子イオン化装置15によりイオン化してもよい。この場合、マイクロプラズマ19は形成されないので、第2の検出器(OES)80による検出結果52は得られない。
【0042】
プロセスモニター(プロセスモニタリング装置、プロセスモニタリングシステム)100は、プラズマプロセス102が実施されるプロセスチェンバー101から供給されるサンプルガス9をガス分析装置1により分析した結果によりプロセス102を制御するプロセスコントローラ(プロセス制御装置)105を含む。プロセスコントローラ105は、CPUおよびメモリなどのコンピュータ資源を備えていてもよく、制御用のプログラム(プログラム製品)109により稼働してもよい。プロセスコントローラ105は、PLC50と共通する構成の分析装置70を含んでいてもよく、ガス分析装置1から分析用データ53の供給を受けてサンプルガス9の分析と、プロセスチェンバー101により実施される1または複数のプロセス102の制御とを行ってもよい。
【0043】
プロセスコントローラ105は、少なくとも1つのプラズマプロセス102のエンドポイントを、そのプラズマプロセスの副生成物を含むサンプルガス9をガス分析装置1により検出(測定)した結果により判断する装置(エンドポイントコントローラ)110装置を含む。少なくとも1つのプラズマプロセス102は、エッチング、膜生成、およびクリーニングの少なくとも1つを含んでもよい。このプロセスモニター100においては、ガス分析装置1により管理されるサンプルチェンバー12において、プロセスチェンバー101とは独立したプラズマ19を生成することにより、第1の検出器(質量分析器、MS)20による成分の検出と、第2の検出器(OES)80による成分の検出とを高い精度で同期して関連づけることが可能となり、高い精度でプロセス102の副生成物を、その有無だけではなく、定性的な分析(解析)を含めて行うことができる。したがって、プロセスコントローラ105は、その分析に基づき、プラズマプロセス102を適宜、制御することが可能となる。
【0044】
図3にプロセスコントローラ105によりプラズマプロセス102を制御する概要をフローチャートにより示している。ステップ121において、プロセスチェンバー101におけるプロセス102を開始する。これと同時に、または前後して、ステップ122において、プロセスコントローラ105は、ガス分析装置1によるサンプルガス9の分析を開始する。ガス分析装置1では、ステップ123において、第1の検出器(MS)20と、第2の検出器(OES)80とによる、サンプルチェンバー12内のプラズマ19の成分の検出を行い、第1の検出結果51と第2の検出結果52とを同期し、関連させた分析用データ53を生成する。第2の検出結果52では、一括で、パラレルに取得された発光スペクトルにより広範囲の成分に関する情報が得られる。第1の検出結果51では、関心領域(ROI)に限定されたマススペクトル(MS)のみを取得することができ、高精度、高感度の情報が得られる。
【0045】
ステップ124において、分析用データ53に基づき、第1の分析器71が、サンプルガス9の成分の分析を行う。ステップ125において、測定モードの切替が必要と判断されると、ステップ126において、上述した第1のモード(M1)、第2のモード(M2)および第3のモード(M3)のいずれかを選択してもよい。
【0046】
ステップ127において、プロセスコントローラ105のエンドポイントコントローラ110が、サンプルガス9の分析結果に基づき、プロセス102の状況や終了時期を判断し、プロセス102を終了する条件が整ったと判断すると、ステップ128でプロセス102を終了する。プロセス102の終了は、プラズマプロセス102の副生成物のガス分析装置1による検出結果に基づき、エンドポイントコントローラ110が判断してもよい。その後、次のプロセスの処理を開始するための準備を行い、順次プロセスを繰り返して、製品を製造することができる。
【0047】
図4に、プロセスモニタリング装置100の異なる例を示す。このプロセスモニタリング装置100は、ガス分析装置1の異なる例を含む。このガス分析装置1においては、第2の検出器80の分光分析ユニット85が、サンプルチェンバー12の透光性で誘電性の壁体構造12aに直結するように配置されている。したがって、光ファイバーを経ることなくサンプルチェンバー12内のプラズマ19からの光を分光分析することができ、さらに精度よく分光分析した結果を得ることができる。また、プラズマを生成するためのRFが供給される壁体12aに隣接して、あるいは同軸的に分光分析ユニット85を配置することにより、壁体12aの内面をプラズマ19により処理するようにプラズマ19を生成できる。このため、プラズマ19の派生物により壁体12aの内面が汚染されて発光が見にくくなるような事態を未然に防止できる。
【0048】
このガス分析装置1は、サンプルチェンバー12の一方の端に設けられた開口18から第1の検出器20にイオン化したガスの流れ(イオン流)17を供給する第1の経路151と、サンプルチェンバー12の他方の端から第2の検出器80による分光分析のための光を供給する第2の経路152とを有する。分光分析のための光をイオン流17が流れ出す反対方向から得ることができ、第2の検出器80の第2の検出結果52の予期しない変動を抑制できる。
【0049】
図5に、プロセスモニタリングシステム100のさらに異なる例を示す。このプロセスモニタリングシステム100は、ガス分析装置1のさらに異なる例を含む。このガス分析装置1のサンプルチェンバー12の透光性で誘電性の側壁12bを備えた円筒状であり、第2の検出器80の分光分析ユニット85に光ファイバー82を介して光を導くための集光素子81が側壁12bに取り付けられている。したがって、このガス分析装置1は、サンプルチェンバー12の第1の軸(中心軸)155に沿った一方の端に設けられた開口18から第1の検出器20にイオン化したガスの流れ(イオン流)17を供給する第1の経路151と、サンプルチェンバー12の第1の軸155に直交する方向に第2の検出器80による分光分析のための光を供給する第3の経路153とを含む。円筒状のチェンバー12内で生成されるプラズマ19に対し、第3の経路153により側方からアクセスすることが可能である。このため、第2の検出器80は、プラズマ19の中心部の原子化した試料の発光を用いて発光分析(分光分析)することが可能となり、より精度の高い検出結果52を得ることができる。
【0050】
なお、プラズマ19の発光を得るために分光分析ユニット85を配置する場所、あるいは光ファイバー82を装着する場所は上記に限定されるものではない。
【0051】
上記には、誘電性の壁体構造を備え、測定対象のサンプルガスのみが流入するサンプルチェンバーと、誘電性の壁体構造を介して電場および/または磁場により、減圧された前記サンプルチェンバー内でプラズマを生成するプラズマ生成機構と、生成されたプラズマを介してサンプルガスを分析する分析ユニット(センサー群)とを有するガス分析装置が開示されている。分析ユニットは、プラズマ中のイオン化したガスをフィルタリングする第1の分析器(第1の検出器)、例えば質量分析器と、サンプルチェンバーのプラズマ中のイオンを分光分析する第2の分析器(第2の検出器)、例えば発光分光分析器とを含む。この分析装置は、第1の分析器のイオン源となるプラズマのイオン種別および濃度を第2の分析器により分光分析できる。このため、共通のイオン化されたサンプルを同時に並行して、または、ガス分析装置内の限られた時間間隔(レイテンシー)で異なる方法で分析でき、それらの異なる方法による分析結果を、1つの分析装置の分析結果としてリアルタイムで得ることができる。すなわち、分析ユニットは、第1の分析器の分析結果と、第2の分析器の分析結果とを並列に、または、当該ガス分析装置により規定される時間間隔を設けて処理した分析結果を取得する第3の分析器を含んでもよい。すなわち、サンプルチェンバー内のプラズマ中のイオン化したガスを時間差なく、異なる分析方法により捉えた結果を、比較して、サンプルガスの成分と濃度とを、時間的な変動を含めて、高い精度で分析できる。
【0052】
サンプルチェンバーにおいては、マイクロプラズマが形成されるので、発光分光分析の対象としては光源のサイズが十分に小さく、安定した分析結果が得られる。第2の分析器は、透光性の高い誘電性の壁体構造を介してサンプルチェンバーの中のプラズマからの光を受光するユニットを含んでもよく、壁体構造の内面がプラズマにより常にリフレッシュされるので汚れなどによる分析性能の低下を抑制できる。さらに、第2の分析器は、サンプルチェンバーに光ファイバーを介して接続された分光分析器であってもよく、光ファイバーによる影響をなくすために第2の分析器は、サンプルチェンバーから光ファイバーを介さず発光を取得する分光分析器を含んでもよい。第1の分析器は、サンプルガスをイオン化するための電子を生成する電子イオン化ユニットを含んでもよい。
【0053】
上記には、さらに、ガス分析装置を有するプロセスモニタリングシステムが開示されている。プロセスモニタリングシステムは、ガス分析装置と、プラズマプロセスが実施されるプロセスチェンバーであって、ガス分析装置にサンプルガスが供給されるプロセスチェンバーとを有するシステムの一例である。
【0054】
上記には、さらに、ガス分析装置によりサンプルガスの成分を分析する方法が開示されている。この方法は、第1の分析器の分析結果と、第2の分析器の分析結果とを並列に、または、当該ガス分析装置により規定される時間間隔を設けて処理した分析結果を取得することを含む。質量分析では電荷比が同じために分離できない成分があっても、分光分析で得られるイオン化種別を加味して質量分析結果を分析することにより高精度の分析結果が得られるなど、質量分析と分光分析との協働により得られる効果は多い。第1の分析器が、サンプルガスをイオン化するためのイオンを生成する電子イオン化ユニットを含む場合は、以下のような測定方法を含んでもよい。(1)第1の分析器による、プラズマ中のイオン化したガスの分析と、第2の分析器によるプラズマ中のガスの分析とを並行に行うこと。(2)第1の分析器による、プラズマから派生されたガスを電子イオン化ユニットによりイオン化した分析と、第2の分析器によるプラズマ中のガス分析とを並行に行うこと。(3)第1の分析器による、プラズマを介さずに、電子イオン化ユニットによりイオン化したガスの分析と、第2の分析器によるプラズマ中のガス分析とを並行で行うこと。
【0055】
上記には、さらに、プラズマプロセスを実施するプロセスチェンバーを有するシステムの制御方法が開示されている。このシステムは、上記に記載の分析装置を有し、プロセスチェンバーからのサンプルガスのみがサンプルチェンバーに流入し、当該方法は、ガス分析装置の測定結果に基づいてプロセスチェンバー内で実施されるプラズマプロセスを制御することを含む。
【0056】
なお、上記では、第1の検出器20のフィルター25として四重極タイプを採用した質量フィルターの例を説明しているが、このフィルター25は、イオントラップ、ウィーン(Wien)フィルターなどの他のタイプであってもよい。
【0057】
また、上記においては、本発明の特定の実施形態を説明したが、様々な他の実施形態および変形例は本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者が想到し得ることであり、そのような他の実施形態および変形は以下の請求の範囲の対象となり、本発明は以下の請求の範囲により規定されるものである。