(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20241209BHJP
A61K 31/726 20060101ALI20241209BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20241209BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241209BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241209BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241209BHJP
A61K 31/727 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K31/726
A61P17/16
A61P17/00
A61P43/00 121
A61Q19/00
A61K31/727
(21)【出願番号】P 2024074779
(22)【出願日】2024-05-02
【審査請求日】2024-05-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521169561
【氏名又は名称】イワキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 喜朗
【審査官】河村 明希乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-116306(JP,A)
【文献】特開2000-169322(JP,A)
【文献】特開2024-060463(JP,A)
【文献】特開平04-298501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61K 31/00-31/80
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量が10,000~40,000のヘパリン類似物質0.01~0.3質量%および
分子量が1,000~3,000のデキストラン硫酸ナトリウム0.1~2質量%含有することを特徴とする外用組成物。
【請求項2】
ヘパリン類似物質とデキストラン硫酸ナトリウムを質量比で1:5~15で含有するものである請求項1記載の外用組成物。
【請求項3】
保湿用である請求項1または2記載の外用組成物。
【請求項4】
肌のハリ改善用である請求項1または2記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパリン類似物質とデキストラン硫酸ナトリウムを含有する外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸等のムコ多糖類(硫酸多糖とも呼ばれる)は保湿、血行促進、抗炎症等の作用を有するため、医薬品の外用剤の有効成分として従来より使用されていて、近年医薬部外品の有効成分としても汎用されるようになりつつある。
【0003】
ムコ多糖類の中でもヘパリン類似物質は特に高価であり、医薬品では0.3質量%以下、医薬部外品では0.1質量%以下と配合量の制約がある。そのため、ヘパリン類似物質の作用を多く得たい場合であっても配合量を増やすことはできなかった。
【0004】
ところで、これまでムコ多糖類を医薬部外品に利用する技術としては、多数知られていて、例えば、特許文献1には、デキストラン硫酸、フコイダン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、カラギーナンからなる群より選ばれる1種以上である硫酸多糖を有効成分とする毛穴収縮剤が開示されていて、また、特許文献2には、(A)ヒアルロン酸、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸およびこれらの塩から選択される1種以上であるムコ多糖類、(B)液状油、(C)非イオン性界面活性剤、および(D)(D1)リン脂質および(D2)ステロール類から選択される1種以上を含有する液状油性組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの技術は何れもムコ多糖類の新しい用途や新しい剤形に関するものであり、ムコ多糖類、特にヘパリン類似物質の作用を配合量の範囲内であっても増強できるような技術ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-169322号公報
【文献】特開2021-116306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高価で使用量に制限のあるヘパリン類似物質の作用を増強する外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ヘパリン類似物質とデキストラン硫酸ナトリウムを特定の質量範囲で含有させた外用組成物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
(1)ヘパリン類似物質0.01~0.3質量%およびデキストラン硫酸ナトリウム0.1~2質量%含有することを特徴とする外用組成物。
(2)ヘパリン類似物質とデキストラン硫酸ナトリウムを質量比で1:5~15で含有するものである(1)記載の外用組成物。
(3)保湿用である(1)または(2)記載の外用組成物。
(4)肌のハリ改善用である(1)または(2)記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の外用組成物は、ヘパリン類似物質の有する保湿効果、肌の張り改善効果等の作用について、ヘパリン類似物質およびデキストラン硫酸ナトリウムの併用により、相乗的に認められる優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の保湿効果確認試験における角質水分量測定の結果を示す図である。
【
図2】実施例1の保湿効果確認試験における角質水分量測定の結果を示す図である。
【
図3】実施例1のハリ改善効果確認試験における皮膚粘弾性測定の結果を示す図である。
【
図4】実施例1のハリ改善効果確認試験における皮膚粘弾性測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の外用組成物は、ヘパリン類似物質0.01~0.3質量%およびデキストラン硫酸ナトリウム0.1~2質量%含有するものである。
【0013】
本発明の外用組成物で用いられるヘパリン類似物質は、ヘパリンと同様の作用を持つ、ウロン酸とグルコサミンが交互に1,4-結合したグリコサミノグリカンの総称であり、ヘパリノイドともいう。本発明の外用組成物で用いられるヘパリン類似物質としては、例えば、植物性、動物性、合成のオリゴ糖や硫酸化多糖等の何れでもよいが、動物の臓器から抽出された動物性のものが好ましい。また、ヘパリン類似物質の物性は特に限定されないが、例えば、分子量が10,000~40,000のものが好ましく、25,000~35,000のものがより好ましい。なお、この分子量はプルランを標準物質としたサイズ排除クロマトグラフィーで測定される値である。
【0014】
本発明の外用組成物で用いられるヘパリン類似物質の好ましいものとしては、日本薬局方外医薬品規格に準じたものが挙げられる。このようなヘパリン類似物質の市販品としては、例えば、ヘパリン類似物質(アピ株式会社)等が挙げられる。
【0015】
本発明の外用組成物における、ヘパリン類似物質の含有量は0.01~0.3質量%であるが、好ましくは0.05~0.2質量%である。
【0016】
本発明の外用組成物に用いられるデキストラン硫酸ナトリウムは、デキストランの硫酸エステルのナトリウム塩である。本発明の外用組成物で用いられるとしては、デキストラン硫酸ナトリウムとしては、例えば、デキストラン産生菌から得られるデキストランを硫酸エステル化、ナトリウム塩化した発酵半合成品等が挙げられる。デキストラン硫酸ナトリウムの物性は特に限定されないが、例えば、分子量が1,000~3,000のものが好ましい。なお、この分子量はサイズ排除クロマトグラフィーで測定される値である。
【0017】
本発明の外用組成物に用いられるデキストラン硫酸ナトリウムの好ましいものとしては、通常の化粧品、医薬品、医薬部外品で用いられるものが挙げられる。このようなデキストラン硫酸ナトリウムの市販品としては、例えば、デキストラン硫酸ナトリウム(品名:DST-H、名糖産業株式会社)等が挙げられる。
【0018】
本発明の外用組成物における、デキストラン硫酸ナトリウムの含有量は0.1~2質量%であるが、好ましくは0.5~1.0質量%である。
【0019】
本発明の外用組成物においては、ヘパリン類似物質とデキストラン硫酸ナトリウムの質量比は特に限定されないが、1:5~15が好ましく、1:5~10がより好ましい。
【0020】
なお、本発明の外用組成物においては、ムコ多糖類としてヘパリン類似物質と、デキストラン硫酸ナトリウムを含むことが好ましく、ムコ多糖類としてヘパリン類似物質と、デキストラン硫酸ナトリウムのみを含み、これら以外のムコ多糖類を含まないことがより好ましい。
【0021】
本発明の外用組成物においては、上記必須成分の他に、各種剤形にあわせて他の成分を含有させることが好ましい。このような他の成分としては、例えば、剤形が液状であれば、水、ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ソルビトール、油等の基剤、EDTA等のキレート剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム等のpH調整剤、キサンタンガム等の増粘剤、エチルヘキシルグリセリン、パラベン類、フェノキシエタノール等の防腐剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤、ビタミンA、ビタミンE等のビタミン、パラメトキシケイ皮酸ベンジル等の紫外線吸収剤、糖類等の保湿剤、アロエエキス等の植物抽出物等が挙げられる。これら他の成分は本発明の外用組成物に各種剤形に併せて適量を含有させればよい。
【0022】
本発明の外用組成物の剤形としては、特に限定されないが、例えば、液状、ジェル状、シャーベット状、乳液状、クリーム状、軟膏状、固形練り状、ペースト状、固形状、粉体状等の公知の外用剤の剤形が挙げられる。本発明の外用組成物の剤形の好ましいものとしては、液状、乳液状、クリーム状等が挙げられる。
【0023】
本発明の外用組成物は、ヘパリン類似物質とデキストラン硫酸ナトリウムを含有させる以外は、公知の外用剤の剤形の調製法で調製することができる。
【0024】
以上説明した本発明の外用組成物は、ヘパリン類似物質とデキストラン硫酸ナトリウムを特定量で含有することにより、優れた保湿作用および肌のハリ改善作用を有するため各種スキンケア用途に用いることができるが、特に保湿用、肌のハリ改善用とすることが好ましい。
【0025】
また、本発明の外用組成物は、塗布した際のべたつきやぬるつきも抑制されていて優れた使用感となる。
【0026】
このような本発明の外用組成物を各種スキンケア用途に用いる場合、例えば、対象の皮膚に対して適量を朝昼晩の1日3回や朝晩の1日2回で適用すればよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を本発明の実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0028】
実 施 例 1
外用組成物(液状)の調製:
ヘパリン類似物質(アピ株式会社、分子量約30,000)またはデキストラン硫酸ナトリウム(品名:DST-H(分子量約2,000)、名糖産業株式会社)を単独で配合した場合と、両者を併用した場合とで保湿効果を比較する試験を行った。ヘパリン類似物質0.1%単独使用(処方2)、デキストラン硫酸ナトリウム1%単独使用(処方3)、ヘパリン類似物質とデキストラン硫酸ナトリウム併用(配合量はそれぞれ単独使用の半分ずつ;処方4)の試料を調製した。ヘパリン類似物質およびデキストラン硫酸ナトリウムをいずれも配合しない処方1を対照とした。処方1~6の組成を表1に示す。
【0029】
【0030】
<保湿効果確認試験>
室温22℃、相対湿度50%の条件下で、各試料を被検者の前腕内側に50μL塗布し、塗布後60分経過まで15分毎に角質水分量計(CorneometerCM825:Courage+Khazaka製)を用いてマニュアルに従って角質水分量を測定した。塗布前の角質水分量を100%とした相対値をプロットした図を以下に示す(
図1)。ヒアルロン酸ナトリウム(HA)(スペラネクサス株式会社製)についても、同様に単独使用(処方例5)の場合と、ヘパリン類似物質との併用(処方例6)の場合とで同様に角質水分量の測定を行った(
図2)。
【0031】
図1に示すとおり、ヘパリン類似物質またはデキストラン硫酸ナトリウムをそれぞれ単独使用した場合と比べ、両者を半量ずつ併用した方が、角質水分量が高くなったことから、ヘパリン類似物質とデキストラン硫酸ナトリウムを併用することにより相乗的な保湿効果を示すことが確認された。
【0032】
これに対し、先行技術(2)において、ヘパリン類似物質、デキストラン硫酸ナトリウムとともにムコ多糖類として挙げられているヒアルロン酸ナトリウムは、単独使用ではほとんど効果がなく、ヘパリン類似物質との併用でも増強作用は認められなかった(
図2)。
【0033】
<ハリ改善効果確認試験>
処方1~4の試料について皮膚粘弾性測定プローブ(Cutomerter CT580-2(プローブ径2mm):Courage+Khazaka製)を用いてマニュアルに従って皮膚粘弾性測定を行った。各試料を被検者の前腕内側に50μL塗布し、塗布から15分後、肌に密着させたプローブで2秒吸引後、リリース(陰圧解除)したときの肌の変異をプロットして粘弾性を評価した。R2は、Ua(陰圧解除後の最終戻り)/Uf(最大吸引高)の結果であり(
図3)、R7はUr(陰圧解除後の瞬時の戻り)/UF(最大吸引高)の結果である(
図4)。
【0034】
図3および
図4に示すとおり、ヘパリン類似物質またはデキストラン硫酸ナトリウムをそれぞれ単独使用した場合と比べ、両者を半量ずつ併用した方が皮膚粘弾性はより高くなったことから、ヘパリン類似物質とデキストラン硫酸ナトリウムを併用することにより相乗的な肌のハリ改善効果を示すことが確認された。
【0035】
また、ヘパリン類似物質およびデキストラン硫酸ナトリウムを併用した場合には、塗布した際のべたつきやぬるつきも抑制されていて優れた使用感であった。
【0036】
実 施 例 2
外用組成物(乳液状)の調製:
以下の成分を常法に従って混合、乳化して外用組成物(乳液状)を調製した。
(成分) (質量%)
ヘパリン類似物質 0.2
デキストラン硫酸Na 1.0
非イオン系界面活性剤 2.0
多価アルコール 5.0
高級アルコール 2.0
エステル油 6.0
流動パラフィン 2.0
精製水 残余
【0037】
この乳液状の外用組成物は、実施例1と同様の効果を発揮しうる。
【0038】
実 施 例 3
外用組成物(クリーム状)の調製:
以下の成分を常法に従って混合、乳化して外用組成物(クリーム状)を調製した。
(成分) (質量%)
ヘパリン類似物質 0.3
デキストラン硫酸Na 2.0
非イオン系界面活性剤 3.0
多価アルコール 10.0
高級アルコール 4.0
エステル油 8.0
流動パラフィン 4.0
精製水 残余
【0039】
このクリーム状の外用組成物は、実施例1と同様の効果を発揮しうる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の外用組成物は、優れた保湿効果、ハリ改善効果等を有するため各種スキンケアに利用できる。
【要約】
【課題】高価で使用量に制限のあるヘパリン類似物質の作用を増強する外用組成物を提供する。
【解決手段】ヘパリン類似物質0.01~0.3質量%およびデキストラン硫酸ナトリウム0.1~2質量%含有することを特徴とする外用組成物。
【選択図】
図1