IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィリックス株式会社の特許一覧

特許7599763吊具装置、及び、吊具装置を利用して対象物を吊り下げるための方法
<>
  • 特許-吊具装置、及び、吊具装置を利用して対象物を吊り下げるための方法 図1
  • 特許-吊具装置、及び、吊具装置を利用して対象物を吊り下げるための方法 図2
  • 特許-吊具装置、及び、吊具装置を利用して対象物を吊り下げるための方法 図3
  • 特許-吊具装置、及び、吊具装置を利用して対象物を吊り下げるための方法 図4
  • 特許-吊具装置、及び、吊具装置を利用して対象物を吊り下げるための方法 図5
  • 特許-吊具装置、及び、吊具装置を利用して対象物を吊り下げるための方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】吊具装置、及び、吊具装置を利用して対象物を吊り下げるための方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/12 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
B66C1/12 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024084310
(22)【出願日】2024-05-23
【審査請求日】2024-07-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518238883
【氏名又は名称】フィリックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 里志
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-256062(JP,A)
【文献】特開平07-323990(JP,A)
【文献】特開2007-153555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-3/20
B66C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を吊り下げるための吊具装置であって、
それぞれの一端が吊支点部に接続され、それぞれの他端が前記対象物に接続される複数のワイヤ部を備えており、
前記複数のワイヤ部のうちの特定のワイヤ部は、
第1柱状部と、
前記第1柱状部に連結されており、前記第1柱状部に対して、前記特定のワイヤ部の軸方向に移動可能な第2柱状部であって、前記特定のワイヤ部の前記軸方向の長さが最短となる最短位置と、前記特定のワイヤ部の前記長さが最長となる最長位置と、の間を移動可能な前記第2柱状部と、
前記第2柱状部が、前記最短位置から前記最長位置に向かう第1方向に移動することを規制するとともに、前記第2柱状部が、前記第1方向とは反対方向の第2方向に移動することを許容するロック部と、
を備え、
前記ロック部は、ロック位置と、アンロック位置と、の間を移動可能であり、
前記ロック部は、
前記ロック位置に位置している状態において、前記第2柱状部が、前記第1方向に移動することを規制するとともに、前記第2柱状部が、前記第2方向に移動することを許容し、
前記アンロック位置に位置している状態において、前記第2柱状部が、前記第1方向及び前記第2方向に移動することを許容し、
前記第2柱状部が前記最短位置に位置しているときに、前記アンロック位置に位置し、
前記第2柱状部が前記最長位置に位置しているときに、前記ロック位置に位置し、
前記第2柱状部が前記最短位置から前記最長位置に移動するまでの間、前記アンロック位置に位置する、吊具装置。
【請求項2】
前記ロック部は、
前記第2柱状部が前記最長位置から前記最短位置に移動するまでの間、前記ロック位置と前記アンロック位置との間を移動することを繰り返す、請求項に記載の吊具装置。
【請求項3】
前記特定のワイヤ部は、さらに、
前記ロック部を前記アンロック位置から前記ロック位置に付勢する付勢部材と、
前記ロック部を前記アンロック位置に保持する保持位置と、前記ロック部を保持しない非保持位置と、の間を移動可能な保持部と、
を備えており、
前記保持部は、
前記第2柱状部が前記最短位置に到達したときに、前記非保持位置から前記保持位置に移動し、
前記第2柱状部が前記最長位置に到達したときに、前記保持位置から前記非保持位置に移動する、請求項に記載の吊具装置。
【請求項4】
前記吊具装置は、さらに、第1ストッパ部と、第2ストッパ部と、を備えており、
前記第1ストッパ部は、前記第2柱状部が前記最長位置よりも前記第1方向に移動することを規制するとともに、前記第2柱状部が前記最長位置に到達したときに、前記保持部を前記保持位置から前記非保持位置に移動させ、
前記第2ストッパ部は、前記第2柱状部が前記最短位置よりも前記第2方向に移動することを規制するとともに、前記第2柱状部が前記最短位置に到達したときに、前記保持部を前記非保持位置から前記保持位置に移動させる、請求項に記載の吊具装置。
【請求項5】
前記複数のワイヤ部のそれぞれが、前記第1柱状部と、前記第2柱状部と、前記ロック部と、を備える、請求項1に記載の吊具装置。
【請求項6】
請求項1に記載の前記吊具装置を利用して前記対象物を吊り下げるための方法であって、
前記複数のワイヤ部が前記対象物に接続されている状態において、前記吊具装置を利用して、前記対象物を吊り下げる吊り下げプロセスと、
前記吊り下げプロセスの後に、前記対象物を下降させて前記対象物を地面に載置させることによって、前記特定のワイヤ部の長さを短くして、前記吊支点部を前記対象物の重心の上方に近接させる近接プロセスと、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、吊具装置、及び、吊具装置を利用して対象物を吊り下げるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、対象物を吊り下げるための吊具装置が開示されいている。この吊具装置は、それぞれの一端が吊支点部に接続され、それぞれの他端が対象物に接続される複数のワイヤ部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-011122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物を上方から見たときに、対象物の重心の位置と、対象物の幾何学的な中心の位置と、が一致していないことがある。このような対象物を、吊具装置を利用して吊り下げると、対象物のうち、重心側の近くに位置しているワイヤ部が接続されている部分が、他のワイヤ部が接続されている部分よりも下方に位置するように傾斜する。即ち、対象物が地面に対して傾斜している状態で、吊具装置によって対象物が吊り下げられる。対象物の地面に対する傾斜角を小さくすることが望まれている。
【0005】
本明細書では、対象物の地面に対する傾斜角を小さくすることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する第1の態様では、対象物を吊り下げるための吊具装置は、それぞれの一端が吊支点部に接続され、それぞれの他端が前記対象物に接続される複数のワイヤ部を備えてもよい。前記複数のワイヤ部のうちの特定のワイヤ部は、第1柱状部と、前記第1柱状部に連結されており、前記第1柱状部に対して、前記特定のワイヤ部の軸方向に移動可能な第2柱状部であって、前記特定のワイヤ部の前記軸方向の長さが最短となる最短位置と、前記特定のワイヤ部の前記長さが最長となる最長位置と、の間を移動可能な前記第2柱状部と、前記第2柱状部が、前記最短位置から前記最長位置に向かう第1方向に移動することを規制するとともに、前記第2柱状部が、前記第1方向とは反対方向の第2方向に移動することを許容するロック部と、を備えてもよい。
【0007】
上記の吊具装置を利用して、対象物を吊り下げる状況を想定する。初期状態において、特定のワイヤ部の長さは最大であり、かつ、複数のワイヤ部の長さは同じである。そして、対象物を上方から見たときに、複数のワイヤ部は、対象物の幾何学的な中心からほぼ等間隔に配置されている。また、特定のワイヤ部は、複数のワイヤ部のうち、対象物の重心から最も近い位置に接続される。この場合、吊具装置の支点は、対象物の幾何学的な中心の上方に位置しており、対象物の重心から離間している。このような状況において、吊具装置を利用して対象物を吊り下げると、特定のワイヤ部が接続されている部分が、他のワイヤ部が接続されている部分よりも下方に位置する。吊り下げた対象物を下降させると、対象物の下面のうち、特定のワイヤ部が接続されている部分の下面が最初に地面に接地する。対象物をさらに下降させると、特定のワイヤ部に対して、特定のワイヤ部の長さを短くする方向に負荷が作用する。この場合、特定のワイヤ部の第2柱状部が、第2方向に移動する。これにより、特定のワイヤ部の長さが短くなる。特定のワイヤ部の長さが短くなることによって、対象物を上方から見たときに、対象物の重心の位置と、吊具装置の支点の位置が近くなっていく。その後、吊具装置を利用して対象物を吊り下げると、対象物の地面に対する傾斜角が、特定のワイヤ部が最大の長さである場合の傾斜角よりも小さくなる。従って、対象物の地面に対する傾斜角を小さくすることができる。
【0008】
第2の態様では、上記第1の態様において、前記ロック部は、ロック位置と、アンロック位置と、の間を移動可能であってもよい。前記ロック部は、前記ロック位置に位置している状態において、前記第2柱状部が、前記第1方向に移動することを規制するとともに、前記第2柱状部が、前記第2方向に移動することを許容し、前記アンロック位置に位置している状態において、前記第2柱状部が、前記第1方向及び前記第2方向に移動することを許容し、前記第2柱状部が前記最短位置に位置しているときに、前記アンロック位置に位置し、前記第2柱状部が前記最長位置に位置しているときに、前記ロック位置に位置し、前記第2柱状部が前記最短位置から前記最長位置に移動しもよい。
【0009】
上記の構成によると、第2柱状部を最短位置に位置させることによって、ロック部がアンロック位置に位置する。このため、第2柱状部を第1方向に移動させることができ、特定のワイヤ部の長さを再び長くすることができる。従って、作業者は、吊具装置を繰り返し利用することができ、作業者の利便性が向上する。
【0010】
第3の態様では、上記第2の態様において、前記ロック部は、前記第2柱状部が前記最長位置から前記最短位置に移動するまでの間、前記ロック位置と前記アンロック位置との間を移動することを繰り返してもよい。
【0011】
上記の構成によると、第2柱状部が最長位置から最短位置に移動するまでの間、ロック部がロック位置に移動する毎に、第2柱状部が第1方向に移動することを規制することができる。
【0012】
第4の態様では、上記第2又は第3の態様において、前記特定のワイヤ部は、さらに、前記ロック部を前記アンロック位置から前記ロック位置に付勢する付勢部材と、前記ロック部を前記アンロック位置に保持する保持位置と、前記ロック部を保持しない非保持位置と、の間を移動可能な保持部と、を備えていてもよい。前記保持部は、前記第2柱状部が前記最短位置に到達したときに、前記非保持位置から前記保持位置に移動し、前記第2柱状部が前記最長位置に到達したときに、前記保持位置から前記非保持位置に移動してもよい。
【0013】
上記の構成によると、第2柱状部が最短位置に到達したときに、ロック部をアンロック位置に確実に位置させることができるとともに、第2柱状部が最長位置に到達したときに、ロック部をロック位置に確実に位置させることができる。
【0014】
第5の態様では、上記第4の態様において、前記吊具装置は、さらに、第1ストッパ部と、第2ストッパ部と、を備えてもよい。前記第1ストッパ部は、前記第2柱状部が前記最長位置よりも前記第1方向に移動することを規制するとともに、前記第2柱状部が前記最長位置に到達したときに、前記保持部を前記保持位置から前記非保持位置に移動させ、前記第2ストッパ部は、前記第2柱状部が前記最短位置よりも前記第2方向に移動することを規制するとともに、前記第2柱状部が前記最短位置に到達したときに、前記保持部を前記非保持位置から前記保持位置に移動させてもよい。
【0015】
上記の構成によると、第2柱状部が最長位置よりも第1方向に移動することを規制する部材と、第2柱状部が最長位置に到達したときに、保持部を保持位置から非保持位置に移動させる部材と、が別個の部材である構成、及び/又は、第2柱状部が最短位置よりも第2方向に移動することを規制する部材と、第2柱状部が最短位置に到達したときに、保持部を非保持位置から保持位置に移動させる部材と、が別個の部材である構成と比較して、吊具装置の構成を簡単化することができる。
【0016】
第6の態様では、上記第1から第4のいずれか一つの態様において、前記複数のワイヤ部のそれぞれが、前記第1柱状部と、前記第2柱状部と、前記ロック部と、を備えてもよい。
【0017】
複数のワイヤ部が、第1柱状部と第2柱状部とロック部とを備えないワイヤ部を有している場合、作業者は、対象物の重心から最も近い位置に、当該ワイヤ部が接続されないように作業する必要がある。即ち、対象物の重心の位置を事前に知っておく必要がある。上記の構成によると、作業者は、対象物の重心の位置を知っておく必要はない。従って、ユーザの利便性が向上する。
【0018】
第7の態様では、第1の態様に記載の前記吊具装置を利用して前記対象物を吊り下げるための方法は、前記複数のワイヤ部が前記対象物に接続されている状態において、前記吊具装置を利用して、前記対象物を吊り下げる吊り下げプロセスと、前記吊り下げプロセスの後に、前記対象物を下降させて前記対象物を地面に載置させることによって、前記特定のワイヤ部の長さを短くして、前記吊支点部を前記対象物の重心の上方に近接させる近接プロセスと、を備えてもよい。
【0019】
上記の構成によると、対象物の地面に対する傾斜角を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】対象物100を吊り上げている状態の吊具装置10の模式図。
図2】レール30が最短位置に位置している構成を示す図。
図3】レール30が最長位置に位置している構成を示す図。
図4】レール30及びロック部52の動作を示す図。
図5】レール30をZ方向正方向側から見た図。
図6】吊具装置10を利用して、対象物100を吊り上げるときの手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施例)
図1図5を参照して、吊具装置10について説明する。図1の吊具装置10は、玉掛式の吊具であり、対象物100を吊り下げるために利用される。一例であるが、対象物100は、建築用の資材、骨組み、パネルである。
【0022】
吊具装置10は、4個のワイヤ部12A~12Dを備えている。本実施例の吊具装置10では、4個のワイヤ部12A~12Dは、同一の構造を有している。以下ではワイヤ部12Aを例として詳細に説明し、ワイヤ部12B~12Dについては詳細な説明を省略する。
【0023】
図1図5を参照して、ワイヤ部12Aについて説明する。以下では、図2のワイヤ部12Aの中心軸A方向を、「X方向」と定め、図2の上下方向を「Z方向」と定め、X方向及びZ方向に直交する方向を「Y方向」と定める。
【0024】
図1に示すように、ワイヤ部12Aは、第1筒部14と、第2筒部16と、伸縮ユニット18(図2参照)と、上側取付部20と、を有している。第1筒部14及び第2筒部16は、中心軸A(図2参照)方向に沿って延びている。第1筒部14及び第2筒部16は、円筒形状を有している。第1筒部14のX方向負方向側の端部14Aには、上側取付部20が接続されている。上側取付部20は、クレーン等のフック200に取付けられる。図2に示すように、第2筒部16の一部は、第1筒部14内に収容されており、第1筒部14に連結されている。図1に示すように、第2筒部16は、第1筒部14のX方向正方向側の端部14BからX方向正方向に延びている。第2筒部16のX方向正方向側の端部には下側取付部22が設けられている。下側取付部22は、対象物100の上面の左前部に設けられている引掛部102Aに取付けられる。
【0025】
図2に示すように、伸縮ユニット18は、第1筒部14内に収容されている。伸縮ユニット18は、レール30と、ロック機構32と、を備えている。レール30は、X方向(即ち中心軸A方向)に沿って延びている。レール30のX方向正方向側の端部には、第2筒部16が連結されている。レール30は、X方向に沿って第1筒部14内を移動可能に構成されている。レール30が移動することによって第2筒部16が移動して、ワイヤ部12Aの長さが変化する。レール30には、複数の凹部40が設けられている。複数の凹部40は、X方向に沿って等間隔に配置されている。図5に示すように、凹部40のY方向の長さは、レール30のY方向の長さよりも小さい。
【0026】
レール30のZ方向正方向側の面には、第1ストッパ部42と、第2ストッパ部44とが、設けられている。第1ストッパ部42及び第2ストッパ部44は、レール30のZ方向正方向側の面から突出している。第1ストッパ部42は、レール30のX方向負方向側の端部に設けられており、第2ストッパ部44は、レール30のX方向正方向側の端部に設けられている。第1ストッパ部42及び第2ストッパ部44は、Y方向の両端部に設けられている。Y方向において、第1ストッパ部42及び第2ストッパ部44は、凹部40の外側に設けられている。Y方向において、第1ストッパ部42の間隔及び第2ストッパ部44の間隔は、凹部40の大きさよりも大きい。
【0027】
図2に示すように、ロック機構32は、アーム部50と、ロック部52と、を備えている。アーム部50は、レール30上を移動可能に配置されている。アーム部50は、Z方向に延びる第1アーム部54と、第1アーム部54のZ方向正方向側の端部から、X方向負方向側に延びる第2アーム部56と、を備えている。図示省略しているが、第1アーム部54のY方向の長さは、レール30のY方向の長さと略同じである。
【0028】
ロック部52のZ方向正方向側の面には、Z方向負方向に陥凹させて形成されるバネ受部60が設けられている。バネ受部60には、第1筒部14に取付けられている圧縮バネSが配置される。圧縮バネSは、第1筒部14に対してロック部52をZ方向負方向側に付勢する。
【0029】
ロック部52は、さらに、X方向負方向側の第1面62と、X方向正方向側の第2面64と、を備えている。第1面62は、Y方向及びZ方向を含む平面に平行な平坦面である。第2面64は、第1傾斜面66と、接続面67と、平坦面68と、第2傾斜面70と、を備えている。Z方向正方向において、第2傾斜面70、平坦面68、第1傾斜面66の順に配置されている。第1傾斜面66及び第2傾斜面70は、Z方向負方向に向かうにつれてX方向負方向側に傾斜している。平坦面68は、Y方向及びZ方向を含む平面に平行な平坦面である。接続面67は、第1傾斜面66と平坦面68とを接続している。接続面67は、X方向及びY方向を含む平面に平行な平坦面である。図示省略しているが、ロック部52のY方向の大きさは、レール30の凹部40の左右方向の大きさよりも小さい。
【0030】
(レール30及びロック部52の動作)
図1のワイヤ部12Aは、レール30(図2参照)がX方向に沿って移動することによって、伸縮する。レール30は、ワイヤ部12Aの長さが最短となる最短位置(図2参照)と、ワイヤ部12Aの長さが最長となる最長位置(図3参照)と、の間を移動可能に構成されている。レール30、及び、ロック機構32の動作について説明する。なお、ワイヤ部12Aの長さが最長となっている状態を初期状態として説明する。
【0031】
図3に示すように、レール30が最長位置に位置している状態では、第1アーム部54のX方向負方向側の面が第1ストッパ部42に当接している。この場合、第1ストッパ部42によって、アーム部50とロック部52とが引き離され、ロック部52は、アーム部50によって保持されない。このため、圧縮バネSの付勢力によって、ロック部52のZ方向負方向側の端部がレール30の凹部40内に配置される。以下では、図3のように、アーム部50が、ロック部52を保持していない場合のアーム部50の位置のことを、「非保持位置」と記載する。
【0032】
レール30にX方向負方向側の負荷が作用すると、レール30がX方向負方向側に移動する。レール30がX方向負方向側に移動すると、図4(A)に示すように、凹部40のX方向正方向側の面が、ロック部52の第2傾斜面70に当接する。第2傾斜面70が傾斜しているので、レール30がX方向負方向側に移動することに伴い、ロック部52がZ方向正方向に移動する。これにより、図4(B)に示すように、X方向に並んでいる2個の凹部40の間に、ロック部52が配置されるようになる。
【0033】
レール30がX方向負方向側にさらに移動すると、ロック部52が、凹部40のZ方向正方向側に位置するようになる。この場合、図4(C)に示すように、圧縮バネSの付勢力によって、ロック部52がレール30の凹部40内に配置される。そして、レール30にX方向負方向側の負荷が作用することに応じて、レール30及びロック部52が上記と同様に動作して、レール30がX方向負方向側に移動していく。なお、図4(C)の状態において、レール30にX方向正方向側の負荷が作用しても、レール30は、X方向正方向側に移動しない。これは、ロック部52の第1面62が平坦面であるために、第1面62が凹部40のX方向負方向側の面に当接することによって、レール30のX方向正方向側への移動が規制されるためである。以下では、レール30が、X方向正方向に移動することが規制されており、レール30が、X方向負方向に移動することが許容されているロック部52の位置のことを「ロック位置」と記載する。
【0034】
図2に示すように、レール30がX方向負方向側にさらに移動すると、第1アーム部54のX方向正方向側の面が第2ストッパ部44に当接する。これにより、アーム部50の第2アーム部56のX方向負方向側の面がロック部52の第1傾斜面66に当接する。第1傾斜面66が傾斜しているので、アーム部50がX方向負方向側に移動することに伴い、ロック部52がZ方向正方向に移動する。これにより、ロック部52が、レール30よりもZ方向正方向側に配置される。即ち、アーム部50によってロック部52が保持される。この状態において、レール30は、最長位置から最短位置の範囲において、X方向正方向及びX方向負方向に移動することができる。即ち、ロック部52は、レール30が、X方向正方向及びX方向負方向に移動することを許容する。以下では、レール30が、X方向正方向及びX方向負方向に移動することが許容されているロック部52の位置のことを「アンロック位置」と記載する。また、ロック部52をアンロック位置に保持しているアーム部50の位置のことを、「保持位置」と記載する。
【0035】
図2の後に、作業者によって、レール30がX方向正方向側に引っ張られると、レール30がX方向正方向側に移動する。そして、図3に示すように、第1アーム部54のX方向負方向側の面が第1ストッパ部42に当接する。これにより、アーム部50のX方向正方向側への移動が規制される。そして、アーム部50とロック部52とが引き離され、圧縮バネSの付勢力によって、ロック部52がロック位置に配置される。このように、本実施例のロック部52は、ワイヤ部12Aの長さが最長になった後は、レール30が最長位置から最短位置に移動するまでの間、ロック位置(図4(A)、(C)参照)とアンロック位置(図4(B))との間を移動することを繰り返す。そして、ロック部52がロック位置に位置する毎に、アーム部50のX方向正方向側の移動が規制される。
【0036】
(吊具装置10を利用して対象物100を吊り下げるための方法)
図6を参照して、本実施例の吊具装置10を利用して、対象物100を地面と略平行に吊り下げるための方法について説明する。図6では、見易くするために、ワイヤ部12A~12Dの構成を簡単化しているとともに、対象物100の引掛部102A~102D、及び、フック200を省略している。図6の対象物100は、その重心が左前方に位置している物体である。図6(A)に示される初期状態では、ワイヤ部12A~12Dの長さは最大長さである。即ち、ワイヤ部12A~12Dのレール30は、最長位置(図2参照)に位置している。また、吊具装置10及び対象物100を上方から見た場合、ワイヤ部12A~12Dは、対象物100の幾何学的な中心からほぼ等間隔において対象物100の引掛部102A~102D(図1参照)に接続されている。この状態において、吊具装置10及び対象物100を上方から見ると、フック200によって支持されている吊具装置10の支点は、対象物100の幾何学的な中心の上方に位置している。
【0037】
まず、吊具装置10を利用して対象物100を吊り下げる(吊り下げプロセス)。図6(B)に示すように、対象物100の重心が左前方に位置しているので、対象物100は、左前部が右後部よりも下方に位置するように傾斜する。
【0038】
次いで、図6(C)に示すように、対象物100を下降させていく。左前部が右後部よりも下方に位置するように傾斜するように対象物100が傾斜しているので、対象物100の左前部が最初に地面に接地する。対象物100をさらに下降させることによって、対象物100の左前部に接続されているワイヤ部12Aのレール30に、レール30をX方向負方向側に移動させる方向に負荷が作用する。これにより、レール30がX方向負方向側に移動して、ワイヤ部12Aの長さが短くなる。そして、吊具装置10及び対象物100を上方から見た場合に、吊具装置10の支点が初期状態よりも左前部に移動する。即ち、吊支点部が、対象物100の重心の上方に近接する(近接プロセス)。この状態において、吊具装置10を利用して対象物100を吊り下げると、対象物100が、地面に対して略平行になる。
【0039】
なお、上記の手順を行った後においても、対象物100が、地面に対して傾斜している場合、吊り下げプロセス、及び、近接プロセスを繰り返し実行する。これにより、ワイヤ部12A~12Dが収縮し、吊具装置10によって吊り上げられる対象物100が地面と略平行になる。
【0040】
上述のように、対象物100を吊り下げるための吊具装置10は、それぞれの上端がフック200(「吊支点部」の一例)に接続され、それぞれの下端が対象物100に接続される複数のワイヤ部12A~12Dを備えている。ワイヤ部12A(「特定のワイヤ部」の一例)は、第1筒部14(「第1柱状部」の一例)と、第1筒部14に連結されており、第1筒部14に対して、ワイヤ部12Aの軸方向に移動可能な第2筒部16であって、ワイヤ部12Aの中心軸A方向(「軸方向」の一例)の長さが最短となる最短位置と、ワイヤ部12Aの長さが最長となる最長位置と、の間を移動可能な第2筒部16と、第2筒部16が、最短位置から最長位置に向かうX方向正方向(「第1方向」の一例)に移動することを規制するとともに、第2筒部16が、X方向負方向(「第2方向」の一例)に移動することを許容するロック部52と、備えている。
【0041】
上記の構成によると、図6に示すように、吊具装置10を利用して対象物100を吊り下げると、ワイヤ部12Aが接続されている部分が、他のワイヤ部12B~12Dが接続されている部分よりも下方に位置する。吊具装置10によって吊り下げられている対象物100を下降させると、対象物100の下面のうち、ワイヤ部12Aが接続されている部分の下面が最初に地面に接地する。対象物100をさらに下降させると、ワイヤ部12Aに対して、ワイヤ部12Aの長さを短くする方向に負荷が作用する。この場合、ワイヤ部12Aの第2筒部16が、X方向負方向に移動する。これにより、ワイヤ部12Aの長さが短くなる。ワイヤ部12Aの長さが短くなることによって、対象物100を上方から見たときに、対象物100の重心の位置と、吊具装置10の支点の位置が近くなっていく。その後、吊具装置10を利用して対象物100を吊り下げると、対象物100の地面に対する傾斜角が、ワイヤ部12Aが最大の長さである場合の傾斜角よりも小さくなる。従って、対象物100の地面に対する傾斜角を小さくすることができる。
【0042】
また、ロック部52は、ロック位置(図3参照)と、アンロック位置(図2参照)と、の間を移動可能である。ロック部52は、ロック位置に位置している状態において、第2筒部16が、X方向正方向に移動することを規制するとともに、第2筒部16が、X方向負方向に移動することを許容し、アンロック位置に位置している状態において、第2筒部16が、X方向正方向及びX方向負方向に移動することを許容する。ロック部52は、第2筒部16が最短位置に位置しているときに、アンロック位置に位置し、第2筒部16が最長位置に位置しているときに、ロック位置に位置する。ロック部52は、第2筒部16が最短位置から最長位置に移動するまでの間、アンロック位置に位置する。
【0043】
上記の構成によると、第2筒部16を最短位置に位置させることによって、ロック部52がアンロック位置に位置する。このため、第2筒部16をX方向正方向に移動させることができ、ワイヤ部12Aの長さを再び長くすることができる。従って、作業者は、吊具装置10を繰り返し利用することができ、作業者の利便性が向上する。
【0044】
また、ロック部52は、第2筒部16が最長位置から最短位置に移動するまでの間、ロック位置とアンロック位置との間を移動することを繰り返す。
【0045】
上記の構成によると、第2筒部16が最長位置から最短位置に移動するまでの間、ロック部が、ロック位置に移動する毎に、第2筒部16が、X方向正方向に移動することを規制することができる。
【0046】
また、ワイヤ部12Aは、さらに、ロック部52をアンロック位置からロック位置に付勢する圧縮バネS(「付勢部材」の一例)と、ロック部52をアンロック位置に保持する保持位置と、ロック部52を保持しない非保持位置と、の間を移動可能なアーム部50(「保持部」の一例)と、を備えている。アーム部50は、第2筒部16が最短位置に到達したときに、非保持位置から保持位置に移動し、第2筒部16が最長位置に到達したときに、保持位置から非保持位置に移動する。
【0047】
上記の構成によると、第2筒部16が最短位置に到達したときに、ロック部52をアンロック位置に確実に位置させることができるとともに、第2筒部16が最長位置に到達したときに、ロック部52をロック位置に確実に位置させることができる。
【0048】
また、吊具装置10は、さらに、第1ストッパ部42と、第2ストッパ部44と、を備えている。第1ストッパ部42は、第2筒部16が最長位置よりもX方向正方向に移動することを規制するとともに、第2筒部16が最長位置に到達したときに、アーム部50を保持位置から非保持位置に移動させる。第2ストッパ部44は、第2筒部16が最短位置よりもX方向負方向に移動することを規制するとともに、第2筒部16が最短位置に到達したときに、アーム部50を非保持位置から保持位置に移動させる。
【0049】
上記の構成によると、第2筒部16が最長位置よりもX方向正方向に移動することを規制する部材と、第2筒部16が最長位置に到達したときに、アーム部50を保持位置から非保持位置に移動させる部材と、が別個の部材である構成、及び/又は、第2筒部16が最短位置よりもX方向負方向に移動することを規制する部材と、第2筒部16が最短位置に到達したときに、アーム部50を非保持位置から保持位置に移動させる部材と、が別個の部材である構成と比較して、吊具装置10の構成を簡単化することができる。
【0050】
また、複数のワイヤ部12A~12Dのそれぞれが、第1筒部14と、第2筒部16と、ロック部52と、を備えている。
【0051】
複数のワイヤ部12A~12Dが第1筒部14と第2筒部16とロック部52とを備えないワイヤ部を有している場合、作業者は、対象物100の重心から最も近い位置に、当該ワイヤ部が接続されないように調整する必要がある。即ち、作業者は、対象物100の重心の位置を事前に知っておく必要がある。上記の構成によると、作業者は、対象物100の重心の位置を知っておく必要はない。従って、ユーザの利便性が向上する。
【0052】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上記の実施例の変形例を以下に列挙する。
【0053】
(第1変形例)吊具装置10が備えるワイヤ部の数は4個に限定されず、2個、3個、又は、5個以上であってもよい。
【0054】
(第2変形例)上記の実施例では、第1筒部14がフック200に取付けられており、第2筒部16が対象物100に取付けられている。変形例では、第1筒部14が対象物100に取付けられており、第2筒部16がフック200に取付けられていてもよい。
【0055】
(第3変形例)ロック部52は、ロック位置にのみ位置していてもよい。
【0056】
(第4変形例)ロック部52は、第2筒部16が最長位置から最短位置に移動するまでの間、ロック位置に維持されるように構成されていてもよい。
【0057】
(第5変形例)作業者が、ロック部52の位置を調整可能であってもよい。
【0058】
(第6変形例)第2筒部16が最長位置よりもX方向正方向に移動することを規制する部材と、第2筒部16が最長位置に到達したときに、アーム部50を保持位置から非保持位置に移動させる部材と、が別個の部材であってもよい。また、第2筒部16が最短位置よりもX方向負方向に移動することを規制する部材と、第2筒部16が最短位置に到達したときに、アーム部50を非保持位置から保持位置に移動させる部材と、が別個の部材であってもよい。
【0059】
(第7変形例)複数のワイヤ部のうちの1個以上のワイヤ部が、「第1柱状部」と、「第2柱状部」と、「ロック部」と、を備えていればよい。なお、ワイヤ部の数が4個の場合、3個以上のワイヤ部が、「第1柱状部」と、「第2柱状部」と、「ロック部」と、を備えているとよい。
【0060】
(第8変形例)「対象物」は、建築用の資材、骨組み、パネルに限定されず、担架等であってもよい。
【0061】
本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0062】
10:吊具装置、12A~12D:ワイヤ部、14:第1筒部、14A、14B:端部、16:第2筒部、18:伸縮ユニット、20:上側取付部、22:下側取付部、30:レール、32:ロック機構、40:凹部、42:第1ストッパ部、44:第2ストッパ部、50:アーム部、52:ロック部、54:第1アーム部、56:第2アーム部、60:バネ受部、62:第1面、64:第2面、66:第1傾斜面、67:接続面、68:平坦面、70:第2傾斜面、100:対象物、102:引掛部、200:フック、A:中心軸、S:圧縮バネ
【要約】
【課題】対象物の地面に対する傾斜角を小さくすることができる技術を提供する。
【解決手段】対象物を吊り下げるための吊具装置は、それぞれの一端が吊支点部に接続され、それぞれの他端が対象物に接続される複数のワイヤ部を備えている。複数のワイヤ部のうちの特定のワイヤ部は、第1柱状部と、第1柱状部に連結されており、第1柱状部に対して、特定のワイヤ部の軸方向に移動可能な第2柱状部であって、特定のワイヤ部の軸方向の長さが最短となる最短位置と、特定のワイヤ部の長さが最長となる最長位置と、の間を移動可能な第2柱状部と、第2柱状部が、最短位置から最長位置に向かう第1方向に移動することを規制するとともに、第2柱状部が、第1方向とは反対方向の第2方向に移動することを許容するロック部と、を備える。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6