(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】遮熱健康住宅
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
E04B1/76 500Z
E04B1/76 200C
(21)【出願番号】P 2024098636
(22)【出願日】2024-06-19
【審査請求日】2024-06-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512043360
【氏名又は名称】日本遮熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】野口 修平
(72)【発明者】
【氏名】野口 彩乃
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特許第7340307(JP,B1)
【文献】特許第4118976(JP,B2)
【文献】特許第7408204(JP,B1)
【文献】特許第7515945(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/74 - 1/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートから構成され、内部空間を有する建物の基礎部と、
前記基礎部の基礎立上部の片面全域又は両面全域を被覆する、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第一素材と、
前記基礎立上部の上側に構築される床部と、
前記床部の室内側又は床下側の全面に設けられた、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第二素材と
、
外装部材と、前記外装部材の内側に構築された内装部材と、前記外装部材と前記内装部材との間に形成された第一通気層と、を有し、
前記第一通気層内の前記外装部材の内側にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第三素材が設けられ、部屋を構成する前記内装部材の室内側に直接かつ前記室内側の大気に面してアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第四素材が設けられ、室内の前記床部にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第五素材が設けられ、
前記第一通気層が、前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第三素材の放射側に形成され、外気を前記第一通気層の吸気口から取り入れ、前記第一通気層の排出口から排出し、
前記第一通気層の吸気口や前記第一通気層の排出口に、形状記憶合金で構成されたスプリングを利用した開閉装置がそれぞれ設けられ、前記スプリングを前記外装部材の外部に露出して設け、前記開閉装置は、前記スプリングが外気温を感知することで開閉し、前記第一通気層を流れる空気の通気量が調整される、
ことを特徴とする遮熱住宅。
【請求項2】
屋根の内側に形成された第二通気
層を備える遮熱住宅であって、
地中に埋設された
配管を有する熱供給手段を
備え、
前記
配管には外気が供給され、
地熱によって
前記配管の内部で熱交換された
外気が
、前記配管を介して、前記第一通気層及び前記第二通気層に供給される、
ことを特徴とする請求項1に記載の遮熱住宅。
【請求項3】
前記床部よりも下側に配設された第一配管と、前記第一配管と連結され、前記室内に繋がる第二配管とを有し、
前記第一配管にはフィルター及びファンが設けられ、前記ファンを作動させることで、前記内部空間の空気
が前記フィルターを通
過し、前記室内に供給される、
ことを特徴とする請求項
1に記載の遮熱住宅。
【請求項4】
屋根材の内側に形成された第二通気層を有し、前記第二通気層内の前記屋根材の内側にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第六素材が設けられ、
前記第二通気層が、前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第六素材の放射側に形成され、外気を前記第二通気層の吸気口から取り入れ、前記第二通気層の排出口から排出し、
前記第二通気層の排出口に、前記開閉装置が設けられ、前記第二通気層を流れる空気の通気量が調整される、
ことを特徴とする請求項1に記載の遮熱住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中や床下の地熱を建物の基礎や屋根外壁、室内に供給する事により、室内の冷暖房効果を高める事や床下の湿気対策を行う遮熱建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物のベタ基礎や布基礎の基礎立上部には、通常換気口が設けられている(例えば、特許文献1)。この換気口は、床下の空間に外気が吸入したり、床下の空間から外部に排出することで、床下空間の湿気を防止するために設けられている。また、床下に、湿気防止として、木炭等を敷き詰めている建物がある(例えば、特許文献2)。
【0003】
特許文献1に記載の住宅は、断熱された基礎と、基礎に支持された1階の床と、床の下方に配置された土間とで囲まれた床下空間を備え、基礎に床下空間に外気を導入するための基礎換気口が形成されている。
特許文献2に記載の住宅では、床下部分を密閉式のベタ基礎とし、床下部分の北側の壁面に開閉口を設け、かつ床下部分のベタ基礎上に木炭ないし竹炭を敷きつめている。ベタ基礎上に敷きつめられた木炭や竹炭によって、循環空気の湿気や臭いを吸着している。これらの木炭や竹炭は、雨期等における湿気を快適な湿度になるよう吸着できる面積や厚さであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-224485号公報
【文献】登録実用新案第3123276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の住宅では、ベタ基礎や布基礎の基礎立上部に換気口が設けられている。建築基準法では、布基礎の場合は土間に防湿対策が施されてない場合は設置が必要であるとされ、ベタ基礎の場合は不要されている。しかし、現在、床下の湿気対策として殆どの建物の床下に換気口が設けられている。
【0006】
床下の湿気に関する問題点は以下の3つである。
(1)雨水の進入
第一に、本来阻止しなければならない雨水は、強風等により換気口からの進入が最も大きい。第二に、浴室タイル目地からの進入である。これまで浴室は、モルタルの上にタイル施工がされている。種々の要因で、モルタルが割れたりし、床下に水が侵入していた。しかし、最近は、殆どユニットバスなのでこの問題は無いと考える。
(2)湿気の進入
第一は、床下の換気口からが多く、対策は無い。第二は、室内から床下への湿気の移動である。料理の際に発生する水蒸気、ガスコンロや石油ファンヒーターから発生する水蒸気があるが、起こりうる問題で現状では阻止できない。第三は、地表から床下への湿気の移動であり、地表の水分が水蒸気の状態で床下に侵入する。現在は、防水シートやベタ基礎で対処できる。
(3)床下設備で発生する結露
トイレや浴室の配管が、床下の換気口から侵入する冷気によって結露が発生するが、現状では解決できない。この様に、本来湿気対策等で必要だとされてきた床下の換気口、逆に床下の換気口がある事によって発生する問題が殆どである。
【0007】
床下の湿気防止として、床下に木炭等を敷き詰めている建物がある。確かに、木炭等は調質機能を持つ素材として理解できるが、床下に敷き詰めたからと言って、床下の換気口や室内床等を通して大量に床下に侵入した湿気を吸収できるかは信じがたい。
【0008】
本発明はこれらの問題を解決する為になされたものであり、本発明は床下の湿気対策を行う遮熱住宅を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る遮熱住宅は、コンクリートから構成され、内部空間を有する建物の基礎部と、基礎部の基礎立上部の片面全域又は両面全域を被覆する、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第一素材と、基礎立上部の上側に構築される床部と、床部の室内側又は床下側の全面に設けられたアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第二素材とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る遮熱住宅は、外装部材と、外装部材の内側に構築された内装部材と、外装部材と内装部材との間に形成された第一通気層と、屋根の内側に形成された第二通気層とを備える遮熱住宅であって、地中に埋設された熱供給手段を有し、熱供給手段には外気が供給され、熱供給手段によって熱交換された空気が、第一通気層及び第二通気層に供給されることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る遮熱住宅は、基礎部の内部空間の空気を、室内の暖房又は冷房に利用し、内部空間の空気を、フィルターを通して、ファンにより室内に供給することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る遮熱住宅は、外装部材と、外装部材の内側に構築された内装部材と、外装部材と内装部材との間に形成された第一通気層とを有し、第一通気層内の外装部材の内側にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第三素材が設けられ、部屋を構成する内装部材の室内側に直接かつ室内側の大気に面してアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第四素材が設けられ、室内の床にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第五素材が設けられ、第一通気層が、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第三素材の放射側に形成され、外気を第一通気層の吸気口から取り入れ、第一通気層の排出口から排出し、第一通気層の吸気口や第一通気層の排出口に、形状記憶合金で構成されたスプリングを利用した開閉装置がそれぞれ設けられ、スプリングを外装部材の外部に露出して設け、開閉装置は、スプリングが外気温を感知することで開閉し、第一通気層を流れる空気の通気量が調整されることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る遮熱住宅は、屋根材の内側に形成された第二通気層を有し、第二通気層内の屋根材の内側にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第六素材が設けられ、第二通気層が、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第六素材の放射側に形成され、外気を第二通気層の吸気口から取り入れ、第二通気層の排出口から排出し、第二通気層の排出口に、開閉装置が設けられ、第二通気層を流れる空気の通気量が調整されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る遮熱住宅は、内部空間を有する基礎部の基礎立上部の片面全域又は両面全域をアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第一素材で被覆すし、床部の室内側又は床下側の全面にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第二素材が設けられている。そうすると、基礎部の内部空間は、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材で囲まれる。そのため、本発明に係る遮熱住宅では、床下の温度が年間を通して安定し、床下における結露の発生を防止できる。また、ベタ基礎の外側に施工する屋外用遮熱材(アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の第一素材)は、基礎に接着して使用するが、厚みが薄いので白アリの進入を防ぐことができる。
【0015】
上述の通り、遮熱住宅における床下の温度は年間を通して安定し、夏は一階の床が涼しく冷房効果、冬は暖房効果がある。そのため、この遮熱住宅では、夏や冬でも床下と室内の温度差を小さくできる。床下と室内の温度差を小さくすることで、遮熱住宅内は生活するには非常に心地よい環境となる。
【0016】
本発明に係る遮熱住宅は、外装部材と内装部材との間に形成された第一通気層と、屋根の内側に形成された第二通気層に、地中に埋設された熱供給手段を介して、熱交換された空気が供給される。また、本発明に係る遮熱住宅は、基礎部の内部空間の空気を、室内の暖房又は冷房に利用し、内部空間の空気を、フィルターを通して、ファンにより室内に供給する。そのため、本発明に係る遮熱住宅では、室内の冷暖房効果を高める事ができる。
【0017】
本発明に係る遮熱住宅は、外装部材と内装部材との間に形成された第一通気層と、屋根の内側に形成された第二通気層とを有し、外気を第一通気層の吸気口及び第二通気層の吸気口から取り入れ、第一通気層の排出口及び第二通気層の排出口から排出する。そして、第一通気層の吸気口や第一通気層及び第二通気層の排出口に、形状記憶合金で構成されたスプリングを利用した開閉装置がそれぞれ設けられている。このスプリングを外装部材の外部に露出して設け、開閉装置のスプリングが外気温を感知することで開閉し、第一通気層及び第二通気層を流れる空気の通気量が調整される。そのため、本発明に係る遮熱住宅は、上述した効果を享受できることに加え、電源等のエネルギーを使用せずに、自動で室内の温度環境を調整でき、自動で住宅内において発生する結露を防止することができる。その結果、この遮熱住宅は、省エネで夏は涼しく、冬は暖かい室内環境となり、住居者は快適に生活することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る遮熱住宅の外壁の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る遮熱住宅の遮熱構造を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る遮熱住宅の遮熱構造の拡大図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る遮熱住宅の屋根に遮熱構造を形成した際の断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る遮熱住宅に設けた開閉装置の形状記憶合金で構成される開閉部を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る遮熱住宅の開閉装置の開閉を説明するための図である。(a)は閉状態を示し、(b)は開状態を示している。
【
図7】本発明の実施形態に係る遮熱住宅において、ベタ基礎の基礎立上部及び室内の床に遮熱材を施工した断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る遮熱住宅において、外壁の通気層に地中に埋設した配管から空気を供給する内容を説明するための図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る遮熱住宅において、床下の空気を室内に取り込む、空気循環システムの概要図である。
【
図10】遮熱住宅における[試験1]の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、
図1から
図9を参照し説明する。
【0020】
地表の温度は絶えず14℃位で、四季のある日本では冷房にも暖房にも使え有効な熱源である。建物に地熱を利用するには、最も安価で効果的な方法は地表と接している床下に使用する事である。しかしながら、床下には基礎立上部に換気口が設けられ、この換気口を介して空気が出入りするため、地熱を有効に利用する事が出来ない。又、本来、床下の湿気対策で設けられている床下の換気口、ベタ基礎やユニットバス等設備や施工方法が更新されている現状、逆に設置されている事の方がマイナス効果である。
【0021】
本発明に係る遮熱住宅100は、
図1に示すように、遮熱構造1を有している。この遮熱構造1は、外装部材2と、外装部材2の内側に構築された内装部材3と、外装部材2と内装部材3との間に形成された通気層4(第一通気層4)と、を有する。通気層4内の外装部材2の内側にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材6A(以下、高反射率素材とも記す。)が設けられている。また、部屋3Aを構成する内装部材3の室内側に直接かつ室内側の大気に面して、高反射率素材6Bが設けられている。この高反射率素材6Bは、少なくても部屋3Aの室内側(大気側)に位置する天井及び壁等の表面に設けられている。なお、外装部材2と内装部材3との間には断熱材は設けられていない。また、屋根材9の内側にも、通気層4(第二通気層4)が形成されている。なお、ドアや窓ガラスには、遮熱テープを貼ることができ、これらによって、遮熱住宅100内の遮熱効果は高くなる。
【0022】
図2及び
図3に示すように、内装部材3の外側には防水紙(防水層)8が設けられ、この防水紙8の外側に構造用合板7が設けられている。また、屋根材9の上には、棟換気材20が形成されている(
図1及び
図4)。本発明の遮熱住宅100では、外装部材2の内側に高反射率素材6A,内装部材3の内側に高反射率素材6B、6Cが取り付けられている。また、屋根材9の内側には、高反射率素材6Dが直接貼り付けられている。そのため、通気層4は、高反射率素材6Dの放射側に形成されることとなる。
【0023】
本発明に係る遮熱住宅100では、外装部材2と内装部材3との間に形成された第一通気層4の吸気口や排気口及び屋根材9の内側に形成された第二通気層4の排気口に、形状記憶合金を利用した開閉装置5がそれぞれ設けられ、開閉装置5は形状記憶合金が外気温を感知することで開閉し、通気層4を流れる空気の通気量が調整される。本発明で使用する開閉装置5は、形状記憶合金を利用したスライド型の装置である。この開閉装置5は、
図5に示すように、基部10に四角形の複数の開口部11を有する2枚の長方形の金属板(スライド部材)12を重ね、そのうちの1枚の金属板12を形状記憶合金製のスプリング13が温度を感知して伸び縮みすることで、開口部11を開閉させるものである。
【0024】
具体的には、
図6(a)に示すように、冷えるとスプリング13が伸び、左右方向Xの右方に金属板12が移動し、開口部11は金属板12によって閉じられ、閉状態となる。一方、
図6(b)に示すように、所定の温度まで温まるとスプリング13が縮むため、左右方向Xの左方に金属板12が移動し、開口部11が開き、開状態となる。この性質を利用し、開口部11を開閉し、通気層4内の空気の出入りが調整され、結果として、通気層4内を流れる空気の量が調整される。
【0025】
屋根9の内側や外壁2に通気層4を設けると、夏場の冷房効果は大きく省エネ効果は大きいが、冬場は逆に暖房効果を低減させ、結果的に省エネ効果はマイナスとなる。この冬場のマイナス効果を低減するのが形状記憶合金を利用したスライド型の開閉装置5である。この開閉装置5で、通気層4の吸気口及び排出口を閉鎖する事により、通気層4内に静止空気層を形成し、遮熱住宅100を保温する事が出来る。
【0026】
現在使用している形状記憶合金は、18℃で全閉(閉状態)、28℃で全開(開状態)とする事が出来る。この開閉温度は、形状記憶合金の種類によって変更することができ、上記の温度に拘る必要はない。開閉装置5の開閉温度は、何処の温度を感知して作動させるかは非常に重要で、遮熱住宅100(遮熱構造1)では、形状記憶合金製のスプリング13が外気側に取り付けられ、外部に露出しているのが特徴である。仮に、形状記憶合金製のスプリング13が通気層4内にあるとする。真冬0℃の昼間に太陽光が屋根や外壁2に当たり加熱すると通気層4内の温度が18℃以上に上昇し形状記憶合金を利用したスライド型の開閉装置5が開状態となる。この結果、通気層4内の空気は流れ始めるが、室温は概ね22℃位なので室内の熱は継続的に通気層4に流れ込み、形状記憶合金を利用したスライド型の開閉装置5は開状態が継続され、結果的に省エネ効果は少なくなる。形状記憶合金を利用したスライド型の開閉装置5のもう一つの利点は、スプリング13が外気温を感知して作動するので電源は必要とせず、コントロール装置などを必要としないゼロエネルギーシステムを構築できることである。
【0027】
さらに、本発明に係る遮熱住宅100は、
図7に示すように、コンクリートから構成され、内部空間21Aを有する建物の基礎部21と、基礎部21の基礎立上部22の片面全域(片面全周)又は両面全域(両面全周)を被覆する、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材6Eと、基礎立上部22の上側に構築される一階の床部(床材)23と、床部23の室内側又は床下側の全面に設けられた高反射率素材6Cと、を備える。この遮熱住宅100は、地熱を利用する建物である。なお、基礎部21の内部空間21Aは、床部23の床下を示している。
【0028】
基礎立上部22の上側に根太等24が配置され、この根太等24は、基礎パッキン25を介して基礎立上部22の上に設けられている。根太等24の上側には、複数の柱(躯体)26が設けられている。また、床部23に設けられた高反射率素材6Cの上には、カーペット27が敷かれている。基礎部21であるベタ基礎や布基礎の外周部の基礎立上部22の全周の片面(外側又は内側)又は両面(外側及び内側)には、高反射率素材6Eが接着剤や両面テープで貼られている。基礎立上部22の天端に基礎パッキンを使用する場合は、土台と基礎の間の隙間から空気が流れない様、高反射率素材6Eは土台迄立ち上げて完全にシールする。基礎立上部22に、換気口や配管貫通孔等が形成されている場合は、その外側から密封する様に施工する。高反射率素材6Eは、通常、少なくとも基礎立上部22の屋外側に施工するが、室内側にも施工すれば、さらに効果的である。これにより、基礎立上部22の屋外と室内側とは完全に、防水、防湿、更に断熱効果も生む事が出来る。なお、基礎部21はベタ基礎が良く、基礎部21の下側には防水シート施工することが好ましい。これにより、地表からの防湿対策は粗万全となる。なお、住宅に換気口が形成されている場合、換気口を塞ぐように、高反射率素材6Eを取り付ける。
【0029】
室内は、調理の水蒸気、ガスコンロや石油ファンヒーターから発生する水蒸気等が充満している。これらの湿気は、室温の移動方向と同じ方向に流れる。床下の内部空間21Aは、年間を通して室温より低く、一階の湿気はこの内部空間に流出する可能性が大きい。本発明に係る遮熱住宅100は、一階の床部23の上側(床上)や床部23の下側(床下)の全面に高反射率素材6Cを施工している。これによって、一階の室内側と床下の内部空間21Aとの湿気の移動は完全に止める事が出来る。
【0030】
この様に、基礎立上部22の全周、一階の床部23、そして基礎部21の下側の湿気に移動を止める事が出来、床下である内部空間21Aは外部からの湿気等の進入が殆どない環境となる。更に、床下の内部空間21Aの周囲が高反射率素材6Eで覆われるので、土間から伝導熱の形態をとって伝達される地表熱を保温できる。
【0031】
ここで使用するアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材(高反射率素材)は、一般的にアルミホイルが殆どである。ただ、それだけでは腐食や強度の問題があるので、種々の素材を複数層重ねた遮熱材として使用している。基礎部21の外側に使用する屋外用遮熱材は、大気に面していて太陽光を直接受けるので、反射光が周囲の人に照射され目を傷めない様に、表面がピカピカしない乱反射仕様になっている。又、遮熱材は高純度のアルミ箔を使用しているので、アルカリ性であるコンクリートと接触すると腐食の原因となる。そこで、耐アルカリ性のものを使用する必要がある。その遮熱材の構成は、高透過樹脂層、アルミ箔、熱溶着層、ガラスクロス、熱溶着層、アルミ箔、高透過樹脂層(乱反射構造)の7層構造である。重要な事はアルミ箔であり、純度99.5%以上、反射率98%のものを使用しているが、表面に着色した高透過樹脂層(乱反射構造)を施工しているので、最終的な反射率は約90%となる。なお、高反射率素材6Aから6Eは、使用箇所に応じて、適宜選択でき、同じものを使用しても、異なるものを使用してもよい。
【0032】
基礎部21に遮熱材(高反射率素材6E)を施工する場合は、強風や雨水に耐得る様に接着剤にて、直貼りするのが殆どである。一方、室内の床に使用している屋内用遮熱材(高反射率素材6C)は、室内側で使用するのでピカピカでも問題無いが、酸やアルカリ成分が付着する可能性があるので、こちらも耐薬品性の高いものを使用している。その構成は、高透過樹脂層、アルミ箔、熱溶着層、不織布、熱溶着層、アルミ箔、高透過樹脂層の7層構造である。遮熱材は、反射率98%のものを使用しているが、表面の高透過樹脂層により若干低下、最終的には95%位の反射率となる。室内床に施工する場合は、両面テープで簡単に固定してあれば問題ない。但し、人間が歩行するので、カーペットや人工芝を遮熱材の上に施工するのが基本である。又、床下に施工する場合は、土台にタッカー止が殆どである。
【0033】
次に、基礎立上部22の外側を遮熱した床下の地熱利用について詳しく説明する。
【0034】
夏、屋外からの輻射熱は、基礎立上部22の外側に施工された遮熱材(高反射率素材6E)によって90%が反射され、床下の基礎部21の内部空間21Aに伝達されるのは10%程度である。ところが、床下は概ね14℃の地温であり、基礎部21から伝達された熱は床に吸収される。一方、室内からは室温25℃の熱が床下に移動するが、これも床下の地温が低いので吸収されることになる。従って、室内側は反射方向なので温かくなるのが一般的であるが、地熱により床が冷却されるので涼しい環境になる。
【0035】
冬、屋外からの輻射熱は30℃の低角度で照射されるので基礎部21は暖められるのが基本であるが、遮熱材(高反射率素材6E)の反射率が高いので床下の内部空間21Aへの熱の供給は少ない。しかしながら、本来は床下の換気口より0℃を下回る空気が流れ冷やされていたので、従来より遥かに冷たさが緩和される。勿論、室内側は、室温22℃位の熱が14℃の床下に向けて伝達されるが、これも従来0℃以下で有ったものが14℃になるので寒さが大幅に緩和されることになる。
【0036】
この様に、地熱は年間を通して14℃と安定している事、室温も夏冬でもその差は3℃程度でその差は小さい事、更には周囲が密封されているので周囲から湿気の進入が無いので床下の配管等の結露の発生はなく、これまでの湿気が問題であった床下の環境は一変する。
【0037】
本発明の遮熱住宅100は、外装部材2と内装部材3との間に形成された第一通気層4と、屋根9に形成された第二通気層4とを備え、地中に埋設された配管や熱交換装置(熱供給手段)を有し、この配管や熱交換装置に外気が供給され、熱交換された空気が、第一通気層4及び第二通気層4に供給される。
【0038】
遮熱住宅100では、地中に埋設した配管や熱交換装置の一方から空気を取り込み、他方から建物の外壁2の内側に形成された第一通気層4に放出する事により外壁2などを冷却し、結果的には室内3Aの冷房効果を高める。
【0039】
全体の構成例として、
図8に示すように、小型の太陽光パネル30、吸気ファン31、熱交換機用配管ユニット32、薄型の供給ノズル33を有する。吸気ファン31は、壁内の温度を感知して稼働するもので、動力は小型の太陽光パネル30を使用する。また、吸気ファン31には防塵フィルター34が設けられている。熱交換機用配管ユニット32は、直径50mm、全長7mから8m程のパイプを1m位毎に連続して折り曲げ、上部を地中5m位になる位に埋設した。空中に出る所は断熱性の高い屋外用の遮熱材でカバーし、排出側は広範囲に吸引される様に台形状の薄型のノズルとした。又、熱交換機用配管ユニット32を埋設した上部や周囲は極力太陽からの輻射熱の影響を受けない様、遮熱材等でカバーした。熱交換機用配管ユニット32は、床下の内部空間21Aに設置する事も可能である。この場合は、熱交換機用配管ユニット32が基礎部21に、極力接する様に設置する事が好ましい。
【0040】
次に、地熱を、熱交換機用配管ユニット32を介して空気に転換、通気層4に供給するシステムを説明する。
【0041】
本システムは、室内温度を低下させる為に設ける設備で、稼働するのは壁内温度が概ね28℃以上である。それ以下の温度では、室温を低下させてしまうので本システムは停止する。従って、夏の暑い期間のみの稼働となる。本システムに使用する空気は、熱交換して外壁2や屋根等に供給されそのまま排気される。この空気は、居住空間には何ら関わりを持たないので比較的メンテナンスが簡単である。又、稼働には小型の太陽光パネル30を使用する。この太陽光パネル30は、太陽の出ている暑い時のみ稼働できれば良いので、他の稼働エネルギーを必要とはしない。ただ、注意しなければならないのは、屋外の地表の温度が変わる事である。熱交換機用配管ユニット32を、地下5m以上に埋設する場合やベタ基礎の下側に設置する場合等は問題無いが、大気の当たる屋外の地下の浅い所で使用する場合は地温が上がるので効果が出ない場合がある。従って、このような場合は熱交換機用配管ユニット32の上部は勿論、周囲1m以上は太陽が当たらない工夫や遮熱材で囲っておく必要がある。
【0042】
本発明に係る遮熱住宅100は、基礎部21の内部空間21Aの空気を、室内3Aの暖房又は冷房に利用する。具体的には、
図9に示すように、内部空間21Aの空気を、フィルター40を通して、供給ファン41により室内3Aに供給する。
【0043】
この遮熱住宅100では、床下の空気をフィルター40でろ過し、供給ファン41により各部屋3Aの供給するものである。供給用配管42を設置、供給用配管42には供給ファン41が取り付けられている。供給ファン41は、基礎部21から天井45まで設けられ、吹出し口42Aから室内3Aに向けて空気が吹き出す。要は、床下の空気を循環して暖冷房に使用するものである。なお、吹出し口42Aの近くには、シーリングファン46を設けることもできる。また、遮熱住宅100では、小さな吸気口を設け、天井45の下側の空気はそのまま屋外に排出する。
【0044】
遮熱住宅100において、供給ファン41を使用した冷暖房のシステムを、詳しく説明する。夏場室内は28℃にもなるが、床下の内部空間21Aはこれより10℃も低い温度である。この床下の冷たい空気を室内3Aに取り込み、室温を低下させるものである。又、余剰の空気は、室内3Aから床下に設置された排気配管にて再び床下に戻される。即ち、空気の熱交換は床下の内部空間21A全体で行うものである。室内3Aの余剰の空気を、屋外に排出するのではなく床下の内部空間21Aに戻すのは、熱交換量が少なくて済み床下の温度を安定させるためでもある。
【0045】
室内3Aの空気の吹き出しは、シーリングファン46がある場合、このシーリングファン46の上から、シーリングファン46がない場合は水平方向が良く、弱い風を少しずつ長時間かけて供給する事で、体に掛かる負荷を少なくする事も出来る。又、床下と室内3Aを循環させる事で、屋外からの空気導入が不要で、大気に散在するPM2.5や花粉などの対策が不要である事もメリットである。このシステムは、設備がシンプルで有るので、設置費用が非常に少ない事も大きなメリットである。
【0046】
[試験1]
建物の基礎立上部の全周に屋外用遮熱材を、床には室内用遮熱材を施工した。又、建物周囲は外壁材と屋根材の室内側に遮熱材が施工してあり、その内側に通気層を設け、通気した。試験は、窓を閉めた状態で、以下の測定条件で、各室内の温度を測定した。
(1)測定日時:令和6年5月24日15時30分
(2)天候:晴れ
(3)気温:33℃
(4)室内状態:お客様1名合計2名滞在
(5)エアコン使用状況:未使用
(6)測定温度計:サーモレコーダー
(7)使用遮熱材:基礎部外周THB-FD(日本遮熱社製)、床上THB-X(日本遮熱社製)、通気層内THB-FX(日本遮熱社製)
(8)壁内通気:大気
【0047】
【0048】
[考察1]
一般的に、地表の温度は14℃位との事であるが、この試験棟では季節の問題なのか1日中19,0℃であった。ただ、1日の温度変化は0.3℃位で非常に安定していた。また、室内の床は、室温が27℃位であるにもかかわらず涼しく地熱で冷却されている感じがした。各階の温度は余り差が無く均一で有った。
【0049】
[試験2]
気温29℃の時、床下の内部空間の熱を2階の室内に、ファンを使用して送風を試みた。
(1)試験日:令和6年6月8日15時
(2)気温:29℃
(3)使用配管:塩化ビニル50mm
(4)配管長:9.5m
(5)温度計:サーモレコーダー
(6)ファン:オーム電機製(150Φ PFS2-150A 170m3/H)
【0050】
[結果2]
結果は、以下の通りとなった。
(1)床下温度:19.1℃
(2)2階室内温度:28.5℃
(3)吹き出し温度:23.5℃
(4)温度低下:4.4℃(23.5-19.1)
【0051】
[考察2]
配管の断熱性が今一なのか、吹き出し温度は23,5℃であった。但し、室温が28.5℃の部屋で5℃低い空気が流れたので、非常に心地よい感じがした。
【0052】
最後に、本発明に係る遮熱住宅100の作用効果について、説明する。
【0053】
本実施形態に係る遮熱住宅100は、基礎部21の基礎立上部22の片面全域又は両面全域を高反射率素材6Eで被覆し、床部23の室内側又は床下側の全面に高反射率素材6Cが設けられているため、床下の温度が年間を通して安定し、床下における結露の発生を防止できる。この遮熱住宅100は、床下の結露以外にも、壁表面結露、壁内結露を防止することができる。
【0054】
本実施形態に係る遮熱住宅100は、床下の温度が年間を通して安定し、夏は一階の床部が涼しく冷房効果、冬は暖房効果がある。そのため、この遮熱住宅100では、夏や冬でも床下と室内3Aの温度差を小さくでき、室内3Aを非常に心地よい環境とすることができる。
【0055】
本実施形態に係る遮熱住宅100は、第一通気層4及び第二通気層4に、地中に埋設された熱供給手段を介して、熱交換された空気が供給することができる。さらに、本発明に係る遮熱住宅100では、基礎部21の内部空間21Aの空気を、室内3Aの暖房又は冷房に利用し、内部空間21Aの空気を、フィルターを通して、ファンにより室内3Aに供給できる。したがって、遮熱住宅100では、室内3Aの冷暖房効果を高める事ができる。
【0056】
本実施形態に係る遮熱住宅100は、第一通気層4の吸気口や第一通気層4及び第二通気層4の排出口に、形状記憶合金で構成されたスプリングを利用した開閉装置がそれぞれ設けられ、このスプリングを外装部材の外部に露出して設け、開閉装置のスプリングが外気温を感知することで開閉し、第一通気層4及び第二通気層4を流れる空気の通気量を調整することができる。そのため、本発明に係る遮熱住宅100は、電源等を使用せずに、自動で室内3Aの温度環境を調整でき、自動で住宅内において発生する結露を防止することができる。その結果、この遮熱住宅100は、省エネで夏は涼しく、冬は暖かい快適な室内環境を提供できる。
【0057】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 遮熱構造
2 外装部材(外壁)
3 内装部材(内壁)
3A 部屋(室内)
4 通気層(第一通気層、第二通気層)
5 開閉装置
6A,6B,6D アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材(高反射率素材)
6C アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材(屋内用遮熱材)
6E アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材(屋外用遮熱材)
7 構造用合板
8 防水紙(防水層)
9 屋根(屋根材)
10 基材
11 開口部
12 金属板(スライド部材)
13 スプリング
20 棟換気材
21A 内部空間(床下)
21 基礎部
22 基礎立上部
23 床部(床材)
24 根太等
25 基礎パッキン
26 柱(躯体)
27 カーペット
30 太陽光パネル
31 吸気ファン
32 熱交換機用配管ユニット
33 供給ノズル
34 防塵フィルター
40 フィルター
41 供給ファン
42 供給用配管
42A 吹出し口
45 天井
46 シーリングファン
100 遮熱住宅
【要約】
【課題】地中や床下の地熱を外壁や屋根、室内に供給する事で、室内の冷暖房効果を高め、かつ床下の湿気対策が可能な遮熱住宅を提供する。
【解決手段】遮熱住宅100は、コンクリートから構成され、内部空間21Aを有する建物の基礎部21と、基礎部21の基礎立上部22の片面全域又は両面全域を被覆する屋外用遮熱材6Eと、基礎部21の上側に構築される床部23と、床部23の室内側又は床下側の全面に設けられた屋内用遮熱材6Cとを備える。この遮熱住宅100は、省エネで夏は涼しい室内環境、冬は暖かい室内環境となり、室内で快適な生活することができる。
【選択図】
図7