(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】突起部付きシートのローラ貼り付け用キット
(51)【国際特許分類】
A61M 35/00 20060101AFI20241209BHJP
A61M 37/00 20060101ALN20241209BHJP
【FI】
A61M35/00 Z
A61M37/00 530
(21)【出願番号】P 2020198454
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】西村 朋也
(72)【発明者】
【氏名】東城 武彦
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/218862(WO,A2)
【文献】特開2005-13642(JP,A)
【文献】特開2013-158601(JP,A)
【文献】特開2020-99513(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104491(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 35/00
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の突起部を配した突起領域及び前記突起部が配されていない基底領域を備えたシートと、空隙部、及び該空隙部の両側において前記シートの基底領域を支持する支持部を備えたシート保持具とを有し、
前記突起領域の突起部は、前記空隙部内に空隙部底部との間に空間を残して配され、
前記シートに対して前記空隙部側とは反対側からローラを押し当てて転動させ、該ローラに前記シートを巻き付けるように貼り付けることが可能にされている、突起部付きシートのローラ貼り付け用キット。
【請求項2】
前記シート保持具は、前記支持部の幅方向外方に、前記ローラを沿
わせて転がすことができるガイド部を有する、請求項1記載の突起部付きシートのローラ貼り付け用キット。
【請求項3】
前記シートはカンチレバー測定における測定値(剛軟度)が、70mm以上200mm以下である、請求項1又は2記載の突起部付きシートのローラ貼り付け用キット。
【請求項4】
前記空隙部の幅は、前記ローラの軸方向の長さよりも短い、請求項1~3のいずれか1項に記載の突起部付きシートのローラ貼り付け用キット。
【請求項5】
前記シートは、前記突起部の配される面とは反対側の面に粘着層を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の突起部付きシートのローラ貼り付け用キット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の突起部付きシートのローラ貼り付け用キットと、前記ローラを転動自在に配したローラ転動器具とを含む、ローラ型突起提供キット。
【請求項7】
前記ローラ転動器具は手で把持できる取手部を有する、請求項6記載のローラ型突起提供キット。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の突起部付きシートのローラ貼り付け用キットに前記ローラを押し当てて転がすことにより、前記ローラに前記シートを貼り付ける、ローラ型突起の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は突起部付きシートのローラ貼り付け用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロニードル等の突起部を備えたシートは、皮膚への刺激ないし美容有効成分等の皮膚浸透の効果をもたらすものとして知られている。この突起部付きシートをローラに脱着可能に取り付けて使用する機器があり、該機器は携帯性と取り扱い性に優れる。このような突起部付きシートに関し、種々の技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、突起部の1種であるマイクロニードルを備えたシートと該マイクロニードルシートを取り付け可能なアプリケーターとを含むキットの技術が記載されている。該キットにおいて、マイクロニードルシートは、マイクロニードル配置面を下にして多孔質シートを備えた容器に収納される。この多孔質シートは、マイクロニードルの保護材として配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のキットのように、マイクロニードルシート等は、突起部を容器内に保管する際、容器内の多孔質シートのような保護材に接触した状態におかれる。この状態で、前記シートの突起部配置面とは反対側の面にローラ表面を押し当てて貼り付けが行われる場合がある。その際、多孔質シートは緩衝材となり、マイクロニードルの潰れが抑えられるようにされている。
しかし、マイクロニードルのような突起部は皮膚に触れ角質内へ穿刺し得る部分であり、使用前は皮膚以外の物と接触させないことが望ましい。そのため、突起部が触れる保護材は、衛生面からは省略することが望まれる。一方で、保護材を省略すると、突起部の形状を保持するための保護が十分でなくなる。
このように突起部を衛生的に保つことと突起部の損傷を抑えることとを両立することは難しく、この点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、シートが備える突起部を衛生的に保つことができ、かつ、突起部の損傷を抑えたローラへの確実な張り付けを可能にする、突起部付きシートのローラ貼り付け用キットに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の突起部を配した突起領域及び前記突起部が配されていない基底領域を備えたシートと、空隙部、及び該空隙部の両側において前記シートの基底領域を支持する支持部を備えたシート保持具とを有し、前記突起領域の突起部は、前記空隙部内に空隙部底部との間に空間を残して配され、前記シートに対して前記空隙部側とは反対側からローラを押し当てて、該ローラと前記シートとを貼り付けることが可能にされている、突起部付きシートのローラ貼り付け用キットを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の突起部付きシートのローラ貼り付け用キットは、シートが備える突起部を衛生的に保つことができ、かつ、突起部の損傷を抑えたローラへの確実な張り付けをすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る、突起部付きシートのローラ貼り付け用キットの好ましい一実施形態を模式的に示した部分断面正面図である。
【
図2】突起部付きシートのローラ貼り付け用キットの好ましい一使用例を示した部分断面図である。
【
図3】ローラの好ましい一形態例を示した正面図である。
【
図4】突起部付きシートのローラ貼り付け用キットを用いたローラ型突起の製造方法の好ましい一例を示した部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1を参照して、本発明の突起部付きシートのローラ貼り付け用キットについて好ましい一例を説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の突起部付きシートのローラ貼り付け用キット10(以下、単にキット10ともいう)は、突起部11を備えたシート14と、シート保持具19とをセットにして含むものである。シート保持具19にシート14が収納される。
【0011】
シート14は、複数の突起部11を配した突起領域12と、突起部11が配されていない基底領域13とを備える。このシート14は、突起領域12と基底領域13とに亘って配されるシート状の基材15を有する。突起領域12は、基材15上に複数の突起部11が配された積層構造となっている。一方、基底領域13は基材15のみの領域である。突起部11は、突起領域12において、基材表面の縦横に等間隔に配されていることが好ましい。
【0012】
シート14において、突起部11の配されている側の面を表面14Sといい、その反対面を裏面14Rという。シート14は、後述のローラ21の軸方向に沿う幅方向Xと、幅方向Xに直交する長手方向Yを有する。また、シート保持具19は、シート14に合わせ幅方向X及び長手方向Yを有する。
【0013】
基材15は、種々の素材のものを用いることができる。例えば、ローラに巻き付けやすくする観点及びシートの撓みを抑制する観点から、ポリ乳酸(以下、PLAともいう)フィルム、ポリエチレンテレフタラート(以下、PETともいう)フィルム等が好ましい。その厚みは、シートの撓みを抑制する観点から、100μm以上が好ましい。また、基材15の厚みは、ローラに巻き付けやすくする観点から、500μm以下が好ましい。
【0014】
突起部11は、人体の各部の皮膚の、例えば、顔の頬や唇等の皮膚の角質内へ穿刺し得る尖塔形状、例えば針状の形状を有するものである。例えば、底部が円形または楕円形の円錐形、底部が矩形又は多角形の角錐形等が挙げられる。突起部11の断面は、円形、多角形など種々の幾何学形状を有していてもよい。
【0015】
突起部11の基材15表面からの高さHは、使用目的に応じて適宜任意に設定することができる。例えば、突起部11の高さHは、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上が更に好ましい。また、突起部11の高さHは、1000μm以下が好ましく、750μm以下がより好ましく、500μm以以下が更に好ましい。
【0016】
突起領域12における突起部11の密度は、シート全体の面積が小さくても効率よく複数の突起を穿刺し易くする観点から、100本/cm2以上が好ましく、200本/cm2以上がより好ましい。また、該密度は、突起本数増大により、突起領域の先端が肌に対して、穿刺時に面接触の如くになることで、穿刺の効果を妨げることを抑制する観点から、2000本/cm2以下が好ましく、1000本/cm2以下がより好ましく、500本/cm2以下がさらに好ましい。
【0017】
突起領域12における突起部11の先端間の離間距離は、上記と同様に、突起本数増大により、突起領域の先端が肌に対して、穿刺時に面接触の如くになることで、穿刺の効果を妨げることを抑制する観点から、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上が更に好ましい。また、前記先端間の離間距離は、上記と同様に、シート全体の面積が小さくても効率よく複数の突起を穿刺し易くする観点から、1000μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましく、600μm以下が更に好ましい。
【0018】
突起部11の材質は、目的に応じて種々のものを用いることができる。例えば、軽量化によってシートの撓みを抑える観点から、PLA、PET、ヒアルロン酸等が好ましい。また、突起部11は美容有効成分を含むものであってもよい。該美容有効成分としては、通常用いられる種々のものが挙げられ、例えば、美白剤、抗酸化剤、洗浄剤、抗老化剤、皮膚テクスチャトリートメント剤等が挙げられる。このような突起部11は、溶解性であってもよく、非溶解性であってもよい。上記の美容効果の観点から、突起部11は溶解性であることが好ましい。この溶解性とは、皮膚のケラチン物質の内部で、例えば天然の湿潤因子又は外部の水分によって破壊されうる又は崩壊されうることを意味する。
【0019】
シート保持具19は、幅方向Xにおいて、空隙部16と、該空隙部16の両側においてシート14の基底領域13を支持する一対の支持部17、18を有する。支持部17、18は、空隙部底部16Bに繋がっており、シート保持具19の開口側に向かって立設されている。支持部17、18と空隙部底部16Bは一体として成形されたものでも良く、別部材が接合されたものでも良い。
シート保持具19において、シート14は突起部11の配されている表面14Sを下にして、すなわち突起部11を空隙部16に向けて収納される。より具体的には、シート14は、幅方向Xにおいて、突起領域12の表面14Sが空隙部16に収納され、突起領域12の両側の基底領域13にあるシート端部14A及び14Bが支持部17、18によって支持される。このとき、シート14の突起領域12の突起部11は、空隙部16内に向けて、突起部11と空隙部底部16Bとの間に空間20を残して配置される。
【0020】
キット10において、基底領域13のあるシート14の両端部14A、14Bの表面14Sには、固定のための粘着剤等を配さないことが好ましい。これにより、シート14をローラ21(
図2参照)に貼り付けて皮膚に押し当てた際に、両端部14A、14Bが皮膚に触れても、使用者に違和感を与えることなく、突起部11による所望の作用を皮膚に対して良好に付与することができる。
【0021】
支持部17、18の材質は、種々の素材のものを用いることができる。例えば、容器としての成形性の観点から、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、PET樹脂等が好ましい。
【0022】
キット10において、シート14はカンチレバー測定における測定値(剛軟度)が、70mm以上であることが好ましい。このようなシート14は、撓みの発生を抑え得る適度な剛性を備えるものとなる。そのため、シート14は、上記のようにしてシート保持具19内に配置した際に、前述の空間20を良好に残して収納され得る。この観点から、シート14の前記剛軟度は、50mm以上がより好ましく、70mm以上が更に好ましい。
上記剛軟度の上限は、特に制限はないが、ローラ21に巻き付けやすくする観点から200mm以下が好ましい。
この剛軟度の測定は、試料の自重による撓みを測定する方法であり、カンチレバー測定としてISO規格の9073-7に準拠する測定方法を用いることができる。剛軟度試験機(株式会社大栄科学精器製作所製、型式:CAN-1MCC)によって、上記の剛軟度を測定することができる。
【0023】
シート保持具19において、支持部表面17A、18Aから空隙部底部16Bの表面までの空隙部16の深さDは、突起部11の高さHを考慮して設定され、突起部11の高さHよりも深いことが好ましい。この場合の突起部11の高さHは予定される最大値を判断基準とすることが好ましい。
例えば、ローラ21にシート14を貼り付ける際に突起部11を空隙部底部16Bに接触させないようにする観点から、またシート14の撓みが多少生じた場合でも突起部11を空隙部底部16Bに接触させないようにする観点から、空隙部16の深さDは、突起部11の高さHの1.1倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2倍以上が更に好ましい。また、キットとしての携帯性の観点から、空隙部16の深さDは、突起部11の高さHの30倍以下が好ましく、20倍以下がより好ましく、10倍以下が更に好ましい。
【0024】
シート保持具19の空隙部16の幅WA(幅方向Xの長さであり、支持部17、18の間隔)は、シート14の突起領域12の幅(幅方向Xの長さ)に応じて設定される。
そのため、シート14の幅WS(幅方向Xの長さ)に対する、シート保持具19の空隙部16の幅WAの比(WA/WS)は次のようにすることが好ましい。すなわち、前記比(WA/WS)は、突起領域12における突起部11の配置領域を十分に確保する観点から、0.6以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。また、前記比(WA/WS)は、キット10内に収納されるシート14の撓みを抑える観点から、0.95以下が好ましく、0.92以下がより好ましい。なお、上記の比(WA/WS)は、シート14の幅WSに対する突起領域12の幅の比に相当する。
【0025】
また
図2に示すように、シート保持具19の空隙部16の幅WAは、ローラ21の軸方向の長さWRよりも短いことが好ましい。これにより、ローラ21の表面にシート14を貼り付ける際に、ローラ21が支持部17、18上を外れることなく転動させることができる。
ローラ21の軸方向の長さWRは、基本的にはシート14の幅WA以下であり、
図2示すように若干余白を設けて設定される、即ちWA未満であることが好ましい。余白を設けてローラ21の軸方向の長さWRを設定する場合、ローラ21の軸方向の長さWRに対する空隙部16の幅WAの比(WA/WR)は、規定領域を十分に取ることでローラとシートが簡単に貼り付けられる観点から、0.6以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。前記比(WA/WR)は、ローラの表面の略全域にシートを貼ることによって、穿刺時にWR幅の転動を意識することにより、使用者が所望の位置へ突起部を穿刺しやすくなる観点から、0.95以下が好ましく、0.92以下がより好ましい。
【0026】
シート保持具19は、支持部17、18それぞれの幅方向Xの外方にローラ21の転動方向を案内するガイド部23、24を有することが好ましい。ガイド部23、24は、支持部17、18に隣接して配されており、支持部17、18の高さ(空隙部16の深さDに相当)よりも高さHG分だけ高くされている。なお、支持部17、18、ガイド部23、24及び空隙部底部16Bは、一体に成形されたものであっても、別体に構成されたものであってもよい。特に、ガイド部23、24の材質は、ローラ21の円滑に転動するような、表面が滑らかな材質が好ましく、例えば、樹脂、金属、等が好ましい。ガイド部23、24はローラ21の転動方向を首尾よく導く観点から、該転動方向に延びるレール状であることが好ましい。レール状とする場合、ガイド部が連続して延びている場合のみならず、不連続のガイド部が複数並ぶことによって実質的にレール状にローラ21を導くものでも良い。
【0027】
ガイド部23、24間の間隔DG(幅方向Xの長さ)は、ローラ21の軸方向の長さWR以上であり、ローラ21がシート14の裏面14R上で安定した転動を可能にする幅であることが好ましい。例えば、間隔DGは、ローラ21の軸方向の長さWRよりも若干長く、即ちWR超とすることが好ましい。また、間隔DGは、シート14の幅WSよりも若干長いことが好ましい。この場合、例えば、ガイド部23、24間の間隔DGとローラ21の軸方向の長さWRとの差(DG-WR)を0mm以上1mm以下の範囲で設定することが好ましい。
ガイド部23、24間の間隔DG(幅方向Xの長さ)に対する空隙部16の幅WAの比(WA/DG)は、ローラとシートの貼付時に使用者の手元が狂ったとしても、結果として貼付を成功させやすい寸法を得る観点から、0.6以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。また、前記比(WA/DG)は、ローラ21の軸方向の長さWRの全域に亘るシートの貼付を容易に達成し易くかつ、寸法公差で転動しづらくなるのを防ぐ観点から、0.95以下が好ましく、0.92以下がより好ましい。
【0028】
また、例えばシート14の幅WSが20mm以下の場合、支持部17、18それぞれにおいて、シート14を支持する幅方向の長さ((DG-WA)/2)は、0.5mm以上5mm以下が好ましく、0.7mm以上3mm以下がより好ましく、1mm以上2mm以下が更に好ましい。なお、シート14の幅WSが20mmより長い場合には、安定的にシート14を載置するために、シート14を支持する幅方向の長さ((DG-WA)/2)は上記長さよりも長くすることが好ましい。例えば、支持部17、18それぞれは、シート幅の5%以上15%以下程度の長さにしてもよい。
【0029】
ガイド部23、24は、支持部表面17A、18Aからのその上方の高さHGが、ローラ21の転動を妨げない高さであることが好ましい。例えば、その高さHGは、ローラ半径]-[ローラ軸半径]以下が好ましく、[ローラ半径]-[ローラ軸半径]未満であることがより好ましい。
【0030】
上記のガイド部23、24を備えることにより、ローラ21をシート14の裏面14R上で転動させたとき、ローラ21が蛇行して転動するのを抑制することができる。すなわち、ガイド部23、24に沿ってローラ21を安定的に転動させることが可能となる。これにより、シート14の幅方向Xとローラ21の軸方向とを揃えて、ローラ表面21Sにシート14をより良好に貼り付けることができる。また、ローラ21が支持部17、18上を外れて、ローラ21の角などで誤ってシート14の突起領域12を空隙部16側へ強く押し込むようなことを回避することができる。その結果、ガイド部23、24に沿ってローラ21を転動させるだけで、ローラ表面21Sにシート14を正確にかつ円滑に張ることができる。
【0031】
シート14の裏面14Rとローラ21の表面21Sとの貼り付けは、剥離可能な粘着剤によって行うことが好ましく、該粘着剤の層(以下、粘着層という)がシート14の裏面14R又はローラ21の表面21Sのいずれかに配されていることが好ましい。
シート14を取り換えて、ローラ21を繰り返し使用できるようにする観点から、シート14の裏面14R、すなわち突起部11の配される面とは反対側の面に、粘着層(図示せず)が配されることが好ましい。
【0032】
キット10は、シート14に対して、表面14Sである空隙部16側とは反対側からローラ21を押し当てて、ローラ21とシート14とを貼り付けることが可能にされている。その際、突起部11が空隙部16内に空間20を残して空隙部底部16Bに接触しないようにされている。シート14の基底領域13は支持部17、18上に配置されており、上記の貼り付けに伴うローラ21の押し付けにより、シート14のずれや撓みが抑えられる。これにより、空間20が貼り付け段階においても確保されやすく、空隙部底部16Bに突起部11が接触することを回避できる。
そのため、突起部11の損傷を抑えて、ローラ表面21Sにシート14を適正に貼り付けることができる。また、シート14の張り付け時に突起部11が他の物体に触れることがないため、シート14の突起部11を清潔に衛生的に保つことができる。また、空間20が確保されることから、突起部11を保護する保護材を用いる必要がないため、コストを削減することができる。
【0033】
次に、ローラ型突起提供キットについて説明する。
ローラ型突起提供キットは、前述の突起部付きシートのローラ貼り付け用キット10と、ローラ21を転動自在に配したローラ転動器具31とを含む。
ローラ転動器具31は手で把持できる取手部32を有することが好ましい。手で把持できるとは、手で持って、ローラを転がす動作ができる形態や寸法であることを意味する。
【0034】
ローラ転動器具31としては、例えば
図3に示すものが挙げられる。
図3に示すローラ転動器具31は、ローラ21と、該ローラ21を転動自在にするローラ軸25を有することが好ましい。さらにローラ軸25の両端を支持するローラ支持部33A、33Bと、ローラ支持部33A、33Bを繋ぐ支持アーム34と、支持アーム34からローラ軸25に対して直角方向に延出する、手で把持可能な取手部32とを含むことが好ましい。ローラ21を転動自在にローラ軸25に取り付ける構成は、通常採用し得る種々の構成を適宜適用することができる。例えば、ローラ21とローラ軸25との間に軸受けを配してもよい。軸受けによって、ローラ軸25からローラ21が外れることなくローラ21が転動する。
【0035】
図3に示すローラ転動器具31は、取手部32をその延出方向に沿って、すなわちローラ軸25に対して直角方向に押すことで、ローラ21を転動させながら移動させることができる。
具体的には、前述のキット10において、ローラ転動器具31の取手部32を手で把持しながら、ローラ21をガイド部23、24(
図2参照)に沿って、シート14を介して支持部17、18上を転動させる。これによって、ローラ転動器具31Aを皮膚に当てて適用するのと同様の操作方法によって、ローラ21にシート14を貼り付けることができる。
【0036】
次に、ローラ型突起の製造方法について、
図2及び4を参照して、以下に説明する。
前述の、突起部付きシートのローラ貼り付け用キット10に前述のローラ21を押し当てて転がすことにより、ローラ21にシート14を張り付けてローラ型突起を製造する。具体的には次のようにして行う。
まず、
図2に示すように、突起部付きシートのローラ貼り付け用キット10において、シート保持具19内の支持部17、18上にシート14の基底領域13、13が配置され支持されている。
図4に示すように、シート14の長手方向Yがシート保持具19の長手方向Yに沿って収納されている。シート14の長さは、ローラ21の周長とすることが好ましい。
シート14の裏面14Rに対し、
図2に示すようにシート14の幅方向Xとローラ21の軸方向とを一致させて、
図4に示すように矢印B方向にローラ21を押し当てる。このとき、シート14の基底領域13、13は、シート保持具19の支持部17、18とローラ21とに挟持され、位置が固定される。
次いで、矢印B方向に押し当てたローラ21を、矢印C方向にガイド部23、24に沿って転がすことにより、ローラ表面21Sにシート14を貼り付ける。これにより、ローラ型突起が得られる。このとき、ローラ21の転動は、前述のローラ転動器具31が有する取手部32を手で把持して行うことができる。これにより、ローラ型突起の製造を、ローラ転動器具31を皮膚に当てて適用するのと同様の操作方法によって円滑に行うことができる。なお、図面では突起部11の幅、高さ等は説明の便宜上、若干誇張して示している。
【0037】
前述のようにして製造されたローラ型突起(シート14をローラ表面21Sに貼り付けたローラ転動器具31)は各種用途に用いることができる。例えば、美容液を突起部から経皮吸収させる美容用シートの貼付、ワクチンを突起部から皮膚内に接種させるワクチン接種用シートの貼付、医薬品を突起部から経皮吸収させる医療用シート(例えば、皮膚薬(例えば、湿疹、皮膚炎等の薬)、消炎鎮痛薬(例えば、湿布薬))の貼付、等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0039】
(実施例1)
ISO規格の9073-7に準拠するカンチレバー測定を行った。試験機には上述のものを用いた。試験片には、長さ250mm、幅25mm、厚さ100μmのPLAフィルムを用いて、上記試験機によって剛軟度を測定した。その後同フィルムを長さ30mm、幅56mmに切り出した。このフィルムを空隙部の幅WAが50mm、空隙部の深さDが1mmの凹状のシート保持具に設置した。設置した状態で30秒後の状態を確認し、シート保持具の床面に試験片の接触が見られなかったものを「適」、見られたものを「否」とした。
(実施例2)
シートの材質をPETフィルムとし、厚さを200μmとした以外、実施例1と同様にして測定を行った。
【0040】
(比較例1)
シートの材質を低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムとし、厚さを60μmとした以外、実施例1と同様にして測定を行った。
【0041】
上記測定の結果を下記表1に示す。
【0042】
【0043】
上記の結果が示す実施例1のシートは、カンチバレー測定値が70mmに達するシートであり、比較例1に比して十分な撓み強さを示していた。
また、撓み強さの適否は、凹状のシート保持具に設置した際のシートの状態を基準として判断され、シート保持具支持台の床面に試験片の接触が見られなかったものを「適」、見られたものを「否」とした。
実施例1及び2のシートは、皮膚への美容効果を目的とした突起部付きシートのローラ貼り付け用キットにおいて撓みが生じ難く衛生的に保つことができ、突起部の損傷を抑えたローラへの貼り付けが可能となることが分かった。
【符号の説明】
【0044】
10 突起部付きシートのローラ貼り付け用キット
11 突起部
12 突起領域
13 基底領域
14 シート
14A、14B シートの幅方向の端部
14S シートの表面
14R シートの裏面
15 基材
16 空隙部
16B 空隙部底部
17、18 支持部
17A、18A 支持部表面
19 シート保持具
20 空間
21 ローラ
21S ローラ表面
23、24 ガイド部
25、35 ローラ軸
31、31A ローラ転動器具
32 取手部
33A、33B ローラ支持部
34 支持アーム
D 空隙部の深さ
DG ガイド部間の間隔
H 突起部高さ
HG 支持部表面からのガイド部上面の高さ
WA 空隙部の幅
WR ローラの軸方向の長さ
WS シートの幅