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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】能動型騒音制御システム
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20241209BHJP
   H04R 3/02 20060101ALI20241209BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G10K11/178 120
H04R3/02
B60R11/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021038390
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138483
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】田地 良輔
【審査官】齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/181758(WO,A1)
【文献】特表2012-533091(JP,A)
【文献】特開2010-163054(JP,A)
【文献】特開2020-012917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
H04R 3/02
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音を低減する能動型騒音制御システムであって、
第1のエリアに配置されたマイクである第1エリアマイクと、
第2のエリアに配置されたスピーカである第2エリアスピーカと、
第2のエリアに配置されたマイクである第2エリアマイクと、
前記第1エリアマイクの出力を入力とするエコーキャンセル用適応フィルタと、
前記第2エリアマイクの出力と前記エコーキャンセル用適応フィルタの出力を加算するエコーキャンセル用加算器と、
騒音を表す騒音信号を入力とする、前記エコーキャンセル用適応フィルタとフィルタ係数を共用するよう構成された二次経路再現フィルタと、
前記騒音信号を入力とする騒音キャンセル用適応フィルタと、
前記第1エリアマイクの出力と前記騒音キャンセル用適応フィルタの出力を加算して前記第2エリアスピーカに出力する騒音キャンセル用加算器とを備え、
前記エコーキャンセル用適応フィルタは、前記エコーキャンセル用加算器の出力をエラーとして、当該エラーが最小となるようにフィルタ係数を更新し、
前記騒音キャンセル用適応フィルタは、前記第2エリアマイクの出力をエラーとし、前記二次経路再現フィルタの出力を参照信号とするFiltered-X LMSアルゴリズムによって、フィルタ係数を更新し、
当該能動型騒音制御システムは、
前記騒音信号を入力とする補助フィルタと、
前記補助フィルタの出力を加算することにより、前記騒音キャンセル用適応フィルタがエラーとして用いる前記第2エリアマイクの出力を補正するエラー補正用加算器と、
補助フィルタ更新手段とを有し、
前記補助フィルタは、
P(z)を騒音源から第2エリアマイクまでの伝達関数、V(z)を騒音源から第2エリアのユーザの音の聴取位置までの伝達関数、Sv(z)を第2スピーカから第2エリアのユーザの音の聴取位置までの伝達関数として、
前記騒音信号を入力とする伝達関数がP(z)の第1フィルタと、
前記騒音信号を入力とする伝達関数がV(z)/Sv(z)の第2フィルタと、
前記第2フィルタの出力を入力とする、フィルタ係数が可変な第3フィルタと、
前記第3フィルタの出力から前記第1フィルタの出力を減算して、前記補助フィルタの出力を生成する加算器とを備え、
前記補助フィルタ更新手段は、所定のタイミングで、前記第3フィルタのフィルタ係数を、当該フィルタ係数が前記エコーキャンセル用適応フィルタのフィルタ係数と同等となるように更新することを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項2】
騒音を低減する能動型騒音制御システムであって、
第1のエリアに配置されたマイクである第1エリアマイクと、
第2のエリアに配置されたスピーカである第2エリアスピーカと、
第2のエリアに配置されたマイクである第2エリアマイクと、
前記第1エリアマイクの出力を入力とするエコーキャンセル用適応フィルタと、
前記第2エリアマイクの出力と前記エコーキャンセル用適応フィルタの出力を加算するエコーキャンセル用加算器と、
騒音を表す騒音信号を入力とする、フィルタ係数が可変な二次経路再現フィルタと、
前記騒音信号を入力とする騒音キャンセル用適応フィルタと、
前記第1エリアマイクの出力と前記騒音キャンセル用適応フィルタの出力を加算して前記第2エリアスピーカに出力する騒音キャンセル用加算器と、
前記二次経路再現フィルタのフィルタ係数を更新する二次経路再現フィルタ更新手段とを備え、
前記エコーキャンセル用適応フィルタは、前記エコーキャンセル用加算器の出力をエラーとして、当該エラーが最小となるようにフィルタ係数を更新し、
前記二次経路再現フィルタ更新手段は、所定のタイミングで、二次経路再現フィルタのフィルタ係数を、当該フィルタ係数が前記エコーキャンセル用適応フィルタのフィルタ係数と同等となるように更新し、
前記騒音キャンセル用適応フィルタは、前記第2エリアマイクの出力をエラーとし、前記二次経路再現フィルタの出力を参照信号とするFiltered-X LMSアルゴリズムによって、フィルタ係数を更新し、
当該能動型騒音制御システムは、
前記騒音信号を入力とする補助フィルタと、
前記補助フィルタの出力を加算することにより、前記騒音キャンセル用適応フィルタがエラーとして用いる前記第2エリアマイクの出力を補正するエラー補正用加算器と、
補助フィルタ更新手段とを有し、
前記補助フィルタは、
P(z)を騒音源から第2エリアマイクまでの伝達関数、V(z)を騒音源から第2エリアのユーザの音の聴取位置までの伝達関数、Sv(z)を第2スピーカから第2エリアのユーザの音の聴取位置までの伝達関数として、
前記騒音信号を入力とする伝達関数がP(z)の第1フィルタと、
前記騒音信号を入力とする伝達関数がV(z)/Sv(z)の第2フィルタと、
前記第2フィルタの出力を入力とする、フィルタ係数が可変な第3フィルタと、
前記第3フィルタの出力から前記第1フィルタの出力を減算して、前記補助フィルタの出力を生成する加算器とを備え、
前記補助フィルタ更新手段は、所定のタイミングで、前記第3フィルタのフィルタ係数を、当該フィルタ係数が前記エコーキャンセル用適応フィルタのフィルタ係数と同等となるように更新することを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の能動型騒音制御システムであって、
前記エコーキャンセル用適応フィルタは、前記第1エリアマイクの出力を参照信号、前記エコーキャンセル用加算器の出力をエラーとするLMSアルゴリズムによって、フィルタ係数を更新することを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の能動型騒音制御システムであって、
前記エコーキャンセル用加算器の出力が入力する、第1のエリアに配置されたスピーカである第1エリアスピーカを備えていることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項5】
請求項1、2または3記載の能動型騒音制御システムであって、
音源装置と、
前記音源装置の出力が入力する、第1のエリアに配置されたスピーカである第1エリアスピーカとを備え、
前記騒音信号は、前記音源装置の出力であることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項6】
騒音を低減する能動型騒音制御システムであって、
第1のエリアに配置されたマイクである第1エリアマイクと、
第2のエリアに配置されたスピーカである第2エリアスピーカと、
第2のエリアに配置されたマイクである第2エリアマイクと、
前記第1エリアマイクの出力を入力とするエコーキャンセル用適応フィルタと、
前記第2エリアマイクの出力と前記エコーキャンセル用適応フィルタの出力を加算するエコーキャンセル用加算器と、
騒音を表す騒音信号を入力とする、前記エコーキャンセル用適応フィルタとフィルタ係数を共用するよう構成された二次経路再現フィルタと、
前記騒音信号を入力とする騒音キャンセル用適応フィルタと、
前記第1エリアマイクの出力と前記騒音キャンセル用適応フィルタの出力を加算して前記第2エリアスピーカに出力する騒音キャンセル用加算器とを備え、
前記エコーキャンセル用適応フィルタは、前記エコーキャンセル用加算器の出力をエラーとして、当該エラーが最小となるようにフィルタ係数を更新し、
前記騒音キャンセル用適応フィルタは、前記第2エリアマイクの出力をエラーとし、前記二次経路再現フィルタの出力を参照信号とするFiltered-X LMSアルゴリズムによって、フィルタ係数を更新し、
当該能動型騒音制御システムは、
第1のエリアに配置されたスピーカである第1エリアスピーカと、
音源装置と、
前記エコーキャンセル用加算器の出力に前記音源装置の出力を加算し、前記第1エリアスピーカに出力する音源装置用加算器とを備え、
前記騒音信号は、前記音源装置の出力であることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項7】
騒音を低減する能動型騒音制御システムであって、
第1のエリアに配置されたマイクである第1エリアマイクと、
第2のエリアに配置されたスピーカである第2エリアスピーカと、
第2のエリアに配置されたマイクである第2エリアマイクと、
前記第1エリアマイクの出力を入力とするエコーキャンセル用適応フィルタと、
前記第2エリアマイクの出力と前記エコーキャンセル用適応フィルタの出力を加算するエコーキャンセル用加算器と、
騒音を表す騒音信号を入力とする、フィルタ係数が可変な二次経路再現フィルタと、
前記騒音信号を入力とする騒音キャンセル用適応フィルタと、
前記第1エリアマイクの出力と前記騒音キャンセル用適応フィルタの出力を加算して前記第2エリアスピーカに出力する騒音キャンセル用加算器と、
前記二次経路再現フィルタのフィルタ係数を更新する二次経路再現フィルタ更新手段とを備え、
前記エコーキャンセル用適応フィルタは、前記エコーキャンセル用加算器の出力をエラーとして、当該エラーが最小となるようにフィルタ係数を更新し、
前記二次経路再現フィルタ更新手段は、所定のタイミングで、二次経路再現フィルタのフィルタ係数を、当該フィルタ係数が前記エコーキャンセル用適応フィルタのフィルタ係数と同等となるように更新し、
前記騒音キャンセル用適応フィルタは、前記第2エリアマイクの出力をエラーとし、前記二次経路再現フィルタの出力を参照信号とするFiltered-X LMSアルゴリズムによって、フィルタ係数を更新し、
当該能動型騒音制御システムは、
第1のエリアに配置されたスピーカである第1エリアスピーカと、
音源装置と、
前記エコーキャンセル用加算器の出力に前記音源装置の出力を加算し、前記第1エリアスピーカに出力する音源装置用加算器とを備え、
前記騒音信号は、前記音源装置の出力であることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項8】
自動車に搭載された、請求項1、2、3、4、5、6または7記載の能動型騒音制御システムであって、
前記第1のエリアと前記第2のエリアは、前記自動車の車室内の異なるエリアであることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、騒音を打ち消す騒音キャンセル音を放射することにより騒音を低減する能動型騒音制御(ANC;Active Noise Control)の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
能動型騒音制御の技術としては、図5aに示す能動型騒音制御システムのように、第1エリアのユーザ用の音源装置51から第1エリアのユーザ用のスピーカ52に出力されている音楽などの音声を、第2のエリアのユーザにとっての騒音として、適応フィルタ53を用いて生成した騒音キャンセル音を第2エリアのスピーカ54から放射する能動型騒音制御システムが知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
この能動型騒音制御システムでは、第2エリアに配置したエラーマイク55と、伝達関数として第2エリアのスピーカ54からエラーマイク55までの伝達関数C(z)として推定される伝達関数C^(z)を設定した、音源装置51の出力を入力とする二次経路再現フィルタ56を用いる。また、適応フィルタ53において、係数更新部532において、エラーマイク55の出力をエラーとし、二次経路再現フィルタ56の出力を参照信号としてLMSアルゴリズムを行うFiltered-X LMSアルゴリズムによって、音源装置51の出力から騒音キャンセル音を生成する可変フィルタ531のフィルタ係数を、エラーが最小となるように更新する。
【0004】
また、このような能動型騒音制御システムにおいて、エラーマイク55と、第2エリアのユーザの耳の位置との差を補正するために、図5bに示すように、音源装置51の出力を入力とする補助フィルタ57を設け、エラーマイク55の出力するエラーを、補助フィルタ57の出力を減算することにより補正するようにした能動型騒音制御システムも知られている(たとえば、特許文献2)。
【0005】
ここで、この能動型騒音制御システムにおいて、補助フィルタ57には、伝達関数H(z)として、
H(z)=P(z)-S(z)V(z)/Sv(z)
が予め設定される。
【0006】
ここで、P(z)は第1エリアのユーザ用のスピーカ52からエラーマイク55までの伝達関数、V(z)は第1エリアのユーザ用のスピーカ52から第2エリアのユーザの耳の位置までの伝達関数、Sv(z)は第2エリアのユーザ用のスピーカ54から第2エリアのユーザの耳の位置までの伝達関数である。また、S(z)は、S(z)=C(z)であり、第2エリアのユーザ用のスピーカ54からエラーマイク55までの伝達関数である。
【0007】
また、図6に示すように、第1エリアのマイク61でピックアップしたユーザの音声を第2エリアのスピーカ63から出力し、第2エリアのマイク64でピックアップしたユーザの音声を第1エリアのスピーカ62から出力することにより、第1エリアのユーザと第2エリアのユーザの会話を支援するシステムにおいて、適応フィルタ65を用いてエコーをキャンセルするキャンセル音を生成し、キャンセル音を第2エリアのマイク64の出力に加算器66で加算することにより、第2エリアのスピーカ63から第2エリアのマイク64にまわりこんだエコーをキャンセルするエコーキャンセルシステムも知られている
(たとえば、特許文献3)。
【0008】
このエコーキャンセルシステムでは、適応フィルタ65において、第1エリアのマイク61の出力からキャンセル音を生成する可変フィルタ651のフィルタ係数を、係数更新部652によって、加算器66の出力をエラーとし、第1エリアのマイク61の出力を参照信号として、LMSアルゴリズム等によりエラーが最小となるように更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-163054号公報
【文献】特開2018- 72770号公報
【文献】特開2010- 16564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図5a、bに示した能動型騒音制御システムによれば、環境やその他の条件の変動により、騒音キャンセル音を出力する第2エリアのスピーカ54からエラーマイク55までの実際の伝達関数C(z)が、二次経路再現フィルタ56に設定した伝達関数C^(z)から変化してしまうと、良好に騒音をキャンセルできなくなってしまうという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、騒音を打ち消す騒音キャンセル音を出力するスピーカから、キャンセルし残った騒音を検出するマイクまでの伝達関数の変化に適応した良好な騒音のキャンセルを行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題達成のために、本発明は、騒音を低減する能動型騒音制御システムに、第1のエリアに配置されたマイクである第1エリアマイクと、第2のエリアに配置されたスピーカである第2エリアスピーカと、第2のエリアに配置されたマイクである第2エリアマイクと、前記第1エリアマイクの出力を入力とするエコーキャンセル用適応フィルタと、前記第2エリアマイクの出力と前記エコーキャンセル用適応フィルタの出力を加算するエコーキャンセル用加算器と、騒音を表す騒音信号を入力とする、前記エコーキャンセル用適応フィルタとフィルタ係数を共用するよう構成された二次経路再現フィルタと、前記騒音信号を入力とする騒音キャンセル用適応フィルタと、前記第1エリアマイクの出力と前記騒音キャンセル用適応フィルタの出力を加算して前記第2エリアスピーカに出力する騒音キャンセル用加算器とを備えたものである。ここで、前記エコーキャンセル用適応フィルタは、前記エコーキャンセル用加算器の出力をエラーとして、当該エラーが最小となるようにフィルタ係数を更新し、前記騒音キャンセル用適応フィルタは、前記第2エリアマイクの出力をエラーとし、前記二次経路再現フィルタの出力を参照信号とするFiltered-X LMSアルゴリズムによって、フィルタ係数を更新する。
【0013】
また、前記課題達成のために、本発明は、騒音を低減する能動型騒音制御システムに、第1のエリアに配置されたマイクである第1エリアマイクと、第2のエリアに配置されたスピーカである第2エリアスピーカと、第2のエリアに配置されたマイクである第2エリアマイクと、前記第1エリアマイクの出力を入力とするエコーキャンセル用適応フィルタと、前記第2エリアマイクの出力と前記エコーキャンセル用適応フィルタの出力を加算するエコーキャンセル用加算器と、騒音を表す騒音信号を入力とする、フィルタ係数が可変な二次経路再現フィルタと、前記騒音信号を入力とする騒音キャンセル用適応フィルタと、前記第1エリアマイクの出力と前記騒音キャンセル用適応フィルタの出力を加算して前記第2エリアスピーカに出力する騒音キャンセル用加算器と、前記二次経路再現フィルタのフィルタ係数を更新する二次経路再現フィルタ更新手段とを備えたものである。ここで、前記エコーキャンセル用適応フィルタは、前記エコーキャンセル用加算器の出力をエラーとして、当該エラーが最小となるようにフィルタ係数を更新し、前記二次経路再現フィルタ更新手段は、所定のタイミングで、二次経路再現フィルタのフィルタ係数を、当該フィルタ係数が前記エコーキャンセル用適応フィルタのフィルタ係数と同等となるように更新する。そして、前記騒音キャンセル用適応フィルタは、前記第2エリアマイクの出力をエラーとし、前記二次経路再現フィルタの出力を参照信号とするFiltered-X LMSアルゴリズムによって、フィルタ係数を更新する。
【0014】
これらの能動型騒音制御システムによれば、エコーキャンセル用適応フィルタのフィルタ係数が、第2エリアスピーカから第2エリアマイクまでの伝達関数を表すフィルタ係数に収束することを利用して、騒音キャンセル用適応フィルタにおいてFiltered-X LMSアルゴリズムに用いる参照信号を生成する二次経路再現フィルタのフィルタ係数を第2エリアスピーカから第2エリアマイクまでの伝達関数の変化に追従させることができ、この結果、当該変化に適応した良好な騒音のキャンセルを行うことができる。
【0015】
ここで、これらの能動型騒音制御システムに、前記騒音信号を入力とする補助フィルタと、前記補助フィルタの出力を加算することにより、前記騒音キャンセル用適応フィルタがエラーとして用いる前記第2エリアマイクの出力を補正するエラー補正用加算器と、補助フィルタ更新手段とを設けてもよい。前記補助フィルタは、P(z)を騒音源から第2エリアマイクまでの伝達関数、V(z)を騒音源から第2エリアのユーザの音の聴取位置までの伝達関数、Sv(z)を第2スピーカから第2エリアのユーザの音の聴取位置までの伝達関数として、前記騒音信号を入力とする伝達関数がP(z)の第1フィルタと、前記騒音信号を入力とする伝達関数がV(z)/Sv(z)の第2フィルタと、前記第2フィルタの出力を入力とする、フィルタ係数が可変な第3フィルタと、前記第3フィルタの出力から前記第1フィルタの出力を減算して、前記補助フィルタの出力を生成する加算器とを備えている。また、前記補助フィルタ更新手段は、所定のタイミングで、前記第3フィルタのフィルタ係数を、当該フィルタ係数が前記エコーキャンセル用適応フィルタのフィルタ係数と同等となるように更新する。
【0016】
このように能動型騒音制御システムを構成することにより、第2エリアマイクと、第2エリアのユーザの音の聴取位置の差を補正することができると共に、当該補正に用いる補助フィルタの伝達関数を、第2エリアスピーカから第2エリアマイクまでの伝達関数の変化に追従させることができる。
【0017】
また、これらの能動型騒音制御システムは、前記エコーキャンセル用適応フィルタにおいて、前記第1エリアマイクの出力を参照信号、前記エコーキャンセル用加算器の出力をエラーとするLMSアルゴリズムによって、フィルタ係数を更新するように構成することが好ましい。
【0018】
また、以上の能動型騒音制御システムに、前記エコーキャンセル用加算器の出力が入力する、第1のエリアに配置されたスピーカである第1エリアスピーカを備え、第2エリアのユーザの発話の第2エリアのユーザの聞き取りも支援するようにしてもよい。
【0019】
ていることを特徴とする能動型騒音制御システム。
または、以上の能動型騒音制御システムに、音源装置と、前記音源装置の出力が入力する、第1のエリアに配置されたスピーカである第1エリアスピーカとを備え、前記騒音信号を、前記音源装置の出力としてもよい。
【0020】
または、以上の能動型騒音制御システムに、第1のエリアに配置されたスピーカである第1エリアスピーカと、音源装置と、前記エコーキャンセル用加算器の出力に前記音源装置の出力を加算し、前記第1エリアスピーカに出力する音源装置用加算器とを備え、前記騒音信号は、前記音源装置の出力としてもよい。
【0021】
また、以上の能動型騒音制御システムを自動車に搭載したシステムとし、前記第1のエリアと前記第2のエリアは、前記自動車の車室内の異なるエリアとしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、騒音を打ち消す騒音キャンセル音を出力するスピーカから、キャンセルし残った騒音を検出するマイクまでの伝達関数の変化に適応した良好な騒音のキャンセルを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
図5】公知の能動型騒音制御システムの構成を示す図である。
図6】公知のエコーキャンセルシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、自動車に搭載される車載システムへの適用を例にとり説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。
図1に、本第1実施形態に係る車載システムの構成を示す。
図示するように、車載システムは、車室内の第1エリアのユーザ用のスピーカである第1スピーカ11、第1エリアのユーザ用のマイクである第1マイク12、第1エリアのユーザ用の音源装置13、車室内の第2エリアのユーザ用のスピーカである第2スピーカ21、第2エリアのユーザ用のマイクである第2マイク22、以上の各部が接続された信号処理装置3を備えている。
【0025】
信号処理装置3は、第1エリアの第1マイク12でピックアップした第1エリアのユーザの音声を第2エリアの第2スピーカ21に出力し、第2エリアの第2マイク22でピックアップした第2エリアのユーザの音声を、第2スピーカ21から第2マイク22に回りこんだ第1エリアのユーザの音声のエコーをキャンセルした上で第1エリアの第1スピーカ11に出力することにより、第1エリアのユーザと第2エリアのユーザとの間の会話によるコミュニケーションを支援する。
【0026】
また、信号処理装置3は、音源装置13の出力音を第1エリアの第1スピーカ11に出力すると共に、第1スピーカ11から出力された音源装置13の出力音を、第2エリアのユーザの位置でキャンセルする騒音キャンセル音を、第2エリアの第2スピーカ21から出力することにより、第2エリアのユーザが、第1エリアのユーザが聴いている音源装置13の出力音によって煩わされることを排除する。
【0027】
第1エリアは、たとえば、図1bに示すように、自動車の運転席のエリアであり、第1スピーカ11や第1マイク12は第1エリアに配置される。また、第2エリアは、自動車の運転席の後ろの席のエリアであり、第2スピーカ21や第2マイク22は第2エリアに配置される。
【0028】
次に、図2に信号処理装置3の構成を示す。
図示するように信号処理装置3は、前処理部31、騒音キャンセル用適応フィルタ32、エコーキャンセル用適応フィルタ33、第1加算器34、第2加算器35、第3加算器36を備えている。
【0029】
第1マイク12の出力は、前処理部31において、過大入力とならないようにノイズ抑制や振幅抑制を行う前処理が施された上で、第1加算器34に送られ、第1加算器34で、騒音キャンセル用適応フィルタ32が出力する騒音キャンセル音と加算され、第2スピーカ21から出力される。
【0030】
第2マイク22の出力は、第2加算器35に送られ、第2加算器35で、エコーキャンセル用適応フィルタ33が出力するエコーキャンセル音が減算された上で第3加算器36に送られ、第3加算器36で音源装置13の出力と加算され第1スピーカ11に出力される。
【0031】
エコーキャンセル用適応フィルタ33は、エコーキャンセル用可変フィルタ331と、エコーキャンセル用係数更新部332を備えている。エコーキャンセル用可変フィルタ331は、信号処理系統を2系統備えた2チャンネルの可変フィルタであり、各チャネルには、エコーキャンセル用係数更新部332によって同じフィルタ係数が設定される。すなわち、エコーキャンセル用可変フィルタ331は、エコーキャンセル用係数更新部332によって同じフィルタ係数が設定される二つの可変フィルタと等価である。
【0032】
エコーキャンセル用可変フィルタ331の第1のチャネルは、前処理部31で前処理が施された第1マイク12の出力を入力とし、第1のチャネルの出力はエコーキャンセル音として、第2加算器35に出力される。また、エコーキャンセル用可変フィルタ331の第2のチャネルは、音源装置13の出力を入力として、第2のチャネルの出力は、参照信号として騒音キャンセル用適応フィルタ32に送られる。
【0033】
エコーキャンセル用係数更新部332は、第2加算器35の出力をエラーとして、前処理部31で前処理が施された第1マイク12の出力を参照信号として、LMSアルゴリズム等によりエラーが最小となるようにエコーキャンセル用可変フィルタ331の第1のチャネルのフィルタ係数を更新する。また、第1のチャネルのフィルタ係数は第2のチャネルのフィルタ係数として共用され、第1のチャネルのフィルタ係数の更新に伴って、第2のチャネルのフィルタ係数も第1のチャネルのフィルタ係数と等しくなるように更新される。
【0034】
この結果、エコーキャンセル用可変フィルタ331の第1のチャネルが出力するエコーキャンセル音は、第2加算器35の減算によって、第2マイク22の出力に含まれる第1マイク12の出力音成分がキャンセルされる音となる。
【0035】
ここで、第2スピーカ21から第2マイク22までの経路である2次経路の伝達関数をC(z)、エコーキャンセル用可変フィルタ331の第1のチャネルと第2のチャネルの伝達関数をQ(z)、前処理部31で前処理が施された第1マイク12の出力をM(z)とすると、第2加算器35からエコーキャンセル用係数更新部332に出力されるエラーeE(z)は、
eE(z)=M(z)C(z)-M(z)Q(z)
と表されるので、
エコーキャンセル用係数更新部332の動作により、eE(z)=0となるようにコーキャンセル用可変フィルタの第1のチャネルと第2のチャネルのフィルタ係数が収束したとき。
【0036】
eE(z)=M(z)C(z)-M(z)Q(z)=0
Q(z)=C(z)
となる。
【0037】
次に、騒音キャンセル用適応フィルタ32は、騒音キャンセル用可変フィルタ321と、騒音キャンセル用係数更新部322を備えている。
騒音キャンセル用可変フィルタ321は、音源装置13の出力を入力とし、その出力は騒音キャンセル音として第1加算器34に出力される。
騒音キャンセル用係数更新部322には、第2マイク22の出力がエラーとして、エコーキャンセル用可変フィルタ331の第2のチャネルの出力が参照信号として入力する。
ここで、上述のように、エコーキャンセル用係数更新部332の動作により、エコーキャンセル用可変フィルタ331の第2のチャネルのフィルタ係数は、Q(z)=C(z)となるフィルタ係数に制御される。
【0038】
したがって、エコーキャンセル用可変フィルタ331の第2のチャネルから騒音キャンセル用係数更新部322に出力される参照信号は、音源装置13の出力に、第2スピーカ21から第2マイク22までの伝達関数C(z)を畳み込んだ信号となり、この参照信号は、Filtered-X LMSアルゴリズムの参照信号(濾波参照信号)として用いることができる。すなわち、エコーキャンセル用可変フィルタ331の第2のチャネルは、Filtered-X LMSアルゴリズムで用いられる、伝達関数C^(z)が設定された二次経路再現フィルタとして機能する。
【0039】
そこで、エコーキャンセル用係数更新部332において、エコーキャンセル用可変フィルタ331の第2のチャネルの出力を参照信号として用いてエラーが最小となるようにLMSアルゴリズムを行うことにより、Filtered-X LMSアルゴリズムによる騒音キャンセル用可変フィルタ321のフィルタ係数の更新を行う。
【0040】
より具体的には、エコーキャンセル用係数更新部332は、Filtered-X LMSアルゴリズムに従って、下式における、w(n)を騒音キャンセル用可変フィルタ321のフィルタ係数、μをステップサイズパラメータ、e(n)を第2マイク22の出力、x(n)を音源装置13の出力、r(n)をエコーキャンセル用可変フィルタ331の第2のチャネルから出力される参照信号として、
w(n+1)=w(n)+μe(n)r(n)
により、騒音キャンセル用可変フィルタ321のフィルタ係数w(n)の更新を行う。
【0041】
この結果、騒音キャンセル用可変フィルタ321が出力し、第1加算器34を通って第2スピーカ21から出力される騒音キャンセル音は、第2エリアの第2マイク22が配置された領域で、第1エリアの第1スピーカ11から出力される音源装置13の出力音をキャンセルする音となる。
【0042】
また、エコーキャンセル用可変フィルタ331の第2のチャネルの伝達関数Q(z)=C(z)は、エコーキャンセル用係数更新部332の動作によって、第2スピーカ21から第2マイク22までの伝達関数C(z)の変化に追従するように更新されるので、先に図5aに示したように伝達関数C^(z)を固定的に設定した二次経路再現フィルタ56を用いる場合と異なり、伝達関数C(z)の変化が生じた場合でも、当該変化に追従した良好な音源装置13の出力音のキャンセルを行うことができる。
【0043】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本第2実施形態は、信号処理装置3の構成の一部のみが第1実施形態と異なる。
図3に、第2実施形態に係る信号処理装置3の構成を示す。
図示するように、第2実施形態に係る信号処理装置3が第1実施形態と異なる点は、エコーキャンセル用可変フィルタ331を、第1実施形態のエコーキャンセル用可変フィルタ331の第1のチャネルに相当する、単一のチャネルの可変フィルタとした点と、二次経路再現フィルタ311を第1実施形態のエコーキャンセル用可変フィルタ331の第2のチャネルの代替として設けた点と、二次経路再現フィルタ311のフィルタ係数を設定する更新制御部312を設けた点である。
【0044】
二次経路再現フィルタ311は、第1実施形態のエコーキャンセル用可変フィルタ331の第2のチャネルと同様に、音源装置13の出力を入力とし、その出力は参照信号として騒音キャンセル用適応フィルタ32に送られる。
【0045】
更新制御部312は、定期的にエコーキャンセル用可変フィルタ331のフィルタ係数を読み出し、過去所定期間中のエコーキャンセル用可変フィルタ331のフィルタ係数の平均を求め、平均と前回設定した二次経路再現フィルタ311のフィルタ係数との間に所定レベル以上の差が発生したならば、算出したフィルタ係数の平均まで、二次経路再現フィルタ311のフィルタ係数をスムーズに変化させる。
【0046】
このような動作の結果、二次経路再現フィルタ311の伝達関数C^(z)は、第1実施形態のエコーキャンセル用可変フィルタ331の第2のチャネルと同様に、エコーキャンセル用係数更新部332の動作によって制御されたエコーキャンセル用可変フィルタ331の伝達関数Q(z)=C(z)に追従するので、本第2実施形態によっても、第2スピーカ21から第2マイク22までの伝達関数C(z)の変化に適応した良好な音源装置13の出力音のキャンセルを行うことができる。
【0047】
以上、本発明の第2実施形態について説明した。
次に、第3実施形態について説明する。
図4に、第2実施形態に係る信号処理装置3の構成を示す。
図示するように、第3実施形態に係る信号処理装置3が第1実施形態と異なる点は、補助フィルタ321と、第4加算器322と、更新処理部323を設けた点である。
補助フィルタ321は、第2マイク22と、第2エリアのユーザの耳の位置との差を補正するために設けたものであり、第4加算器322は、第2マイク22の出力に補助フィルタ321の出力を加算した信号を、騒音キャンセル用係数更新部322に出力する。そして、騒音キャンセル用係数更新部322は、第4加算器322の出力をエラーとして、エコーキャンセル用可変フィルタ331の第2のチャネルの出力を参照信号として用いてエラーが最小となるようにLMSアルゴリズムを行うことにより、Filtered-X LMSアルゴリズムによる騒音キャンセル用可変フィルタ321のフィルタ係数の更新を行う。
【0048】
補助フィルタ321の伝達関数H(z)は、図5bで示した能動型騒音制御システムの補助フィルタ57の伝達関数の正負を、第4加算器322で図5bの減算に代えて加算を行う関係上、反転したものであり、
H(z)=S(z)V(z)/Sv(z)-P(z)である。
【0049】
P(z)は第1スピーカ11から第2マイク22までの伝達関数、S(z)は第2スピーカ54から第2マイク22までの伝達関数、V(z)は第1スピーカ11から第2エリアのユーザの耳の位置までの伝達関数、Sv(z)は第2スピーカ54から第2エリアのユーザの耳の位置までの伝達関数である。したがって、S(z)=C(z)である。
【0050】
補助フィルタ321は、伝達関数がP(z)の第1フィルタ3211、伝達関数がV(z)/Sv(z)の第2フィルタ3212、伝達関数がS(z)の第3フィルタ3213、第5加算器3214よりなり、第3フィルタ3213のフィルタ係数は、更新処理部323から設定することができる。
【0051】
第1フィルタ3211と第2フィルタ3212には音源装置13の出力を入力し、第1フィルタ3211の出力は第5加算器3214に送られ、第2フィルタ3212の出力は第3フィルタ3213に入力し、第3フィルタ3213の出力は第5加算器3214に送られる。
【0052】
そして、第5加算器3214は、第3フィルタ3213の出力から第1フィルタ3211の出力を減算し、補助フィルタ321の出力として第4加算器322に送る。
更新処理部323は、定期的にエコーキャンセル用可変フィルタ331のいずれかのチャネルのフィルタ係数を読み出し、過去所定期間中に読み出したフィルタ係数の平均を求め、平均と前回設定した第3フィルタ3213のフィルタ係数との間に所定レベル以上の差が発生したならば、算出したフィルタ係数の平均まで、第3フィルタ3213のフィルタ係数をスムーズに変化させる。
【0053】
このような動作の結果、本来S(z)=C(z)であるべき第3フィルタ3213の伝達関数S(z)を、エコーキャンセル用係数更新部332の動作によって制御されたエコーキャンセル用可変フィルタ331の各チャネルの伝達関数Q(z)=C(z)に追従させることができ、第2スピーカ21から第2マイク22までの伝達関数C(z)の変化に適応した良好な音源装置13の出力音のキャンセルを行うことができる。
【0054】
以上、第3実施形態について説明した。
ここで、本第3実施形態で示した、補助フィルタ321を備え、第3フィルタ3213のフィルタ係数を更新する構成は、図3に示した第2実施形態に係る信号処理装置3に同様に付加してもよい。
【0055】
ところで、以上の各実施形態は、以上で示した信号処理装置3の第2スピーカ21から第2マイク22に回りこんだエコーをキャンセルする構成と、第1エリアと第2エリアについて対称な構成を信号処理装置3に付加することにより、第1エリアの第1マイク12でピックアップした音声を、第1スピーカ11から第1マイク12に回りこんだエコーをキャンセルした上で第2スピーカ21に出力するようにしてもよい。
【0056】
また、第2エリアのユーザ用の第2音源装置を設け、信号処理装置3において、以上で示した信号処理装置3の音源装置13の出力音を第1スピーカ11に出力すると共に、第1スピーカ11から出力された音源装置13の出力音を、第2エリアのユーザの位置でキャンセルする騒音キャンセル音を、第2スピーカ21から出力する構成と、第1エリアと第2エリアについて対称な構成を信号処理装置3に付加することにより、第2音源装置の出力音を第2スピーカ21に出力すると共に、第2スピーカ21から出力された音源装置13の出力音を、第1エリアのユーザの位置でキャンセルする騒音キャンセル音を、第1スピーカ11から出力するようにしてもよい。
【0057】
また、以上の各実施形態では、エリア数を2としたが、本実施形態は3以上のエリアに対応するように拡張して実施してよい。
また、以上では、車載システムへの適用を例にとり説明したが、以上の各実施形態は各エリアが自動車外である場合についても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
3…信号処理装置、11…第1スピーカ、12…第1マイク、13…音源装置、21…第2スピーカ、22…第2マイク、31…前処理部、32…騒音キャンセル用適応フィルタ、33…エコーキャンセル用適応フィルタ、34…第1加算器、35…第2加算器、36…第3加算器、311…二次経路再現フィルタ、312…更新制御部、321…騒音キャンセル用可変フィルタ、321…補助フィルタ、322…騒音キャンセル用係数更新部、322…第4加算器、323…更新処理部、331…エコーキャンセル用可変フィルタ、332…エコーキャンセル用係数更新部、3211…第1フィルタ、3212…第2フィルタ、3213…第3フィルタ、3214…第5加算器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6