(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】能動型騒音制御システム
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20241209BHJP
H04R 3/02 20060101ALI20241209BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G10K11/178 120
H04R3/02
B60R11/02 B
(21)【出願番号】P 2021038392
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】田地 良輔
【審査官】齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/181758(WO,A1)
【文献】特開2018-170564(JP,A)
【文献】特開2021-086086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
H04R 3/02
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音を低減する能動型騒音制御システムであって、
第1のエリアに音を出力する第1エリアスピーカと、
前記第1のエリアに配置されたマイクである第1エリアマイクと、
第2のエリアに音を出力するスピーカである第2エリアスピーカと、
前記第2のエリアに配置されたマイクである第2エリアマイクと、
前記第1エリアスピーカから出力される音を出力する音源装置である第1エリア音源装置と、
前記第2エリアスピーカから出力される音を出力する音源装置である第2エリア音源装置と、
前記第1エリアマイクの出力と前記第2エリア音源装置の出力とを加算する第1加算器と、
前記第1加算器の出力を入力とするエコーキャンセル用適応フィルタと、
前記第2エリアマイクの出力と前記エコーキャンセル用適応フィルタの出力を加算する第2加算器と、
前記第2エリアのユーザにとっての騒音を表す騒音信号を入力とする騒音キャンセル用適応フィルタと、
前記第1エリアマイクの出力と前記第2エリア音源装置の出力と前記騒音キャンセル用適応フィルタの出力とが加算された信号を前記第2エリアスピーカに出力する第3加算器と
、
前記第2加算器の出力に前記第1エリア音源装置の出力を加算し、前記第1エリアスピーカに出力する第4加算器とを
備え、
前記騒音信号は、前記第1エリア音源装置の出力であり、
前記エコーキャンセル用適応フィルタは、前記第2加算器の出力をエラーとして、当該エラーが最小となるようにフィルタ係数を更新し、
前記騒音キャンセル用適応フィルタは、前記第2加算器の出力をエラーとして、当該エラーが最小となるようにフィルタ係数を更新することを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の能動型騒音制御システムであって、
前記騒音信号を入力とする、
前記第2エリアスピーカから
前記第1エリアマイクまでの伝達関数が予め設定された二次経路再現フィルタを備え、
前記騒音キャンセル用適応フィルタは、前記第2加算器の出力をエラーとし、前記二次経路再現フィルタの出力を参照信号とするFiltered-X LMSアルゴリズムによって、フィルタ係数を更新することを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の能動型騒音制御システムであって、
前記エコーキャンセル用適応フィルタは、前記第1加算器の出力を参照信号、前記第2加算器の出力をエラーとするLMSアルゴリズムによって、フィルタ係数を更新することを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項4】
自動車に搭載された、請求項1、2または3記載の能動型騒音制御システムであって、
前記第1のエリアと前記第2のエリアは、前記自動車の車室内の異なるエリアであることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、騒音を打ち消す騒音キャンセル音を放射することにより騒音を低減する能動型騒音制御(ANC;Active Noise Control)の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
能動型騒音制御の技術としては、
図3に示す能動型騒音制御システムのように、第1エリアのユーザ用の音源装置である第1音源装置51から第1エリアのユーザ用のスピーカ52に出力されている音楽などの音声を、第2のエリアのユーザにとっての騒音として、適応フィルタ53を用いて生成した騒音キャンセル音を、第2エリアのユーザ用の音源装置である第2音源装置56の出力に加算して、第2エリアのスピーカ54から出力する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
この能動型騒音制御システムでは、第2エリアに配置したエラーマイク55と、伝達関数として第2エリアのスピーカ54からエラーマイク55までの伝達関数C(z)として推定される伝達関数C^(z)を設定した、第1音源装置51の出力を入力とする二次経路再現フィルタ56を用いる。また、適応フィルタ53において、係数更新部532で、エラーマイク55の出力をエラーとして、二次経路再現フィルタ56の出力を参照信号としてLMSアルゴリズムを行うFiltered-X LMSアルゴリズムによって、第1音源装置51の出力から騒音キャンセル音を生成する可変フィルタ531のフィルタ係数をエラーが最小となるように更新する。
【0004】
また、
図4に示すように、第1エリアのマイク61でピックアップしたユーザの音声を第2エリアのスピーカ63から出力し、第2エリアのマイク64でピックアップしたユーザの音声を第1エリアのスピーカ62から出力することにより、第1エリアのユーザと第2エリアのユーザの対話を支援するシステムにおいて、適応フィルタ65を用いて、エコーをキャンセルするキャンセル音を生成し、キャンセル音を第2エリアのマイク64の出力に加算器66で加算することにより、第2エリアのスピーカ63から第2エリアのマイク64にまわりこんだエコーをキャンセルするエコーキャンセルシステムも知られている
(たとえば、特許文献2)。
【0005】
このエコーキャンセルシステムでは、適応フィルタ65において、第1エリアのマイク61の出力からキャンセル音を生成する可変フィルタ651のフィルタ係数を、係数更新部652によって、加算器66の出力をエラー、第1エリアのマイク61の出力を参照信号として、LMSアルゴリズム等によりエラーが最小となるように更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-163054号公報
【文献】特開2010- 16564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3に示した能動型騒音制御システムによれば、第2エリアのスピーカ54から出力される第2音源装置56の出力音が、エラーマイク55によってピックアップされ、キャンセルし残った騒音と共に適応フィルタ53に入力しエラーとして処理されることとなるが、この第2音源装置56の出力音は、キャンセルすべき騒音の成分ではないため、適応フィルタ53にとって、適正な騒音キャンセル音の生成を妨げる外乱となる。
【0008】
そこで、本発明は、騒音を検出するマイクに音源装置の出力音が入力してしまう場合でも良好な騒音のキャンセルを行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題達成のために、本発明は、騒音を低減する能動型騒音制御システムに、第1のエリアに配置されたマイクである第1エリアマイクと、第2のエリアに音を出力するスピーカである第2エリアスピーカと、第2のエリアに配置されたマイクである第2エリアマイクと、前記第2エリアスピーカから出力される音を出力する音源装置である第2エリア音源装置と、前記第1エリアマイクの出力と前記第2エリア音源装置の出力とを加算する第1加算器と、前記第1加算器の出力を入力とするエコーキャンセル用適応フィルタと、前記第2エリアマイクの出力と前記エコーキャンセル用適応フィルタの出力を加算する第2加算器と、第2エリアのユーザにとっての騒音を表す騒音信号を入力とする騒音キャンセル用適応フィルタと、前記第1エリアマイクの出力と前記第2エリア音源装置の出力と前記騒音キャンセル用適応フィルタの出力とが加算された信号を前記第2エリアスピーカに出力する第3加算器とを備えたものである。ここで、前記エコーキャンセル用適応フィルタは、前記第2加算器の出力をエラーとして、当該エラーが最小となるようにフィルタ係数を更新し、前記騒音キャンセル用適応フィルタは、前記第2加算器の出力をエラーとして、当該エラーが最小となるようにフィルタ係数を更新する。
【0010】
ここで、このような能動型騒音制御システムに、前記騒音信号を入力とする、前記第2スピーカから前記第1マイクまでの伝達関数が予め設定された二次経路再現フィルタを備え、前記騒音キャンセル用適応フィルタにおいて、前記第2加算器の出力をエラーとし、前記二次経路再現フィルタの出力を参照信号とするFiltered-X LMSアルゴリズムによって、フィルタ係数を更新するようにしてもよい。
【0011】
また、以上の能動型騒音制御システムは、前記エコーキャンセル用適応フィルタにおいて、前記第1加算器の出力を参照信号、前記第2加算器の出力をエラーとするLMSアルゴリズムによって、フィルタ係数を更新してもよい。
【0012】
また、以上の能動型騒音制御システムに、前記第2加算器の出力が入力する、前記第1のエリアに音を出力するスピーカである第1エリアスピーカを備えてもよい。
または、以上の能動型騒音制御システムに、第1のエリアに音を出力する第1エリアスピーカと、前記第1エリアスピーカから出力される音を出力する音源装置である第1エリア音源装置とを備え、前記騒音信号を、前記第1エリア音源装置の出力としてもよい。
【0013】
または、以上の能動型騒音制御システムに、第1のエリアに音を出力する第1エリアスピーカと、前記第1エリアスピーカから出力される音を出力する音源装置である第1エリア音源装置と、前記第2加算器の出力に前記第1エリア音源装置の出力を加算し、前記第1エリアスピーカに出力する第4加算器とを備え、前記騒音信号を、前記第1エリア音源装置の出力としてもよい。
【0014】
また、以上の能動型騒音制御システムを、自動車に搭載されたシステムとし、前記第1のエリアと前記第2のエリアを、前記自動車の車室内の異なるエリアとしてもよい。
以上のような能動型騒音制御システムによれば、第2加算器の出力は、第2エリアマイクの出力から第1エリアマイクの出力のエコーや第2エリア音源装置の出力音を除外したものとなる。従って、騒音キャンセル用適応フィルタにおいて、第2加算器の出力をエラーとして、当該エラーが最小となるようにフィルタ係数を更新することにより、第1エリアマイクの出力のエコーや第2エリア音源装置の出力音などの外乱の影響を排除した、良好な騒音のキャンセルを行うことができる。
【0015】
また、第2加算器の出力が入力する、前記第1のエリアに音を出力するスピーカである第1エリアスピーカを設けて、第2エリアのユーザの発話の第1エリアのユーザの聞き取りを支援する場合には、このような外乱の影響の排除を、第1エリアスピーカに出力されてしまう第1エリアマイクの出力のエコーをキャンセルするエコーキャンセル用適応フィルタを流用した簡易な構成で実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、騒音を検出するマイクに音源装置の出力音が入力してしまう場合でも良好な騒音のキャンセルを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】公知の能動型騒音制御システムの構成を示す図である。
【
図4】公知のエコーキャンセルシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、自動車に搭載される車載システムへの適用を例にとり説明する。
図1aに、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。
図示するように、車載システムは、車室内の第1エリアのユーザ用のスピーカである第1スピーカ11、第1エリアのユーザ用のマイクである第1マイク12、第1エリアのユーザ用の音源装置であり楽曲等の音を出力する第1音源装置13、車室内の第2エリアのユーザ用のスピーカである第2スピーカ21、第2エリアのユーザ用のマイクである第2マイク22、第2エリアのユーザ用の音源装置であり楽曲等の音を出力する第2音源装置23、以上の各部が接続された信号処理装置3を備えている。
【0019】
信号処理装置3は、第1エリアの第1マイク12でピックアップした第1エリアのユーザの音声を第2エリアの第2スピーカ21に出力し、第2エリアの第2マイク22でピックアップした第2エリアのユーザの音声を、第2スピーカ21から第2マイク22に回りこんだ第1エリアのユーザの音声のエコーと第2マイク22でピックアップされた第2音源装置23の出力音をキャンセルした上で第1エリアの第1スピーカ11に出力することにより、第1エリアのユーザと第2エリアのユーザとの間の会話によるコミュニケーションを支援する。
【0020】
また、信号処理装置3は、第1音源装置13の出力音を第1エリアの第1スピーカ11に出力すると共に、第2音源装置23の出力音を第2エリアの第2スピーカ21に出力する。
【0021】
また、信号処理装置3は、第1スピーカ11から出力された第1音源装置13の出力音を、第2エリアのユーザの騒音として、当該騒音を第2エリアのユーザの位置でキャンセルする騒音キャンセル音を、第2エリアの第2スピーカ21から出力することにより、第2エリアのユーザが、第1エリアのユーザが聴いている第1音源装置13の出力音によって煩わされることを排除する。
【0022】
ここで、第1エリアは、たとえば、
図1bに示すように、自動車の運転席のエリアであり、第1スピーカ11や第1マイク12は第1エリアに配置される。また、第2エリアは、自動車の運転席の後ろの席のエリアであり、第2スピーカ21や第2マイク22は第2エリアに配置される。
【0023】
次に、
図2に信号処理装置3の構成を示す。
図示するように信号処理装置3は、騒音キャンセル用適応フィルタ31、二次経路再現フィルタ32、エコーキャンセル用適応フィルタ33、第1加算器34、第2加算器35、第3加算器36、第4加算器37を備えている。
【0024】
第1マイク12の出力は、第1加算器34に送られ、第1加算器34で第2音源装置23の出力と加算される。第2加算器35は、第1加算器34から出力される第1マイク12の出力と第2音源装置23の出力の加算信号に、さらに、騒音キャンセル用適応フィルタ31が出力する騒音キャンセル音を加算し第2スピーカ21から出力する。
【0025】
第2マイク22の出力は、第3加算器36に送られ、第3加算器36で、エコーキャンセル用適応フィルタ33が出力するエコーキャンセル音が減算された上で第4加算器37に送られ、第4加算器37は、第3加算器36の出力に第1音源装置13の出力を加算し第1スピーカ11に出力される。
【0026】
エコーキャンセル用適応フィルタ33は、エコーキャンセル用可変フィルタ331と、エコーキャンセル用係数更新部332を備えている。
エコーキャンセル用可変フィルタ331は、第1加算器34から出力される第1マイク12の出力と第2音源装置23の出力の加算信号を入力とし、エコーキャンセル用可変フィルタ331の出力はエコーキャンセル音として、第3加算器36に出力される。
【0027】
エコーキャンセル用係数更新部332は、第3加算器36の出力をエラーとして、第1加算器34から出力される第1マイク12の出力と第2音源装置23の出力の加算信号を参照信号として、LMSアルゴリズム等によりエラーが最小となるようにエコーキャンセル用可変フィルタ331のフィルタ係数を更新する。
【0028】
次に、二次経路再現フィルタ32は、その伝達関数として、予め、第2スピーカ21から第2マイク22までの伝達関数C(z)として推定される伝達関数C^(z)が設定されている。二次経路再現フィルタ32は、第1音源装置13の出力を入力とし、二次経路再現フィルタ32の出力は、騒音キャンセル用適応フィルタ31に参照信号として出力される。
【0029】
騒音キャンセル用適応フィルタ31は、騒音キャンセル用可変フィルタ311と、騒音キャンセル用係数更新部312を備えている。
騒音キャンセル用可変フィルタ311は、第1音源装置13の出力を入力とし、その出力は騒音キャンセル音として第2加算器35に出力される。
騒音キャンセル用係数更新部312には、第3加算器36の出力がエラーとして、二次経路再現フィルタ32の出力が参照信号として入力する。
騒音キャンセル用係数更新部312は、二次経路再現フィルタ32から入力する参照信号を用いて、第3加算器36から入力するエラーが最小となるようにLMSアルゴリズムを行うことにより、Filtered-X LMSアルゴリズムによる騒音キャンセル用可変フィルタ311のフィルタ係数の更新を行う。
【0030】
より具体的には、エコーキャンセル用係数更新部332は、Filtered-X LMSアルゴリズムに従って、下式における、x(n)を騒音キャンセル用可変フィルタ311のフィルタ係数、μをステップサイズパラメータ、e(n)を第3加算器36から入力するエラー、r(n)を二次経路再現フィルタ32から入力する参照信号(濾波参照信号)として、
x(n+1)=x(n)+μe(n)r(n)
により、騒音キャンセル用可変フィルタ311のフィルタ係数x(n)の更新を行う。
【0031】
さて、以上のような構成において、エコーキャンセル用係数更新部332と騒音キャンセル用係数更新部312がエラーとして用いる第3加算器36の出力e(z)は、エコーキャンセル用可変フィルタ331の伝達関数をW(z)、騒音キャンセル用可変フィルタ311の伝達関数をX(z)、第1スピーカ11から第2マイク22までの伝達関数をP(z)、第2スピーカ21から第2マイク22までの伝達関数C(z)を、第1音源装置13の出力をS1(z)、第2音源装置23の出力をS2(z)、第1マイク12の出力をM1(z)として、第2エリアのユーザの発話を第2マイク22でピックアップしていないときには、
e(z)=M1(z)C(z)+S2(z)C(z)+S1(z)P(z)-M1(z)W(z)-S2(z)W(z)-S1(z)X(z)C(z)
={M1(z)+S2(z)}C(z)-{M1(z)+S2(z)}W(z)+S1(z){P(z)-X(z)C(z)}
によって表され、
C(z)=W(z)、かつ、P(z)=X(z)C(z)のとき、e(z)=0となる。
【0032】
したがって、エコーキャンセル用係数更新部332の動作によって、エコーキャンセル用可変フィルタ331の伝達関数W(z)は第2スピーカ21から第2マイク22までの伝達関数C(z)と等しくなるように設定される。
【0033】
そして、エコーキャンセル用可変フィルタ331が、第1マイク12の出力と第2音源装置23の出力の加算信号から伝達関数W(z)で生成し出力するエコーキャンセルは、第3加算器36の減算によって、第2マイク22でピックアップした第2スピーカ21から出力された第1マイク12の出力のエコーと第2音源装置23の出力音を、第2マイク22の出力からキャンセルする音となる。
【0034】
また、したがって、騒音キャンセル用係数更新部312の動作によって騒音キャンセル用可変フィルタ311の伝達関数X(z)は、騒音キャンセル用可変フィルタ311の入力から第2マイク22までの伝達関数X(z)C(z)が、第1スピーカ11から第2マイク22までの伝達関数P(z)と等しくなるように設定される。
【0035】
そして、騒音キャンセル用可変フィルタ311が第1音源装置13の出力から伝達関数X(z)生成して第2スピーカ21から出力する騒音キャンセル音は、第2マイク22が配置されている領域で、第1スピーカ11から出力された第1音源装置13の出力音をキャンセルするものとなる。
【0036】
また、騒音キャンセル用係数更新部312にエラーとして入力する第3加算器36の出力e(z)は、第2マイク22の出力から第1マイク12の出力のエコーや第2音源装置23の出力音を除外したものとなっている。
【0037】
したがって、たとえば、第2エリアのユーザの発話を第2マイク22でピックアップしていないときには、第3加算器36の出力e(z)は、S1(z){P(z)-X(z)C(z)}となり、騒音キャンセル音でキャンセルし残った騒音(第1音源装置13の出力音)のみを表すものとなる。
【0038】
よって、本実施形態によれば、騒音キャンセル用適応フィルタ31において、第1マイク12の出力のエコーや第2音源装置23の出力音などの外乱の影響を排除した、良好な第1音源装置13の出力音のキャンセルを行うことができる。
【0039】
また、このような外乱の影響の排除を、第1スピーカ11に出力されてしまう第1マイク12の出力のエコーをキャンセルするエコーキャンセル用適応フィルタ33を流用した簡易な構成で実現することができる。
【0040】
ところで、以上の各実施形態は、以上で示した信号処理装置3の第2スピーカ21から第2マイク22に回りこんだエコーをキャンセルする構成と、第1エリアと第2エリアについて対称な構成を信号処理装置3に付加することにより、第1エリアの第1マイク12でピックアップした音声を、第1スピーカ11から第1マイク12に回りこんだエコーをキャンセルした上で第2スピーカ21に出力するように構成してもよい。
【0041】
また、以上で示した信号処理装置3の第1スピーカ11から出力された第1音源装置13の出力音を、第2エリアのユーザの位置でキャンセルする騒音キャンセル音を、第2スピーカ21から出力する構成と、第1エリアと第2エリアについて対称な構成を信号処理装置3に付加することにより、第2スピーカ21から出力された第2音源装置23の出力音を、第1エリアのユーザの位置でキャンセルする騒音キャンセル音を、第1スピーカ11から出力するようにしてもよい。
【0042】
また、以上の各実施形態では、エリア数を2としたが、本実施形態は3以上のエリアに対応するように拡張して実施してよい。
また、以上では、車載システムへの適用を例にとり説明したが、以上の各実施形態は各エリアが自動車外のエリアである場合についても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
3…信号処理装置、11…第1スピーカ、12…第1マイク、13…第1音源装置、21…第2スピーカ、22…第2マイク、23…第2音源装置、31…騒音キャンセル用適応フィルタ、32…二次経路再現フィルタ、33…エコーキャンセル用適応フィルタ、34…第1加算器、35…第2加算器、36…第3加算器、37…第4加算器、311…騒音キャンセル用可変フィルタ、312…騒音キャンセル用係数更新部、331…エコーキャンセル用可変フィルタ、332…エコーキャンセル用係数更新部。