(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】スピーカの歪み補正装置及びスピーカユニット
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
H04R3/00 310
(21)【出願番号】P 2021044598
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】田地 良輔
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雄二
【審査官】齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-138226(JP,A)
【文献】特表2009-545914(JP,A)
【文献】特表2008-546322(JP,A)
【文献】特表2008-504721(JP,A)
【文献】特開2007-081815(JP,A)
【文献】特開2007-060648(JP,A)
【文献】特開2006-197206(JP,A)
【文献】特開2003-274481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0177990(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111741408(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に対するスピーカの出力の歪みを補正する、スピーカの歪み補正装置であって、
前記スピーカの振動系の振動を検出するセンサと、
前記入力信号を入力とする非線形部補正フィルタと、
前記非線形部補正フィルタの出力を入力とし、前記スピーカを駆動する出力信号を出力する線形逆フィルタと、
所定の適応アルゴリズムを実行し、前記センサで検出される振動が、前記入力信号に対して歪みのない振動となるように前記線形逆フィルタの伝達特性を更新する適応アルゴリズム実行部とを有し、
前記非線形部補正フィルタには、前記スピーカの非線形な特性による当該スピーカの前記入力信号に対する出力の歪みを補正する伝達特性が設定されていることを特徴とするスピーカの歪み補正装置。
【請求項2】
請求項1記載のスピーカの歪み補正装置であって、
周囲温度と前記スピーカの経年時間とのうちの少なくとも一方を環境として検知する環境検知手段と、
前記非線形部補正フィルタの伝達特性を、前記環境検知手段が検知した環境から推定される前記スピーカの非線形な特性に適合する伝達特性に切り替える切替制御手段を有することを特徴とするスピーカの歪み補正装置。
【請求項3】
請求項1記載のスピーカの歪み補正装置であって、
前記スピーカの非線形な特性を計測する計測手段と、
前記非線形部補正フィルタの伝達特性を、前記計測手段が計測した前記スピーカの非線形な特性に適合する伝達特性に切り替える切替制御手段を有することを特徴とするスピーカの歪み補正装置。
【請求項4】
請求項2または3記載のスピーカの歪み補正装置であって、
音声信号を再生し前記入力信号として出力するオーディオ装置の状態を検知する状態検知手段を有し、
前記切替制御手段は、所定のタイミングで、前記非線形部補正フィルタの伝達特性を切り替え、
前記所定のタイミングは、前記オーディオ装置が起動したタイミングと、前記オーディオ装置が有意な音声信号の再生を行っていないタイミングと、前記オーディオ装置が前記入力信号の出力レベルを変化させたタイミングと、再生する音声信号の音源を切り替えたタイミングとのうちの、少なくとも一つのタイミングを含むことを特徴とするスピーカの歪み補正装置。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載のスピーカの歪み補正装置と、前記スピーカとを、当該歪み補正装置と当該スピーカとが一体化された形態で備えていることを特徴とするスピーカユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力に対するスピーカの出力の歪みを補正する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々のスピーカの等価回路や、等価回路に基づいてスピーカの駆動を制御する技術が知られている(非特許文献1、特許文献1)。
また、等価回路に基づいてスピーカの駆動を制御する技術としては、スピーカの等価回路に基づいて、入力に対するスピーカの出力の歪みが解消されるように、スピーカを駆動する音声信号を補正する技術も知られている(特許文献2)。
【0003】
また、スピーカの振動板の振動を検出するセンサを備え、センサで検出した振動に応じてスピーカの駆動を制御するモーショナルフィードバックの技術も知られている(たとえば、特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/179539号
【文献】特許6522668号公報
【文献】特開2008228214号公報
【文献】特開2010124026号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Klippel, Wolfgang著, "Modeling the large signal behavior of micro-speakers", 133rd Audio Engineering Society Convention 2012, Paper Number 8749, October 25, 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モーショナルフィードバックの技術を用い、スピーカの振動板の振動を検出し、検出した振動に応じて、スピーカの歪みが解消されるように、スピーカを駆動する音声信号を補正することが考えられる。
【0007】
また、この場合には、適応フィルタを音声信号の補正に適用し、理想の振動と検出した振動の差をエラーとして、エラーが最小となるように適応フィルタの係数を更新することにより、スピーカの歪みを解消することが考えられる。
【0008】
一方、スピーカの特性は、線形な特性と非線形な特性がある。
たとえば、
図4に示すスピーカの等価回路においては、Bl、KMS、Le(x,i)などは、非線形な特性を示す。
なお、
図4の等価回路は、上掲した非特許文献1で示される等価回路であり、
Re; Electrical Resistance
Le(x,i);Electrical Inductance
Bl(x); Force factor
Fm(x,i); Reluctance Force
Mms; Mechanical mass
Rms(v); Mechanical Resistance
Kms(x); Stiffness(剛性)
である。
【0009】
そして、このようなスピーカの非線形な特性にも対応するように適応フィルタを構成する場合には、適応フィルタの処理や構成が大規模化し高コスト化を招く。
そこで、本発明は、適応フィルタを用いつつ、比較的簡易な構成でスピーカの出力の歪みを補正することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題達成のために、本発明は、入力信号に対するスピーカの出力の歪みを補正する、スピーカの歪み補正装置に、前記スピーカの振動系の振動を検出するセンサと、前記入力信号を入力とする非線形部補正フィルタと、前記非線形部補正フィルタの出力を入力とし、前記スピーカを駆動する出力信号を出力する線形逆フィルタと、所定の適応アルゴリズムを実行し、前記センサで検出される振動が、前記入力信号に対して歪みのない振動となるように前記線形逆フィルタの伝達特性を更新する適応アルゴリズム実行部とを設け、前記非線形部補正フィルタには、前記スピーカの非線形な特性による当該スピーカの前記入力信号に対する出力の歪みを補正する伝達特性を設定したものである。
【0011】
このようなスピーカの歪み補正装置の構成によれば、前記スピーカの非線形な特性による歪みについては非線形部補正フィルタで対応するので、線形逆フィルタと適応アルゴリズム実行部とよりなる適応フィルタを、前記スピーカの線形な特性によるによる歪みのみに対応するように構成することができる。
【0012】
よって、適応フィルタを用いつつ、比較的簡易な構成で、スピーカの非線形な特性によるものも含めスピーカの出力の歪みを補正することができる。
また、本発明は、前記課題達成のために、入力信号に対するスピーカの出力の歪みを補正する、スピーカの歪み補正装置に、前記入力信号を入力とする非線形部補正フィルタと、前記非線形部補正フィルタの出力を入力とし、前記スピーカを駆動する出力信号を出力する線形逆フィルタとを設け、前記非線形部補正フィルタには、前記スピーカの非線形な特性による当該スピーカの前記入力信号に対する出力の歪みを補正する伝達特性を設定し、前記線形逆フィルタに、前記スピーカの線形な特性による当該スピーカの前記入力信号に対する出力の歪みを補正する伝達特性を設定したものである。
【0013】
ここで、このようなスピーカの歪み補正装置の線形逆フィルタの伝達特性は、当該伝達特性の設定の際に上述したセンサと適応アルゴリズム実行部を付加することにより予め適応的に設定することができる。
よって、このようなスピーカの歪み補正装置によっても、適応フィルタを用いつつ、比較的簡易な構成でスピーカの歪みを補正することができる。
ここで、これらのスピーカの歪み補正装置に、周囲温度と前記スピーカの経年時間とのうちの少なくとも一方を環境として検知する環境検知手段と、前記非線形部補正フィルタの伝達特性を、前記環境検知手段が検知した環境から推定される前記スピーカの非線形な特性に適合する伝達特性に切り替える切替制御手段とをもうけてもよい。
【0014】
または、これらのスピーカの歪み補正装置に、前記スピーカの非線形な特性を計測する計測手段と、前記非線形部補正フィルタの伝達特性を、前記計測手段が計測した前記スピーカの非線形な特性に適合する伝達特性に切り替える切替制御手段とを設けてもよい。
【0015】
これらの切替制御手段を備えたスピーカの歪み補正装置によれば、スピーカの非線形な特性の変化が生じた場合に、非線形部補正フィルタの伝達特性を現在のスピーカの非線形な特性に対して適正な伝達特性に更新することができる。
【0016】
ここで、これらのように前記切替制御手段を備えたスピーカの歪み補正装置に、音声信号を再生し前記入力信号として出力するオーディオ装置の状態を検知する状態検知手段を設け、前記切替制御手段において、所定のタイミングで、前記非線形部補正フィルタの伝達特性を切り替えると共に、前記所定のタイミングを、前記オーディオ装置が起動したタイミングと、前記オーディオ装置が有意な音声信号の再生を行っていないタイミングと、前記オーディオ装置が前記入力信号の出力レベルを変化させたタイミングと、再生する音声信号の音源を切り替えたタイミングとのうちの、少なくとも一つのタイミングを含むものとしてもよい。
【0017】
また、本発明は、併せて、スピーカの歪み補正装置と、前記スピーカとを、当該歪み補正装置と当該スピーカとが一体化された形態で備えているスピーカユニットも提供する。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、適応フィルタを用いつつ、比較的簡易な構成でスピーカの歪みを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る音響システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る補正特性制御処理を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態に係る音響システムの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、自動車に搭載される音響システムへの適用を例にとり説明する。
図1に、実施形態に係る音響システムの構成を示す。
図示するように、音響システムは、補正特性制御部1、スピーカ2、スピーカ2の振動系の振動/変位を検出するセンサ3、スピーカ2を駆動する音声信号である出力信号Soをスピーカ2に出力する補正装置4、音声信号である入力信号Siを出力するオーディオ装置5を備えている。
【0021】
そして、補正装置4はオーディオ装置5が出力する入力信号Siを補正し出力信号Soとしてスピーカ2に出力する。
また、補正特性制御部1には、車室の温度や音響システムの経年時間(製造年と現在時刻等)等の情報が外部情報として入力する。また、補正特性制御部1には、オーディオ装置5から、曲再生中/曲非再生中等の再生状態や、入力信号Siを出力しているオーディオソース(ラジオ/CD等)の情報や、出力レベル(ボリューム等)等の情報が入力する。
【0022】
次に、補正装置4は、非線形部補正フィルタ41、線形逆フィルタ42、適応アルゴリズム実行部43、エラー算出部44を備えている。
オーディオ装置5が出力する入力信号Siは、非線形部補正フィルタ41を通って中間補正信号Smとして、線形逆フィルタ42に入力し、線形逆フィルタ42の出力は出力信号Soとしてスピーカ2に出力される。
【0023】
非線形部補正フィルタ41の伝達特性(フィルタ係数)は補正特性制御部1から切替可能であり、補正特性制御部1は、非線形部補正フィルタ41の伝達特性を、非線形部補正フィルタ41が出力する中間補正信号Smでスピーカ2を駆動した場合に入力信号Siに対するスピーカ2の非線形な特性によるスピーカ2の出力の歪みがキャンセルされる伝達特性、すなわち、スピーカ2の非線形な特性による歪みを補正する伝達特性に設定する。
【0024】
エラー算出部44は、入力信号Siに対して歪みの無いスピーカ2の振動と、センサ3の出力が示す実際のスピーカ2の振動との差分を算出する。
適応アルゴリズム実行部43と線形逆フィルタ42は適応フィルタを構成しており、適応アルゴリズム実行部43は中間補正信号Smを参照信号r、エラー算出部44が算出した差分をエラーeとして、LMSアルゴリズム等によって、エラーeが最小化するように、FIRフィルタ等である線形逆フィルタ42の伝達特性(フィルタ係数)を更新する。
【0025】
この更新の結果、前記スピーカ2の線形な特性によるスピーカ2の入力信号Siに対する出力の歪みを補正する伝達特性が線形逆フィルタ42に設定される。
次に、補正特性制御部1が、非線形部補正フィルタ41の伝達特性の切替のために音響システムの起動時に開始する補正特性制御処理について説明する。
図2に、この補正特性制御処理の手順を示す。
図示するように、音響システムが起動すると、補正特性制御処理は、まず、外部情報が示す車室の温度や音響システムの経年時間やオーディオ装置5の出力レベルなどの環境が、非線形部補正フィルタ41の伝達特性を前回切り替えたときの値から、所定レベル以上大きく変化しているかどうかを調べ(ステップ202)、変化していなければ、ステップ208に進む。
【0026】
一方、所定レベル以上大きく変化している場合には、スピーカ2の現在の非線形特性を推定する(ステップ204)。
この推定は、車室の温度や音響システムの経年時間やオーディ装置の出力レベルの組み合わせ毎に、その組み合わせとなったときの非線形特性を予め求めてライブラリとして記憶しておき、ライブラリから現在の環境に対応する非線形特性をスピーカ2の現在の非線形特性として推定することにより行う。
【0027】
または、この推定は、スピーカ2の挙動を計測し、計測値からスピーカ2の現在の非線形特性を算定することにより行ってもよい。
たとえば、
図4に示したスピーカ2の等価回路のKms(x); Stiffness(剛性)であれば、この計測値に基づく算定は、次のように行うことができる。
すなわち、テスト信号や音楽信号や音響透かし信号などの適当な出力信号Soをスピーカ2に出力しながら、スピーカ2に流れる電流i、スピーカ2の入力電圧uを計測し、計測した電流iと入力電圧uから、スピーカ2のインピーダンスZ=u/iの共振周波数fsを検出する。そして、Mms; Mechanical massを用いて、
Kms(x)=(2πfs)
2Mms
を算出し、センサ3が出力するスピーカ2の振動系の変位xと、Kms(x)との関係を求め、求めた関係に従って非線形なKms(x)の特性を算定する。ここで、Kms(x)の非線形特性の算定は、予めKms(x)の非線形特性のパターンを複数用意しておき、求めた変位xとKms(x)との関係にマッチするパターンを、Kms(x)の非線形特性として算定することにより行ってもよい。
【0028】
そして、推定したスピーカ2の現在の非線形特性に対応する伝達特性に非線形部補正フィルタ41の伝達特性を切り替え(ステップ206)、ステップ208に進む。非線形特性に対応する伝達特性とは、その非線形特性による歪みを補正する伝達特性であり、ステップ206では、推定した非線形特性を反映したスピーカモデルを用いて対応する伝達特性を算定してもよいし、予め非線形特性毎に対応する伝達特性を求めて記憶しておき、推定した非線形特性に対応する伝達特性をスピーカ2の現在の非線形特性に対応する伝達特性として求めてもよい。
【0029】
または、車室の温度や音響システムの経年時間やオーディ装置の出力レベルの組み合わせ毎に、その組み合わせとなったときの非線形特性に対応する伝達特性を予め求めてライブラリとして記憶しておき、ステップ204は行わずステップ206において、ライブラリから現在の環境に対応する伝達関数をスピーカ2の現在の非線形特性に対応する伝達特性として選定し、選定した伝達特性に非線形部補正フィルタ41の伝達特性を切り替えるようにしてもよい。
【0030】
さて、以上のようにしてステップ202またはステップ206から、ステップ208に進んだならば、補正装置4に、オーディオ装置5からの入力信号Siを補正装置4で補正した出力信号Soのスピーカ2への出力を開始させる。
【0031】
そして、上述したスピーカ2の現在の非線形特性の推定(ステップ210)を、更新タイミングが到来するまで(ステップ212)繰り返す。
ここで、更新タイミングの検出は、オーディオ装置5が曲の再生を終了したタイミングや、オーディオ装置5が入力信号Siを出力しているオーディオソースが切り替わったタイミングや、オーディオ装置5が出力レベル(ボリューム等)を変更したタイミングを、オーディオ装置5からの情報に基づいて更新タイミングとして検出することにより行う。
【0032】
そして、更新タイミングが到来したならば(ステップ212)、非線形部補正フィルタ41の伝達特性の切替が必要かどうかを判定し(ステップ214)、切替が必要なければステップ210からの処理に戻る。ここで、ステップ214では、スピーカ2の現在の非線形特性に対応する伝達特性が、非線形部補正フィルタ41に現在設定されている伝達特性と異なる場合に、線形部補正フィルタの伝達特性の切替が必要であると判定する。
【0033】
一方、非線形部補正フィルタ41の伝達特性の切替が必要と判定した場合には(ステップ214)、補正装置4のスピーカ2への出力をミュートし(ステップ216)、スピーカ2の現在の非線形特性に対応する伝達特性に非線形部補正フィルタ41の伝達特性を切り替える(ステップ218)。
【0034】
そして、スピーカ2への出力のミュートを解除し(ステップ220)、ステップ210からの処理に戻る。
以上、補正特性制御部1が行う補正特性制御処理について説明した。
ところで、以上の実施形態は、非線形部補正フィルタ41と線形逆フィルタ42の一方もしくは両方を、伝達特性(フィルタ係数)を固定したフィルタとして適用してもよい。
【0035】
図3aは、非線形部補正フィルタ41と線形逆フィルタ42の双方を、伝達特性を固定したフィルタとした場合の音響システムの構成を示しており、この場合、センサ3と適応アルゴリズム実行部43とエラー算出部44と補正特性制御部1は設ける必要はない。
【0036】
ただし、この場合、線形逆フィルタ42に固定的に設定する伝達特性は、予め、
図3bに示すセンサ3と適応アルゴリズム実行部43とエラー算出部44を設けた構成においてエラーeが最小となるように適応させた伝達特性とする。また、この場合、非線形部補正フィルタ41に固定的に設定する伝達特性は、標準的な環境下においてスピーカ2の非線形な特性による歪みを補正する伝達特性とする。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように本実施形態によれば、スピーカ2の非線形な特性による歪みについては非線形部補正フィルタ41で対応するので、線形逆フィルタ42と適応アルゴリズム実行部43とよりなる適応フィルタを、前記スピーカ2の線形な特性によるによる歪みのみに対応するように構成することができ、この結果、比較的簡易な構成で、スピーカ2の非線形な特性によるものも含めスピーカ2の出力の歪みを補正することができる。
【0038】
ここで、以上の実施形態において、スピーカ2とセンサ3と補正装置4とは、スピーカユニットとして一体化されたものであってよい。
【符号の説明】
【0039】
1…補正特性制御部、2…スピーカ、3…センサ、4…補正装置、5…オーディオ装置、41…非線形部補正フィルタ、42…線形逆フィルタ、43…適応アルゴリズム実行部、44…エラー算出部。