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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241209BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021132200
(22)【出願日】2021-08-16
(65)【公開番号】P2023026819
(43)【公開日】2023-03-01
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】山川 智之
(72)【発明者】
【氏名】柏木 航平
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-320894(JP,A)
【文献】特開2020-182258(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092303(WO,A1)
【文献】特開昭63-079078(JP,A)
【文献】特開平09-117066(JP,A)
【文献】特開2017-184496(JP,A)
【文献】特開2000-032771(JP,A)
【文献】特開2008-141804(JP,A)
【文献】国際公開第2016/203516(WO,A1)
【文献】特開2018-152931(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0141637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42 - 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の変換器を有し、複数の前記変換器の動作により、電力の変換を行う主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
複数の前記変換器のそれぞれに設けられ、複数の前記変換器の異常の検出を行い、前記異常の検出に応じて保護動作を行うことにより、複数の前記変換器の保護を行う複数の保護回路と、
を備え、
複数の前記変換器のそれぞれは、
一対の接続端子と、
複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子に対して並列に接続された電荷蓄積素子と、
を有し、前記一対の接続端子を介して直列に接続されるとともに、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記電荷蓄積素子の電圧を前記一対の接続端子間に出力する出力状態と、前記一対の接続端子間を導通させたバイパス状態と、前記複数のスイッチング素子をオフ状態とした停止状態と、を切り替え可能であり、
前記制御装置は、前記保護回路が前記変換器の異常を検出するように前記変換器を動作させる前記変換器の異常模擬運用を行うことにより、前記保護回路の動作を確認することができ、
前記制御装置は、電力の変換を行う前記主回路部の通常の運用中に、直列に接続された複数の前記変換器のうちの所定数の前記変換器について前記異常模擬運用を行い、前記異常模擬運用を行う所定数の前記変換器を順次変更することにより、複数の前記変換器のそれぞれの前記保護回路の動作を確認する電力変換装置。
【請求項2】
前記保護回路は、前記電荷蓄積素子の直流電圧が上限値以上になった際に、前記変換器を前記バイパス状態に切り替えることを前記保護動作として行い、
前記制御装置は、前記電荷蓄積素子の電圧が上昇する前記変換器の運用を前記異常模擬運用として行うことにより、前記保護回路の動作を確認する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記保護回路は、直列に接続された複数の前記変換器に流れる過電流を異常として検出し、
前記制御装置は、直列に接続された複数の前記変換器に模擬的に過電流を流す運用を前記異常模擬運用として行うことにより、前記保護回路の動作を確認する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
複数の前記変換器のそれぞれは、前記複数のスイッチング素子を動作させるための基板を有し、
前記保護回路は、前記基板の異常を検出し、
前記制御装置は、前記保護回路に対して前記基板の異常を検出する信号を意図的に入力する運用を前記異常模擬運用として行うことにより、前記保護回路の動作を確認する請求項1記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変換器の異常を検知し、変換器の保護を行う保護回路を備えた電力変換装置がある。保護回路は、変換器の通常運用中は動作しない。このため、保護回路においては、装置停止時などに動作の健全性を点検することが行われている。保護回路の点検には、回路処置や外部機器の接続など、点検員による作業が必要な場合が多く、点検時間やコストの増加を引き起こしてしまう可能性がある。このため、電力変換装置においては、より簡単に保護回路の点検を行えるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-3680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、より簡単に保護回路の点検を行うことができる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、直列に接続された複数の変換器を有し、複数の前記変換器の動作により、電力の変換を行う主回路部と、前記主回路部の動作を制御する制御装置と、複数の前記変換器のそれぞれに設けられ、複数の前記変換器の異常の検出を行い、前記異常の検出に応じて保護動作を行うことにより、複数の前記変換器の保護を行う複数の保護回路と、を備え、複数の前記変換器のそれぞれは、一対の接続端子と、複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子に対して並列に接続された電荷蓄積素子と、を有し、前記一対の接続端子を介して直列に接続されるとともに、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記電荷蓄積素子の電圧を前記一対の接続端子間に出力する出力状態と、前記一対の接続端子間を導通させたバイパス状態と、前記複数のスイッチング素子をオフ状態とした停止状態と、を切り替え可能であり、前記制御装置は、前記保護回路が前記変換器の異常を検出するように前記変換器を動作させる前記変換器の異常模擬運用を行うことにより、前記保護回路の動作を確認することができ、前記制御装置は、電力の変換を行う前記主回路部の通常の運用中に、直列に接続された複数の前記変換器のうちの所定数の前記変換器について前記異常模擬運用を行い、前記異常模擬運用を行う所定数の前記変換器を順次変更することにより、複数の前記変換器のそれぞれの前記保護回路の動作を確認する電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
より簡単に保護回路の点検を行うことができる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図2】変換器を模式的に表すブロック図である。
図3】変換器の変形例を模式的に表すブロック図である。
図4】第2の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図5】異常模擬運用の一例を模式的に表す説明図である。
【0008】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、主回路部12と、制御装置14と、を備える。電力変換装置10は、例えば、直流送電システムに用いられる。電力変換装置10は、直流送電システムにおいて、交流電力系統2及び一対の直流送電線3、4に接続される。
【0010】
直流送電システムは、例えば、変圧器6を有する。電力変換装置10の主回路部12は、変圧器6を介して交流電力系統2に接続される。交流電力系統2の交流電力は、三相交流電力である。より詳しくは、対称三相交流電力である。変圧器6は、交流電力系統2の三相交流電力を主回路部12に対応した交流電力に変換する。変圧器6は、主回路部12に合わせて三相交流電力の各相の実効値を変化させる。変圧器6は、三相変圧器である。変圧器6は、必要に応じて設けられ、省略可能である。主回路部12には、交流電力系統2の三相交流電力を直接供給してもよい。
【0011】
電力変換装置10は、交流電力系統2から供給された三相交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を直流送電線3、4に供給する。また、電力変換装置10は、直流送電線3、4から供給された直流電力を三相交流電力に変換し、変換後の三相交流電力を交流電力系統2に供給する。このように、電力変換装置10は、交流から直流への交直変換、及び、直流から交流への交直変換を行う。
【0012】
例えば、直流送電線3は、直流電力の高圧側の送電線であり、直流送電線4は、直流電力の低圧側の送電線である。電力変換装置10は、直流送電線3側が高圧、直流送電線4側が低圧となるように、変換後の直流電力を直流送電線3、4に出力する。
【0013】
主回路部12は、交流電力系統2と各直流送電線3、4との間に設けられる。主回路部12は、三相交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から三相交流電力への変換を行う。主回路部12は、例えば、直列に接続された複数の変換器を有するマルチレベル電力変換器である。主回路部12は、例えば、MMC(Modular Multilevel Converter)型の電力変換器である。MMC型の主回路部12は、直列に接続された複数の変換器を有する。各変換器は、ハーフブリッジ接続又はフルブリッジ接続された複数のスイッチング素子と、各スイッチング素子に並列に接続された電荷蓄積素子と、を有する。主回路部12は、複数の変換器の動作により、電力の変換を行う。主回路部12は、例えば、複数の変換器の各スイッチング素子のスイッチングにより、交直変換を行う。
【0014】
制御装置14は、主回路部12に接続されている。制御装置14は、各スイッチング素子のオン・オフを制御することにより、主回路部12による三相交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から三相交流電力への変換を制御する。
【0015】
主回路部12は、第1及び第2の一対の直流端子20a、20bと、第1~第3の3つの交流端子21a~21cと、第1~第6の6つのアーム部22a~22fと、を有する。
【0016】
第1直流端子20aは、高圧側の直流送電線3に接続される。第2直流端子20bは、低圧側の直流送電線4に接続される。これにより、主回路部12によって変換された直流電力が直流送電線3、4に供給されるとともに、直流送電線3、4から供給された直流電力が主回路部12に入力される。
【0017】
第1アーム部22aは、第1直流端子20aに接続される。第2アーム部22bは、第1アーム部22aと第2直流端子20bとの間に接続される。第1アーム部22a及び第2アーム部22bは、各直流端子20a、20bの間に直列に接続される。
【0018】
第3アーム部22cは、第1直流端子20aに接続される。第4アーム部22dは、第3アーム部22cと第2直流端子20bとの間に接続される。第3アーム部22c及び第4アーム部22dは、第1アーム部22a及び第2アーム部22bに対して並列に接続される。
【0019】
第5アーム部22eは、第1直流端子20aに接続される。第6アーム部22fは、第5アーム部22eと第2直流端子20bとの間に接続される。すなわち、第5アーム部22e及び第6アーム部22fは、第1アーム部22a及び第2アーム部22bに対して並列に接続されるとともに、第3アーム部22c及び第4アーム部22dに対して並列に接続される。
【0020】
主回路部12では、第1アーム部22a及び第2アーム部22bによって第1レグLG1が構成され、第3アーム部22c及び第4アーム部22dによって第2レグLG2が構成され、第5アーム部22e及び第6アーム部22fによって第3レグLG3が構成される。すなわち、この例において、主回路部12は、3レグ、6アームの三相インバータである。第1アーム部22a、第3アーム部22c及び第5アーム部22eは、上側アームである。第2アーム部22b、第4アーム部22d及び第6アーム部22fは、下側アームである。このように、主回路部12は、複数のスイッチング素子によって構成される複数のアーム部及び複数のレグを有する。主回路部12は、例えば、2レグ、4アームの単相インバータなどでもよい。アーム部及びレグの数は、上記に限ることなく、任意の数でよい。
【0021】
第1アーム部22aは、直列に接続された複数の変換器UP1、UP2…UPMを有する。第2アーム部22bは、直列に接続された複数の変換器UN1、UN2…UNMを有する。第3アーム部22cは、直列に接続された複数の変換器VP1、VP2…VPMを有する。第4アーム部22dは、直列に接続された複数の変換器VN1、VN2…VNMを有する。第5アーム部22eは、直列に接続された複数の変換器WP1、WP2…WPMを有する。第6アーム部22fは、直列に接続された複数の変換器WN1、WN2…WNMを有する。
【0022】
但し、以下では、各変換器UP1、UP2…UPM、UN1、UN2…UNM、VP1、VP2…VPM、VN1、VN2…VNM、WP1、WP2…WPM、WN1、WN2…WNMをまとめて呼称する場合に、「変換器CEL」と称す。
【0023】
各アーム部22a~22fにおいて、M、M、M、M、M、Mは、直列接続された変換器CELの台数を表す。各アーム部22a~22fにおいて、直列接続される変換器CELの台数は、例えば、100台~120台程度である。但し、直列接続される変換器CELの台数は、これに限ることなく、任意の台数でよい。
【0024】
各アーム部22a~22fに設けられる変換器CELの台数は、実質的に同じである。例えば、多数の各変換器CELが接続される場合には、主回路部12の動作に影響のない範囲において、各アーム部22a~22fに設けられる変換器CELの台数が異なってもよい。例えば、1つのアーム部に100台の変換器CELを直列に接続する場合、別のアーム部に設ける変換器CELの台数は、1~2台異なってもよい。
【0025】
各アーム部22a~22fのそれぞれは、バッファリアクトル23a~23fと、複数の電流検出器24a~24fと、をさらに有する。また、電力変換装置10は、電圧検出部25をさらに有する。
【0026】
各バッファリアクトル23a~23fは、各アーム部22a~22fのそれぞれにおいて、各変換器CELに直列に接続される。第1アーム部22aのバッファリアクトル23aは、交流端子21aと第1アーム部22a及び第2アーム部22bとの接続点と変換器UP1との間に設けられる。第2アーム部22bのバッファリアクトル23bは、交流端子21aと第1アーム部22a及び第2アーム部22bとの接続点と変換器UN1との間に設けられる。第3アーム部22cのバッファリアクトル23cは、交流端子21bと第3アーム部22c及び第4アーム部22dとの接続点と変換器VP1との間に設けられる。第4アーム部22dのバッファリアクトル23dは、交流端子21bと第3アーム部22c及び第4アーム部22dとの接続点と変換器VN1との間に設けられる。第5アーム部22eのバッファリアクトル23eは、交流端子21cと第5アーム部22e及び第6アーム部22fとの接続点と変換器WP1との間に設けられる。第6アーム部22fのバッファリアクトル23fは、交流端子21cと第5アーム部22e及び第6アーム部22fとの接続点と変換器WN1との間に設けられる。
【0027】
電流検出器24aは、第1アーム部22aに設けられ、第1アーム部22aに流れる電流を検出する。すなわち、電流検出器24aは、第1アーム部22aのアーム電流を検出する。電流検出器24aは、図示を省略した配線などを介して制御装置14に接続されている。電流検出器24aは、検出した第1アーム部22aの電流値を制御装置14に入力する。これにより、制御装置14には、第1アーム部22aの電流値が入力される。
【0028】
以下同様に、電流検出器24bは、第2アーム部22bに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24cは、第3アーム部22cに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24dは、第4アーム部22dに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24eは、第5アーム部22eに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24fは、第6アーム部22fに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。
【0029】
電圧検出部25は、交流電力系統2の各相の交流電圧(相電圧)を検出し、検出値を制御装置14に入力する。電圧検出部25は、変圧器6の一次側に接続してもよいし、二次側に接続してもよい。
【0030】
主回路部12では、第1アーム部22aと第2アーム部22bとの接続点、第3アーム部22cと第4アーム部22dとの接続点、及び、第5アーム部22eと第6アーム部22fとの接続点のそれぞれが、交流出力点となる。
【0031】
第1交流端子21aは、第1アーム部22aと第2アーム部22bとの接続点に接続される。第2交流端子21bは、第3アーム部22cと第4アーム部22dとの接続点に接続される。第3交流端子21cは、第5アーム部22eと第6アーム部22fとの接続点に接続される。各交流端子21a~21cは、例えば、変圧器6に接続される。
【0032】
各変換器CELは、例えば、信号線26を介して制御装置14と接続される。制御装置14は、信号線26を介して変換器CELに制御信号を入力することにより、変換器CELの動作を制御する。また、変換器CELは、例えば、変換器CELの制御及び動作保護に関する制御信号や保護信号を図示されていない別の信号線を介して制御装置14に入力する。なお、制御装置14と各変換器CELとの間の通信方式は、上記に限定されるものではない。例えば、直列に接続された複数の変換器CELをデイジーチェーン接続し、制御装置14は、デイジーチェーン接続された一端の変換器CEL及び他端の変換器CELのみと通信を行ってもよい。制御装置14と各変換器CELとの間の通信方式は、制御装置14と各変換器CELとの間で適切に通信を行うことができる任意の通信方式でよい。
【0033】
図2は、変換器を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、変換器CELは、複数のスイッチング素子41、42と、複数の整流素子51、52と、複数の駆動回路61、62と、一対の接続端子71、72と、電荷蓄積素子74と、給電回路76と、電圧検出回路78と、制御回路80と、を有する。
【0034】
各スイッチング素子41、42は、一対の主端子と、制御端子と、を有する。制御端子は、一対の主端子間に流れる電流を制御する。各スイッチング素子41、42には、例えば、IGBTなどの自己消弧素子が用いられる。一対の主端子は、例えば、エミッタ及びコレクタであり、制御端子は、例えば、ゲートである。
【0035】
各スイッチング素子41、42は、一対の主端子間に電流を流せるようにするオン状態と、一対の主端子間に流れる電流を遮断するオフ状態と、を切り替える。オフ状態は、一対の主端子間に完全に電流が流れない状態に限ることなく、例えば、変換器CELの動作に影響の無い程度の微弱な電流が一対の主端子間に流れる状態でもよい。オフ状態は、換言すれば、一対の主端子間に流れる電流を十分に小さくした状態である。
【0036】
各スイッチング素子41、42には、例えば、ノーマリオフ型の半導体素子が用いられる。各スイッチング素子41、42は、制御端子の電圧が高い状態においてオン状態となり、制御端子の電圧が低い状態においてオフ状態となる。各スイッチング素子41、42は、制御端子の電圧がオン状態よりも低い状態において、オフ状態となる。各スイッチング素子41、42は、例えば、制御端子に正電圧を印加した際にオン状態となり、制御端子の電圧を0Vに設定した際又は制御端子に負電圧を印加した際にオフ状態となる。
【0037】
スイッチング素子42の一対の主端子は、スイッチング素子41の一対の主端子に対して直列に接続される。この例において、変換器CELは、直列に接続された2つのスイッチング素子41、42を有する。この例において、変換器CELは、ハーフブリッジ構成の変換器である。
【0038】
整流素子51は、スイッチング素子41の一対の主端子に対して逆並列に接続されている。整流素子51の順方向は、スイッチング素子41の一対の主端子間に流れる電流の向きに対して逆向きである。同様に、整流素子52は、スイッチング素子42の一対の主端子に対して逆並列に接続されている。整流素子51、52は、いわゆる還流ダイオードである。
【0039】
接続端子71は、スイッチング素子41とスイッチング素子42との間に接続される。接続端子72は、スイッチング素子41のスイッチング素子42に接続された主端子と反対側の主端子に接続される。
【0040】
同一アーム部内の複数の変換器CELは、一対の接続端子71、72を介して直列に接続される。変換器CELに対する電力の供給は、各接続端子71、72を介して行われる。スイッチング素子41は、いわゆるローサイドスイッチであり、スイッチング素子42は、いわゆるハイサイドスイッチである。
【0041】
制御回路80は、信号線26を介して制御装置14に接続されている。制御装置14は、各スイッチング素子41、42のオン・オフを制御するための制御信号を信号線26を介して制御回路80に送信する。制御回路80は、入力された制御信号に基づいて、各スイッチング素子41、42のオン・オフを切り替えるための駆動信号を駆動回路61、62に入力する。
【0042】
駆動回路61は、スイッチング素子41の制御端子に接続されている。駆動回路62は、スイッチング素子42の制御端子に接続されている。駆動回路61、62は、制御回路80から入力された駆動信号に基づいて、各スイッチング素子41、42のオン・オフを切り替える。これにより、制御装置14からの制御信号に応じて、各スイッチング素子41、42のオン・オフが制御される。制御装置14は、各変換器CEL毎に制御信号を生成し、各変換器CELのそれぞれの各スイッチング素子41、42のオン・オフを制御する。これにより、制御装置14は、主回路部12による電力の変換を制御する。
【0043】
なお、駆動回路61、62及び制御回路80の構成は、上記に限ることなく、各スイッチング素子41、42のオン・オフを制御可能な任意の構成でよい。例えば、制御装置14からの制御信号を駆動回路61、62に直接的に入力してもよい。この場合、制御回路80は、省略可能である。
【0044】
電荷蓄積素子74は、スイッチング素子41及びスイッチング素子42に対して並列に接続される。電荷蓄積素子74は、例えば、コンデンサである。
【0045】
スイッチング素子41がオフ状態で、スイッチング素子42がオン状態の時には、電荷蓄積素子74の電圧が各接続端子71、72間に現れる。スイッチング素子41がオン状態で、スイッチング素子42がオフ状態の時には、各接続端子71、72間が導通し、各接続端子71、72間の電圧は、実質的にゼロになる。
【0046】
このように、変換器CELは、制御装置14からの制御信号に基づく各スイッチング素子41、42のスイッチングにより、電荷蓄積素子74の電圧を各接続端子71、72間に出力する出力状態と、各接続端子71、72間を導通させたバイパス状態と、各スイッチング素子41、42をオフ状態とした停止状態と、を切り替える。
【0047】
各アーム部22a~22fにおいては、出力状態となった変換器CELの合計の電圧が、各アーム部22a~22fの電圧となる。主回路部12及び制御装置14は、出力状態とする変換器CELの台数を制御することにより、マルチレベルの電力変換を行う。
【0048】
各スイッチング素子41、42がともにオフ状態の時(変換器CELが停止状態の時)には、アーム電流の向きによって各接続端子71、72間の電圧が決まる。例えば、接続端子72から接続端子71に向かう向きにアーム電流が流れている時には、整流素子51がオンし、各接続端子71、72間の電圧は、実質的にゼロになる。反対に、接続端子71から接続端子72に向かう向きにアーム電流が流れている時には、整流素子52がオンし、電荷蓄積素子74が充電され、各接続端子71、72間には、電荷蓄積素子74の電圧が現れる。
【0049】
給電回路76は、電荷蓄積素子74に対して並列に接続されている。給電回路76は、電荷蓄積素子74に蓄積された電荷を基に、駆動回路61、62及び制御回路80の駆動電源を生成し、生成した駆動電源を駆動回路61、62及び制御回路80に供給する。駆動回路61、62及び制御回路80は、給電回路76からの駆動電源の供給に応じて動作する。
【0050】
なお、駆動回路61、62及び制御回路80への給電方式は、上記に限定されるものではない。例えば、電荷蓄積素子74とは別の電源から駆動回路61、62及び制御回路80に対して給電を行ってもよい。駆動回路61、62及び制御回路80への給電方式は、駆動回路61、62及び制御回路80に対して適切に給電を行うことができる任意の方式でよい。
【0051】
電圧検出回路78は、電荷蓄積素子74に対して並列に接続されている。電圧検出回路78は、制御回路80と接続されている。電圧検出回路78は、電荷蓄積素子74の直流電圧を検出し、電荷蓄積素子74の直流電圧の電圧検出値を制御回路80に入力する。
【0052】
変換器CELは、複数のスイッチング素子41、42を動作させるための基板90を有する。基板90には、例えば、駆動回路61、62、給電回路76、電圧検出回路78、及び制御回路80などが実装されている。但し、基板90の構成は、これに限定されるものではない。例えば、給電回路76や電圧検出回路78などは、必ずしも基板90に実装されていなくてもよい。基板90の構成は、複数のスイッチング素子41、42を動作させることが可能な任意の構成でよい。
【0053】
制御回路80は、保護回路82を有する。保護回路82は、電圧検出回路78によって検出された電荷蓄積素子74の直流電圧が上限値以上になった際に、保護動作を行う。保護回路82は、電荷蓄積素子74の直流電圧が上限値以上になった際に、変換器CELをバイパス状態に切り替える。
【0054】
例えば、制御回路80の異常でスイッチング素子41、42のスイッチングが意図したタイミングで行われなかった際に、電荷蓄積素子74の電圧が上昇してしまう場合がある。こうした電荷蓄積素子74の電圧の上昇は、スイッチング素子41、42や電荷蓄積素子74などの変換器CELの各部の故障の要因となってしまう。
【0055】
このため、保護回路82は、電圧検出回路78からの電圧検出値を基に、電荷蓄積素子74の直流電圧が上限値以上になった際に、変換器CELをバイパス状態に切り替える。これにより、電荷蓄積素子74の電圧の上昇による変換器CELの故障を抑制することができるとともに、異常の発生した変換器CELをバイパスしつつ、同一アーム部内の残りの変換器CELで電力変換装置10の運転を継続することができる。
【0056】
なお、保護回路82の構成は、上記に限定されるものではない。例えば、保護回路82は、必ずしも制御回路80内に設ける必要はなく、制御回路80と別に設けてもよい。例えば、制御回路80と別に設けられた保護回路82を電荷蓄積素子74に対して並列に接続することにより、保護回路82で電荷蓄積素子74の直流電圧を検出するようにしてもよい。この場合、電圧検出回路78は、省略可能である。
【0057】
上記のように、保護回路82は、変換器CELに何らかの異常が発生した場合にのみ動作する。この例において、保護回路82は、電荷蓄積素子74の直流電圧が上限値以上になった際にのみ、変換器CELの異常を検出し、保護動作を行う。
【0058】
そこで、制御装置14は、保護回路82が変換器CELの異常を検出するように変換器CELを動作させる変換器CELの運用を意図的に行うことにより、保護回路82に変換器CELの異常を検出させ、保護動作を行わせる。これにより、制御装置14は、保護回路82の動作を確認する。
【0059】
保護回路82が変換器CELの異常を検出するような変換器CELの運用は、換言すれば、変換器CELの異常を模擬する運用である。以下では、保護回路82が変換器CELの異常を検出するような変換器CELの運用を、異常模擬運用と称す。
【0060】
制御装置14は、異常模擬運用を開始した後、保護回路82が変換器CELの異常を適切に検出し、保護動作を行った際に、保護回路82を正常と判定する。そして、制御装置14は、異常模擬運用を開始した後にも、保護回路82が保護動作を行わなかった場合に、保護回路82を異常と判定する。
【0061】
制御装置14は、例えば、異常模擬運用を開始した後、所定の条件を満たした際にも保護回路82が保護動作を行わなかった場合に、保護回路82を異常と判定する。所定の条件は、例えば、電荷蓄積素子74の直流電圧である。制御装置14は、例えば、異常模擬運用を開始した後、電荷蓄積素子74の直流電圧が、上限値よりも高く設定された閾値以上となった際にも保護回路82が保護動作を行わなかった場合に、保護回路82を異常と判定する。
【0062】
所定の条件は、例えば、異常模擬運用の開始からの経過時間などでもよい。制御装置14は、例えば、異常模擬運用を開始した後、異常模擬運用の開始から所定時間が経過した際にも保護回路82が保護動作を行わなかった場合に、保護回路82を異常と判定してもよい。所定の条件は、上記に限ることなく、保護回路82の異常を適切に判定可能な任意の条件でよい。
【0063】
なお、保護回路82が保護動作を行ったか否かは、変換器CELから制御装置14に入力される信号に基づいて判定すればよい。変換器CELから制御装置14に入力される信号は、例えば、各スイッチング素子41、42の制御端子の電圧を表す情報を含む。換言すれば、変換器CELから制御装置14に入力される信号は、各スイッチング素子41、42のオン状態及びオフ状態を表す情報を含む。制御装置14は、例えば、変換器CELから入力された信号を基に、各スイッチング素子41、42の状態を判定することにより、保護回路82が保護動作を行ったか否かを判定する。但し、保護回路82が保護動作を行ったか否かの判定方法は、これに限定されるものではない。例えば、変換器CELから制御装置14に入力される信号は、保護回路82の動作の有無を表す情報を含み、制御装置14は、保護回路82の動作の有無を表す情報を基に、保護回路82が保護動作を行ったか否かを判定してもよい。保護回路82が保護動作を行ったか否かの判定方法は、変換器CELから制御装置14に入力される信号を基に、保護回路82が保護動作を行ったか否かを制御装置14において適切に判定することができる任意の方法でよい。
【0064】
制御装置14は、例えば、変換器CELを停止状態とすることにより、異常模擬運用を行う。変換器CELを停止状態とした場合には、前述のように、アーム電流によって電荷蓄積素子74が充電され、電荷蓄積素子74の電圧が上昇する。これにより、変換器CELの異常を模擬し、電荷蓄積素子74の直流電圧が上限値以上になることによって、保護回路82に変換器CELの異常を検出させ、保護回路82に保護動作を行わせることができる。
【0065】
また、前述のように、MMC型の主回路部12では、各アーム部22a~22fに直列に接続された複数の変換器CELのうちの所定数の変換器CELを停止させたとしても、残りの変換器CELで主回路部12の通常の運用を継続することができる。このため、MMC型の主回路部12では、複数の変換器CELの動作によって電力の変換を行う通常の運用中に、複数の変換器CELのうちの所定数の変換器CELについて、上記の異常模擬運用を行うことができる。
【0066】
制御装置14は、電力の変換を行う主回路部12の通常の運用中に、各アーム部22a~22fに直列に接続された複数の変換器CELのうちの所定数の変換器CELについて異常模擬運用を行い、異常模擬運用を行う所定数の変換器CELを順次変更することにより、複数の変換器CELのそれぞれの保護回路82の動作を確認する。
【0067】
制御装置14は、例えば、各アーム部22a~22fに直列に接続された複数の変換器CELの1台目及び2台目の変換器CELについて異常模擬運用を行い、1台目及び2台目の変換器CELの保護回路82の動作を確認した後、複数の変換器CELの3台目及び4台目の変換器CELの保護回路82の動作を確認する。そして、制御装置14は、複数の変換器CELの最後の変換器CELまで同様の処理を繰り返すことにより、複数の変換器CELのそれぞれの保護回路82の動作を確認する。なお、所定数の変換器CELの台数は、2台に限ることなく、1台でもよいし、3台以上でもよい。所定数の変換器CELの台数は、残りの変換器CELで主回路部12の通常の運用を適切に継続することができる任意の台数に設定すればよい。
【0068】
制御装置14は、異常模擬運用によって保護回路82の異常を検出した際に、例えば、異常を検出した保護回路82(変換器CEL)の報知を行う。これにより、例えば、電力変換装置10の管理者などに対して保護回路82の異常を知らせることができる。例えば、電力変換装置10の管理者などに対して保護回路82の交換などを促すことができる。
【0069】
制御装置14は、例えば、図示を省略した表示部を有し、異常を検出した保護回路82の情報を表示部に表示することによって、異常を検出した保護回路82の報知を行う。例えば、異常を検出した保護回路82の情報を管理者などの携帯端末に送信し、携帯端末の表示部に情報を表示することによって、異常を検出した保護回路82の報知を行ってもよい。このように、異常を検出した保護回路82の報知は、外部の端末などへの情報の出力によって行ってもよい。異常を検出した保護回路82の報知の態様は、電力変換装置10の管理者などに対して保護回路82の異常を適切に報知することができる任意の態様でよい。
【0070】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10では、制御装置14が、異常模擬運用を行うことにより、保護回路82の動作を確認する。これにより、本実施形態に係る電力変換装置10では、例えば、点検員が、電力変換装置10の停止時に、保護回路82に処置を施したり、保護回路82に外部機器を接続したりして、保護回路82の点検を行う手間を省くことができる。従って、本実施形態に係る電力変換装置10では、より簡単に保護回路82の点検を行うことができる。例えば、保護回路82の点検時間の増加や点検にともなうコストの増加などを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る電力変換装置10では、制御装置14が、電力の変換を行う主回路部12の通常の運用中に、各アーム部22a~22fに直列に接続された複数の変換器CELのうちの所定数の変換器CELについて異常模擬運用を行う。これにより、複数の変換器CELに対して異常模擬運用をより効率的に行い、保護回路82の点検に係る手間をより省くことができる。
【0072】
但し、MMC型の主回路部12において、異常模擬運用は、必ずしも主回路部12の通常の運用中に行わなくてもよい。異常模擬運用は、例えば、主回路部12の通常の運用を停止したタイミングなどで、複数の変換器CELに対してまとめて行ってもよい。
【0073】
図3は、変換器の変形例を模式的に表すブロック図である。
図3に表したように、この例の変換器CELaは、スイッチング素子41、42を有するとともに、スイッチング素子43、44をさらに有する。スイッチング素子43、44には、スイッチング素子41、42と実質的に同じ素子が用いられる。
【0074】
スイッチング素子43、44は、直列に接続されている。スイッチング素子43、44の直列接続体は、スイッチング素子41、42の直列接続体に対して並列に接続されている。すなわち、この例において、変換器CELaは、フルブリッジ接続された4つのスイッチング素子41~44を有する。この例において、変換器CELaは、フルブリッジ構成の変換器である。
【0075】
変換器CELaは、整流素子53、54、及び駆動回路63、64をさらに有する。整流素子53は、スイッチング素子43に対して逆並列に接続されている。整流素子54は、スイッチング素子44に対して逆並列に接続されている。変換器CELaにおいて、制御回路80は、制御装置14から入力された制御信号に基づいて、各スイッチング素子41~44のオン・オフを切り替えるための駆動信号を駆動回路61~64に入力する。駆動回路63は、制御回路80から入力された駆動信号に基づいて、スイッチング素子43のオン状態とオフ状態とを切り替える。駆動回路64は、制御回路80から入力された駆動信号に基づいて、スイッチング素子44のオン状態とオフ状態とを切り替える。駆動回路63、64は、例えば、基板90に実装される。
【0076】
変換器CELaでは、接続端子71が、スイッチング素子41とスイッチング素子42との間に接続されている。接続端子72は、スイッチング素子43とスイッチング素子44との間に接続されている。この例において、接続端子72は、スイッチング素子43を介してスイッチング素子41のスイッチング素子42に接続された主端子と反対側の主端子に接続される。
【0077】
変換器CELaでは、電荷蓄積素子74の電圧をVcとする時に、スイッチング素子41とスイッチング素子44とをオン状態にし、スイッチング素子42とスイッチング素子43とをオフ状態にすることにより、各接続端子71、72間に-Vcの電圧が現れる。
【0078】
また、スイッチング素子42とスイッチング素子43とをオン状態にし、スイッチング素子41とスイッチング素子44とをオフ状態にすることにより、各接続端子71、72間に+Vcの電圧が現れる。
【0079】
さらに、ローサイド側のスイッチング素子41、43をオン状態にし、ハイサイド側のスイッチング素子42、44をオフ状態にする。もしくは、ハイサイド側のスイッチング素子42、44をオン状態にし、ローサイド側のスイッチング素子41、43をオフ状態にする。これにより、各接続端子71、72間が導通され、各接続端子71、72間に実質的に0Vが現れる。
【0080】
このように、この変換器CELaでは、各接続端子71、72間に、+Vc、0、-Vcの3レベルの電圧を出力することができる。変換器CELaは、複数のスイッチング素子41~44のスイッチングにより、+Vcの電圧を各接続端子71、72間に出力する第1出力状態と、-Vcの電圧を各接続端子71、72間に出力する第2出力状態と、各接続端子71、72間を導通させたバイパス状態と、各スイッチング素子41~44をオフ状態とした停止状態と、を切り替えることができる。
【0081】
保護回路82は、例えば、電荷蓄積素子74の直流電圧が上限値以上になった際に、変換器CELaをバイパス状態に切り替える。
【0082】
フルブリッジ回路の変換器CELaでは、各スイッチング素子41~44がともにオフ状態の時(変換器CELaが停止状態の時)には、アーム電流によって電荷蓄積素子74が充電される。例えば、接続端子71から接続端子72に向かう向きにアーム電流が流れている時には、整流素子52、53がオンし、電荷蓄積素子74が充電される。反対に、接続端子72から接続端子71に向かう向きにアーム電流が流れている時には、整流素子51、54がオンし、電荷蓄積素子74が充電される。
【0083】
これにより、フルブリッジ回路の変換器CELaにおいても、上記実施形態と同様に、変換器CELaを停止状態とすることにより、異常模擬運用を行うことができる。このように、MMC型の主回路部12において、変換器の構成は、ハーフブリッジ回路でもよいし、フルブリッジ回路でもよい。
【0084】
上記実施形態では、主回路部12にMMC型の電力変換器を用いている。主回路部12は、MMC型に限ることなく、例えば、複数の変換器CEL(変換器CELa)を直列に接続する他の方式の電力変換器でもよい。
【0085】
電力変換装置10は、直流送電システムに限ることなく、交流から直流への変換及び直流から交流への変換が必要な他の任意のシステムなどに適用してもよい。主回路部12による交直変換は、交流から直流及び直流から交流の双方に限ることなく、交流から直流又は直流から交流の一方のみでもよい。また、主回路部12は、例えば、交流交流直接変換回路などでもよい。
【0086】
主回路部12の構成は、例えば、複数のアーム部をスター結線、デルタ結線、あるいはマトリックス結線した構成などでもよい。主回路部12は、例えば、モジュラーマトリックスコンバータなどでもよい。主回路部12は、必ずしも複数のレグを有しなくてもよい。主回路部は、少なくとも複数のアーム部を有していればよい。主回路部の構成は、電力の変換が可能な任意の構成でよい。電力変換装置は、例えば、周波数変換装置、直流送電装置、無効電力補償装置、あるいは電力潮流制御装置などでもよい。これらの電力変換装置においても、上記のように異常模擬運用を行うことにより、各変換器に設けられた保護回路の動作を確認することができる。
【0087】
上記実施形態では、複数の変換器を直列に接続した主回路部12において、保護回路82が、電荷蓄積素子74の直流電圧の過電圧を変換器の異常として検出している。そして、制御装置14は、電荷蓄積素子74の電圧を上昇させる運用を異常模擬運用として行っている。但し、複数の変換器を直列に接続した主回路部12において、保護回路82の検出する変換器の異常は、電荷蓄積素子74の過電圧に限定されるものではない。
【0088】
保護回路82は、例えば、電荷蓄積素子74の電圧の低下を変換器の異常として検出してもよい。この場合、制御装置14は、例えば、変換器をバイパス状態とし、電荷蓄積素子74を放電させることで、異常模擬運用を行うことができる。
【0089】
保護回路82は、例えば、各アーム部22a~22fに流れる過電流を異常として検出してもよい。換言すれば、保護回路82は、直列に接続された複数の変換器CELに流れる過電流を異常として検出してもよい。保護回路82は、例えば、電流検出器24a~24fの検出結果を基に、各アーム部22a~22fに流れる電流の過電流を検出し、過電流の検出に応じて保護動作を行う。保護回路82は、例えば、変換器CELの動作の停止(ゲートブロック)を保護動作として行う。この場合には、制御装置14は、例えば、制御指令値を変更し、各アーム部22a~22fに模擬的に過電流を流す運用を異常模擬運用として行うことにより、保護回路82の動作を確認する。模擬的な過電流とは、例えば、保護回路82が過電流を検出し、かつスイッチング素子の定格電流を超えない程度の大きさの電流である。模擬的な過電流は、例えば、各アーム部22a~22fを循環し、交流電力系統2側及び直流送電線3、4側に影響を与えない電流とすることが好ましい。また、この場合、異常模擬運用は、例えば、主回路部12の通常の運用を停止したタイミングなどで、各アーム部22a~22f毎の複数の変換器CELに対してまとめて行うことが好ましい。
【0090】
このように、各アーム部22a~22fに流れる過電流を異常として検出する場合、保護回路は、制御装置14に設ける構成としてもよい。制御装置14に設けられた保護回路が、各アーム部22a~22fに流れる電流の過電流を検出し、過電流の検出に応じて変換器CELの動作を停止させることにより、保護動作を行う構成としてもよい。
【0091】
保護回路82は、例えば、変換器の基板90の異常を検出してもよい。換言すれば、保護回路82は、例えば、駆動回路61、62、給電回路76、電圧検出回路78、及び制御回路80などの周辺機器の異常を検出してもよい。この場合には、制御装置14は、例えば、制御回路80や他の回路などから保護回路82に対して、保護回路82が基板90の異常を検出する信号を意図的に入力する運用を異常模擬運用として行うことにより、保護回路82の動作を確認する。
【0092】
このように、複数の変換器を直列に接続した主回路部12において、保護回路82の検出する変換器の異常は、電荷蓄積素子74の過電圧に限ることなく、変換器の任意の異常でよい。制御装置14の行う異常模擬運用は、保護回路82に意図的に異常を検出させることができる任意の運用でよい。異常模擬運用は、保護回路82の構成に応じて適宜設定すればよい。
【0093】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図4に表したように、電力変換装置100は、主回路部102と、制御装置104と、を備える。電力変換装置100では、主回路部102が、1つの変換器CELbを有する。変換器CELbは、三相ブリッジ接続された6つのスイッチング素子111~116と、6つのスイッチング素子111~116のそれぞれに対して逆並列に接続された6つの整流素子121~126と、6つのスイッチング素子111~116のそれぞれに対して並列に接続された電荷蓄積素子130と、各スイッチング素子111~116のオン・オフを切り替える駆動回路131~136と、を有する。また、変換器CELbは、複数のスイッチング素子111~116を動作させるための基板138を有する。基板138には、例えば、駆動回路131~136が実装されている。但し、基板138の構成は、これに限ることなく、複数のスイッチング素子111~116を動作させることが可能な任意の構成でよい。
【0094】
変換器CELbでは、各スイッチング素子111~116の両端が、一対の直流端子106a、106bとなり、スイッチング素子111とスイッチング素子112との接続点、スイッチング素子113とスイッチング素子114との接続点、及びスイッチング素子115とスイッチング素子116との接続点が、それぞれ3つの交流端子108a~108cとなる。変換器CELbは、いわゆる三相2レベルインバータである。
【0095】
変換器CELbは、各交流端子108a~108cを介して交流電力系統と接続される。各交流端子108a~108cは、例えば、図示を省略した遮断器や変圧器などを介して交流電力系統と接続される。また、変換器CELbは、一対の直流端子106a、106bを介して直流電源あるいは直流負荷と接続される。これにより、主回路部102は、変換器CELbの動作により、電力の変換を行う。主回路部102は、例えば、変換器CELbの各スイッチング素子111~116のスイッチングにより、直流から交流への変換及び交流から直流への変換の少なくとも一方を行う。
【0096】
制御装置104は、主回路部102に接続されている。制御装置104は、例えば、駆動回路131~136に制御信号を送信する。駆動回路131~136は、制御装置104から入力された制御信号に基づいて、各スイッチング素子111~116のオン・オフを切り替える。制御装置104は、駆動回路131~136に制御信号を送信し、各スイッチング素子111~116のオン・オフを制御することにより、主回路部102による電力の変換を制御する。
【0097】
主回路部102は、例えば、電流検出器141~143をさらに有する。電流検出器141~143は、変換器CELbの交流端子108a~108cに流れる電流を検出する。電流検出器141~143は、制御装置104と電気的に接続されている。電流検出器141~143は、交流端子108a~108cに流れる電流の検出結果を制御装置104に入力する。
【0098】
電力変換装置100は、保護回路150をさらに備える。保護回路150は、例えば、制御装置104に設けられる。保護回路150は、電流検出器141~143の検出結果を基に、変換器CELbに流れる電流が上限値以上になった際に、保護動作を行う。保護回路150は、例えば、変換器CELbに流れる電流が上限値以上になった際に、各スイッチング素子111~116をオフ状態とすることにより、変換器CELbの動作を停止させる。このように、保護回路150は、変換器CELbの過電流を変換器CELbの異常として検出し、保護動作を行う。
【0099】
なお、保護回路150の構成は、上記に限定されるものではない。保護回路150は、必ずしも制御装置104内に設ける必要はなく、制御装置104と別に設けてもよい。保護回路150は、例えば、変換器CELbに設けてもよい。例えば、複数のスイッチング素子111~116のそれぞれに対応する複数の保護回路150を設けてもよい。
【0100】
制御装置104は、保護回路150が変換器CELbの異常を検出するような変換器CELbの異常模擬運用を意図的に行うことにより、保護回路150に変換器CELbの異常を検出させ、保護動作を行わせる。これにより、制御装置104は、保護回路150の動作を確認する。
【0101】
図5は、異常模擬運用の一例を模式的に表す説明図である。
図5に表したように、制御装置104は、例えば、遮断器を開放し、変換器CELbを交流電力系統から切り離した状態で異常模擬運用を行う。制御装置104は、例えば、電力変換装置100が動作を停止し、遮断器が開放されたタイミングにおいて異常模擬運用を行う。換言すれば、制御装置104は、電力の変換を行う主回路部102の通常の運用を停止し、遮断器を開放した際に、異常模擬運用を行う。
【0102】
遮断器を開放し、変換器CELbを交流電力系統から切り離した場合、変換器CELbの交流側の負荷は、一般的に誘導性負荷とみなすことができる。制御装置104は、例えば、遮断器を開放し、変換器CELbを交流電力系統から切り離した後、図5に表したように、交流側の負荷に負荷電流を流すようにスイッチング素子111~116のオン状態及びオフ状態を切り替えることにより、異常模擬運用を行う。
【0103】
制御装置104は、より詳しくは、ハイサイド側のスイッチング素子111、113、115のうちの1つをオン状態とし、残りをオフ状態とするとともに、ローサイド側のスイッチング素子112、114、116のうちの1つをオン状態とし、残りをオフ状態とする。また、この際、制御装置104は、直流短絡を引き起こさないように、オン状態とするハイサイド側のスイッチング素子及びローサイド側のスイッチング素子をそれぞれ異なる相に設定する。これにより、制御装置104は、図5に表したように、交流側の負荷に負荷電流を流すことができる。なお、図5では、図示を容易にするため、変換器CELbの一部のみを簡略化して図示している。また、図5では、スイッチング素子111~116のオン状態及びオフ状態を分かり易くするため、スイッチング素子111~116を図4と異なる記号で図示している。
【0104】
上記のように、交流側の負荷に負荷電流を流した場合、負荷電流は、電荷蓄積素子130の電圧、及び交流側の誘導性負荷のインダクタンスに応じて増加する。これにより、変換器CELbの異常を模擬し、変換器CELbに流れる電流が上限値以上になることによって、保護回路150に変換器CELbの異常を検出させ、保護回路150に保護動作を行わせることができる。この際、遮断器を開放し、変換器CELbを交流電力系統から切り離した状態で異常模擬運用を行うことにより、保護回路150が異常を検出するような負荷電流を流した際にも、異常模擬運用が交流電力系統側に影響を与えてしまうことを抑制することができる。
【0105】
制御装置104は、例えば、異常模擬運用を開始した後、所定の条件を満たした際にも保護回路150が保護動作を行わなかった場合に、保護回路150を異常と判定する。所定の条件は、例えば、変換器CELbに流れる電流である。制御装置104は、例えば、異常模擬運用を開始した後、変換器CELbに流れる電流が、上限値よりも高く設定された閾値以上となった際にも保護回路150が保護動作を行わなかった場合に、保護回路150を異常と判定する。但し、所定の条件は、上記に限ることなく、保護回路150の異常を適切に判定可能な任意の条件でよい。
【0106】
制御装置104は、例えば、異常模擬運用によって保護回路150の異常を検出した場合には、上記第1の実施形態と同様に、異常を検出した保護回路150の報知を行う。
【0107】
このように、本実施形態に係る電力変換装置100においても、制御装置104が、異常模擬運用を行うことにより、保護回路150の動作を確認することができる。これにより、電力変換装置100においても、上記第1の実施形態と同様に、より簡単に保護回路150の点検を行うことができる。
【0108】
このように、主回路部102の構成は、複数の変換器CELを直列に接続した構成に限ることなく、三相2レベルインバータなどでもよい。このように構成された主回路部102であっても、上記のように異常模擬運用を行うことにより、保護回路150の動作を確認することができる。
【0109】
主回路部102の構成は、三相2レベルインバータに限ることなく、単相2レベルインバータ、単相3レベルインバータ、三相3レベルインバータなどでもよい。これらの構成においても、上記と同様に、遮断器を開放し、変換器CELbを交流電力系統から切り離した後、交流側の負荷に負荷電流を流すように複数のスイッチング素子のオン状態及びオフ状態を切り替えることにより、異常模擬運用を行うことができる。
【0110】
主回路部の構成は、上記各実施形態に表した構成に限ることなく、変換器を有し、変換器の動作によって電力の変換を行う任意の構成でよい。
【0111】
図4に表した例では、保護回路150が、変換器CELbの過電流を変換器CELbの異常として検出し、保護動作を行う。保護回路150は、これに限ることなく、例えば、変換器CELbの過電圧を変換器CELbの異常として検出し、保護動作を行う構成としてもよい。
【0112】
また、図4に表した例では、1つの保護回路150で変換器CELbの異常を検出している。これに限ることなく、例えば、複数のスイッチング素子111~116のそれぞれに対応させて複数の保護回路を設けることにより、複数のスイッチング素子111~116のそれぞれの過電流や過電圧を変換器CELの異常として検出してもよい。
【0113】
また、保護回路150は、例えば、2レベルインバータや3レベルインバータなどにおいて、電荷蓄積素子130の過電圧を検出する構成としてもよい。この場合は、保護回路150は、例えば、複数のスイッチング素子の全てのオフ状態への切り替えを保護動作として行う。換言すれば、保護回路150は、変換器CELbの停止状態への切り替えを保護動作として行う。また、電荷蓄積素子130の過電圧を検出する場合、保護動作は、例えば、直流部に抵抗を挿入して電荷蓄積素子130を放電させるブレーキ回路を投入する動作などでもよい。
【0114】
この場合、制御装置104は、例えば、電荷蓄積素子130の電圧が上昇するように、スイッチング素子111~116の制御の指令値を変更する。このように、制御装置104は、例えば、電荷蓄積素子130の電圧が上昇する変換器CELbの運用を異常模擬運用として行うことにより、保護回路150の動作を確認する。
【0115】
保護回路150は、例えば、変換器CELbの基板138の異常を検出してもよい。換言すれば、保護回路150は、例えば、駆動回路131~136などの周辺機器の異常を検出してもよい。この場合には、制御装置104は、例えば、保護回路150に対して基板138の異常を検出する信号を意図的に入力する運用を異常模擬運用として行うことにより、保護回路150の動作を確認する。
【0116】
このように、保護回路の構成は、上記に限ることなく、変換器の異常を検出し、検出した異常に応じた保護動作を行うことにより、変換器の保護を行うことができる任意の構成でよい。
【0117】
制御装置による異常模擬運用は、上記に限ることなく、保護回路に変換器の異常を意図的に検出させることができる任意の運用でよい。異常模擬運用は、変換器の構成や保護回路の構成などに応じて適宜設定すればよい。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
2…交流電力系統、 3、4…直流送電線、 6…変圧器、 10…電力変換装置、 12…主回路部、 14…制御装置、 20a…第1直流端子、 20b…第2直流端子、 21a…第1交流端子、 21b…第2交流端子、 21c…第3交流端子、 22a…第1アーム部、 22b…第2アーム部、 22c…第3アーム部、 22d…第4アーム部、 22e…第5アーム部、 22f…第6アーム部、 23a~23f…バッファリアクトル、 24a~24f…電流検出器、 25…電圧検出部、 26…信号線、 41~44…スイッチング素子、 51~54…整流素子、 61~64…駆動回路、 71、72…接続端子、 74…電荷蓄積素子、 76…給電回路、 78…電圧検出回路、 80…制御回路、 82…保護回路、 90…基板、 100…電力変換装置、 102…主回路部、 104…制御装置、 111~116…スイッチング素子、 121~126…整流素子、 130…電荷蓄積素子、 131~136…駆動回路、 138…基板、 141~143…電流検出器、 150…保護回路、 CEL、CELa、CELb…変換器、 LG1…第1レグ、 LG2…第2レグ、 LG3…第3レグ
図1
図2
図3
図4
図5