(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】車両試験装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
G01M17/007 C
G01M17/007 A
(21)【出願番号】P 2022073222
(22)【出願日】2022-04-27
【審査請求日】2024-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】折井 大祐
(72)【発明者】
【氏名】琴尾 浩介
(72)【発明者】
【氏名】大塚 淳司
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-029655(JP,A)
【文献】特開2019-203869(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038039(WO,A1)
【文献】米国特許第04885846(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102015104890(DE,A1)
【文献】特開平9-222384(JP,A)
【文献】国際公開第2022/255237(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/059570(WO,A1)
【文献】山口友行、他2名,ツインローラシャシダイナモメータにおける走行抵抗解析,自動車技術会学術講演会前刷集,1982年,No.822,p.409-416
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ装置と制御部とを備えた車両試験装置であって、
前記ローラ装置は、
車両のタイヤを載置する第1及び第2のローラと、
前記第1のローラを回転駆動するローラ駆動動作を実行するローラ駆動機構と、
前記第1のローラの回転速度を検出して第1の検出速度を得る第1の回転検出器と、
前記第2のローラの回転速度を検出して第2の検出速度を得る第2の回転検出器と、
前記第1及び第2のローラを旋回させるローラ旋回動作を実行するローラ旋回機構と、
前記第1及び第2のローラ上に載置されるタイヤのタイヤ旋回中心に対する前記ローラ旋回機構の位置を変更する位置変更処理を実行する位置変更機構とを備え、
前記第1のローラは自身が回転駆動するロードローラとして用いられ、前記第2のローラはタイヤの回転に連動して回転するフリーローラとして用いられ、
前記制御部は、
前記第1及び第2の検出速度を受け、前記ローラ駆動機構、前記ローラ旋回機構、及び前記位置変更機構を制御して、前記ローラ駆動動作、前記ローラ旋回動作及び前記位置変更処理を実行させ、
前記タイヤ旋回中心に対する前記ローラ旋回機構の位置として複数の設定位置が準備され、
前記制御部は、前記ローラ旋回機構を前記複数の設定位置に含まれる初期設定位置に設定し、かつ、前記第1及び第2のローラ上に前記車両のタイヤを配置及び固定した状態で旋回中心設定処理を実行し、
前記旋回中心設定処理は、
(a) 前記ローラ旋回動作及び前記ローラ駆動動作を実行させ、前記第1及び第2のローラを所定の旋回方向に設定した状態で、前記第1のローラを回転させて前記車両の仮走行試験を行い、前記第1及び第2の検出速度を得るステップと、
(b) 前記位置変更処理を実行させ、前記複数の設定位置に含まれる新たな設定位置に前記ローラ旋回機構の位置を変更するステップと、
(c) 前記複数の設定位置すべてにおいて前記ステップ(a)が実行されるまで、前記ステップ(a)及び(b)を繰り返し実行させるステップと、
(d) 前記複数の設定位置それぞれの前記第1及び第2の検出速度間の検出速度差に基づき、前記複数の設定位置に対応する複数の判定用速度差を算出し、前記複数の判定用速度差のうち最小値となる判定用速度差に対応する設定位置を最適設定位置として決定するステップと、
(e) 前記位置変更処理を実行させ、前記ローラ旋回機構を前記最適設定位置に移動させるステップとを備える、
車両試験装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両試験装置であって、
前記ステップ(a)は、
(a-1) 前記第1及び第2のローラを直進方向に設定した状態で、回転速度を加減速する態様で前記第1のローラを回転させて前記車両の直進走行試験を行い、前記第1及び第2の検出速度を直進時第1及び第2の検出速度として得るステップと、
(a-2) 前記第1及び第2のローラを左旋回方向に設定した状態で、回転速度を加減速する態様で前記第1のローラを回転させて前記車両の左旋回走行試験を行い、前記第1及び第2の検出速度を左旋回時第1及び第2の検出速度として得るステップと、
(a-3) 前記第1及び第2のローラを右旋回方向に設定した状態で、回転速度を加減速する態様で前記第1のローラを回転させて前記車両の右旋回走行試験を行い、前記第1及び第2の検出速度を右旋回時第1及び第2の検出速度として得るステップとを含み、
前記所定の旋回方向は、前記直進方向、前記左旋回方向及び前記右旋回方向を含み、
前記仮走行試験は、前記直進走行試験、前記左旋回走行試験及び前記右旋回走行試験を含み、
前記第1の検出速度は、前記直進時第1の検出速度、前記左旋回時第1の検出速度、及び前記右旋回時第1の検出速度を含み、
前記第2の検出速度は、前記直進時第2の検出速度、前記左旋回時第2の検出速度、及び前記右旋回時第2の検出速度を含み、
前記検出速度差は、前記直進時第1及び第2の検出速度間の速度差である直進時速度差と、前記左旋回時第1及び第2の検出速度間の速度差である左旋回時速度差と、前記右旋回時第1及び第2の検出速度間の速度差である右旋回時速度差とを含む、
車両試験装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両試験装置であって、
前記判定用速度差は、前記直進時速度差、前記左旋回時速度差及び前記右旋回時速度差の総和である速度差総和を含み、複数の速度差総和は前記複数の設定位置に対応する、
車両試験装置。
【請求項4】
請求項2記載の車両試験装置であって、
前記判定用速度差は、前記直進時速度差、前記左旋回時速度差及び前記右旋回時速度差のうち、最大値となる最大速度差を含み、複数の最大速度差は前記複数の設定位置に対応する、
車両試験装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち、いずれか1項に記載の車両試験装置であって、
前記ステップ(b)は、
(b-1) 前記ローラ旋回動作及び前記ローラ駆動動作を実行させ、前記第1及び第2のローラを直進方向に設定した状態で、前記第1のローラを一定速度で回転させるステップと、
(b-2) 前記ステップ(b-1)で設定したローラ回転環境下で、前記位置変更処理を実行させ、新たな設定位置に前記ローラ旋回機構の位置を変更するステップとを含む、
車両試験装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のうち、いずれか1項に記載の車両試験装置であって、
前記ローラ装置は、前記車両の前方または後方の一対のタイヤを載置する装置であり、前記一対のタイヤは左タイヤ及び右タイヤを含み、
前記ローラ装置は、
前記車両の前記左タイヤに対応して設けられる左用ローラ装置と、
前記車両の前記右タイヤに対応して設けられる右用ローラ装置とを含み、
前記左用ローラ装置及び前記右用ローラ装置は同時に前記位置変更処理を実行し、
前記左用ローラ装置の前記第1及び第2の回転検出器より得られる前記第1及び第2の検出速度が左用第1及び第2の検出速度として規定され、
前記右用ローラ装置の前記第1及び第2の回転検出器より得られる前記第1及び第2の検出速度が右用第1及び第2の検出速度として規定され、
前記検出速度差は、前記左用第1の検出速度と前記左用第2の検出速度との左用検出速度差と、前記右用第1の検出速度と前記右用第2の検出速度との右用検出速度差とを含む、
車両試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両の各種走行試験に用いられるシャーシダイナモメータ等の車両試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両試験装置の1つであるシャーシダイナモメータは、従来、車両(自動車)の走行試験を行う際に用いられており、主要構成要素としてローラ装置を含んでいる。また、シャーシダイナモメータは、走行試験を行う際に、ローラ装置上に配置した車両を固定する車両固定機構を有している。従来のシャーシダイナモメータとして、例えば、特許文献1に開示されたシャーシダイナモメータがある。
【0003】
車両のステアリング操作に伴う種々の走行試験を行うには、タイヤの旋回動作に適合するようにローラを旋回させるローラ旋回動作を行う必要がある。すなわち、左右のタイヤ用のローラ装置をステアリング操作によるタイヤの切れ角度に追従させるための制御方式を実現するには、ローラ旋回動作が必要となる。上記制御方式は自動運転やADAS模擬走行試験に適用することができる。なお、「ADAS(Advanced Driver Assistance System)」は、「先進運転システム」を意味し、事故などの可能性を事前に検知し回避するシステムである。
【0004】
上述したような車両のステアリング操作に伴う種々の走行試験を行うべく、従来のシャーシダイナモメータは、ローラ旋回動作を実行するローラ旋回機構をさらに備えている。上述した特許文献1に開示されたシャーシダイナモメータは、ローラ旋回機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のシャーシダイナモメータを用いて行う走行試験は、ローラ装置のローラ上に車両のタイヤを載置し固定して行う。タイヤの旋回中心は、車両のキングピン位置、キャスタ角度、キャンバ角度等の影響を受け、タイヤの接触面の中心とは異なることもあり、車種によっても異なる。
【0007】
したがって、走行試験開始時にローラの旋回中心とタイヤの旋回中心との間に位置ズレが発生する可能性が少なからずある。以下、ローラの旋回中心とタイヤの旋回中心との間の位置ズレを「旋回中心間位置ズレ」と呼ぶ場合がある。
【0008】
図26は従来のシャーシダイナモメータにおける問題点を示す説明図である。
図26はローラ装置がローラ対20を有するツインローラ構成の場合を示している。
【0009】
図26では前方ローラ20Fをロードローラとして用い、後方ローラ20Rをフリーローラとして用いている。したがって、前方ローラ20Fのタイヤ回転方向K2Fとタイヤ6のタイヤ回転方向K6とは反対の関係になり、タイヤ6のタイヤ回転方向K6と後方ローラ20Rのタイヤ回転方向K2Rとは反対の関係になる。
【0010】
図26(a)及び(b)は車両の直進状態(初期状態)時のローラ対20(20F,20B)とタイヤ6との位置関係を示す平面図及び側面図であり、
図26(c)及び(d)は車両のタイヤ6及びローラ対20を旋回させた場合のローラ対20とタイヤ6との位置関係を示す平面図及び側面図である。
図26(a)~(d)それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0011】
なお、
図26(c),(d)で示すX軸及びY軸は、
図26(a),(b)との比較を容易にすべく、便宜上、
図26(a),(b)のX軸及びY軸に一致させている。実際には、ローラ旋回動作及びタイヤ旋回動作に伴いタイヤ6やローラ対20とX軸及びY軸との関係は変化する。
【0012】
図26で示すツインローラ構成では、図示しないローラ旋回機構はローラ旋回中心C2を中心としてローラ旋回方向R2に沿ってローラ対20を旋回するローラ旋回動作を実行することができる。一方、車両60は前述したようにタイヤ旋回動作を実行することができる。
【0013】
なお、ベッド65はローラ対20を搭載する基台であり、ローラ用軸受け66及び67はローラ対20における前方ローラ20F及び後方ローラ20Rそれぞれの回転駆動に必要な構成部である。
【0014】
以下、
図26を参照して、ローラ対20を有するローラ装置2における問題点について説明する。
図26に示すように、ローラ対20は前方に前方ローラ20F、後方に後方ローラ20Rを有するツインローラ構成となっている。前方ローラ20F及び後方ローラ20Rの径は、タイヤ6の径より小さくなるように設定されている。
【0015】
図26(a),(b)に示すように、ローラ対20上にタイヤ6を載置した初期状態でローラ旋回中心C2はタイヤ旋回中心C6に対し後方かつ右方にずれている。すなわち、ローラ旋回中心C2とタイヤ旋回中心C6とはX方向にズレ量DX2が生じ、Y方向にズレ量DY2が生じている。このように、初期状態時にズレ量DX2及びズレ量DY2による旋回中心間位置ズレ量が生じている。
【0016】
図26(a),(b)に示すように、車両60の直進状態時では上記旋回中心間位置ズレの影響を受けることはなく、初期状態から変化しない。
【0017】
しかしながら、
図26(c),(d)に示すように、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を実行すると、タイヤ6とローラ対20それぞれの旋回角度を合わせるように動かしても、ローラ対20とタイヤ6との位置関係は大きく変化する。
【0018】
図26(a),(c)間で示すタイヤ接地面6Gの比較から、X方向にズレ量ΔX12が生じていることがわかる。また、
図26(c),(d)間で示すタイヤ接地面6Gの比較から、Y方向にズレ量ΔY12が生じていることがわかる。なお、
図26(c)において、初期状態のタイヤ接地面P6Gの位置を示している。さらに、
図26(b),(d)間で示すタイヤ6の最上部6T間の比較から、Z方向にズレ量ΔZ12が生じていることがわかる。
【0019】
このように、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う走行試験を車両60に対して行うと、タイヤ旋回中心C6がローラ旋回中心C2に近づく方向にタイヤ位置ズレ現象が発生してしまう。特に、タイヤ6の旋回角度を大きくとるため、左右のローラ装置2間の旋回時における干渉やローラ対20間の干渉を低減する目的でローラ対20それぞれを小さくすると、車両60が上下に移動して車両60の高さが変動し易くなる。
【0020】
従来のシャーシダイナモメータは以上のように構成されており、ローラ装置2のローラ対20上に車両60のタイヤ6を載置する際、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2との間で旋回中心間位置ズレが発生する可能性がある。
【0021】
旋回中心間位置ズレが生じる一因として、車両60のタイヤ6の取り付け状態(トー角度、キャスタ角度、キャンバ角度、キングピンの位置等)によって、ローラ対20とタイヤ6との接触位置が所望の接触位置からずれることが考えられる。
【0022】
このように旋回中心間位置ズレが発生した場合に、従来のシャーシダイナモメータによって、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う車両60の走行試験を行うと、上述したタイヤ位置ズレ現象が発生してしまう。
【0023】
タイヤ位置ズレ現象の発生により、タイヤ6とローラ対20との接触位置がずれてしまい、ローラ対20上でタイヤ6の横滑りを起こす等、車両60がふらつく原因となる。また、
図26(d)に示すように、前方ローラ20F及び後方ローラ20Rのうち、後方ローラ20Rとタイヤ6が接触しなくなる。
【0024】
このようなタイヤ位置ズレ現象が生じる状態で、シャーシダイナモメータ1上で車両60の走行試験を行うと、タイヤ6のローラ対20への接触状態が変わるため、正常な負荷をタイヤ6に与えることができないか、車両60が揺れる原因となり、車両60に搭載されたカメラの映像にも影響がでてしまう。
【0025】
このように、シャーシダイナモメータで代表される従来の車両試験装置では、旋回中心間位置ズレに伴うタイヤ位置ズレ現象の発生により、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う車両の走行試験を精度良く行うことができないという問題点があった。
【0026】
一般的に、車両60のタイヤ旋回中心C6は車両60のカタログ等に記載のトレッド値とは異なるため、正確な数値情報を認識できないことが多い。この場合、手作業でタイヤ旋回中心C6を確認する必要があるが、この作業に比較的時間を要してしまう。
【0027】
また、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とが一致するように、ローラ旋回機構を配置する作業は、ローラ装置2を旋回させながらタイヤ6の浮き上がりを確認して行う手作業となる。この作業は、作業者のスキルを要求し、かつ、多くの手間と時間を要するため、極めて困難な作業となる。
【0028】
本開示は上記問題点を解決するためになされたもので、走行試験実行時にタイヤ位置ズレ現象が発生しないように、ローラ旋回機構の位置設定を自動的に行うことができるシャーシダイナモメータ等の車両試験装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本開示の車両試験装置は、ローラ装置と制御部とを備えた車両試験装置であって、前記ローラ装置は、車両のタイヤを載置する第1及び第2のローラと、前記第1のローラを回転駆動するローラ駆動動作を実行するローラ駆動機構と、前記第1のローラの回転速度を検出して第1の検出速度を得る第1の回転検出器と、前記第2のローラの回転速度を検出して第2の検出速度を得る第2の回転検出器と、前記第1及び第2のローラを旋回させるローラ旋回動作を実行するローラ旋回機構と、前記第1及び第2のローラ上に載置されるタイヤのタイヤ旋回中心に対する前記ローラ旋回機構の位置を変更する位置変更処理を実行する位置変更機構とを備え、前記第1のローラは自身が回転駆動するロードローラとして用いられ、前記第2のローラはタイヤの回転に連動して回転するフリーローラとして用いられ、前記制御部は、前記第1及び第2の検出速度を受け、前記ローラ駆動機構、前記旋回機構、及び前記位置変更機構を制御して、前記ローラ駆動動作、前記ローラ旋回動作及び前記位置変更処理を実行させ、前記タイヤ旋回中心に対する前記ローラ旋回機構の位置として複数の設定位置が準備され、前記制御部は、前記ローラ旋回機構を前記複数の設定位置に含まれる初期設定位置に設定し、かつ、前記第1及び第2のローラ上に前記車両のタイヤを配置及び固定した状態で旋回中心設定処理を実行し、前記旋回中心設定処理は、(a) 前記ローラ旋回動作及び前記ローラ駆動動作を実行させ、前記第1及び第2のローラを所定の旋回方向に設定した状態で、前記第1のローラを回転させて前記車両の仮走行試験を行い、前記第1及び第2の検出速度を得るステップと、(b) 前記位置変更処理を実行させ、前記複数の設定位置に含まれる新たな設定位置に前記ローラ旋回機構の位置を変更するステップと、(c) 前記複数の設定位置すべてにおいて前記ステップ(a)が実行されるまで、前記ステップ(a)及び(b)を繰り返し実行させるステップと、(d) 前記複数の設定位置それぞれの前記第1及び第2の検出速度間の検出速度差に基づき、前記複数の設定位置に対応する複数の判定用速度差を算出し、前記複数の判定用速度差のうち最小値となる判定用速度差に対応する設定位置を最適設定位置として決定するステップと、(e) 前記位置変更処理を実行させ、前記ローラ旋回機構を前記最適設定位置に移動させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0030】
本開示の車両試験装置において、制御部は上述した旋回中心設定処理を実行することにより、複数の判定用速度差のうち最小値となる判定用速度差に対応する最適設定位置に、ローラ旋回機構を自動的に配置することができる。
【0031】
したがって、本開示の車両試験装置は、タイヤのタイヤ旋回中心と第1及び第2のローラのローラ旋回中心とが最も近い位置関係、理想的にはタイヤ旋回中心にローラ旋回中心が合致するように、ローラ旋回機構の位置設定を自動的に行うことができる。
【0032】
その結果、本開示の車両試験装置は、走行試験実行時にタイヤ位置ズレ現象が発生させることなく、車両に対する種々の走行試験を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施の形態1のシャーシダイナモメータに関し、車両の載置後の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1のシャーシダイナモメータに用いられるローラ装置の構造を示す正面図である。
【
図3】
図2のA-A断面を上方から視た上面図である。
【
図4】
図2のB-B断面を上方から視た上面図である。
【
図5】
図2のC-C断面を上方から視た上面図である。
【
図6】
図2のD-D断面を上方から視た上面図である。
【
図7】ローラ対の平面配置を模式的に示す説明図である。
【
図8】ローラ装置の側面配置を模式的に示す説明図である。
【
図9】
図7のE-E断面における断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図10】
図7のF-F断面における断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図11】ローラ装置の制御系を模式的に示す説明図である。
【
図12】本実施の形態のシャーシダイナモメータを用いたローラ旋回機構の移動方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】
図12で示したロードローラ加減速処理の処理内容を示すフローチャートである。
【
図14】
図12で示した位置変更処理の処理内容を示すフローチャートである。
【
図15】
図14で示した位置変更処理の処理内容を示すフローチャートである。
【
図16】
図15で示した左右方向移動ルーチンの実行内容を示す説明図である。
【
図17】左右方向移動ルーチンの実行時における実施の形態のローラ装置の状態を示す説明図(その1)である。
【
図18】左右方向移動ルーチンの実行時における実施の形態のローラ装置の状態を示す説明図(その2)である。
【
図19】
図15で示した前後方向移動ルーチンの実行内容を示す説明図である。
【
図20】前後方向移動ルーチンの実行時における実施の形態のローラ装置の状態を示す説明図(その1)である。
【
図21】前後方向移動ルーチンの実行時における実施の形態のローラ装置の状態を示す説明図(その2)である。
【
図22】ローラ旋回機構の複数の設定位置の座標及び処理手順の一例を表形式で示す説明図である。
【
図23】
図12で示した最適設定位置の決定処理の第1の処理手順を示すフローチャートである。
【
図24】
図12で示した最適設定位置の決定処理の第2の処理手順を示すフローチャートである。
【
図25】実施の形態のシャーシダイナモメータにおける効果を示す説明図である。
【
図26】従来のシャーシダイナモメータにおける問題点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<実施の形態>
(原理)
図26(d)で示したように、フリーローラである後方ローラ20Rは回転しなくなると、前方ローラ20Fの回転速度と後方ローラ20Rの回転速度との間に大きな速度差が生じる。このように、前方ローラ20Fの回転速度と後方ローラ20Rの回転速度との速度差は、ローラ旋回中心C2とタイヤ旋回中心C6との位置関係を示す有益な判断材料となる。
【0035】
本開示の車両試験装置は、ロードローラとなる前方ローラ20Fの回転速度とフリーローラとなる後方ローラ20Rとの回転速度の速度差に着目している。
【0036】
(全体構成)
図1は実施の形態のシャーシダイナモメータ1に関し、車両60の載置後の構成を模式的に示す斜視図である。なお、
図1にXYZ直交座標系を示している。本実施の形態では車両試験装置としてシャーシダイナモメータ1を用いている。
【0037】
図1に示すように、4つのローラ装置2のローラ対20上に車両60の4つのタイヤ6が載置される。各ローラ装置2は、車両60のタイヤ6を載置するローラ対20を有している。さらに、図示しない車両固定手段によって、車両60が4つのローラ装置2のローラ対20上に載置された状態で固定される。この際、車両60は左右のローラ装置2,2間のセンターラインCLに対し左右対称になるように載置される。
【0038】
床面50上において、車両60の前方(+Y方向)にX方向を長手方向、Z方向を短手方向とした矩形状の画像シミュレータ62が設けられる。シミュレーション補助部材である画像シミュレータ62は、車両60から視覚認識可能な全景色を表示する表示機能を有している。
【0039】
また、車両60は図示しない外界センサを有しても良い。外界センサとして、コーナーセンサ等に利用されるレーダ及びライダー(LiDAR)やサイドカメラ(サイド電子ミラー)等が考えられる。
【0040】
シャーシダイナモメータ1は、必要に応じて車両60のタイヤ6の角度情報や画像シミュレータ62等を用い、必要に応じて車両60の上記外界センサからの情報を受け、車両60に対する走行試験を行う。走行試験には、車両60のタイヤ6を旋回されるタイヤ旋回動作と、タイヤ旋回動作に併せてローラ対20を旋回されるローラ旋回動作とを伴う試験が含まれる。
【0041】
(ローラ装置2)
図2は本実施の形態のシャーシダイナモメータ1に用いられるローラ装置2の構造を示す正面図である。
図2では後方(-Y方向)から視た正面図を示している。
図2にXYZ直交座標系を記している。ステアリング操作によって車両60の前輪側の2つのタイヤ6がタイヤ旋回動作を行う場合、少なくとも前輪側の2台のローラ装置として、
図2で示すローラ装置2が用いられる。
【0042】
同図に示すように、ローラ装置2はベース台25上に設けられ、前後方向移動機構5B、左右方向移動機構4B、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4T、前後方向移動機構5T及びローラ駆動機構8を主要構成要素として含んでいる。
【0043】
第1の前後方向移動機構である前後方向移動機構5Bはベース台25上に設けられ、駆動モータ40、レール51、ガイド55及び移動台車30を主要構成要素として含んでいる。第1の前後方向移動用ベッドである移動台車30は、レール51に沿って前後方向となるY方向に沿って移動可能である。
【0044】
図3は
図2のA-A断面を上方(+Z方向)から視た上面図である。
図3に示すように、ベース台25上に一対のレール51がY方向に沿って互いに並行に設けられる。各レール51には複数のガイド55(
図3では2つのガイド55を示している)が設けられる。
図2に示すように、各ガイド55の上面に第1の前後方向移動用ベッドとなる移動台車30が固定される。
【0045】
図2及び
図3に示すように、ベース台25上に第1の前後方向用モータである駆動モータ40が設けられる。なお、駆動モータ40は回転軸40aを回転させ、移動台車30を移動させる動力源となっている。回転軸40aは一対の支持用軸受40bによって回転可能に支持される。
【0046】
したがって、駆動モータ40によって移動台車30をY方向に移動させる第1の前後方向移動処理を実行することができる。この際、一対のレール51及び複数のガイド55によって移動台車30はY方向に沿って正確に移動するようにガイドされる。
【0047】
移動台車30の移動に連動して、移動台車30上に配置された、左右方向移動機構4B、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4T、前後方向移動機構5T及びローラ駆動機構8がY方向に沿って移動する。
【0048】
したがって、シャーシダイナモメータ1の前後方向移動機構5Bは第1の前後方向移動処理を実行することにより、ローラ装置2全体をY方向に沿って移動させることができる。ここで、Y方向は、ローラ装置2に載置される車両60の前後方向に合致した方向となる。
【0049】
このように、前後方向移動機構5Bは、ローラ旋回機構3及びローラ対20を共に前後方向に沿って移動させる、第1の前後方向移動処理を実行する。なお、前後方向移動機構5Bによる第1の前後方向移動処理は、試験対象の車両60のホイールベースに適合させるためのホイールベース調整用移動処理を兼ねている。
【0050】
前後方向移動機構5Bの移動台車30上に左右方向移動機構4Bが設けられる。第1の左右方向移動機構である左右方向移動機構4Bは、駆動モータ41、レール52、ガイド56及び移動用ベッド31を主要構成要素として含んでいる。
【0051】
図4は
図2のB-B断面を上方(+Z方向)から視た上面図である。
図4に示すように、移動台車30上に一対のレール52がX方向に沿って互いに並行に設けられる。各レール52には複数のガイド56(
図4では2つのガイド56を示している)が設けられる。
図2に示すように、各ガイド56の上面に第1の左右方向移動用ベッドである移動用ベッド31が固定される。
【0052】
図2及び
図4に示すように、移動台車30上に第1の左右方向用モータである駆動モータ41が設けられる。駆動モータ41は回転軸41aを回転させ、移動用ベッド31を移動させる動力源となっている。回転軸41aは一対の支持用軸受41bによって回転可能に支持される。
【0053】
したがって、第1の左右方向移動機構である左右方向移動機構4Bは、駆動モータ41によって移動用ベッド31をX方向に移動させる第1の左右方向移動処理を実行することができる。この際、一対のレール52及び複数のガイド56によって移動用ベッド31はX方向に沿って正確に移動するようにガイドされる。
【0054】
第1の左右方向移動用ベッドである移動用ベッド31の移動に連動して、移動用ベッド31上に配置された、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4T、前後方向移動機構5T及びローラ駆動機構8がX方向に沿って移動する。
【0055】
したがって、シャーシダイナモメータ1は、左右方向移動機構4Bに第1の左右方向移動処理を実行させることにより、ローラ装置2の左右方向移動機構4B上方の構成部を、X方向(左右方向)に沿って移動させることができる。
【0056】
左右方向移動機構4Bによって第1の左右方向移動処理が実行される際、前後方向移動機構5Bは左右方向に移動することはない。前後方向移動機構5Bは移動用ベッド31の移動に連動していないからである。
【0057】
このように、左右方向移動機構4Bは、第1の左右方向用モータである駆動モータ41によって第1の左右方向移動用ベッドである移動用ベッド31をX方向に沿って移動させる第1の左右方向移動処理を実行する。
【0058】
ここで、X方向は、ローラ装置2のローラ10上にタイヤ6が載置される車両60左右方向に合致した方向となる。したがって、左右方向移動機構4Bは、ローラ旋回機構3及びローラ対20を共に左右方向に沿って移動させる、第1の左右方向移動処理を実行する。
【0059】
移動用ベッド31上にローラ旋回機構3が設けられる。ローラ旋回機構3は、旋回ベッド32、旋回用モータ42、及び旋回軸受38を主要構成要素として含んでいる。
【0060】
旋回用モータ42は速度制御が可能なギヤ付モータである。旋回用モータ42の先端にはギヤが取り付けられ、旋回ベッド32の外周に取り付けられたギヤ(図示せず)とかみ合わせている。したがって、旋回用モータ42の回転により、旋回ベッド32を旋回させることができる。
【0061】
旋回軸受38は旋回可能に旋回ベッド32を支持しており、旋回軸受38の中心を旋回中心として、旋回用モータ42の動力で旋回ベッド32を旋回させている。このように、ローラ旋回機構3は、旋回用モータ42によって旋回される旋回ベッド32を有している。
【0062】
ローラ旋回機構3における旋回ベッド32の旋回に連動して、ローラ旋回機構3より上方の左右方向移動機構4T、前後方向移動機構5T及びローラ駆動機構8は旋回する。
【0063】
旋回軸受38の空洞部の中心がローラ対20のローラ旋回中心C2となる。したがって、ローラ旋回機構3は、ローラ対20を旋回させるローラ旋回動作を実行することができる。
【0064】
ローラ旋回機構3の旋回ベッド32上に第2の左右方向移動機構である左右方向移動機構4Tが設けられる。左右方向移動機構4Tは、駆動モータ43、レール53、ガイド57及び移動用ベッド33を主要構成要素として含んでいる。
【0065】
図5は
図2のC-C断面を上方(+Z方向)から視た上面図である。
図5に示すように、旋回ベッド32上に一対のレール53がX方向に沿って互いに並行に設けられる。各レール53には複数のガイド57(
図5では2つのガイド57を示している)が設けられる。
図2に示すように、各ガイド57の上面に第1の移動用ベッドである移動用ベッド33が固定される。
【0066】
図2及び
図5に示すように、旋回ベッド32上に第1の移動用モータである駆動モータ43が設けられる。駆動モータ43は回転軸43aを回転させ、移動用ベッド33を移動させる動力源となっている。回転軸43aは一対の支持用軸受43bによって回転可能に支持される。
【0067】
したがって、左右方向移動機構4Tは、駆動モータ43によって移動用ベッド33をX方向に移動させる第2の左右方向移動処理を実行することができる。この際、一対のレール53及び複数のガイド57によって移動用ベッド33はX方向に沿って正確に移動するようにガイドされる。
【0068】
移動用ベッド33の移動に連動して、移動用ベッド33上に配置された前後方向移動機構5T及びローラ駆動機構8がX方向に沿って移動する。
【0069】
したがって、シャーシダイナモメータ1の左右方向移動機構4Tは第2の左右方向移動処理を実行することにより、左右方向移動機構4Bより上方に存在するローラ装置2の構成部をX方向(左右方向)に沿って移動させることができる。
【0070】
左右方向移動機構4Tによって第2の左右方向移動処理が実行される際、左右方向移動機構4Tの下方に位置するローラ旋回機構3は左右方向に移動することはない。ローラ旋回機構3は移動用ベッド33の移動に連動していないからである。
【0071】
このように、左右方向移動機構4Tは、第2の左右方向用モータである駆動モータ43によって第2の左右方向移動用ベッドである移動用ベッド33をX方向に沿って移動させる第2の左右方向移動処理を実行する。すなわち、左右方向移動機構4Tは、ローラ旋回機構3及びローラ対20のうち、ローラ対20のみを左右方向に沿って移動させる、第2の左右方向移動処理を実行する。
【0072】
左右方向移動機構4Tの移動用ベッド33上に第2の前後方向移動機構である前後方向移動機構5Tが設けられる。前後方向移動機構5Tは、駆動モータ44、レール54、ガイド58及び移動用ベッド34を主要構成要素として含んでいる。
【0073】
図6は
図2のD-D断面を上方(+Z方向)から視た上面図である。
図6に示すように、移動用ベッド33上に一対のレール54がY方向に沿って互いに並行に設けられる。各レール54には複数のガイド58(
図6では2つのガイド58を示している)が設けられる。
図2に示すように、各ガイド58の上面に第2の前後方向移動用ベッドとなる移動用ベッド34が固定される。
【0074】
図2及び
図6に示すように、移動用ベッド33上に第2の前後方向用モータである駆動モータ44が設けられる。なお、駆動モータ44は回転軸44aを回転させ、移動用ベッド34を移動させる動力源となっている。回転軸44aは一対の支持用軸受44bによって回転可能に支持される。
【0075】
したがって、駆動モータ44によって移動用ベッド34をY方向に移動させる第2の前後方向移動処理を実行することができる。この際、一対のレール54及び複数のガイド58によって移動用ベッド34はY方向に沿って正確に移動するようにガイドされる。
【0076】
移動用ベッド34の移動に連動して、移動用ベッド34上に設けられるローラ駆動機構8がY方向に沿って移動する。
【0077】
したがって、シャーシダイナモメータ1の前後方向移動機構5Tは第2の前後方向移動処理を実行することにより、各ローラ装置2のローラ対20をY方向に沿って移動させることができる。
【0078】
前後方向移動機構5Tによって第2の前後方向移動処理が実行される際、前後方向移動機構5Tより下方に存在するローラ旋回機構3は前後方向に移動することはない。ローラ旋回機構3は移動用ベッド34の移動に連動していないからである。
【0079】
このように、第2の前後方向移動機構である前後方向移動機構5Tは、第2の前後方向用モータである駆動モータ44によって第2の前後方向移動用ベッドである移動用ベッド34をY方向に移動させる第2の前後方向移動処理を実行する。すなわち、前後方向移動機構5Tはローラ旋回機構3及びローラ対20のうち、ローラ対20のみを前後方向に沿って移動させる第2の前後方向移動処理を実行する。
【0080】
上述した左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tの組合せが位置変更機構MVとなる。位置変更機構MVによって、ローラ対20上に載置されるタイヤ6のタイヤ旋回中心C6に対するローラ旋回機構3の位置を変更する位置変更処理が実行される。
【0081】
左右方向移動機構4Bはローラ対20及びローラ旋回機構3を共に左右方向(X方向)に沿って移動させる第1の左右方向移動処理を実行する。左右方向移動機構4Tは、ローラ旋回機構3及びローラ対20のうち、ローラ対20のみを左右方向に沿って移動させる第1の左右方向移動処理を実行する。
【0082】
前後方向移動機構5Bはローラ対20及びローラ旋回機構3を共に前後方向(Y方向)に沿って移動させる第1の前後方向移動処理を実行する。前後方向移動機構5Tは、ローラ旋回機構3及びローラ対20のうち、ローラ対20のみを前後方向(Y方向)に沿って移動させる第2の左右方向移動処理を実行する。
【0083】
位置変更機構MVによる位置変更処理は、上述した第1及び第2の左右方向移動処理並びに第1及び第2の前後方向移動処理の組合せとなる。
【0084】
ローラ対20を有するローラ駆動機構8は、前後方向移動機構5Tの移動用ベッド34上に設けられる。
【0085】
ツインローラ構成対応のローラ駆動機構8は、ダイナモ11、カップリング15、ギヤボックス26、ローラ用軸受け27、ローラ対20及び回転軸28を主要構成要素として含んでいる。ここで、回転軸28は一対の回転軸28となり、ローラ用軸受け27は一対の回転軸28に対応する一対のローラ用軸受け27となる。
【0086】
ダイナモ11及びギヤボックス26は移動用ベッド34上に固定され、駆動源となるダイナモ11からカップリング15及びギヤボックス26を介して、一対の回転軸28それぞれを回転駆動させている。具体的には、ギヤボックス26内で回転動作伝達機能を2つに分岐させて、一対の回転軸28の回転駆動を可能にしている。
【0087】
移動用ベッド34上にダイナモ11を跨ぐように一対のローラ用軸受け27が設けられる。一対の回転軸28はギヤボックス26と一対のローラ用軸受け27との間でローラ対20が回転可能に支持される。
【0088】
ローラ対20それぞれの中心部を貫通するように一対の回転軸28が取り付けられることにより、一対の回転軸28の回転共にローラ対20は回転動作を実行することができる。
【0089】
したがって、ローラ駆動機構8は、第1のローラである前方ローラ20Fを回転駆動するローラ駆動動作を実行する。また、ローラ駆動機構8は、第2のローラである後方ローラ20Rを回転駆動するローラ駆動動作も実行することができる。
【0090】
なお、移動用ベッド34上にシングルローラ構成対応のローラ駆動機構8を2つ設けることにより、ツインローラ構成にしても良い。
【0091】
図7はローラ装置2L及びローラ装置2Rの平面配置を模式的に示す説明図である。
図8はローラ装置2Rの側面配置を模式的に示す説明図である。
図9は
図7のE-E断面における断面構造を模式的に示す説明図である。
図10は
図7のF-F断面における断面構造を模式的に示す説明図である。
図7~
図10それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0092】
本実施の形態のローラ装置2は、車両60の前方または後方の一対のタイヤを載置する装置であり、一対のタイヤは左タイヤであるタイヤ6Lと右タイヤであるタイヤ6Rとを含んでいる。
【0093】
本実施の形態のローラ装置2は、ローラ対20として第1のローラである前方ローラ20Fと、第2のローラである後方ローラ20Rとの組み合わせを有している。
【0094】
図7に示すように、ローラ装置2は、車両60のタイヤ6Lに対応して設けられる左用ローラ装置としてローラ装置2Lと、車両60のタイヤ6Rに対応して設けられる右用ローラ装置としてローラ装置2Rとを含んでいる。
【0095】
ローラ装置2L及びローラ装置2Rはそれぞれ、上述したローラ旋回機構3によって、ローラ旋回方向R2に沿って、前方ローラ20F及び後方ローラ20Rを旋回させるローラ旋回動作を実行することができる。
【0096】
ローラ装置2L及び2Rはそれぞれ位置変更機構MVを有している。ローラ装置2L及び2Rそれぞれの位置変更機構MVは同時に位置変更処理を実行する。
【0097】
図7及び
図8に示すように、タイヤ6R(6L)はそれぞれ前方ローラ20F及び後方ローラ20R上に載置される。なお、
図7及び
図8では、ローラ対20を模式的に示している関係で、前方ローラ20Fと後方ローラ20Rとが接触している図示内容となっている。実際は、前方ローラ20Fと後方ローラ20Rとの間は微小な空間を有し、前方ローラ20Fと後方ローラ20Rとは接触していない。
【0098】
図9に示すように、ローラ装置2Lの前方ローラ20Fの回転軸28の軸端付近に回転検出器81Lが設けられる。回転検出器81Lはローラ装置2Lにおける前方ローラ20Fの回転速度を検出して検出速度V1Lを得る。
【0099】
同様に、ローラ装置2Rの前方ローラ20Fの回転軸28の軸端付近に回転検出器81Rが設けられる。回転検出器81Rはローラ装置2Rにおける前方ローラ20Fの回転速度を検出して検出速度V1Rを得る。
【0100】
なお、前方ローラ20Fはロードローラとして使用されるため、回転検出器81L及び81Rを、前方ローラ20Fの動力源のモータとなるダイナモ11に設定しても良い。
【0101】
回転検出器81Lより得られる検出速度V1Lが左用第1の検出速度となり、回転検出器81Rより得られる検出速度V1Rが右用第1の検出速度となる。
【0102】
このように、ローラ装置2L及び2Rを含むローラ装置2は、第1の回転検出器として回転検出器81L及び81Rを含み、回転検出器81L及び81Rによって検出された検出速度V1L及びV1Rが第1の検出速度となる。
【0103】
以下、回転検出器81L及び81Rを総称する場合、単に「回転検出器81」と表記し、検出速度V1L及びV1Rを総称する場合、単に「検出速度V1」と表記する場合がある。
【0104】
図10に示すように、ローラ装置2Lの後方ローラ20Rの回転軸28の軸端付近に回転検出器82Lが設けられる。回転検出器82Lはローラ装置2Lにおける後方ローラ20Rの回転速度を検出して検出速度V2Lを得る。
【0105】
同様に、ローラ装置2Rの後方ローラ20Rの回転軸28の軸端付近に回転検出器82Rが設けられる。回転検出器82Rはローラ装置2Rにおける後方ローラ20Rの回転速度を検出して検出速度V2Rを得る。
【0106】
回転検出器82Lより得られる検出速度V2Lが左用第2の検出速度となり、回転検出器82Rより得られる検出速度V2Rが右用第2の検出速度となる。
【0107】
このように、ローラ装置2L及び2Rを含むローラ装置2は、第2の回転検出器として回転検出器82L及び82Rを含み、回転検出器82L及び82Rによって検出される検出速度V2L及びV2Rが第2の検出速度となる。
【0108】
以下、回転検出器82L及び82Rを総称する場合、単に「回転検出器82」と表記し、検出速度V2L及びV2Rを総称する場合、単に「検出速度V2」と表記する場合がある。
【0109】
図11はローラ装置2の制御系を模式的に示す説明図である。本実施の形態のシャーシダイナモメータ1はローラ装置2及び制御部80を主要構成要素として備えている。
図11ではローラ装置2内のローラ旋回機構3、位置変更機構MV、ローラ駆動機構8、回転検出器81及び82をブロック化して示している。
【0110】
同図に示すように、制御部80は回転検出器81及び82より得られる検出速度V1及びV2を受け、ローラ旋回機構3、位置変更機構MV及び前方ローラ20Fを制御して、ローラ旋回動作、位置変更処理及びローラ駆動動作を実行させている。
【0111】
具体的には、制御部80はローラ旋回機構3に駆動信号SD3を付与することによりローラ旋回機構3によるローラ旋回動作を実行させ、位置変更機構MVに駆動信号SDPを付与することにより位置変更機構MVによる位置変更処理を実行させる。
【0112】
さらに、制御部80はローラ駆動機構8に駆動信号SD8を付与することにより、ローラ駆動機構8に前方ローラ20Fを回転させるローラ駆動動作を実行させることができる。
【0113】
本実施の形態のローラ装置2において、前方ローラ20Fを自身が回転駆動するロードローラとして用いている。一方、後方ローラ20Rは接触するタイヤ6の回転動作に連動して回転するフリーローラとして用いている。したがって、駆動信号SD8は後方ローラ20Rに回転駆動を指示しないため、制御部80は後方ローラ20Rをダイナモ11から切り離している。
【0114】
なお、前方ローラ20F及び後方ローラ20Rはそれぞれロードローラまたはフリーローラとして用いることはできる。ロードローラはモータとなるダイナモ11の駆動により自身が回転するローラを意味し、フリーローラはダイナモ11から切り離され、タイヤ6の回転に従い回転するローラを意味する。
【0115】
このように、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1では、前方ローラ20Fをロードローラとして用い、後方ローラ20Rをフリーローラとして用いている。
【0116】
(ローラ旋回機構3の移動方法)
図12は実施の形態のシャーシダイナモメータ1を用いたローラ旋回機構3の移動方法の処理手順を示すフローチャートである。以下、同図を参照して、ローラ旋回機構3の移動方法の処理内容を説明する。
【0117】
以下では、ステアリング操作によって車両60の前輪側の一対のタイヤ6がタイヤ旋回動作を行うとの仮定の下、説明する。
【0118】
加えて、前述したように、車両60の前輪側の一対のタイヤ6の左側をタイヤ6L、右側をタイヤ6Rとし、タイヤ6L用のローラ装置2をローラ装置2Lとし、タイヤ6R用のローラ装置2をローラ装置2Rとして説明する。ここで、ローラ装置2Lが左用ローラ装置となり、ローラ装置2Rが右用ローラ装置となる。
【0119】
さらに、タイヤ6Lの旋回中心を左タイヤ旋回中心C6Lとし、タイヤ6Rの旋回中心を右タイヤ旋回中心C6Rとし、ローラ装置2Lにおけるローラ対20の旋回中心を左ローラ旋回中心C2Lとし、ローラ装置2Rにおけるローラ対20の旋回中心を右ローラ旋回中心C2Rとする。
【0120】
また、ローラ旋回機構3の移動方法を実行するに際し、ローラ旋回機構3の候補移動位置として複数の設定位置が予め準備されている。
【0121】
図12を参照して、まず、ステップS1において、ローラ旋回機構3のローラ旋回中心C2を上述した複数の設定位置に含まれる初期設定位置に設定する。
【0122】
ステップS1の実行時は、ローラ装置2L及び2R上に車両60が配置されていないため、各々がローラ旋回機構3を含むローラ装置2L及び2Rを人手により移動させて、ローラ旋回機構3を初期設定位置に配置することができる。なお、ステップS1の実行時においても、位置変更機構MVに位置変更処理を実行させてローラ旋回機構3を初期設定位置に設定しても良い。
【0123】
その後、ステップS2において、4つのローラ対20上に車両60の4つのタイヤ6を配置する。4つのローラ対20のうち、少なくとも前輪用の2つのローラ対20はそれぞれ
図2~
図6で示したローラ装置2内に設けられ、上部の一部が床面50から露出している。ステップS2の実行により、車両60は左右のローラ装置2L及び2R間のセンターラインCLに対し左右対称になるように載置される。
【0124】
さらに、ステップS2において、ステップS3以降の旋回中心設定処理が行えるように、4つのローラ対20上に配置された車両60が固定される。ローラ対20上に配置された車両60の固定は既存の車両固定機構を用いて行われる。
【0125】
このように、ステップS1及びS2の実行により、ローラ旋回機構3を複数の設定位置に含まれる初期設定位置に設定し、かつ、ローラ対20上に車両60のタイヤ6を配置及び固定した状態が設定される。
【0126】
以下では、4つのローラ対20のうち、前輪用の2つのローラ対20はそれぞれ
図2~
図6で示したローラ装置2内に設けられていることを前提として説明する。
【0127】
以降のステップS3~S7において、制御部80の制御下で旋回中心設定処理が実行される。
【0128】
まず、ステップS3において、制御部80から駆動信号SD3をローラ旋回機構3に付与し、かつ、前輪用のローラ装置2におけるローラ駆動機構8に駆動信号SD8を付与することにより、ロードローラ加減速処理を実行する。
【0129】
ここで、駆動信号SD3はローラ旋回機構3を所定の旋回方向に設定するための信号となり、駆動信号SD8は前方ローラ20Fの回転駆動を指示し、後方ローラ20Rの回転駆動を指示しない信号となる。
【0130】
したがって、ステップS3において、ローラ旋回機構3によるローラ旋回動作及びローラ駆動機構8によるローラ駆動動作を実行させることにより、ローラ対20を所定の旋回方向に設定し、回転速度を加減速する態様で第1のローラである前方ローラ20Fを回転させた状態の試験環境を実現している。
【0131】
そして、ステップS3のロードローラ加減速処理は、上記試験環境下で車両60の仮走行試験を行い、回転検出器81及び82から第1及び第2の検出速度となる検出速度V1及びV2が得る処理となる。
【0132】
このように、ステップS3は、ローラ旋回動作及びローラ駆動動作を実行させ、ローラ対20を所定の旋回方向に設定した状態で、回転速度を加減速する態様で前方ローラ20Fを回転させて車両60の仮走行試験を行い、検出速度V1及びV2を得るステップとなる。
【0133】
図13は、
図12で示したステップS3の処理内容を示すフローチャートである。同図に示すように、ステップS3はステップS31~S33を含んでいる。
【0134】
図13を参照して、ステップS31において、直進方向加減速処理を実行する。すなわち、ステップS31は、ローラ対20を直進方向に設定した状態で、回転速度を加減速する態様で前方ローラ20Fを回転させて車両60の直進走行試験を行うステップとなる。ステップS31の実行時に回転検出器81及び82から得られる検出速度V1及びV2が直進時検出速度V11及びV21となる。
【0135】
ここで、直進時検出速度V11が直進時第1の検出速度となり、直進時検出速度V21が直進時第2の検出速度となる。なお、直進方向は車両60の前後方向に合致した方向となる。
【0136】
また、直進時検出速度V11及びV21はローラ装置2L及び2Rそれぞれから得られる。ローラ装置2Lから得られる直進時検出速度V11及びV21が直進時検出速度V11L及びV21Lとなり、ローラ装置2Rから得られる直進時検出速度V11及びV21が直進時検出速度V11R及びV21Rとなる。
【0137】
次に、ステップS32において、左旋回加減速処理を実行する。すなわち、ステップS32は、ローラ対20を左旋回方向に設定した状態で、回転速度を加減速する態様で前方ローラ20Fを回転させて車両60の左旋回走行試験を行うステップとなる。ステップS32の実行時に回転検出器81及び82から得られる検出速度V1及びV2が左旋回時検出速度V12及びV22となる。
【0138】
ここで、左旋回時検出速度V12が左旋回時第1の検出速度となり、左旋回時検出速度V22が左旋回時第2の検出速度となる。なお、左旋回方向は直進方向から所定の角度、左方向に旋回させた方向となる。左旋回方向を複数の角度に設定しても良い。
【0139】
また、左旋回時検出速度V12及びV22はローラ装置2L及び2Rそれぞれから得られる。ローラ装置2Lから得られる左旋回時検出速度V12及びV22が左旋回時検出速度V12L及びV22Lとなり、ローラ装置2Rから得られる左旋回時検出速度V12及びV22が左旋回時検出速度V12R及びV22Rとなる。
【0140】
その後、ステップS33において、右旋回加減速処理を実行する。すなわち、ステップS33は、ローラ対20を右旋回方向に設定した状態で、回転速度を加減速する態様で前方ローラ20Fを回転させて車両60の右旋回走行試験を行うステップとなる。ステップS33の実行時に回転検出器81及び82から得られる検出速度V1及びV2が右旋回時検出速度V13及びV23となる。
【0141】
ここで、右旋回時検出速度V13が右旋回時第1の検出速度となり、右旋回時検出速度V23が右旋回時第2の検出速度となる。なお、右旋回方向は直進方向から所定の角度、右方向に旋回させた方向となる。右旋回方向を複数の角度に設定しても良い。
【0142】
また、右旋回時検出速度V13及びV23はローラ装置2L及び2Rそれぞれから得られる。ローラ装置2Lから得られる右旋回時検出速度V13及びV23が右旋回時検出速度V13L及びV23Lとなり、ローラ装置2Rから得られる右旋回時検出速度V13及びV23が右旋回時検出速度V13R及びV23Rとなる。
【0143】
ここで、直進時検出速度V11L、左旋回時検出速度V12L及び右旋回時検出速度V13Lは、左用第1の検出速度に分類され、直進時検出速度V11R、左旋回時検出速度V12R及び右旋回時検出速度V13Rが右用第1の検出速度に分類される。
【0144】
同様に、直進時検出速度V21L、左旋回時検出速度V22L、及び右旋回時検出速度V23Lが左用第2の検出速度に分類され、直進時検出速度V21R、左旋回時検出速度V22R、及び右旋回時検出速度V23Rが右用第2の検出速度に分類される。
【0145】
図13で示すステップS31~S33では、所定の旋回方向として、上述した直進方向、右旋回方向及び右旋回方向を設定しており、仮走行試験として、ステップS31の直進走行試験、ステップS32の左旋回走行試験及びステップS33の前記右旋回走行試験を実行している。
【0146】
直進方向試験、左旋回走行試験及び右旋回走行試験は、前方ローラ20Fの回転速度を加速状態にしたり、減速状態にしたりした動作環境下で行われる。
【0147】
したがって、ステップS3の実行期間中に、第1の検出速度となる検出速度V1として、直進時検出速度V11(V11L,V11R)、左旋回時検出速度V12(V12L,V12R)及び右旋回時検出速度V13(V13L,V23R)が検出される。
【0148】
さらに、ステップS3の実行期間中に、第2の検出速度となる検出速度V2として、直進時検出速度V21(V21L,V21R)、左旋回時検出速度V22(V22L,V22R)及び右旋回時検出速度V23(V23L,V23R)が検出される。
【0149】
このように、ステップS3の実行期間中に、ローラ旋回中心C2の複数の設定位置のうち一の設定位置における検出速度V1(V11~V13)及びV2(V21~V23)を検出することができる。なお、ステップS3の実行期間中に検出速度V1及びV2は、回転検出器81及び82の検出期間毎に時々刻々と検出される。
【0150】
図12に戻って、ステップS3の実行後、ステップS4において、制御部80から位置変更機構MVに駆動信号SDPを付与することにより、位置変更機構MVによるローラ旋回機構3の位置変更処理が実行される。位置変更処理は、車両60(タイヤ旋回中心C6を含む)を移動させることなく、ローラ旋回機構3の位置を変更する処理となる。
【0151】
すなわち、ステップS4は、位置変更機構MVに位置変更処理を実行させ、複数の設定位置に含まれる新たな設定位置にローラ旋回機構3の位置を変更するステップとなる。ローラ旋回機構3の位置変更に伴いローラ旋回中心C2も変更されることになる。
【0152】
図14は
図12で示したステップS4の位置変更処理の処理内容を示すフローチャートである。以下、同図を参照して、位置変更処理の処理内容を説明する。
【0153】
まず、ステップS4Aにおいて、制御部80はローラ旋回機構3及びローラ駆動機構8を制御して、ローラ対20を直進方向に設定した状態で、前方ローラ20Fを一定の回転速度で回転駆動する。この際、制御部80から駆動信号SD3がローラ旋回機構3に付与され、前輪用のローラ装置2におけるローラ駆動機構8に駆動信号SD8が付与される。
【0154】
ここで、駆動信号SD3はローラ旋回機構3を直進方向に設定するための信号となり、駆動信号SD8は前輪用のローラ装置2における前方ローラ20Fを一定の回転速度の回転駆動を指示する信号となる。
【0155】
このように、ステップS4Aは、ローラ旋回動作及びローラ駆動動作を実行させ、ローラ対20を直進方向に設定した状態で、前方ローラ20Fを一定速度で回転させるステップとなる。
【0156】
その後、ステップS4Bにおいて、ステップS4Aで設定したローラ回転環境下で、位置変更機構MVに位置変更処理を実行させ、複数の設定位置のうち新たな設定位置にローラ旋回機構3の位置を変更する。ローラ旋回機構3の位置変更に伴いローラ旋回中心C2も位置変更される。
【0157】
すなわち、ステップS4Bは、ステップS4Aで設定したローラ回転環境下で、位置変更機構MVに位置変更処理を実行させて、新たな設定位置にローラ旋回機構3の位置を変更するステップとなる。
【0158】
図15は
図14で示したステップS4Bで示す位置変更処理の処理内容を示すフローチャートである。同図に示すように、ステップS4Bは、左右方向移動ルーチンSLRを実行し、その後、前後方向移動ルーチンSFBを実行している。なお、前後方向移動ルーチンSFBを先に実行し、左右方向移動ルーチンSLRを後に実行するようにしても良い。
【0159】
図16は
図15で示した左右方向移動ルーチンSLRの実行内容を示す説明図である。
図17及び
図18は左右方向移動ルーチンSLRの実行時におけるローラ装置2L及び2Rの状態を示す説明図である。
図17は左右方向移動ルーチンSLRの実行開始時の状態を示し、
図18は左右方向移動ルーチンSLRの実行終了時の状態を示している。なお、
図17及び
図18それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0160】
以下、これらの図を参照して左右方向移動ルーチンSLRの処理内容を説明する。複数の設定位置はローラ旋回中心C2の座標位置によって指定される。ここで、ローラ旋回中心C2(C2L,C2R)に関し、現在の設定位置P0から新たな設定位置P1に変更するためのX方向の移動量の絶対値が|ΔX1|であり、Y方向の移動量の絶対値が|ΔY1|であるとする。
【0161】
また、
図17において、ローラ装置2Lにおける初期最左端線EL0とローラ装置2Rにおける初期最右端線ER0とが示されている。
【0162】
なお、前述したように、ステップS2の実行時に、車両60はローラ装置2L及び2R間のセンターラインCLに対し左右対称になるように載置されるため、左右方向(X方向)の移動量の絶対値は同一となり、移動方向が反対方向となる。
【0163】
ここで、設定位置P0,P1はローラ装置2Lに対して設定されると仮定する。すなわち、設定位置P0,P1は左ローラ旋回中心C2Lの座標位置を示していると仮定する。したがって、
図17に示すように、設定位置P0から設定位置P1へのローラ旋回機構3のX方向の移動処理として、左ローラ旋回中心C2Lを+X方向に移動量|ΔX1|で移動させる場合、右ローラ旋回中心C2Rを-X方向に移動量|ΔX1|に移動させる処理となる。
【0164】
上記の場合、左右方向移動ルーチンSLRとして、以下のステップS41~S44の処理が並行して同時に実行される。すなわち、ローラ装置2L及び2Rは位置変更処理に含まれる第1及び第2の左右方向移動処理を同時に実行している。
【0165】
ステップS41において、ローラ装置2Lの左右方向移動機構4Bの第1の左右方向移動処理(移動内容+ΔX1)によって、ローラ旋回機構3及びローラ対20双方を+X方向に向けて移動させる。ステップS41で実行されるローラ装置2Lの第1の左右方向移動処理に関し、第1の左右移動方向が+X方向となり、左右方向移動量が|ΔX1|となる。
【0166】
ステップS42において、ローラ装置2Rの左右方向移動機構4Bの第1の左右方向移動処理(移動内容-ΔX1)によって、ローラ旋回機構3及びローラ対20双方を-X方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Rの第1の左右方向移動処理に関し、第1の左右移動方向が-X方向となり、左右方向移動量が|ΔX1|となる。
【0167】
ステップS43において、ローラ装置2Lの左右方向移動機構4Tの第2の左右方向移動処理(移動内容-ΔX1)によって、ローラ旋回機構3及びローラ対20のうちローラ対20のみを-X方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Lの第2の左右方向移動処理に関し、第2の左右移動方向が-X方向となり、左右方向移動量が|ΔX1|となる。
【0168】
ステップS44において、ローラ装置2Rの左右方向移動機構4Tの第2の左右方向移動処理(移動内容+ΔX1)によって、ローラ旋回機構3及びローラ対20のうちローラ対20のみを+X方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Rの第2の左右方向移動処理に関し、第2の左右移動方向が+X方向となり、左右方向移動量が|ΔX1|となる。
【0169】
上述したステップS41~S44として実行される、ローラ装置2Lの左右方向移動機構4Bによる第1の左右方向移動処理、ローラ装置2Rの左右方向移動機構4Bによる第1の左右方向移動処理、ローラ装置2Lの左右方向移動機構4Tによる第2の左右方向移動処理、及び、ローラ装置2Rの左右方向移動機構4Tによる第2の左右方向移動処理それぞれの左右方向(X方向)に沿った左右移動速度も同一に設定される。
【0170】
ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、左右方向移動機構4Bによる第1の左右方向移動処理と、左右方向移動機構4Tによる第2の左右方向移動処理とは同一の左右方向移動量(|ΔX1|)で同時に実行される。
【0171】
さらに、ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、第1の左右移動方向と第2の左右移動方向とは互いに反対方向に設定されている。具体的には、ローラ装置2Lでは、第1の左右移動方向が+X方向、第2の左右移動方向は-X方向となり、ローラ装置2Rでは、第1の左右移動方向が-X方向、第2の左右移動方向は+X方向となる。
【0172】
このため、
図17及び
図18に示すように、ローラ装置2L及び2Rそれぞれのローラ対20の絶対位置は、ローラ装置2L及び2Rそれぞれによる第1及び第2の左右方向移動処理の実行前後において変化しない。したがって、ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、X方向におけるローラ対20とタイヤ6(6L、6R)との位置関係も変化しない。
【0173】
図17及び
図18に示すように、ステップS41~S44の実行後に絶対位置が移動したのは、斜線部で示す左右方向移動機構4Bの主要部、ローラ旋回機構3、及び左右方向移動機構4Tの一部となる。その結果、ステップS41~S44の実行前後において、初期最左端線EL0が処理後最左端線EL1に変化し、初期最右端線ER0が処理後最右端線ER1に変化する。
【0174】
このように、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、ローラ装置2Lにおける第1及び第2の左右方向移動処理とローラ装置2Rにおける第1及び第2の左右方向移動処理とを同時に実行している。
【0175】
このため、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、ローラ対20とタイヤ6の位置関係を変更することなく、左ローラ旋回中心C2Lを+X方向に移動量|ΔX1|で移動させ、かつ、右ローラ旋回中心C2Rを-X方向に移動量|ΔX1|で移動させることができる。すなわち、左右方向移動ルーチンSLRの実行により、タイヤ旋回中心C6(C6L,C6R)に対するローラ旋回機構3のX方向の設定位置を変更することができる。
【0176】
図19は
図15で示した前後方向移動ルーチンSFBの実行内容を示す説明図である。
図20及び
図21は前後方向移動ルーチンSFBの実行時におけるローラ装置2(2L,2R)の状態を示す説明図である。
図20は前後方向移動ルーチンSFBの実行開始時の状態を示し、
図21は前後方向移動ルーチンSFBの実行終了時の状態を示している。なお、
図20及び
図21それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0177】
以下、これら図を参照して前後方向移動ルーチンSFBの処理内容を説明する。ここで、ローラ旋回機構3の移動として、ローラ旋回中心C2(C2L,C2R)を+Y方向に移動量|ΔY1|で移動させる場合を想定する。
【0178】
なお、
図12で示すステップS2の実行時に、車両60のタイヤ6L及び6Rは前後方向に位置ズレなく、ローラ装置2L及び2Rのローラ対20上に載置されるため、左側及び右側旋回中心間位置ズレ間で前後方向(Y方向)の移動量の絶対値は同一となり、移動方向も同一方向となる。
【0179】
前述したように、設定位置P0,P1はローラ装置2Lに対して設定されると仮定している。すなわち、設定位置P0,P1は左ローラ旋回中心C2Lの座標位置を示している。したがって、
図20に示すように、設定位置P0から設定位置P1へのローラ旋回機構3のY方向の移動は、左ローラ旋回中心C2Lを+Y方向に移動量|ΔY1|で移動させ、右ローラ旋回中心C2Rも+Y方向に移動量|ΔY1|に移動させる処理となる。
【0180】
上記の場合、
図19に示すように、前後方向移動ルーチンSFBとして、以下のステップS45~S48の処理が並行して同時に実行される。
【0181】
ステップS45において、ローラ装置2Lの前後方向移動機構5Bの第1の前後方向移動処理(移動内容+ΔY1)によって、ローラ旋回機構3及びローラ対20双方を+Y方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Lの第1の前後方向移動処理に関し、第1の前後移動方向が+Y方向となり、前後方向移動量が|ΔY1|となる。
【0182】
ステップS46において、ローラ装置2Rの前後方向移動機構5Bの第1の前後方向移動処理(移動内容+ΔY1)によって、ローラ旋回機構3及びローラ対20双方を+方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Rの第1の前後方向移動処理に関し、第1の前後移動方向が+Y方向となり、前後方向移動量|ΔY1|となる。
【0183】
ステップS47において、ローラ装置2Lの前後方向移動機構5Tの第2の前後方向移動処理(移動内容-ΔY1)によって、ローラ旋回機構3及びローラ対20のうちローラ対20のみを-Y方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Lの第2の前後方向移動処理に関し、第2の前後移動方向が-Y方向となり、前後方向移動量|ΔY1|となる。
【0184】
ステップS48において、ローラ装置2Rの前後方向移動機構5Tの第2の前後方向移動処理(移動内容-ΔY1)によって、ローラ旋回機構3及びローラ対20のうちローラ対20のみを-Y方向に向けて移動させる。ここで、ローラ装置2Rの第2の前後方向移動処理に関し、第2の前後移動方向が-Y方向となり、前後方向移動量|ΔY1|となる。
【0185】
上述したステップS45~S48として実行される、ローラ装置2Lの前後方向移動機構5Bによる第1の前後方向移動処理、ローラ装置2Rの前後方向移動機構5Bによる第1の前後方向移動処理、ローラ装置2Lの前後方向移動機構5Tによる第2の前後方向移動処理、及び、ローラ装置2Rの前後方向移動機構5Tによる第2の前後方向移動処理それぞれの前後方向(Y方向)に沿った前後移動速度も同一に設定される。
【0186】
ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、前後方向移動機構5Bによる第1の前後方向移動処理と、前後方向移動機構5Tによる第2の前後方向移動処理とは同一の前後方向移動量(|ΔY1|)で同時に実行される。
【0187】
さらに、ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、第1の前後移動方向と第2の前後移動方向とは互いに反対方向に設定されている。具体的には、ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、第1の左右移動方向が+Y方向、第2の左右移動方向は-Y方向となる。
【0188】
このため、
図20及び
図21に示すように、ローラ装置2L及び2Rそれぞれのローラ対20の絶対位置は、ローラ装置2L及び2Rそれぞれによる第1及び第2の前後方向移動処理の実行前後において変化しない。したがって、ローラ装置2L及び2Rそれぞれにおいて、Y方向におけるローラ対20とタイヤ6(6L、6R)の位置関係も変化しない。
【0189】
図20及び
図21に示すように、ステップS41~S44の実行後に絶対位置が移動したのは、斜線部で示す、前後方向移動機構5Bの一部、左右方向移動機構4B、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4T、及び前後方向移動機構5Tの一部となる。
【0190】
上述したように、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、ローラ装置2Lにおける第1及び第2の前後方向移動処理とローラ装置2Rにおける第1及び第2の前後方向移動処理とを同時に実行している。
【0191】
このため、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、ローラ対20とタイヤ6の位置関係を変更することなく、前後方向において、タイヤ旋回中心C6に対し左ローラ旋回中心C2L及びC2Rを+Y方向に移動量|ΔY1|移動させることができる。すなわち、前後方向移動ルーチンSFBの実行により、タイヤ旋回中心C6(C6L,C6R)に対するローラ旋回機構3のY方向の設定位置を変更することができる。
【0192】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tを含む位置変更機構MVを有しているため、上述したローラ旋回機構3の位置変更処理(
図12のステップS4,
図14,
図15,
図19参照)を実行することができる。
【0193】
このため、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、ローラ対20上にタイヤ6を載置した状態で、タイヤ旋回中心C6に対するローラ旋回機構3の位置を変更することができる。そして、ローラ旋回機構3の位置変更により、タイヤ旋回中心C6に対するローラ旋回中心C2の位置を併せて変更することができる。
【0194】
図22は
図12で示したステップS4の位置変更処理の対象となる複数の設定位置の座標及び処理手順の一例を表形式で示す説明図である。
【0195】
同図に示すように、設定値の座標は(Xi(i=1~n),Yj(j=1~n))で示されている。X座標Xiは車両60の左右方向であるX方向の座標を示している。Y座標Yjは車両60の前後方向(直進方向)であるY方向の座標を示している。なお、前述したように複数の設定位置それぞれの座標はローラ旋回機構3におけるローラ旋回中心C2(C2L)に対して設定される。
【0196】
図22で示す例は、複数の設定位置として(n×n)個の設定位置が示されている。座標(X1,Y1)がステップS1の初期設定位置となり、座標(X2,Y1)が最初のステップS4の位置変更処理で設定される設定位置となる。なお、複数の設定位置は、例えば、車両60のカタログ等に記載のトレッド位置に対してX座標及びY座標それぞれの正方向及び負方向に数十mm単位間隔で所定数分、設定させる態様で予め準備されている。
【0197】
以降のステップS4の位置変更処理では、座標(X3,Y1),…,(Xn,Y1),(X1,Y2),(X2,Y2),…,(Xn,Y2),(X1,Y3),(X2,Y3),…,(Xn,Yn)の順でローラ旋回機構3の設定位置が変更される。
【0198】
以下、説明の都合上、n=3の場合を例にして、ステップS4の位置変更処理の処理手順を説明する。この場合、
図22の丸数字で示すように処理(1)~処理(9)の順で実行される。
【0199】
すなわち、処理(1)の座標(X1,Y1)がステップS1の初期設定位置となり、処理(2)の座標(X2,Y1)が最初のステップS4の位置変更処理で設定される設定位置となる。
【0200】
以降のステップS4の位置変更処理における処理(3)~処理(9)で、座標(X3,Y1),(X1,Y2),(X2,Y2),(X3,Y2),(X1,Y3),(X2,Y3),(X3,Y3)の順でローラ旋回中心C2の設定位置が変更される。
【0201】
処理(4)を実行する際、移動量|ΔX1|は|X1-X3|となり、X1>X3の場合の移動方向は+X方向となり、X1<X3の場合の移動方向は+X方向となる。同様に、移動量|ΔY1|は|Y2-Y1|となり、Y2>Y1の場合の移動方向は+Y方向となり、Y2<Y1の場合の移動方向は+Y方向となる。
【0202】
処理(2)、処理(3)、処理(5)、処理(6)、処理(8)及び処理(9)は、Y座標が変化しないため、移動量|ΔY1|が“0”となり、前後方向移動ルーチンSFBの実行が省略され、ステップS4Bの処理内容の簡略化を図ることができる。
【0203】
図12に戻って、ステップS5において、複数の設定位置すべてにおいてステップS3のロードローラ加減速処理が終了したか(YES)否か(NO)が確認される。したがって、ステップS4で新たな設定位置への変更がなされた場合、ステップS5は「NO」となる。
【0204】
以降、ステップS5で「YES」が判定されるまで、ステップS3,S4が繰り返し実行される。最終的に、ステップS4で新たな設定位置への変更が行われなかった場合、ステップS5は「YES」となる。
【0205】
例えば、
図22で示す例において、座標(X(n-1),Yn)から座標(Xn,Yn)への位置変更処理の実行後、ステップS5,S3を経て、ステップS4が実行される際、複数の設定位置すべてにおけるロードローラ加減速処理が行われたことになる。この場合、ステップS4では新たな設定位置への変更は行われず、ステップS5は「YES」となる。
【0206】
ステップS5でYESの場合に実行されるステップS6において、制御部80はローラ旋回機構3におけるローラ旋回中心C2の最適設定位置を決定する。
【0207】
このように、ステップS5は、複数の設定位置すべてにおいてステップS3が実行されるまで、ステップS3及びS4を繰り返し実行させるステップとなる。
【0208】
図23は
図12のステップS6で示した最適設定位置の決定処理の第1の処理手順を示すフローチャートである。
【0209】
制御部80は、複数の設定位置それぞれにおいて、ステップS31~S33の実行時に時々刻々変化する検出速度V1及びV2を得ている。
【0210】
ステップS31の実行時に、制御部80は、検出速度V1及びV2として直進時検出速度V11及びV21を取得している。ステップS32の実行時に、制御部80は、検出速度V1及びV2として左旋回時検出速度V12及びV22を取得している。ステップS33の実行時に、制御部80は、検出速度V1及びV2として右旋回時検出速度V13及びV23を取得している。
【0211】
したがって、制御部80は、ステップS31の実行期間中に直進時検出速度V11及びV21間の速度差に基づき、ローラ旋回機構3の設定位置に対応する直進時速度差ΔV11を算出することができる。
【0212】
ここで、直進時速度差ΔV11として、加速時の所定期間における直進時検出速度V11及びV21間の平均速度差(第1種速度差)、減速時の所定期間における直進時検出速度V11及びV21間の平均速度差(第2種速度差)や、第1種速度差と第2種速度差の平均速度差(第3種速度差)等、様々な速度差を算出することができる。
【0213】
同様に、制御部80は、ステップS32の実行期間中に左旋回時検出速度V12及びV22間の速度差に基づき、ローラ旋回機構3の設定位置に対応する左旋回速度差ΔV12を算出することができる。
【0214】
さらに、制御部80は、ステップS33の実行期間中に右旋回時検出速度V13及びV23間の速度差に基づき、ローラ旋回機構3の設定位置に対応する右旋回時速度差ΔV13を算出することができる。
【0215】
左旋回速度差ΔV12及び右旋回時速度差ΔV13として、直進時速度差ΔV11と同様、上述した第1種~第3種速度差等、様々な速度差を算出することができる。さらに、左旋回方向及び右旋回方向の角度を複数に設定して、異なる旋回角度毎に速度差を算出するようにしても良い。
【0216】
また、ローラ装置2はローラ装置2L及び2Rで構成されるため、前述したように、ローラ装置2L及び2Rそれぞれで直進時速度差ΔV11、左旋回速度差ΔV12及び右旋回時速度差ΔV13が算出される。
【0217】
すなわち、ローラ装置2Lに関し、直進時速度差ΔV11L、左旋回時速度差ΔV12L及び右旋回時速度差ΔV13Lが算出され、ローラ装置2Rに関し、直進時速度差ΔV11R、左旋回時速度差ΔV12R及び右旋回時速度差ΔV13Rが算出される。
【0218】
このように、制御部80は、ステップS3(S31~S33)の実行期間中に、複数の設定位置それぞれに関し6種類の速度差(ΔV11L,ΔV11R,ΔV12L、ΔV12R、ΔV13L及びΔV13R)を算出することができる。
【0219】
したがって、ステップS6の実行開始時には、制御部80は複数の設定位置に対応して6種類の速度差を複数個算出することができる。
【0220】
図24に戻って、ステップS61において、制御部80は、複数の設定位置それぞれについて以下の式(1)を適用して速度差総和SMVを算出する。この速度差総和SMVが判定用速度差となる。
【0221】
SMV=ΔV11L+ΔV12L+ΔV13L+ΔV11R+ΔV12R+ΔV13R…(1)
【0222】
ステップS61の実行後、複数の設定位置に対応する複数の速度差総和SMVが算出される。例えば、複数の設定位置がN個の設定位置の場合、N個の速度差総和SMVが算出される。
【0223】
次に、ステップS62において、制御部80は、複数の設定位置のうち、速度差総和SMVが最小となる設定位置を最適設定位置に決定する。すなわち、複数の判定用速度差となる複数の速度差総和SMVのうち、最小となる速度差総和SMVを最小速度差総和SMV(MIN)とすると、複数の設定位置のうち最小速度差総和SMV(MIN)に対応する設定位置が最適設定位置となる。
【0224】
図24は
図12のステップS6で示した最適設定位置の決定処理の第2の処理手順を示すフローチャートである。同図において、ステップS63で最大速度差MXVを算出する。
【0225】
前述したように、ステップS6の実行開始時には、制御部80は複数の設定位置それぞれに対応する上述した6種類の速度差(ΔV11L,ΔV11R,ΔV12L、ΔV12R、ΔV13L及びΔV13R)を算出している。
【0226】
ステップS63において、制御部80は、複数の設定位置それぞれについて以下の式(2)を適用して最大速度差MXVを算出する。この最大速度差MXVが判定用速度差となる。
【0227】
MXV=MAX(ΔV11L,ΔV12L,ΔV13L,ΔV11R,ΔV12R,ΔV13R)…(2)
式(2)において、MAX(…)は、カッコ内のパラメータのうち、最大値となるパラメータを最大速度差MXVとする関数である。
【0228】
ステップS63の実行後、複数の設定位置に対応する複数の最大速度差MXVが算出される。例えば、複数の設定位置がN個の設定位置の場合、N個の最大速度差MXVが算出される。
【0229】
次に、ステップS64において、制御部80は、複数の設定位置のうち、最大速度差MXVが最小となる設定位置を最適設定位置に決定する。すなわち、複数の判定用速度差となる複数の最大速度差MXVのうち、最小となる最大速度差MXVを最大速度差最小値MXV(MIN)とすると、複数の設定位置のうち最大速度差最小値MXV(MIN)に対応する設定位置が最適設定位置となる。
【0230】
このように、
図23及び
図24で示した第1及び第2の処理手順を含むステップS6を実行して最適設定位置を決定することができる。ローラ旋回機構3の最適設定位置は、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とが最も近い位置関係、理想的にはタイヤ旋回中心C6にローラ旋回中心C2が合致する位置となることが推測される。
【0231】
図12に戻って、ステップS6の実行後、ステップS7にて、位置変更機構MVに位置変更処理を実行させて、ローラ旋回機構3の最適設定位置への移動を行う。
【0232】
制御部80の制御下でステップS7を実行することにより、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とが最も近い位置関係、理想的にはタイヤ旋回中心C6にローラ旋回中心C2が合致するように、ローラ旋回機構3を自動的に移動させることができる。
【0233】
なお、ステップS7の処理は、例えば、
図14のステップS4A及びS4Bと同内容で行われる。ステップS6において、
図22で示した複数の設定位置のうち、座標(X3,Y3)が最適設定位置として決定された場合、移動量|ΔX1|は|X3-Xn|となり、X3>Xnの場合の移動方向は+X方向となり、X3<Xnの場合の移動方向は-X方向となる。同様に、移動量|ΔY1|は|Y3-Yn|となり、Y3>Ynの場合の移動方向は+Y方向となり、Y3<Ynの場合の移動方向は-Y方向となる。
【0234】
(効果)
本実施の形態の車両試験装置であるシャーシダイナモメータ1において、制御部80の制御下で
図12のステップS3~S7を含む旋回中心設定処理を実行することにより、複数の判定用速度差(速度差総和SMVまたは最大速度差MXV)のうち、最小値となる判定用速度差に対応する最適設定位置にローラ旋回機構3を自動的に配置することができる。
【0235】
したがって、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とが最も近い位置関係、理想的にはタイヤ旋回中心C6にローラ旋回中心C2が合致するように、ローラ旋回機構3の位置設定を自動的に行うことができる。
【0236】
その結果、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、走行試験実行時にタイヤ位置ズレ現象を発生させることなく、車両60に対する種々の走行試験を精度良く行うことができる。
【0237】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1において、検出速度差は、直進時速度差ΔV11、左旋回速度差ΔV12、及び右旋回時速度差ΔV13を含んでいる。
【0238】
したがって、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1の制御部80は、ステップS6の実行時に、直進時速度差ΔV11、左旋回速度差ΔV12、及び右旋回時速度差ΔV13に基づき、複数の設定位置に対応する複数の判定用速度差(速度差総和SMV,最大速度差MXV)を精度良く算出することができる。
【0239】
制御部80は、ステップS6として
図23で示したステップS61及びS62を実行して、複数の速度差総和SMVのうち最小値となる最小速度差総和SMV(MIN)に対応する設定位置を最適設定位置として決定している。このため、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、比較的簡単な演算処理によって、ローラ旋回機構3の総合的の走行試験に適合して最適設定位置を決定することができる。
【0240】
制御部80は、ステップS6として
図24で示したステップS63及びS64を実行して、複数の最大速度差MXVのうち最小値となる最大速度差最小値MXV(MIN)に対応する設定位置を最適設定位置として決定している。このため、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、比較的簡単な演算処理によって、ローラ旋回機構3の局所的な走行試験を考慮して最適設定位置を決定することができる。なお、「局所的な走行試験の考慮」とは、例えば、「左旋回走行試験」等の限られた走行試験が悪化しないようにする等の考慮を意味する。
【0241】
なお、判定用速度差は、上述した速度差総和SMVや最大速度差MXVに限定されず、検出速度V1及びV2間の速度差に基づき多様に設定することができる。
【0242】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1の制御部80は、ステップS4に含まれる
図14で示したステップS4A及びS4Bにおいて、ローラ旋回機構3の旋回角度を直進方向にし、第1のローラである前方ローラ20Fを一定速度で回転させた状態のローラ回転環境下で位置変更処理を実行している。このため、ステップS4の位置変更処理の実行時にタイヤ6を変形させる現象を回避することができる。
【0243】
なぜなら、前方ローラ20Fを回転させながら位置変更処理を実行した方が、タイヤ6に無理な力がかからないからである。一方、前方ローラ20Fの回転を停止して、位置変更処理を実行した場合、タイヤ6が変形する可能性が高くなる。
【0244】
その結果、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、ステップS3で得られる第1及び第2の検出速度である検出速度V1及びV2の正確性を高めることができるため、ステップS6において決定される最適設定位置の精度向上を図ることができる。
【0245】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1はローラ装置2としてローラ装置2L及び2Rを含む。このため、制御部80はステップS6の実行時に、左用検出速度差及び右用検出速度差に基づき、左右のタイヤ6L及び6R間でバランスがとれた判定用速度差を算出することができる。
【0246】
なお、左用検出速度差は、直進時速度差ΔV11L、左旋回時速度差ΔV12L、及び右旋回時速度差ΔV13Lを含み、右用検出速度差は、直進時速度差ΔV11R、右旋回時速度差ΔV12R、及び右旋回時速度差ΔV13Rを含んでいる。
【0247】
したがって、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、タイヤ6L及び6R間でバランスがとれた最適設定位置を決定することができる。
【0248】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は。左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tを含み、上述した位置変更処理を実行する位置変更機構MVを有している。
【0249】
ここで、ローラ装置2のローラ対20上に車両60のタイヤ6を配置した初期状態時に、
図26(a),(b)に示すように、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とがずれていた場合を考える。
【0250】
すなわち、初期状態時において、
図26(a),(b)に示すように、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2との間にX方向のズレ量DX(DX2)とY方向のズレ量DY(DY2)とが存在している場合を想定する。
【0251】
上述したように、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1におけるローラ装置2(2L,2R)は、
図2~
図6で示した左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tを含む位置変更機構MVを有している。この位置変更機構MVは、ローラ対20上に載置されるタイヤ6のタイヤ旋回中心C6に対するローラ旋回機構3(ローラ旋回中心C2)の位置を変更する位置変更処理を実行することができる。
【0252】
このため、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1の制御部80は、位置変更機構MVを制御して、ステップS4及びS7それぞれにおいて、ローラ旋回機構3の位置変更処理を実行させることができる。
【0253】
そして、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、ローラ対20上にタイヤ6を載置した状態で、ローラ対20上に載置されるタイヤ6のタイヤ旋回中心C6に対するローラ旋回機構3の位置を変更し、最終的にローラ旋回機構3を最適設定位置に設定することができる。
【0254】
したがって、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、理想的にはタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とが合致する最適設定位置に、ローラ旋回機構3を配置することができる。
【0255】
その結果、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、走行試験実行時にタイヤ位置ズレ現象が発生させることなくタイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う車両60の走行試験を精度良く行うことができる。
【0256】
シャーシダイナモメータ1のローラ装置2Lとローラ装置2Rとは同時に位置変更処理を実行することにより、タイヤ6L及び6R間で車両60を動かすことなくバランス良く位置変更処理を実行することができる。位置変更処理には第1及び第2の左右方向移動処理(ステップS41~S44)並びに第1及び第2の前後方向移動処理(ステップS45~S48)が含まれる。
【0257】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、左右方向移動機構4B及び4Tに加え、前後方向移動機構5B及び5T5を有している。前後方向移動機構5B及び5Tによる第1及び第2の前後方向移動処理を実行することができる。
【0258】
このように、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、ローラ対20上に車両60のタイヤ6を載置して、
図12のステップS3~S7で示した旋回中心設定処理を実行することにより、理想的には平面視してタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とが合致するように、ローラ旋回機構3を最適設定位置に配置することができる。
【0259】
したがって、ローラ旋回機構3を最適設定位置に配置することにより、理想的にはタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とが合致した状態で、車両60に対する種々の走行試験を行うができるため、ローラ旋回動作及びタイヤ旋回動作を伴う車両60の走行試験の精度を大幅に高めることができる。
【0260】
以下、この点を詳述する。
図25は本実施の形態のシャーシダイナモメータ1における上記効果を示す説明図である。
【0261】
図25(a)及び(b)は車両の直進状態(初期状態)時のローラ対20(20F,20B)とタイヤ6との位置関係を示す平面図及び側面図であり、
図25(c)及び(d)は車両のタイヤ6及びローラ対20を旋回させた場合のローラ対20とタイヤ6との位置関係を示す平面図及び側面図である。
図25(a)~(d)それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0262】
図25では前方ローラ20Fをロードローラとして用い、後方ローラ20Rをフリーローラとして用いている。したがって、前方ローラ20Fのタイヤ回転方向K2Fとタイヤ6のタイヤ回転方向K6とは反対の関係になり、タイヤ6のタイヤ回転方向K6と後方ローラ20Rのタイヤ回転方向K2Rとは反対の関係になる。
【0263】
なお、
図25(c),(d)で示すX軸及びY軸は、
図25(a),(b)と比較容易にすべく、便宜上、
図25(a),(b)のX軸及びY軸に一致させている。実際には、ローラ旋回動作及びタイヤ旋回動作に伴いタイヤ6やローラ対20とX軸及びY軸との関係は変化する。
【0264】
図25で示すツインローラ構成において、ローラ旋回機構3はローラ旋回中心C2を中心としてローラ旋回方向R2に沿ってローラ対20を旋回するローラ旋回動作を実行することができる。一方、車両60は上述したタイヤ旋回動作を実行することができる。
【0265】
図25を参照して、ローラ対20を有するツインローラ構成のローラ装置2による効果を説明する。
【0266】
図25(a),(b)に示すように、
図12のステップS3~S7で示した旋回中心設定処理を実行した結果、理想的にはタイヤ6のタイヤ旋回中心C6とローラ対20のローラ旋回中心C2とが合致している。
【0267】
例えば、
図12のステップS2の実行直後は、
図26(a),(b)に示すように、ローラ旋回中心C2とタイヤ旋回中心C6との間にズレ量DX2及びDY2を含む旋回中心間位置ズレ量が発生している場合を考える。
【0268】
このような場合でも、
図12のステップS3~S7で示す旋回中心設定処理の実行後において、理想的には、
図25(a),(b)に示すように、タイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とのXY平面における位置を一致させることができる。
【0269】
以下、
図25について説明する。
図25(a),(b)に示すように、車両60の直進状態時において、タイヤ6とローラ対20との位置関係は一定の状態で変化しない。
【0270】
さらに、
図25(c),(d)に示すように、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を実行しても、タイヤ6とローラ対20との位置関係は一定の状態で変化しない。
【0271】
このように、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、ローラ旋回機構3を最適設定位置に自動的に配置することにより、理想的にはタイヤ旋回中心C6とローラ旋回中心C2とが一致した状態でタイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う走行試験を車両60に対して行うことができる。
【0272】
すなわち、
図25に示すように、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、ローラ装置2が有するローラ対20上に車両60のタイヤ6を載置して、走行試験実行時にタイヤ位置ズレ現象が発生させることなく、タイヤ旋回動作及びローラ旋回動作を伴う車両60の走行試験を精度良く行うことができる。
【0273】
図2に戻って、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1におけるローラ装置2(2L,2R)は、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tを、ベース台25とローラ対20を有するローラ駆動機構8との間に高さ方向(Z方向)に沿って設けている。このため、本実施の形態のローラ装置2は、装置面積を増大させることなく、ローラ旋回機構3、左右方向移動機構4B及び4T並びに前後方向移動機構5B及び5Tを備えることができる。
【0274】
<その他>
上述した実施の形態では、車両試験装置としてシャーシダイナモメータ1を取り上げたが、車両試験装置はシャーシダイナモメータに限定されない。例えば、シャーシダイナモメータ1に替えて、車両試験装置としてフリーローラ試験装置を用いても良い。フリーローラ試験装置はローラ対20の重みだけで車両60の加減速負荷を与える装置であり、ローラ対20に動力を伝えない装置である。
【0275】
しかしながら、フリーローラ試験装置において、ローラ旋回機構3の位置決め配置する際に、ベルト等を介して前方ローラ20Fを回転させることができる。したがって、シャーシダイナモメータのように、ローラ対20に負荷をかけるモータを有していない装置であっても、車両試験装置として活用することができる。
【0276】
このように、本開示の車両試験装置はシャーシダイナモメータやフリーローラ試験装置を含んでいる。
【0277】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0278】
1 シャーシダイナモメータ
2,2L,2R ローラ装置
3 ローラ旋回機構
4B,4T 左右方向移動機構
5B,5T 前後方向移動機構
6,6L,6R タイヤ
8 ローラ駆動機構
20 ローラ対
20F 前方ローラ
20R 後方ローラ
60 車両
80 制御部
81,81L,81R,82,82L,82R 回転検出器
C2 ローラ旋回中心
C2L 左ローラ旋回中心
C2R 右ローラ旋回中心
C6 タイヤ旋回中心
C6L 左タイヤ旋回中心
C6R 右タイヤ旋回中心
MV 位置変更機構