(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】鋼帯の連続熱処理設備及び連続熱処理方法
(51)【国際特許分類】
C21D 9/56 20060101AFI20241209BHJP
C23C 2/00 20060101ALI20241209BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
C21D9/56 101F
C23C2/00
C23C2/40
(21)【出願番号】P 2024085562
(22)【出願日】2024-05-27
【審査請求日】2024-05-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】阪田 守
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-222631(JP,A)
【文献】特開2000-204417(JP,A)
【文献】特開2000-063959(JP,A)
【文献】特開2002-155318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/52 - 9/66
C23C 2/00 - 2/40
C21D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯を連続して加熱・冷却させて処理する鋼帯の連続熱処理設備において、鋼帯を加熱処理する加熱領域と、加熱・冷却処理した鋼帯を過時効処理する過時効領域との切り換えが可能な切り換え領域を設け
、前記の切り換え領域より上流側の位置に、鋼帯を加熱・冷却させる加熱・冷却領域を前記の切り換え領域に連続するように設け、鋼帯を前記の加熱・冷却領域に導入させる第1導入シール部を設けると共に、鋼帯を前記の切り換え領域に導入させる第2導入シール部を設ける一方、前記の切り換え領域より下流側の位置に、切り換え領域から導かれた鋼帯を冷却させる冷却領域を設けると共に、前記の冷却領域から導かれた鋼帯をメッキ処理するメッキ処理設備と、前記の冷却領域から導かれた鋼帯を前記のメッキ処理設備に導かずに排出させる排出経路を設けたことを特徴とする鋼帯の連続熱処理設備。
【請求項2】
請求項
1に記載の鋼帯の連続熱処理設備
を用い、鋼帯を前記の第1導入シール部を通して前記の加熱・冷却領域に導入させ、前記の鋼帯を加熱・冷却領域において加熱・冷却させる場合には、前記の切り換え領域を過時効領域として使用し、加熱・冷却領域において加熱・冷却処理された鋼帯を前記の過時効領域において過時効処理することを特徴とする鋼帯の連続熱処理
方法。
【請求項3】
請求項
2に記載の鋼帯の連続熱処理
方法において、前記の過時効領域で過時効処理された鋼帯を前記の冷却領域に導いて冷却させ、冷却された鋼帯をメッキ処理設備に導かずに排出経路を通して排出させることを特徴とする鋼帯の連続熱処理
方法。
【請求項4】
請求項
1に記載の鋼帯の連続熱処理設備
を用い、鋼帯を前記の第2導入シール部を通して前記の切り換え領域に導入させる場合には、前記の切り換え領域を加熱領域として使用し、第2導入シール部を通して導入された鋼帯を前記の加熱領域において加熱処理することを特徴とする鋼帯の連続熱処理
方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の鋼帯の連続熱処理
方法において、前記の加熱領域で加熱処理された鋼帯を前記の冷却領域に導いて冷却させ、冷却された鋼帯をメッキ処理設備に導いて、鋼帯にメッキ処理を行うことを特徴とする鋼帯の連続熱処理
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼帯を連続して加熱・冷却させて処理する鋼帯の連続熱処理設備及び連続熱処理方法に関するものである。特に、鋼帯を連続して加熱・冷却させてメッキ処理させる場合と、鋼帯を連続して加熱・冷却させ、加熱・冷却された鋼帯に対して過時効処理を行う場合とを簡単に切り換えることができるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼帯を連続して加熱・冷却させて処理する鋼帯の連続熱処理設備としては、例えば、特許文献1に示されるように、加熱帯と、均熱帯と、冷却帯とを順番に設けた焼鈍炉を用い、前記の焼鈍炉の冷却帯に隣接させて溶融亜鉛メッキ設備を設け、前記の焼鈍炉において焼鈍処理した鋼帯に亜鉛メッキ処理を行って、亜鉛メッキを加熱合金化させるようにしたものが示されている。
【0003】
一方、前記の焼鈍処理した鋼帯をメッキせずに利用する場合、通常は、前記のように加熱・冷却させて焼鈍させた鋼帯を過時効処理することが行われている。
【0004】
そして、特許文献2においては、加熱帯、均熱帯、徐冷帯、急冷帯、過時効帯、メッキ帯、最終冷却帯の順に鋼板が走行して鋼板を製造する表面処理鋼板製造設備において、前記過時効帯から搬送された鋼板を前記溶融金属に浸漬し、前記最終冷却帯に走行させる走行経路と、前記過時効帯から搬送された鋼板を前記溶融金属に浸漬させずに、前記最終冷却帯に走行させる走行経路とを切替える経路切替機構とを有するようにしたものが示されている。
【0005】
また、特許文献3においては、加熱帯、均熱帯、一次冷却帯、一次過時効帯、二次過時効帯、二次冷却帯及びウォータークエンチ式最終冷却帯が順次直列に配置された連続熱処理設備の一次過時効帯と二次過時効帯の間に、鋼帯に溶融亜鉛メッキを施すメッキポット、メッキ付着量調節機、合金化装置及び冷却装置を順次設け、更にメッキされた鋼帯を前記最終冷却帯まで通板する経路を、前記二次過時効帯及び二次冷却帯の炉殻外上部又は下部に設けるとともに鋼帯を一次過時効帯から二次過時効帯へ直接通板せしめるバイパスを、前記合金化装置と交差して設け、それぞれ内部に鋼帯の案内路を有する合金化装置交差部とバイパス交差部とを隣接して移動台車に載置し、該移動台車を前記合金化装置とバイパスとの交差部に設け、該移動台車を移動させて合金化装置交差部とバイパス交差部のいずれかを選択して鋼帯のパスを切替え自在となし、連続式溶融亜鉛メッキ鋼帯の製造と連続熱処理鋼帯の製造を切替えて行うようにしたものが示されている。
【0006】
ここで、前記の特許文献2、3に示されるものにおいては、焼鈍処理した鋼帯にメッキ処理を行う場合においても、焼鈍処理した鋼帯を過時効帯に導いて過時効処理を行うようにしている。
【0007】
しかし、焼鈍処理した鋼帯にメッキ処理を行う場合は、必ずしも、焼鈍処理した鋼帯を過時効処理する必要がなく、焼鈍処理した鋼帯を移動させる過時効帯の経路が無駄になると共に、焼鈍処理した鋼帯を過時効帯に導いて過時効処理すると、過時効処理された鋼帯の温度が、メッキ処理を行う温度よりも低くなってしまい、過時効処理した鋼帯をメッキ処理に適した温度に加熱させることが必要になり、ランニングコストが高くつく等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-180137号公報
【文献】特開2008-024981号公報
【文献】特開2002-155318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、鋼帯を連続して加熱・冷却させて処理する鋼帯の連続熱処理設備及びの連続熱処理方法における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0010】
本発明は、鋼帯を連続して加熱・冷却させて処理する鋼帯の連続熱処理設備及び連続熱処理方法において、焼鈍処理した鋼帯を移動させる過時効帯の経路が無駄になったり、ランニングコストが高くついたりすることなく、鋼帯を連続して加熱・冷却させてメッキ処理させる場合と、鋼帯を連続して加熱・冷却させ、加熱・冷却された鋼帯に対して過時効処理を行う場合とを簡単に切り換えることができるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る鋼帯の連続熱処理設備においては、前記のような課題を解決するため、鋼帯を連続して加熱・冷却させて処理する鋼帯の連続熱処理設備において、鋼帯を加熱処理する加熱領域と、加熱・冷却処理した鋼帯を過時効処理する過時効領域との切り換えが可能な切り換え領域を設け、前記の切り換え領域より上流側の位置に、鋼帯を加熱・冷却させる加熱・冷却領域を前記の切り換え領域に連続するように設け、鋼帯を前記の加熱・冷却領域に導入させる第1導入シール部を設けると共に、鋼帯を前記の切り換え領域に導入させる第2導入シール部を設ける一方、前記の切り換え領域より下流側の位置に、切り換え領域から導かれた鋼帯を冷却させる冷却領域を設けると共に、前記の冷却領域から導かれた鋼帯をメッキ処理するメッキ処理設備と、前記の冷却領域から導かれた鋼帯を前記のメッキ処理設備に導かずに排出させる排出経路を設けるようにした。
【0012】
そして、本発明の鋼帯の連続熱処理設備においては、前記の切り換え領域を、鋼帯を加熱処理する加熱領域と、加熱・冷却処理した鋼帯を過時効処理する過時効領域との切り換えることにより、鋼帯を処理する目的に応じた切り換えが簡単に行えるようになる。
【0013】
ここで、前記の切り換え領域を、鋼帯を加熱処理する加熱領域として使用する場合には、各種の加熱装置によって加熱領域内の温度を高温、例えば、最高炉温を950℃程度にして、鋼帯を800℃程度まで加熱させる一方、加熱・冷却処理した鋼帯を過時効処理する過時効領域として使用する場合には、加熱・冷却処理されて400℃程度になった鋼帯をさらに徐冷させて過時効処理するようにし、例えば、炉内温度を200℃程度にして、鋼帯を300℃程度まで徐冷させるようにする。
【0014】
また、本発明の鋼帯の連続熱処理設備においては、前記のように切り換え領域より上流側の位置に、鋼帯を加熱・冷却させる加熱・冷却領域を前記の切り換え領域に連続するように設け、鋼帯を前記の加熱・冷却領域に導入させる第1導入シール部を設けると共に、鋼帯を前記の切り換え領域に導入させる第2導入シール部を設ける一方、前記の切り換え領域より下流側の位置に、切り換え領域から導かれた鋼帯を冷却させる冷却領域を設けると共に、前記の冷却領域から導かれた鋼帯をメッキ処理するメッキ処理設備と、前記の冷却領域から導かれた鋼帯を前記のメッキ処理設備に導かずに排出させる排出経路を設けるようにした。
【0015】
ここで、本発明における鋼帯の連続熱処理方法においては、前記の連続熱処理設備を用い、前記のように切り換え領域より上流側の位置に、鋼帯を加熱・冷却させる加熱・冷却領域を設け、鋼帯を前記の第1導入シール部を通して前記の加熱・冷却領域に導入させ、前記の鋼帯を加熱・冷却領域において加熱・冷却させる場合には、前記の切り換え領域を過時効領域として使用し、加熱・冷却領域において加熱・冷却処理された鋼帯を前記の過時効領域において過時効処理させるようにすることができる。
【0016】
そして、前記のように過時効領域で過時効処理された鋼帯を前記の冷却領域に導いて冷却させ、冷却された鋼帯をメッキ処理設備に導かずに排出経路を通して排出させることができる。
【0017】
また、本発明における鋼帯の連続熱処理方法においては、前記の連続熱処理設備を用い、前記のように切り換え領域より上流側の位置に、鋼帯を加熱・冷却させる加熱・冷却領域を設けた場合においても、鋼帯を前記の第2導入シール部を通して前記の切り換え領域に導入させ、前記の切り換え領域を加熱領域として使用し、第2導入シール部を通して導入された鋼帯を前記の加熱領域において加熱処理することができる。このようにすると、前記の加熱・冷却領域を使用せずに、前記の切り換え領域を加熱領域として使用して、鋼帯を速やかに加熱処理することができる。
【0018】
そして、前記のように切り換え領域を加熱領域として使用し、鋼帯を加熱処理した後は、前記の鋼帯を前記の冷却領域に導いて冷却させ、冷却された鋼帯をメッキ処理設備に導いて、鋼帯にメッキ処理を行うようにすることができる。このように、加熱処理した後の鋼帯を冷却領域に導いて冷却させてメッキ処理する場合、加熱処理した後の鋼帯を冷却させる温度を、メッキ処理する温度、例えば、460℃程度し、鋼帯が冷却領域において過剰に冷却されるのを抑制できるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明における鋼帯の連続熱処理設備及び連続熱処理方法においては、前記のように鋼帯を加熱処理する加熱領域と、加熱・冷却処理した鋼帯を過時効処理する過時効領域との切り換えが可能な切り換え領域を設けたため、この切り換え領域を、鋼帯を加熱処理する加熱領域と、加熱・冷却処理した鋼帯を過時効処理する過時効領域とに切り換えることにより、鋼帯を処理する目的に応じた切り換えが簡単に行えるようになった。
【0020】
この結果、本発明における鋼帯の連続熱処理設備及び連続熱処理方法においては、従来のように焼鈍処理した鋼帯を移動させる過時効帯の経路が無駄になったり、ランニングコストが高くついたりすることなく、鋼帯を連続して加熱・冷却させてメッキ処理させる場合と、鋼帯を連続して加熱・冷却させ、加熱・冷却された鋼帯に対して過時効処理を行う場合とを簡単に切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る鋼帯の連続熱処理設備
及び連続熱処理方法において、鋼帯を加熱処理する加熱領域と、加熱・冷却処理した鋼帯を過時効処理する過時効領域との切り換えが可能な切り換え領域の上流側に設けた加熱・冷却領域に鋼帯を第1導入シール部から導入させる例を示し、前記の切り換え領域を過時効領域として使用し、加熱・冷却領域において加熱・冷却処理された鋼帯を過時効領域において過時効処理した後、前記の鋼帯を冷却領域において冷却させ、冷却された鋼帯を、排出経路を通して排出させる構成を示した概略説明図である。
【
図2】前記の実施形態に係る鋼帯の連続熱処理設備
及び連続熱処理方法において、鋼帯を加熱処理する加熱領域と、加熱・冷却処理した鋼帯を過時効処理する過時効領域との切り換えが可能な切り換え領域に設けた第2導入シール部から鋼帯を導入させる例を示し、前記の切り換え領域を加熱領域として使用し、鋼帯を加熱領域において加熱処理させ、加熱処理された鋼帯を冷却領域において冷却させた後、冷却された鋼帯をメッキ処理設備に導いて、鋼帯にメッキ処理を行う構成を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る鋼帯の連続熱処理設備及び連続熱処理方法を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る鋼帯の連続熱処理設備は下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0023】
この実施形態における鋼帯の連続熱処理設備
及び連続熱処理方法においては、
図1及び
図2に示すように、鋼帯Wを加熱処理する加熱領域11と、加熱・冷却処理した鋼帯Wを過時効処理する過時効領域12との切り換えが可能な切り換え領域10を設けている。
【0024】
また、前記の切り換え領域10よりも鋼帯Wの送り方向上流側の位置に、鋼帯Wを加熱・冷却させる加熱・冷却領域20を、切り換え領域10に連続するように設けている。
【0025】
ここで、前記の加熱・冷却領域20においては、鋼帯Wを導入させる第1導入シール部S1に一対の導入ローラーS1aを設け、この一対の導入ローラーS1aを通して外気が炉内に侵入しないようにしながら、鋼帯Wを加熱・冷却領域20内に導入させるようにしている。
【0026】
そして、前記の加熱・冷却領域20内において、鋼帯Wの送り方向下流側に向けて設けた鋼帯Wを加熱させる加熱帯21、加熱された鋼帯Wを均熱させる均熱帯22、均熱された鋼帯Wを冷却させる冷却帯23の順に連続して移動させるようにしている。
【0027】
また、前記の切り換え領域10においては、鋼帯Wを切り換え領域10内に導入させる第2導入シール部S2に一対の導入ローラーS2aを設け、この一対の導入ローラーS2aを通して外気が炉内に侵入しないようにしながら、鋼帯Wを前記の切り換え領域10内に導入させるようにしている。
【0028】
また、前記の切り換え領域10よりも鋼帯Wの送り方向下流側の位置に、前記の切り換え領域10から導かれた鋼帯Wを冷却させる冷却領域30を設けると共に、前記の冷却領域30から導かれた鋼帯Wをメッキ処理するメッキ処理設備40と、前記の冷却領域30から導かれた鋼帯Wを前記のメッキ処理設備40に導かずに排出させる排出経路50を設けている。
【0029】
そして、前記のメッキ処理設備40においては、溶融亜鉛等のメッキ液41を収容させたメッキ浴槽42を設けている。
【0030】
ここで、この実施形態における鋼帯の連続熱処理設備において、
図1に示すように、鋼帯Wを前記の第1導入シール部S1を通して前記の加熱・冷却領域20内に導入させる場合には、前記の切り換え領域10を加熱・冷却処理した鋼帯Wを過時効処理する過時効領域12として用いるようにする。
【0031】
そして、前記のように加熱・冷却領域20内に導入させた鋼帯Wを、前記の加熱帯21において800℃程度まで加熱させ、前記の均熱帯22において前記の鋼帯Wを均熱させた後、均熱された鋼帯Wを前記の冷却帯23において400℃程度まで冷却させるようにする。
【0032】
次いで、冷却帯23において冷却された鋼帯Wを、前記の過時効領域12(切り換え領域10)に導き、この過時効領域12において、前記の鋼帯Wをさらに徐冷させ、例えば、炉内温度を200℃程度にして、鋼帯を300℃程度に徐冷させて、過時効処理を行うようにする。
【0033】
ここで、鋼帯Wに対して、前記のような過時効処理を行うにあたっては、例えば、過時効領域12(切り換え領域10)内を加熱させる加熱装置(図示せず)を制御し、また過時効領域12(切り換え領域10)にファン(図示せず)、ガスクーラー(図示せず)、循環ダクト(図示せず)等を設けて、過時効領域12内の温度を制御させることができる。
【0034】
そして、前記のように過時効領域12で過時効処理された鋼帯Wを、前記の冷却領域30に導いて冷却させ、冷却された鋼帯Wを前記のメッキ処理設備40には導かずに、排出経路50を通して排出させるようにしている。
【0035】
このとき、メッキ経路(スナウト)51は、メッキ液41に浸漬させて炉内の雰囲気が漏れないようにシールされている。メッキ液41の無い場合はメッキ経路51の下部に蓋(図示せず)を取り付けてもよい。
【0036】
ここで、過時効処理された鋼帯Wを冷却領域30において冷却させるにあたっては、鋼帯Wの温度が150℃以下になるように冷却させるようにする。
【0037】
このとき、第2導入シール部S2は鋼帯Wが通らないため、1対の導入ローラーS2aどうしが密着して炉内の雰囲気が外部に漏れることはない。確実にシールできるように蓋(図示せず)を取り付けるようにしてもよい。
【0038】
このように、
図1に示すようにして鋼帯Wを処理させると、前記の加熱・冷却領域20内において加熱・冷却された鋼帯Wが、前記の過時効領域12において過時効処理することができる。
【0039】
また、この実施形態における鋼帯の連続熱処理設備において、
図2に示すように、前記の切り換え領域10よりも鋼帯Wの送り方向上流側における加熱・冷却領域20を用いないようにし、鋼帯Wを前記の第2導入シール部S2を通して前記の切り換え領域10内に導入させることができる。
【0040】
このように、鋼帯Wを前記の第2導入シール部S2を通して前記の切り換え領域10内に導入させる場合には、前記の切り換え領域10を、鋼帯Wを加熱処理する加熱領域11として用いるようにする。
【0041】
そして、前記のように第2導入シール部S2を通して加熱領域11内に導入させた鋼帯Wを、前記の加熱領域11内において800℃程度まで加熱させて均熱させるようにする。
【0042】
ここで、このように鋼帯Wを加熱領域11内において800℃程度まで加鋼させるにあたっては、加熱領域11(切り換え領域10)内を加熱させる加熱装置(図示せず)を制御して行う。
【0043】
また状況に応じて、加熱領域11(切り換え領域10)にファン(図示せず)、ガスクーラー(図示せず)、循環ダクト(図示せず)等を設けて、過時効領域12内の温度を制御するようにしてもよい。このとき、加熱領域11内の温度は、前記の過時効処理を行う過時効領域12の温度より高温になるようにする。
【0044】
そして、前記のように加熱領域11内において加熱・均熱させた鋼帯Wを、前記の冷却領域30に導いて冷却させ、冷却された鋼帯Wをメッキ経路(スナウト)51を通して前記のメッキ処理設備40に導くようにする。
【0045】
ここで、加熱・均熱させた鋼帯Wを、冷却領域30において冷却させてメッキ処理設備40に導くにあたっては、鋼帯Wをメッキ処理する温度、例えば、460℃程度まで冷却させるようにする。
【0046】
そして、このように冷却させた鋼帯Wを、溶融亜鉛等のメッキ液41が収容させたメッキ浴槽42に浸漬させて移動させ、前記の鋼帯Wにメッキ処理を行って排出させるようにする。
【0047】
このとき、炉内の雰囲気はメッキ液41によってシールされ、排出経路50には炉内の雰囲気が漏れないように蓋52を取り付ける。
【0048】
ここで、前記のように切り換え領域10を加熱領域11として使用する場合には、加熱領域11(切り換え領域10)よりも鋼帯Wの送り方向上流側における加熱・冷却領域20を用いずに、第2導入シール部S2を通して鋼帯Wを加熱領域11内に導入させるため、鋼帯Wを加熱・冷却領域20内に導いて移動させる必要がなく、鋼帯Wを移動させる経路を短くすることができる。
【0049】
このとき、第1導入シール部S1は鋼帯Wが通らないため、1対の導入ローラーS1aどうしが密着して炉内の雰囲気が外部に漏れることはない。確実にシールできるように蓋(図示せず)を取り付けるようにしてもよい。
【0050】
また、前記のように加熱領域11において加熱・均熱させた鋼帯Wを、冷却領域30において冷却させてメッキ処理設備40に導く場合には、鋼帯Wをメッキ処理する温度の460℃程度まで冷却させるだけでよく、鋼帯Wを冷却させるのに要する時間やコストを低減させることができ、効率の良いメッキ処理が行えるようになる。
【0051】
また、加熱領域11しか設けられていない既存の連続熱処理設備に対して、その上流に加熱・冷却領域20を追加させることにより、それまでの加熱領域11を、加熱領域11と過時効領域12に切り換えが可能な切り換え領域10とするような改造工事も可能となり、装置の機能性を向上させることもできる。
【符号の説明】
【0052】
10 :切り換え領域
11 :加熱領域
12 :過時効領域
20 :加熱・冷却領域
21 :加熱帯
22 :均熱帯
23 :冷却帯
30 :冷却領域
40 :メッキ処理設備
41 :メッキ液
42 :メッキ浴槽
50 :排出経路
51 :メッキ経路(スナウト)
52 :蓋
S1 :第1導入シール部
S1a :導入ローラー
S2 :第2導入シール部
S2a :導入ローラー
W :鋼帯
【要約】
【課題】 鋼帯を連続して加熱・冷却させて処理する鋼帯の連続熱処理設備おいて、焼鈍処理した鋼帯を移動させる過時効帯の経路が無駄になったり、ランニングコストが高くついたりすることなく、鋼帯を連続して加熱・冷却させてメッキ処理させる場合と、鋼帯を連続して加熱・冷却させ、加熱・冷却された鋼帯に対して過時効処理を行う場合とを簡単に切り換えるようにする。
【解決手段】 鋼帯Wを連続して加熱・冷却させて処理する鋼帯の連続熱処理設備において、鋼帯を加熱処理する加熱領域11と、加熱・冷却処理した鋼帯を過時効処理する過時効領域12との切り換えが可能な切り換え領域10を設けた。
【選択図】
図1