(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】圧力熱量効果を利用した常温バロカロリック冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25B 23/00 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
F25B23/00 Z
(21)【出願番号】P 2024506855
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2022072656
(87)【国際公開番号】W WO2023010816
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】202110889207.9
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522094967
【氏名又は名称】中国科学院金属研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲へい▼
(72)【発明者】
【氏名】宋 睿▲き▼
(72)【発明者】
【氏名】張 志東
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】スペイン国特許出願公開第2833151(ES,A1)
【文献】中国特許出願公開第108562061(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0370796(US,A1)
【文献】実公昭46-11077(JP,Y1)
【文献】実開昭54-9955(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00 ~ 49/04
F25D 19/00
F24F 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力熱量効果を利用した室温バロカロリック冷却装置であって、高精度高圧電動噴射ポンプ、バロカロリックユニット、熱交換流体、冷却端熱交換器および熱端熱交換器を含み、
前記バロカロリックユニットは、円筒状のキャビティを備えたシリンダー構造であり、キャビティ内には固体冷媒が充填されており、円筒構造の側壁の上部には熱端液体出口パイプと冷却端液体出口パイプが取り付けられており、側壁の下部には、熱端液体入口パイプと冷却端液体入口パイプが装備され、側壁の中央部にオイル入口が設けられ、その中、熱端液体出口パイプ、冷却端液体出口パイプ、熱端液体入口パイプ、冷却端液体入口パイプにはすべて圧力制御バルブが装備されており、
前記高精度高圧電動噴射ポンプは、前記バロカロリックユニットに一定の圧力を提供し、高精度高圧電動噴射ポンプの上端のオイル噴射パイプは前記バロカロリックユニットのオイル入口に接続され、加圧オイルを噴射するために使用され、前記バロカロリックユニットのキャビティ内では、加圧オイルが熱交換流体としても機能し、固体冷媒と直接接触しており、
前記熱端熱交換器においては、前記バロカロリックユニットの熱端液体出口パイプが前記熱端熱交換器の液体入口に接続され、前記熱端熱交換器の液体出口が前記バロカロリックユニットの熱端液体入口パイプに接続されることによって、熱交換回路を形成し、
前記冷却端熱交換器においては、前記バロカロリックユニットの冷却端液体出口パイプが前記冷却端熱交換器の液体入口に接続され、前記冷却端熱交換器の液体出口は前記バロカロリックユニットの冷却端液体入口パイプに接続されることによって、熱交換回路を形成することを特徴とする、圧力熱量効果を利用した室温バロカロリック冷却装置。
【請求項2】
前記固体冷媒はカルボラン系材料、NaPF
6、KPF
6、NaSbF
6またはKSbF
6であり、前記固体冷媒の使用温度は室温であり、印加駆動圧力は0.1MPa~400MPaであることを特徴とする、請求項1に記載の圧力熱量効果を利用した室温バロカロリック冷却装置。
【請求項3】
前記バロカロリックユニットは高圧耐性のステンレス鋼からなり、前記シリンダー構造の底部が密閉され、上部には取り外し可能な上部キャビティカバーが装備されており、円筒形のキャビティ内に固体冷媒が充填されており、また、前記バロカロリックユニットの熱端液体出口パイプ、冷却端液体出口パイプ、熱端液体入口パイプ、および冷却端液体入口パイプにはすべて密閉フィルターが装備されており、加圧過程中の固体冷媒の位置の移動を防止すると同時に、固体冷媒同士の衝突によって発生した破片が流体とともに流れ出てパイプラインを詰まらせることも防止し、また、シリンダー構造の上部と上部キャビティカバーはゴムリングでシールされており、加圧油が円筒空洞から流出するのを防ぎ、また、系の動作中、前記バロカロリックユニット全体は平らな面に固定して配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の圧力熱量効果を利用した室温バロカロリック冷却装置。
【請求項4】
前記バロカロリックユニットの熱端液体出口パイプに油圧ポンプが設けられ、前記バロカロリックユニット内の熱交換流体が油圧ポンプの作用により熱端熱交換器に流入し、熱端熱交換器内の熱交換流体が前記バロカロリックユニットに押し込まれ、この循環過程が持続され、また、前記バロカロリックユニットの冷却端液体出口パイプにも油圧ポンプが設けられており、前記バロカロリックユニット内の熱交換流体が油圧ポンプの作用により冷却端熱交換器に流入し、冷却端熱交換器内の熱交換流体が前記バロカロリックユニットに押し込まれ、この循環過程が持続されることを特徴とする、請求項1に記載の圧力熱量効果を利用した室温バロカロリック冷却装置。
【請求項5】
前記冷却端熱交換器は、立方体キャビティIと、前記立方体キャビティI内の熱交換パイプラインIとを含み、
前記熱交換パイプラインIはU字状に配置されており、冷却端熱交換器の液体入口と液体出口にそれぞれ接続されており、
前記立方体キャビティI内には複数の平面板層が存在し、平面板層の間に熱交換パイプラインIが配置されており、
前記立方体キャビティIの上部には温度センサーが設置されており、前記立方体キャビティI内の温度をリアルタイムで制御システムにフィードバックするに用いられることを特徴とする、請求項1に記載の圧力熱量効果を利用した室温バロカロリック冷却装置。
【請求項6】
前記熱端熱交換器は、立方体キャビティIIと、前記キャビティII内の熱交換パイプラインIIとを含み、
前記熱交換パイプラインIIは螺旋状に配置されており、熱端熱交換器の液体入口および液体出口にそれぞれ接続されており、
前記立方体キャビティIIのシェルは、内部の熱交換を促進するために中空構造で設計されており、前記立方体キャビティIIの上部にはファンが設置され、熱端熱交換器が空気との熱交換を促進し、前記立方体キャビティIIの上部には温度センサーが設置されており、立方体キャビティIIの温度をリアルタイムで制御システムにフィードバックするに用いられることを特徴とする、請求項1に記載の圧力熱量効果を利用した室温バロカロリック冷却装置。
【請求項7】
電気制御盤をさらに含み、
前記電気制御盤はPLC制御モジュール(制御システム)を含み、前記圧力制御バルブ及び温度センサーは前記PLC制御モジュールに電気的に接続され、前記電気制御盤は圧力制御バルブの開閉および流量調整を制御するために使用されるものであると同時に、温度センサーから送信される前記バロカロリックユニット内の熱交換液の温度情報をリアルタイムに監視できることを特徴とする、請求項5または6に記載の圧力熱量効果を利用した室温バロカロリック冷却装置。
【請求項8】
前記熱交換流体は、耐摩耗性油圧作動油であることを特徴とする、請求項1に記載の圧力熱量効果を利用した室温バロカロリック冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却技術の分野に関し、具体的には圧力熱量効果(バロカロリック効果)を利用した室温バロカロリック冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会では、冷却技術がさまざまな生産技術や科学分野に浸透しているが、従来の気体圧縮技術で使用される一般的な冷媒であるクロロフルオロカーボン(CFC)やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)は、オゾン層にさまざまな程度の破壊的な影響を及ぼし、環境保護、グリーンネス、エネルギー節約といった現在の健康概念とは一致しない。
【0003】
これに関連して、環境に優しい冷却技術の開発と研究は、冷却技術革新の重要な研究方向となっている。現在、新しいタイプの固体冷却技術が研究開発段階にあり、地球温暖化係数(GWP)がゼロという利点があるため、従来の気体圧縮に代わる最も可能性の高い冷却方法の一つと考えられている。固体冷却技術の原理は、さまざまな熱量効果に基づいて、磁気熱量効果、電気熱量効果、弾性熱量効果、圧力熱量効果に分類できる。しかしながら、相変化固体冷媒と液体冷媒の性能の差に大きなギャップがあり、それが固体冷媒技術の適用を制限するボトルネックの一つとなっている。
【0004】
圧力熱量効果による冷却技術は、材料の選択においてより広範で可能となる。そして最近、科学者らは、柔粘性結晶材料の中最大等温エントロピー変化が687Jkg-1K-1に達するものがあり、従来の固体冷媒よりも1桁高いことを発見した。これは従来の商業用液体冷媒に近い値であり、駆動条件の実現が容易で、材料の入手も容易で安価なため、実用化しやすい。この技術では、柔粘性結晶材料に圧力が印加または開放されると、材料の相変化により熱を吸収または放出し、そして、負荷との熱交換により負荷の冷却または加熱が達成される。このプロセスを圧力熱量効果(バロカロリック効果)と呼ぶ。圧力熱量効果の熱力学サイクルプロセスは、逆カルノーサイクルと一致する。室温でより高い等温エントロピー変化を有する物質の開発に基づいて、対応する冷却装置の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、圧力熱量効果を利用した室温バロカロリック冷却装置を提供する。この冷却装置は、前述の圧力熱量効果に基づいて、バロカロリック材料の圧力の印加による吸熱昇温、また圧力の開放による放熱降温の特性を利用して、室温環境下で、高精度高圧噴射ポンプを使用して材料に対応する相変化圧力の条件を提供し、システム内で加熱または冷却をもたらす。そして、流体媒質を利用してシステム全体を循環させ、高温の熱源端に熱量、低温の負荷端に冷却をもたらすことによって、冷却サイクルを完成させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明が採用する技術的解決策は以下のとおりである。
【0007】
高精度高圧電動噴射ポンプ、バロカロリックユニット、熱交換流体、冷却端熱交換器および熱端熱交換器を含む、圧力熱量効果を利用した室温バロカロリック冷却装置であって、
バロカロリックユニットは、円筒状のキャビティを備えたシリンダー構造であり、キャビティ内には固体冷媒が充填されており、円筒構造の側壁の上部には熱端液体出口パイプと冷却端液体出口パイプが取り付けられており、側壁の下部には熱端液体入口パイプと冷却端液体入口パイプが取り付けられており、側壁の中央部には、オイルの入口が設けられ、その中、熱端液体出口パイプ、冷却端液体出口パイプ、熱端液体入口パイプ及び冷却端液体入口パイプには、それぞれ圧力制御バルブが装備されている。
【0008】
高精度高圧電動噴射ポンプは、バロカロリックユニットに一定の圧力を提供するために使用され、噴射ポンプの上端のオイル注入管はバロカロリックユニットのオイル入口に接続され、加圧オイルを噴射するために使用される。バロカロリックユニットのキャビティ内では、加圧オイルが熱交換流体としても機能し、固体冷媒と直接接触する。
【0009】
熱端熱交換器においては、バロカロリックユニットの熱端液体出口パイプが熱端熱交換器の液体入口に接続され、熱端熱交換器の液体出口はバロカロリックユニットの熱端液体入口パイプに接続されることによって、熱交換回路が形成される。
【0010】
冷却端熱交換器においては、バロカロリックユニットの冷却端液体出口パイプが冷却端熱交換器の液体入口に接続され、冷却端熱交換器の液体出口はバロカロリックユニットの冷却端液体入口パイプに接続されることによって、熱交換回路が形成される。
【0011】
固体冷媒はカルボラン系材料、NaPF6、KPF6、NaSbF6、KSbF6であり、使用温度は室温で、駆動圧力は0.1MPa~400MPaで、熱交換流体は耐摩耗性油圧作動油である。
【0012】
バロカロリックユニットは高圧耐性のステンレス鋼からなり、シリンダー構造の底部が密閉され、上部には取り外し可能な上部キャビティカバーが取り付けられており、円筒キャビティ内に固体冷媒が充填されている。バロカロリックユニットの熱端液体出口パイプ、冷却端液体出口パイプ、熱端液体入口パイプ、および冷却端液体入口パイプにはすべて密閉フィルターが装備されており、加圧過程中の固体冷媒の位置の移動を防止すると同時に、固体冷媒同士の衝突によって発生した破片が流体とともに流れ出てパイプラインを詰まらせることも防止する。シリンダー構造の上部と上部キャビティカバーはゴムリングでシールされており、加圧油が円筒空洞から流出するのを防ぐ。システムの動作中、バロカロリックユニット全体は平らな面に固定される。
【0013】
バロカロリックユニットの熱端液体出口パイプにも油圧ポンプが設けられており、バロカロリックユニット内の熱交換流体が油圧ポンプの作用により熱端熱交換器に流入し、熱端熱交換器内の熱交換流体がバロカロリックユニットに押し込まれ、この循環過程が持続される。また、バロカロリックユニットの冷却端出口パイプにも油圧ポンプが設けられているため、バロカロリックユニット内の熱交換流体が油圧ポンプの作用により冷却端熱交換器に流入し、冷却端熱交換器内の熱交換流体がバロカロリックユニットに押し込まれ、この循環過程が持続される。
【0014】
冷却端熱交換器は、立方体キャビティIと、立方体キャビティI内の熱交換パイプラインIとを含む。熱交換パイプラインIはU字型に配置され、冷却端熱交換器の液体入口と液体出口に接続される。立方体キャビティI内には複数の平面板層が設置され(冷媒は平面板層の間に置くことができる)、熱交換パイプラインIが平面板層内に配置される。立方体キャビティIの上部は温度センサーが取り付けられており、立方体キャビティI内の温度をリアルタイムで制御システムにフィードバックする。
【0015】
熱端熱交換器は、立方体キャビティIIと、立方体キャビティII内の熱交換パイプラインIIを含む。熱交換パイプラインIIは螺旋状に配置され、熱端熱交換器の液体入口と液体出口に接続される。立方体キャビティIIのシェルは、内部の熱交換を促進するために中空構造で設計されている。立方体キャビティIIの上部にはファンが配置されており、熱端熱交換器が空気との熱交換を促進する。立方体キャビティIIセンサーの上部に温度センサーが取り付けられており、立方体キャビティIIの温度をリアルタイムで制御システムにフィードバックする。
【0016】
電気制御キャビネットにはPLC制御モジュール(制御システム)が含まれており、圧力制御バルブと温度センサーはPLC制御モジュールに電気的に接続されており、電気制御キャビネットは圧力制御バルブの開閉と流量調整に使用される。温度センサーは、バロカロリックユニット内の熱交換流体の温度情報を送信する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果は以下のとおりである。
【0018】
1.本発明の冷却装置は、高精度高圧の電動噴射ポンプの作動によりバロカロリック冷媒の相変化で生じた加圧放熱及び減圧吸熱現象を発生させ、熱交換流体がバロカロリック冷媒間を往復流動して熱を交換する。
【0019】
2.本発明の高精度高圧の電動噴射ポンプは、一定の圧力出力でクバロカロリックユニットに圧力を供給する。加圧形式は液体圧力であるため、機械的圧力の伝達の不均一性の欠点が大幅に改善される。加圧油は熱交換流体としても機能し、冷媒と直接接触し、圧力駆動によってできた熱量と冷気量を直接熱端、または冷却端の熱交換器に導入し、系の循環を完成させ、熱量の損失を減少する。
【0020】
3.本発明の冷却装置は、電気制御キャビネット、圧力制御バルブおよび温度センサーが設置されている。そのため、本発明の冷却装置は、インテリジェントな制御および便利な操作の利点を有する。本発明の冷却装置内の熱交換流体が圧力駆動によりパイプライン内を循環すると、温度センサーと圧力制御バルブが対応する信号を電気制御キャビネットに送信し、温度と圧力のリアルタイム監視を実現し、バルブを制御することができる。設定されたプログラムに従って開閉し、高精度高圧電動噴射ポンプを使用してバロカロリック材料(冷媒)に加圧または減圧することにより、圧力熱量効果の現象を起こし、冷却循環プロセスを実現する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の圧力熱量効果に基づくバロカロリック冷却装置の全体構造の概略図である。
【
図2】本発明のバロカロリック冷却装置における高精度高圧電動噴射ポンプの概略構成図である。
【
図3】本発明のバロカロリック冷却装置におけるバロカロリックユニットの概略構成図である。
【
図4】本発明のバロカロリック冷却装置における冷却端熱交換器の概略構成図である。
【
図5】本発明のバロカロリック冷却装置における熱端熱交換器の概略構成図である。
【
図6】本発明のバロカロリック冷却装置の電気制御盤の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明をさらに理解するために、以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、これらの実施例は本発明の特徴および利点をさらに説明するためのものであり、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0023】
本発明は、圧力熱量効果を利用した室温バロカロリック冷却装置を提供する。
図1に示すように、当該バロカロリック冷却装置は、高精度高圧電動噴射ポンプ1、バロカロリックユニット2、熱交換流体、冷却端熱交換器3、熱端熱交換器4から構成されており、各部の構造は以下の通りである。
【0024】
図2に示すように、高精度高圧電動噴射ポンプ(北京宜傑材料技術有限公司、HP350A)を使用して、バロカロリックユニット2に一定の圧力で加圧することが出来る。電動噴射ポンプ1の上端のオイル噴射パイプ101は、バロカロリックユニットのオイル入口205と接続し、バロカロリックユニットのキャビティ内に加圧オイルを注入する。
【0025】
図3に示すように、バロカロリックユニットは円筒状キャビティ202を備えた円筒状構造であり、キャビティには固体冷媒が充填されており、円筒構造体の側壁の上部には、熱端液体出口パイプ207と冷却端液体出口パイプ203が設けられている。円筒構造の側壁下部には、熱端液体入口パイプ206と冷却端液体入口パイプ204が設けられている。側壁の中央にはオイル注入口205があり、オイル注入口から注入された加圧用オイルは同時に熱交換流体としても機能し、固体冷媒と直接接触する。熱端液体出口パイプ、冷却端液体出口パイプ、熱端液体入口パイプおよび冷却端液体入口パイプはすべて、流体の切り替えを制御し、流体の流れを調整するための圧力制御バルブ6を備えている。バロカロリックユニットは、高圧耐性のステンレス鋼で作られており、シリンダー構造の底部は密閉されており、上部には取り外し可能な上部キャビティバーカバー201が装備されており、ゴムリングを使用してシリンダー構造の上部と上部キャビティカバー201をシールし、加圧油が円筒形キャビティ202から流出するのを防ぐ。
【0026】
バロカロリックユニットの熱端液体出口パイプ、冷却端液体出口パイプ、熱端液体入口パイプ、および冷却端液体入口パイプにすべて密閉フィルターが装備されており、加圧過程中の固体冷媒の位置の移動を防止すると同時に、固体冷媒同士の衝突によって発生した破片が流体とともに流れ出てパイプラインを詰まらせることも防止する。系統の運行過程中では、バロカロリックユニット全体が水平面に固定される。バロカロリックユニットの熱端液体出口パイプには油圧ポンプが設けられており、油圧ポンプの動作により、バロカロリックユニット内の熱交換流体は油圧ポンプの作用により熱端熱交換器に流入し、また、熱端熱交換器内の熱交換流体がバロカロリックユニット内に押し込まれ、このような循環過程が持続される。また、バロカロリックユニットの冷却端液体出口パイプにも油圧ポンプが設けられており、油圧ポンプの動作により、バロカロリックユニット内の熱交換流体が冷却端に流れ、冷却端熱交換器内の熱交換流体がバロカロリックユニットに押し込まれ、このような循環過程が持続される。
【0027】
図4に示すように、冷却端熱交換器3は、立方体のキャビティI 304と、キャビティI内の熱交換パイプラインI 302を含む。熱交換パイプラインI 302はU字型に配置され、冷却端熱交換器の液体入口303と冷却端熱交換器の液体出口301にそれぞれ接続されている。冷却端熱交換器液体入口303と冷却端熱交換器液体出口301はそれぞれバロカロリックユニットの冷却端液体出口パイプと冷却端液体入口パイプに接続され、熱交換回路を形成している。キャビティI内には複数の平面板層(平面板層の上に冷却物品を置くことができる)があり、熱交換パイプIが平面板層の間に配置されている。立方体キャビティIの上部には温度センサー7が設置されており、キャビティI内の温度をリアルタイムで制御システムにフィードバックする。
【0028】
図5に示すように、熱端熱交換器4は、立方体のキャビティII 401と、キャビティII内に熱交換パイプラインII 402とを備えている。熱交換パイプラインIIが螺旋状に配置され、熱端熱交換器の液体入口と液体出口にそれぞれ接続されており、液体入口および液体出口は、それぞれバロカロリックユニットの熱端液体出口パイプおよび熱端液体入口パイプに接続され、それによって熱交換回路が形成される。キャビティIIのシェルは内部の熱交換を促進するために中空構造で設計されており、熱端熱交換器が空気と完全に熱交換できるようにファン403がキャビティIIの上部に設置されている。温度センサーがキャビティIIの上部に設置され、キャビティII の温度をリアルタイムで監視し、制御システムにフィードバックする。
【0029】
本発明の常温バロカロリック冷却設備はまた、電気制御キャビネット5を含む。電気制御キャビネット5は、PLC制御モジュール(制御システム)を含み、圧力制御バルブ6および温度センサー7は、PLC制御モジュールに電気的に接続される。電気制御キャビネットは、圧力制御バルブの開閉と流量調整を制御するために使用され、同時に温度センサーによって送信されるバロカロリックユニット内の熱交換流体の温度情報をリアルタイムで監視できる。
【0030】
本発明における固体冷媒は、常温条件下で圧力熱量効果を利用した冷却効果が得られる材料であり、例えばカルボラン系材料、NaPF6、KPF6、NaSbF6、KSbF6等を優先的に選択し、使用温度は室温であり、印加される駆動圧力は0.1MPa~400MPa、熱交換流体は耐摩耗性油圧作動油を使用する。
【0031】
本発明のバロカロリック冷却装置の動作プロセスは次のとおりである。
【0032】
高精度高圧噴射ポンプ1の駆動圧力値は、常温条件下で使用される固体冷媒の駆動圧力と冷却範囲に応じて設定される。高精度高圧噴射ポンプ1の上部にあるオイル噴射管11は、常温の熱交換流体がバロカロリックユニット2、熱端熱交換器3および冷却端熱交換器4に加圧で送られ、バロカロリックユニット内のすべての冷媒を熱交換流体によって覆われる。
【0033】
循環を開始するときは、まずバロカロリックユニット2と熱端熱交換器3および冷却端熱交換器4の間の圧力制御バルブを閉じ、高精度高圧噴射ポンプを使用してバロカロリックユニット2内の冷媒を相変化圧力に達するまで加圧すると、バロカロリック材料の相変化が生じ温度が上昇し、バロカロリックユニット2内の熱交換流体が冷媒と熱交換し、温度が上昇する。熱交換が完了すると、キャビティ全体の流体温度が同じレベルまで上昇し、バロカロリックユニット2と熱端熱交換器3の間の圧力制御バルブ6を開き、バロカロリックユニット2と熱端熱交換器3の間に接続されている液体ポンプを作動する。バロカロリックユニット2内の高温流体がポンプの作用下で熱端熱交換器3に流入し、上部ファンの作用下で外部環境と熱交換する。そして、熱端熱交換器3内の常温流体がバロカロリックユニット2に押し込まれる。この循環プロセスは、2つのチャンバー内の流体温度が一定になり、室温に戻るまで続く。
【0034】
このとき、バロカロリックユニット2と熱端熱交換器3との間の圧力制御バルブは閉じられており、高精度高圧噴射ポンプ1によりバロカロリックユニット2内は常圧まで減圧される。圧力解放後、バロカロリックユニットが熱を吸収し、温度が低下する。熱交換が完了すると、キャビティ全体の流体温度が一定温度まで下がった後、バロカロリックユニット2と冷却端熱交換器との間に接続された圧力制御バルブを開き、バロカロリックユニット2と冷却端熱交換器4の間に接続されている液体ポンプを作動し、バロカロリックユニット2内の低温流体を冷却端熱交換器4に流入させ、冷エネルギーが負荷(平面板層の上に置かれた物品)に伝達され、一方、冷却端熱交換器4内の常温流体は、バロカロリックユニット2に流れ込み、この循環プロセスは、両端の温度が周囲温度に戻るまで続く。左端と右端の熱交換サイクルは連続的かつ交互に実行され、予定される冷却温度に達するまで冷却端負荷の温度を継続的に低下させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1-電動噴射ポンプ、
101-オイル注入パイプ、
2-バロカロリックユニット、
201-上部キャビティカバー、
202-円筒キャビティ、
203-冷却端液体出口パイプ、
204-冷却端液体入口パイプ、
205-オイル入口、
206-熱端液体入口パイプ、
207-熱端液体出口パイプ、
3-冷却端熱交換器、
301-冷却端熱交換器液体出口、
302-熱交換パイプラインI、
303 -冷却端熱交換器液体入口、
304-キャビティI、
4-熱端熱交換器、
401-キャビティII、
402-熱交換パイプラインII、
403-ファン、
5-電気制御キャビネット、
6-圧力制御バルブ、
7-温度センサー。