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特許7599813スプリングプランジャーおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】スプリングプランジャーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 3/50 20060101AFI20241209BHJP
   G05G 1/02 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H01H3/50
G05G1/02 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024534499
(86)(22)【出願日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2024002290
【審査請求日】2024-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】591219636
【氏名又は名称】トピーファスナー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】遠山 幸訓
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-142015(JP,A)
【文献】特開2019-082378(JP,A)
【文献】特開2004-192968(JP,A)
【文献】特開2007-213989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 3/00 - 7/16
H01H 13/00 - 13/88
H01H 19/00 - 21/88
H01R 13/00 - 13/08
H01R 13/15 - 13/35
G01R 1/06 - 1/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向側から第2方向側に延びる軸線に沿って延び、少なくとも前記第2方向側が開口するとともに前記軸線に対し回転対称の筒形状を有し、前記第1方向側に位置する先端部、および、前記先端部の前記第2方向側に繋がり前記先端部より内径寸法が大きい後端部からなる突子と、
前記突子の同軸上に延びた圧縮ばね構造を有し、前記第1方向側の端部が前記突子の前記先端部の内側に、所定以上の外力によって前記軸線に沿って無段階で移動可能なように、外周面を1巻き線ピッチ以上に亘って、前記突子の内周面に均等に保持させた軽圧入状態で嵌まり込んで前記突子と一体化しており、圧縮されていない状態において前記第2方向側が前記突子の前記後端部から突出するスプリングと、
を備えることを特徴とするスプリングプランジャー。
【請求項2】
請求項1に記載のスプリングプランジャーにおいて、
前記突子は、前記第1方向側の端面が半球形状であるスプリングプランジャー。
【請求項3】
請求項1に記載のスプリングプランジャーにおいて、
前記突子の前記後端部と前記スプリングとの間には、隙間が確保されているスプリングプランジャー。
【請求項4】
請求項1に記載のスプリングプランジャーにおいて、
前記先端部の内径寸法が一定または前記第2方向側にいくに従って漸増しているスプリングプランジャー。
【請求項5】
請求項1に記載のスプリングプランジャーにおいて、
前記先端部において、内周面が全周囲に亘って押し出されて突起するよう、外周面の全周囲を囲むように前記スプリングが前記突子と前記一体化した後に凹ませられたカシメ溝が1または複数本形成されているスプリングプランジャー。
【請求項6】
第1方向側から第2方向側に延びる軸線に沿って延び、前記軸線に対し回転対称の筒形状を有し、前記第1方向側に位置する先端部、および、前記先端部の前記第2方向側に繋がり前記先端部より内径寸法が大きい後端部からなる突子をセットする突子セット工程と、
圧縮ばね構造を有するスプリングを前記突子セット工程でセットした前記突子に前記第2方向側から圧縮力を加えて、所定以上の外力によって前記軸線に沿って無段階で移動可能なように、前記第1方向側の端部の外周面を1巻き線ピッチ以上に亘って、前記突子の内周面に均等に保持させた軽圧入状態で嵌め込むことで前記突子と一体化させる軽圧入工程と、
を含むことを特徴とするスプリングプランジャーの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のスプリングプランジャーの製造方法において、
前記軽圧入工程で加えた圧縮力を解放し、前記スプリングの前記第2方向側を前記突子の前記後端部から突出させて、必要に応じて前記スプリングの突出させた部分に圧縮力または引張力を加えて全長を所定の範囲に収める全長調整工程、を更に含むスプリングプランジャーの製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載のスプリングプランジャーの製造方法において、
前記軽圧入工程の後に、前記突子の前記先端部の外周面の1本または複数本を全周に亘って内側に押し込んで前記突子の内周面を全周囲に亘って押し出し突起させるカシメ工程、を更に含むスプリングプランジャーの製造方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載のスプリングプランジャーの製造方法において、
前記軽圧入工程では、前記スプリングの反力を確認しながら前記スプリングを前記突子に軽圧入するスプリングプランジャーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリングプランジャーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチ装置等においてクリック感のある良好な操作感を得るために、圧縮ばね構造を有するスプリングと、当該スプリングで付勢されるボール、ピン、またはキャップ等の突子とを含み構成されるスプリングプランジャーが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に開示されているスイッチ装置は、ケース(31)と、ケース(31)の底部と対峙する位置で回動するカム(37)と、ケース(31)の底部と摺接するようカム(37)の中空部(37d)に配置されたスプリングプランジャーとを備えている。このスプリングプランジャーは、スプリング(41)と、スプリング(41)に付勢された中空キャップ形状の突子(40)とにより構成されている。特許文献1に開示されているスイッチ装置では、このスプリングプランジャーがケース(31)の底部に形成された節度山(31c)を挟んだ節度谷(31d)に嵌まり込んでカム(37)の回転位置を規定し、良好な操作感が得られている。
【0004】
また、特許文献1に開示されているスイッチ装置に用いられているスプリングプランジャーでは、突子(40)とスプリング(41)とが一体化されておらず、装置に組み込まれることで初めて互いの位置関係が固定されるため、組み込みまでの取り扱いが困難であったが、組み込みまでの取り扱いを容易にすることが可能なスプリングプランジャーも登場してきている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
非特許文献1に開示されているスプリングプランジャーは、中空キャップ形状の突子と突子内に挿入されたスプリングとからなる。このスプリングプランジャーは、突子の周壁に外周側面から内側に向けてポンチ等を打ち付けられて内周面の一箇所に突起(ダボ)が形成されており、突子内に挿入されたスプリングがこの突起に引っ掛かって抜けないことで、突子とスプリングとが一体化している。これにより、非特許文献1に開示されているスプリングプランジャーは、装置に組み込む際に、突子とスプリングとが分離せず一体として扱えるため、装置への組み込みが容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-134641号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】http://konishi-mfg.com/goods/plun/gn31.php
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に開示されているスプリングプランジャーは、突子の内周面の突起にスプリングが引っ掛かり突子に対しスプリングが固定されるため、全長調整(スプリングの出代調整)をするにはスプリングの巻き線ピッチ単位でしかできず、荷重精度が悪くなってしまう場合があった。また、非特許文献1に開示されているスプリングプランジャーは、内周面の一箇所から側方に向けて突出する突起によりスプリングが固定されているため、特に突子の内径寸法とスプリングの外径寸法との隙間(クリアランス)が大きい場合には、突子に対してスプリングが傾いて固定されて移動精度が悪くなってしまう場合があった。
【0009】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、装置への組み込みが容易であり、スプリング荷重の微調整が可能かつスプリングが傾き難いスプリングプランジャーを提供することにある。また、本発明の目的は、かかるスプリングプランジャーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明に係るスプリングプランジャーは、
第1方向側から第2方向側に延びる軸線に沿って延び、少なくとも第2方向側が開口するとともに軸線に対し回転対称の筒形状を有し、第1方向側に位置する先端部、および、先端部の第2方向側に繋がり先端部より内径寸法が大きい後端部からなる突子と、
突子の同軸上に延びた圧縮ばね構造を有し、第1方向側の端部が突子の先端部の内側に軽圧入状態で嵌まり込んで突子と一体化しており、圧縮されていない状態において第2方向側が突子の後端部から突出するスプリングと、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るスプリングプランジャーにおいては、突子は、第1方向側の端面が半球形状である。
【0012】
また、本発明に係るスプリングプランジャーにおいては、突子の後端部とスプリングとの間には、隙間が確保されている。
【0013】
また、本発明に係るスプリングプランジャーにおいては、先端部の内径寸法が一定または第2方向側にいくに従って漸増させるように構成することもできる。
【0014】
また、本発明に係るスプリングプランジャーにおいては、先端部において、内周面が全周囲に亘って押し出されて突起するよう、外周面の周囲を囲むよう凹ませられたカシメ溝が1または複数本形成されていてもよい。
【0015】
本発明に係るスプリングプランジャーの製造方法は、
第1方向側から第2方向側に延びる軸線に沿って延び、軸線に対し回転対称の筒形状を有し、第1方向側に位置する先端部、および、先端部の第2方向側に繋がり先端部より内径寸法が大きい後端部からなる突子をセットする突子セット工程と、
圧縮ばね構造を有するスプリングを突子セット工程でセットした突子に第2方向側から圧縮力を加えて第1方向側の端部を軽圧入して嵌め込むことで突子と一体化させる軽圧入工程と、
を含む、ことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るスプリングプランジャーの製造方法においては、軽圧入工程で加えた圧縮力を解放し、スプリングの第2方向側を突子の後端部から突出させて、必要に応じてスプリングの突出させた部分に圧縮力または引張力を加えて全長を所定の範囲に収める全長調整工程、を更に含んでいてもよい。
【0017】
本発明に係るスプリングプランジャーの製造方法においては、軽圧入工程の後に、突子の先端部の外周面の1本または複数本を全周に亘って内側に押し込んで突子の内周面を全周囲に亘って押し出し突起させるカシメ工程と、を更に含んでいてもよい。
【0018】
本発明に係るスプリングプランジャーの製造方法においては、軽圧入工程では、スプリングの反力を確認しながらスプリングを突子に軽圧入してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、装置への組み込みが容易であり、スプリング荷重の微調整が可能かつスプリングが傾き難いスプリングプランジャーを提供することができる。また、本発明によれば、かかるスプリングプランジャーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1に係るスプリングプランジャーの外観図である。
図2図1のスプリングプランジャーの縦断面図である。
図3】実施形態1に係るスプリングプランジャーの製造方法を示すフローチャートである。
図4】実施形態2に係るスプリングプランジャーの縦断面図である。
図5】実施形態3に係るスプリングプランジャーの縦断面図である。
図6】実施形態3に係るスプリングプランジャーの製造方法を示すフローチャートである。
図7】突子の変形例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した一実施形態としてのスプリングプランジャーを説明する。なお、各図面は必ずしも実際の寸法を厳密に反映したものではない。
【0022】
[実施形態1]
(スプリングプランジャー1の構成)
図1は実施形態1のスプリングプランジャー1の外観を示す外観図であり、図2はその縦断面図である。実施形態1のスプリングプランジャー1は、一例として、ダイヤルスイッチ、スライドスイッチといった間欠スイッチや移動機構等において、山、溝、孔等のある相手側の部品と摺接して、位置決め機構、クリック機構、ストッパー機構等を構成するために用いられている。
【0023】
スプリングプランジャー1は、図1および図2に示すように、第1方向側X1から第2方向側X2に延びる軸線Lに沿って延びる筒形状を有する突子2と、圧縮ばね構造を有し少なくとも第1方向側X1の端部が突子2の筒内に嵌まり込んでいるスプリング3とを備えている。
【0024】
突子2は、金属製または樹脂製であり、第1方向側X1の端面が半球形状で、第2方向側X2が開口して、軸線Lに対し回転対称の有底筒形状を有している。突子2は、側壁が薄肉且つ均肉で形成されている。突子2は、第1方向側X1に位置する先端部21、および、先端部21の第2方向側X2に繋がる後端部22からなる。
【0025】
先端部21は、第1方向側X1の半球形状の部分21aと半球形状の部分21aの端から一定の内径寸法で第2方向側X2に向かって所定の長さで真っすぐ延びた円筒形状の部分21bとからなる。先端部21の円筒形状の部分21bは、後述のスプリング3が軽圧入されるよう内径寸法が規定されており、スプリング3が軽圧入されたときにスプリング3を保持できるよう長さ寸法が規定されている。
【0026】
後端部22は、先端部21と繋がり第2方向側X2にいくに従ってなだらかに拡径するテーパ形状の部分22aとテーパ形状の部分22aの端から一定の内径寸法で第2方向側X2に向かって所定の長さで真っすぐ延びた円筒形状の部分22bとからなる。後端部22の円筒形状の部分22bは、先端部21の円筒形状の部分21bの内径寸法および後述のスプリング3の外径寸法より大きくなるよう内径寸法が規定されている。後端部22は、設置される場所、スプリング3が縮んだ際に突子2内に入り込ませたい量、スプリング3の倒れ規制の仕方等に基づき、適宜長さが規定されている。後端部22は、適宜、スプリング3を圧入する際にスプリング3をガイドしやすくするために口元内径側の角に面取りが施されていたり、使用時の相手側と摺動等しやすくするために口元外径側の角に面取りが施されていたり、使用時の相手側に対し回りにくくするために周囲に回転対称で配置された突起が形成されていたりしてもよい。
【0027】
スプリング3は、圧縮ばね構造を有した所謂コイルスプリングであり、突子2の同軸上に延びている。スプリング3は、一定の直径寸法で等ピッチに巻かれており、第1方向側X1の端部が突子2の先端部21の内側に軽圧入状態で嵌まり込んで突子2と一体化している。スプリング3は、圧縮されていない状態において第2方向側X2が突子2の後端部22から突出している。突子2の後端部22の内壁面とスプリング3との間には隙間が確保されており、スプリング3は、突子2の後端部22の中でスムーズに伸びたり縮んだりする。
【0028】
このように構成されたスプリングプランジャー1は、突子2とスプリング3とが一体で、例えば組み込み対象部材に形成された有底穴内等に設置されて使用される。設置されたスプリングプランジャー1においては、スプリング3の第2方向側の端面が組み込み対象部材の固定面に当たっている状態で、突子2の先端部21が第2方向側X2に押されると、スプリング3における突子2の先端部21よりも第2方向側に位置する部分が撓んで全長が短くなり、撓み量に応じて突子2の先端部21が第1方向側X1へ押し返そうとする付勢力(反力)が生じる。
【0029】
(スプリングプランジャー1の製造方法)
図3は、実施形態1に係るスプリングプランジャー1の製造方法を示すフローチャートである。次に図3も参照しスプリングプランジャー1の製造方法を説明する。スプリングプランジャー1は、図3に示すように、順に、突子セット工程ST1、軽圧入工程ST2、全長調整工程ST3、反力測定工程ST4、および、外観検査工程ST5を経て製造される。
【0030】
まず、突子セット工程ST1では、突子2を先端部21の半球形状の部分21aを第1方向側X1に向けて製造設備にセットする。
【0031】
次に軽圧入工程ST2では、スプリング3を突子セット工程ST1でセットした突子2の第2方向側X2の突子2と同軸となる位置にセットし、スプリング3に第2方向側X2から圧縮力を加えてスプリング3の第1方向側X1の端部を突子2の先端部21に軽圧入して嵌め込むことで、スプリング3を突子2と一体化させる。
【0032】
次に全長調整工程ST3では、軽圧入工程ST2で加えた圧縮力を解放し、スプリング3の第2方向側X2を突子2の後端部22から突出させる。そして、スプリングプランジャー1の全長またはスプリング3の突子2からの出代を測定し、規定より長ければスプリング3に第2方向側X2から圧縮力を加え、規定より短ければスプリング3に第2方向側X2への引張力を加えて、スプリングプランジャー1の全長を所定の範囲に収めるよう調整する。
【0033】
次に反力測定工程ST4では、全長調整工程ST3で全長が調整されたスプリングプランジャー1を撓ませ、圧力計を含む検査装置を用いて反力が所定の範囲に収まっているか測定する。
【0034】
次に外観検査工程ST5では、目視またはカメラを含む検査装置を用いて、スプリング3が脱落していないか、スプリング3が傾いて取り付けられていないか、全長が所定の範囲に収まっているか、外径は所定の範囲に収まっているか、不良となる傷・打痕がないか、等、最終的な外観を検査する。以上の工程を経てスプリングプランジャー1が完成する。
【0035】
(作用・効果)
実施形態1のスプリングプランジャー1は、軸線Lに対し回転対称の筒形状を有し、第1方向側X1に位置する先端部21および先端部21の第2方向側X2に繋がり先端部21より内径寸法が大きい後端部22からなる突子2と、突子2の先端部21の内側に軽圧入状態で嵌まり込んで突子2と一体化しており、圧縮されていない状態において第2方向側X2が突子2の後端部22から突出するスプリング3とを備えている。つまり、スプリングプランジャー1においては、スプリング3が突子2の先端部21に軽圧入されてスプリング3の第1方向側X1の一部の外周面が均等に保持されることで、突子2とスプリング3とが一体化している。このため、スプリングプランジャー1によれば、突子2とスプリング3とが一体化されているため取り扱いがし易く、装置への組み込みが容易である。また、スプリングプランジャー1によれば、スプリング3の外周面が突子2の先端部21に軽圧入で保持されているため、突子2とスプリング3との位置関係を分離することなく軸線方向にずらすことが可能である。また、スプリングプランジャー1によれば、スプリング3の外周面が突子2の先端部21に均等に保持されているため、スプリング3が突子2に対し傾き難い。よって、スプリングプランジャー1は、装置への組み込みが容易であり、スプリング荷重の微調整が可能かつスプリングが傾き難いスプリングプランジャーとなる。
【0036】
また、スプリングプランジャー1によれば、突子2は、第1方向側X1の端面が半球形状であるため、装置に組み込んだ際に、山、溝、孔等のある相手側の部品とスムーズに摺接することができる。
【0037】
また、スプリングプランジャー1によれば、突子2の後端部22とスプリング3との間には、隙間が確保されているため、スプリング3が伸びたり縮んだりする際、スムーズに動くことができる。
【0038】
また、実施形態1のスプリングプランジャー1の製造方法は、突子2をセットする突子セット工程ST1と、スプリング3を、突子2に軽圧入して嵌め込むことで突子2と一体化させる軽圧入工程ST2とを行う。このような製造方法によれば、上記効果を奏するような突子2とスプリング3とが一体化されたスプリングプランジャー1を製造することができる。
【0039】
また、実施形態1のスプリングプランジャー1の製造方法においては、軽圧入工程ST2で加えた圧縮力を解放し、スプリング3を突子2から突出させて、必要に応じてスプリング3の突出させた部分に圧縮力または引張力を加えて全長を所定の範囲に収める全長調整工程ST3を行うため、全長精度が良好なスプリングプランジャー1を製造することができる。
【0040】
また、実施形態1のスプリングプランジャー1の製造方法においては、スプリングプランジャー1を撓ませ、反力が所定の範囲に収まっているか測定する反力測定工程ST4を行うため、突子2の付勢力の精度が良好なスプリングプランジャー1を製造することができる。
【0041】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係るスプリングプランジャー101の縦断面図である。実施形態2に係るスプリングプランジャー101は、基本的な構成は実施形態1のスプリングプランジャー1と同様であるが、突子の形状が実施形態1のスプリングプランジャー1と僅かに異なる。以下に、実施形態2に係るスプリングプランジャー101について説明する。なお、スプリング3の形態は、実施形態1と同様であり、図4において図2と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0042】
スプリングプランジャー101において、突子102は、第1方向側X1の端面が半球形状で、第2方向側X2が開口して、軸線Lに対し回転対称の有底筒形状を有している。突子102は、側壁が薄肉且つ均肉で形成されている。突子102は、第1方向側X1に位置する先端部121、および、先端部121の第2方向側X2に繋がる後端部122からなる。
【0043】
先端部121は、第1方向側X1の半球形状の部分121aと、半球形状の部分121aの端から実施形態1とは異なり第2方向側X2にいくに従って内径寸法が漸増してテーパ状に延びたテーパ筒形状の部分121bとからなる。先端部121のテーパ筒形状の部分121bは、スプリング3が軽圧入されるようテーパ状の内径寸法が規定されている。
【0044】
後端部122は、先端部121のテーパ筒形状の部分121bの端から一定の内径寸法で第2方向側X2に向かって所定の長さで真っすぐ延びている。後端部122は、先端部121の内径寸法およびスプリング3の外径寸法より大きくなるよう内径寸法が規定されている。
【0045】
スプリングプランジャー101においては、先端部121の内径寸法が第2方向側X2にいくに従って漸増してはいるが、実施形態1のスプリングプランジャー1と同様、スプリング3が突子102の先端部121に軽圧入されてスプリング3の第1方向側X1の一部の外周面が均等に保持されることで、突子102とスプリング3とが一体化している。このため、スプリングプランジャー101によれば、上述した実施形態1のスプリングプランジャー1の効果と同様の効果を奏する。
【0046】
[実施形態3]
図5は、実施形態3に係るスプリングプランジャー201の縦断面図であり、図6は、そのスプリングプランジャー201の製造方法を示すフローチャートである。実施形態3に係るスプリングプランジャー201は、基本的な構成は実施形態1のスプリングプランジャー1と同様であるが、突子の形状が実施形態1のスプリングプランジャー1と僅かに異なり、その異なる形状を形成するために、製造方法も僅かに異なる。以下に、実施形態3に係るスプリングプランジャー201について説明する。なお、スプリング3の形態は、実施形態1と同様であり、図5において図2と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0047】
スプリングプランジャー201において、突子202は、第1方向側X1の端面が半球形状で、第2方向側X2が開口して、軸線Lに対し回転対称の有底筒形状を有している。突子202は、側壁が薄肉且つ均肉で形成されている。突子202は、第1方向側X1に位置する先端部221、および、先端部221の第2方向側X2に繋がる後端部222からなる。
【0048】
先端部221は、第1方向側X1の半球形状の部分221aと半球形状の部分221aの端から第2方向側X2に向かって所定の長さ延びた円筒形状の部分221bとからなる。先端部221の円筒形状の部分221bは、スプリング3が軽圧入されるよう内径寸法が規定されており、スプリング3が軽圧入されたときにスプリング3を保持できるよう長さ寸法が規定されている点では実施形態1の先端部21の円筒形状の部分21bと同様である。しかしながら、先端部221の円筒形状の部分221bは、内周面が全周囲に亘って押し出されて突起するよう、外周面の周囲を囲むよう凹ませられたカシメ溝221cが複数本形成されている点で、実施形態1の先端部21の円筒形状の部分21bと形状が異なる。
【0049】
後端部222は、先端部221と繋がり第2方向側X2にいくに従ってなだらかに拡径するテーパ形状の部分222aとテーパ形状の部分222aの端から一定の内径寸法で第2方向側X2に向かって所定の長さで真っすぐ延びた円筒形状の部分222bとからなる。後端部222は、実施形態1の後端部22と同様の形状である。
【0050】
スプリングプランジャー201は、図6に示すよう、突子セット工程ST1、軽圧入工程ST2、全長調整工程ST3、反力測定工程ST4、カシメ工程ST6、および外観検査工程ST5を経て製造される。
【0051】
突子セット工程ST1、軽圧入工程ST2、全長調整工程ST3、反力測定工程ST4、および外観検査工程ST5については、実施形態1の場合と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
カシメ工程ST6では、軽圧入工程ST2の後、全長調整工程ST3で圧縮力を解放した後、または、反力測定工程ST4で反力を測定した後(図6では、一例として反力測定工程ST4の後として示している。)に、突子202の先端部221の外周面を全周に亘って内側に押し込んで突子202の内周面を複数本、全周囲に亘って押し出し突起させる。突子202の先端部221の外周面には、カシメ溝221cが形成され、スプリング3は、内周面に形成された突起によってより抜け難くなるよう保持される。
【0053】
スプリングプランジャー201は、先端部221において、内周面が全周囲に亘って押し出されて突起するよう、外周面の周囲を囲むよう凹ませられたカシメ溝221cが形成されているが、実施形態1のスプリングプランジャー1と同様、スプリング3が突子202の先端部221に軽圧入されて全長調整がされたうえで、スプリング3の第1方向側X1の一部の外周面がカシメによる突起に均等に保持されることで、突子202とスプリング3とがより強固に一体化している。このため、スプリングプランジャー201によれば、上述した実施形態1のスプリングプランジャー1の効果と同様の効果を奏する。
【0054】
以上、本発明を上記の実施形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0055】
(1)上記実施形態において記載した材質、肉厚、寸法関係、先端形状等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0056】
(2)上記した実施形態においては、スプリング3が等ピッチで巻かれているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。スプリングの巻き方は、使用される際の要求、製造時の効率化等を反映させた設計仕様に応じて、等ピッチ、不等ピッチ、部分的に密着させるピッチ、座の巻き数、座の形状等、適宜設定される。
【0057】
(3)上記した実施形態1~2において、突子2,102については、側壁が薄肉且つ均肉で形成されているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。突子は、回転対称の筒形状で、先端部および先端部より内径寸法が大きい後端部を有していればよく、厚肉で形成されていても、偏肉で形成されていてもよい。
【0058】
(4)上記した実施形態3においては、カシメ溝221cが複数本形成されているものとして説明したが、1本だけ形成されているものであってもよい。
【0059】
(5)上記した実施形態においては、軽圧入工程ST2、全長調整工程ST3、および反力測定工程ST4がそれぞれ別工程で行われるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの工程については同時に行う(例えば、軽圧入工程ST2に全長調整工程ST3または反力測定工程ST4で行われる内容を組み込む)ことも可能である。また、仕様によっては全長調整工程ST3および反力測定工程ST4の順序を逆にすることも可能である。また、仕様によっては全長調整工程ST3および反力測定工程ST4の少なくともいずれかを省略することも可能である。例えば、軽圧入工程ST2で圧縮力を加える際の押具に圧力計を設けて、スプリング3の反力を確認しながらスプリング3を突子2に軽圧入することで、軽圧入工程ST2に反力測定工程ST4で行われる内容を組み込んでもよい。また、例えば、使用時において自由長については重視されないが突子2の付勢力については重視される場合には、全長調整工程ST3が省略される場合もあり、その逆で、使用時において自由長については重視されるが突子2の付勢力については重視されない場合には、反力測定工程ST4が省略される場合もある。
【0060】
(6)上記した実施形態においては、それぞれ形状が異なる突子2,102,202を説明したが、突子の形状は、軸線Lに対し回転対称形状で、スプリングが軽圧入されスプリングの外周面を均等に保持できればこれらに限定されるものではない。突子は、例えば、次のような変形も可能である。
【0061】
図7は突子の変形例を示す外観図であり、図7(a)に第1の変形例、図7(b)に第2の変形例を示している。
【0062】
図7(a)に示す第1の変形例における突子302は、実施形態と同様、軸線Lに対し回転対称の有底筒形状を有しており、第1方向側X1に位置する先端部321、および、先端部321の第2方向側X2に繋がる後端部322からなる。先端部321は、実施形態1の先端部21と同様の形状をしており、第1方向側X1の半球形状の部分321aと半球形状の部分321aの端から一定の外径寸法で第2方向側X2に向かって所定の長さで真っすぐ延びた円筒形状の部分321bとからなる。先端部321の円筒形状の部分321bは、スプリングが軽圧入されるよう内径寸法が規定されている。後端部322は、一定の外径寸法で第2方向側X2に向かって真っすぐ延びた円筒形状からなる。後端部322は、先端部321の円筒形状の部分321bより一回り外形寸法が大きく、先端部321と段差をもって繋がっている。後端部322は、先端部321の円筒形状の部分321bの内径寸法およびスプリング3の外径寸法より大きくなるよう内径寸法が規定されている。
【0063】
図7(b)に示す第2の変形例における突子402は、実施形態と同様、軸線Lに対し回転対称の有底筒形状を有しており、第1方向側X1に位置する先端部421、および、先端部421の第2方向側X2に繋がる後端部422からなる。先端部421は、実施形態1の先端部21と同様の形状をしており、第1方向側X1の半球形状の部分421aと半球形状の部分421aの端から一定の内径寸法で第2方向側X2に向かって所定の長さで真っすぐ延びた円筒形状の部分421bとからなる。先端部421の円筒形状の部分421bは、スプリングが軽圧入されるよう内径寸法が規定されている。後端部422は、先端部421と繋がり第2方向側X2にいくに従ってなだらかに拡径するテーパ形状からなる。後端部422は、スプリング3の外径寸法より大きくなるよう内径寸法が規定されている。
【要約】
スプリングプランジャー(1)は、軸線(L)に沿って延び、少なくとも第2方向側(X2)が開口するとともに軸線(L)に対し回転対称の筒形状を有し、第1方向側(X1)に位置する先端部(21)、および、先端部(21)の第2方向側(X2)に繋がり先端部(21)より内径寸法が大きい後端部(22)からなる突子(2)と、突子(2)の同軸上に延びた圧縮ばね構造を有し、第1方向側(X1)の端部が突子(2)の先端部の内側に軽圧入状態で嵌まり込んで突子(2)と一体化しており、圧縮されていない状態において第2方向側(X2)が突子(2)の後端部(22)から突出するスプリング(3)と、を備える。このスプリングプランジャー(1)は、装置への組み込みが容易であり、スプリング荷重の微調整が可能かつスプリング(3)が傾き難い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7