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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】生細菌種を含有するエアロゾルスプレー
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/741 20150101AFI20241209BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20241209BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALI20241209BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241209BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241209BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241209BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20241209BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241209BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20241209BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241209BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20241209BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241209BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
A61K35/741
A61K8/891
A61K8/9728
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/14
A61K35/744
A61K47/02
A61K47/06
A61P17/00
A61Q19/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019522242
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017077547
(87)【国際公開番号】W WO2018078067
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】2016/5812
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】518338345
【氏名又は名称】ユン エンヴェー
(73)【特許権者】
【識別番号】510214573
【氏名又は名称】ユニフェルシテイト アントウェルペン
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Antwerpen
【住所又は居所原語表記】Prinsstraat 13,Antwerpen,BELGIUM
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】ヘンケンス,ティム
(72)【発明者】
【氏名】キーケンス,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】レベール,サラ
(72)【発明者】
【氏名】クラエス,イングマール
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】伊藤 幸司
【審判官】岡山 太一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513106(JP,A)
【文献】特表2009-502824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61Q
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の凍結乾燥された生きた休止状態の乳酸菌株1重量%~20重量%と、1つ以上の揮発性シロキサンと、加圧下にある液化ガス噴霧剤とを含むエアロゾルスプレーであって、ここで前記乳酸菌株及び前記揮発性シロキサンは、懸濁液の形態で混合物を形成する、エアロゾルスプレー。
【請求項2】
前記1つ以上の生きた休止状態の乳酸菌株が、L.プランタルムである、請求項1に記載のエアロゾルスプレー。
【請求項3】
前記1つ以上の揮発性シロキサンは、ジメチコン、ジメチコノール、フェニルトリメチコン及びそれらの誘導体で代表される線状シロキサン、又はシクロメチコン及びその誘導体で代表される環状シロキサン、又はシクロメチコン及びその誘導体で代表される環状シロキサンを含むリストから選択される、請求項1又は2に記載のエアロゾルスプレー。
【請求項4】
前記加圧下にある液化ガス噴霧剤は、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、n-ブタン、ペンタン及びn-ペンタンで代表される1つ以上の炭化水素である、請求項1~3のいずれか一項に記載のエアロゾルスプレー。
【請求項5】
沈降防止剤及び/又は凝集防止剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゾルスプレー。
【請求項6】
前記沈降防止剤及び/又は凝集防止剤は、ベントナイト若しくはヘクトライトを含有するオルガノクレイゲル等の無機ポリマー、及び/又はアエロジルで代表されるヒュームドシリカ類のリストから選択される、請求項5に記載のエアロゾルスプレー。
【請求項7】
1つ以上の皮膚軟化薬、懸濁剤、保湿剤、酸化防止剤、保水剤、乳化剤、粘度改質剤、香料、又は他の賦形剤を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のエアロゾルスプレー。
【請求項8】
前記エアロゾルスプレーの内容物は、噴霧剤少なくとも50重量%、シロキサン1重量%~20重量%、乳酸菌1重量%~20重量%、沈降防止剤及び/又は凝集防止剤0.1重量%~5重量%並びに請求項7に列挙する他の賦形剤0重量%~5重量%からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載のエアロゾルスプレー。
【請求項9】
前記エアロゾルスプレーの内容物は、噴霧剤少なくとも75重量%、シクロメチコン5重量%~10重量%、乳酸菌1重量%~10重量%及びベントンゲル0.1重量%~5重量%からなる、請求項1~8のいずれか一項に記載のエアロゾルスプレー。
【請求項10】
内容物は、噴霧剤少なくとも75重量%、シクロメチコン5重量%~10重量%、乳酸菌1重量%~10重量%及びアエロジル0.1重量%~5重量%からなる、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアロゾルスプレー。
【請求項11】
水及び防腐剤を実質的に含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアロゾルスプレー。
【請求項12】
前記1つ以上の生きた休止状態の乳酸菌株を、表面に、又は環境へ塗布することに使用される治療用の薬剤を製造するための、請求項1~11のいずれか一項に記載のエアロゾルスプレーの使用。
【請求項13】
健常な皮膚の微生物叢を回復及び/又は維持することに使用される請求項1~11のいずれか一項に記載のエアロゾルスプレー。
【請求項14】
健常な皮膚の微生物叢を回復及び/又は維持することに使用される治療用の薬剤を製造するための、請求項1~11のいずれか一項に記載のエアロゾルスプレーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の生細菌種と、上記1つ以上の生細菌種を、表面に、又は環境へ塗布するのに適した1つ以上の揮発性シロキサンとを含有するエアロゾルスプレーに関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾルスプレーは、種々の薬剤を、表面に、又は環境へ塗布するのに非常に有用であり、生きた細菌種を配合する興味深い方法となり得る。しかしながら、一般に、エアロゾルスプレーは、水性構成成分を含み、水性構成成分は、生きた細菌種の配合と相反するものである。特に、水の存在により通常は、有害な病原体の増殖を防ぐとともに、微生物の増殖を制御する防腐剤の存在も必要とされる。防腐剤は、同時に配合される微生物の生存にとって有害である。さらに、同時に配合される水が限られた量であっても、休止状態の細菌が活性化するのに十分であり、それによりかかる組成物の保管期間が著しく低減する。したがって、典型的なエアロゾルスプレーは、生きた細菌種の配合には適さず、生きた細菌種を配合して、その長期保管を達成するというこれらの課題を解決するエアロゾル組成物を提供することが、本発明の目的であった。
【0003】
それに加えて、驚くべきことに、少なくとも1つの揮発性シロキサンを含むエアロゾルスプレーが、上記目的に非常に有用であることを発見した。
【0004】
シリコーンフルイド及びシロキサンは特に、作物保護製品、忌避剤、トイレタリー化粧品及び他のパーソナルケア製品を含むスプレーにおいて使用される場合が多い。最も頻繁に使用されるシリコーンフルイドは、ジメチコン、シクロメチコン及びフェニルトリメチコンである。
【0005】
製品に組み込まれるこれらのシリコーンフルイドは、すべりの改善、粘着性(tack)の低減及び皮膚軟化の付与等の多岐にわたる有益性を有する非常に適切なキャリアオイルである。シクロメチコンの低溶解度及び粘度にもかかわらず、これらのシリコーンフルイドは、油性又は脂性に寄与せずに上述の有益性を提供する傾向にあるため、エアロゾルスプレー中に配合される場合に特に有用であるとみなされてきた。さらに、シクロメチコンは、比較的高い揮発性を有し、デオドラントにおける制汗剤有効成分を過度に遮らないことが知られている。最後に、シクロメチコンは、優れた分散剤及び拡散剤であり、一般的に色彩は無色透明であり、匂いが少なく、揮発性であり、化学的分解及び酸化的分解に耐性を示す。
【0006】
これらのシリコーンフルイドは、エアロゾルスプレーに広く使用されているにもかかわらず、一般的に、広範囲の(好気性)細菌に対して抗菌効果を有するとされることから、細菌を配合するための更なる研究は行われていない。その中で、本発明者らは今回、驚くべきことに、シリコーンフルイド、特にシクロメチコン等の揮発性シロキサンを、エアロゾルスプレーにおける(休止状態の乳酸)細菌の長期保管に使用することができることを発見した。かかる休止状態の細菌は、揮発性シロキサンによって影響されないことがわかっており、したがって保管中に安定なままである。休止状態の細菌は、噴霧された後、水又は蒸気との接触に起因して活性になり、その頃までには、同時に配合される揮発性シロキサンは蒸発しており、活性化された細菌の生存にはもはや影響を与えない。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様において、本発明は、1つ以上の生プロバイオティクス細菌株1重量%~20重量%と、1つ以上の揮発性シロキサンと、加圧下にある噴霧剤とを含むエアロゾルスプレーを提供する。
【0008】
特定の実施の形態において、上記1つ以上の生細菌種、より具体的には生プロバイオティクス株は、休止状態の細菌種、より詳細には休止状態の乳酸菌である。
【0009】
本発明の特定の実施の形態において、上記1つ以上のシロキサンは、ジメチコン、ジメチコノール、フェニルトリメチコン及びそれらの誘導体等の線状シロキサン、又はシクロメチコン及びその誘導体等の環状シロキサン、より詳細にはシクロメチコン及びその誘導体等の環状シロキサンを含むリストから選択される。
【0010】
別の特定の実施の形態において、本発明は、1つ以上の生(好ましくは、休止状態の)細菌種と1つ以上の揮発性シロキサンとの混合物を含むエアロゾルスプレーを提供し、ここで、上記混合物は、粉末、懸濁液又はエマルジョンの形態で存在し、本発明のエアロゾルスプレーは、噴霧剤を更に含んでもよい。
【0011】
上記噴霧剤(加圧下にある)は特に、液化ガス、より詳細にはメタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、n-ブタン、ペンタン及びn-ペンタン等の1つ以上の炭化水素を含むリストから選択され、或いは、噴霧剤は、窒素、二酸化炭素、圧縮空気又は亜酸化窒素ガス等の永久圧縮ガス及び/又は可溶性ガスであってもよい。
【0012】
また更なる実施の形態において、本発明のエアロゾルスプレーは、沈降防止剤及び/又は凝集防止剤を更に含み得る。上記沈降防止剤及び/又は凝集防止剤は特に、ベントナイト若しくはヘクトライトを含有するオルガノクレイゲル等の無機ポリマー、及び/又はアエロジル等のヒュームドシリカ類のリストから選択される。
【0013】
別の特定の実施の形態において、本発明のエアロゾルスプレーは、1つ以上の皮膚軟化薬、懸濁剤、保湿剤、酸化防止剤、保水剤、乳化剤、粘度改質剤、香料、及び/又は他の賦形剤を更に含み得る。
【0014】
特定の実施の形態において、本発明は、エアロゾルスプレーであって、その内容物が、噴霧剤少なくとも5%、シロキサン1%~20%、乳酸菌1%~20%、並びに沈降防止剤及び/又は凝集防止剤0.1%~10%を含むか、又はそれらからなる、エアロゾルスプレーを提供する。
【0015】
また更なる実施の形態において、本発明は、エアロゾルスプレーであって、その内容物が、噴霧剤少なくとも75%、シクロメチコン5%~10%、乳酸菌1%~10%及びベントンゲル0.1%~5%を含むか、又はそれらからなる、エアロゾルスプレーを提供する。代替的には、本発明は、噴霧剤少なくとも75%、シクロメチコン5%~10%、乳酸菌1%~10%及びアエロジル0.1%~5%を含むか、又はそれらからなる、エアロゾルスプレーを提供する。
【0016】
特定の実施の形態において、本発明によるエアロゾルスプレーは、水及び防腐剤を実質的に含まない。
【0017】
更なる態様において、本発明は、上記1つ以上の生細菌種、具体的には上記生プロバイオティクス細菌株を、表面に、又は環境へ塗布するための本発明によるエアロゾルスプレーの使用を提供する。
【0018】
特定の実施の形態において、本発明は、健常な皮膚の微生物叢を回復及び/又は維持することに使用される本明細書に規定されるエアロゾルスプレーを提供する。そのため、本発明はまた、健常な皮膚の微生物叢を回復及び/又は維持するための本発明によるエアロゾルスプレーの使用を提供する。
【0019】
これより図面を具体的に参照するが、示される項目は例示であり、本発明の種々の実施形態の説明的な論考のみを目的とすることが強調される。これらの図面は、本発明の原理及び概念的態様の最も有用かつ簡単な説明であると考えられるものを提供するために提示される。この点で、本発明の基礎的理解に必要とされるよりも詳細な本発明の構造細部を示そうとはしていない。この説明は、図面と共に本発明の幾つかの形態を実際に具体化し得る方法を当業者に明らかとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】シリコーン油CF1406-OH中に懸濁した(1/10 m/m%)自己培養(非乾燥)Lac 4及びLac 7対LGGの市販の凍結乾燥株の1年間にわたる安定性の図である。この図から、プロバイオティクスを凍結乾燥させて、それを無水シリコーン混合物中に懸濁することが、生(viable)細菌の生存度の急速な低下を防ぐ理想的な方法であることが明らかに示される。ジメチコン及びジメチコノールを含有するシリコーン混合物中に、凍結乾燥した細菌を懸濁することにより、この乳酸桿菌種の長期保管が提供される。
図2】シリコーン油CF6570-DM中に懸濁した(1/10 m/m%)自己培養(非乾燥)Lac 4及びLac 7対LGGの市販の凍結乾燥株の1年間にわたる安定性の図である。この図から、プロバイオティクスを凍結乾燥させて、それを無水シリコーン混合物中に懸濁することが、生細菌の生存度の急速な低下を防ぐ理想的な方法であることが明らかに示される。ジメチコン、ジシロキサン及びシクロペンタシロキサンを含有するシリコーン混合物中に、凍結乾燥した細菌を懸濁することにより、この乳酸桿菌種の長期保管が提供される。
図3】室温(20℃)で炭化水素噴霧剤とともに加圧キャニスター中に保管されている種々の配合物(F1~F8)中に懸濁させた凍結乾燥L.プランタルム(L. Plantarum)の生存曲線の図である。最初の1ヵ月間の生存度のわずかな初期低下後、生存度は、翌月以降はどちらかというと一定状態のままであり、加圧キャニスター中での保管が、プロバイオティクスの長期生存に適した方法であることを証明している。
図4】種々の配合物対加圧キャニスター中に保管した同じ配合物中の凍結乾燥L.プランタルムの6ヵ月安定性の図である。6ヵ月の保管後、噴霧剤を用いずに保管した配合物に比べて、加圧キャニスター中で噴霧剤とともに保管した配合物に関して生存における統計学的有意差が見られる。生存は、8個全ての試験配合物に関してより良好であり、シリコーン油中に、凍結乾燥した細菌を懸濁し、噴霧剤とともに保管することが、シリコーン油中に、凍結乾燥した細菌を単に懸濁することよりも長期安定性にとって良好な方法であることを証明した。
図5】種々のシリコーン及びシリコーン混合物中の凍結乾燥LAC_15の3ヵ月後の安定性の図である。わずかな差が認められたが、大部分が取るに足らないと判断した。種々のシリコーン油の混合物が、1つ又は2つの油構成成分よりも良好な安定性を提供する傾向にあるようである。これにより、より低濃度の種々のシリコーン油が、より高い単一濃度のシリコーン構成成分の負の影響を相殺することが示され得る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の態様において、本発明は、1つ以上の生プロバイオティクス細菌株1重量%~20重量%と、1つ以上の揮発性シロキサンと、加圧下にある噴霧剤とを含むエアロゾルスプレーを提供する。
【0022】
より包括的には、本発明は、1つ以上の生(好ましくは、休止状態の)細菌種と1つ以上の揮発性シロキサンとの混合物を含むエアロゾルスプレーを提供し、ここで、上記混合物は、粉末、懸濁液又はエマルジョンの形態で存在する。特定の実施形態において、上記1つ以上の生細菌種は、休止状態の細菌種、より詳細には休止状態の乳酸菌である。
【0023】
本発明において、「エアロゾルスプレー」という用語は、エアロゾルミストを創り出す分配システムの一タイプであることを意味する。これは、本発明の混合物、及び好ましくは加圧下にある噴霧剤を含有する缶又は瓶とともに使用される。容器のバルブを開放すると、混合物は、バルブを通ってキャニスターから押し出され、エアロゾル又はミストとして出る。少量の噴霧剤が膨張して、混合物を送り出すため、大量の噴霧剤が缶の内部に残ったままであり、一定の圧力を維持する。缶の外側では、噴霧剤は迅速に蒸発する。
【0024】
本発明において、「混合物」という用語は、揮発性シロキサンと休止状態の細菌種との組合せ等の、混合されるが、化学的に結び付かない2つ以上の異なる物質で構成される系である。かかる混合物において、構成成分の個々のアイデンティティが保持され、それらは、溶液、懸濁液、エマルジョン、コロイド又は粉末の形態で混合される。
【0025】
本発明において、「粉末」という用語は、振るか、又は傾けると自由に流動し得る多数の微細粒子で構成される乾燥したバルク固体である。粉末は、顆粒状材料の特殊なサブクラスであるが、粉末及び顆粒(granule)という用語は、場合によっては、別々のクラスの材料を区別するのに使用される。
【0026】
本発明において、「休止状態の」という用語は、増殖、発達、繁殖等が一時的に停止された生/生菌細菌の状態であることを意味する。生きた/生細菌は、当量の代謝産物をもはや産生しない程度に代謝プロセスが相減速されている代謝的に休止した状態である。多くの細菌種は、(内生)胞子、嚢子、分生子又は特殊な細胞構造を欠いた代謝活性の低減状態を形成することによって、低温等の悪条件を生き延びることができる。休止状態の細菌は、「正常な」条件を受けると、例えば、休止状態の細菌が、水と接触した後、又は或る特定の温度若しくは振動に遭った後に、休止状態の細菌を再活性化させることができる。本発明において、細菌は、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、流動床乾燥、窒素低温乾燥等の当該技術分野で既知の技法を使用して、休止状態にされ得る。本発明の細菌は、好ましくは凍結乾燥される。
【0027】
本発明において、「揮発性」という用語は、開示するシロキサンに関連して、それらが気化する傾向を有することを示すのに使用される。揮発性は、物質の蒸気圧に直接関連する。所与の温度で、より高い蒸気圧を有する物質は、より低い蒸気圧を有する物質よりも即座に気化する。その他の点では、より低い気化熱(kJ/kg)を有する物質は、より高い気化熱を有するものよりも、所与の温度でより急速に蒸発する。この用語は主に、液体に適用されるように書かれているが、この用語は、ドライアイス(固体二酸化炭素)等の固体物質と関連付けられる、液体になることなく固体状態から蒸気へ直接変化し得る昇華のプロセスについて記載するのに使用されてもよい。物質の蒸気圧は、その気相がその凝縮相(液体又は固体)と平衡状態にある圧力である。物質の蒸気圧は、分子及び原子が、液体又は固体から離れる傾向の尺度である。所与の温度で液体の蒸気圧が高いほど、揮発性が高く、液体の標準沸点は低くなる。好ましくは、本発明の揮発性シロキサンの蒸気圧(気化熱)は、室温(25℃)で2500 kJ/kg未満、より好ましくは1000 kJ/kg未満、更に好ましくは900 kJ/kg、800 kJ/kg、700kJ/kg、600 kJ/kg、500 kJ/kg、400 kJ/kg、300 kJ/kg、200kJ/kg未満である。
【0028】
シクロメチコンは、メチルシロキサンの一群であり、低粘度及び高揮発性の特徴を備え、皮膚軟化薬(emollients)であるとともに、或る特定の状況では有用な洗浄溶媒であるという特徴を有する液体シリコーン(環状ポリジメチルシロキサンポリマー)の一種である。迅速に蒸発しない線状シロキサンであるジメチコンとは異なり、シクロメチコンは環状であり、両群はともに、1つのケイ素及び2つの酸素原子が一緒に結合されたモノマー骨格を備えるポリマーからなるが、シクロメチコンは、一連のメチル基に取り囲まれた非常に長い「線状」骨格(これが、水のようにさらさらしたものから粘度の高いものに及ぶ透明な非反応性不揮発性液体を生じる)を有さずに、それらのメチル基に加え、閉じた又はほぼ閉じた環又は「サイクル」を作製する短骨格を有し、それらにジメチコンの同じ特性の多くを付与するが、それらを更に高揮発性にさせる。その結果として、所望の蒸発度に応じて、シクロメチコン等のより高揮発性のシロキサン、或いはジメチコン等の低揮発性であるシロキサンが選択され得る。しかしながら、シクロメチコン及びその誘導体等のより高揮発性のシロキサンが好ましい。
【0029】
シリコーンは、パーソナルケア産業(及び多くの他の産業)において一般的に使用され、皮膚と接触すると、滑らかさ(smooth)、柔らかさ(velvety)、さっぱり感(nongreasy)及びさらさら感(nontacky)が感じられる(Handbook of Cosmetic Science and Technology FourthEdition 2014; New York CRC Press; 204 AD. Pg. 321-329)。シリコーンは、低い表面エネルギーを有し、水分耐性及び温度耐性であり、生体適合性であり、揮発性及び透過性であり、無毒性及び非刺激性である。シリコーンは、ケイ素(Si)、炭素、酸素及び水素から得られるポリマーであり、線状、環状又はオルガノ官能性であり得る。最も一般的なシリコーン(ジメチコン)は、Si上に有機(2×メチル)ペンダント(pendant)基を有する無機Si-オキシド骨格を有する。シリコーンポリマーは、2個~数千個の範囲のモノマーを有し、0.65 cSt(ヘキサメチルジシロキサン)~+100万 cSt cpsの範囲であり得る粘度を有する。高粘度フルイドは、保護フィルムを形成することができるのに対して、低粘度フルイドは、乳化させることが可能であり、他の成分と良好な溶解度を有する。有機基は、界面活性特性を提供するように修飾することができる。Si-o結合は、非常に自由に移動することができ(Si-oは、回転エネルギー0.2 kcal/molであり、c-cは、回転エネルギー3.3 kcal/molである)、強力な結合エネルギーを有し(Si-oは、結合強度117 kcal/molであり、c-cは、結合強度85 kcal/molである)、平坦であり、かつ長い(Si-o角は、130°であり、長さは、0.163 nmであり、c-c結合は、角度112°であり、長さ0.154 nmである)。このこと全てが、非常に可撓性で強力な骨格を作り出す。ポリジメチルシロキサン(PDMS)もまた、エタノール(50 mM/m)及び水(72 mM/m)と比較して、20 mM/mの非常に低い表面張力を有する。これにより、完全な表面被覆及び優れた拡散作用(agent)が引き起こされ、それらはともに、エアロゾルの配合において有用な特性である。低分子量シリコーンは、高揮発性を有し、残留せず、軽い皮膚感触を提供する。低分子量シリコーンは、それらの低い熱蒸発(1グラム当たり)に起因して、皮膚から蒸発させるのに多くの熱を必要とせず、その結果として、水又はエタノールベースの製品と比較すると冷たさを感じない(表1を参照のこと)。
【0030】
表1.化粧品において使用される幾つかの揮発性フルイドに関する気化熱
【表1】
【0031】
PDMSポリマーは、気体に対して高い透過性を示し、透過性は、溶解度及び拡散係数に関連する(表2を参照のこと)。
【0032】
表2.化粧品において使用される幾つかの揮発性フルイドに関する透過性データ
【表2】
【0033】
この高い気体拡散率は、皮膚が「呼吸する」のを可能にさせ、非閉塞性であると記載される。環状シリコーン(シクロメチコン、D4-D5-D6)は、非常に良好な溶媒であり、非染色性であり、無色であり、無臭であり、高揮発性を有する。環状シリコーンは、有効成分用の送達ビヒクルとして制汗剤製品で最も一般に使用される。環状シリコーンは、それらの低い気化熱に起因して皮膚上では冷たいと感じず、心地良い皮膚感触を有し、加圧エアロゾルキャニスターに関して最適な懸濁媒質(suspending medium)である。環状シリコーンはまた、シリコーンの潤滑特性のため、バルブでの凝集物の形成を防ぐこともできる。制汗剤において一般的に使用される他の懸濁媒質は、エタノール、水及び鉱油である。
【0034】
本発明において、「シロキサン」という用語は、Si-O-Si結合を有する官能基を含む分子であることを意味する。起源の(parent)シロキサンは、式H(OSiH2)nOH及び(OSiH2)nを有するオリゴマー並びにポリマーハイブリッドを含む。シロキサンはまた、分岐状化合物を含み、その定義となる特徴は、ケイ素中心の各対が酸素原子1個によって隔てられていることである。シロキサン官能基は、シリコーンの骨格を形成する。本発明内の適切な揮発性シロキサンは、ジメチコン、ジメチコノール、フェニルトリメチコン及びそれらの誘導体等の線状シロキサン、又はシクロメチコン及びその誘導体等の環状シロキサン、より詳細にはシクロメチコン及びその誘導体等の環状シロキサンを含むリストから選択され得る。
【0035】
本発明者らは、エアロゾル缶を加圧することによって、加圧されていない組成物よりも一層改善された安定性が達成されることを発見した。したがって、別の特定の実施形態において、本発明のエアロゾルスプレーは、噴霧剤を更に含んでもよい。
【0036】
本発明において、「噴霧剤」という用語は、フルイド又は粉末の動きを生み出すのに使用される加圧ガスであることを意味する。特に、噴霧剤は単に、容易に気化することができる液体(又は気体)である。冷ガス噴霧剤は、エアロゾルスプレー等の加圧分配システムに充填して、ノズルを通して物質を押し出すのに使用され得る。エアロゾルスプレー缶において、噴霧剤は通常、その液体又は粉末と平衡状態にある(その飽和蒸気圧である)加圧ガスである。幾らかのガスが、放出され、負荷量を排出すると、より多くの液体が蒸発して、更なる圧力を維持する。本発明において有用な適切な噴霧剤は、液化ガス、より詳細には、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、n-ブタン、ペンタン及びn-ペンタン等の1つ以上の炭化水素を含むリストから選択してもよく、又は、噴霧剤は、窒素、二酸化炭素、圧縮空気又は亜酸化窒素ガス等の永久圧縮ガス及び/又は可溶性ガスであってもよい。本発明において使用され得る他の液化ガスは、DME(ジメチルエーテル)並びに1,1,1,2-テトラフルオロエタン(1,1,2,2-tetrafluoroethane)及び1,1-ジフルオロエタン(1,1-difluoroehtane)等のHFC(ヒドロフルオロカーボン(hydrofluorocarbon))である。
【0037】
また更なる実施形態において、本発明のエアロゾルスプレーは、沈降防止剤及び/又は凝集防止剤を更に含む。
【0038】
本発明において、「沈降防止剤」という用語は、懸濁液中の粒子が、フルイドから沈降して、粒子が取り込まれて、エアロゾル缶の底等の障壁に残るのを防ぐ物質であることを意味する。良好な沈降防止剤は、多孔質で嵩高く、容易に(easily)再懸濁可能な、均質な投与に必要な懸濁液を形成する特性を有する。本発明において、「凝集防止剤」という用語は、構成成分のケーキング又は凝集を防ぐ物質であることを意味する。本発明内の適切な沈降防止剤及び/又は凝集防止剤は、ベントナイト若しくはヘクトライトを含有するオルガノクレイゲル等の無機ポリマー、及び/又はアエロジル(商標)等のヒュームドシリカを含むリストから選択され得る。アエロジル(商標)は、選択されるシロキサンキャリア中でより良好な3D構造ネットワークを獲得するように化学的に修飾することができる。アエロジルは通常、親水性ヒュームドシリカ(SiO2)である。疎水性シリカ類、通常はジメチルジクロロシラン(Dimethyldichlorosilane)、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)、オルガノシラン、ヘキサデシルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メタクリルシラン、シリコーン油、アミノシラン及びそれらの誘導体等であるが、これらに限定されない、疎水性物質で後処理されるシリカ類が、本発明に特に適している。
【0039】
別の特定の実施形態において、本発明のエアロゾルスプレーは、本発明において有用であり得る任意の更なる物質を含有してもよい。かかる更なる物質として、1つ以上の皮膚軟化薬、保湿剤、酸化防止剤、保水剤、懸濁剤、乳化剤、粘度改質剤、極性改質剤、香料、電解質、色彩改質剤及び他の賦形剤が挙げられるが、これらに限定されない。適切な酸化防止剤は、BHT、BHA、没食子酸プロピル、アスコルビン酸及びメタ重亜硫酸ナトリウム(Sodium-metabisulfite)であり得るが、これらに限定されない。適切な粘度改質剤は、種々のコロイド、シリコーン樹脂、プロピレングリコール、オルガノゲル、アエロジル等であり得るが、これらに限定されない。
【0040】
本発明のエアロゾルスプレーにおける適切な更なる構成成分は、例えば、Tegosoft(商標)、即ち、ポリプロピレングリコールブチルエーテル又はppg-14-ブチルエーテルである。Tegosoft(商標)は、クリーム、ローション、バスオイル等のスキンケア製品において皮膚軟化薬として使用される場合が多い非常に良好な拡散特性を有する軽い化粧品用オイルである。Tegosoft(商標)はまた、エアロゾル配合物中の有効成分に対して優れた懸濁特性を有する。化粧品配合物中のPPG-ブチルエーテル成分は、フレーキングを低減させて、柔軟性を回復させることによって、乾燥肌又はダメージを受けた皮膚の外観を向上させる。
【0041】
本発明において、パーセントが言及されるときは、これらは、総組成物に対するwt/wtパーセントであることを意味する。例えば、噴霧剤80%は、噴霧剤80 gが組成物100 gの総重量中に存在することを意味する。
【0042】
特定の実施形態において、本発明は、内容物が、噴霧剤少なくとも10%、シロキサン10%~40%、乳酸菌10%~40%、沈降防止剤及び/又は凝集防止剤0%~5%並びに他の添加物0%~5%を含むか、又はそれらからなるエアロゾルスプレーを提供する。
【0043】
特定の実施形態において、本発明は、内容物が、噴霧剤少なくとも50%、シロキサン1%~20%、乳酸菌1%~20%、沈降防止剤及び/又は凝集防止剤0.1%~5%並びに他の添加物0%~5%を含むか、又はそれらからなるエアロゾルスプレーを提供する。
【0044】
好ましくは、本発明のエアロゾルスプレーは、乳酸菌1%~20%、より詳細には乳酸菌1%~10%、更に詳細には乳酸菌約9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%を含有する。
【0045】
さらに、本発明のエアロゾルスプレーは、好ましくは、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満等の少量の沈降防止剤を含有するか、又は更には、可能であれば沈降防止剤及び/又は凝集防止剤を含有しない。
【0046】
特定の実施形態において、本発明は、内容物が、噴霧剤少なくとも75%、シロキサン5%~10%、乳酸菌1%~10%、並びに沈降防止剤及び/又は凝集防止剤0%~5%を含むか、又はそれらからなるエアロゾルスプレーを提供する。
【0047】
別の特定の実施形態において、本発明は、内容物が、噴霧剤少なくとも80%、シロキサン1%~8%、乳酸菌1%~8%、並びに沈降防止剤及び/又は凝集防止剤0%~4%を含むか、又はそれらからなるエアロゾルスプレーを提供する。
【0048】
別の特定の実施形態において、本発明は、内容物が、噴霧剤少なくとも90%、シロキサン1%~4%、乳酸菌1%~4%、並びに沈降防止剤及び/又は凝集防止剤0%~2%を含むか、又はそれらからなるエアロゾルスプレーを提供する。
【0049】
本明細書において上記で規定する組成物の特定の実施形態において、沈降防止剤及び/又は凝集防止剤は、ベントナイトゲル及びアエロジル(商標)から選択される。
【0050】
更なる実施形態において、本発明は、内容物が、噴霧剤少なくとも75%、シクロメチコン5%~10%、乳酸菌1%~10%及びベントンゲル0%~5%を含むか、又はそれらからなるエアロゾルスプレーを提供する。代替的には、本発明は、内容物が、噴霧剤少なくとも75%、シクロメチコン5%~10%、乳酸菌1%~10%及びアエロジル0%~5%を含むか、又はそれらからなるエアロゾルスプレーを提供する。
【0051】
明らかに、休止状態の細菌の配合物において、防腐剤等の有害な製品及び水等の活性化物質は、組成物の長期保管を保証するためには回避されることが好ましい。したがって、特定の実施形態において、本発明によるエアロゾルスプレーは、水及び防腐剤を実質的に含まない。「実質的に含まない」という用語は、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、好ましくは1%未満であることを意味する。多区画のエアロゾルスプレーを使用する場合、細菌を含有する区画は、水及び防腐剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0052】
更なる態様において、本発明は、上記1つ以上の生きた細菌種を、表面に、又は環境へ塗布するための本発明によるエアロゾルスプレーの使用を提供する。本発明において、「表面」という用語は、その最も広い意味で解釈されるべきであり、即ち、表面は、物体の表面を含み得るが、ヒト又は動物の皮膚も含み得る。したがって、本発明のエアロゾルスプレーはまた、局所エアロゾルスプレーであってよく、ここで、「局所」という用語は、身体の指定位置での局所的な送達、特に、身体上の又は身体中の特定の場所への塗布であることを意味する。特に、局所的な送達は、エアロゾルによる粘膜への塗布を含む。
【0053】
本発明の特定の実施形態において、本発明は、健常な皮膚の微生物叢を回復及び/又は維持することに使用される本明細書で規定されるエアロゾルスプレーを提供する。そのため、本発明はまた、健常な皮膚の微生物叢を回復及び/又は維持するための本発明によるエアロゾルスプレーの使用を提供する。
【実施例
【0054】
実施例の概論
水虫及び他の皮膚真菌感染は、エルゴステロール合成を妨害するミコナゾール等の抗真菌薬で現在処置されている。ミコナゾールを含有する十分に知られている市販の製品は、ダクタリン(商標)スプレーであり、その使用の簡易さから好まれている。抗生物質及び抗真菌薬はともに、耐性の増加傾向が認められる。その結果、局所疾患のためのプロバイオティクスの使用等の代替的処置は、患者にとって有益である。ほとんどのプロバイオティクスが、病原体の浸潤及びコロニー形成を防ぐことによって、宿主(ヒト)に対して有益な効果を発揮する。乳酸桿菌種等の幾つかのプロバイオティクスは、有機酸、過酸化水素及び抗菌ペプチドを環境へと排出することによって、これらの病原体に対抗することが可能である。足白癬等の一般的な皮膚真菌感染は、トリコフィトン属(Trichophyton)、エピデルモフィトン属(Epidermophyton)、ミクロスポルム属(Microsporum)及びカンジダ属(Candida)等の種々の種によって引き起こされる。この研究は、エアロゾル(加圧キャニスター)が、プロバイオティクスの保存及び長期安定性に適した配合物であるかどうかを調査するものである。
【0055】
既に証明されているように、プロバイオティクスは、正しく乾燥させると、乾燥していない細菌とは対照的に、かなり良好な長期安定性を有する(Morgan et al., 2006 - Preservation ofmicro-organisms by drying; a review -Journal of microbiological Methods 66(2006) 183-193)。乾燥プロセスは、プロバイオティクスを代謝的に不活性な状態(即ち、休止状態)にする。主に粉末の残存水活性(Aw)、及び保管条件(温度、酸素、光)によって、粉末の安定性が決まる。
【0056】
実施例1:シリコーン中のプロバイオティクス細菌の安定性
この実施例では、本発明者らは、種々のシリコーン/シロキサン混合物中の生プロバイオティクス細菌の長期安定性を検討した。
【0057】
材料及び方法
安定性の研究
3つの株をこの安定性の研究に使用した:
自己培養したL.ペントーサス(L. pentosus)(即ち、lac4又はLp)
自己培養したLGG(即ち、lac7又はLGG)
購入した凍結乾燥LGG(Dupon(商標)LR-32)
【0058】
細菌を保存するための2つの異なるシリコーンベースの懸濁媒質を室温(+/-20℃)で試験した:
シリコーン:
化粧品用フルイド1406-OH(ジメチコノール及びジメチコン)-Chemsil(商標)
化粧品用フルイド6570-DM(ジシロキサン、シクロペンタシロキサン及びジメチコン)-Chemsil(商標)
【0059】
所定の時点で試料を入手した:
T0=懸濁媒質中に懸濁する前
T1=懸濁の1日後
T2=懸濁の1週後
T3=懸濁の2週後
T4=懸濁の1ヵ月後
T5=懸濁の2ヵ月後
T6=懸濁の6ヵ月後
T7=懸濁の12ヵ月後
【0060】
使用する材料は全て、オートクレーブすることによって使用前に滅菌処理した。使用する構成成分、成分等は全て、可能であればオートクレーブして、そうでなければ、細菌を懸濁する前に滅菌状況で濾過した。
【0061】
T0 CFU決定
Lac 4及びLac 7は、完全に増殖するまで液体MRS(de MAN, Rogosa& Sharpe-Carl Roth)培地(37℃)で培養した。培地を2780 Gで10分間遠心分離した。上清を廃棄して、細菌ペレットを更に使用した。
【0062】
100 mgを秤量して、生理食塩水(0.85% NaCl)で希釈して、総量10 mlを得た。3つの株(lac4、lac7及びLGG)から、希釈系列を作製し(10倍段階希釈)、塗抹平板培養法(薬局方の方法2.6.12及び2.6.13(欧州薬局方8.0)に基づく)に従って、プレート計数を行った。測定は3重反復で繰り返した。結果は、cfu/粉末1グラムで表す。
【0063】
懸濁媒質における細菌の懸濁
得られた細菌塊を用いて、種々の無水のシリコーンベースの懸濁媒質を用いた均質な1/10希釈(m/m%)を作製した。上記懸濁液1グラムをファルコンチューブ中に秤量して、アルミニウム袋中に密封した(RH=20%)。これによって、試料はそれぞれ、更なる実験目的で細菌100 mgを含有していた。アルミニウム袋は、生存度実験に関して或る特定の時間間隔で開封した。
【0064】
保管期間後の実験
密封した袋を、安定性実験に関して或る特定の時点で開封した。無水物質1グラムが入ったファルコンチューブを、乳化剤混合物(ポリソルベート80及びセスキオレイン酸ソルビタンからなる)1グラム及び生理食塩水8グラムを添加することによって更に処理した。これによりエマルジョンが形成され、細菌が水と接触することができ、再活性化された。更なる試料作製及びプレート計数は、上述するように行われ、薬局方(8.0)の方法2.6.12: Microbiological examinationof non-sterile products: microbial enumeration tests及び2.6.13:microbiological examination of non-sterile products: test for specifiedmicro-organismsに基づいた。
【0065】
結果及び論述
凍結乾燥した粉末の安定性は、凍結乾燥してない株の安定性と比較して、予想通り、はるかに優れていた。ほんの1ヵ月後、使用するシリコーン混合物のタイプ(図1:CF1406、図2:CF6570)にかかわらず、平均して3 logの低減が見られるのに対して、凍結乾燥した株に関しては、著しい低減は検出可能ではない(図1及び図2)。それにより、経時的に生微生物の安定な配合を保証するには、適正に凍結乾燥した(又は他の乾燥方法)粉末を用いて配合を始めることが重要であることが証明されている。安定な乾燥プロバイオティクス粉末は、更なる配合目的で取り扱いやすい。
【0066】
シリコーン混合物に関する安定性の結果(図1及び図2)により、これらが懸濁媒質として適切であることが示される。無水シリコーン媒質に関して1年の安定性後に、平均1 logの低減が見られるが、これは、局所的に塗布されて、皮膚上に有益な効果を発揮するのに十分な生微生物を残している。
【0067】
これにより、無水シリコーン媒質中に懸濁された適正に凍結乾燥した粉末と連携して、安定なプロバイオティクスを有する懸濁液を得ることが可能であることが証明されている。
【0068】
実施例2:加圧エアロゾル配合物におけるプロバイオティクス細菌の安定性
この実施例では、本発明者らは、加圧エアロゾル組成物中に配合される生プロバイオティクス細菌の長期安定性を検討した。
【0069】
材料及び方法
L.プランタルムの凍結乾燥株(マルトデキストリンを用いて乾燥させたTHT(商標))は、バルブ及びノズルを通過し易くて、かつ詰まりを防ぐために、篩いにかけて、50ミクロン未満の粒径を有する粉末画分を得た。細菌を、ともに懸濁媒質として機能を果たす、揮発性シクロメチコンであるMirasil CM5(商標)(デカメチルシクロペンタシロキサン)及び/又はTegosoft PBE(商標)(プロポキシ化アルコール-ppg 14ブチルエーテル)中に懸濁した。オルガノクレイ構成成分であるベントンゲルvs5 PC V(商標)(シクロペンタシロキサン、ジステアルジモニウムヘクトライト及び炭酸プロピレン)を、沈降防止及び凝集防止剤として使用した。
【0070】
総計8個の配合物(濃縮物)を種々の濃度で作製した(表3を参照のこと)後、エアロゾルキャニスター中に噴霧剤を充填した。
【0071】
表3.種々の配合物の組成:濃縮物をキャニスター中に充填し(20%)、その後、噴霧剤80%を添加して、5倍希釈の濃縮物を作製する。
【表3】
*50ミクロン未満の粉末画分を有する他の全ての配合物試料とは対照的に、30ミクロン未満の篩画分を試料6に使用した。
【0072】
細菌の生存度に関して、並びに懸濁した粉末の噴霧特性、並びに残渣及び沈降特性に関して、キャニスターを評価した。沈降が多すぎるものは、ケーキング、したがって製品放出の失敗をもたらし得るか、又はノズルの詰まりの頻発を招き得る。キャニスターに、配合物20%及び噴霧剤80%を充填する。使用する噴霧剤は、LPG(プロパン/ブタン/イソブタン-29/69/2)とブタン(55/45)との混合物である。圧力下(±2バール~4バール)で、使用する噴霧剤は、液化噴霧剤として存在する。
【0073】
種々の配合物の参照画分(1グラム)を、CFU決定用に室温(T=20℃)で密封アルミニウム袋中に保持した。同様に室温(20℃)で保管したエアロゾルキャニスターから獲得されるCFUを、参照と比較して、充填及び保管の影響を評価した。配合物作製及びキャニスターの充填の直前に、粉末の細菌負荷決定を行い、それにより、出発濃度として5.90 CFU/細菌粉末gが得られた。保管の1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、6ヵ月及び12ヵ月後に、更なる試料採取を行った。結果は、CFU/細菌粉末gとして算出した。
【0074】
配合物のCFU決定は、乳化剤混合物(ツイーン80 70%/スパン83 30%)1グラム及び生理食塩水8グラムを添加することによって実施して、溶解するまで振盪して、10倍段階希釈を行った。平板培養を、「コパカバーナ法(ガラスビーズを用いた塗抹平板培養)に従って実施した後、37℃で3日間のインキュベーション後にCFU計数を行った。使用する材料及び液体は全て、オートクレーブすることにより滅菌処理した。
【0075】
キャニスターから5グラムを噴霧させることと、噴霧剤全てが蒸発するまで待機する(±1時間)こととによって、エアロゾルキャニスターのCFU決定を実施した。その結果として、配合物1グラムがレシピエントに残存した。更なる試料作製は、上述するように実施した。
【0076】
試料は全て、3回の生物学的反復(3つの試料)及び3回の技術的反復(プレート計数)値で試験した後、平均値及び偏差を、下記の式を用いて算出した:
CFU/粉末g=(CFU×希釈計数/プレート上のg(ml))×((試料中の粉末g+希釈媒質g)/粉末g))
【0077】
各配合物のキャニスターの予備セットを、20℃で開封せずに保持して、6ヵ月後に空にして(振盪後に)、それらの噴霧特性及び空にした後のキャニスター中の残渣に関して評価した。
【0078】
結果及び論述
充填したキャニスター中のL.プランタルムの生存曲線は、保管安定性の1ヵ月後に平均1-logの減少を示す(図3)。これは、キャニスターの充填直後又は充填中の生存度のわずかな低下を示す。この現象に関しては、考え得る説明が幾つかある。噴霧剤ガスが、充填前にその部分圧(±4バール)下で保持される。わずかな過圧下で、液体を本発明の配合物と混合するキャニスター中に、液体を充填し、このようにして、本発明の細菌は、圧力衝撃を受ける。別の説明は、キャニスターの使用中に、バルブノズルを開放することによって、エアロゾル形成が高い剪断力と組み合わされ、細菌粉末をキャニスターから放出させることであり得る。最後の説明は、噴霧剤の蒸発と組み合わせた吸熱反応が、残存する配合物の急激な温度低下を引き起こすことであり得る。3つ全てのストレス(加圧衝撃、剪断力及び温度衝撃)は、細菌によって有害であり、生存度に影響を及ぼすと文献中に十分に記載されている。
【0079】
他方で、充填の1ヵ月後~4ヵ月後の時間枠で、充填したキャニスターにおける生存度は、幾分興味深いことに一定のままであり、最大0.5 Log~1 Logの生存度の低下が見られる。安定性の4ヵ月~6ヵ月の時間枠では、生存度は、幾つかの配合物に関しては、より多くの数logで減少した。開始から終わり(6ヵ月)までの生存度低下は、F3に関しては1-logの低減であり、F4及びF5に関しては2-logの低減であり、F8、F1及びF7に関しては3-logの低減であり、F6及びF2キャニスターに関しては5-logの低減であった。これらのデータから、全ての加圧配合物に関して、4ヵ月の安定性を保証することができること、及び適切な配合物は、安定性の所望の時間に応じて、6ヵ月間にわたる安定性を保証するように選択することができることが示される。これらの結果(図4)から、炭化水素噴霧剤加圧キャニスター中に配合物を入れることは、配合物中のL.プランタルムの生存度に対して正の影響を有することが明らかである。これにより、最初の1ヵ月の保管中の生存度の避けられない初期損失後に配合物の安定化が示される。仮説は、炭化水素噴霧剤混合物が、水及び酸素を含まない環境を創り出して、凍結乾燥した乳酸桿菌種の生存を支持するというものである。文献中の研究の幾つかには、窒素及び二酸化炭素等の不活性ガス下で保管される場合の、又は真空下で保管される場合の、乳酸桿菌細菌に関する生存度の改善について記載されている。しかしながら、シロキサンベースの媒質中の炭化水素気体/液体下での生存の報告は、これまで公開されていない。
【0080】
保管後のL.プランタルムの生存度は、配合物3(プロバイオティクス25%)において最も高く、さらに、配合物4(プロバイオティクス20%)もまた、良好な生存度を示した。明らかに、初期負荷のパーセントに関して補正したとしても、高濃度の細菌を有する配合物(F3、F4)は良好な安定性を有する。このことは、外部媒質の厳しい条件に対する相互遮蔽(mututal shielding)効果に起因し得る。加圧キャニスター中のベントンゲル(F5対F1及びF2、濃度増加0%~5%~25%で)の影響を評価すると、F5(2.2[1.9~2.9] LOG)及びF1(2.8[2.6~3.1] log)の間のlogの低減のわずかな差、及びF2(5.5[5.3~5.9] log)のより大きな差が示された。したがって、配合物は、ベントンゲル等の沈降防止剤を含有しないか、又はほんの少量しか含有しないことが好ましいと結論付けることができる。
【0081】
F1(50 μm)における生存度は、F6(30 μm)よりも著しく(2-log)高く、より小さな粒径が生存にとって悪いことを示す。小さな粒径はより大きな表面積をもたらし、したがって、環境(配合物)からのより負の影響が、細菌に害を及ぼし得る。したがって、本発明の配合物は、30ミクロンよりも大きな粒径を有することが好ましい。
【0082】
Tegosoft(商標)等のプロポキシ化したppg-14-ブチルエーテル(油様、揮発性スキンケア剤及び皮膚軟化薬)の添加(F7及びF8)は、充填したキャニスターにおける安定性に対して負の影響を与えなかった(図3)。したがって、かかる構成成分は、悪影響を伴わずに、例えば、エアロゾル配合物を改善して、エアロゾルの完全な排出を助長するために添加することができると結論付けることができる。
【0083】
図4は、種々の配合物のそれ自体での、又は充填したキャニスターにおける加圧下の比較を示す。これらのデータは、配合物を加圧することにより、6ヵ月間にわたって全ての配合物に関して細菌の生存度が著しく増加されることを明らかに示している。
【0084】
この実験では、炭素水素噴霧剤を使用して加圧下で保持される揮発性シリコーン中に懸濁させた凍結乾燥細菌の配合物が、室温でのプロバイオティクスの長期保存に適した送達系であることが証明された。キャニスターの噴き出しの排出後、揮発性構成成分(噴霧剤及びシリコーン)は蒸発して、凍結乾燥した細菌を、噴霧された皮膚又は表面上に残す。投与のこの部位で、配合物は、皮膚及び環境と接触するようになる。吸湿性プロバイオティクス粉末は、周囲からの水を吸収して、細菌は、代謝的に活性になり、それらの有益な機能を発揮することが可能になる。
【0085】
実施例3:種々のシリコーン及びシリコーン混合物におけるプロバイオティクス細菌の安定性
この実施例の目標は、種々のシリコーン及びシリコーン混合物の影響が、凍結乾燥したL.プランタルムの生存度に関して評価されるスクリーニングプラットフォームを得ることであった。比較は、環状シリコーン分子対線状シリコーン分子に関して行われた。また、より小さな分子がより多く細胞を透過し、再び活性になると代謝プロセスを妨害する可能性があるため、鎖長(#シロキサン分子~粘度)も比較した。最終的に、負の影響が累積しない限りは、シリコーンの混合物が、種々の個々のシリコーンの負の影響を相殺し得るという仮説を評価した。これらの広範囲に及ぶ比較安定性の研究により、本発明者らは、局所使用のためにシリコーン油中に懸濁させた凍結乾燥乳酸桿菌種を含有する、より安定なエアロゾル配合物を配合することが可能になる。
【0086】
この実験に関して、凍結乾燥したL.プランタルム粉末を、制汗剤で一般に使用される種々のシリコーン又はシリコーン混合物(表4を参照のこと)中に1/25(m/m%)で懸濁した。
【0087】
表4.凍結乾燥したL.プランタルムが1/25(m/m%)で懸濁されている種々のシリコーン組成物
【表4】
ジメチコン1 cSt
ジメチコン5 cSt
Mirasil(商標)cm-5(デカメチルシクロペンタシロキサン)
Dow corning(商標)345(シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン70/30-6 cSt)
ヘキサメチルジシロキサン(0.65 cSt)
CF 6570-DM(ジシロキサン、シクロペンタシロキサン及びジメチコン-300 cSt)
ジメチコン5 cSt-Mirasil(商標)Cm-5(50/50)
ジメチコン5 cP-DC 345(50/50)
ジメチコン5 cP-ヘキサメチルジシロキサン(50/50)
DC(商標)345-ヘキサメチルジシロキサン(50/50)
ジメチコン5 cSt-DC345-PPG-14-ブチルエーテル(40/40/20)
ジメチコン5 cSt-DC345-ヘキサメチルジシロキサン(40/40/20)
ジメチコン1 cSt-ジメチコン5 cSt-Mirasil(商標)cm5-DC(商標)345-ヘキサメチルジシロキサン、14-ppgブチルエーテル(全て、16.7%にて)
【0088】
より高粘度のシリコーンCF 6570は、この混合物が実施例1の安定性の研究にこれまで使用されたため、参照シリコーンとして使用した。種々の画分1グラムをファルコンチューブ中に秤量して、積層アルミニウムパウチ(Dakplapack(商標)-PET/ALU/NY/LDPE)中に保管して、光、酸素及び相対湿度から保護して、室温(20℃)で保管した。粉末のT0決定を実施した後、懸濁液を作製し、(5.85±0.71)E+11 CFU/グラムが得られた。さらに、1週、2週、1ヵ月、3ヵ月及び6ヵ月後に試料採取を実施した。試料採取中、同じ試料の3個のファルコンチューブを取り出し、2.1に記載するように、プレートを三重反復で計数した。ブランク(blank)試料(参照)を粉末100 mgとして保管した(懸濁させていない)。
【0089】
結果と論述
全ての配合物に関して、組成物の高い安定性(109 log CFU/g)が、3ヵ月の保管期間にわたって達成され、幾つかのスコアリングが、参照粉末F11及び比較的程度は低いがF10等の他のものよりもわずかに良好であったことが、図5から明らかである。差が小さすぎるため、環状シリコーン対線状シリコーン及びシロキサンの鎖長の影響に関して確かな結論を下すことができず、それにより、これらの性状は、シロキサンが本発明において有用であるのにそれほど関係がないことが示され得る。
【0090】
単一のシリコーン構成成分は、図5の左側に示しており、より複雑な混合物(3個~5個の構成成分)は、右側に示している。概して、図5の右側のシリコーン混合物は、左側の単一のシリコーンと比較して、より良好な生存を示し、種々の構成成分の混合物が、単一の構成成分シリコーンで観察される幾つかの負の影響を(部分的に)相殺することを示す。
【0091】
Tegosoft(商標)(ppg-14ブチルエーテル)は、生分解性であり、制汗剤において一般的に見られる適度に揮発性のプロピレングリコールn-ブチルエーテルである。Tegosoft(商標)は、シクロペンタシロキサンと比較して、加圧エアロゾルキャニスターにおける凍結乾燥した細菌の安定性に対して負の影響を持たない(図3及び図4)。Tegosoft(商標)は更に、他のシリコーンと混合すると、凍結乾燥した細菌の生存に対して保護効果を有し得るようである(図5~F11及びF13)。このことは、その良好な懸濁特性及び噴霧特性並びにキャニスター中の低残渣に加えて、ポリプロピレングリコールエーテルの添加が、プロバイオティクスエアロゾルを配合する際の有益な更なる成分であり得ることを示している。
【符号の説明】
【0092】
図面訳
図1
Stability of suspended bacteria at 20 ℃ in silicon oil CF 1406-OH シリコーン油CF 1406-OHにおける20℃での懸濁細菌の安定性
CFU/g powder CFU/粉末1g
Time(days) 時間(日)

図2
Stability of suspended bacteria at 20 ℃ in silicon oil CF 6570-DM シリコーン油CF 6570-DMにおける20℃での懸濁細菌の安定性
CFU/g powder CFU/粉末1g
Time(days) 時間(日)

図3
CFU/g powder in pressurized canister CFU/加圧キャニスター中の粉末1g
Time(months) 時間(ヵ月)

図4
Stability of the different formulations versus the pressurizedcanister 6 month at 20 ℃ 20℃で6ヵ月間の種々の配合物対加圧キャニスターの安定性
CFU/g powder CFU/粉末1g
Formulation 配合物
Canister キャニスター

図5
Viability of Lac 15 after 3 months suspension 懸濁の3ヵ月後のLac 15の生存度
Log CFU/gram Lac15 powder LogCFU/Lac15粉末1g
Reference powder 参照粉末
Different silicones and silicone mixtures 種々のシリコーン及びシリコーン混合物
図1
図2
図3
図4
図5