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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】硬化部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20241209BHJP
   C08F 214/26 20060101ALI20241209BHJP
   C08K 5/03 20060101ALI20241209BHJP
   C08K 5/57 20060101ALI20241209BHJP
   C08K 13/02 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
C08L27/12
C08F214/26
C08K5/03
C08K5/57
C08K13/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019553320
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018057476
(87)【国際公開番号】W WO2018177940
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】17164042.8
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17170781.3
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ボスソロ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ファントーニ, マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】アヴァタネオ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】コックス, マイケル ジェー.
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】藤井 勲
【審判官】松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-226418(JP,A)
【文献】特表2003-526705(JP,A)
【文献】特開昭63-023907(JP,A)
【文献】国際公開第2012/026552(WO,A1)
【文献】米国特許第5947053(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0088693(US,A1)
【文献】特開2014-006969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08J 3/00- 7/18
CA(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化造形品[物品(P)]の製造方法であって、前記方法が、
(i)
- フルオロエラストマー(A)の繰り返し単位の全モルに対して、0.1~10.0モル%の、少なくともニトリル基を有する少なくとも1種の硬化部位含有モノマー[モノマー(CS-N)]に由来する繰り返し単位を含む少なくとも1種のフルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)];
- 少なくとも1種の硬化剤[試剤(A)];
下式(B-1):
(式中、Ar B1 は、フッ素原子を含んでいてもよい芳香族基であり;nは、ゼロであるか又は1~4の整数である)
に従う、少なくとも1種の臭素含有マーカー[マーカー(B)]
を含む少なくとも1種のフルオロエラストマー組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii)前記組成物(C)を、高くても200℃の温度で少なくとも30分の時間の加熱下で成形する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記試剤(A)が、モノマー(CS-N)のニトリル基の活性化に向けて触媒活性を保有する化合物の中から選択され、並びに前記試剤(A)が試剤(Acat)と称され、
アンモニア発生有機化合物、すなわち、加熱するとアンモニアを発生することができる化合物;
- とりわけアリル- プロパルギル-、トリフェニル-、及びアレニル-スズ硬化剤などの、有機スズ化合物(テトラアルキル又はテトラアリールスズ化合物が好ましい)
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試剤(Acat)が、
(Acat-1):式(U):
[式中、Eは、O又はSであり、好ましくは、EはOであり、互いに等しいか又は異なる、Rの各々は、水素及びC~C炭化水素基からなる群から独立して選択される]
の(チオ)尿素化合物及びそれらの塩;
(Acat-2):アンモニア又は第一級アミンとアルデヒトとの環状付加生成物;
(Acat-3):式(C):
(式中、Eは、酸素又は硫黄であり;Rは、C~C36炭化水素基であり、Rcは、H又はC~Cアルキル基である)
の(チオ)カルバメート;
(Acat-4):とりわけ、(j)アンモニウムカルボキシレート;(jj)アンモニウムスルホネート;(jjj)アンモニウムホスフェート、ホスホネート又はスルホネート;(jv)硫酸、炭酸、硝酸及びリン酸のアンモニウム塩からなる群から選択される、有機及び無機酸のアンモニウム塩
からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
試剤(Acat)が、下記からなる群から選択され:
(Acat-1):上で詳述されたような、(チオ)尿素化合物が、好ましくは式(U-2):
(式中、E’は、O又はSである)
の(Acat-1-A)(チオ)尿素からなる群から選択され;
(Acat-2):アンモニア又は第一級アミンとアルデヒドとの環状付加生成物が、好ましくは
(Acat-2-A)式(T):
[式中、互いに等しいか又は異なる、Rの各々は、水素及びC~C炭化水素基(特にC~Cアルキル基)からなる群から選択される]
の環状アルデヒド付加物三量体;
(Acat-2-B)式:
のヘキサメチレンテトラミ
からなる群から選択され;
(Acat-3):上で詳述されたような、(チオ)カルバメートが、好ましくは式(C-1):
(式中、R’は、C~C36炭化水素基であり、好ましくは任意選択的に置換されたベンジル基である)
の(Acat-3-A)カルバメートからなる群から選択される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記試剤(A)が、モノマー(CS-N)のニトリル基の活性化に向けて反応性を有する複数の基を保有する化合物の中から選択され、並びに前記試剤(A)が試剤(Afunc)と称され、
(Afunc-1)式:
[式中:
- Aは、結合、-SO-、-O-、-C(O)-、又は1~10個の炭素原子の(フルオロ)アルキル、好ましくは、1~10個の炭素原子のパーフルオロアルキル、より好ましくは、-C(CF -であり;
- 出現ごとに等しいか又は異なる、Eの各々は、酸素又は硫黄、好ましくは酸素であり、並びにここで、アミノ基及び-EH基は、基Aに対するオルト位、メタ位又はパラ位において互換可能である)
のビス-アミノ(チオ)フェノール化合物[アミノフェノール(AP)];
(Afunc-2)式:
- A’は、結合、-SO-、-O-、-C(O)-、1~10個の炭素原子の(フルオロ)アルキル、好ましくは、1~10個の炭素原子のパーフルオロアルキル、より好ましくは、-C(CF -であり;
- 互いに等しいか又は異なる、Rの各々は、水素原子又はC~C12炭化水素基、好ましくはアリール基であり;
- アミノ基は、基A’に対するオルト位、メタ位又はパラ位において互換可能である)
の芳香族テトラアミン化合物[アミン(TA)];
-(Afunc-3)式:
(式中、Ra1は、-OH又は-Hであり、Ra2は、H又はNHであり、Eは、フッ素原子を任意選択的に含む、C~C18二価基である)
のビス-アミドキシム/アミジン/アミドラゾン化合物;
-(Afunc-4)式:
(式中、Eは、フッ素原子を任意選択的に含む、C~C18二価基であり、Rは、任意選択的にフッ素化された、C~C12基である)
のビス-イミドイルアミジン化合物
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試剤(Afunc)が、式:
を有する、4,4’-[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)-エチリデン]ビス(2-アミノフェノール)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
マーカー(B)が、式:
の4,4’-ジブロモオクタフルオロビフェニル及び式:
の4-ブロモビフェニルからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
組成物(C)が、
- フルオロエラストマー(A)に対して、一般に0.10~10phrの範囲の、好ましくは0.25~6phrの量で、マーカー(B);及び/又は
- フルオロエラストマー(A)に対して、0.10~10phrの範囲の、好ましくは0.25~5phrの量で、試剤(A)
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
タイプ(CS-N)の前記硬化部位含有モノマーが、
(CS-N1)XCNがF又はCFであり、mが0、1、2、3又は4であり;nが1~12の整数である、式CF=CF-(OCFCFXCN-O-(CF-CNのニトリル基を含有するパーフルオロビニルエーテル;
(CS-N2)XCNがF又はCFであり、m’が0、1、2、3又は4である、式CF=CF-(OCFCFXCNm’-O-CF-CF(CF)-CNのニトリル基を含有するパーフルオロビニルエーテル
からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
成形の前記工程が、所望の造形品へ前記組成物(C)を射出成形、圧縮成形、押出成形、コーティング、スクリーン印刷、流し込み、カレンダー加工する工程の少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
成形が、高くても195℃、より好ましくは高くても190℃、さらにより好ましくは高くても185℃の温度で及び/又は少なくとも160℃、好ましくは少なくとも165℃、より好ましくは少なくとも170℃の温度での加熱下で行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱が、少なくとも45分、より好ましくは少なくとも1時間の継続時間の間、及び/又は16時間未満、好ましくは14時間未満、好ましくは12時間未満の継続時間の間続行される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
記硬化造形品が、O(角)-リング、パッキン、ガスケット、ダイヤフラム、シャフトシール、バルブ軸シール、ピストンリング、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、及びオイルシールなどの、シーリング物品からなる群から選択される、又はパイピング及び管材料、特に、炭化水素流体及び燃料の送達用の導管などの、フレキシブルホース若しくは他の品目である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を用いて前記組成物(C)から得られた硬化造形品(P)における摩耗/破損の検出方法であって、前記方法が、それからの臭素含有化合物の放出を監視する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月31日出願の欧州特許出願第17164042.8号及び2017年5月12日出願の欧州特許出願第17170781.3号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、摩耗又は損傷の場合に特有のセンサーと相互作用する能力を有する硬化部品の製造方法に、及びスマートシールとしてとりわけ有用である、それから得られる硬化品に関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロエラストマー、より特にパーフルオロエラストマーは、特に半導体の製造工業においてなどの、高温、化学品攻撃、及びプラズマへの暴露などの、幾つかのラッシュ条件に対する優れた耐性を必要とする様々な用途に長い間使用されている。とりわけこの分野において、シーリング部品において被り得る摩耗及び損傷の監視の可能性は、生産を最適化し、そして望ましくない汚染物質又は非適合製造条件による規格外の製造半導体商品の廃棄物を回避するために必須の要件である。
【0004】
実際に、シールはほとんど、それらの純粋な形態では、信号を処理する及び/又は信号を送達することができない、フルオロエラストマーでできている。シールの元の役割を含むことなく、シールをセンサーとして使用することを可能にする又は特有の条件下にセンサーと相互作用することができる材料を研究するために幾つかのイニシアチブが取られつつある。
【0005】
主な挑戦の1つは、例えば、それがどれほど摩耗しているかを識別できるシールを提供することである。この自己監視はまた、「状態監視」としても知られている。
【0006】
1つの例示的な解決策は、とりわけFreudenbergによって記載されており(2017年3月10日にダウンロードされた、ウェブページ:https://www.fst.com/press/2016/freudenberg-smart-sealsにおいて入手可能な、2016年4月25日付け報道発表を参照のこと);この文献によれば、有効な量の導電性充填材材料及び絶縁性外層を含む導電性エラストマーからなるロッドシールが提供されているが、外層は、シールにおけるシールリップである。電気回路がロッドとハウジング壁とを接続するとき、電気が測定可能な変数になることができる。ロッドシールは前後に動くので、シールリップは摩耗する。導電性支持材料が表面に達する場合、ロッドとハウジングとの間の電気回路は閉じる-LEDが信号を送ることができ得る状態。
【0007】
それにもかかわらず、この解決策は、監視されるべきシールと直接接触した周辺装置(電気回路)の使用を必要とし、それは、幾つかのアセンブリにおいて実行不可能な解決策であり得る。
【0008】
この分野において、それ故に、製造コストを妥当なレベルに維持し、且つ、シールの本来の役割を損なうことなく、摩耗/構造的損傷に向けて状態監視を発現させる硬化部品が、及びそれの製造方法が、依然として探求されている。
【0009】
独国特許第3823278号明細書(日本メクトロン株式会社)1989年1月26日は、(a)約30~約80モルパーセントのテトラフルオロエチレンと、(b)約5~約60モルパーセントのパーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)と(c)次の一般式:CF=CFOCFCFXOR(式中、Xは、F又は-CFであり、Rは、-C2n+1である)で表されるパーフルオロエーテル化合物とを含むフッ素含有弾性コポリマーであって、そのコポリマーが、(a)成分と、(b)成分と(c)成分とを、ラジカル重合開始剤の存在下で共重合させることによって得られるコポリマーに関する。このコポリマーは、共重合中に連鎖移動剤として使用された線状ヨード-又はブロモ-含有化合物に由来する、ヨウ素又は臭素を含んでもよい。
【0010】
米国特許出願公開第2004014900号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES CO)2004年1月22日は、
(a)(i)CF=CF-R(式中、Rは、フッ素又はC~Cパーフルオロアルキルである)、(ii)水素含有C~Cオレフィンであって、前記CF=CFR及び前記オレフィンの全モルを基準として、少なくとも約10モルパーセントのオレフィン、(iii)フルオロポリマー鎖当たり1個以上の末端臭素原子を含めて平均2個以上の臭素原子、(iv)任意選択的にCX=CX-R(式中、各Xは独立して、H、F、又はClであり、Rは、ハロゲン又は1個以上のエーテル結合を含んでもよいC~Cアルキル若しくはアルケニル基である)、(v)任意選択的に、臭素含有硬化部位モノマーに由来する相互重合単位を含むフルオロポリマーと;
(b)過酸化物硬化剤と;
(c)架橋助剤と
を含む硬化性組成物を開示している。
【0011】
米国特許第4906917号明細書(米国エネルギー省(US DEPARTMENT OF ENERGY)[US])1990年3月6日は、エラストマーの劣化の監視方法であって、この方法が、関連電気接点を有する圧電性材料をエラストマーと接触させて振動系を形成する工程であって、この圧電性材料及び関連接点が発振回路の一部である工程と;発振回路を振動させる工程と;発振回路のパラメータを測定する工程と;発振回路のパラメータの変化をエラストマーの劣化に関連付ける工程とを含む方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の目的は、それ故に、硬化造形品[物品(P)]の製造方法であって、前記方法が、
(i)
- フルオロエラストマー(A)の繰り返し単位の全モルに対して、0.1~10.0モル%の、少なくともニトリル基を有する少なくとも1種の硬化部位含有モノマー[モノマー(CS-N)]に由来する繰り返し単位を含む少なくとも1種のフルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)];
- 少なくとも1種の硬化剤[試剤(A)];
- 少なくとも1個の芳香環と、sp-混成芳香族炭素に結合した少なくとも1個の臭素原子とを含む化合物からなる群から選択される、少なくとも1種の臭素含有マーカー[マーカー(B)]
を含むフルオロエラストマー組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii)前記組成物(C)を、高くても200℃の温度で少なくとも30分の時間の加熱下で成形する工程と
を含む方法である。
【0013】
本出願人は、意外にも、ニトリル硬化部位を含むフルオロエラストマーなどの、前述の硬化性化合物と、それのための硬化系と、Br含有芳香族マーカーとを、上に規定されたような条件において、加工する場合に、この化合物が、化学結合した臭素原子を維持する硬化造形品をもたらすように硬化させることができる:そのようにして得られた硬化造形品が、摩耗/損傷を受けたときに、臭素原子が半導体原材料又は最終部品に一般に絶対に含まれないのでシールの損傷にもっぱら由来する、そして半導体の製造と日常的に関係があるものなどの、とりわけオンライン質量分析計によって容易に見つけることができる、Br含有汚染物質をそれ故に放出するであろうことを見いだした。
【発明を実施するための形態】
【0014】
組成物(C)は、上で詳述されたような、1種若しくは2種以上の試剤(A)を含む。
【0015】
前記試剤(A)は、上で記載されたような、モノマー(CS-N)の硬化部位との反応によってフルオロエラストマー(A)の架橋を促進することができる試剤である。試剤(A)は、とりわけ、上で記載されたような、モノマー(CS-N)のニトリル基に向けて反応性を有する複数の基を保有する化合物であってもよく、並びに/又はモノマー(CS-N)の同じニトリル基を触媒的に活性化させて互いに反応させる化合物であることができる。
【0016】
硬化剤(A)の選択は特に限定されず、当業者は、フルオロエラストマー(A)の硬化部位の性質に応じて最適な硬化剤(A)を選択するであろう。
【0017】
1種若しくは2種以上の試剤(A)を本発明の組成物に使用することができる。とりわけ、1種若しくは2種以上の試剤(A)は、上で記載されたような、モノマー(CS-N)のニトリル基に向けて反応性を有する複数の基を保有するものの中から選択されてもよく;1種若しくは2種以上の試剤(A)は、モノマー(CS-N)の同じニトリル基を触媒的に活性化させて互いに反応させるものの中から選択されてもよく、並びにこれらの2つのタイプの試剤(A)の1種若しくは2種以上を、本発明の組成物に単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0018】
試剤(A)が、上で記載されたような、モノマー(CS-N)のニトリル基の活性化に向けて触媒活性を保有する化合物の中から選択される場合、試剤(A)は、試剤(Acat)と称され、とりわけ、
- 芳香族アンモニア発生化合物、すなわち、加熱すると(例えば、硬化/後硬化中に遭遇するものなどの条件において)アンモニアを発生することができる化合物;
- とりわけアリル- プロパルギル-、トリフェニル-、及びアレニル-スズ硬化剤などの、有機スズ化合物(テトラアルキル又はテトラアリールスズ化合物が好ましい)
からなる群から選択することができる。
【0019】
試剤(Acat)は好ましくは、
(Acat-1):式(U):
[式中、Eは、O又はSであり、好ましくはEは、Oであり、互いに等しいか又は異なる、Rの各々は、水素及びC~C炭化水素基(特にC~Cアルキル基)からなる群から独立して選択される]
の(チオ)尿素化合物及びそれらの塩;
(Acat-2):アンモニア又は第一級アミンとアルデヒトとの環状付加生成物;
(Acat-3):式(C):
(式中、Eは、酸素又は硫黄であり;Rは、C~C36炭化水素基であり、Rcは、H又はC~Cアルキル基である)
の(チオ)カルバメート;
(Acat-4):とりわけ、(j)アンモニウム(好ましくはフッ素含有)カルボキシレート;(jj)アンモニウム(好ましくはフッ素含有)スルホネート;(jjj)アンモニウム(好ましくはフッ素アルキル基含有)ホスフェート、ホスホネート又はスルホネート;(jv)硫酸、炭酸、硝酸及びリン酸のアンモニウム塩からなる群から選択される、有機及び無機酸のアンモニウム塩
からなる群から選択される。
【0020】
好適な試剤(Acat)の中で:
(Acat-1):上で詳述されたような、(チオ)尿素化合物は好ましくは、式(U-2):
(式中、E’は、O又はSである)
の(Acat-1-A)(チオ)尿素からなる群から選択され;
(Acat-2):上で詳述されたような、アンモニア又は第一級アミンとアルデヒドとの環状付加生成物は、好ましくは:
(Acat-2-A)式(T):
[式中、互いに等しいか又は異なる、Rの各々は、水素及びC~C炭化水素基(特にC~Cアルキル基)からなる群から選択される]
の環状アルデヒド付加物三量体;
(Acat-2-B)式:
のヘキサメチレンテトラミン(それは、ホルムアルデヒドへのアンモニアの付加の結果であることが知られている)
からなる群から選択され;
(Acat-3):上で詳述されたような、(チオ)カルバメートは、好ましくは式(C-1):
(式中、R’は、C~C36炭化水素基であり、好ましくは任意選択的に置換されたベンジル基である)
の(Acat-3-A)カルバマートからなる群から選択される。
【0021】
本発明の組成物中で特に有用と分かった試剤(Acat)は、以下:
(Acat-1)コスト/入手可能性/反応性の観点から好ましい選択肢である、式:
の尿素;
(Acat-2)式:
のアセトアルデヒドアンモニア三量体;
(Acat-3)式:
のヘキサメチレンテトラミン;
(Acat-4)式:
のベンジルカルバメート
である。
【0022】
試剤(A)が、上で記載されたような、モノマー(CS-N)のニトリル基に向けて反応性を有する複数の基を保有する化合物の中で選択される場合、試剤(A)は試剤(Afunc)と称され、とりわけ、
(Afunc-1)式:
[式中、
- Aは、結合、-SO-、-O-、-C(O)-、又は1~10個の炭素原子の(フルオロ)アルキル(具体的には、1~10個の炭素原子のパーフルオロアルキル、例えば-C(CF-)であり;
- 出現ごとに等しいか又は異なる、Eの各々は、酸素又は硫黄、好ましくは酸素であり、並びにアミノ基及び-EH基は、基Aに対するオルト位、メタ位又はパラ位において互換可能である)
のビス-アミノ(チオ)フェノール化合物[アミノフェノール(AP)];
(Afunc-2)式:
[式中、
- A’は、結合、-SO-、-O-、-C(O)-、1~10個の炭素原子の(フルオロ)アルキル(具体的には、1~10個の炭素原子のパーフルオロアルキル、例えば-C(CF-)であり;
- 互いに等しいか又は異なる、Rの各々は、水素原子又はC~C12炭化水素基、好ましくはアリール基であり;
- アミノ基は、基A’に対するオルト位、メタ位又はパラ位において互換可能である]
の芳香族テトラアミン化合物[アミン(TA)];
-(Afunc-3)式:
(式中、Ra1は、-OH又は-Hであり、Ra2は、H又はNHであり、Eは、フッ素原子を任意選択的に含む、C~C18二価基である)
のビス-アミドキシム/アミジン/アミドラゾン化合物;
-(Afunc-4)式:
(式中、Eは、フッ素原子を任意選択的に含む、C~C18二価基であり、Rは、任意選択的にフッ素化された、C~C12基である)
のビス-イミドイルアミジン化合物
からなる群から選択することができる。
【0023】
上で詳述されたようなビス-アミドキシム/アミジン/アミドラゾン化合物(Afunc-3)の中で、とりわけ、
(Afunc-3-A):式:
[式中、Rfは、二価のフッ素化アルキリデン基、好ましくはnが1~10である、式-(CF-の基であるか、又は式中、Rは、(パー)フルオロオキシアルキレン基、好ましくは、XがF又は-CF3であり;n、mがゼロ又は整数であり、但し、n+mが1~100であり;mが1又は2である、-(CFX)(OCFCFX)(OCFX)O-(CFX)-から選択される基である]
のフッ素化ビス-アミドキシム化合物;
(Afunc-3-B)式:
[式中、Jは、結合、-SO-、-O-、-C(O)-、1~10個の炭素原子の(フルオロ)アルキル(具体的には、1~10個の炭素原子のパーフルオロアルキル、例えば-C(CF-)である]
の芳香族ビス-アミドキシム化合物;
(Afunc-3-C):式:
[式中、Rは、二価のフッ素化アルキリデン基、好ましくは、nが1~10である、式-(CF-の基であるか、又は式中、Rは、(パー)フルオロオキシアルキレン基、好ましくは、XがF又は-CF3であり;n、mがゼロ又は整数であり、但し、n+mが1~100であり;mが1又は2である、-CFX)(OCFCFX)(OCFX)O-(CFX)-から選択される基である]
のフッ素化ビス-アミドラゾン化合物;
(Afunc-3-D)式:
[式中、Jは、結合、-SO-、-O-、-C(O)-、1~10個の炭素原子の(フルオロ)アルキル(具体的には1~10個の炭素原子のパーフルオロアルキル、例えば-C(CF-)である]
の芳香族ビス-アミドラゾン化合物
に言及することができる。
【0024】
ある種の好ましい実施形態によれば、試剤(A)は、上で詳述されたような、アミノフェノール(AP)である。
【0025】
アミノフェノール(AP)は、4,4’-[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)-エチリデン]ビス(2-アミノフェノール);4,4’-スルホニルビス(2-アミノフェノール);3,3’-ジアミノベンジジン、3,3’,4,4’-テトラアミノベンゾフェノンからなる群から選択することができる。
【0026】
特に好ましいアミノフェノール(AP)は、式:
を有する、別名ビス-アミノフェノールAFで知られる、4,4’-[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)-エチリデン]ビス(2-アミノフェノール)である。
【0027】
組成物(C)は、上に詳述されたような、1種若しくは2種以上のマーカー(B)、すなわち、少なくとも1個の芳香環と、sp-混成芳香族炭素に結合した少なくとも1個の臭素原子とを含む化合物を含む。
【0028】
この理論に制約されることなく、本出願人は、意外にも、上で詳述されたような、マーカー(B)が、実質的な硬化を達成するのに有効と分かった上に列挙された特有の条件(高くても200℃の温度で少なくとも30分)で、硬化効率に有害な影響を及ぼさないし、またいかなる有意な蒸発損失又は分解も受けず、それ故に、いずれかの理由で例えば摩耗及び/又は材料分解のために、ある種の環境において放出される場合及び放出されるときに、とりわけ質量分析法などの、異なる分析技術によって容易に検出することができる、臭素含有化合物の存在を、そのようにして得られた最終ゴム部品において確実にすることを見いだした。
【0029】
これは、フルオロエラストマーがシーリング材料として広く使用されているのに対して、一方では、条件が、例えばプラズマ放射、HF及び他のエッチングガス暴露など、極めて過酷で厳しく、さらには極度の清浄度と、損傷装置のシールからの廃棄物を含むいずれかのタイプの汚染物質の不在とが品質基準を満たすために必須である、半導体の製造においてとりわけ特に有利である。
【0030】
記載のように、マーカー(B)は、少なくとも1個の臭素原子を含む。マーカー(B)は、1個若しくは2個以上の臭素原子を含んでもよい。
【0031】
実際に、本出願人は、マーカー(B)の前記少なくとも1個の臭素原子が環芳香族sp混成炭素への前記結合によって芳香族部分に結合している場合に、前記Br-C結合の耐熱性が高められ、その結果組成物(C)からの及び/又はそれから誘導された硬化部品からの臭素の放出は、上に規定された加工条件が順守されるという条件で、それから誘導された硬化部品の致命的な破損のために主として及び実質的に起こり、硬化方法中には起こらないことを見いだした。
【0032】
言われたように、マーカー(B)は、少なくとも1個の芳香環を含む。マーカー(B)は、1個若しくは2個以上の芳香環を含んでもよく;マーカー(B)が2個以上の芳香環を含む場合、前記芳香環は、縮合していてもよいし、又は結合によって若しくはいずれかのタイプの橋架け基によって連結されていてもよい。
【0033】
マーカー(B)は、フッ素原子を含んでもよい。
【0034】
マーカー(B)は一般に、下式(B-1):
(式中、ArB1は、場合によりフッ素原子を含む、芳香族基であり;nは、ゼロであるか又は1~4の整数である)
に従う。
【0035】
好ましいマーカー(B)の中で、とりわけ式:
の4,4’-ジブロモオクタフルオロビフェニル及び式:
の4-ブロモビフェニルに言及することができる。
【0036】
組成物(C)は一般に:
- フルオロエラストマー(A)に対して、一般に0.10~10phr、好ましくは0.25~6phrの範囲の量で、上に詳述されたような、マーカー(B)と;
- フルオロエラストマー(A)に対して、0.10~10phr、好ましくは0.25~5phrの範囲の量で、上に詳述されたような、試剤(A)と
を含む。
【0037】
組成物(C)は、上で詳述されたような、1種若しくは2種以上の化合物(A)を含む。
【0038】
本発明の目的のためには、用語「(パー)フルオロエラストマー」[フルオロエラストマー(A)]は、真のエラストマーを得るための基本構成成分として役立つフルオロポリマー樹脂を指すことを意図し、前記フルオロポリマー樹脂は、10重量%超、好ましくは30重量%超の、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(本明細書では以下、(パー)フッ素化モノマー)に由来する繰り返し単位と、任意選択的に、フッ素原子を含まない少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(本明細書では以下、含水素モノマー)に由来する繰り返し単位とを含む。
【0039】
真のエラストマーは、それらの固有の長さの2倍まで、室温で、引き伸ばすことができ、且つ、5分間張力下にそれらを保持した後にそれらが解放されてしまうとすぐに、同時にそれらの最初の長さの10%以内に戻る材料として、ASTM,Special Technical Bulletin,No.184標準によって定義されている。
【0040】
一般に、フルオロエラストマー(A)は、上で詳述されたような、モノマー(CS-N)に由来する繰り返し単位に加えて、少なくとも1種の(パー)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み、ここで、前記(パー)フッ素化モノマーは一般に、
- テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン、及びヘキサフルオロイソブチレンなどの、C~Cフルオロ-及び/又はパーフルオロオレフィン;
- フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)及びトリフルオロエチレン(TrFE)などの、C~C含水素モノフルオロオレフィン;
- 式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~C(パー)フルオロアルキル又は1個以上のエーテル基を有するC~C(パー)フルオロオキシアルキルである)に従う(パー)フルオロアルキルエチレン;
- クロロトリフルオロエチレン(CTFE)のような、クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C~Cフルオロオレフィン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えば、-CF、-C、-Cである)に従うフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CH=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えば、-CF、-C、-Cである)に従うヒドロフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOX(式中、Xは、1個以上のエーテル基を有するC~C12オキシアルキル、又はC~C12(パー)フルオロオキシアルキルである)に従うフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;特に式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C~Cフルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えば、-CF、-C、-C又は-C-O-CFのような、1個以上のエーテル基を有するC~C(パー)フルオロオキシアルキルである)に従う(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル;
- 式CF=CFOY(式中、Yは、C~C12アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル、又はC~C12オキシアルキル若しくはC~C12(パー)フルオロオキシアルキルであり、前記Y基は、カルボン酸基又はスルホン酸基を、その酸、酸ハライド若しくは塩形態で含む)に従う官能性フルオロ-アルキルビニルエーテル;
- 式:
(式中、互いに等しいか又は異なる、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6の各々は、独立して、フッ素原子、1個以上の酸素原子を任意選択的に含む、C~Cフルオロ-又はパー(ハロ)フルオロアルキル、例えば-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCFである)の(パー)フルオロジオキソール
からなる群から選択される。
【0041】
含水素モノマーの例は、とりわけ、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの、含水素アルファ-オレフィン、ジエンモノマー、スチレンモノマーであり、アルファ-オレフィンが典型的には使用される。
【0042】
フルオロエラストマー(A)は、一般に、非晶質生成物、つまり低い結晶化度(20体積%未満の結晶相)及び室温未満のガラス転移温度(T)を有する生成物である。ほとんどの場合、フルオロエラストマー(A)は、有利には10℃未満、好ましくは5℃未満、より好ましくは0℃のTを有する。
【0043】
フルオロエラストマー(A)は、好ましくは、
(1)VDF系コポリマー[ここで、VDFが、上で詳述されたような、モノマー(CS-N)、並びに
(a)テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの、C~Cパーフルオロオレフィン;
(b)フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロイソブテン(HFIB)などの、水素含有C~Cオレフィン、式CH=CH-R(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン;
(c)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などの、ヨウ素、塩素及び臭素の少なくとも1つを含むC~Cフルオロオレフィン;
(d)式CF=CFOR(式中、Rは、C~C(パー)フルオロアルキル基、好ましくは、CF、C、Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC~C12((パー)フルオロ)-オキシアルキル、例えば、パーフルオロ-2-プロポキシプロピル基である)の(パー)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル;
(f)式:
(式中、互いに等しいか又は異なる、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6の各々は、独立して、フッ素原子、及びとりわけ-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCFなどの、1個又は2個以上の酸素原子を任意選択的に含む、C~C(パー)フルオロアルキル基からなる群から選択される)
を有する(パー)フルオロジオキソール;好ましくはパーフルオロジオキソール;
(g)式:
CF=CFOCFORf2
(式中、Rf2は、C~C(パー)フルオロアルキル;C~C環状(パー)フルオロアルキル;及び少なくとも1個のカテナリー酸素原子を含む、C~C(パー)フルオロオキシアルキルからなる群から選択され;Rf2は、好ましくは-CFCF(MOVE1);-CFCFOCF(MOVE2);又はCF(MOVE3)である)
を有する(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(本明細書では以下、MOVE);
(h)C~C非フッ素化オレフィン(Ol)、例えばエチレン及びプロピレン
からなる群から選択される少なくとも1種の追加のコモノマーと共重合させられている];並びに
(2)TFE系コポリマー[ここで、TFEが、上で詳述されたような、モノマー(CS-N)、並びに上で詳述されたような(c)、(d)、(e)、(g)、(h)及び(i)からなる群から選択される少なくとも1種の追加のコモノマーと共重合させられている]
の中で選択される。
【0044】
フルオロエラストマー(A)は一般に、上で詳述されたような、TFE系コポリマーの中で選択される。
【0045】
任意選択的に、本発明のフルオロエラストマー(A)はまた、一般式:
(式中、互いに等しいか又は異なる、R、R、R、R、R及びRは、H又はC~Cアルキルであり;Zは、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された、酸素原子を任意選択的に含有する、線状若しくは分岐のC~C18(ヒドロ)カーボン基(アルキレン若しくはシクロアルキレン基を含む)、又は1個以上のカテナリーエーテル結合を含む(パー)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基である)
を有するビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位を含んでもよい。
【0046】
ビス-オレフィン(OF)は、好ましくは、式(OF-1)、式(OF-2)及び式(OF-3):
[式中、jは、2~10、好ましくは4~8の整数であり、互いに等しいか又は異なる、R1、R2、R3、R4は、H、F又はC1~5アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル基である];
[式中、互いに及び出現するごとに等しいか又は異なる、Aの各々は、独立して、F、Cl、及びHから選択され;互いに及び出現するごとに等しいか又は異なる、Bの各々は、独立して、F、Cl、H及びOR(ここで、Rは、部分的に、実質的に又は完全にフッ化又は塩素化されていることができる分岐鎖若しくは直鎖アルキル基である)から選択され;Eは、エーテル結合が挿入され得る、任意選択的にフッ素化された、2~10個の炭素原子を有する二価基であり;好ましくは、Eは、mが3~5の整数である、-(CF-基であり;(OF-2)タイプの好ましいビス-オレフィンは、FC=CF-O-(CF-O-CF=CFである]、
[式中、E、A及びBは、上に定義されたものと同じ意味を有し;互いに等しいか又は異なる、R5、R6、R7は、H、F又はC1~5アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル基である]
に従うものからなる群から選択される。
【0047】
フルオロエラストマー(A)に含まれる、上で詳述されたような、タイプ(CS-N)の硬化部位含有モノマーの中で、好ましいモノマーは、(パー)フッ素化されており、とりわけ、
(CS-N1)XCNがF又はCFであり、mが0、1、2、3又は4であり;nが1~12の整数である、式CF=CF-(OCFCFXCN-O-(CF-CNのニトリル基を含有するパーフルオロビニルエーテル;
(CS-N2)XCNがF又はCFであり、m’が0、1、2、3又は4である、式CF=CF-(OCFCFXCNm’-O-CF-CF(CF)-CNのニトリル基を含有するパーフルオロビニルエーテル
からなる群から選択されるものである。本発明の目的に好適なタイプCS-N1及びCS-N2の硬化部位含有モノマーの具体的な例は、とりわけ、米国特許第4281092号明細書(DU PONT)1981年7月28日、米国特許第4281092号明細書(DU PONT)1981年7月28日、米国特許第5447993号明細書(DU PONT)1995年9月5日及び米国特許第5789489号明細書(DU PONT)1998年8月4日に記載されているものである。
【0048】
好ましい硬化部位モノマー(CS-N)は、式:
CF=CF-O-CF-CF(CF)-O-CF-CF-CN
のパーフルオロ(8-シアノ-5-メチル-3,6-ジオキサ-1-オクテン)(8-CNVE)である。
【0049】
本発明の組成物に使用することができる例示的な好ましいフルオロエエラストマー(A)は、以下のモノマー組成(繰り返し単位の全モル数に対する、モル%での):
(i)テトラフルオロエチレン(TFE):50~80%;(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE):15~50%;モノマー(CS-N):0.1~10%;ビス-オレフィン(OF):0~5%;
(ii)テトラフルオロエチレン(TFE):20~70%;(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(MOVE):25~75%;(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE):0~50%;モノマー(CS-N)0.1~10%;ビス-オレフィン(OF):0~5%
を有するものである。
【0050】
組成物(C)はさらに、フルオロエラストマーの硬化のために一般的に使用され得る成分を追加して含んでもよく;より具体的には、組成物(C)は一般に:
(a)フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、一般に0.5~15phr、好ましくは1~10phrの量の、1種若しくは2種以上の金属塩基性化合物;金属塩基性化合物は、一般に、(j)二価金属の酸化物又は水酸化物、例えばMg、Zn、Ca又はPbの酸化物又は水酸化物、並びに(jj)弱酸の金属塩、例えばBa、Na、K、Pb、Caのステアリン酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩又は亜リン酸塩からなる群から選択される;
(b)フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、一般に0.5~15phr、好ましくは1~10phrの量の、金属塩基性化合物ではない1種若しくは2種以上の酸受容体;これらの酸受容体は一般に、とりわけ欧州特許出願公開第708797A号明細書(DU PONT)1996年5月1日に記載されているような、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、オクタデシルアミンなどの、窒素含有有機化合物から選択される;
(c)充填材、増粘剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、加工助剤などの、他の従来の添加剤
をさらに含んでもよい。
【0051】
言われたように、本発明は、硬化造形品[物品(P)]の製造方法であって、前記方法が、とりわけ、上に詳述されたような、組成物(C)を、高くても200℃の温度で少なくとも30分の時間の加熱下に成形する工程(ii)を含む方法に関する。
【0052】
表現「成形」は、組成物(C)に関連して用いられる場合、上に詳述されたような、硬化造形品を最終的にもたらすであろう、任意の後処理又はさらなる加工を含めて、前記組成物(C)から出発して、物品を製造する/造形する全ての方法を包含することを本明細書では意図する。
【0053】
成形工程は、組成物(C)を所望の造形品へ射出成形、圧縮成形、押出成形、コーティング、スクリーン印刷、流し込み(forming-in-place)、カレンダー加工する工程を含むことができる。前記造形品は、有利には、加工それ自体中に及び/又はその後の工程(後処理又は後硬化)において加硫(硬化)を受け、有利には、比較的柔らかく、弱い、フルオロエラストマー未硬化組成物を、非粘着性の、強い、不溶性の、耐化学薬品性の及び耐熱性の硬化フルオロエラストマー材料でできた完成品へ変換させる。
【0054】
それにもかかわらず、高くても200℃の、好ましくは高くても195℃の、より好ましくは高くても190℃の、さらにより好ましくは高くても185℃の温度での及び/又は少なくとも160℃、好ましくは少なくとも165℃、より好ましくは少なくとも170℃の温度での加熱下で前記成形を行うことが本発明の方法の要件のままである。
【0055】
本発明の方法の成形工程における、前記加熱は、少なくとも30分、好ましくは少なくとも45分、より好ましくは少なくとも1時間の継続時間の間続行される。
【0056】
加熱工程の継続時間に課されなければならない特定の上限は全くなく;当業者は、選ばれる継続時間が、一定の及び適切な品質の造形品(P)の適切な製造処理量をもたらすための一般的な業界要件と一致することを確実にするであろう。それ故に、本発明の方法の成形工程における、前記加熱は、一般に16時間未満、好ましくは14時間未満、好ましくは12時間未満の継続時間の間続行される。
【0057】
さらに、本発明は、上で詳述されたような、本方法を用いる組成物(C)から得られた硬化造形品に関する。これらの硬化品は、O(角)-リング、パッキン、ガスケット、ダイヤフラム、シャフトシール、バルブ軸シール、ピストンリング、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、及びオイルシールなどの、シーリング物品であっても、パイピング及び管材料、特に、炭化水素流体及び燃料の送達用の導管などの、フレキシブルホース又は他の品目であってもよい。
【0058】
さらに加えて、本発明は、上に詳述されたような、硬化造形品(P)における摩耗/破損の検出方法であって、前記方法が、それからの臭素含有化合物の放出を監視する工程を含む方法に関する。
【0059】
臭素含有化合物の放出を監視するための技術は、特に限定されず、標準的な分析技術に基づくことができる。質量分析法が、臭素原子を失ったイオンに関係がある特有の二重ピークのお陰で、臭素含有化合物を検出するのに特に適している。
【0060】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願及び刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0061】
本発明はこれから、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、実施例の目的は、例示的であるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0062】
原材料
ビス-アミノフェノールAF(本明細書では以下、BOAP)は、Apollo Scientificから供給され、受け取ったまま使用した。
【0063】
4,4’-ジブロモ-オクタフルオロビフェニル(本明細書では以下、DBOFBP)は、Apollo Scientificから供給され、受け取ったまま使用した。
【0064】
4-ブロモビフェニル(本明細書では以下、BBP)は、Sigma Aldrichから供給され、受け取ったまま使用した。
【0065】
調製実施例1-ニトリル基を含むエラストマーの製造
630rpmで動作する機械撹拌機を備えた5リットルの反応器に、3.1リットルの脱塩水、及び式:CFClO(CF-CF(CF)O)n(CFO)CFCOOH(式中、n/m=10であり、600の平均分子量を有する)の酸性末端基を有する7.4mlのパーフルオロポリオキシアルキレンと、1.9mlの30%v/vNHOH水溶液と、17.4mlの脱塩水と、n/m=20の、450の平均分子量を有する式:CFO(CFCF(CF)O)n(CFO)CFの4.3mlのGALDEN(登録商標)D02パーフルオロポリエーテルとを混合することによって予め得られた、31mlのマイクロエマルジョンを導入した。反応器を加熱し、80℃の設定点温度に維持し;テトラフルオロエチレン(TFE)(35モル%)とパーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)(64.3モル%)とエタン(0.7モル%、連鎖移動剤)との混合物を次に添加して21バール(2.1MPa)の最終圧力に達した。開始剤としての0.31gの過硫酸アンモニウム(APS)を次に導入した。TFE(57.5モル%)とMVE(42.5モル%)とのガス混合物を合計1350gまで連続的に供給することによって圧力を21バールの設定値に維持し、129gの8-CNVEを重合の開始から出発して、転化率が各5%増加する毎に20回に分けて反応器に供給した。さらに、0.16gのAPSを、ガス混合物の15%、40%及び55%転化率の時点で導入した。次に、反応器を冷却し、ガス抜きし、ラテックスを回収した。凝固剤としての硝酸でラテックスを凝固させ、ポリマーを水相から分離し、脱塩水で洗浄し、120℃の対流式オーブン中で24時間乾燥させた。得られたポリマーの組成は、NMR分析から、TFE 60.8モル%、MVE 38.0モル%、8-CNVE 1.2モル%であることが見出され、121℃でのムーニー粘度は50MUである。
【0066】
一般的な配合及び硬化手順
調製実施例1のフルオロエラストマーを、2ロールオープンミル中で下に詳述されるような成分と配合した。プラークを下表に詳述される条件において加圧モールド中で硬化させ、比較目的のために、下に詳述されるように、空気循環オーブン中で後処理した。
=最小トルク(lb×in)
=最大トルク(lb×in)
S2=スコーチ時間、Mから2単位上昇のための時間(秒);
02=2%の硬化状態までの時間(秒);
50=50%の硬化状態までの時間(秒);
90=90%の硬化状態までの時間(秒);
95=95%の硬化状態までの時間(秒)
を測定することにより、170℃で、移動ダイレオメーター(MDR)によって特性評価した。ASTM D 412C標準に従って、プラークから打ち抜いた検体に関して引張特性を測定した。
TSは、MPa単位での引張強度であり;
50は、50%の伸びにおけるMPa単位での弾性率であり;
100は、100%の伸びにおけるMPa単位での弾性率であり;
E.B.は、%単位での破断点伸びである。
圧縮永久歪み(CS)値は、200℃の温度で、ASTM D 395-B方法に従って、Oリング(#214クラス)に関して測定した;表の値は、4つの検体に関して行われた測定の平均値である。
【0067】
【0068】
【0069】
臭素含有量測定
Brの含有量は、比較のため、上に詳述されたような条件において、(i)エラストマーを表1にリストアップされる成分と配合した後に、(ii)硬化/成形後に;(iii)290℃で後硬化後にXRFによって測定した。結果を以下の表にまとめる。
【0070】
【0071】
下表に含まれるデータは、本発明による硬化造形品の製造方法が硬化部品中に臭素化合物を実質的に保持するのに有効であることを実証している。
【0072】
機械的特性及びシーリング特性の測定
上に詳述されたように得られた硬化部品についての機械的特性及びシーリング特性を回想する、下のデータは、本発明の方法が、硬化フルオロエラストマー材料の全ての傑出した特性を保有する硬化造形部品をもたらすことをよく実証している。
【0073】