(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】基板上に導電体を作るための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
C23C 24/04 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
C23C24/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020041953
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-02-15
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ジェイ・ブレイリー
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・エー・ウィルソン
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-071467(JP,A)
【文献】特表2007-516827(JP,A)
【文献】特表2007-522346(JP,A)
【文献】特開2010-223288(JP,A)
【文献】特開2013-194304(JP,A)
【文献】特表2013-530313(JP,A)
【文献】特開2017-115207(JP,A)
【文献】特開2018-010859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0240603(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107032330(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108486565(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 7/14
C23C 24/04
H01B 1/02 - 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コールドスプレーによって基板302上に導電体304を作るための方法(100)であって、前記方法(100)が、
供給量を調節して銅を供給するステップと、
供給量を調節して高配向熱分解グラファイトを供給するステップと、
前記銅及び前記高配向熱分解グラファイトを混合して、銅及び高配向熱分解グラファイトを含む固体粉末組成物を提供するステップと、
ガス噴射剤を加熱するステップ(102)と、
前記加熱されたガス噴射剤を使用して、
臭素をインターカレートした高配向熱分解グラファイトを含む高配向熱分解グラファイトを含む前記固体粉末組成物を推進するステップ(104)と、
前記基板302上に前記導電体304を堆積させるために前記固体粉末組成物を塑性変形させて前記基板302に付着させるのに十分な速度で前記固体粉末組成物を前記基板302に向けるステップ(106)と
を含む、方法(100)。
【請求項2】
固体粉末組成物を推進するステップが、銅の粒子及び高配向熱分解グラファイトのプレートレットを含む固体粉末組成物を推進するステップをさらに含む、請求項
1に記載の方法(100)。
【請求項3】
固体粉末組成物を推進するステップが、55~65重量%の量の銅の粒子及び35~45重量%の量の高配向熱分解グラファイトのプレートレットを含む固体粉末組成物を推進するステップをさらに含む、請求項1
または2に記載の方法(100)。
【請求項4】
固体粉末組成物を推進するステップが、15μmから25μmの範囲の平均粒径を有する銅の粒子を含む固体粉末組成物を推進するステップをさらに含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項5】
固体粉末組成物を推進するステップが、5μmから25μmのプレートレット平均直径を有する高配向熱分解グラファイトのプレートレットを含む固体粉末組成物を推進するステップをさらに含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
コーティング材料303を基板302にスプレーするためのシステム200であって、前記システムが、
前記基板302に塗布された前記コーティング材料303の厚さT
Cを監視するように配置された光学センサー216と、
前記光学センサー216と通信するコントローラー218であって、前記コントローラーが、前記厚さT
Cに少なくとも基づいて、加熱されるガス噴射剤の量に対応する第1のコマンド信号251、前記ガス噴射剤が加熱される温度に対応する第2のコマンド信号260、ノズル212内で
加熱される前記ガス噴射剤と混合される固体粉末組成物の量に対応する第3のコマンド信号252、及び前記ノズル212と前記基板302との間の距離Mに対応する第4のコマンド信号262を生成する、コントローラー218と、
前記第1のコマンド信号251を受信し、前記第1のコマンド信号に対応する量のガス噴射剤を供給する第1の調節器204と、
前記第1の調節器から供給される前記量のガス噴射剤を受け取り、前記第2のコマンド信号260を受信し、前記ガス噴射剤を、前記第2のコマンド信号260に対応する前記温度に加熱する加熱器206と、
前記第3のコマンド信号252を受信し、前記第3のコマンド信号252に対応する量の固体粉末組成物を前記ノズル212に供給する第2の調節器210と、
前記第4のコマンド信号262を受信し、前記第4のコマンド信号262に対応する、前記ノズル212と前記基板302との間の距離Mで前記ノズル212を前記基板に沿って移動させるアクチュエーター214と
前記第2の調節器210によって供給されるように構成された固体粉末組成物を貯蔵するフィーダー208と、
を備え、
前記フィーダー208が、
銅の粒子を貯蔵する第1の材料フィーダー220と、
前記第1の材料フィーダー220からある量の銅粒子を供給する第3の調節器222と、
高配向熱分解グラファイトのプレートレットを貯蔵する第2の材料フィーダー224と、
前記第2の材料フィーダー224からある量の高配向熱分解グラファイトプレートレットを供給する第4の調節器226と、
前記第3の調節器222によって供給される前記銅の粒子及び前記第4の調節器226によって供給される前記高配向熱分解グラファイトのプレートレットを受け取って混合するミキサー228と
を備える、システム200。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、基板上に導電体を作るための方法及びシステム、並びにそれから形成された製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの電気的相互接続部は、約9g/cm3の密度を有する、銅(6×107S/m)などの高導電性金属を使用して作られている。銅を、銅と同等以上の電気的性能を提供する一方で、密度がはるかに低い材料で置き換えることが望ましい。
【0003】
したがって、当業者は、導電体作製の分野で研究開発を続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一例では、コールドスプレーによって基板上に導電体を作るための開示されている方法は、ガス噴射剤を加熱するステップと、加熱されたガス噴射剤を使用して、銅及び高配向熱分解グラファイトを含む固体粉末組成物を推進するステップと、基板上に導電体を堆積させるために固体粉末組成物を塑性変形させて基板に付着させるのに十分な速度で固体粉末組成物を基板に向けるステップとを含む。
【0005】
一例では、コーティング材料を基板にスプレーするための開示されているシステムは、光学センサー、コントローラー、第1の調節器、加熱器、第2の調節器、及びアクチュエーターを含む。光学センサーは、基板に塗布されたコーティング材料の厚さを監視するように配置される。コントローラーは、光学センサーと通信し、測定された厚さに基づいて、加熱されるガス噴射剤の量に対応する第1のコマンド信号、ガス噴射剤が加熱される温度に対応する第2のコマンド信号、ノズル内で加熱ガスと混合される固体粉末組成物の量に対応する第3のコマンド信号、及びノズルと基板との間の距離に対応する第4のコマンド信号を生成する。第1の調節器は、第1のコマンド信号を受信し、第1のコマンド信号に対応する量のガス噴射剤を供給する。加熱器は、第1の調節器から供給される上記の量のガス噴射剤を受け取り、第2のコマンド信号を受信し、ガス噴射剤を、第2のコマンド信号に対応する温度に加熱する。第2の調節器は、第3のコマンド信号を受信し、第3のコマンド信号に対応する量の固体粉末組成物をノズルに供給する。アクチュエーターは、第4のコマンド信号を受信し、第4のコマンド信号に対応する、ノズルと基板との間の距離でノズルを基板に沿って移動させる。
【0006】
一例では、開示されているコールドスプレーコーティングされた製品は、基板と、コールドスプレーによって基板上に堆積された導電体とを含む。導電体は、銅マトリックスと、銅マトリックスに分散された高配向熱分解グラファイトプレートレットとを含む。
【0007】
開示されている方法、システム、及び製品の他の例は、以下の詳細な説明、添付の図面、及び添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】基板上に導電体を作るための開示されている方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】コーティング材料を基板にスプレーするための開示されているシステムの一例の概略図である。
【
図3】開示されているコールドスプレーコーティングされた製品の一例の斜視図である。
【
図4】航空機の製造及び保守点検方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、コールドスプレーによって基板302(
図3)上に導電体304(
図3)を作るための開示されている方法100の一例を示すフローチャートである。方法100は、ガス噴射剤を加熱するステップ102と、加熱されたガス噴射剤を使用して、銅及び高配向熱分解グラファイト(HOPG:highly oriented pyrolytic graphite)を含む固体粉末組成物を推進するステップ104と、基板302上に導電体304を堆積させるために固体粉末組成物を塑性変形させて基板302に付着させるのに十分な速度で固体粉末組成物を基板302に向けるステップ106とを含む。固体粉末組成物を推進するステップ104及びこれを基板302に向けるステップ106によって、方法100は、銅及び高配向熱分解グラファイトからの導電体304を基板302上に堆積させる。
【0010】
ガス噴射剤を加熱するステップ102は、固体粉末組成物を十分な速度に推進するステップ104を容易にする。ガス噴射剤は、加熱されると膨張し、それにより、ガス噴射剤の加速度が増加し、その結果、固体粉末組成物の速度が増加する。さらに、ガス噴射剤を加熱すると、固体粉末組成物も加熱される。固体粉末組成物を加熱すると、基板302(
図3)上に導電体304(
図3)を堆積させるための、固体粉末組成物の塑性変形及び固体粉末組成物の、基板302への付着が容易になる。
【0011】
ガス噴射剤の加熱ステップ102は、任意の方法で実行され得る。一例では、ガス噴射剤は、ガス噴射剤を熱交換器に通すことによって適切な温度に加熱される。一例では、ガス噴射剤は、450から535℃の範囲の温度に加熱される。ガス噴射剤が535℃超に加熱された場合、固体粉末組成物は悪影響を受け得る。特に、高配向熱分解グラファイトの特性が劣化する。また、基板302(
図3)が、その上への導電体304(
図3)の堆積中に劣化し得る。ガス噴射剤が不十分に450℃未満に加熱された場合、ガス噴射剤の十分な速度が達成され得ず、固体粉末組成物は塑性変形せず、基板302に付着し得ない。
【0012】
ガス噴射剤を使用して、銅及び高配向熱分解グラファイトを含む固体粉末組成物を推進するステップ104は、任意の方法で実行され得る。一例では、ガス噴射剤は、高圧ガス状態、液体状態、又は固体状態などの高圧状態からガス噴射剤を放出することによって高速に加速される。ガス噴射剤の加速前、加速後、又は加速中に、ガス噴射剤は、固体粉末組成物を推進するために固体粉末組成物と混合される。
【0013】
基板302上に導電体304(
図3)を堆積させるために固体粉末組成物を塑性変形させて基板302に付着させるのに十分な速度で固体粉末組成物を基板302(
図3)に向けるステップ106は、任意の方法で実行され得る。一例では、固体粉末組成物は、ラバールノズルなどのノズルを使用して基板302に向けられる。塑性変形は、固体の永久変形が生じるプロセスである。塑性変形により、弾性限界を超える応力が加えられた結果、破砕することなく固体に永久的な変化が生じる。本説明において、固体粉末組成物は、導電体304を堆積させるために固体粉末組成物を塑性変形させて基板302に付着させるのに十分な速度で基板302に向けられる。著しい塑性変形を受けることによって、固体粉末組成物は、基板302に付着する。
【0014】
一例では、固体粉末組成物は、500~1,000m/sの速度で基板302に向けられる。速度が500m/s未満の場合、固体粉末組成物は、塑性変形を受け得ず、基板302(
図3)に適切に付着し損ない得る。速度が1,000m/sを超える場合、基板302が、衝突時に損傷し得る。
【0015】
本開示によれば、固体粉末組成物は、銅及び高配向熱分解グラファイトを含む。銅は、純銅、銅基合金、又は銅を含む任意の合金を含み得る。銅を含むように固体粉末組成物を選択することによって、固体粉末組成物は、基板302(
図3)との衝突時に塑性変形を受け得、基板302に付着し得る。さらに、銅は、基板302上に堆積された結果として得られる導電体304(
図3)の高い導電率に寄与する。
【0016】
一例では、銅材料の電流密度は、1平方センチメートル当たり約500アンペア(500A/cm2)であり、これは、特に航空機の維持、航空機の修理、及び航空機の寿命監視の用途において、高導電性マトリックス材料の理想的な材料になる。
【0017】
高配向熱分解グラファイト(HOPG)は、合成グラファイトの非常に純粋な、規則性のある形態である。これは、微結晶のc軸の角度広がりが1度未満である熱分解グラファイトとして、国際純正応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)の化学用語の一覧によって特徴付けられている。高配向熱分解グラファイトは、高い導電率を有する。高配向熱分解グラファイトを含むように固体粉末組成物を選択することによって、基板302上に堆積された、固体粉末組成物からの導電体304は、高い導電率を備える。
【0018】
一例では、高配向熱分解グラファイトは、臭素をインターカレートした高配向熱分解グラファイト(bromine intercalated highly oriented pyrolytic graphite)などのインターカレートした高配向熱分解グラファイト(intercalated highly oriented pyrolytic graphite)を含む。グラファイトの層状形態により、異なる原子種又は分子種が、グラファイト層の間に挿入され得る。このようなドーパント種をグラファイトに挿入するプロセスは、インターカレーションと呼ばれる。高配向熱分解グラファイトのインターカレーションは、高配向熱分解グラファイトの特性を変化させるのに有効である。臭素をインターカレートした高配向熱分解グラファイトは、本開示の固体粉末組成物に含めるのに適していると判断された。これは、臭素をインターカレートした高配向熱分解グラファイトが、長期間にわたって安定性を保つためである。
【0019】
一例では、銅の粒子は、55~65重量%の量で含まれる。銅の粒子が55重量%未満の量で含まれる場合、高配向熱分解グラファイトは、銅マトリックス306(
図3)に完全には捕捉されず、導電体304の、基板302(
図3)への付着性が低下する。銅の粒子が65重量%よりも多い量で含まれる場合、導電体304(
図3)の全体の導電率が低下し、導電体304の重量が増加する。
【0020】
一例では、銅の粒子は、15μmから25μmの範囲の平均粒径を有する。平均粒径が15μm未満の場合、銅の粒子は、基板302(
図3)に付着し得ない。平均粒径が25μmよりも大きい場合、基板302は、衝突時に損傷し得る。
【0021】
一例では、高配向熱分解グラファイトの複数のプレートレットが、35~45重量%の量で固体粉末組成物に含まれる。高配向熱分解グラファイトのプレートレットが、35重量%未満の量で固体粉末組成物に含まれる場合、導電体304(
図3)の全体の導電率が低下し、導電体304の重量が増加する。高配向熱分解グラファイトのプレートレットが、45重量%よりも多い量で固体粉末組成物に含まれる場合、導電体304の、基板302(
図3)への付着性が低下する。
【0022】
別の例では、高配向熱分解グラファイトのプレートレットは、5μmから25μmの範囲のプレートレット平均直径を有する。この範囲は、導電体304の最大の付着性及び最大の導電率のために最適になるように決定されている。
【0023】
ガス噴射剤は、固体粉末組成物を推進するのに適した任意のガス噴射剤である。一例では、ガス噴射剤は、不活性ガス噴射剤である。ガス噴射剤を不活性ガス噴射剤として選択することによって、固体粉末組成物とガス噴射剤との間の化学反応が回避され得る。
【0024】
別の例では、不活性ガス噴射剤は、17より大きい原子番号を有する。17より大きい原子番号を有する不活性ガス噴射剤としてガス噴射剤を選択することによって、不活性ガスは、固体粉末組成物を推進するのに十分な適切な高い密度を備える。例として、不活性ガス噴射剤は、17より大きい原子番号を有し、かつ清浄度の高い不活性ガスであるアルゴンを含み、この結果、ヘリウム又は窒素と比較して、基板302への固体粉末組成物の衝突時の酸化又は捕捉酸素が少なくなる。アルゴン、又は17より大きい原子番号を有する他のガス噴射剤の使用はまた、異種金属の導入(例えば、金属基板への銅粒子の導入)による腐食の発生の可能性を低減し、酸化を回避することによって高配向熱分解グラファイトの導電率を最大化する。
【0025】
別の例では、導電体304(
図3)は、100~200μmの平均厚さT
Eを有する。平均厚さT
Eが100μm未満の場合、導電体304(
図3)の導電率は低下する。平均厚さT
Eが200μmより大きい場合、導電体304(
図3)の重量が増加し、高配向熱分解グラファイトを含めることによる導電率の向上効果が低下し始める。
【0026】
図2は、
図1に示されている方法100を実施するために使用され得るシステム200の一例の概略図である。
【0027】
図2に示されているように、システム200は、光学センサー216、コントローラー218、第1の調節器204、加熱器206、第2の調節器210、及びアクチュエーター214を含む。システム200は、第3の調節器222、第4の調節器226、及び第5の調節器230をさらに含み得る。本開示の範囲から逸脱することなく、システム200には、追加の調節器などの追加の構成要素が含まれ得る。
【0028】
光学センサー216は、通信ライン250を介してコントローラー218と通信する。通信ライン250は、システム200内のすべての通信ライン251、252、253、254、255、260、262と同様に、有線でも無線でもよい。光学センサー216は、基板302に塗布されたコーティング材料303の厚さTCを示すデータをコントローラー218に伝送し得る。基板302に塗布されたコーティング材料303の測定された厚さTC及びオペレータ入力に少なくとも基づいて、コントローラー218は、加熱されるガス噴射剤の量、ガス噴射剤が加熱される温度、ノズル212内で加熱ガスと混合される固体粉末組成物の量、及びノズル212と基板302との間の距離Mを制御するコマンド信号を生成する。
【0029】
第1の調節器204は、通信ライン251を介してコントローラー218と通信する。第1の調節器204の制御により、加熱器206に供給されるガス噴射剤の量が制御され得る。
【0030】
加熱器206は、第1の調節器204によって供給されるガス噴射剤を受け取り、通信ライン260を介したコントローラー218の命令に従って、ガス噴射剤を必要な温度に加熱する。
【0031】
第2の調節器210は、通信ライン252を介してコントローラー218と通信する。第2の調節器210の制御により、ガス噴射剤に導入される固体粉末組成物の量が制御される。
【0032】
アクチュエーター214は、通信ライン262を介してコントローラー218と通信する。アクチュエーター214によって受信されるコントローラー218からのコマンド信号は、基板302に対してノズル212を移動させ得る。例えば、アクチュエーター214は、ノズル212と基板302との間の所望の距離Mを達成するようにノズル212を移動させ得る。
【0033】
したがって、システム200は、一定の結果を提供するために方法100をリアルタイムで制御し得る。
【0034】
システム200は、第1の調節器204によって供給されるガス噴射剤を貯蔵するように構成されたタンク202をさらに含み得る。一実施態様では、タンク202は、不活性ガス噴射剤を供給する。例示的な実施態様では、タンク202は、17より大きい原子番号を有する不活性ガス噴射剤(例えば、アルゴン)を貯蔵する。
【0035】
第1の調節器204は、流体の出力圧力又は流量を所望の値に制御する任意の圧力又は流量調節器を含む。例えば、第1の調節器204は、バルブを含む。第1の調節器204の出力圧力又は流量は、通信ライン251を介してコントローラー218から受信されるコマンド信号に基づいて調整され得る。
【0036】
加熱器206は、ガスを制御温度に加熱することができる任意の加熱器を含む。加熱器206の温度は、通信ライン260を介してコントローラー218から受信されるコマンド信号に基づいて調整され得る。一例では、加熱器206は、電気加熱器である。別の例では、加熱器206は、ガス燃焼加熱器である。
【0037】
システム200は、フィーダー208をさらに含み得る。フィーダー208は、固体粉末組成物を貯蔵するための任意のデバイスとして規定される。一例では、フィーダー208は、上で説明した銅の粉末と高配向熱分解グラファイトのプレートレットとの混合物を貯蔵する。したがって、方法100を実施するためには、固体粉末組成物を貯蔵するフィーダー208を含むシステム200が採用され得る。しかしながら、代替的に、システム200は、異なる方法を実施するためにシステム200が採用され得るように、液体組成物を貯蔵するフィーダー208を含み得る。
【0038】
第2の調節器210は、流体の出力圧力若しくは流量又は固体粉末組成物の流れ量(flow amount)を所望の値に制御する任意の圧力又は流量調節器を含む。一例では、第2の調節器210は、バルブ及び質量センサーを含む。質量センサーを用いて、第2の調節器210は、第2の調節器210を通過する固体粉末組成物の量を正確に測定し得る。第2の調節器210を通過する固体粉末組成物の量は、通信ライン252を介してコントローラー218から受信されるコマンド信号に基づいて調整され得る。
【0039】
システム200は、ノズル212をさらに含む。ノズル212は、加熱器206からの加熱されたガス噴射剤を使用して、フィーダー208から供給される固体粉末組成物を基板302に放出するのに適した任意のデバイスを含み得る。一例では、ノズル212は、ラバールノズルであって、該ラバールノズルを通過する高温加圧ガスを超音速に加速するために使用されるラバールノズルを含む。
【0040】
アクチュエーター214は、基板302から所定の距離Mを置いて基板302に沿ってノズル212を移動させるのに適した任意の駆動デバイスを含み得る。一例では、アクチュエーター214は、6軸ロボットアクチュエーターアームなどのロボットアクチュエーターを含み得る。アクチュエーター214を使用してノズル212を移動させることにより、ノズル212と基板302との間の距離Mの制御を維持することが容易になる。例えば、ノズル212と基板302との間の距離Mは、典型的には、1から100mm、好ましくは5から20mmの範囲にある。
【0041】
光学センサー216は、基板302に塗布されたコーティング材料303の厚さTCを監視し、(通信ライン250を介して)コントローラー218と通信することができる任意の光学センサーを含む。光学センサー216は、単独で又はコントローラー218との組み合わせで、基板302の表面のリアルタイムの視覚的材料厚さ測定を行う。特に、基板302の初期スキャン時に取得されたセンサー216と基板302との間の検出距離L0から、その後のスキャン時の、基板302上に堆積されたコーティング材料303とセンサー216との間の検出距離LXを引くことによって、時間と共に基板302上に堆積されたコーティング材料303の厚さTCが測定され得る。例えば、初期スキャン時、コーティング材料303が基板302上にまだ堆積されていないため、初期距離L0は、センサー216と基板302との間の距離を表す。その後のスキャンにおいて、距離LXは、センサー216とコーティング材料303の露出面305との間の距離を表す。スプレープロセス中にコーティング材料303の厚さTCが増加するにつれて、センサー216とコーティング材料303の露出面305との間の距離LXは比例的に減少することを理解されたい。
【0042】
例示的な光学センサー216は、光学センサーからコーティング材料303の露出面305までの距離LXを表す信号(コントローラー218に入力される)を生成するためにパルス光信号を使用する1つ以上の光学距離センサーであり得る。光学距離センサーは、ターゲット表面(最初は基板302の表面であり、その次はコーティング材料303の露出面305である)に光を当てるために発光ダイオード(LED)をパルス動作させ、反射信号の強度を測定することで動作する。ターゲット表面の反射率が異なると、同じ距離に関して、返される値は異なる。コーティング材料303が基板302に塗布されるとき、塗布されたコーティング材料の厚さTCが変化するにつれて距離LXは変化する。
【0043】
コントローラー218は、被制御デバイスから所望の結果を得るためにコマンド信号を生成及び伝送することができる任意の装置、システム、複数のシステム、又はこれらの組み合わせ(例えば、マイクロプロセッサ)であり得る。
図2の点線で表されているように、コントローラー218は、光学センサー216、第1の調節器204、第2の調節器210、加熱器206、及びアクチュエーター214に通信可能に結合される。
【0044】
一例では、フィーダー208は、銅の粒子を貯蔵する第1の材料フィーダー220と、第1の材料フィーダー220からの銅粒子の量を制御する第3の調節器222と、高配向熱分解グラファイトのプレートレットを貯蔵する第2の材料フィーダー224と、第2の材料フィーダー224からの高配向熱分解グラファイトプレートレットの量を制御する第4の調節器226と、第3の調節器222によって供給される銅の粒子及び第4の調節器226によって供給される高配向熱分解グラファイトのプレートレットを受け取って混合するミキサー228とを含む。したがって、システム200は、フィーダー208から提供される銅粒子及び高配向熱分解グラファイトのプレートレットの相対量を調節し得る。
【0045】
第1の材料フィーダー220は、銅の粒子を供給するのに適した任意のデバイスを含む。一例では、第1の材料フィーダー220は、重力粉末フィーダーである。
【0046】
第3の調節器222は、銅粒子の流れ量を所望の値に制御するのに適した任意の調節器を含む。一例では、第3の調節器222は、バルブ及び質量センサーを含む。質量センサーを用いて、第3の調節器222は、第3の調節器222を通過する銅粒子の流れ量を正確に測定し得る。
【0047】
第2の材料フィーダー224は、高配向熱分解グラファイトのプレートレットを貯蔵するのに適した任意のデバイスを含む。一例では、第2の材料フィーダー224は、重力粉末フィーダーである。
【0048】
第4の調節器226は、高配向熱分解グラファイトのプレートレットの流れ量を所望の値に制御するのに適した任意の調節器を含む。一例では、第4の調節器226は、バルブ及び質量センサーを含む。質量センサーを用いて、第4の調節器226は、第4の調節器226を通過する高配向熱分解グラファイトのプレートレットの流れ量を正確に測定し得る。
【0049】
ミキサー228は、第3の調節器222から通過する銅粒子と、第4の調節器226から通過する高配向熱分解グラファイトプレートレットとを混合するのに適した任意のデバイスを含む。一例では、ミキサー228は、円形ミキサーである。
【0050】
別の例では、タンク202から供給されるガス噴射剤の一部は、第5の調節器230(例えば、バルブ)を通過し、フィーダー208から供給される固体粉末組成物をノズル212に移送する。
【0051】
光学センサー216によって測定されたコーティング材料303の厚さTCに基づいてコントローラー218を使用してシステム200の様々な機能を制御することによって、システム200は、システム200の以下の動作ステップに記載されているように方法100を使用して、コールドスプレーコーティングされた製品300を作るときに一定の結果を提供するためにプロセスをリアルタイムで制御し得る。
【0052】
コントローラー218によるシステム200の動作方法は、光学センサー216を使用するなどして、基板302に塗布されたコーティング材料303の厚さTCを示す信号をコントローラー218に(通信ライン250を介して)伝送することを含む。数ある可能な要因の中でも、測定された厚さTC及びオペレータ入力に基づいて、コントローラー218は、加熱されるガス噴射剤の量、ガス噴射剤が加熱される温度、ノズル212内で加熱ガスと混合される固体粉末組成物の量、及びノズル212とコーティング材料303の露出面305との間の距離Mを制御するコマンド信号を生成する。第1の調節器204は、コマンド信号を受信し、必要量のガス噴射剤を供給する。加熱器206は、第1の調節器から供給されるガス噴射剤を受け取り、ガス噴射剤を所望の温度に加熱する。第2の調節器210は、必要量の固体粉末組成物を供給する。アクチュエーター214は、基板302上にコーティング材料303を堆積させることを容易にするためにコントローラー218の命令に従ってノズル212を移動させる。
【0053】
例として、コントローラー218は、より一定の結果をシステム200に提供するために、以下の関係のうちの1つ以上を採用し得る。
【0054】
【0055】
Vg-ノズル出口におけるガスの速度
T-ノズルに到達する前のガスの温度
R-理想ガス定数=8.31J/mol
Pe-ノズル出口におけるガス圧力=1/5(Pi*Vi)/(Ve)金属マトリックス炭素ベース複合材の最適条件
Vi-ガス入口における体積
Ve-ノズル出口における体積
Pi-ガンに供給されるガス圧力(アルゴン/複合粒子の最適条件は1~3MPaである)
Mg-ガスの分子量
γ-Cp/Cv(等エントロピー膨張係数)
Cp-一定圧力におけるガスの熱容量(アルゴンの場合、Cp=.52)
Cv-一定体積におけるガスの熱容量(アルゴンの場合、Cv=.312)
【0056】
【0057】
Vp-ノズル出口における粒子の速度
CD-この式で1に等しいと仮定される定数
ρg-ガスの密度
ρp-粒子の平均密度
Dp-粒子の平均直径
x-ノズルから基板までの距離M
ρp=(%Wtm1*ρm1)+[(1-(%Wtm1))*ρm2]
%Wtm1-使用される材料1の重量パーセント
ρm1-材料1の粒子の平均密度
ρm2-材料2の粒子の平均密度
Mfp=(ρp*Ve)/t
Mfp-ノズル出口における粒子の質量流量
t-時間
本説明で説明されているシステム200に関して、これをすべてまとめると、以下の通りである。
【0058】
【0059】
及び
【0060】
【0061】
上記の式は、使用されるガス及び材料のルックアップテーブルを使用してコントローラー218によって利用され得、コントローラー218は、所望の出力パラメータを満たすためにシステム200の構成要素をリアルタイムで最適化し得る。
【0062】
コールドスプレーされた製品を生産するためにシステム200を動作させる例示的な特定の方法は、以下のように提供される。タンク202は、所定量の噴射剤ガス(例えば、アルゴン)で満たされ、フィーダー208は、1平方センチメートル当たり500アンペアの電流密度を有する銅の粒子と、臭素をインターカレートした高配向熱分解グラファイトのプレートレットとの混合物を貯蔵する。
【0063】
オペレータは、様々な初期入力をコントローラー218に入力する。例えば、オペレータは、基板302の化学組成、及び基板302上に形成される導電体304(
図3)の所望の厚さT
E(
図3)と共に、第1の材料フィーダー220内の材料(例えば、銅)の化学組成及び第2の材料フィーダー224内の材料(例えば、高配向熱分解グラファイト)の化学組成をコントローラー218に入力する。
【0064】
システム200を作動させると、光学センサー216は、基板302及び基板302に塗布されたコーティング材料303を監視し始める。リアルタイムで、光学センサー216は、基板302上のコーティング材料303(もしあれば)の厚さTCを示す信号を(通信ライン250を介して)コントローラー218に伝送する。
【0065】
基板302上のコーティング材料303のリアルタイムで測定された厚さT
C、及びオペレータによって入力された様々な初期入力に基づいて、コントローラー218は、所望の厚さT
E(
図3)を有する導電体304(
図3)を基板302上に形成させる様々なコマンド信号を生成する。コマンド信号は、(通信ライン251を介して)第1の調節器204に伝送され、(通信ライン252を介して)第2の調節器210に伝送され、(通信ライン253を介して)第3の調節器222に伝送され、(通信ライン254を介して)第4の調節器226に伝送され、(通信ライン255を介して)第5の調節器230に伝送され、(通信ライン260を介して)加熱器206に伝送され、(通信ライン262を介して)アクチュエーター214に伝送される。
【0066】
コントローラー218によって(通信ライン251を介して)第1の調節器204に伝送されるコマンド信号は、加熱器206によって加熱されるガス噴射剤(タンク202から供給される)の量を制御する。例えば、第1の調節器204によって受信されたコマンド信号は、第1の調節器204を部分的又は完全に開放させ、それにより、噴射剤ガス(例えば、アルゴン)が加熱器206に流れることを可能にし得る。
【0067】
コントローラー218によって第2の調節器210、第3の調節器222、第4の調節器226、及び第5調節器230に(それぞれ通信ライン252、253、254、255を介して)伝送されるコマンド信号は、噴射剤ガスと混合される固体粉末組成物の量及び固体粉末組成物の化学組成を制御する。例えば、フィーダー208では、オペレータによってコントローラー218に入力された材料比に基づいて、銅の粒子は、第1の材料フィーダー220からミキサー228に供給され、高配向熱分解グラファイトのプレートレットは、第2の材料フィーダー224からミキサー228に供給される。一例として、オペレータは、55~65重量%の銅及び35~45重量%の高配向熱分解グラファイトを有する導体304(
図3)を作ることを望み得る。オペレータ入力に応じて、コントローラー218は、コマンド信号を(通信ライン253を介して)第3の調節器222に送信し、コマンド信号を(通信ライン254を介して)第4の調節器226に送信する。コマンド信号(通信ライン253、254を介して送信された)は、銅の粒子(第1の材料フィーダー220内の)及び高配向熱分解グラファイトのプレートレット(第2の材料フィーダー224内の)の両方の望ましい量がミキサー228に供給されることを保証するように、第3の調節器222及び第4の調節器226をそれぞれ動作させるよう機能する。第2の調節器210及び第5の調節器230が少なくとも部分的に開放されているとき、Cu/HOPG金属マトリックス複合材料は、噴射剤ガス(例えば、アルゴン)に合流し、ノズル212に供給される。
【0068】
コマンド信号(通信ライン252を介して送信された)は、銅の粒子と高配向熱分解グラファイトのプレートレットとの混合物の適切な量が、第5の調節器230を通過する噴射剤ガス(例えば、アルゴン)と混合され、ノズル212に移送されることを保証するように、第2の調節器210を動作させるよう機能する。ノズル212で、銅の粒子と高配向熱分解グラファイトのプレートレットとの移送された混合物は、加熱器206からの加熱された噴射剤ガスと混合され、これにより、銅の粒子と高配向熱分解グラファイトのプレートレットとの混合物は、500~1,000m/sの速度に加速される。したがって、銅の粒子と高配向熱分解グラファイトのプレートレットとの混合物は、加熱されたガス噴射剤を使用して推進され、基板302上に導電体304を堆積させるために固体粉末組成物を塑性変形させて基板302に付着させるのに十分な速度で、ノズル212によって基板302に向けられる。
【0069】
したがって、ノズル212に移動する材料の移送及び組成は、コマンド信号を第1の調節器204、第2の調節器210、第3の調節器222、第4の調節器226、及び第5調節器230に伝送することにより、コントローラー218によって制御され得る。
【0070】
コントローラー218によって加熱器206に(通信ライン260を介して)伝送されるコマンド信号は、ガス噴射剤が加熱される温度を制御する。例えば、コントローラー218は、450から535℃の範囲の温度に加熱するように加熱器206に命令し得る。したがって、加熱器206は、噴射剤ガス(例えば、アルゴン)を450から535℃の範囲の温度に加熱し、加熱された噴射剤ガスが、ノズル212に入る。
【0071】
コントローラー218によってアクチュエーター214に(通信ライン262を介して)伝送されるコマンド信号は、ノズル212と基板302との間の距離Mを制御する。
【0072】
したがって、コントローラー218は、基板302上のコーティング材料303の厚さT
Cを示すリアルタイムデータを光学センサー216から受信し、数ある可能なものの中でも、調節器204、210、222、226、230、加熱器206、及びアクチュエーター214を制御する。結果として、基板302上に堆積された導電体304を含む、
図3のコールドスプレーコーティングされた製品300が形成される。基板302上の導電体304は、所望の化学組成と共に所望の厚さT
E(
図3)を有する。例えば、導電体304は、銅マトリックス306と、銅マトリックス306に分散された高配向熱分解グラファイトプレートレット308とを含む。
【0073】
図3は、開示されているコールドスプレーコーティングされた製品300の一例の斜視図である。コールドスプレーコーティングされた製品300は、基板302と、システム200を使用する方法100などによって基板302上に堆積された導電体304とを含む。
【0074】
基板302は、任意の金属基板又は任意の非金属基板を含み得る。好ましくは、基板302は、コールドスプレープロセスによって加えられる熱及び衝撃に耐えるのに適した材料から選択される。一例では、基板302は、金属基板である。別の例では、基板302は、アルミニウム、チタン、又は鋼を含む。さらに他の例では、基板302は、アルミニウム合金7075又はアルミニウム合金7050から形成され得る。
【0075】
導電体304は、銅マトリックス306と、銅マトリックス306に分散された高配向熱分解グラファイトプレートレット308とを含む。したがって、導電体304は、銅よりも優れた電気的性能を有し、より密度が低い、従来の銅の適切な代替品を提供する。
【0076】
銅マトリックス306は、純銅、銅基合金、又は銅を含む任意の合金を含む。マトリックスを銅マトリックス306として選択することによって、銅マトリックス306は、導電体304の高い導電率に寄与する。
【0077】
一例では、銅マトリックス306の電流密度は、1平方センチメートル当たり約500アンペア(500A/cm2)であり、これは、特に航空機の維持、航空機の修理、及び航空機の寿命監視の用途において、高導電性マトリックス材料の理想的な材料になる。
【0078】
一例では、銅マトリックス306は、55~65重量%の量で導電体304に含まれる。銅マトリックス306が55重量%未満の量で含まれる場合、高配向熱分解グラファイトは、銅マトリックス306(
図3)に完全には捕捉されず、導電体304の、基板302(
図3)への付着性が低下する。銅マトリックス306が65重量%よりも多い量で含まれる場合、導電体304(
図3)の全体の導電率が低下し、導電体304の重量が増加する。
【0079】
一例では、高配向熱分解グラファイトプレートレット308は、35~45重量%の量で導電体304に含まれる。高配向熱分解グラファイトプレートレット308が、35重量%未満の量で導電体304に含まれる場合、導電体304(
図3)の全体の導電率が低下し、導電体304の重量が増加する。高配向熱分解グラファイトプレートレット308が、45重量%よりも多い量で導電体304に含まれる場合、導電体304の、基板302(
図3)への付着性が低下する。
【0080】
一例では、高配向熱分解グラファイトプレートレット308は、臭素をインターカレートした高配向熱分解グラファイトなどのインターカレートした高配向熱分解グラファイトを含む。グラファイトの層状形態により、異なる原子種又は分子種が、グラファイト層の間に挿入され得る。このようなドーパント種をグラファイトに挿入するプロセスは、インターカレーションと呼ばれる。高配向熱分解グラファイトのインターカレーションは、高配向熱分解グラファイトの特性を変化させるのに有効である。臭素をインターカレートした高配向熱分解グラファイトは、本開示の固体粉末組成物に含めるのに適していると判断された。
【0081】
別の例では、導電体304は、100~200μmの平均厚さTEを有する。平均厚さTEが100μm未満の場合、導電体304の導電率は低下する。平均厚さTEが200μmより大きい場合、導電体304の重量が増加し、高配向熱分解グラファイトを含めることによる導電率の向上効果が低下し始める。
【0082】
一例では、導電体304は、7×107~S/cm3を超える、好ましくは1×108~S/cm3を超える、より好ましくは1.4×108~S/cm3を超える導電率を有する。別の例では、導電体304は、1.0から8.0g/cm3の範囲、好ましくは2.0から6.0g/cm3の範囲、より好ましくは3.0から4.0g/cm3の範囲の密度を有する。したがって、導電体304は、純銅に比べてはるかに高い導電率及びはるかに低い密度を提供し得る。
【0083】
本開示の例は、
図4に示されているような、航空機の製造及び保守点検方法1000及び
図5に示されているような航空機1002との関連で説明され得る。試作の間に、航空機の製造及び保守点検方法1000は、航空機1002の仕様及び設計1004並びに材料調達1006を含み得る。生産の間に、航空機1002の、構成要素/部分組立品の製造1008並びにシステム統合1010が行われる。その後、航空機1002は、就航1014させるために認証及び搬送1012を経得る。顧客による就航中に、航空機1002は、修正、再構成、及び改修なども含み得る定期的な整備及び保守点検1016をスケジュールされる。
【0084】
方法1000の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば、顧客)によって実行又は遂行され得る。この説明のために、システムインテグレータは、任意の数の航空機の製造業者及び主要システムの下請業者を含み得るが、これらに限定されず、第三者は、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含み得るが、これらに限定されず、オペレータは、航空会社、リース会社、軍隊、及び保守点検業者などであり得る。
【0085】
本開示の方法、システム、及び製品は、航空機1002の仕様及び設計1004、材料調達1006、構成要素/部分組立品の製造1008、システム統合1010、認証及び搬送1012、航空機の就航1014、並びに定期的な整備及び保守点検1016を含む、航空機の製造及び保守点検方法1000の任意の1つ以上の段階の間に採用され得る。
【0086】
図5に示されているように、例示的な方法1000によって生産される航空機1002は、複数のシステム1020及び内部1022と共に機体1018を含み得る。複数のシステム1020の例は、推進システム1024、電気システム1026、油圧システム1028、及び環境システム1030のうちの1つ以上を含み得る。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。本開示の方法、システム、及び製品は、航空機1002のシステムのいずれにも採用され得る。
【0087】
さらに、本開示は、以下の条項による実施形態を含む。
【0088】
条項1.コールドスプレーによって基板302上に導電体304を作るための方法であって、該方法が、
ガス噴射剤を加熱するステップと、
加熱されたガス噴射剤を使用して、銅及び高配向熱分解グラファイトを含む固体粉末組成物を推進するステップと、
基板302上に導電体304を堆積させるために固体粉末組成物を塑性変形させて基板302に付着させるのに十分な速度で固体粉末組成物を基板302に向けるステップと
を含む、方法。
【0089】
条項2.銅の電流密度が、1平方センチメートル当たり約500アンペア(500A/cm2)である、条項1に記載の方法。
【0090】
条項3.高配向熱分解グラファイトが、臭素をインターカレートした高配向熱分解グラファイトを含む、条項1に記載の方法。
【0091】
条項4.固体粉末組成物が、銅の粒子及び高配向熱分解グラファイトのプレートレットを含む、条項1に記載の方法。
【0092】
条項5.銅の粒子が、55~65重量%の量で固体粉末組成物に含まれる、条項4に記載の方法。
【0093】
条項6.高配向熱分解グラファイトのプレートレットが、35~45重量%の量で固体粉末組成物に含まれる、条項4に記載の方法。
【0094】
条項7.銅の粒子が、15μmから25μmの範囲の平均粒径を有する、条項4に記載の方法。
【0095】
条項8.高配向熱分解グラファイトのプレートレットが、5μmから25μmのプレートレット平均直径を有する、条項4に記載の方法。
【0096】
条項9.ガス噴射剤が、不活性ガス噴射剤である、条項1に記載の方法。
【0097】
条項10.不活性ガス噴射剤が、17より大きい原子番号を有する、条項9に記載の方法。
【0098】
条項11.不活性ガス噴射剤が、アルゴンを含む、条項9に記載の方法。
【0099】
条項12.ガス噴射剤が、450から535℃の範囲の温度に加熱される、条項1に記載の方法。
【0100】
条項13.導電体304が、100~200μmの平均厚さTEを有する、条項1に記載の方法。
【0101】
条項14.固体粉末組成物が、500~1,000m/sの速度で基板302に向けられる、条項1に記載の方法。
【0102】
条項15.コーティング材料303を基板302にスプレーするためのシステム200であって、該システムが、
基板302に塗布されたコーティング材料303の厚さTCを監視するように配置された光学センサー216と、
光学センサー216と通信するコントローラー218であって、コントローラーが、厚さTCに少なくとも基づいて、加熱されるガス噴射剤の量に対応する第1のコマンド信号251、ガス噴射剤が加熱される温度に対応する第2のコマンド信号260、ノズル212内で加熱ガスと混合される固体粉末組成物の量に対応する第3のコマンド信号252、及びノズル212と基板302との間の距離Mに対応する第4のコマンド信号262を生成する、コントローラー218と、
第1のコマンド信号251を受信し、第1のコマンド信号に対応する量のガス噴射剤を供給する第1の調節器204と、
第1の調節器から供給される量のガス噴射剤を受け取り、第2のコマンド信号260を受信し、ガス噴射剤を、第2のコマンド信号260に対応する温度に加熱する加熱器206と、
第3のコマンド信号252を受信し、第3のコマンド信号252に対応する量の固体粉末組成物をノズル212に供給する第2の調節器210と、
第4のコマンド信号262を受信し、第4のコマンド信号262に対応する、ノズル212と基板302との間の距離Mでノズル212を基板に沿って移動させるアクチュエーター214と
を備える、システム200。
【0103】
条項16.第1の調節器204によって供給されるガス噴射剤を貯蔵するように構成されたタンク202をさらに備える、条項15に記載のシステム。
【0104】
条項17.タンク202が、不活性ガス噴射剤を供給する、条項16に記載のシステム。
【0105】
条項18.タンク202が、17より大きい原子番号を有する不活性ガス噴射剤を供給する、条項16に記載のシステム。
【0106】
条項19.タンク202が、アルゴンを供給する、条項16に記載のシステム。
【0107】
条項20.第1の調節器204が、バルブを備える、条項15に記載のシステム。
【0108】
条項21.第2の調節器210が、バルブ及び質量センサーを備える、条項15に記載のシステム。
【0109】
条項22.第2の調節器210によって供給される固体粉末組成物を貯蔵するように構成されたフィーダー208をさらに備える、条項15に記載のシステム。
【0110】
条項23.フィーダー208が、銅の粒子と高配向熱分解グラファイトのプレートレットとの混合物を貯蔵する、条項22に記載のシステム。
【0111】
条項24.フィーダー208が、
銅の粒子を貯蔵する第1の材料フィーダー220と、
第1の材料フィーダー220からある量の銅粒子を供給する第3の調節器222と、
高配向熱分解グラファイトのプレートレットを貯蔵する第2の材料フィーダー224と、
第2の材料フィーダー224からある量の高配向熱分解グラファイトプレートレットを供給する第4の調節器226と、
第3の調節器222によって供給される銅の粒子及び第4の調節器226によって供給される高配向熱分解グラファイトのプレートレットを受け取って混合するミキサー228と
を備える、条項23に記載のシステム。
【0112】
条項25.第3の調節器222が、バルブ及び質量センサーを備える、条項24に記載のシステム。
【0113】
条項26.第4の調節器226が、バルブ及び質量センサーを備える、条項24に記載のシステム。
【0114】
条項27.タンク202からのガス噴射剤の一部が、第5の調節器230を通過し、第2の調節器210から供給される固体粉末組成物をノズル212に移送する、条項15に記載のシステム。
【0115】
条項28.コールドスプレーコーティングされた製品300であって、
基板302と、
コールドスプレーによって基板302上に堆積された導電体304であって、導電体304が、銅マトリックス306と、銅マトリックス306に分散された高配向熱分解グラファイトプレートレット308とを含む、導電体304と
を備える、製品300。
【0116】
条項29.基板302が、金属基板である、条項28に記載の製品。
【0117】
条項30.基板302が、アルミニウム、チタン、又は鋼を含む、条項28に記載の製品。
【0118】
条項31.銅マトリックス306の電流密度が、1平方センチメートル当たり約500アンペアである、条項28に記載の製品。
【0119】
条項32.銅マトリックス306が、55~65重量%の量で導電体304に含まれる、条項28に記載の製品。
【0120】
条項33.高配向熱分解グラファイトプレートレット308が、臭素をインターカレートした高配向熱分解グラファイトのプレートレットを含む、条項28に記載の製品。
【0121】
条項34.高配向熱分解グラファイトプレートレット308が、35~45重量%の量で導電体304に含まれる、条項28に記載の製品。
【0122】
条項35.導電体304が、100~200μmの平均厚さTEを有する、条項28に記載の方法。
【0123】
条項36.導電体304が、3.0から4.0g/cm3の範囲の密度を有する、条項28に記載の製品。
【0124】
条項37.導電体304が、1.4×108~S/cm3を超える導電率を有する、条項28に記載の製品。
【0125】
開示されている方法、システム、及び製品の様々な例が示され説明されたが、本明細書を読むことで、当業者は修正例に想到し得る。本出願は、このような修正例を含み、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0126】
200 システム
202 タンク
204 第1の調節器
206 加熱器
208 フィーダー
210 第2の調節器
212 ノズル
214 アクチュエーター
216 光学センサー
218 コントローラー
220 第1の材料フィーダー
222 第3の調節器
224 第2の材料フィーダー
226 第4の調節器
228 ミキサー
230 第5の調節器
250 通信ライン
251 通信ライン、第1のコマンド信号
252 通信ライン、第3のコマンド信号
253 通信ライン
254 通信ライン
255 通信ライン
260 通信ライン、第2のコマンド信号
262 通信ライン、第4のコマンド信号
300 コールドスプレーコーティングされた製品
302 基板
303 コーティング材料
304 導電体、導体
305 露出面
306 銅マトリックス
308 高配向熱分解グラファイトプレートレット
1000 保守点検方法
1002 航空機
1004 仕様及び設計
1006 材料調達
1008 構成要素/部分組立品の製造
1010 システム統合
1012 認証及び搬送
1014 航空機の就航
1016 定期的な整備及び保守点検
1018 機体
1020 複数のシステム
1022 内部
1024 推進システム
1026 電気システム
1028 油圧システム
1030 環境システム
L0 センサーと基板との間の検出距離
LX 基板上に堆積されたコーティング材料とセンサーとの間の検出距離
M ノズルと基板との間の距離
TC 基板に塗布されたコーティング材料の厚さ
TE 平均厚さ