(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】バタフライバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 1/226 20060101AFI20241209BHJP
F16K 1/22 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
F16K1/226 C
F16K1/22 Q
F16K1/22 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020069737
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-02-01
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311017474
【氏名又は名称】ゲオルク フィッシャー ローアライトゥングスズュステーメ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Georg Fischer Rohrleitungssysteme AG
【住所又は居所原語表記】Ebnatstrasse 111,CH‐8200 Schaffhausen,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ティモ イェクレ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ビュアギ
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203534(JP,A)
【文献】特開2018-013165(JP,A)
【文献】特開昭62-062061(JP,A)
【文献】米国特許第3750698(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/226
F16K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路内で該管路を通流する媒体を遮断するかまたは調整するためのバタフライバルブ(1)であって、一体的に形成されたハウジング(2)と、ディスク(3)と、軸(11)とを有しており、前記ディスク(3)が、前記軸(11)に沿って開放位置と閉鎖位置との間で旋回可能である、バタフライバルブ(1)において、
前記ディスク(3)が、プラスチックから成るコア(4)と、プラスチックから成る周壁(5)とを有しており、前記コア(4)の前記プラスチックと前記周壁(5)の前記プラスチックとが同一でなく、
前記コア(4)が、複数のウェブ(10)同士の間に
、平行して延びる窪みが設けられているリブ構造(8)を有しており、
前記窪み内にはそれぞれ切欠き(9)が貫通して延びており、隣り合う前記窪み内の前記切欠き(9)の位置が、縦方向および横方向において少なくとも部分的に互いにずらされており、前記軸(11)が、差込み軸として、かつ別体の部材として形成されていて、前記ディスクを完全に貫いて突出して
おり、前記ディスク(3)および前記コア(4)が、レンズ形状を有していることを特徴とする、
バタフライバルブ(1)。
【請求項2】
前記周壁(5)が、前記コア(4)の外面(6)または前記コア(4)の、前記媒体に接触する面を完全に取り囲んでおり、これによって、前記コア(4)が、前記媒体に接触しないことを特徴とする、請求項1記載のバタフライバルブ(1)。
【請求項3】
前記ディスク(3)が多成分射出成形部材として形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載のバタフライバルブ(1)。
【請求項4】
前記コア(4)が、強化されたプラスチックから形成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のバタフライバルブ(1)。
【請求項5】
前記コア(4)が、繊維強化または球体強化されたプラスチックから形成されていることを特徴とする、請求項4記載のバタフライバルブ(1)。
【請求項6】
前記コア(4)が、ガラス繊維または炭素繊維により強化されたプラスチックから形成されていることを特徴とする、請求項4または5記載のバタフライバルブ(1)。
【請求項7】
前記周壁(5)が、媒体に対して耐性を有するプラスチックから形成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のバタフライバルブ(1)。
【請求項8】
前記周壁(5)が、強化されていない部分結晶質のまたは非晶質のプラスチックから形成されていることを特徴とする、請求項7記載のバタフライバルブ(1)。
【請求項9】
前記差込み軸(11)が前記ハウジング内に支承されていることを特徴とする、請求項1記載のバタフライバルブ(1)。
【請求項10】
前記差込み軸(11)が前記ディスク(3)に形状接続的に結合されていることを特徴とする、請求項7または8記載のバタフライバルブ(1)。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか1項記載のバタフライバルブ(1)を製造するための方法であって、
一体的なハウジング(2)を製造するステップと、
二成分射出成形法またはインサート成形法で製造されるディスク(3)を製造するステップと、
前記ハウジング(2)内に前記ディスク(3)を組み付け、前記ハウジング(2)と前記ディスク(3)とに軸(11)を差し通し、該軸(11)の端部を前記ハウジング(2)内に支承し、前記軸(11)によって前記ディスク(3)の旋回軸を形成するステップと、
を有する、方法。
【請求項12】
前記一体的なハウジング(2)が、射出成形法で製造されることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記軸(11)が差込み軸(11)として形成されていることを特徴とする、請求項11または12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路を通流する媒体を遮断するかまたは調整するためのバタフライバルブであって、一体的に形成され好ましくはプラスチックから成るハウジングと、ディスクと、軸とを有しており、ディスクが、軸に沿って開放位置と閉鎖位置との間で旋回可能である、バタフライバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
管路構造内には、液状のまたはガス状の媒体を搬送する管路を閉鎖するかまたは通流量を調整するために、バタフライバルブが使用される。このためには、弁体が管路内の圧力に耐えることが必要となる。
【0003】
特開昭63-87493号公報に開示されたバタフライバルブでは、弁体が、高い強度を達成するために、内部に金属ディスクを有しており、弁体を腐食から保護するために、弁体が耐食性の層でコーティングされている。
【0004】
また、特開平3-123908号公報にも、金属コアを有していて、プラスチック層により取り囲まれた弁体が開示されている。
【0005】
上に挙げた先行技術では、腐食から防護するための外側の層が、金属から成る弁体に被着される。この場合、バタフライバルブの重量が大きくなってしまうばかりか、プラスチック層の剥離時に腐食が生じ、バタフライバルブがもはや要求に耐えられなくなってしまう点が不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、管路内に生じる内圧に耐えられると共に媒体に対して耐性を有しており、簡単に組み立てられるバタフライバルブおよびバタフライバルブの製造法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明によれば、ディスクが、プラスチックから成るコアと、プラスチックから成る周壁とを有しており、コアのプラスチックと周壁のプラスチックとが同一でなく、本発明に係るバタフライバルブの製造法では、軸が差込み軸としてディスクに差し通されることによって解決される。
【0008】
本発明に係るバタフライバルブは、ハウジングを有している。このハウジングは一体的に形成されている。これは、付加的な組立てステップが不要となり、付加的なシール要素が組み込まれる必要もないという利点をもたらす。好ましくは、ハウジングはプラスチックから製造されている。本発明に係るバタフライバルブは、ディスクを有している。このディスクは、バタフライバルブを開閉する働きをし、これによって、管路内の媒体の通流量を調整する。開閉のために、ディスクを軸を中心として旋回させることができる。この軸は、好ましくは水平方向または鉛直方向に延在している。バタフライバルブは、好ましくは中心型の構造形態または偏心型の構造形態を有している。つまり、中心型の構造形態では、ディスクの回動点が、バタフライバルブの閉鎖時に管路軸線に沿ってディスクの中心にあってよく、偏心型の構造形態では、ディスクの回動点が、バタフライバルブの閉鎖時に管路軸線に沿ってディスクの中心からずらされていてよい。ディスクはコアと周壁とを有している。このコアと周壁とは、それぞれ別種のプラスチックから製造されている。高い強度および媒体に対する耐性の要求に応じるために、コアは、靱性かつ高強度のプラスチックから成っており、周壁のプラスチックは、良好な耐媒体性を有している。ディスクは多成分射出成形法によって製造される。当然ながら、ディスクはインサート成形法で製造されてもよい。つまり、コアが別体で射出成形され、次いで、別の型内で周壁のプラスチックの射出により、このプラスチックで取り囲まれる。コアのプラスチックは、コアを取り囲むように射出成形される周壁のプラスチックよりも高い強度を有している。コアと周壁とは、互いに別種のプラスチックを含んでいる。好ましくは、コアは、強化されたプラスチックを含んでおり、周壁は、好ましくは強化されていない部分結晶質のまたは非晶質のプラスチックから成っている。
【0009】
周壁が、コアの外面またはコアの、媒体に接触する面を完全に取り囲んでいると有利である。これは、コアに対して媒体からの良好な保護を保証している。周壁のプラスチックは、好ましくはコアが有するリブ構造における複数のウェブ同士の間の切欠きまたは中空室を塞いでいる。コアがリブ構造を有しており、周壁のプラスチックが、リブを取り囲んで切欠き内にかつコアの外面に配置されていることによって、周壁とコアとが網状構造を有している。これによって、周壁がコアから解離されないことが保証されている。周壁とコアとは、好ましくは互いに形状接続的に結合されている。周壁とコアとの間には、好ましくは材料接続は存在していない。
【0010】
ディスクは、貫通した孔を有している。この孔は、差込み軸を収容するために役立つ。
【0011】
すでに上述したように、ディスクは、好ましくは多成分射出成形部材として、特に好適には、相応の要求に応じるために、コア用の一方のプラスチックと周壁用の他方のプラスチックとを用いる二成分射出成形部材として形成されている。
【0012】
コアが靱性にかつ高強度に形成されているようにするために、コアが、好ましくは強化されたプラスチック、好ましくは繊維強化または球体強化されたプラスチック、特に好適にはガラス繊維または炭素繊維により強化されたプラスチックから形成されている。
【0013】
好ましくは、周壁が、媒体に対して耐性を有するプラスチック、好ましくは強化されていない部分結晶質のまたは非晶質のプラスチックから形成されている。
【0014】
好適な構成によれば、コアがリブ構造を有しており、一方のコア上面から他方のコア上面に向かって、複数のウェブ同士の間に切欠きが貫通して開放している。このリブ構造は、周壁のプラスチックが切欠き内にかつリブを取り囲んで配置されるという利点を必然的に伴う。これは、両方のプラスチックの交差構造(Vernetzung)と、コアへの周壁の最適な固定とをもたらす。プラスチックは、コアの上面を取り囲むようにも配置され、したがって、好ましくは周壁プラスチックとコアとの内部に位置する交差構造を伴って、コアを取り囲む閉じられた周壁を形成している。これによって、周壁がコアから解離することができないようになっている。コアと周壁とは、好ましくは形状接続を有している。両方のプラスチックが材料接続を伴わないと有利である。
【0015】
好ましくは、軸が差込み軸として形成されており、この差込み軸が、別体の部材として形成されていて、ディスクまたはディスクに設けられた孔に差し通されており、差込み軸がハウジング内に支承されている。完成したディスクを貫いて突出した差込み軸を備えたこの構造形態は、簡単な組付けの利点と、欠陥がある際にディスクを簡単に取り換えることができるという利点とを必然的に伴う。差込み軸は、好ましくは金属材料、好ましくは鋼から製造されている。
【0016】
差込み軸がディスクに形状接続的に結合されていることが好適な実施の形態であると判った。これによって、差込み軸を介したディスクの旋回運動を導入し、その後、この旋回運動がディスクを相応に一緒に回動させることが可能となる。このために、好ましくは、差込み軸が、ディスクの孔内の真っ直ぐな面に対応する少なくとも1つの真っ直ぐな面を有している。これによって、差込み軸の単なる差込みにより、ディスクの連れ回りが保証されている。
【0017】
バタフライバルブを製造するための本発明に係る方法は、
一体的なハウジングを、好ましくは射出成形法で製造するステップと、
二成分射出成形法で製造されるディスクを製造するステップと、
ハウジング内にディスクを組み付け、ハウジングとディスクとに差込み軸を差し通し、この差込み軸の端部をハウジング内に支承し、差込み軸によってディスクの旋回軸を形成するステップと、
を有している。
【0018】
本発明の実施例を図面に基づき説明する。なお、本発明はこの実施例にのみ限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るバタフライバルブの縦断面図である。
【
図4】本発明に係るバタフライバルブの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、本発明に係るバタフライバルブ1の縦断面図が示してある。このバタフライバルブ1は、管路を通流する媒体を遮断しかつ調整する働きをする。バタフライバルブ1は、ハウジング2を有している。このハウジング2は一体的に形成されている。これは、付加的なシール部材が不要となり、バタフライバルブ1の組付けを簡単かつ経済的に行うことができるという利点を有している。ハウジング2は、好ましくはプラスチックから形成されている。別種の材料、例えば金属または複合材料も可能である。バタフライバルブ1を最適にシールするために、ハウジング2の内側にシール部材16が配置されている。媒体の通流を遮断するかまたは調整するために、バタフライバルブ1はディスク3を有している。このディスク3は軸11に沿って旋回することができる。図示の実施の形態には、中心型のバタフライバルブ1が示してある。なお、軸が、ディスクの厚さに関してディスクの中心を通って延在しておらず、ディスクの中心に対してずらされて延在している偏心型の構成も可能である。ディスク3は、コア4と周壁5とを有している。この周壁5とコア4とは同一のプラスチックから成っていない。コア4は、周壁5のプラスチックと同等以上の高さの強度を有するプラスチックを含んでいる。好ましくは、これは、コア4のプラスチックが、強化体、例えば球体または繊維または公知の別の強化要素を含んでいることによって達成される。
【0021】
図2には、本発明に係るバタフライバルブ1のディスク3が部分切断図で示してある。周壁5を切り取った半部にコア4のリブ構造8が良好に認められる。複数のウェブ10同士の間に切欠き9が延びている。これらの切欠き9は、コア4の一方の上面7からコア4の他方の上面7にまで貫通して延びている。これは、周壁5のプラスチックが切欠き9内に配置されるかまたは切欠き9を満たし、したがって、周壁5の一方の外層12と周壁5の他方の外層12とをコア4を通して互いに結合するという利点を必然的に伴う。少なくとも二種類のプラスチックから形成され、多成分射出成形部材として形成されたディスク3のこの交差構造は、形状接続を形成しており、コア4からの周壁5の解離を阻止している。また、周壁5がコア4の外面6を完全に取り囲んでいることも良好に認められる。これによって、コア4が媒体に接触せず、媒体が専らディスク3の周壁5にしか接触しないようになっている。周壁5の外層12は平らな面を形成しているため、開放された状態で付加的な抵抗も有していなければ、細菌またはその他の不純物が堆積してしまう恐れがあるアンダカットまたはエッジも有してない。
【0022】
図3には、本発明に係るバタフライバルブ1のディスク3の平面図が示してある。
図3にも、ディスク3が部分切断図で示してあり、ディスク3のコア4を図示するために、周壁5が一方の半部において取り除かれている。図示の実施の形態におけるディスク3は、レンズ形状を有している。なお、ディスクの別の形状も可能であり、軸の偏心型の配置も可能である。ディスク3をハウジング2内に配置するために、ディスク3に差し通される軸11または差込み軸を収容する目的で孔14が役立つ。軸11を介したディスク3の旋回を可能にする、孔14における形状接続部13が良好に認められる。この形状接続部13は、
図3に示したように、少なくとも1つの真っ直ぐな面を介して形成することもできれば、四角形または多角形を介して形成されてもよいし、好ましくは差込み軸の単なる差込みにより実現することができる別の形状接続的な結合可能性を介して形成されてもよい。
【0023】
図4には、本発明に係るバタフライバルブ1が分解図で示してある。
図4には、ディスク3が、軸または差込み軸11の単純な差込みによってハウジング2内に取り付けられることが良好に認められる。軸11に設けられた形状接続部15は、ディスク3の孔14における形状接続部13に対応する。
図4には、ディスク3と軸11との間に形状接続部13/15を達成するために、面が示してあるものの、すでに述べたように、これは、別の形状接続部によって達成することもできる。
【0024】
本発明に係るバタフライバルブ1は、一体的なハウジング2を、好ましくはプラスチックから射出成形法で製造し、ディスク3を二成分射出成形法で製造し、バタフライバルブ1を組み立てるにあたり、ディスク3を通して差込み軸11を単に差し込むものの、差込み中にディスク3をハウジング2内に配置し、差込み軸11をハウジング内に支承することにより製造される。
【符号の説明】
【0025】
1 バタフライバルブ
2 ハウジング
3 ディスク
4 コア
5 周壁
6 コアの外面
7 コアの上面
8 リブ構造
9 切欠き
10 ウェブ
11 軸/差込み軸
12 周壁の外層
13 孔の形状接続部
14 孔
15 軸の形状接続部
16 シール部材