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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】駆動装置及び駆動装置を備えた撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20241209BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20241209BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/04 D
H04N23/50
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020080430
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021173966
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】長岡 信幸
(72)【発明者】
【氏名】野口 和宏
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-225291(JP,A)
【文献】特開2018-101045(JP,A)
【文献】特開2014-212682(JP,A)
【文献】特開2017-169427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
H04N 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を保持する保持部材と、
ベース部材に対して移動する移動部材を有する振動波モータと、
前記移動部材と前記保持部材とを連結する連結部と、
前記連結部を前記移動部材に対して付勢する付勢部と、
前記付勢部とは異なる部材であって、前記保持部材を前記移動部材に対して付勢する付勢機構と、を有し、
前記連結部と前記付勢機構とは、前記光学素子の光軸に垂直な断面において、異なる位置に配置されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記光軸に沿った第1の方向を軸として、前記振動波モータを回転可能に案内する第1の案内部を備え、
前記移動部材が前記保持部材に接続することにより、前記振動波モータの前記軸の回りにおける回転が規制されることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記保持部材を前記第1の方向に案内する第2、第3の案内部を更に備え、
前記第2の案内部は、前記第1の方向を軸として、前記保持部材を回転可能に案内し、 前記第3の案内部は、前記保持部材の回転を規制することを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第2の案内部は、第1のガイドバーを含み、
前記光軸に垂直な断面において、前記第1のガイドバーから前記付勢機構までの距離をL1とし、前記第1のガイドバーから前記連結部までの距離をL0とするとき、以下の関係
L1>L0
が成立することを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第3の案内部は、第2のガイドバーを含み、
前記保持部材は、前記第2のガイドバーが当接する当接部を含み、
前記光軸に垂直な断面において、前記第1のガイドバーから前記当接部までの距離をL2とするとき、以下の関係
L2>L1>L0
が成立することを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第1の案内部は、前記移動部材に設けられたV溝と、前記V溝と当接する複数の転動部材とにより構成されており、
前記連結部における当接点及び前記付勢機構によって発生する付勢力のかかる点を結んだ線と、複数の前記転動部材の各々を結んだ線と、が交わることを特徴とする請求項2から5の何れか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記付勢機構は、前記移動部材と前記保持部材との間に位置し、前記保持部材の凹部に当接する軸部材と、バネ部材と、ワッシャー部材と、を有することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記付勢機構は、前記軸部材の抜け止め部と前記ワッシャー部材とが当接する第1の状態と、前記抜け止め部と前記移動部材とが当接する第2の状態と、前記抜け止め部と前記移動部材とが離間し、前記バネ部材による付勢力が前記移動部材と前記保持部材との間で作用する第3の状態と、を有することを特徴とする請求項7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記光学素子は、合焦レンズであることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項の駆動装置と、前記光学素子を含む鏡筒と、前記鏡筒により形成された像を撮る撮像素子とを含むことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置及び駆動装置を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波モータは、振動子の振動を所定の駆動方向へと取り出すため案内手段を有しており、振動子と摩擦部材は相対移動が可能なように構成されている。特許文献1には、枢動可能な伝達部材を用いて超音波モータとレンズ保持枠とを連結する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014―212682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構成において、重いレンズ群を駆動する場合、伝達部材を付勢する押圧力を大きくする必要があり、かかる構成によると、押圧力がかかる位置とガイドバーの距離が短いため、ガイドバーの摺動抵抗が大きくなる。
【0005】
本発明の目的は、摺動抵抗を低減し駆動効率を向上させた駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置は、光学素子を保持する保持部材と、ベース部材に対して移動する移動部材を有する振動波モータと、前記移動部材と前記保持部材とを連結する連結部と、前記連結部を前記移動部材に対して付勢する付勢部と、前記付勢部とは異なる部材であって、前記保持部材を前記移動部材に対して付勢する付勢機構と、を有し、前記連結部と前記付勢機構とは、前記光学素子の光軸に垂直な断面において、異なる位置に配置されている。



【発明の効果】
【0007】
摺動抵抗を低減し駆動効率を向上させた駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明を適用可能な撮像装置の構成を示す模式図である。
図2】実施例1の振動波モータ10と鏡筒11を備えた駆動装置の分解斜視図である。
図3】実施例1の駆動装置をX軸方向から見た側面図である。
図4】実施例1の駆動装置の断面図である。
図5】実施例1の駆動装置の拡大断面図である。
図6】実施例1の駆動装置の断面図である。
図7】実施例1の振動波モータ10の断面図である。
図8】実施例1の駆動装置をX軸方向から見た際のモーメントの釣合いを示す側面図である。
図9】実施例2の駆動装置をX軸方向から見た際の側面図である。
図10】実施例2の駆動装置の断面図である。
図11】実施例2の駆動装置をX軸方向から見た際のモーメントの釣合いを示す側面図である。
図12】実施例3の駆動装置をX軸方向から見た側面図である。
図13】実施例3の駆動装置の断面図である。
図14】実施例3の駆動装置の断面図である。
図15】(A)実施例3の鏡筒付勢ユニット330の分解斜視図である。(B)同正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例1)
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明を適用可能な撮像装置の構成を示す模式図である。なお、本説明においては、駆動源である振動波モータ10を備えた駆動装置が撮像装置に搭載された場合について説明するが、この説明は本発明を限定するものではない。また、後述の撮像レンズ部2とカメラボディ4が一体となっている撮像装置について説明するが、撮像レンズ部2は交換可能なレンズであっても構わない。更に、図面において、移動方向である光軸方向OをX軸方向、後述の振動板102の接触部102aの法線方向をZ軸方向、X軸方向とZ軸方向のそれぞれに直交する方向をY軸方向と定義する。
【0010】
図1に示すように、撮像装置本体は撮像レンズ部2とカメラボディ4によって構成されている。撮像レンズ部2の内部において、光学レンズ1(光学素子)は振動波モータ10と連結されており、振動波モータ10を構成する後述の振動子101が移動する事により、光学レンズ1は光軸方向Oと略平行な方向に移動可能となる。
【0011】
光学レンズ1を含む鏡筒11と振動波モータ10により、本発明の鏡筒11を駆動する駆動装置が構成される。光学レンズ1が合焦レンズである駆動装置においては、撮像時に合焦レンズが光軸方向Oと略平行な方向に移動し、被写体像は撮像素子3の位置で結像し、合焦した像を生成する事が可能となる。
【0012】
次に、本発明の実施例1の振動波モータ10の構成について、図2から図5を用いて説明する。図2は実施例1の振動波モータ10と鏡筒11を備えた駆動装置の分解斜視図を示す。図3は実施例1の駆動装置をX軸方向から見た側面図を示す。図4図3に示す断面線IV-IVにおける駆動装置の断面図を示す。図5図4の円Aで囲まれた領域の拡大断面図を示す。
【0013】
振動波モータ10に備えられている振動子101は、図5に示すように、弾性を有する振動体である振動板102と圧電素子103により構成されている。振動板102と圧電素子103は公知の接着剤等により固着されており、圧電素子103は電圧を印加する事により高周波領域の周波数の振動(超音波振動)を励振する。
【0014】
振動子101と第1の保持部材105とは、公知の接着剤等により固定されているが、固定されればその方法は限定されない。下側加圧プレート109は、振動子101のZ軸方向の上部に配置され、下側加圧プレート109と圧電素子103の間には、それぞれ弾性部材106が配置されている。弾性部材106は、下側加圧プレート109が備える加圧部と圧電素子103の直接接触を妨げ、圧電素子103の損傷を防止している。
【0015】
第2の保持部材107は、薄板板金108を介して第1の保持部材105と連結されている。そのため、第2の保持部材107は、第1の保持部材105が光軸方向OであるX軸方向に沿って移動する際には、第1の保持部材105と一体で移動する。
【0016】
摩擦部材104と固定側レール部材112は、ネジ等の公知の技術によりベース部材115に固定されている。また、ベース部材115は、不図示の固定部材にビス等で固定されている。
【0017】
バネ110は、その一端が上側加圧プレート111、他端が移動側レール部材114(移動部材)にかけられており、4つのバネ110により上側加圧プレート111と移動側レール部材114の二部品を連結している。上側加圧プレート111で受けるバネ110による加圧力が下側加圧プレート109、弾性部材106を介して振動子101に伝達され、振動子101を摩擦部材104へ摩擦接触させている。4つのバネ110による加圧方向は、-Z軸方向である。
【0018】
移動側レール部材114は、V溝形状の移動側案内部114aを2つの備えており、それぞれに転動ボール113(転動部材)が配置されている。一方、固定側レール部材112においても、V溝形状の固定側案内部112aが備えられている。すなわち、複数の転動ボール113は、固定側レール部材112が有する固定側案内部112aと移動側レール部材114が有する移動側案内部114aの間に挟持されている。移動側レール部材114は、バネ110により常に上側加圧プレート111側に付勢されているため、常に転動ボール113が固定側案内部112aと移動側案内部114aに当接する構成となっている。また、V溝形状の移動側案内部114aと固定側案内部112a及び転動ボール113は、振動子101のY軸方向における位置で略一致して配置されている。
【0019】
固定側レール部材112、転動ボール113、移動側レール部材114の構成により実施例1の第1の案内部が構成される。第1の案内部は、振動波モータ10を略X軸方向へ案内すると共に、略X軸方向を軸として回転可能に案内している。この時、第1の案内部で案内する方向が実施例1の第1の方向であり、光軸方向Oと同じである。
【0020】
次に、振動波モータ10による駆動機構を説明する。振動板102は、接触部102aを少なくとも1つ備え、接触部102aは摩擦部材104に前述のバネ110の加圧力により加圧付勢された状態で接触している。圧電素子103に駆動電圧が印加されると超音波振動が励振され、振動子101に共振現象が起こる。
【0021】
この時、振動子101には2種の定在波が発生し、振動板102の接触部102aに略楕円運動がおこる。前述の振動板102と摩擦部材104の加圧接触状態において、振動子101に発生した略楕円運動が効率的に摩擦部材104へ伝達される。
【0022】
その結果、振動子101と一体となった第1の保持部材105、第2の保持部材107、移動側レール部材114、連結部材116は、摩擦部材104に対して第1の案内部が案内する第1の方向(略X軸方向)に移動する。また、連結部材116に接続するレンズホルダ120(保持部材)も一体となり第1の方向と略同一な第2の方向へと移動する。
【0023】
次に、図2図3を用いて光学レンズ1を保持する鏡筒11の構成について説明する。鏡筒11は、光学レンズ1を保持するレンズホルダ120、不図示の固定部材に固定されている第1のガイドバー121、第2のガイドバー122(第3の案内部)で主に構成されている。
【0024】
レンズホルダ120には、丸穴120c、丸穴120dが設けられており、この丸穴120c、丸穴120dの二点に第1のガイドバー121が遊嵌することで、X軸方向に平行な軸を中心に回転可能に直進案内される。第1のガイドバー121と丸穴120c、丸穴120dの構成により、実施例1の第2の案内部が構成され、この時、第2の案内部で直進案内される方向が第2の方向である。
【0025】
また、レンズホルダ120の丸穴120cの径方向反対側には、U溝部120eが設けられている。そして、回転規制部材である第2のガイドバー122がU溝部120eに当接することで、レンズホルダ120のX軸回りの回転が規制されている。この構成により、レンズホルダ120は回転が規制されるので回転することなくX軸方向に直進案内される。第2のガイドバー122とU溝部120eの構成により、実施例1の第3の案内部が構成される。
【0026】
次に、図2図6図7を用いて、振動波モータ10と鏡筒11を連結し振動波モータ10の動力を伝達する実施例1の連結機構について説明する。図6図4に示す断面線VI-VIにおける駆動装置の断面図を示す。図7図3に示す断面線VII-VIIにおける振動波モータ10の断面図を示す。
【0027】
振動波モータ10の可動部の一部を構成する第2の保持部材107には、振動波モータ10の動力を出力する出力部107aが設けられており、その出力部107aには略U字形をした収容部107bがビス118aにより固定されている。収容部107bには、振動波モータ10の動力を伝達する動力伝達部(伝達部)を構成する連結部材116、球状部材117、連結部材116を付勢する連結部材付勢バネ119が備えられている。
【0028】
連結部材付勢バネ119は、連結部材116と収容部107bの間に配置されており、X軸方向に連結部材116及び球状部材117を付勢する。そして、Y軸方向に延在するV溝形状の案内溝107cに球状部材117が常に当接する構成となっている。この構成により、振動波モータ10の駆動方向とレンズホルダ120の案内方向のずれや、連結部材116及び球状部材117のY軸方向のずれを吸収しつつ、X軸方向にガタが発生せず一体で駆動可能な構成を実現できている。
【0029】
レンズホルダ120には、連結部材116を接続するための接続部120bが設けられている。接続部120bには、Z軸方向に突出する2つの突起部が備えられており、この突起部が連結部材116に形成された2つの穴に嵌合すると共に、連結部材116は、ビス118bで接続部120bに締結される。連結部材116がビス118bで締結されるまでは、連結部材116、球状部材117、連結部材付勢バネ119は、振動波モータ10にユニット化された状態で保持されている。連結部材116が接続部120bに締結された後は、鏡筒11側の要素部品として連結部材116、球状部材117が機能する。
【0030】
次に、本発明の特徴的な構成である鏡筒11を付勢する実施例1の付勢機構について、図2図5図8を用いて説明する。図8は、実施例1の駆動装置をX軸方向から見た際のモーメントの釣合いを示す側面図である。
【0031】
まず、振動波モータ10の可動部の一部を構成する移動側レール部材114に対して、軸部材131の軸部を嵌合穴114d(図5参照)に挿入後、接着剤等の固定手段で固定する。次に、レンズホルダ120に設けられた凸部120aに圧縮コイルばねである鏡筒付勢バネ132を組み込み、軸部材131が固定された振動波モータ10を-Z軸方向から組み込むことで、鏡筒付勢バネ132を軸部材131と凸部120aで挟み込む。また、レンズホルダ120の凸部120aと振動波モータ10に含まれる軸部材131の位置ズレは、間に挟まれる鏡筒付勢バネ132が弾性変形することで許容可能な構成となっている。実施例1の付勢機構は、軸部材131、鏡筒付勢バネ132、凸部120aにより構成されている。
【0032】
上記の構成により、鏡筒付勢バネ132による付勢力Fa1をレンズホルダ120に働かせてX軸回りに回転付勢し、丸穴120c、丸穴120dと第1のガイドバー121の間のガタ、U溝部120eと第2のガイドバー122の間のガタを詰めることができる。
【0033】
鏡筒11には、鏡筒付勢バネ132による付勢力Fa1、鏡筒11の自重mg、U溝部120eに働く付勢力Fbが働く。丸穴120cの中心を回転中心aの軸とした場合、鏡筒付勢バネ132の位置、もしくは重心までの長さをL1、U溝部120eと第2のガイドバー122の当接位置までの距離をL2、動力伝達部の当接点cである球状部材117までの距離をL0とする。
【0034】
付勢力Fbは、鏡筒11の駆動時の軸ずれを防ぐために十分に大きく設定する必要があり、光学レンズ1が重くなるにつれて、必要な付勢力Fbは大きくなっていく。付勢力Fbを大きくするには、鏡筒付勢バネ132の付勢力Fa1を大きくする必要がある。
【0035】
従来構成は、特許文献1の図2図4に示されるように、X軸方向の駆動力を伝達するピボット部材が圧縮トーションバネで付勢され、付勢されたピボット部材がレンズ鏡筒を付勢する構成となっている。そして、ピボット部材の回転の中心からガイドバーまでの距離をL0、ガイドバーと振れ止めバーの距離をL2とすると、以下の式(1)の関係となるため、付勢力Fbを大きくするにはL0を長くする必要がある。
L2>L0 (1)
しかしながら、L0を長くすることは回転中心aからピボット部材が離れることになり、ガイドバーの摺動抵抗の増大と装置の大型化をもたらす。
【0036】
そこで、本発明の実施例1では、動力伝達部と鏡筒11を付勢する部材を別部材で構成し、効率良く付勢することを特徴としている。実施例1では、以下の式(2)の関係になっており、従来構成に対してL0は同等の距離であるため、鏡筒負荷が増大する懸念はない。
L2>L1>L0 (2)
更に、L1>L0であるため、同じ付勢力Fa1でもU溝部120eにより大きな付勢力Fbを与えることができる。これにより、丸穴120c、丸穴120dにかかる付勢力を大きくすることなく、U溝部120eに所望の付勢力Fbを与えることができる。
【0037】
以上の構成により、振動波モータ10と鏡筒11を備えたレンズ鏡筒における駆動負荷の低減をすることができる。実施例1ではレンズホルダ120と移動側レール部材114の間に配置する鏡筒付勢バネ132を圧縮コイルばねとして説明を行ったが、ねじりコイルばねや、板ばね等の各種ばね部材でも適用可能である。
【0038】
(実施例2)
以下、本発明の実施例2について図9から図11を用いて説明する。図9は、実施例2の駆動装置をX軸方向から見た際の側面図である。図10は、図9に示す断面線X-Xにおける実施例2の駆動装置の断面図である。図11は、実施例2の駆動装置をX軸方向から見た際のモーメントの釣合いを示す側面図である。実施例2は、実施例1に対して、軸部材231、鏡筒付勢バネ232、凸部220aの配置が異なっている。実施例2の説明では、実施例1との差異のみを説明し、共通する部分の説明は省く。
【0039】
実施例2では、軸部材231、鏡筒付勢バネ232、凸部220aは、レンズホルダ220(保持部材)の回転中心aからL3だけ離れた位置に配置されている。図9図10に示すように、鏡筒付勢バネ232(付勢機構)による付勢力Fa2は、付勢位置dで移動側レール部材214(移動部材)に対してZ軸方向に働く。また振動波モータ20(駆動源)は、第1の案内部によりX軸回りに回転可能に支持されているため、鏡筒付勢バネ232の付勢力Fa2によりX軸回りに回転しようとする。
【0040】
レンズホルダ220は、第1のガイドバー221である第2の案内部によりX軸方向に移動可能で、U溝部220eと第2のガイドバー222の関係により回転規制されている。そのため、連結部材216と移動側レール部材214の間に働く反力Fcで振動波モータ20の回転を規制することになる。
【0041】
また、第1の案内部を構成する二つの転動ボール213と移動側案内部214aが当接する位置を結んだ直線Bと、動力伝達部の当接点cと鏡筒付勢バネ232の付勢位置dを結んだ直線Cが交点eで交わるようにこれらの部材が配置されている。そのため、移動側レール部材214のY軸回りの回転が規制される構成となっている。
【0042】
X軸方向から見た時の第1の案内部のガイド中心b回りのモーメントについては、図9を参照すると、以下の式(3)の関係が成り立つ。Laはガイド中心bから動力伝達部の当接点cまでの距離、Lbはガイド中心bから付勢位置dまでの距離である。
La×Fc=Lb×Fa2 (3)
【0043】
この式(3)は、振動波モータ20内で成り立つモーメントのつり合いを示しており、連結部材216で発生する反力Fcはレンズホルダ220に働く。そして、鏡筒付勢バネ232による付勢力Fa2に加え、L0×COSθ×Fcのモーメントが鏡筒21に働くことになる(図11参照)。この時、付勢力Fbを一定とした場合、反力Fcによるモーメントが働くため、付勢力Fa2を小さくすることができる。つまり、鏡筒付勢バネ232のばね設計自由度が上がることになる。
【0044】
以上の構成により、振動波モータ20と鏡筒21を備えたレンズ鏡筒における駆動負荷低減を実現しつつ、設計自由度を向上させることができる。
【0045】
(実施例3)
以下、本発明の実施例3を図12から図15(B)を用いて説明する。図12は、実施例3の駆動装置をX軸方向から見た側面図である。図13は、図12に示す断面線XIII-XIIIにおける駆動装置の断面図である。図14は、図13に示す断面線IX-IXにおける駆動装置の断面図である。図15(A)は、実施例3の鏡筒付勢ユニット330の分解斜視図であり、図15(B)は、同正面図である。実施例1では、軸部材131、鏡筒付勢バネ132、凸部120aによる付勢機構を提案した。一方、実施例3では、組立性を向上させるために付勢機構を構成する部材をユニット化した鏡筒付勢ユニット330を提案すると共に、鏡筒付勢ユニット330を用いた構成について説明をする。
【0046】
実施例3の説明でも実施例1との差異のみを説明し、共通する部分の説明は省く。実施例1と同様に、実施例3のレンズホルダ320(保持部材)が第1のガイドバー321と嵌合する丸穴320c(320d)は、X軸方向にずれた位置の2か所に設けられており、第2の案内部として機能している。
【0047】
また、レンズホルダ320の丸穴320cの径方向反対側には、軸ビス324の軸を中心として回転可能にベアリング323が設けられている。そして、回転規制部材である第2のガイドバー322がベアリング323に当接することで、レンズホルダ320のX軸回りの回転が規制されている。この構成により、レンズホルダ320は回転が規制されるので回転することなくX軸方向に直進案内される。第2のガイドバー322とベアリング323の構成により、実施例3の第3の案内部が構成される。
【0048】
次に、鏡筒付勢ユニット330の構成と、レンズホルダ320に対しての付勢について説明する。鏡筒付勢ユニット330は、シャフト部材331(軸部材)、鏡筒付勢バネ332(バネ部材、付勢機構)、ワッシャー333(ワッシャー部材)で構成されている。これらの部材をユニット化した第1の状態と、移動側レール部材314(移動部材)に鏡筒付勢ユニット330を組み込んだ第2の状態と、レンズホルダ320に対して振動波モータ30(駆動源)、鏡筒付勢ユニット330を組み込んだ第3の状態がある。
【0049】
まず、鏡筒付勢ユニット330の組立てについて説明する。鏡筒付勢ユニット330の組立ては、シャフト部材331の一端部に設けられた弾性変形部331a側から鏡筒付勢バネ332をシャフト部材331に組み込む。更に、ワッシャー333をシャフト部材331に組み込むが、その組み込みに際し、弾性変形部331aを変形させながら弾性変形部331aの端部に設けられた抜け止め部331bをワッシャー333に設けられた四角穴333aに挿入する。四角穴333aが抜け止め部331bを乗り越えることにより、シャフト部材331に鏡筒付勢バネ332とワッシャー333が組み込まれる。
【0050】
ワッシャー333が抜け止め部331bを乗り越えた後は、鏡筒付勢バネ332によりワッシャー333が付勢され、抜け止め部331bとワッシャー333が当接し、固定される。そして、シャフト部材331、鏡筒付勢バネ332、ワッシャー333の3部材の組立が完了し、上記3部材をユニット化することができる。この状態、つまり3部材だけでユニット化した状態が図15(B)に示す第1の状態である。
【0051】
次に、ユニット化した鏡筒付勢ユニット330の一端部を移動側レール部材314の嵌合穴314d(図14参照)に押し込み、弾性変形部331aを弾性変形させ、抜け止め部331bが嵌合穴314dを乗り越えるまで挿入し、組み込む。この状態が第2の状態である。ユニット化した鏡筒付勢ユニット330を移動側レール部材314に組み込んだ後は、ワッシャー333と抜け止め部331bが移動側レール部材314の面と当接し、組み込み前に当接していたワッシャー333と抜け止め部331bは離間する。
【0052】
最後に、振動波モータ30に組み込まれた鏡筒付勢ユニット330の一端部の反対側の他端部をレンズホルダ320に組み込む。この組み込みでは、シャフト部材331の球突起部である先端部331cと、レンズホルダ320に設けられたすり鉢状の凹部320aが当接するまで行われる。この状態が図14に示す第3の状態である。
【0053】
この時、抜け止め部331bと移動側レール部材314の嵌合穴314dは離間し、レンズホルダ320と移動側レール部材314の間で鏡筒付勢バネ332が圧縮されることで所望の付勢力Fa3が発生する。
【0054】
第1の状態では、抜け止め部331bとワッシャー333が当接し、鏡筒付勢ユニット330として鏡筒付勢バネ332が保持されている。第2の状態では、移動側レール部材314がワッシャー333と抜け止め部331bの間に挟まれるため、移動側レール部材314と抜け止め部331bが当接し、ワッシャー333と抜け止め部331bが離間した状態になる。そして、鏡筒付勢ユニット330が振動波モータ30に保持される。第3の状態では、移動側レール部材314と抜け止め部331bが離間し、鏡筒付勢バネ332による付勢力Fa3が移動側レール部材314とレンズホルダ320の間で作用する状態になる。
【0055】
実施例1の構成では、レンズホルダ120に対して鏡筒付勢バネ132を配置し、Z軸方向から振動波モータ10を組み込む際に鏡筒付勢バネ132の位置と受け部である軸部材131の位置を合わせることが難しかった。しかしながら、実施例3の構成であれば、鏡筒付勢ユニット330の先端部331cがレンズホルダ320の凹部320aの斜面に当接することで位置ずれを補正するように鏡筒付勢ユニット330が移動するため、組立性が格段に向上する効果を有する。更に、鏡筒付勢ユニット330は、X軸方向から見たときに、レンズホルダ320の中心からY軸方向にずれた位置に配置されているので、振動波モータ30の内部に鏡筒付勢バネ332を重畳させた構成となっている。そのため、振動波モータ30とレンズホルダ320を近づけることができるので、径方向に小型化可能な構成となっている。
【0056】
以上の構成により、振動波モータ30と鏡筒31を備えたレンズ鏡筒における組立性の改善と、小型化を同時に実現することができる。
【符号の説明】
【0057】
10、20、30 振動波モータ(駆動源)
1 光学レンズ(光学素子)
114、214、314 移動側レール部材(移動部材)
116 連結部材(伝達部)
117 球状部材(伝達部)
120、220、320 レンズホルダ(保持部材)
132、232、332 鏡筒付勢バネ(付勢機構)
O 光軸方向(第1の方向)
図1
図2
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図5
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図15