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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】貯蔵デバイス及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1391 20100101AFI20241209BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20241209BHJP
   B81B 7/02 20060101ALI20241209BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20241209BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241209BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20241209BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20241209BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20241209BHJP
【FI】
H01M4/1391
B81C1/00
B81B7/02
H01M4/04 A
H01M4/525
H01M4/02 Z
H01G11/86
H01G11/26
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020081257
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2020205246
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】1904614
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルノー・バザン
(72)【発明者】
【氏名】サミ・ウカシ
(72)【発明者】
【氏名】セヴェリーヌ・ポンセ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・セクアール
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-004281(JP,A)
【文献】特開2012-009423(JP,A)
【文献】特開2006-277956(JP,A)
【文献】特表2012-520552(JP,A)
【文献】特開平03-267362(JP,A)
【文献】特開平09-166777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学エネルギー貯蔵デバイスのための電極(12)を生成する方法であって、前記電極(12)が、複数の積み重ねられた層(121、122)の形成によって得られ、
前記方法が、
(i)物理蒸着によって支持体に第1の電極層(121)を生成する段階であって、前記蒸着が、突出するレリーフ(1210、1211)を第1の電極層(121)に形成する欠陥を生成する段階と、
(ii)前記第1の電極層(121)の露出表面のマスクされていない第2の部分を覆わずに前記第1の電極層(121)の露出表面の第1の部分を覆うように、前記第1の電極層(121)に、前記レリーフ(1210、1211)を完全に覆わないように構成されるマスキング層(16)を形成する段階であって、前記第2の部分が、前記電極(12)の厚さ寸法に、前記電極(12)の厚さ寸法に沿った前記第1の部分の最大延長部より大きい延長部を有するレリーフ(1210、1211)を含む、段階と、
(iii)前記第2の部分からエッチング溶液を前記第1の電極層(121)に適用することによって、前記第1の電極層(121)の材料を除去する段階と、
(iv)前記マスキング層(16)を除去する段階と、
(v)前記第1の電極層(121)の露出表面の直上に第2の電極層(122)を生成する段階と、
を含むことを特徴とする、電極(12)を生成する方法。
【請求項2】
前記第2の電極層(122)が、物理蒸着によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
LiCoOが、前記第1の電極層(121)及び前記第2の電極層(122)の中から少なくとも1つを生成するために使用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
段階(ii)から(v)を繰り返すことによって、前記第2の電極層(122)の上に少なくとも第3の電極層を生成する段階を含む、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の電極層(121)から最も遠くにある、前記電極(12)の最後の電極層の厚さが、前記電極(12)を構成する他の電極層の厚さよりも薄い、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記マスキング層(16)を形成する段階が、前記第1の電極層(121)の第3の部分を露出するように、前記マスキング層(16)の厚さを直接通過する少なくとも1つのパターン(1212)を形成する段階を含み、前記除去が、前記第3の部分(1212)から追加の材料の除去を生成するように構成される、請求項1から5の何れか一項に記載に方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の方法を実施することによって少なくとも第1の電極(12)の生成を含む、電気化学エネルギー貯蔵デバイスを製造する方法。
【請求項8】
支持体(10)に第1のコレクタ(11)を形成し、次いで前記第1のコレクタ(11)に前記第1の電極(12)を生成する段階を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マスキング層(16)の形成が、スピンコーティングによって樹脂を堆積させる段階を含む、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
複数の積み重ねられた層(121、122)を含む、電気化学エネルギー貯蔵デバイスのための電極であって、前記複数の積み重ねられた層(121、122)の第1の電極層(121)が、その厚さに中空に形成された少なくとも1つのキャビティを含み、前記第1の電極層の直上に位置する前記複数の積み重ねられた層の第2の電極層(122)が、前記第1の電極層(121)の露出表面を少なくとも部分的に覆い、前記少なくとも1つのキャビティを満たすことを特徴とする、電気化学エネルギー貯蔵デバイスのための電極。
【請求項11】
前記少なくとも1つのキャビティが、前記第1の電極層(121)の厚さ全体を貫通して延びるキャビティを含む、請求項10に記載の電極。
【請求項12】
前記複数の積み重ねられた層(121、122)内の電極層が、1μm以上、及び/又は、10μm以下の厚さを有する、請求項10又は11に記載の電極。
【請求項13】
前記複数の積み重ねられた層(121、122)の中から少なくとも2つの直接連続する層が、同じ厚さを有する、請求項10から12の何れか一項に記載の電極。
【請求項14】
支持体(10)上のスタックに、第1のコレクタ(11)、第1の電極(12)、電解質(13)、第2の電極(14)及び第2のコレクタ(15)を含む電気化学エネルギー貯蔵デバイスであって、前記第1の電極(12)及び前記第2の電極(14)のうちの少なくとも1つが、請求項10から13の何れか一項による、電気化学エネルギー貯蔵デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的にエネルギーを貯蔵する分野において、特にマイクロバッテリー(従って、電気化学マイクロ貯蔵構成要素を実装する)の形態の電極を有するマイクロエレクトロニクスデバイスに関する。本発明は、そのような貯蔵を提供するマイクロエレクトロニクスデバイスの製造における用途を見出す。マイクロエレクトロニクスデバイスとは、マイクロエレクトロニクス手段で製造されたあらゆるタイプのデバイスを意味する。これらのデバイスは、特に、純粋に電子的な目的のデバイスに加えて、マイクロメカニカル又はエレクトロメカニカル(MEMS、NEMSなど)のデバイスと、オプティカルデバイス又はオプトエレクトロニクス(MOEMSなど)のデバイスを含む。これには、電気化学的マイクロストレージコンポーネントタイプ(マイクロバッテリー、マイクロスーパーキャパシタ、あらゆるタイプの固体イオンコンポーネント)の用途が含まれる。
【0002】
従って、本発明の特定の関心は、電気化学エネルギー貯蔵デバイスの製造である。これには、特に、バッテリータイプのデバイス、特に、マイクロバッテリー、蓄電池、又は、電解質、好ましくは固体を使用するキャパシタと呼ばれるマイクロエレクトロニクススケールのデバイスが含まれる。
【背景技術】
【0003】
電気化学エネルギー貯蔵システムは、一般に、第1の電流コレクタ、第1の電極、イオン性電解質又は導体、第2の電極、及び、第2の電流コレクタの基板上への連続的な堆積によって生成される。システムを酸素や水蒸気との化学反応から保護するために、補足的な層の堆積又はキャップの移動によるカプセル化が必要になることがよくある。
【0004】
デバイスの小型化には、アプリケーションに十分な量のエネルギーを蓄えることができる、小さなサイズ、特に数ミリメートル四方のエネルギー源を生成できることが含まれる。マイクロバッテリーの容量は、2つの電極、特に正極の容積に正比例する。後者の活性表面は、過度に有害なバルクなく最終的なデバイスに統合できるように、マイクロバッテリーの最終サイズによって大きく制限される。従って、そのサイズを最小化しながらバッテリーの容量を増加させるために使用できる1つの方法は、電極、特に正極の厚さを増加させることである。通常、厚さが10μmを超えることが求められる。
【0005】
しかしながら、この厚さを増加させることは、堆積方法に関連する表面欠陥を引き起こし、それは、エネルギー貯蔵デバイスの短絡を引き起こす可能性がある。特に、LiCoOなどの電極材料は、通常、約10ミクロン未満の小さい厚さに制限されるカソードスパッタリング法によって堆積される。さらに、電極の厚さが増加すると、クラックや層間剥離などの体積欠陥が発生する。電極の厚い層の構造自体は、十分に制御されていないため(粒径、結晶配向)、電気化学的性能が低下する。
【0006】
上記の問題に対する解決策の試みは、米国特許第9899661号明細書に提案されており、それは、連続的な堆積による電極の形成を提示している。特に、アルゴン下でのLiCoOの堆積と、アルゴン/酸素混合物下でのLiCoOの堆積が交互に行われる。それから生じる多層アセンブリは、成長核形成の破裂を引き起こし、次に再核形成を引き起こす。電気化学的観点から正しい結晶相を得るために必要な、材料のアニーリング温度の低下も適用される。この文献は、この方法により10μmを超えるLiCoOの膜厚を得ることが可能であると述べている。しかしながら、この多層堆積は、組成においても結晶構造においても電極の不均一性を引き起こし、従って、様々な層の間の性能の不均一性を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第9899661号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、1つの目的は、既知の電極と比較して、同等の厚さに対して、(特に欠陥の低減による)製造品質及び改善された電気的特性を提供する電極製造方法を提案することである。これは、例えば、これが電極の性能に非常に有害であるか、又は有害でさえないか、又は特に電気的観点から有利でさえなくても、大きな厚さを可能にすることができる。
【0009】
他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付図面を検討することから明らかになるであろう。当然、他の利点を組み込むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、一実施形態は、電極、特に電気化学エネルギー貯蔵デバイスのための電極を製造する方法を提供し、この電極は、複数の層の形成によって得られる。
【0011】
有利には、この方法は、
(i)物理蒸着によって第1の電極層を生成する段階と、
(ii)第1の電極層の露出表面の第2のマスクされていない部分を覆わずに第1の電極層の露出表面の第1の部分を覆うように構成されるマスキング層を第1の電極層に形成する段階であって、第2の部分が、電極の厚さ寸法に、電極の厚さ寸法に沿った第1の部分の最大延長より大きい延長部を有するレリーフを含む、段階と、
(iii)第2の部分からエッチング溶液を第1の電極層に適用することによって、第1の電極層の材料を除去する段階と、
(iv)マスキング層を除去する段階と、
(v)第1の電極層の露出表面の直ぐ上に第2の電極層を製造する段階と、
を含む。
【0012】
これにより、物理蒸着技術を使用して、生成される電極の全て又は一部の層を生成することができるが、この技法は、一般に非常に有害な欠陥を引き起こし、生成できる電極の厚さを制限する。この方法は、好ましくは、良好なエネルギー貯蔵に有利である高い厚さを、良好な品質の層を用いて、物理的蒸着である、それ自体よく制御された製造方法で得ることを可能にする。
【0013】
有利には、製造される電極の少なくとも1つの層にLiCoOが使用される。
【0014】
本発明はまた、上記の方法による少なくとも1つの第1の電極の製造を含む、電気化学エネルギー貯蔵デバイスを製造する方法に関する。有利には、第1のコレクタが支持体に形成され、次に、第1の電極が第1のコレクタに生成される。好ましくは、この方法は、前のものの上に積み重ねて他の要素を形成することを含み、それは、特に、好ましくは固形の電解質の場合であり得、次に、第2の電極及び第2のコレクタの場合であり得る。
【0015】
別の態様は、本発明の方法により得られる電気化学エネルギー貯蔵デバイスに関する。
【0016】
別の態様は、複数の積み重ねられた層を含む、電気化学エネルギー貯蔵デバイスのための電極であって、複数の積み重ねられた層の第1の電極層が、その厚さに中空に形成された少なくとも1つのキャビティを含み、第1の電極層の直上に位置する複数の積み重ねられた層の第2の電極層が、第1の電極層の露出表面を少なくとも部分的に覆い、少なくとも1つのキャビティを満たす、電気化学エネルギー貯蔵デバイスのための電極に関する。
【0017】
任意に、少なくとも1つのキャビティは、第1の層の厚さ全体にわたって延びるキャビティを含む。従って、この場合、第2の層の材料の充填は、第1の層の下にある層の材料に到達して接触する可能性があり、それは、キャビティを含む層の直下に位置する他の層の表面の支持体の表面であり得る。
【0018】
別の態様は、支持体上のスタック、第1のコレクタ、第1の電極、電解質、第2の電極及び第2のコレクタを含み、第1の電極及び第2の電極のうちの少なくとも1つを含む電気化学エネルギー貯蔵デバイスに関する。
【0019】
本発明の目的、課題、特徴及び利点は、以下の添付図面によって示されるその実施形態の詳細な説明からより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】マイクロバッテリーを形成するための層のスタックを概略的に示す。
図2】第1のマイクロバッテリーの電極層を生成する段階の例を示す。
図3図2の段階に続くマイクロバッテリー電極を生成する段階の例を示す。
図4図3の段階に続く段階を示す。
図5】第2の電極層の形成を概略的に示す。
図6】マイクロバッテリーに多層の正極を組み込んだ例を示す。
図7】得られた容量に関して本発明の有利な結果を明らかにする曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面は、例として与えられており、本発明を限定するものではない。それらは、本発明の理解を容易にすることを意図した概略的な概要表現を構成し、必ずしも実際の用途の規模に対応するものではない。
【0022】
本発明の実施形態の詳細な検討を始める前に、任意に関連して又は代替的に使用することができる任意の機能を以下に述べる。
-第1の層のアニーリングは、マスキング層の除去後かつ第2の電極層が生成される前に実行される。
-第2の層のアニーリングは、その生成後、又は、少なくとも1つの第3の層が次に形成される場合、有利には、第2の層上のマスキング層を除去した後に行われる。
-第2の電極層122は、物理蒸着によって生成される。
-第2の部分から第1の電極層121にエッチング溶液を適用することによって材料が除去される。
-LiCoOは、第1の電極層121及び第2の電極層122のうちの少なくとも1つを生成するために使用される。
-第2の電極層122の上に少なくとも1つの第3の電極層を生成することは、段階(ii)から(iv)を繰り返すことが含まれる。
-頂部に他の層を生成する前に、各電極層のアニーリングを行うことができる。
-第1の電極層121から離れた電極12の最後の電極層の厚さは、他の電極層の厚さよりも薄い。
-マスキング層16の形成は、第1の電極層121の第3の部分を露出するようにマスキング層16の厚さを直接通過する少なくとも1つのパターン1212の形成を含み、この除去は、第3の部分から追加の材料の除去をもたらすように構成される。
-電極層は、1μm以上、及び/又は、10μm以下の厚さを有する。
-電極層の中から少なくとも2つの直接連続する層は、同じ厚さを有する。
-マスキング層16は、樹脂堆積段階で、好ましくはスピンコーティングによって形成することができる。
【0023】
本発明の文脈において、「上に」又は「頂部に」という用語は、必ずしも「・・・と接触している」ことを意味しないものとして述べられている。従って、例えば、ある層を別の層に堆積することは、必ずしも2つの層が互いに直接接触しているとは限らず、一方の層が他方と直接接触しているか、又は膜、又は別の層若しくは別の要素によってそこから分離されながら、一方の層が他方を少なくとも部分的に覆うことを意味する。さらに、層は、同じ材料又は異なる材料の複数の副層から構成されてもよく、これは、以下に説明する電極層の場合に特に当て嵌まる。
【0024】
本発明の文脈において、層又は基板の厚さが、前記層又は基板がそれに沿って最大の伸びを有する表面に垂直な方向で測定されるものとして述べられている。層が完全に平坦でない場合、特にそれが前記層の露出表面にレリーフになる傾向がある欠陥を有するため、その厚さは、その欠陥の外側の前記層の寸法を意味する。
【0025】
本発明のデバイスのいくつかの部分は、電気的機能を有し得る。いくつかは、電気伝導特性に使用され、電極、コレクタ又は同等の手段は、この用途において、必要な機能を満たすために十分な電気伝導率を有する少なくとも1つの材料から形成される要素を意味する。逆に、電気絶縁体又は誘電体は、この用途では電気絶縁機能を果たす材料を意味する。
【0026】
電気化学エネルギー貯蔵デバイスとは、好ましくは固体形態の電解質の層で機能し、下部導電性機能部分及び上部導電性機能部分と共に機能し、電解質層を囲み、電位差の増加の形態でのエネルギーの貯蔵又は電位差の減少の形態でのエネルギーの排出を可能にする装置を意味する。マイクロエレクトロニクス分野では、それは、マイクロバッテリーの場合であり得、これは、マイクロエレクトロニクス規模の寸法、特に、数十ミクロン、例えば、100ミクロン未満の全体的な厚さを有するデバイスを意味する。
【0027】
一般に、電気化学エネルギー貯蔵デバイスは、電解質によって分離された2つの電極を含む。放電中、アノード(負極)は酸化のシートであり、イオンは、電解質を通過し、カソード(正極)では、特定の材料(ホスト材料)に挿入される間に還元を受け、このようにして生成された電子は、外部回路にエネルギーを供給する。充電中、イオンは、逆の経路を作り、電子は、外部回路から供給される。
【0028】
図1は、マイクロバッテリーを形成するための様々な層のスタックの純粋な概略図を示す。これに関連して、支持体10は、残りのスタックを受け入れることができ、例えば、シリコンなどの半導体材料又は他の任意の有機又は無機材料、例えばガラスで形成される。支持体10が導電性である場合、それは、少なくとも1つの表面電気絶縁層を含み得る。この配置は、図1の概略図には示されていない。参照符号11は、第1の電流コレクタに対応する。本出願の意味の範囲内で、用語「コレクタ」は、その機能がデバイスの外部の要素に電極を接続することであるデバイスの一部、すなわち、一般にカプセル化されたデバイスの層のスタックの外側に位置することを意味する。この部品には、導電性の良い金属を使用できる。これは、プラチナの場合であり、チタンなどのより安価な材料も可能である。
【0029】
この例における問題の電極は、ここでは、第1のコレクタの上に配置され、第1のコレクタと接触する第1の電極12であり、これは、電極12を形成するための支持体として機能する。電極という用語は、その一部として、活性層(特に、電気化学的貯蔵の場合には電解質、好ましくは固体)と電気的に導通しているデバイスの一部を意味する。第1の電極12(又は、従来のリチウム又はナトリウム蓄電池で使用される正極)は、LiCoO、V、TiS、LiMn、NaMnO又はNaCoOなどの様々な材料を使用することができる。それは、組成ABXの材料を含んでもよく、Aは、アルカリ金属であり、好ましくはLiであり、Bは、遷移金属であり、好ましくはCoであり、Xは、酸素(O)又はリン酸塩(PO)である。一般に、本発明では、リチウムコバルト及び/又はリチウムマンガンに基づく材料を使用することができる。先に示したように、限られた表面積で十分な量のエネルギーを蓄積できるようにするために、第1の電極(ここではカソード)をかなり厚くすることが一般的に求められる。ここでは、10μm以上、好ましくは、20μm以上の厚さを使用することが可能である。
【0030】
第1のコレクタ11との接触の反対側で、第1の電極12は、電解質13と接触している。イオン伝導性ガラスとアルカリ性カルコゲナイドは、全固体電池に適用できる無機固体電解質の1つである。対応する材料は、硫化物及びガラス質酸硫化物電解質システム、並びに、硫化物ベースの超イオンガラスセラミックLiS-Pのシリーズから選択でき、LiS-PのLiイオン伝導率は、液体電解質のそれに匹敵する。ナトリウム電池用の電解質に関しては、同じ種類のガラス、例えばNaPSが存在する。
【0031】
次に、図1は、電解質13のもう一方の面にある、ここではアノードを形成する第2の電極を示す。例えば、それは、シリコンでもよい。それの頂部に第2のコレクタ15が置かれている。以前と同様に、チタン、又は導電性を持つ別の金属を使用することができる。
【0032】
一般に、第1の電極12の通常の文脈において、図1を参照して、特に製造後の電気効率に関して、第1の電極の品質に禁止的な影響なしに10μmの厚さを達成することは困難である。これは、電極の厚さの増加により、形態学的欠陥が高くなり、しばしば前記電極の表面に顕著な粗さ及び曲がりが生じ、場合によっては、電極と前のレベルの電流コレクタ層との間の層間剥離が生じ、その結果、部品の電気的応答が低下し、多くの場合、短絡及び/又は高リーク電流の形になる。
【0033】
本発明の方法は、この問題に対する解決策を提供し、図2を参照すると、第1の電極層121がコレクタ11の上に形成される段階を提示する。好ましくは、頭字語PVDで一般に知られている物理蒸着が使用される。この堆積の条件は、従来通りであり得る。それらは、部分1210及び1211によって明らかにされるように欠陥を引き起こす。これらは、不十分に制御された結晶構造を持つ外皮の形の成長欠陥である可能性がある。いくつかの欠陥は、欠陥1210によって表されるように、それらが層121の厚さ全体にわたって広がる可能性があるようなものである。参照符号1211が付いている欠陥など、その他の欠陥はより表面的なものである。これらの欠陥は、様々な層の厚さ寸法に実質的に垂直に向けられるレリーフを層121の平均表面を超えて形成する。特に、これらのレリーフは、1μmを超えるものであり、又は、2μmを超えるものでさえあり、又は、3μmも可能である。これは、例えば、単一の堆積段階で堆積される層の厚さの30%を超える場合もあり、単一の堆積段階で堆積される層の厚さと同じ桁である場合もあり、例えば、3ミクロンの層の場合は2から3ミクロンであり、20ミクロンの場合は10から15ミクロンである。
【0034】
図3では、マスキング層16は、第1の層121の上に形成されている。この形成は、レリーフ欠陥1210、1211の影響を受けない層121の部分を覆うように構成される。従って、マスキング層16が存在するにもかかわらず、欠陥の一部がここで露出される。マスキング層16の厚さが、欠陥のレリーフを完全に覆わないように十分に微細であるように構成されることが理解されるであろう。通常、マスキング層16の厚さは、少なくとも1μm、及び/又は、好ましくは4μm未満、より好ましくは、少なくとも1.5μm、及び/又は、2.5μm未満であってよい。例えば、マスキング層16は、+/-0.2μmのマージンで2μmの厚さを測定することができる。
【0035】
スピンコーティング技術は、マスキング層16を生成するのに完全に適している。通常、第1の段階は、層121の露出面に樹脂を塗布することであり、支持体の回転が生じる。このようにして発生した遠心力により、樹脂が表面に分散する。回転の条件、特に時間及び速度により、必要な厚さの層を得ることができる。次に、その溶媒を蒸発させることにより、樹脂を硬化させることが可能である。図3に示す結果は、コーティングされた第1の電極層121の第1の部分を示し、電極層121の第2の部分は、マスキング層16によって保護されずに露出したままである。一例によれば、マスキング層16の厚さは、第1の電極層121の厚さの少なくとも20%を表し、代替として、又は追加として、マスキング層16の厚さは、第1の電極層121の厚さの最大70%、好ましくは前記厚さの最大30%を表してもよい。一般に、マスキング層の形成は、少なくともいくつかのレリーフ1210、1211の周りのスペースを埋めるように構成され、窪み(又は、問題の層の平均表面及び最高のレリーフの頂部)を分離する高さの一部のみを埋める。このように、有利には、第2の部分は、マスク層によって取り囲まれた第1の電極層121の材料の小さなアイランドの形の少なくとも1つの領域、欠陥レリーフの突出特性による材料のアイランドを含む。従って、前記アイランドの表面は、第1の層121の露出した表面上に形成される。前記アイランドの表面は、マスキング層よりも高度が高い。それは、マスキング中に覆われない頂部を形成する。
【0036】
第1の電極層121の他の部分も任意に露出されることに留意されたい。これは、層121の保護されていない領域161を画定するためのフォトリソグラフィ段階によって、マスキング層16の材料にパターンを作成することによって行うことができる。特に、次の段階において、その層121で、第1の電極を横方向に区切ることが可能であることが分かる。
【0037】
これは、図4に示す次の段階が、第1の電極層121の材料を除去する段階であるためである。マスキング層16によって保護されていない部分は、エッチング溶液の適用による攻撃の場所であり得る。これは、湿式エッチングの可能性がある。エッチングは、例えばHSOの浴中で行われ、エッチングの速度は、特に約6μm/分である。欠陥の外側の厚さが10μmの初期層121には、1分程度のエッチングが適している。場合によっては、パターンを完全に除去するために、この除去が層121の底部に到達するように構成されることは望ましくない。これは、それらの一部が外皮の形をしていて、層121の残りの部分と壊れやすい界面を持っているため、ブロックの形で削除される傾向があるためである。この場合、延長されなくても、エッチングが欠陥の界面に達し、欠陥を分離する可能性がある。当然、他の場合では、エッチングの効果は、より緩やかな除去である。一般に、エッチングは、少なくとも層121の平均表面を超えて、欠陥1210、1211の過剰な厚さ全体にわたって第1の電極層121の材料を除去するように構成される。より好ましくは、エッチングは、欠陥を完全に除去するように構成される。これが、上に示されたエッチング時間が層121の厚さに関して比較的重要である理由である。
【0038】
除去が層121の平均表面を超えると考えられる好ましい場合において、前記除去は、マスクされていない部分で、層121の厚さに中空に延びるキャビティを生成する。任意選択で、キャビティは、層121の全厚さにわたって延びる。一般に、層には複数のキャビティが存在する。複数の層は、すぐに連続するかどうかに関係なく、それぞれが1つ又は複数のキャビティを含むことができる。層内のキャビティは、異なる形態及び寸法、特に異なる深さを有し得る。
【0039】
先に示したように、問題の除去段階はまた、第1の層121によって形成されたその部分において、第1の電極12を形成するのに役立ち得る。これに関連して、図4の参照符号1212は、第1の電極のパターンを横方向に区切るために、堆積物の除去と同時に実行されたエッチングを表す。従って、層121上の不要なレリーフを除去するための本発明の段階は、補足的な段階の文脈ではなく、一般に必要な別の段階の文脈で行われることが理解される。さらに、図4の状況が、第1の電極層121の材料の除去に続く、マスキング層16の除去後の状況に対応することに留意されたい。
【0040】
問題の段階は、特にそれを横方向に制限するための電極層の成形、及び/又は、電気接続又は封入に関与する段階であってもよい。
【0041】
図5は、次に、このように再処理された第1の層121の上の第2の電極層122の生成を示す。好ましくは、PVD法もまた、前記第2の層を形成するために使用される。前の除去段階で残された窪みは、この堆積によって減衰できる。
【0042】
第1の可能性によれば、スタックの頂部層、すなわち電解質、第2の電極及び第2のコレクタが第2に構成される。
【0043】
別の可能性によれば、図3から図5の段階は、第2の電極122の上に第1の電極の少なくとも第3の層を生成するように繰り返される。従って、マスキング層を形成する段階、(今回は、第2の電極層で)材料を除去する段階、マスキング層の除去、及び、第3の電極層の材料の堆積の段階が再び使用される。前述の露出領域161及びエッチングされたパターン1212の特性と同等の特性を有するパターンの形成を継続することが可能であることに留意されたい。
【0044】
第1の電極12を形成する副層の数を増やすことが可能であり、図6は、それぞれ12a、12b、12c、12dの4つの副層の例を与える。
【0045】
第1の実施形態によれば、これらの層の厚さは同じである。別の可能性によると、厚さが減少している、又は少なくとも最後の層(電解質と接触するように意図されている層)が他の層よりも薄いか、少なくともその直下の層よりも薄い。
【0046】
特に、少なくとも1μm、及び/又は、10μm未満の厚さを有する層を使用することが可能である。
【0047】
任意に、第1の電極の各層、又はそれらの少なくとも2つに異なる材料を使用することが可能である。
【0048】
従来、本発明のデバイスの製造は、電気化学エネルギー貯蔵デバイスの場合、電解質13の形成、次いで、それぞれ図6において参照符号14及び参照符号15を有する第2の電極及び第2のコレクタの形成に続く。任意に、第2の電極14は、第1のものについて前述した方法を使用して製造することができる。第2の電極14を形成するための1つ又は複数の層の堆積のための支持体は、電解質13であってもよい。
【0049】
図7は、本発明によってもたらされるかなりの技術進歩の例示を与える。それは、他の点では同等であるが、その第1の電極の形成によって区別される2つのマイクロバッテリーの2つの電気容量/電圧曲線を示している。第1の場合では、それは、本発明により、それぞれ3μmのLiCoOの3つの層で生成された第1の電極である。他の場合では、第1の電極は、同じ材料であるが、従来の方法に従って単一片に形成され、厚さは10μmである。第2の場合では厚さがわずかに大きいにもかかわらず、マイクロバッテリーの動作は、観察された容量の違いを考慮して、品質がはるかに低くなっている。
【0050】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲によってカバーされるすべての実施形態に及ぶ。
【符号の説明】
【0051】
10 支持体
11 第1のコレクタ
12 第1の電極
12a 副層
12b 副層
12c 副層
12d 副層
13 電解質
14 第2の電極
15 第2のコレクタ
16 マスキング層
161 保護されていない領域
121 第1の電極層
122 第2の電極層
1210 レリーフ
1211 レリーフ
1212 エッチングパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7