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特許7599851医用情報処理装置、医用情報処理方法、プログラムおよびCT搭載車
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  • 特許-医用情報処理装置、医用情報処理方法、プログラムおよびCT搭載車 図1A
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  • 特許-医用情報処理装置、医用情報処理方法、プログラムおよびCT搭載車 図9A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理方法、プログラムおよびCT搭載車
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20241209BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
A61B6/00 530Z
A61B6/00 550Z
A61B6/03 560Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020113329
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011905
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 和正
【審査官】井海田 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-027888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0046140(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の状態画像を取得する画像取得部と、
前記状態画像に関する情報に基づいて、スキャンされた前記被検体に関する医用画像データの外部への送信に関する優先度を決定する優先度決定部と、
前記優先度に基づいて、前記医用画像データの送信を指示する指示部と、
を備え、
前記優先度決定部は、前記医用画像データの送信に関する優先度として、前記被検体の部位に関する優先度を決定するものであり、前記被検体の各部位における外傷の有無に基づいて前記優先度を決定する、
医用情報処理装置。
【請求項2】
前記優先度決定部は、前記被検体の各部位における外傷の重症度に基づいて前記優先度を決定する、
請求項に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
被検体の状態画像を取得する画像取得部と、
前記状態画像に関する情報に基づいて、スキャンされた前記被検体に関する医用画像データの外部への送信に関する優先度を決定する優先度決定部と、
前記優先度に基づいて、前記医用画像データの送信を指示する指示部と、
を備え、
前記画像取得部は、複数の被検体に関して前記状態画像を取得し、
前記優先度決定部は、前記複数の被検体の状態画像に基づき、前記複数の被検体について前記医用画像データの送信に関する優先度を決定するものであり、前記複数の被検体に実施されたトリアージの結果に基づいて前記優先度を決定する、
医用情報処理装置。
【請求項4】
前記医用画像データは、再構成処理部がスキャンによって取得された投影データを再構成処理することによって生成されるCT画像データであり、
前記指示部は、前記再構成処理の実施順序を前記優先度に基づいて指示する、
請求項1からのいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
コンピュータが、
被検体の状態画像を取得し、
前記状態画像に関する情報に基づいて、スキャンされた前記被検体に関する医用画像データの外部への送信に関する優先度を決定し、
前記優先度に基づいて、前記医用画像データの送信を指示する、
医用情報処理方法であって、
前記コンピュータは、前記医用画像データの送信に関する優先度として、前記被検体の部位に関する優先度を決定するものであり、前記被検体の各部位における外傷の有無に基づいて前記優先度を決定する、
医用情報処理方法。
【請求項6】
コンピュータが、
被検体の状態画像を取得し、
前記状態画像に関する情報に基づいて、スキャンされた前記被検体に関する医用画像データの外部への送信に関する優先度を決定し、
前記優先度に基づいて、前記医用画像データの送信を指示する、
医用情報処理方法であって、
前記コンピュータは、複数の被検体に関して前記状態画像を取得し、
前記コンピュータは、前記複数の被検体の状態画像に基づき、前記複数の被検体について前記医用画像データの送信に関する優先度を決定するものであり、前記複数の被検体に実施されたトリアージの結果に基づいて前記優先度を決定する、
医用情報処理方法。
【請求項7】
コンピュータに、
検体の状態画像を取得する画像取得処理と、
前記状態画像に関する情報に基づいて、スキャンされた前記被検体に関する医用画像データの外部への送信に関する優先度を決定する優先度決定処理と、
前記優先度に基づいて、前記医用画像データの送信を指示する指示処理と、
を実行させるためのプログラムであって、
前記優先度決定処理は、前記医用画像データの送信に関する優先度として、前記被検体の部位に関する優先度を決定するものであり、前記被検体の各部位における外傷の有無に基づいて前記優先度を決定する、
プログラム。
【請求項8】
無線通信インターフェースと、
検体の状態画像を取得する画像取得部と、
前記状態画像に関する情報に基づいて、スキャンされた前記被検体に関する医用画像データの外部への送信に関する優先度を決定する優先度決定部と、
前記優先度に基づいて、前記医用画像データを前記無線通信インターフェースを介して送信する送信部と、
を備え
前記優先度決定部は、前記医用画像データの送信に関する優先度として、前記被検体の
部位に関する優先度を決定するものであり、前記被検体の各部位における外傷の有無に基
づいて前記優先度を決定する、
CT搭載車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理方法、プログラムおよびCT搭載車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT(Computed Tomography)装置を搭載した車両(以下「CT搭載車」という。)を各種現場に派遣することで診察や検診を受ける者の負担を軽減する取り組みがなされている。このような取り組みの一例として、CT搭載車を災害や事件、事故等の発生現場(以下これらを総称して「派遣先現場」という。)に派遣することが検討されている。具体的には、CT搭載車により派遣先現場で患者のCTスキャンを実施し、取得したCT画像データを患者の受け入れ先の医療機関に送信する。これにより、受け入れ先の医療機関は患者の受け入れ体制を整える時間を確保することができるため、患者に対して適切な治療を迅速に行うことが可能となる。
【0003】
CT画像データなどの医用画像データはデータ量が大きいため、順序よく送信しないと必要な医用画像データが迅速に届かない場合がある。また、受け取る側の医師等においても、無作為な順序で大量の医用画像データが送られてくると、どれから確認すればよいのか判断がつかないことが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-89571号公報
【文献】実用新案登録第3027769号公報
【文献】特開2002-306430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、派遣先現場で取得される医用画像データを適切なタイミングで送信することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の医用情報処理装置は、画像取得部と、優先度決定部と、指示部とを持つ。画像取得部は、被検体の状態画像を取得する。優先度決定部は、前記状態画像に関する情報に基づいて、スキャンされた前記被検体に関する医用画像データの外部への送信に関する優先度を決定する。指示部は、前記優先度に基づいて、前記医用画像データの送信を指示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】第1の実施形態におけるCT搭載車の具体例を示す図。
図1B】第1の実施形態におけるCT搭載車の具体例を示す図。
図2】第1の実施形態におけるX線CT装置の構成例を示す図。
図3】第1の実施形態における架台装置の構成例を示す図。
図4】第1の実施形態における操作パネルの具体例を示す図。
図5】第1の実施形態における架台装置の断面図。
図6】第1の実施形態におけるCT画像データの送信に関する制御処理の流れを示すフローチャート。
図7A】第1の実施形態におけるCT画像データの送信に関する制御の実施例を示す図。
図7B】第1の実施形態におけるCT画像データの送信に関する制御の実施例を示す図。
図8】第2の実施形態におけるCT画像データの送信に関する制御処理の流れを示すフローチャート。
図9A】第2の実施形態におけるCT画像データの送信に関する制御の実施例を示す図。
図9B】第2の実施形態におけるCT画像データの送信に関する制御の実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態の医用情報処理装置、医用情報処理方法、プログラムおよびCT搭載車について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるCT搭載車の具体例を示す図である。図1Aは、本実施形態におけるCT搭載車100の外観の具体例を示す。CT搭載車100は、図1Aに示すように、X線CT装置を収納するコンテナ110を搭載したコンテナ車である。コンテナ110に収納されたX線CT装置は、図示しない電源や操作端末等を含み、派遣先現場において単独で動作可能に構成される。図1Bはコンテナ110の内観の具体例を示す。例えば、コンテナ110の内部は、扉111によって放射線管理区域である第1空間Aと、第2空間Bとに仕切られている。第1空間Aには操作端末であるコンソール装置30が設置され、第2空間BにはX線CT装置1の架台装置10および寝台装置20が設置される。
【0010】
図2は、第1の実施形態におけるX線CT装置1の構成例を示す図である。また、図3は、第1の実施形態における架台装置10の構成例を示す図である。X線CT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置20と、コンソール装置30とを備える。図2では、説明の都合上、架台装置10をZ軸方向から見た図とX軸方向から見た図の双方を記載しているが、実際には、架台装置10は一つである。以下の実施形態では、非チルト状態での回転フレーム18の回転軸または寝台装置20の天板23の長手方向をZ軸方向と定義する。また、Z軸方向に直交し、床面に対して水平である軸をX軸方向と定義する。また、Z軸方向に直交し、床面に対して垂直である方向をY軸方向と定義する。
【0011】
架台装置10は、例えば、架台筐体11と、投光器12と、X線管13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム(以下、DAS; Data Acquisition System)16と、固定フレーム17と、回転フレーム18と、制御装置19とを備える。投光器12は、内部投光器121と外部投光器122とを備える(図5参照)。以下の説明において、内部投光器121と、外部投光器122を区別しない場合には、総称して投光器12として説明することがある。
【0012】
架台筐体11には、被検体Pを挿入可能であり、略円筒形状を備える開口61が設けられている。開口61には、例えば、被検体(被検者)Pが載置された状態の寝台装置20の天板23が挿入される。架台筐体11の内部には、投光器12、X線管13、X線高電圧装置14、X線検出器15、DAS16、固定フレーム17、及び回転フレーム18が内蔵される。
【0013】
投光器12は、制御装置19からの指示に応じて、被検体の位置合わせ用の光(可視光線)、例えばレーザ光を開口内に挿入された天板23または天板23に載置された被検体Pに向けて投射する。投光器12から発せられる可視光線の色は、どのような色でもよく、例えば、赤、緑、または青等の色であってよい。
【0014】
X線管13は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生させる。X線管13は、真空管を含む。例えば、X線管13は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0015】
X線高電圧装置14は、例えば、高電圧発生装置と、X線制御装置とを備える。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)および整流器などを含む電気回路を備え、X線管13に印加する高電圧を発生させる。X線制御装置は、X線管13に発生させるべきX線量に応じて高電圧発生装置の出力電圧を制御する。高電圧発生装置は、上述した変圧器によって昇圧を行うものであってもよいし、インバータによって昇圧を行うものであってもよい。
X線高電圧装置14は、架台装置10の固定フレーム17に設けられてもよいし、回転フレーム18に設けられてもよい。
【0016】
X線検出器15は、X線管13が発生させ、被検体Pを通過して入射したX線の強度を検出する。X線検出器15は、検出したX線の強度に応じた電気信号(光信号などでもよい)をDAS16に出力する。X線検出器15は、例えば、複数のX線検出素子列を備える。複数のX線検出素子列のそれぞれは、X線管13の焦点を中心とした円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたものである。複数のX線検出素子列は、スライス方向(列方向、row方向)に配列される。
【0017】
X線検出器15は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを備える間接型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを備える。それぞれのシンチレータは、シンチレータ結晶を備える。シンチレータ結晶は、入射するX線の強度に応じた光量の光を発する。グリッドは、シンチレータアレイのX線が入射する面に配置され、散乱X線を吸収する機能を備えるX線遮蔽板を備える。なお、グリッドは、コリメータ(一次元コリメータまたは二次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを備える。光センサアレイは、シンチレータにより発せられる光の光量に応じた電気信号を出力する。X線検出器15は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を備える直接変換型の検出器であってもよい。
【0018】
DAS16は、例えば、増幅器と、積分器と、A/D変換器とを備える。増幅器は、X線検出器15の各X線検出素子により出力される電気信号に対して増幅処理を行う。積分器は、増幅処理が行われた電気信号をビュー期間に亘って積分する。A/D変換器は、積分結果を示す電気信号をデジタル信号に変換する。DAS16は、デジタル信号に基づく検出データをコンソール装置30に出力する。
【0019】
固定フレーム17は、架台筐体11に対して固定された状態で取り付けられる。固定フレーム17は、軸受けを介してX軸周りに連続回転可能に回転フレーム18を支持する。
被検体Pの身長方向がX軸に沿うように被検体Pが載置されることにより、回転フレーム18は、内部に導入された被検体Pをほぼ中心として回転自在となる。
【0020】
回転フレーム18は、X線管13と、X線検出器15とを対向支持する円環状の部材である。回転フレーム18は、更にDAS16を支持する。DAS16が出力する検出データは、回転フレーム18に設けられた発光ダイオード(LED)を備える送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば固定フレーム)に設けられたフォトダイオードを備える受信機に送信され、受信機によってコンソール装置30に転送される。
なお、回転フレーム18から非回転部分への検出データの送信方法として、前述の光通信を用いた方法に限らず、非接触型の任意の送信方法を採用してよい。回転フレーム18は、X線管13などを支持して回転させることができるものであれば、円環状の部材に限らず、アームのような部材であってもよい。架台装置10の配置や構造については、後にさらに説明する。
【0021】
X線CT装置1は、例えば、X線管13とX線検出器15の双方が回転フレーム18によって支持されて被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-TypeのX線CT装置(第3世代CT)であるが、これに限らず、円環状に配列された複数のX線検出素子が固定フレームに固定され、X線管13が被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-TypwnoX線CT装置(第4世代CT)であってもよい。
【0022】
制御装置19は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを備える処理回路と、モータやアクチュエータなどを含む駆動機構とを備える。制御装置19は、コンソール装置30に取り付けられた入力インターフェース43または架台装置10に取り付けられた操作パネル430からの入力信号を受け付けて、架台装置10および寝台装置20の動作を制御する。
【0023】
例えば、制御装置19は、架台筐体11に対する被検体Pの位置合わせを行うために、投光器12に可視光線を投光させる制御を行う。さらに、制御装置19は、例えば、回転フレーム18を回転させたり、架台装置10をチルトさせたり、寝台装置20の天板23を移動させたりする。架台装置10をチルトさせる場合、制御装置19は、入力インターフェース43に入力された傾斜角度(チルト角度)に基づいて、Z軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム18を回転させる。制御装置19は、図示しないセンサの出力等によって回転フレーム18の回転角度を把握している。また、制御装置19は、回転フレーム18の回転角度を随時、コンソール装置30に提供する。制御装置19は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置30に設けられてもよい。
【0024】
架台筐体11には、検査技師等が操作する操作パネル430が設けられる。図4は、第1の実施形態における操作パネル430の具体例を示す図である。操作パネル430は、スイッチ類431と、タッチパネル432と、を備える。例えば、スイッチ類431が操作されると、操作信号が制御装置19に送信される。同様に、タッチパネル432が操作されると、操作信号が制御装置19に送信される。
【0025】
操作信号には、例えば、投光器12を点灯および消灯させるための信号、調光シート71(後述)への通電を決定して調光シート71を透過状態と不透過状態に切り替えるための信号、投光器12の投射状態および投射位置を決定するための信号、被検体Pの位置合わせを行うために、寝台装置20を移動させるための信号等が含まれる。制御装置19は、操作パネル430により送信される操作信号に基づいて、操作信号に応じた制御を実行する。例えば、制御装置19は、投光器12による投射状態および投射位置を設定する操作信号を受信した場合に操作信号に応じて投光器12による投射状態および投射位置を設定する。これらの操作信号は、コンソール装置30に設けられた入力インターフェース43を操作することで、コンソール装置30から制御装置19に送信されるようにしてもよい。
【0026】
寝台装置20は、CTスキャン(以下単に「スキャン」という。)を実施する対象の被検体Pを載置して移動させ、架台装置10の回転フレーム18の内部に導入する装置である。寝台装置20は、例えば、基台21と、寝台駆動装置22と、天板23と、支持フレーム24とを備える。基台21は、支持フレーム24を鉛直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体を含む。寝台駆動装置22は、モータやアクチュエータを含む。寝台駆動装置22は、被検体Pが載置された天板23を、支持フレーム24に沿って、天板23の長手方向(Z軸方向)に移動させる。天板23は、被検体Pが載置される板状の部材である。
【0027】
寝台駆動装置22は、天板23だけでなく、支持フレーム24を天板23の長手方向に移動させてもよい。また、上記とは逆に、架台装置10がZ軸方向に移動可能であり、架台装置10の移動によって回転フレーム18が被検体Pの周囲に来るように制御されてもよい。また、架台装置10と天板23の双方が移動可能な構成であってもよい。また、X線CT装置1は、被検体Pが立位または座位でスキャンされる方式の装置であってもよい。この場合、X線CT装置1は、寝台装置20に代えて被検体支持機構を備え、架台装置10は、回転フレーム18を、床面に垂直な軸方向を中心に回転させる。
【0028】
コンソール装置30は、例えば、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路50(図2内「処理回路」)とを備える。実施形態では、コンソール装置30は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置30の各構成要素の一部または全部が含まれてもよい。
【0029】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、検出データや投影データ、再構成画像データ、CT画像データ等を記憶する。これらのデータは、メモリ41ではなく(或いはメモリ41に加えて)、X線CT装置1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0030】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路によって生成された医用画像(CT画像)や、検査技師等の操作者(以下、「検査技師等」という)による各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像等を表示する。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置30の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)であってもよい。
【0031】
入力インターフェース43は、検査技師等による各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路50に出力する。例えば、入力インターフェース43は、検出データまたは投影データ(後述)を収集する際の収集条件、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件などの入力操作を受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、タッチパネル、ドラッグボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、カメラ、赤外線センサ、マイク等により実現される。また、入力インターフェース43は、コンソール装置30の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)により実現されてもよい。
【0032】
なお、本明細書において入力インターフェースはマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0033】
無線通信インターフェース44は、無線通信によるデータの送受信を行う。例えば、無線通信インターフェース44は、4Gや5G等の携帯電話回線に接続するためのアンテナを備え、当該回線を介して外部とデータの送受信を行う。無線通信インターフェース44は、必要な帯域を備えていれば携帯電話回線以外の無線通信回線を使用してもよい。
【0034】
撮像部40は、レンズや絞り等の光学系機構と、受光素子やメモリ等の電子系機構を備え、被写体が撮像された画像データを取得する。撮像部40は、寝台装置20に載置された被検体(以下「患者」ともいう。)を撮像可能な位置および姿勢で第1空間A内に設置される。撮像部40は、その撮像動作が処理回路50によって制御され、取得した画像データを処理回路50に出力する。なお、以下では、撮像部40によって取得される画像を患者の状態を示す画像として「状態画像」と称し、スキャンによって取得されるCT画像と区別する。
【0035】
処理回路50は、X線CT装置1の全体の動作を制御する。処理回路50は、例えば、制御機能51と、前処理機能52と、再構成処理機能53と、画像処理機能54と、データ送信機能55とを備える。処理回路50は、例えば、ハードウェアプロセッサが記憶装置(記憶回路)に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0036】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device;SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device;CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array;FPGA))などの回路(circuitry)を意味する。記憶装置にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。記憶装置は、非一時的(ハードウェアの)記憶媒体でもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0037】
コンソール装置30または処理回路50が備える各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路50は、コンソール装置30が備える構成ではなく、コンソール装置30と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つのX線CT装置と接続されたワークステーション、或いは、複数のX線CT装置に接続され、以下に説明する処理回路50と同等の処理を一括して実行する装置(例えばクラウドサーバ)である。
【0038】
制御機能51は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、処理回路50の各種機能を制御する。具体的には、制御機能51は、撮像部40を制御して対象患者の状態画像を取得する機能に加え、撮像制御機能511と、優先度決定機能512と、指示機能513とを備える。
【0039】
前処理機能52は、DAS16により出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を行い、投影データを生成し、生成した投影データをメモリ41に記憶させる。
【0040】
再構成処理機能53は、前処理機能52によって生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等による再構成処理を行って、CT画像データを生成し、生成したCT画像データをメモリ41に記憶させる。
【0041】
画像処理機能54は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、CT画像データを公知の方法により、三次元画像データや任意断面の断面像データに変換する。三次元画像データへの変換は、前処理機能52によって行われてもよい。また、画像処理機能54は、状態画像について所定の画像認識処理を行う機能を備える。
【0042】
データ送信機能55は、X線CT装置1によって取得されたCT画像データを無線通信インターフェース44を介して外部に送信する。ここでいう外部とは、例えば当該患者の受け入れ先として決定された医療機関である。これに加え、データ送信機能55は、撮像部40によって取得された患者の状態画像データを外部に送信することも可能である。
【0043】
撮像制御機能511は、撮像部40を制御して、対象患者の状態画像データを取得する。撮像制御機能511は、撮像部40から出力される状態画像データをメモリ41に記録する。
【0044】
優先度決定機能512は、状態画像に関する情報に基づいて、スキャンされた患者のCT画像データの外部への送信に関する優先度を決定する。優先度決定機能512は、決定した優先度を指示機能513に通知する。
【0045】
指示機能513は、優先度決定機能512から通知された優先度に基づいて、再構成処理機能53に対し投影データの再構成処理の実行を指示する。
【0046】
データ送信機能55は、指示機能513の指示に応じ、CT画像データを無線通信インターフェース44を介して外部に送信する。
【0047】
図5は、第1の実施形態における架台装置10の断面図である。図5に示す断面図は、架台装置10のZ軸を含む切断面を示す。架台装置10における架台筐体11の内部には、固定フレーム17と、回転フレーム18とが収容される。回転フレーム18には、内部投光器121が取り付けられ、固定フレーム17には、外部投光器122が取り付けられる。架台筐体11の外側上方位置には、図示しない正中線投光器が設けられる。
【0048】
内部投光器121は、投射する可視光線が開口61に向かうように回転フレームに18取り付けられる。内部投光器121は、撮影範囲の基準線または撮影範囲の全体を直接的に視認するための可視光線を投射する。内部投光器121は、Z軸を対称軸として対称となる点に1つずつ(合計2つ)設けられる。
【0049】
外部投光器122は、投射する可視光線が開口61に向かうように固定フレーム17取り付けられる。外部投光器122は、撮影範囲の基準線を直接的に視認するための可視光線を投射する。外部投光器122は、開口61に対して、フロント側(被検体Pを挿入する側)とリア側のそれぞれに2つずつ(合計4つ)設けられ、リア側の外部投光器122が水平投光器である。回転フレーム18に取り付けられる内部投光器121の数や固定フレーム17に取り付けられる外部投光器122の数は、限定されない。
【0050】
架台筐体11における開口61の内壁101には、内部投光器121が投射した可視光線およびX線管13が照射したX線が通過するための隙間102が設けられている。架台筐体11の内側面には、隙間102を覆う、内部カバー70が取り付けられている。内部カバー70は、開口61の内壁の周方向の全周に渡って設けられる。隙間102は、透過部の一例である。
【0051】
内部カバー70は、例えば、マイラー(登録商標)をリング状にして形成されたマイラリングであり、可視光線を透過させる透光性を備える部材である。内部カバー70は、内部投光器121が投射する光が照射される位置に配置される。内部投光器121及びX線管13は回転フレーム18に取り付けられ、内部投光器121やX線管13は投射位置を回転方向に沿って移動させて可視光線やX線を投射するので、隙間102は、内壁101の全周に渡って設けられている。内部カバー70は、隙間102の全体を塞いでいる。
【0052】
周辺部内壁103には、外部投光器122が投射した可視光線が通過するための穴104が設けられている。穴104は、外部投光器122の可視光線の出射方向に限定して形成されている。穴104を覆うようにカバー75が取り付けられている。カバーは、外部投光器122が投射する可視光線を透過する透光性を備えている。
【0053】
図6は、第1の実施形態におけるCT画像データの送信に関する制御処理の流れを示すフローチャートである。具体的には、本フローチャートは、同じ患者について取得されたCT画像データの送信を、患者の部位に関する優先度に基づいて制御するものである。以下では、このような医用画像データの送信に関する制御を「第1の制御」という。本フローチャートは、CT搭載車100が派遣先現場に到着した後、スキャンを実施する対象の患者(以下「対象患者」という。)が寝台装置20に載置された状態で開始されるものとする。また、本フローチャートは、対象患者が複数存在する場合には、それぞれの対象患者ごとに実行されるものとする。
【0054】
この状態において、まず、撮像制御機能511が撮像部40に撮像動作を指示し、寝台装置20に載置されている対象患者の状態画像を取得する(ステップS101)。その一方で、制御機能51が、架台装置10に対して対象患者のスキャンの実施を指示する(ステップS102)。この指示に応じて架台装置10がスキャン動作を行うことにより、対象患者の所定部位ごとに投影データが取得される。取得された投影データおよび状態画像データはネットワークを介してコンソール装置30に送られ、メモリ41に記録される。
【0055】
続いて、画像処理機能54が、取得された状態画像データに対して画像認識処理を行う(ステップS103)。例えば、画像処理機能54は、対象患者の状態画像に基づいて対象患者が負っている外傷を識別する画像認識処理を実行する。この場合、例えば、画像処理機能54は、画像内の人体部分を識別し、人体領域内の赤色の部分(すなわち出血部と考えられる部分)を外傷部位として検出してもよい。また、例えば、画像処理機能54は、ALD(Anatomical Landmark Detection; 解剖学的ランドマーク検出処理)によって患者の身体的特徴点を検出し、検出された特徴点の位置と基準位置とのズレの大きさに基づいて外傷の有無を判定してもよい。
【0056】
また、例えば、画像処理機能54は、状態画像データと当該状態画像内の外傷部位との関係性を示す推定モデルを用いて画像内の外傷部位を検出するように構成されてもよい。例えば、推定モデルは、機械学習によって生成されてもよいし、画像から抽出される特徴量の関数として構築されてもよい。画像処理機能54は、このような画像認識処理の結果を優先度決定機能512に出力する。
【0057】
続いて、優先度決定機能512が、画像処理機能54によって識別された外傷の有無に基づいて、対象患者のCT画像データの外部への送信に関する優先度を決定する(ステップS104)。優先度決定機能512は、決定した優先度を指示機能513に通知する。指示機能513は、優先度決定機能512から通知された優先度に基づいて、各部位の投影データに対する再構成処理の実行を再構成処理機能53に指示する(ステップS105)。この指示に応じて再構成処理機能53が再構成処理を実行することによって対象患者の各部位のCT画像データが生成される。再構成処理機能53は、生成したCT画像データをデータ送信機能55に出力する。データ送信機能55は、再構成処理機能53から出力されたCT画像データを順次外部に送信する(ステップS106)。具体的には、データ送信機能55は、対象患者の受け入れ先の医療機関にCT画像データを送信する。
【0058】
図7は、第1の実施形態におけるCT画像データの送信に関する制御の実施例を示す図である。図7Aは、対象患者の頭部、胸部、腹部、脚部について投影データを取得する場合において、撮像部40-1及び40-2が取得した状態画像により、当該患者について腹部の外傷が検出されたことを表している。また、図7Bは、図7Aの場合において、制御機能51が、頭部、胸部、腹部、脚部の各部について取得された投影データの再構成処理を、腹部、頭部、胸部、脚部の順に実施するように再構成処理機能53を制御した例を表している。CT画像データの送信に関して、このような制御がなされることにより、患者を受け入れる医療機関は、当該患者について腹部の治療のための準備を優先的に行うことができる。
【0059】
このように構成された第1の実施形態のX線CT装置1は、患者の状態画像に関する情報に基づいて、スキャンされた患者のCT画像データの外部への送信に関する優先度を決定する優先度決定機能512を備える。そして、このような構成を備えることにより、第1の実施形態のX線CT装置1は、派遣先現場の状況や患者の状態に応じて適切なタイミングでCT画像データを送信することが可能となる。
【0060】
具体的には、第1の実施形態のX線CT装置1によれば、治療の優先度の高い部位から順に投影データの再構成処理を実施することで、患者の受け入れ先の医療機関に対して治療の優先度の高い部位の順にCT画像データを提供することができる。このため、受け入れ先の医療機関において、対象患者について重症度の高い部位の治療を行うための準備を優先的に行うことが可能となり、より多くの人命を救助することが可能となる。
【0061】
なお、ここでは簡単のため、再構成処理の実施順序を制御することによってCT画像データの送信順序を制御する場合について説明したが、複数の再構成処理が並列で実施される場合、再構成処理は必ずしも開始された順に終了するとは限らない。そのため、このような場合、CT画像データの送信が生成された順に開始されたのでは、優先度の高いCT画像データの送信がそれよりも優先度の低いCT画像データの送信が完了するまで待たされてしまう可能性がある。そこで、指示機能513は、データ送信機能55に対し、決定した優先度に基づいてCT画像データの送信を指示するように構成されてもよい。
【0062】
また、ここでは簡単のため、対象患者が腹部に外傷を負っている場合について説明したが、対象患者は複数の部位に外傷を負っている場合もある。この場合、画像処理機能54は、複数部位に検出された外傷について、それぞれの重症度を推定する画像認識処理を行うように構成されてもよい。例えば、画像処理機能54は、検出された外傷の重症度として、その大きさや深さを検出する画像認識処理を実行するように構成されてもよいし、ALDにおける基準位置とのずれの大きさに基づいて外傷の重症度を推定するように構成されてもよい。この場合、優先度決定機能512は、推定された各外傷の重症度に基づいて、再構成処理の実施を指示するように構成されてもよい。また、この場合、指示機能513が、推定された各外傷の重症度に基づいてCT画像データの送信を指示するように構成されてもよい。
【0063】
(第2の実施形態)
第1の実施形態におけるX線CT装置1は、患者の部位に関する優先度に基づいてCT画像データの送信に関する機能を制御した。これに対して、第2の実施形態におけるX線CT装置1は、複数の患者間の優先度に基づいてCT画像データの送信に関する機能を制御する点で第1の実施形態と異なる。なお、第2の実施形態におけるX線CT装置1の機能構成、およびそれを搭載するCT搭載車100の構成は第1の実施形態と同様である。
【0064】
図8は、第2の実施形態におけるCT画像データの送信に関する制御処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートは、CT搭載車100が派遣先現場に到着した後、スキャンを実施する対象の最初の患者が寝台装置20に乗せられた状態で開始されるものとする。
【0065】
この状態において、まず、撮像制御機能511が撮像部40に撮像動作を指示し、寝台装置20に載置されている対象患者の状態画像を取得する(ステップS201)。その一方で、制御機能51が、架台装置10に対して対象患者のスキャンの実施を指示する(ステップS202)。この指示に応じて架台装置10がスキャン動作を行うことにより、対象患者の投影データが取得される。取得された投影データおよび状態画像データはネットワークを介してコンソール装置30に送られ、メモリ41に記録される。続いて、画像処理機能54が取得された状態画像データに対し画像認識処理を行う(ステップS203)。ここまでの処理は、第1の制御におけるステップS101~S103と同様である。
【0066】
続いて、優先度決定機能512が、その時点において投影データの再構成処理が未実施である患者が複数存在しているか否かを判定する(ステップS204)。以下、再構成処理が未実施である複数の患者を「未処理患者」という。ここで、未処理患者は存在しないと判定された場合(ステップS204-NO)、優先度決定機能512はステップS201に処理を戻す。これにより、スキャンの実施を待機中の患者についてステップS201~S203が順次実行される。
【0067】
一方、ステップS204において未処理患者が存在していると判定された場合(ステップS204-YES)、優先度決定機能512は、その時点での未処理患者について実施された画像認識処理の結果に基づいて、CT画像データの送信に関する未処理患者間での優先度を決定する(ステップS205)。この優先度の決定のために、本実施形態における画像処理機能54は、状態画像データに基づいて対象患者の重症度を識別する画像認識処理をステップS203において実行するものとする。
【0068】
例えば、患者の重症度を示す情報の一つとして患者の体に取り付けられたトリアージ・タッグが挙げられる。トリアージ・タッグは、患者の重症度に応じた色を備えるカードである。このため、例えば、画像処理機能54は、各状態画像データから患者に取り付けられたトリアージ・タッグの色を検出する画像認識処理を実施するように構成されてもよい。また、画像処理機能54は、各患者について検出された外傷の程度(大きさや深さ、基準位置からのずれの大きさなど)に基づいて患者の重症度を決定するように構成されてもよい。画像処理機能54は、このような画像認識処理の結果を優先度決定機能512に出力し、優先度決定機能512は、画像認識処理の結果に基づいて決定した優先度を指示機能513に通知する。
【0069】
続いて、指示機能513は、優先度決定機能512から通知された優先度に基づいて、未処理患者の投影データについての再構成処理の実行を再構成処理機能53に指示する(ステップS206)。この指示に応じて再構成処理機能53が再構成処理を実行することによって各対象患者のCT画像データが生成される。再構成処理機能53は、生成したCT画像データをデータ送信機能55に出力する。データ送信機能55は、再構成処理機能53から出力されたCT画像データを順次外部に送信する(ステップS207)。
【0070】
続いて、制御機能51が、全患者のCT画像データが送信されたか否かを判定する(ステップS208)。ここで、全患者のCT画像データが送信されたと判定された場合(ステップS208-YES)、制御機能51は本フローチャートの一連の処理を終了する。一方、いずれかの患者についてCT画像データが送信されていないと判定された場合(ステップS208-NO)、制御機能51はステップS201に処理を戻し、全患者のCT画像データが送信されるまで一連の処理を繰り返し実行する。
【0071】
図9は、第2の実施形態におけるCT画像データの送信に関する制御の実施例を示す図である。図9Aは、複数の対象患者A、B、C、D、Eについて投影データを取得する場合において、撮像部40-1及び40-2が取得した状態画像により、複数の対象患者の重症度がトリアージにおけるカテゴリーIまたはカテゴリーIIのいずれかであることが識別された場合を表している。また、図9Bは、図9Aの場合において、制御機能51が、患者A、B、C、D、Eの順に取得された投影データの再構成処理を、患者A、B、C、E、Dの順に実施するように再構成処理機能53を制御した例を表している。
【0072】
このように構成された第2の実施形態のX線CT装置1は、複数の患者のうち優先度の高い患者から順にCT画像データが送信されるように各機能を制御する制御機能51を備える。そして、このような構成を備えることにより、第2の実施形態のX線CT装置1は、派遣先現場の状況や患者の状態に応じた適切なタイミングでCT画像データを送信することが可能となる。具体的には、第2の実施形態のX線CT装置1によれば、重症度の高い患者の受け入れ先の医療機関に対して優先的に患者のCT画像データを提供することができる。このため、重症度の高い患者を受け入れる医療機関において、当該患者を受け入れるための準備をより十分に行うことが可能となり、より多くの人命を救助することが可能となる。
【0073】
(変形例)
以上の実施形態では、制御機能51は、状態画像データに基づいて決定した優先度に基づいて医用画像データの送信に関する各機能を制御したが、制御機能51は外部の装置から与えられる優先度情報に基づいて関連機能を制御するように構成されてもよい。例えば、制御機能51は、データ送信機能55の制御により受け入れ先の医療機関に状態画像データを送信し、その応答として当該医療機関から優先度情報を取得するように構成されてもよい。この場合、優先度は、当該医療機関において状態画像を確認した医師によって決定されてもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、車両に搭載されたX線CT装置1が外部との無線通信機能を備える場合について説明したが、外部との無線通信機能は必ずしもX線CT装置1に備えられる必要はない。例えば、外部との無線通信機能は、CT搭載車100の車両部分の機能として備えられてもよい。
【0075】
以上の実施形態では、患者のCT画像データをCT搭載車100から受け入れ先の医療機関に送信する場合について説明したが、以上説明したCT画像データの送信制御方法は、CT画像データ以外の医用画像データの送信制御にも適用可能である。例えば、本実施形態の送信制御方法は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)画像データの送受信に適用されてもよい。また、例えば、実施形態の送信制御方法は、医用画像データの病院内における送受信に適用されてもよいし、病院間における送受信に適用されてもよい。また、本実施形態の送信制御方法によって送信される医用画像データは、再構成処理によりCT画像データを生成する前の投影データであってもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、医用画像データの送信制御機能がX線CT装置1の内部に実装された場合について説明したが、実施形態の送信制御機能はX線CT装置1と通信可能な他の情報処理装置に実装されてもよい。例えば、送信制御機能は、インターネットを介して通信可能ないわゆるクラウドサーバとして実装されてもよいし、医用画像データの送信先である各医療機関側のシステムに実装されてもよい。
【0077】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、被検体の状態画像を取得する画像取得部と、前記状態画像に関する情報に基づいて、スキャンされた前記被検体に関する医用画像データの外部への送信に関する優先度を決定する優先度決定部と、前記優先度に基づいて、前記医用画像データの送信を指示する指示部とを持つことにより、派遣先現場で取得される医用画像データを派遣先現場の状況や患者の状態に応じて適切なタイミングで送信することができる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0079】
100…CT搭載車、1…X線CT装置、10…架台装置、101…内壁、102…間隙、103…周辺部内壁、104…穴、11…架台筐体、12…投光器、121…内部投光器、122…外部投光器、13…X線管、14…X線高電圧装置、15…X線検出器、16…DAS、17…固定フレーム、18…回転フレーム、19…制御装置、20…寝台装置、21…基台、22…寝台駆動装置、23…天板、24…支持フレーム、30…コンソール装置、41…メモリ、42…ディスプレイ、43…入力インターフェース、430…操作パネル、431…スイッチ類、432…タッチパネル、44…無線通信インターフェース、40,40-1,40-2…撮像部、50…処理回路、51…制御機能、511…撮像制御機能、512…優先度決定機能、513…指示機能、52…前処理機能、53…再構成処理機能、54…画像処理機能、55…データ送信機能、61…開口、70…内部カバー、75…カバー、110…コンテナ、111…扉
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B