(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/00 20060101AFI20241209BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20241209BHJP
B29C 64/00 20170101ALI20241209BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
C08J9/00 Z CEQ
B33Y80/00
B29C64/00
A47C27/14 A
(21)【出願番号】P 2020117991
(22)【出願日】2020-07-08
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佳之
(72)【発明者】
【氏名】篠原 寿充
(72)【発明者】
【氏名】山口 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】家永 諭
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0305093(US,A1)
【文献】特表2019-534064(JP,A)
【文献】特開平02-000645(JP,A)
【文献】国際公開第2020/116328(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/116325(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/235544(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/235545(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/235546(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/235547(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00
B29C 44/00-44/60;64/00-64/40;67/00-67/24
B33Y
A47C 27/14
F16S
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のある樹脂又はゴムから構成された多孔質構造体であって、
前記多孔質構造体は、その全体にわたって、骨格部を備えており、
前記骨格部は、
複数の骨部と、
それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の結合部と、
を備えており、
前記多孔質構造体は、所定荷重入力方向に圧縮変形する時に、前記骨格部における複数の部分どうしが干渉するように構成されて
おり、
前記複数の骨部のうち少なくとも1つの骨部は、それぞれ、互いに分割された第1分割骨部及び第2分割骨部からなる非連続骨部であり、
前記多孔質構造体は、前記所定荷重入力方向に圧縮変形する時に、前記非連続骨部における前記第1分割骨部及び前記第2分割骨部どうしが擦れるように構成されている、多孔質構造体。
【請求項2】
前記非連続骨部において、
前記第1分割骨部は、第1側面を有しており、
前記第2分割骨部は、第2側面を有しており、
前記多孔質構造体は、前記所定荷重入力方向に圧縮変形する時に、前記非連続骨部における前記第1分割骨部の前記第1側面及び前記第2分割骨部の前記第2側面どうしが擦れるように構成されている、請求項
1に記載の多孔質構造体。
【請求項3】
前記非連続骨部における前記第1分割骨部及び前記第2分割骨部のうち少なくとも一方は、帯状である、請求項
2に記載の多孔質構造体。
【請求項4】
前記非連続骨部における前記第1側面及び前記第2側面のうち少なくとも一方は、複数の突起を有している、請求項
2に記載の多孔質構造体。
【請求項5】
前記非連続骨部において、前記第2側面は、前記多孔質構造体が前記所定荷重入力方向に圧縮変形する時に、前記第1側面を、前記第1分割骨部の周方向に沿って囲うように構成されている、請求項
2に記載の多孔質構造体。
【請求項6】
前記非連続骨部において、
前記第1分割骨部は、前記第1分割骨部の延在方向の端部において、前記第1分割骨部の延在方向に垂直な方向に対して傾斜した第1端面を有しており、
前記第2分割骨部は、前記第2分割骨部の延在方向の端部において、前記第2分割骨部の延在方向に垂直な方向に対して傾斜した第2端面を有しており、
前記第1端面及び前記第2端面どうしは、互いに略平行であり、
前記多孔質構造体は、前記所定荷重入力方向に圧縮変形する時に、前記非連続骨部における前記第1分割骨部の前記第1端面及び前記第2分割骨部の前記第2端面どうしが擦れるように構成されている、請求項
1に記載の多孔質構造体。
【請求項7】
前記非連続骨部における前記第1分割骨部の延在方向と前記第2分割骨部の延在方向とは、互いに非平行である、請求項
1に記載の多孔質構造体。
【請求項8】
可撓性のある樹脂又はゴムから構成された多孔質構造体であって、
前記多孔質構造体は、その全体にわたって、骨格部を備えており、
前記骨格部は、
複数の骨部と、
それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の結合部と、
を備えており、
前記多孔質構造体は、所定荷重入力方向に圧縮変形する時に、前記骨格部における複数の部分どうしが干渉するように構成されており、
前記骨格部は、セル孔を内部に区画するセル区画部を複数有しており、
各前記セル区画部は、それぞれ、複数の前記骨部と複数の前記結合部とから構成されており、
前記多孔質構造体は、前記所定荷重入力方向に圧縮変形する時に、前記複数のセル区画部のうち2つ以上の前記セル区画部どうしが干渉するように構成されて
おり、
前記骨格部は、前記2つ以上のセル区画部どうしを連結する1つ又は複数の橋部を、さらに備えている、多孔質構造体。
【請求項9】
前記骨格部は、セル孔を内部に区画するセル区画部を複数有しており、
各前記セル区画部は、それぞれ、それぞれ環状に構成された複数の環状部を有しており、
前記セル区画部を構成する前記複数の環状部は、それぞれの内周側縁部によって区画する仮想面どうしが交差しないように互いに連結されており、
各前記環状部は、それぞれ、複数の前記骨部と複数の前記結合部とから構成されており、
各前記仮想面は、それぞれ略平坦であり、
前記セル孔は、前記複数の環状部と、前記複数の環状部がそれぞれ区画する複数の前記仮想面とによって、区画されている、請求項1~
8のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項10】
前記セル区画部を構成する前記複数の環状部は、1つ又は複数の小環状部と、1つ又は複数の大環状部と、を含んでおり、
各前記小環状部は、それぞれ、その内周側縁部によって、略平坦な小仮想面を区画しており、
各前記大環状部は、それぞれ、その内周側縁部によって、略平坦かつ前記小仮想面よりも面積の大きな大仮想面を区画している、請求項
9に記載の多孔質構造体。
【請求項11】
前記小仮想面と前記大仮想面とは、互いに形状が異なる、請求項1
0に記載の多孔質構造体。
【請求項12】
各前記セル孔は、それぞれ、略ケルビン14面体の形状をなしている、請求項
9~1
1のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項13】
前記多孔質構造体は、クッション材に用いられる、請求項1~1
2のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項14】
前記多孔質構造体は、3Dプリンタによって造形されたものである、請求項1~1
3のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
【請求項15】
3Dプリンタを用いて、請求項1~1
3のいずれか一項に記載の多孔質構造体を製造する、多孔質構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クッション性のある多孔質構造体(例えば、ウレタンフォーム)は、例えば金型成形等において、化学反応により発泡させる工程を経て、製造されている。
一方、近年、3Dプリンタによってクッション性のある多孔質構造体を容易に製造することが可能な、多孔質構造体が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2019/235544号公報
【文献】WO2019/235547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1や特許文献2の技術においては、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度に関し、向上の余地があった。
【0005】
本発明は、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる、多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多孔質構造体は、
可撓性のある樹脂又はゴムから構成された多孔質構造体であって、
前記多孔質構造体は、その全体にわたって、骨格部を備えており、
前記骨格部は、
複数の骨部と、
それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の結合部と、
を備えており、
前記多孔質構造体は、所定荷重入力方向に圧縮変形する時に、前記骨格部における複数の部分どうしが干渉するように構成されている。
本発明の多孔質構造体によれば、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる。
【0007】
本発明の多孔質構造において、
前記複数の骨部のうち少なくとも1つの骨部は、それぞれ、互いに分割された第1分割骨部及び第2分割骨部からなる非連続骨部であり、
前記多孔質構造体は、前記所定荷重入力方向に圧縮変形する時に、前記非連続骨部における前記第1分割骨部及び前記第2分割骨部どうしが擦れるように構成されていてもよい。
この場合、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる。
【0008】
本発明の多孔質構造において、
前記非連続骨部において、
前記第1分割骨部は、第1側面を有しており、
前記第2分割骨部は、第2側面を有しており、
前記多孔質構造体は、前記所定荷重入力方向に圧縮変形する時に、前記非連続骨部における前記第1分割骨部の前記第1側面及び前記第2分割骨部の前記第2側面どうしが擦れるように構成されていてもよい。
この場合、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる。
【0009】
本発明の多孔質構造において、
前記非連続骨部における前記第1分割骨部及び前記第2分割骨部のうち少なくとも一方は、帯状であってもよい。
この場合、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる。
【0010】
本発明の多孔質構造において、
前記非連続骨部における前記第1側面及び前記第2側面のうち少なくとも一方は、複数の突起を有していてもよい。
この場合、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる。
【0011】
本発明の多孔質構造において、
前記非連続骨部において、前記第2側面は、前記多孔質構造体が前記所定荷重入力方向に圧縮変形する時に、前記第1側面を、前記第1分割骨部の周方向に沿って囲うように構成されていてもよい。
この場合、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる。
【0012】
本発明の多孔質構造において、
前記非連続骨部において、
前記第1分割骨部は、前記第1分割骨部の延在方向の端部において、前記第1分割骨部の延在方向に垂直な方向に対して傾斜した第1端面を有しており、
前記第2分割骨部は、前記第2分割骨部の延在方向の端部において、前記第2分割骨部の延在方向に垂直な方向に対して傾斜した第2端面を有しており、
前記第1端面及び前記第2端面どうしは、互いに略平行であり、
前記多孔質構造体は、前記所定荷重入力方向に圧縮変形する時に、前記非連続骨部における前記第1分割骨部の前記第1端面及び前記第2分割骨部の前記第2端面どうしが擦れるように構成されていてもよい。
この場合、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる。
【0013】
本発明の多孔質構造において、
前記非連続骨部における前記第1分割骨部の延在方向と前記第2分割骨部の延在方向とは、互いに非平行であってもよい。
この場合、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる。
【0014】
本発明の多孔質構造において、
前記骨格部は、セル孔を内部に区画するセル区画部を複数有しており、
各前記セル区画部は、それぞれ、複数の前記骨部と複数の前記結合部とから構成されており、
前記多孔質構造体は、前記所定荷重入力方向に圧縮変形する時に、前記複数のセル区画部のうち2つ以上の前記セル区画部どうしが干渉するように構成されていてもよい。
この場合、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる。
【0015】
本発明の多孔質構造において、
前記骨格部は、前記2つ以上のセル区画部どうしを連結する1つ又は複数の橋部を、さらに備えていると、好適である。
これにより、当該2つ以上のセル区画部どうしを、橋部を介して、一体化することができる。
【0016】
本発明の多孔質構造において、
前記骨格部は、セル孔を内部に区画するセル区画部を複数有しており、
各前記セル区画部は、それぞれ、それぞれ環状に構成された複数の環状部を有しており、
前記セル区画部を構成する前記複数の環状部は、それぞれの内周側縁部によって区画する仮想面どうしが交差しないように互いに連結されており、
各前記環状部は、それぞれ、複数の前記骨部と複数の前記結合部とから構成されており、
各前記仮想面は、それぞれ略平坦であり、
前記セル孔は、前記複数の環状部と、前記複数の環状部がそれぞれ区画する複数の前記仮想面とによって、区画されていると、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション性を向上できる。
【0017】
本発明の多孔質構造において、
前記セル区画部を構成する前記複数の環状部は、1つ又は複数の小環状部と、1つ又は複数の大環状部と、を含んでおり、
各前記小環状部は、それぞれ、その内周側縁部によって、略平坦な小仮想面を区画しており、
各前記大環状部は、それぞれ、その内周側縁部によって、略平坦かつ前記小仮想面よりも面積の大きな大仮想面を区画していると、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション性を向上できる。
【0018】
本発明の多孔質構造において、
前記小仮想面と前記大仮想面とは、互いに形状が異なると、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション性を向上できる。
【0019】
本発明の多孔質構造において、
各前記セル孔は、それぞれ、略ケルビン14面体の形状をなしていると、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション性を向上できる。
【0020】
本発明の多孔質構造において、
前記多孔質構造体は、クッション材に用いられると、好適である。
【0021】
本発明の多孔質構造において、
前記多孔質構造体は、3Dプリンタによって造形されたものであると、好適である。
【0022】
本発明の多孔質構造の製造方法は、
3Dプリンタを用いて、上記の多孔質構造体を製造する。
本発明の多孔質構造体の製造方法によれば、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、多孔質構造体の動的特性の調整の自由度を向上できる、多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る多孔質構造体の一部を、圧縮変形していない自然状態で示す、斜視図である。
【
図2】
図1の多孔質構造体における、非連続骨部を有しないセル区画部を示す、斜視図である。
【
図3】
図1の多孔質構造体における、非連続骨部を有するセル区画部を示す、斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、
図1の多孔質構造体の一部を、圧縮変形していない自然状態で示す、斜視図であり、
図4(b)は、
図4(a)の状態の多孔質構造体における非連続骨部を説明するための図面である。
【
図5】
図5(a)は、
図1の多孔質構造体の一部を、所定荷重入力方向に圧縮変形している時の状態で示す、斜視図であり、
図5(b)は、
図5(a)の状態の多孔質構造体における非連続骨部を説明するための図面である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の第2実施形態に係る多孔質構造体における、非連続骨部を有するセル区画部を示す、斜視図であり、
図6(b)は、
図6(a)の多孔質構造体における非連続骨部を説明するための図面である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の第2実施形態に係る多孔質構造体における非連続骨部の第1変形例を説明するための図面であり、
図7(b)は、本発明の第2実施形態に係る多孔質構造体における非連続骨部の第2変形例を説明するための図面である。
【
図8】
図8(a)は、本発明の第3実施形態に係る多孔質構造体における、非連続骨部を有するセル区画部を示す、斜視図であり、
図8(b)は、
図8(a)の多孔質構造体における非連続骨部を説明するための図面である。
【
図9】
図9(a)は、本発明の第4実施形態に係る多孔質構造体における、非連続骨部を有するセル区画部を示す、斜視図であり、
図9(b)は、
図9(a)の多孔質構造体における非連続骨部を説明するための図面である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係る多孔質構造体における非連続骨部の第1変形例を説明するための図面である。
【
図11】
図11(a)は、本発明の第5実施形態に係る多孔質構造体における、非連続骨部を有するセル区画部を示す、斜視図であり、
図11(b)は、
図11(a)の多孔質構造体における非連続骨部を説明するための図面である。
【
図12】
図12(a)は、本発明の第6実施形態に係る多孔質構造体における、非連続骨部を有するセル区画部を示す、斜視図であり、
図12(b)は、
図12(a)の多孔質構造体における非連続骨部を説明するための図面である。
【
図13】本発明の第7実施形態に係る多孔質構造体の一部を、圧縮変形していない自然状態で示す、斜視図である。
【
図14】
図13の多孔質構造体の一部を、便宜のため各橋部を引き延ばした状態で示す、斜視図である。
【
図15】
図13の多孔質構造体を、所定荷重入力方向に圧縮変形している時の状態で示す、斜視図である。
【
図16】本発明の第8実施形態に係る多孔質構造体におけるセル区画部を示す、斜視図である。
【
図17】本発明の任意の実施形態に係る多孔質構造体を備えることができる車両用シートを、概略的に示す斜視図である。
【
図18】本発明の任意の実施形態に係る多孔質構造体を製造するために用いることができる、本発明の一実施形態に係る多孔質構造体の製造方法を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法は、クッション材に用いられると好適であり、例えば任意の乗り物用シート及び任意の乗り物用シートパッド(シートパッド)に用いられると好適であり、特に、車両用シート及び車両用シートパッドに用いられると好適なものである。
【0026】
以下、本発明に係る多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0027】
〔多孔質構造体の第1実施形態〕
まず、
図1~
図5を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る多孔質構造体1について、説明する。
図1~
図4は、本実施形態に係る多孔質構造体1の一部を、自然状態で示している。ここで、「自然状態」とは、外力が加わっておらず、ひいては、圧縮変形等していない状態を指す。
図5は、本実施形態に係る多孔質構造体1の一部を、所定荷重入力方向IDに圧縮変形している時の状態で示している。
【0028】
多孔質構造体1は、3Dプリンタによって造形されたものである。多孔質構造体1の製造方法については、後に
図18を参照しつつ詳述する。3Dプリンタを用いて多孔質構造体1を製造することにより、従来のように化学反応により発泡させる工程を経る場合に比べ、製造が簡単になり、かつ、所期したとおりの構成が得られる。また、今後の3Dプリンタの技術進歩により、将来的に、3Dプリンタによる製造を、より短時間かつ低コストで、実現できるようになることが期待できる。また、3Dプリンタを用いて多孔質構造体1を製造することにより、様々な要求特性に対応した多孔質構造体1の構成を、簡単かつ所期したとおりに実現できる。
【0029】
多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されている。
ここで、「可撓性のある樹脂」とは、荷重が加わると変形することができる樹脂を指しており、例えば、エラストマー系の樹脂が好適であり、ポリウレタンがより好適である。ゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムが挙げられる。多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されているので、ユーザからの荷重の付加・解除に応じて、圧縮・復元変形が可能であるので、クッション性を有することができる。
なお、3Dプリンタによる製造のし易さの観点からは、多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂から構成されている場合のほうが、ゴムから構成されている場合よりも、好適である。
また、3Dプリンタによる製造のし易さの観点からは、多孔質構造体1は、その全体が、同じ組成の材料から構成されていると、好適である。ただし、多孔質構造体1は、部位によって異なる組成の材料から構成されてもよい。
なお、多孔質構造体1を3Dプリンタを用いて製造する場合は、多孔質構造体1を構成する材料として、光硬化性ポリウレタン(特に紫外線硬化性ポリウレタン)を原料とする樹脂を使用することができる。光硬化性ポリウレタン(特に紫外線硬化性ポリウレタン)としては、ウレタンアクリレートもしくはウレタンメタクリレートを原料とする樹脂を使用することができる。このような樹脂としては、例えばUS4337130に記載されたものが挙げられる。
【0030】
多孔質構造体1は、多孔質構造体1の骨格をなす骨格部2を備えている。骨格部2は、多数のセル孔Cを区画している。骨格部2は、多孔質構造体1の全体にわたって存在しており、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されている。本実施形態において、多孔質構造体1のうち、骨格部2以外の部分は、空隙であり、言い換えれば、多孔質構造体1は、骨格部2のみからなる。
【0031】
図1に示すように、多孔質構造体1の骨格部2は、その全体にわたって、複数の骨部2Bと、複数の結合部2Jと、を備えている。
図2~
図4に示すように、本実施形態では、骨格部2が備える複数の骨部2Bのうち一部(1つ又は複数)の骨部2Bが、それぞれ、その全体にわたって連続している連続骨部2BAであり、骨格部2が備える複数の骨部2Bのうち残り(1つ又は複数)の骨部2Bが、それぞれ、2つの部分(後述の第1分割骨部51及び第2分割骨部52)に分割された非連続骨部2BBである。各連続骨部2BAは、柱状に構成されている。各骨部2Bは、一方の端部2Beから他方の端部2Beまで延在している。
図3に示すように、第1分割骨部51の一方の端部51rは、骨部2Bの一方の端部2Beを構成しており、以下では、便宜のため、「根元部51r」と呼ぶ。第1分割骨部51の他方の端部51tは、骨格部2の他の部分に連結されておらず、以下では、便宜のため、「先端部51t」と呼ぶ。第2分割骨部52の一方の端部52rは、骨部2Bの他方の端部2Beを構成しており、以下では、便宜のため、「根元部52r」と呼ぶ。第2分割骨部52の他方の端部52tは、骨格部2の他の部分に連結されておらず、以下では、便宜のため、「先端部52t」と呼ぶ。
なお、本明細書において、骨部2Bについて説明する場合、非連続骨部2BBについては、自然状態において第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしが接触しているか否かに関わらず、第1分割骨部51及び第2分割骨部52を合わせて1つの部分として観るものとする。
各結合部2Jは、それぞれ、互いに異なる方向に延在する複数(例えば、3つ)の骨部2Bの延在方向の端部2Beどうしが互いに隣接する箇所で、これらの端部2Beどうしを結合している。
骨格部2は、その全体にわたって、複数の骨部2Bと、複数の結合部2Jと、を備えているので、網目状をなしている。
骨格部2は、その全体が一体に構成されている(すなわち、1部品からなる)と好適であるが、互いに別体の複数部品から構成されてもよい。
【0032】
図1~
図4には、多孔質構造体1の一部分に、骨格部2の骨格線Oを1点鎖線により示している。骨格部2の骨格線Oは、各骨部2Bの骨格線Oと、各結合部2Jの骨格線Oと、を有している。骨部2Bの骨格線Oは、骨部2Bの中心軸線である。骨部2Bの中心軸線は、骨部2Bの延在方向の各点における、骨部2Bの延在方向に垂直な断面において骨部2Bのなす形状の重心点どうしを、滑らかに結んでなる線である。なお、非連続骨部2BBの中心軸線は、第1分割骨部51及び第2分割骨部52を合わせて1つの部分として観た場合の、非連続骨部2BBの延在方向の各点における、非連続骨部2BBの延在方向に垂直な断面において非連続骨部2BBのなす形状の重心点どうしを、滑らかに結んでなる線である。非連続骨部2BBの骨格線O(中心軸線)は、第1分割骨部51及び第2分割骨部52のそれぞれの中心軸線とは異なり得る。第1分割骨部51の中心軸線は、第1分割骨部51の延在方向の各点における、第1分割骨部51の延在方向に垂直な断面において第1分割骨部51のなす形状の重心点どうしを、滑らかに結んでなる線である。第2分割骨部52の中心軸線は、第2分割骨部52の延在方向の各点における、第2分割骨部52の延在方向に垂直な断面において第2分割骨部52のなす形状の重心点どうしを、滑らかに結んでなる線である。骨部2Bの延在方向は、骨部2Bの骨格線O(骨格線Oのうち、骨部2Bに対応する部分。以下同じ。)の延在方向である。結合部2Jの骨格線Oは、当該結合部2Jに結合された各骨部2Bの中心軸線をそれぞれ当該結合部2J内へ滑らかに延長させて互いに連結させてなる、延長線部分である。
多孔質構造体1は、そのほぼ全体にわたって骨格部2を備えているので、通気性を確保しつつ、荷重の付加・解除に応じた圧縮・復元変形が可能であるので、クッション材としての特性が良好になる。
【0033】
本実施形態において、各連続骨部2BAは、それぞれ、柱状であり、また、直線状に延在している(
図1~
図4)。また、本実施形態において、各第1分割骨部51及び各第2分割骨部52は、それぞれ、柱状であり、また、直線状に延在している(
図1~
図4)。これに伴い、各非連続骨部2BBは、それぞれ、略柱状であり、また、略直線状に延在している。
ただし、骨格部2を構成する各連続骨部2BAのうち、一部又は全部の連続骨部2BAが、湾曲しながら延在してもよい。この場合、一部又は全部の連続骨部2BAが湾曲していることで、荷重の入力時において、連続骨部2BAひいては多孔質構造体1の急激な形状変化を防ぎ、局所的な座屈を抑制することができる。同様の観点から、骨格部2を構成する各第1分割骨部51のうち、一部又は全部の第1分割骨部51が、湾曲しながら延在してもよい。また、骨格部2を構成する各第2分割骨部52のうち、一部又は全部の第2分割骨部52が、湾曲しながら延在してもよい。また、骨格部2を構成する各非連続骨部2BBのうち、一部又は全部の非連続骨部2BBが、実質的に湾曲しながら延在してもよい。
【0034】
本例では、骨格部2を構成する各連続骨部2BAが、それぞれほぼ同じ形状及び長さを有している(
図1~
図4)。ただし、本例に限らず、骨格部2を構成する各連続骨部2BAの形状及び/又は長さは、それぞれ同じでなくてもよく、例えば、一部の連続骨部2BAの形状及び/又は長さが他の連続骨部2BAとは異なっていてもよい。この場合、骨格部2のうちの特定の部分の連続骨部2BAの形状及び/又は長さを他の部分とは異ならせることで、意図的に異なる機械特性を得ることができる。
【0035】
本例において、各連続骨部2BAの幅W0(
図4)及び断面積は、連続骨部2BAの全長にわたって一定である(すなわち、連続骨部2BAの延在方向に沿って均一である)(
図1~
図4)。
ここで、連続骨部2BAの断面積は、連続骨部2BAの骨格線O(中心軸線)に垂直な断面の断面積を指す。また、連続骨部2BAの幅W0(
図4)は、連続骨部2BAの骨格線Oに垂直な断面に沿って測ったときの、当該断面における最大幅を指す。
ただし、本明細書で説明する各例において、骨格部2を構成する各連続骨部2BAのうち一部又は全部の連続骨部2BAは、それぞれ、連続骨部2BAの幅W0及び/又は断面積が、連続骨部2BAの延在方向に沿って不均一でもよい。例えば、骨格部2を構成する各連続骨部2BAのうち一部又は全部の連続骨部2BAは、それぞれ、連続骨部2BAの延在方向の両側の端部2Beを含む部分において、連続骨部2BAの幅W0が、連続骨部2BAの延在方向の両端に向かうにつれて徐々に増大又は減少していてもよい。また、骨格部2を構成する各連続骨部2BAのうち一部又は全部の連続骨部2BAは、それぞれ、連続骨部2BAの延在方向の両側の端部2Beを含む部分において、連続骨部2BAの断面積が、連続骨部2BAの延在方向の両端に向かうにつれて徐々に増大又は減少していてもよい。
本明細書において、「徐々に変化(増大又は減少)」とは、途中で一定となることなく常に滑らかに変化(増大又は減少)することを指す。
同様に、本例において、各第1分割骨部51の幅W1(
図4)及び断面積は、第1分割骨部51の全長にわたって一定である(すなわち、第1分割骨部51の延在方向に沿って均一である)(
図1、
図3、
図4)。また、本例において、各第2分割骨部52の幅W2(
図4)及び断面積は、第2分割骨部52の全長にわたって一定である(すなわち、第2分割骨部52の延在方向に沿って均一である)(
図1、
図3、
図4)。
ここで、第1分割骨部51の断面積は、第1分割骨部51の中心軸線に垂直な断面の断面積を指す。第2分割骨部52の断面積は、第2分割骨部52の中心軸線に垂直な断面の断面積を指す。また、第1分割骨部51の幅W1(
図4)は、第1分割骨部51の中心軸線に垂直な断面に沿って測ったときの、当該断面における最大幅を指す。第2分割骨部52の幅W2(
図4)は、第2分割骨部52の幅W2の中心軸線に垂直な断面に沿って測ったときの、当該断面における最大幅を指す。
ただし、本明細書で説明する各例において、骨格部2を構成する各第1分割骨部51のうち一部又は全部の第1分割骨部51は、それぞれ、第1分割骨部51の幅W1及び/又は断面積が、第1分割骨部51の延在方向に沿って不均一でもよい。また、本明細書で説明する各例において、骨格部2を構成する各第2分割骨部52のうち一部又は全部の第2分割骨部52は、それぞれ、第2分割骨部52の幅W2及び/又は断面積が、第2分割骨部52の延在方向に沿って不均一でもよい。
【0036】
本明細書で説明する各例において、骨格部2の構造の簡単化、ひいては、3Dプリンタによる多孔質構造体1の製造のし易さの観点からは、連続骨部2BAの幅W0(
図4)の最小値は、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適である。幅W0の最小値が0.05mm以上の場合、高性能な3Dプリンタの解像度で造形可能であり、0.10mm以上の場合、高性能な3Dプリンタだけでなく汎用の3Dプリンタの解像度でも造形可能である。ここで、「連続骨部2BAの幅W0の最小値」とは、連続骨部2BAのうち幅W0が最小となる延在方向部分における幅W0を指す。
同様に、本明細書で説明する各例において、第1分割骨部51の幅W1(
図4)の最小値は、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適である。また、本明細書で説明する各例において、第2分割骨部52(
図4)の最小値は、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適である。ここで、「第1分割骨部51の幅W1の最小値」とは、第1分割骨部51のうち幅W1が最小となる延在方向部分における幅W1を指す。また、「第2分割骨部52の幅W2の最小値」とは、第2分割骨部52のうち幅W2が最小となる延在方向部分における幅W2を指す。
一方、本明細書で説明する各例において、骨格部2の外縁(外輪郭)形状の精度を向上させる観点や、セル孔C間の隙間(間隔)を小さくする観点や、クッション材としての特性を良好にする観点からは、連続骨部2BAの幅W0の最大値は、2.0mm以下であると好適である。ここで、「連続骨部2BAの幅W0の最大値」とは、連続骨部2BAのうち幅W0が最大となる延在方向部分における幅W0を指す。
同様に、本明細書で説明する各例において、第1分割骨部51の幅W1の最大値は、2.0mm以下であると好適である。また、本明細書で説明する各例において、第2分割骨部52の幅W2の最大値は、2.0mm以下であると好適である。ここで、「第1分割骨部51の幅W1の最大値」とは、第1分割骨部51のうち幅W1が最大となる延在方向部分における幅W1を指す。また、「第2分割骨部52の幅W2の最大値」とは、第2分割骨部52のうち幅W2が最大となる延在方向部分における幅W2を指す。
なお、骨格部2を構成する各連続骨部2BAがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各連続骨部2BAのうち一部の連続骨部2BAのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。また、骨格部2を構成する各第1分割骨部51がこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各第1分割骨部51のうち一部の第1分割骨部51のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。また、骨格部2を構成する各第2分割骨部52がこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各第2分割骨部52のうち一部の第2分割骨部52のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
【0037】
本例において、骨格部2を構成する各連続骨部2BAは、それぞれ柱状であるとともに、それぞれの断面形状が、円形(真円形)である(
図1~
図4)。また、本例において、骨格部2を構成する各第1分割骨部51は、それぞれ柱状であるとともに、それぞれの断面形状が、円形(真円形)である(
図1、
図3、
図4)。また、本例において、骨格部2を構成する各第2分割骨部52は、それぞれ柱状であるとともに、それぞれの断面形状が、円形(真円形)である(
図1、
図3、
図4)。
これにより、骨格部2の構造がシンプルになり、3Dプリンタによる造形がしやすくなる。また、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームでの機械特性を再現しやすい。よって、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。また、このように連続骨部2BA、第1分割骨部51、第2分割骨部52を柱状に構成することにより、仮に連続骨部2BA、第1分割骨部51、第2分割骨部52を薄い膜状の部分に置き換えた場合に比べて、骨格部2の耐久性を向上できる。
なお、各連続骨部2BAの断面形状は、それぞれ、連続骨部2BAの中心軸線(骨格線O)に垂直な断面における形状である。また、各第1分割骨部51の断面形状は、それぞれ、第1分割骨部51の中心軸線に垂直な断面における形状である。また、各第2分割骨部52の断面形状は、それぞれ、第2分割骨部52の中心軸線に垂直な断面における形状である。
なお、本例に限らず、骨格部2を構成する各連続骨部2BAのうち一部の連続骨部2BAのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。また、骨格部2を構成する各第1分割骨部51のうち一部の第1分割骨部51のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。また、骨格部2を構成する各第2分割骨部52のうち一部の第2分割骨部52のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
例えば、本明細書で説明する各例において、骨格部2を構成する各連続骨部2BAのうち全部又は一部の連続骨部2BAは、それぞれの断面形状が、多角形(正三角形、正三角形以外の三角形、四角形等)でもよいし、あるいは、真円形以外の円形(楕円形等)でもよく、その場合でも、本例と同様の効果が得られる。また、本明細書で説明する各例において、骨格部2を構成する各第1分割骨部51のうち全部又は一部の第1分割骨部51は、それぞれの断面形状が、多角形(正三角形、正三角形以外の三角形、四角形等)でもよいし、あるいは、真円形以外の円形(楕円形等)でもよく、その場合でも、本例と同様の効果が得られる。また、本明細書で説明する各例において、骨格部2を構成する各第2分割骨部52のうち全部又は一部の第2分割骨部52は、それぞれの断面形状が、多角形(正三角形、正三角形以外の三角形、四角形等)でもよいし、あるいは、真円形以外の円形(楕円形等)でもよく、その場合でも、本例と同様の効果が得られる。
本明細書で説明する各例において、各連続骨部2BAは、それぞれの断面形状が、その延在方向に沿って均一でもよいし、あるいは、その延在方向に沿って非均一でもよい。また、本明細書で説明する各例において、各第1分割骨部51は、それぞれの断面形状が、その延在方向に沿って均一でもよいし、あるいは、その延在方向に沿って非均一でもよい。また、本明細書で説明する各例において、各第2分割骨部52は、それぞれの断面形状が、その延在方向に沿って均一でもよいし、あるいは、その延在方向に沿って非均一でもよい。
本明細書で説明する各例において、各連続骨部2BAどうしで、断面形状が互いに異なっていてもよい。また、本明細書で説明する各例において、各第1分割骨部51どうしで、断面形状が互いに異なっていてもよい。また、本明細書で説明する各例において、各第2分割骨部52どうしで、断面形状が互いに異なっていてもよい。
【0038】
本明細書で説明する各例において、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合(VB×100/VS [%])は、3~10%であると、好適である。この構成により、骨格部2に荷重が付加されたときに骨格部2に生じる反力、ひいては、骨格部2の硬さ(ひいては多孔質構造体1の硬さ)を、クッション材として、例えばシートパッド(特には車両用のシートパッド)として、良好なものにすることができる。
ここで、「骨格部2の見かけの体積VS」とは、骨格部2の外縁(外輪郭)によって囲まれた内部空間の全体(骨格部2の占める体積と、後述の膜3(
図16)が設けられる場合は膜3の占める体積と、空隙の占める体積との合計)の体積を指している。
骨格部2を構成する材料を同じとして考えたとき、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が高いほど、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)は硬くなる。また、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が低いほど、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)は柔らかくなる。
骨格部2に荷重が付加されたときに骨格部2に生じる反力、ひいては、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)の硬さを、クッション材として、例えばシートパッド(特には車両用のシートパッド)として、良好なものにする観点からは、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が、4~8%であると、より好適である。
なお、骨格部2の見かけの体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合を調整する方法としては、任意の方法を用いてよいが、例えば、骨格部2を構成する一部又は全部の骨部2Bの太さ(断面積)、及び/又は、骨格部2を構成する一部又は全部の結合部Jの大きさ(断面積)を、調整する方法が挙げられる。
【0039】
本明細書で説明する各例において、多孔質構造体1の25%硬度は、60~500Nが好適であり、100~450Nがより好適である。ここで、多孔質構造体1の25%硬度(N)は、インストロン型圧縮試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の環境にて、多孔質構造体を25%圧縮するのに要する荷重(N)を測定して得られる測定値であるものとする。これにより、多孔質構造体1の硬さを、クッション材として、例えばシートパッド(特には車両用のシートパッド)として、良好なものとすることができる。
【0040】
図1~
図4に示すように、本例において、骨格部2は、セル孔Cを内部に区画するセル区画部21を複数(セル孔Cの数だけ)有している。骨格部2は、多数のセル区画部21どうしが連なった構造を有している。各セル区画部21は、それぞれ、複数の骨部2Bと複数の結合部2Jとから構成されている。
図1の例において、骨格部2が備える複数のセル区画部21は、非連続骨部2BBを有しない1つ又は複数(
図1の例では、複数)のセル区画部21Aと、1つ又は複数(
図1の例では、複数)の非連続骨部2BBを有する1つ又は複数(
図1の例では、複数)のセル区画部21Bと、を含んでいる。ただし、本実施形態において、骨格部2が備える各セル区画部21は、それぞれ1つ又は複数の非連続骨部2BBを有するセル区画部21Bであってもよい。1つ又は複数の非連続骨部2BBを有する各セル区画部21Bは、それぞれ、
図3の例のように、1つ又は複数の連続骨部2BAをも有していると、好適である。
図2は、
図1の多孔質構造体1が備える複数のセル区画部21のうち、非連続骨部2BBを有しないセル区画部21Aを示している。このセル区画部21Aは、各骨部2Bが、連続骨部2BAである。
図3は、
図1の多孔質構造体1が備える複数のセル区画部21のうち、1つ又は複数(
図3の例では、複数)の非連続骨部2BBを有するセル区画部21Bを示している。
図3~
図4に示すように、各セル区画部21は、それぞれ、複数(本例では、14つ)の環状部211を有している。各環状部211は、それぞれ、環状(略環状も含む。)に構成されており、それぞれの環状(略環状も含む。)の内周側縁部2111によって、略平坦な仮想面V1を区画している。仮想面V1は、環状部211の内周側縁部2111によって区画された、仮想平面(すなわち、仮想閉平面)である。各セル区画部21のそれぞれにおいて、セル区画部21を構成する複数の環状部211は、それぞれの内周側縁部2111によって区画する仮想面V1どうしが交差しないように互いに連結されている。
セル孔Cは、セル区画部21を構成する複数の環状部211と、これら複数の環状部211がそれぞれ区画する複数の仮想面V1とによって、区画されている。概略的に言えば、環状部211は、セル孔Cのなす立体形状の辺を区画する部分であり、仮想面V1は、セル孔Cのなす立体形状の構成面を区画する部分である。
各環状部211は、それぞれ、複数の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数の結合部2Jと、から構成されている。
互いに連結された一対の環状部211どうしの連結部分は、これら一対の環状部211によって共有される、1つの骨部2Bと、その両側の一対の結合部2Jと、から構成されている。すなわち、各骨部2B及び各結合部2Jは、それぞれに隣接する複数の環状部211によって共有されている。
各仮想面V1は、それぞれ、仮想面V1の一方側の面(仮想面V1の表面)によって、ある1つのセル孔Cの一部を区画しているとともに、当該仮想面V1の他方側の面(仮想面V1の裏面)によって、別のセル孔Cの一部を区画している。言い換えれば、各仮想面V1は、それぞれ、その表裏両側の面によって別々のセル孔Cの一部を区画している。さらに言い換えれば、各仮想面V1は、当該仮想面V1に隣接する一対のセル孔C(すなわち、当該仮想面V1を間に挟んだ一対のセル孔C)によって共有されている。
また、各環状部211は、それぞれ、当該環状部211に隣接する一対のセル区画部21(すなわち、当該環状部211を間に挟んだ一対のセル区画部21)によって共有されている(
図1、
図4)。言い換えれば、各環状部211は、それぞれ、互いに隣接する一対のセル区画部21のそれぞれの一部を構成している。
図1~
図4の例において、多孔質構造体1における各仮想面V1は、膜3(
図16)によって覆われておらず、開放されており、すなわち、開口を構成している。このため、当該仮想面V1を通じて、セル孔Cどうしが連通され、セル孔C間の通気が、可能にされている。これにより、骨格部2の通気性を向上できるとともに、荷重の付加・解除に応じた骨格部2の圧縮・復元変形がし易くなる。
【0041】
図1~
図4に示すように、本例において、各セル区画部21の骨格線Oは、略多面体の形状をなしており、それにより、各セル孔Cが、略多面体の形状をなしている。より具体的に、
図1~
図4の例において、各セル区画部21の骨格線Oは、略ケルビン14面体(切頂8面体)の形状をなしており、それにより、各セル孔Cが、略ケルビン14面体(切頂8面体)の形状をなしている。ケルビン14面体(切頂8面体)は、6つの正4角形の構成面と8つの正6角形の構成面とから構成される、多面体である。骨格部2を構成するセル孔Cは、概略的に言えば、骨格部2の外縁(外輪郭)により囲まれた内部空間を空間充填するように(すなわち、各セル孔Cが無駄な隙間無く敷き詰められるように、さらに言い換えれば、セル孔C間の隙間(間隔)を小さくするように)、規則性をもって配列されている。
【0042】
図1~
図4に示すように、本例において、セル区画部21を構成する複数(本例では、14つ)の環状部211は、それぞれ、1つ又は複数(本例では、6つ)の小環状部211Sと、1つ又は複数(本例では、8つ)の大環状部211Lと、を含んでいる。各小環状部211Sは、それぞれ、その環状(略環状も含む。)の内周側縁部2111によって、略平坦な小仮想面V1Sを区画している。各大環状部211Lは、それぞれ、その環状(略環状も含む。)の内周側縁部2111によって、略平坦かつ小仮想面V1Sよりも面積の大きな大仮想面V1Lを区画している。小仮想面V1S、大仮想面V1Lは、それぞれ、仮想平面(すなわち、仮想閉平面)である。
図2及び
図3から判るように、本例において、大環状部211Lは、その骨格線Oが略正6角形をなしており、それに伴い、大仮想面V1Lも、略正6角形をなしている。また、本例において、小環状部211Sは、その骨格線Oが略正4角形をなしており、それに伴い、小仮想面V1Sも、略正4角形をなしている。このように、本例において、小仮想面V1Sと大仮想面V1Lとは、面積だけでなく、形状(具体的には、構成面の数や形状)も異なる。
各大環状部211Lは、それぞれ、複数(本例では、6つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数(本例では、6つ)の結合部2Jと、から構成されている。各小環状部211Sは、それぞれ、複数(本例では、4つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数(本例では、4つ)の結合部2Jと、から構成されている。
そして、
図1~
図4の例において、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oは、それぞれ、略ケルビン14面体(切頂8面体)をなしている。上述のように、ケルビン14面体(切頂8面体)は、6つの正4角形の構成面と8つの正6角形の構成面とから構成される、多面体である。これに伴い、各セル区画部21によって区画されるセル孔Cも、略ケルビン14面体をなしている。骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oは、空間充填するように互いに連なっており、網目状をなしている。すなわち、複数のセル区画部21の骨格線Oどうしの間には、隙間がない。
【0043】
このように、本例において、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oは、それぞれ略多面体(本例では、略ケルビン14面体)をなしており、それに伴い、セル孔Cが略多面体(本例では、略ケルビン14面体)をなしているため、多孔質構造体1を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になり、より多くのセル孔Cを多孔質構造体1の内部に形成することができる。また、これにより、荷重の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形の挙動が、クッション材として、例えばシートパッド(特には車両用のシートパッド)として、より良好になる。なお、セル孔C間の隙間(間隔)とは、セル孔Cを区画する骨格部2の肉部分(骨部2Bや結合部2J)に相当する。
また、本例において、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oは、空間充填するように互いに連なっているので、多孔質構造体1を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になる。よって、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。
【0044】
セル区画部21の骨格線Oのなす略多面体(ひいては、セル孔Cのなす略多面体)としては、各図の例に限らず、任意のものが可能である。
例えば、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oのなす略多面体(ひいては、セル孔Cのなす略多面体)は、空間充填できる(隙間無く配置できる)ようなものであると好適である。これにより、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oを、空間充填するように互いに連ならせることができるので、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。この場合、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oがなす略多面体(ひいては、セル孔Cのなす略多面体)は、本例のように1種類の略多面体のみを含んでいてもよいし、あるいは、複数種類の略多面体を含んでいてもよい。ここで、多面体に関し、「種類」とは、形状(構成面の数や形状)を指しており、具体的には、形状(構成面の数や形状)が異なる2つの多面体については2種類の多面体として扱うが、形状は同じであり寸法のみが異なる2つの多面体については同じ種類の多面体として扱うことを意味する。骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oのなす略多面体が、空間充填できるとともに1種類の略多面体のみを含む場合の当該略多面体の例としては、略ケルビン14面体の他に、略正3角柱、略正6角柱、略立方体、略直方体、略菱形12面体等が挙げられる。なお、各図の例のように、セル区画部21の骨格線Oの形状を略ケルビン14面体(切頂8面体)とした場合は、他の形状に比べて、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームと同等のクッション材の特性を、最も再現し易い。また、セル区画部21の骨格線Oの形状を略ケルビン14面体(切頂8面体)とした場合は、すべての方向に等しい機械特性を得ることができる。骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oのなす略多面体が、空間充填できるとともに複数種類の略多面体を含む場合の当該略多面体の例としては、略正4面体と略正8面体との組み合わせ、略正4面体と略切頂4面体との組み合わせ、略正8面体と略切頂6面体との組み合わせ等が挙げられる。なお、これらは、2種類の略多面体の組み合わせの例であるが、3種類以上の略多面体の組み合わせも可能である。
また、骨格部2を構成する複数のセル区画部21の骨格線Oのなす略多面体(ひいては、セル孔Cのなす略多面体)は、例えば、任意の略正多面体(全ての面が合同な略正多角形で、全ての頂点において接する面の数が等しい略凸多面体)、略半正多面体(全ての面が略正多角形で、全ての頂点形状が合同(頂点に集まる略正多角形の種類と順序が同じ)な略凸多面体のうち、略正多面体以外)、略角柱、略角錐等が可能である。
また、骨格部2を構成する複数のセル区画部21のうちの一部又は全部のセル区画部21の骨格線Oは、略多面体以外の略立体形状(例えば、略球、略楕円体、略円柱等)をなしていてもよい。ひいては、骨格部2を構成する複数のセル孔Cのうちの一部又は全部のセル孔Cは、略多面体以外の略立体形状(例えば、略球、略楕円体、略円柱等)をなしていてもよい。
【0045】
セル区画部21を構成する複数の環状部211が、大きさの異なる小環状部211Sと大環状部211Lとを含むことにより、骨格部2を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になる。また、本例のように、小環状部211Sと大環状部211Lとの形状(辺の数)が異なる場合、骨格部2を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をさらに小さくすることが可能になる。
ただし、セル区画部21を構成する複数の環状部211は、それぞれ、大きさ及び/又は形状(辺の数)が互いに同じでもよい。セル区画部21を構成する各環状部211の大きさ及び形状(辺の数)が同じである場合、すべての方向に等しい機械特性を得ることができる。
【0046】
本例のように、セル区画部21を構成する各環状部211のうち、一部又は全部(本例では全部)の環状部211の骨格線O(ひいては、セル区画部21を構成する各仮想面V1のうち、一部又は全部(本例では全部)の仮想面V1)が、略多角形状をなすことにより、骨格部2を構成するセル孔Cどうしの間隔をより小さくすることが可能になる。また、荷重の付加・解除に応じた骨格部2の圧縮・復元変形の挙動が、シートパッドとして、特には車両用のシートパッドとして、より良好になる。また、環状部211の形状(ひいては仮想面V1の形状)がシンプルになるので、製造性や特性の調整のし易さを向上できる。なお、骨格部2を構成する各環状部211のうち、少なくとも1つの環状部211(ひいては、骨格部2を構成する各仮想面V1のうち、少なくとも1つの仮想面V1)が、この構成を満たしている場合は、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
なお、骨格部2を構成する各環状部211のうち、少なくとも1つの環状部211の骨格線O(ひいては、骨格部2を構成する各仮想面V1のうち、少なくとも1つの仮想面V1)が、本例のような略正6角形、略正4角形以外の任意の略多角形状、あるいは、略多角形状以外の略平面形状(例えば、略円(略真円、略楕円等))をなしてもよい。環状部211の骨格線Oの形状(ひいては仮想面V1の形状)が略円(略真円、略楕円等)である場合は、環状部211の形状(ひいては仮想面V1の形状)がシンプルになるので、製造性や特性の調整のし易さを向上できるとともに、より均質な機械特性が得られる。例えば、環状部211の骨格線Oの形状(ひいては仮想面V1の形状)が、所定荷重入力方向IDに対して略垂直な方向に長い楕円(横長の楕円)である場合は、所定荷重入力方向IDに略平行な方向に長い楕円(縦長の楕円)である場合に比べて、環状部211が、ひいては、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)が、荷重の入力に対して変形し易くなる(柔らかくなる)。
【0047】
本例において、骨格部2は、直径が5mm以上のセル孔Cを少なくとも1つ有すると、好適である。これにより、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造が実現し易くなる。骨格部2の各セル孔Cの直径が5mm未満であると、骨格部2の構造が複雑になりすぎる結果、多孔質構造体1の3次元形状を表す3次元形状データ(CADデータ等)、あるいは、その3次元形状データに基づき生成される3D造形用データを、コンピュータ上で生成するのが難しくなるおそれがある。
なお、従来のクッション材を構成する多孔質構造体は、化学反応によって発泡させる工程を経て製造されていたため、直径が5mm以上のセル孔Cを形成することは容易でなかった。
また、骨格部2が直径5mm以上のセル孔Cを有することにより、骨格部2の通気性や変形し易さを向上しやすくなる。
このような観点から、骨格部2を構成する全てのセル孔Cの直径が、それぞれ、5mm以上であると、好適である。
セル孔Cの直径が大きくなるほど、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造が実現し易くなり、また、通気性や変形し易さを向上しやすくなる。このような観点から、骨格部2は、少なくとも1つ(好適には全部)のセル孔Cの直径が、より好適には8mm以上、さらに好適には10mm以上であるとよい。
一方、骨格部2のセル孔Cが大きすぎると、骨格部2(ひいては多孔質構造体1)の外縁(外輪郭)形状をきれいに(滑らかに)形成するのが難しくなり、クッション材(例えばシートパッド、特には車両用のシートパッド)の形状精度が低下し外観が悪化するおそれがある。また、クッション材(例えばシートパッド、特には車両用のシートパッド)としての特性も、十分に良好でなくなるおそれがある。よって、外観やクッション材(例えばシートパッド、特には車両用のシートパッド)としての特性を向上させる観点から、骨格部2の各セル孔Cの直径は、好適には30mm未満、より好適には25mm以下、さらに好適には20mm以下であるとよい。
なお、多孔質構造体1は、上記の直径の数値範囲を満たすセル孔Cを多く有するほど、上記の各効果が得られやすくなる。この観点からは、多孔質構造体1を構成する各セル孔Cの直径が、上記の少なくともいずれか1つの数値範囲を満たすと、好適である。同様に、多孔質構造体1を構成する各セル孔Cの直径の平均値が、上記の少なくともいずれか1つの数値範囲を満たすと、より好適である。
なお、セル孔Cの直径は、本例のようにセル孔Cが厳密な球形状とは異なる形状をなす場合、セル孔Cの外接球の直径を指す。
【0048】
骨格部2のセル孔Cが小さすぎると、骨格部2の構造が複雑になりすぎる結果、多孔質構造体1の3次元形状を表す3次元形状データ(CADデータ等)、あるいは、その3次元形状データに基づき生成される3D造形用データを、コンピュータ上で生成するのが難しくなるおそれがあるため、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造がしにくくなる。3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造を容易にする観点から、骨格部2を構成する各セル孔Cのうち、最小の直径を有するセル孔Cの直径が、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適である。最小の直径を有するセル孔Cの直径が、0.05mm以上の場合、高性能な3Dプリンタの解像度で造形可能であり、0.10mm以上の場合、高性能な3Dプリンタだけでなく汎用の3Dプリンタの解像度でも造形可能である。
【0049】
図4~
図5に示すように、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、骨格部2における複数の部分どうしが干渉するように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、骨格部2における当該複数の部分どうしの間に摩擦が発生するようにされている。
図4は、圧縮変形していない自然状態における多孔質構造体1を示しており、
図5は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形している時の状態における多孔質構造体1を示している。
本明細書において、「所定荷重入力方向ID」は、多孔質構造体1に対してユーザ等からの主な荷重が入力される方向として予め設定されたものである。例えば、多孔質構造体1がクッション材(例えば、
図17の例のようなシートパッド)として構成される場合、所定荷重入力方向IDは、当該クッション材の厚さ方向TDであると好適である。
本明細書において、「圧縮変形する時」とは、具体的に、多孔質構造体1のいずれのセルCも完全には潰れていない状態において、圧縮変形をしている期間を指している。
本明細書において、複数の部分どうしが「干渉する」とは、具体的に、例えば、予め互いに接触状態又は非接触状態にあった複数の部分どうしが擦れる(接触したまま動く)こと、あるいは、予め互いに非接触状態にあった複数の部分どうしが当たる(当たった直後は、接触したまま動かなくてもよいし、又は、接触したまま動いてもよい)こと等を、指す。
より具体的に、本実施形態の多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしが擦れるように構成されている(
図4(b)及び
図5(b))。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、当該少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしの間に摩擦が発生するようにされている。多孔質構造体1が自然状態にある時、各非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしは、互いに接触状態又は非接触状態のいずれにあってもよい。3Dプリンタによる造形時において各非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしが固着するのを抑制する観点からは、多孔質構造体1が自然状態にある時に、各非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしが互いに非接触状態にあるようにされていると、好適である。
さらに具体的に、本実施形態では、
図3に示すように、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおいて、第1分割骨部51は、第1側面51Sを有しており、第2分割骨部52は、第2側面52Sを有している。そして、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sどうしが擦れるように構成されている(
図4(b)及び
図5(b))。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sどうしの間に摩擦が発生するようにされている。なお、第1分割骨部51の「第1側面51S」は、第1分割骨部51の側面(第1分割骨部51の表面のうち、延在方向両側の端面を除く部分)のうち、多孔質構造体1が所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に第2分割骨部52と擦れるように構成された部分である。また、第2分割骨部52の「第2側面52S」は、第2分割骨部52の側面(第2分割骨部52の表面のうち、延在方向両側の端面を除く部分)のうち、多孔質構造体1が所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に第1分割骨部51と擦れるように構成された部分である。
図3の例のように、各非連続骨部2BBの延在方向どうしは、略平行であると好適である。
図3の例では、セル区画部21Bにおける互いに略平行な6つの骨部2Bが、それぞれ非連続骨部2BBであり、多孔質構造体1が、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、各非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sどうしが擦れるように構成されている。ただし、セル区画部21Bにおける互いに略平行な6つの骨部2Bのうち、一部(1つ又は複数)の骨部2Bがそれぞれ非連続骨部2BBであり、多孔質構造体1が、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sどうしが擦れるように構成されてもよい。また、
図3の例のように、所定荷重入力方向IDは、各非連続骨部2BBの延在方向に略平行であると好適である。
【0050】
本実施形態によれば、上述のように、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、骨格部2における複数の部分どうしが干渉するように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、骨格部2における当該複数の部分どうしの間に摩擦が発生するようにされている。より具体的に、本実施形態の多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしが擦れるように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、当該少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしの間に摩擦が発生するようにされている。さらに具体的に、本実施形態では、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sどうしが擦れるように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sどうしの間に摩擦が発生するようにされている。
当該摩擦の発生により、多孔質構造体1の粘性を高めることができ、ひいては、本実施形態の多孔質構造体の動的特性(具体的には振動減衰特性(特にはヒステリシス減衰特性))を、上述の従来の多孔質構造体の動的特性とは異ならせることが可能となる。また、骨格部2のうち互いに干渉させる部分の数や面積等を調整することにより、摩擦の量等を調整することができ、ひいては、多孔質構造体1の粘性ひいては動的特性を調整することができる。よって、従来よりも、要求に応じて、より様々な動的特性を実現可能である。このように、本実施形態の多孔質構造体1によれば、多孔質構造体1の動的特性の調整の自由度を向上できる。このことは、多孔質構造体1が、使用時に振動が入力される車両用シートパッドに用いられる場合に特に好適である。
【0051】
多孔質構造体1は、
図1~
図5に示す第1実施形態の構成に限らず、様々な構成を採用することにより、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、骨格部2における複数の部分どうしが干渉するように構成されることができる。以下、多孔質構造体1の他の実施形態について、
図1~
図5に示す第1実施形態とは異なる点を中心に、例示説明する。
図1~
図5の実施形態と同様の点については、基本的に説明を省略する。
以下の多孔質構造体1の構成の説明においては、特に断りがない限り、多孔質構造体1が自然状態にある時における構成について言及するものとする。
以下に説明する各実施形態の多孔質構造体1は、いずれも、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、骨格部2における複数の部分どうしが干渉するように構成されており、そのため、上述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
〔多孔質構造体の第2実施形態〕
図6~
図7は、本発明の第2実施形態に係る多孔質構造体1について説明するための図面である。
図6は、本発明の第2実施形態に係る多孔質構造体1の一例について説明するための図面であり、
図7(a)~
図7(b)は、それぞれ、本発明の第2実施形態に係る多孔質構造体1の第1~第2変形例について説明するための図面である。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしが擦れるように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、当該少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしの間に摩擦が発生するようにされている。
さらに具体的には、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおいて、第1分割骨部51は、第1側面51Sを有しており、第2分割骨部52は、第2側面52Sを有しており、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sどうしが擦れるように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sどうしの間に摩擦が発生するようにされている。
第1実施形態(
図1~
図5)においては、上述のとおり、少なくとも1つ(図の例では、全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52が、それぞれ柱状に構成されている。これに対し、第2実施形態(
図6~
図7)においては、少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52のうち少なくとも一方が、帯状に構成されている。より具体的に、
図6~
図7の各例では、少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52が、それぞれ帯状に構成されている。
図6(b)に拡大して示すように、上記少なくとも1つの非連続骨部2BBにおいて、第1分割骨部51の側面は、互いに反対側に位置する一対の幅広側面511と、互いに反対側に位置するとともにそれぞれ一対の幅広側面511よりも幅の狭い、一対の狭幅側面512と、を有している。第1分割骨部51の第1側面51Sは、第1分割骨部51の一対の幅広側面511のうちのいずれか一方である。同様に、上記少なくとも1つの非連続骨部2BBにおいて、第2分割骨部52の側面は、互いに反対側に位置する一対の幅広側面521と、互いに反対側に位置するとともにそれぞれ一対の幅広側面521よりも幅の狭い、一対の狭幅側面522と、を有している。第2分割骨部52の第2側面52Sは、第2分割骨部52の一対の幅広側面521のうちのいずれか一方である。
ただし、図示は省略するが、第2実施形態においては、少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52のうち一方のみが、帯状に構成されてもよい。その場合、当該非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52のうち他方は、例えば、柱状に構成される。
第2実施形態によれば、少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52のうち少なくとも一方が、帯状に構成されており、ひいては、幅広に構成されているので、第1実施形態に比べて、位置ずれ等の発生時においても、第1側面51S及び第2側面52Sどうしが、より確実に擦れるようにすることができる。
また、
図6~
図7の各例によれば、少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52が、それぞれ帯状に構成されているので、第1実施形態に比べて、第1側面51S及び第2側面52Sどうしの接触面積を増やすことができ、ひいては、第1側面51S及び第2側面52Sどうしの間に発生する摩擦の量を増やすことができる。
【0053】
第2実施形態においては、上記少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBにおける第1側面51S及び第2側面52Sが、それぞれ、湾曲しておらず、略平坦であると好適である。この場合、第1側面51S及び第2側面52Sは、それぞれ、凹凸のない滑らかな面(平滑面)であってもよいし、あるいは、後述する
図8の実施形態のように複数の突起Pを有することにより凹凸があってもよい。
ただし、上記少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBにおける第1側面51S及び第2側面52Sは、それぞれ、同じ向きに湾曲していてもよい。この場合も、第1側面51S及び第2側面52Sは、それぞれ、凹凸のない滑らかな面(平滑面)であってもよいし、あるいは、後述する
図8の実施形態のように複数の突起Pを有することにより凹凸があってもよい。
【0054】
図6の例において、上記少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBは、第1分割骨部51の第1側面51Sの幅が、第1分割骨部51の根元部51rから第1分割骨部51の先端部51tに向かうにつれて徐々に増大しており、また、第2分割骨部52の第2側面52Sの幅が、第2分割骨部52の根元部52rから第2分割骨部52の先端部52tに向かうにつれて徐々に増大している。
ただし、第1側面51S及び第2側面52Sの形状は、それぞれ任意である。
例えば、
図7(a)に示す第1変形例のように、上記少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBは、第1分割骨部51の第1側面51Sの幅が、第1分割骨部51の根元部51rから第1分割骨部51の先端部51tに向かうにつれて一定であり、また、第2分割骨部52の第2側面52Sの幅が、第2分割骨部52の根元部52rから第2分割骨部52の先端部52tに向かうにつれて一定であるようにされてもよい。
あるいは、
図7(b)に示す第2変形例のように、上記少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBは、第1分割骨部51の第1側面51Sの幅が、第1分割骨部51の根元部51rから第1分割骨部51の先端部51tに向かうにつれて徐々に増大し、また、第2分割骨部52の第2側面52Sの幅が、第2分割骨部52の根元部52rから第2分割骨部52の先端部52tに向かうにつれて徐々に減少するようにされてもよい。
【0055】
〔多孔質構造体の第3実施形態〕
図8は、本発明の第3実施形態に係る多孔質構造体1について説明するための図面である。
第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしが擦れるように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、当該少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしの間に摩擦が発生するようにされている。
さらに具体的には、第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおいて、第1分割骨部51は、第1側面51Sを有しており、第2分割骨部52は、第2側面52Sを有しており、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sどうしが擦れるように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sどうしの間に摩擦が発生するようにされている。
第1実施形態(
図1~
図5)においては、少なくとも1つ(図の例では、全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sが、それぞれ凹凸の無い滑らかな面(平滑面)である。これに対し、第3実施形態(
図8)においては、少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sのうち少なくとも一方が、複数の突起Pを有している。それにより、第1側面51S及び第2側面52Sのうち当該少なくとも一方の表面粗さが、第1分割骨部51の表面のうち第1側面51S以外の部分、及び、第2分割骨部52の表面のうち第2側面52S以外の部分よりも、高くされている。
第3実施形態によれば、少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sのうち少なくとも一方が、複数の突起Pを有しており、それにより、第1側面51S及び第2側面52Sのうち当該少なくとも一方の表面粗さが、第1分割骨部51の表面のうち第1側面51S以外の部分、及び、第2分割骨部52の表面のうち第2側面52S以外の部分よりも、高くされているので、第1実施形態に比べて、第1側面51S及び第2側面52Sどうしの間に発生する摩擦の大きさを大きくすることができる。
【0056】
各突起Pの高さは、第1側面51S及び第2側面52Sどうしが擦れやすくする観点から、例えば、2mm以下であると好適であり、1mm以下であるとより好適である。また、各突起Pの高さは、第1側面51S及び第2側面52Sどうしの間に発生する摩擦の大きさを大きくする観点から、例えば、0.1mm以上であると好適であり、0.3mm以上であるとより好適である。なお、「突起Pの高さ」は、突起Pの根元から突起Pの先端までの高さを指す。
【0057】
〔多孔質構造体の第4実施形態〕
図9~
図10は、本発明の第4実施形態に係る多孔質構造体1について説明するための図面である。
図9は、本発明の第4実施形態に係る多孔質構造体1の一例について説明するための図面であり、
図10は、それぞれ、本発明の第4実施形態に係る多孔質構造体1の第1変形例について説明するための図面である。
第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしが擦れるように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、当該少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしの間に摩擦が発生するようにされている。
さらに具体的には、第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおいて、第1分割骨部51は、第1側面51Sを有しており、第2分割骨部52は、第2側面52Sを有しており、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sどうしが擦れるように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sどうしの間に摩擦が発生するようにされている。
第1実施形態(
図1~
図5)においては、上述のとおり、少なくとも1つ(図の例では、全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52が、それぞれ柱状に構成されている。これに対し、第4実施形態(
図9~
図10)においては、少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBにおいて、第2分割骨部52の第2側面52Sは、少なくとも多孔質構造体1が所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、第1分割骨部51の第1側面51Sを、第1分割骨部51の周方向に沿って囲うように構成されている。これにより、多孔質構造体1が所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時、第1側面51Sは、第2側面52Sによって案内されながら、第2側面52S上を摺動する。ここで、「第1分割骨部51の周方向」とは、第1分割骨部51の中心軸線(
図9(b)及び
図10において一点鎖線で示す。)の周りの回転方向である。
図9及び
図10の各例において、第1分割骨部51は、柱状に構成されており、それにより、第1側面51Sが、凸条面をなしている。一方、
図9及び
図10の例において、第2分割骨部52の第2側面52Sは、第1分割骨部51を第1分割骨部51の周方向に沿って囲うことができるように窪んでいるとともに第2分割骨部52の延在方向に沿って延在する凹条面をなしている。
なお、第2分割骨部52の第2側面52S(ひいては第2分割骨部52)は、
図9及び
図10の各例のように、第1分割骨部51の第1側面51Sを、第1分割骨部51の周方向の一部のみにわたって囲うように非環状に構成されてもよいし、あるいは、第1分割骨部51の第1側面51Sを、第1分割骨部51の全周にわたって囲うように環状に構成されてもよい。
なお、多孔質構造体1が自然状態にある時においては、第2分割骨部52の第2側面52Sは、
図9の例のように、第1分割骨部51の第1側面51Sを囲っていてもよいし、あるいは、第1分割骨部51の第1側面51Sを囲っていなくてもよい。
第4実施形態によれば、少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBにおいて、第2分割骨部52の第2側面52Sは、少なくとも多孔質構造体1が所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、第1分割骨部51の第1側面51Sを、第1分割骨部51の周方向に沿って囲うように構成されているので、第1実施形態に比べて、第1側面51S及び第2側面52Sどうしの接触面積を増やすことができ、ひいては、第1側面51S及び第2側面52Sどうしの間に発生する摩擦の量を増やすことができる。また、多孔質構造体1が所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時、第1側面51Sは、第2側面52Sによって案内されながら、第2側面52S上を摺動するので、第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしがより安定的に擦れることができる。
【0058】
図9の例において、上記少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBは、第1分割骨部51が円柱状であり、それにより、第1側面51Sが、円筒形状に沿った凸条面をなしており、また、第2分割骨部52の第2側面52Sが、円筒形状に沿った凹条面をなしている。
ただし、第1側面51S及び第2側面52Sの形状は、それぞれ任意である。
例えば、
図10に示す第1変形例のように、上記少なくとも1つ(好適には、全て)の非連続骨部2BBは、第1分割骨部51が四角柱状であり、それにより、第1側面51Sが、四角筒形状に沿った凸条面をなしており、また、第2分割骨部52の第2側面52Sが、四角筒形状に沿った凹条面をなしていてもよい。
【0059】
〔多孔質構造体の第5実施形態〕
図11は、本発明の第5実施形態に係る多孔質構造体1について説明するための図面である。
第5実施形態においても、第1実施形態と同様に、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしが擦れるように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、当該少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしの間に摩擦が発生するようにされている。
第5実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1分割骨部51及び第2分割骨部52は、それぞれ柱状であると好適である。
第1実施形態(
図1~
図5)においては、上述のとおり、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52の第2側面52Sどうしが擦れるように構成されている。これに対し、第5実施形態(
図11)においては、少なくとも1つ(図の例では、全て)の非連続骨部2BBにおいて、第1分割骨部51は、第1分割骨部51の延在方向の端部(先端部)51tにおいて、第1分割骨部51の延在方向に垂直な方向に対して傾斜した第1端面51Eを有しており、第2分割骨部52は、第2分割骨部52の延在方向の端部(先端部)52tにおいて、第2分割骨部52の延在方向に垂直な方向に対して傾斜した第2端面52Eを有しており、第1端面51E及び第2端面52Eどうしは、互いに略平行であり、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、当該少なくとも1つ(図の例では、全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1端面51E及び第2分割骨部52の第2端面52Eどうしが擦れるように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、当該少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の第1端面51E及び第2分割骨部52の第2端面52Eどうしの間に摩擦が発生するようにされている。なお、「第1分割骨部51の延在方向」は、第1分割骨部51の中心軸線(
図11(b)において一点鎖線で示す。)に平行な方向である。また、「第2分割骨部52の延在方向」は、第2分割骨部52の中心軸線(
図11(b)において一点鎖線で示す。)に平行な方向である。
多孔質構造体1が自然状態にある時、第1端面51E及び第2端面52Eどうしは、
図11に示すように、互いに対向していると、好適である。多孔質構造体1が自然状態にある時、第1端面51E及び第2端面52Eどうしは、
図11の例のように、互いに非接触状態にあってもよいし、あるいは、互いに接触状態にあってもよい。
第5実施形態によれば、少なくとも1つ(図の例では、全て)の非連続骨部2BBにおいて、第1分割骨部51は、第1分割骨部51の延在方向の端部(先端部)51tにおいて、第1分割骨部51の延在方向に垂直な方向に対して傾斜した第1端面51Eを有しており、第2分割骨部52は、第2分割骨部52の延在方向の端部(先端部)52tにおいて、第2分割骨部52の延在方向に垂直な方向に対して傾斜した第2端面52Eを有しており、第1端面51E及び第2端面52Eどうしは、互いに略平行であるので、第1端面51E及び第2端面52Eどうしを擦れやすくすることができ、また、第1端面51E及び第2端面52Eどうしの接触面積を大きく確保することができ、ひいては、第1側面51S及び第2側面52Sどうしの間に発生する摩擦の量を大きく確保することができる。
【0060】
〔多孔質構造体の第6実施形態〕
図12は、本発明の第6実施形態に係る多孔質構造体1について説明するための図面である。
第6実施形態においても、第1実施形態と同様に、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしが擦れるように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、当該少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしの間に摩擦が発生するようにされている。
第6実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1分割骨部51及び第2分割骨部52は、それぞれ柱状であると好適である。
第1実施形態(
図1~
図5)においては、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の延在方向と第2分割骨部52の延在方向とは、互いに平行である。これに対し、第6実施形態(
図12)においては、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の延在方向と第2分割骨部52の延在方向とは、互いに非平行である。そして、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおいて、第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52のエッジ部52Dどうしが擦れる(このとき、エッジ部52Dが第1側面51Sを引っ掻く、あるいは、第1側面51Sがエッジ部52Dを引っ掻く)ように構成されている。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、当該少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1側面51S及びエッジ部52Dどうしの間に摩擦が発生するようにされている。なお、「第1分割骨部51の延在方向」は、第1分割骨部51の中心軸線(
図12(b)において一点鎖線で示す。)に平行な方向である。また、「第2分割骨部52の延在方向」は、第2分割骨部52の中心軸線(
図12(b)において一点鎖線で示す。)に平行な方向である。また、本実施形態において、「第1分割骨部51の第1側面51S」は、第1分割骨部51の側面のうち、第2分割骨部52のエッジ部52Dと擦れるように構成された部分を指す。また、第2分割骨部52の「エッジ部52D」は、第2分割骨部52の側面と第2分割骨部52の先端部52t側の端面との間のエッジ部を指す。
多孔質構造体1が自然状態にある時、第1側面51S及びエッジ部52Dどうしは、
図12の例のように、互いに接触状態にあってもよいし、あるいは、互いに非接触状態にあってもよい。
第6実施形態によれば、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51の延在方向と第2分割骨部52の延在方向とは、互いに非平行であり、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおいて、第1分割骨部51の第1側面51S及び第2分割骨部52のエッジ部52Dどうしが擦れる(このとき、エッジ部52Dは、第1側面51Sを引っ掻く)ように構成されているので、第1側面51S及びエッジ部52Dどうしの間に発生する摩擦の量を大きく確保することができる。
【0061】
〔多孔質構造体の第7実施形態〕
図13~
図15は、本発明の第7実施形態に係る多孔質構造体1について説明するための図面である。
図13は、本発明の第7実施形態に係る多孔質構造体1の一部を、圧縮変形していない自然状態で示す、斜視図である。
図14は、
図13の多孔質構造体1の一部を、便宜のため、後述の各橋部23を引き延ばした状態で示す、斜視図である。
図15は、
図13の多孔質構造体1を、所定荷重入力方向IDに圧縮変形している時の状態で示す、斜視図である。
第1実施形態(
図1~
図5)においては、上述のとおり、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、少なくとも1つ(好適には全て)の非連続骨部2BBにおける第1分割骨部51及び第2分割骨部52どうしが擦れるように構成されている。これに対し、第7実施形態(
図13~
図15)においては、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、骨格部2が備える複数のセル区画部21のうち2つ以上のセル区画部21どうし(具体的には、当該2つ以上のセル区画部21における互いに隣接するセル区画部21どうし)が干渉するように構成されている。より具体的には、多孔質構造体1が所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、当該2つ以上のセル区画部21において予め互いに非接触状態にあった複数の部分どうしが、当たる(当たった直後は、当該複数の部分どうしは、接触したまま動かなくてもよいし、又は、接触したまま動いてもよい)。これにより、多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDに圧縮変形する時に、当該2つ以上のセル区画部21どうしの間に摩擦が発生するようにされている。
第1実施形態(
図1~
図5)では、上述のとおり、各環状部211は、それぞれ、当該環状部211に隣接する一対のセル区画部21(すなわち、当該環状部211を間に挟んだ一対のセル区画部21)によって共有されており、言い換えれば、互いに隣接する一対のセル区画部21どうしが、1つの環状部211を共有している。一方、
図13~
図15の例では、互いに干渉するように構成された、互いに隣接する一対のセル区画部21どうしは、1つの環状部211を共有しておらず、互いに隣接する部分に、それぞれ別々の環状部211を1つずつ有しており(
図14)、これら一対の環状部211どうしが干渉する(当たる)ように構成されている。
多孔質構造体1が自然状態にある時、互いに干渉するように構成された当該複数の部分(
図13~
図15の例では、一対の環状部211)は、非接触状態で対向していると、好適である。
図13~
図15の例では、骨格部2が備える複数のセル区画部21は、それぞれ、非連続骨部2BBを有しないセル区画部21Aであるが、骨格部2が備える複数のセル区画部21のうち一部又は全部が、本明細書で説明する任意の実施形態における非連続骨部2BBを1つ又は複数有するセル区画部21Bであってもよい。
第7実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0062】
第7実施形態において、骨格部2は、互いに干渉するように構成された上記2つ以上のセル区画部21どうしを連結する1つ又は複数の橋部23を、さらに備えていると、好適である。これにより、当該2つ以上のセル区画部どうしを、橋部23を介して、一体化することができる。ひいては、多孔質構造体1が自然状態にある時において、上記2つ以上のセル区画部21どうしの位置関係を、橋部23により、所期したとおりに維持することができる。また、多孔質構造体1が3Dプリンタによって造形しやすくなる。
各橋部23は、柱状に構成されていると好適である。橋部23を変形しやすくし、それにより、上記2つ以上のセル区画部21どうしを干渉させやすくする観点から、各橋部23の断面積(橋部23の中心軸線に対し垂直な方向の断面積)は、骨部2Bの断面積の最小値よりも小さいと好適であるが、骨部2Bの断面積の最小値以上であってもよい。
図13~
図15の例において、各橋部23は、それぞれ、互いに隣接する一対のセル区画部21における一対の結合部2Jどうしを連結している(
図14)。これにより、各橋部23は、多孔質構造体1が自然状態にある時に、より安定的に、当該一対のセル区画部21どうしの位置関係を保持することができる。ただし、各橋部23は、それぞれ、互いに隣接する一対のセル区画部21における任意の部分を連結してよい。
【0063】
なお、上述した各実施形態どうしは、適宜組み合わせてもよい。
例えば、多孔質構造体1は、異なる複数の非連続骨部2BBにおいて、それぞれ第1~第6実施形態のうち別々の実施形態における非連続骨部2BBの構成を採用してもよい。
また、多孔質構造体1は、第1~第6実施形態のうち1つ又は複数の実施形態における非連続骨部2BBの構成と、第7実施形態における構成とを、兼ね備えてもよい。
また、多孔質構造体1は、同じ1つの非連続骨部2BBにおいて、第3実施形態における複数の突起Pを、第1実施形態、第2実施形態、及び、第4実施形態における第1側面51S及び/又は第2側面52Sに適用してもよいし、あるいは、第5実施形態の第1端面51E及び/又は第2端面52Eに適用してもよいし、あるいは、第6実施形態の第1側面51Sに適用してもよい。
【0064】
〔多孔質構造体の第8実施形態〕
図16は、本発明の第8実施形態に係る多孔質構造体1について説明するための図面である。第8実施形態で説明する構成は、上述した第1~第7実施形態に係る多孔質構造体1に好適に適用することができる。
本実施形態において、多孔質構造体1は、骨格部2に加えて、1つ又は複数の膜3を備えている。
膜3は、環状部211の環状の内周側縁部2111によって区画された仮想面V1上を延在しており、それにより、当該環状部211によって区画された仮想面V1を覆っている。
図16の例の多孔質構造体1においては、骨格部2を構成する各仮想面V1のうちの少なくとも1つが、膜3で覆われている。膜3は、骨格部2と同じ材料からなり、骨格部2と一体に構成されている。
図16の例において、膜3は、平坦に構成されている。ただし、膜3は、非平坦(例えば、湾曲状(曲面状))に構成されてもよい。
膜3は、連続骨部2BAの幅W0(
図4)よりも小さな厚さを有すると、好適である。
膜3によって、仮想面V1を間に挟んだ2つのセル孔Cどうしが、仮想面V1を通じた連通がなくなり、仮想面V1を介した通気ができなくなるため、ひいては、多孔質構造体1の全体としての通気性が低下する。多孔質構造体1を構成する各仮想面V1のうち、膜3で覆われたものの数を調整することにより、多孔質構造体1の全体としての通気性を調整でき、要求に応じて様々な通気性レベルを実現可能である。多孔質構造体1を構成する各仮想面V1の全てが膜3で覆われているのは好ましくなく、言い換えれば、多孔質構造体1を構成する各仮想面V1のうち少なくとも1つが膜3で覆われておらず開放されていることが好ましい。
なお、従来の多孔質構造体は、上述のとおり、化学反応によって発泡させる工程を経て製造されていたため、各セルどうしを連通する連通孔における膜を、所期したとおりの位置及び個数で形成することは難しかった。本例のように、多孔質構造体1を3Dプリンタで製造する場合は、3Dプリンタに読み込まれる3D造形用データに、予め膜3の情報も含めることで、確実に、所期したとおりの位置及び個数で膜3を形成することが可能である。
骨格部2を構成する各小仮想面V1Sのうちの少なくとも1つが、膜3で覆われていてもよい。かつ/又は、骨格部2を構成する各大仮想面V1Lのうちの少なくとも1つが、膜3で覆われていてもよい。
骨格部2が非連続骨部2BBを有する場合、膜3によって非連続骨部2BBの擦れ動作を阻害するのを防止する観点から、各膜3は、非連続骨部2BBを有しない環状部211(すなわち、全ての骨部2Bが連続骨部2BAである環状部211)によって区画された仮想面V1を覆っていると、好適である。
【0065】
〔多孔質構造体を備えたシートパッド〕
上述のように、本発明の各実施形態に係る多孔質構造体1は、シートパッド(特には車両用シートパッド)に用いられることができる。
以下、
図17を参照しつつ、本発明の任意の実施形態に係る多孔質構造体1を備え得るシートパッド302の一例について説明する。
図17は、本発明の様々な実施形態に係る多孔質構造体1から構成されることができるシートパッド302(車両用シートパッド)を備えた車両用シート300の一例を、概略的に示す斜視図である。
図17に破線で示すように、車両用シート300は、着座者が着座するためのクッションパッド310と、着座者の背中を支持するためのバックパッド320と、を備えている。クッションパッド310とバックパッド320とは、それぞれ、シートパッド302から構成されている。以下では、クッションパッド310又はバックパッド320を、単に「シートパッド302」と呼ぶことがある。クッションパッド310とバックパッド320とは、それぞれ、本明細書で説明する任意の実施形態の多孔質構造体1から構成されることができる。車両用シート300は、クッションパッド310及びバックパッド320のそれぞれを構成するシートパッド302に加え、例えば、シートパッド302の表側(着座者側)を覆う表皮330と、クッションパッド310を下側から支持するフレーム(図示せず)と、バックパッド320の裏側に設置されるフレーム(図示せず)と、バックパッド320の上側に設置され、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト340と、を備えることができる。表皮330は、例えば、通気性のよい材料(布等)から構成される。
図17の例において、クッションパッド310とバックパッド320とは、互いに別体に構成されているが、互いに一体に構成されてもよい。
また、
図17の例において、ヘッドレスト340は、バックパッド320とは別体に構成されているが、ヘッドレスト340は、バックパッド320と一体に構成されてもよい。
本明細書では、
図17に表記するとおり、車両用シート300(ひいてはシートパッド302)に着座した着座者から観たときの「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の各方向を、それぞれ単に「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」などという。
【0066】
クッションパッド310は、着座者の臀部及び大腿部を下側から支持するように構成されたメインパッド部311と、メインパッド部311の左右両側に位置し、メインパッド部311よりも上側へ盛り上がり、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部312と、を有している。メインパッド部311は、着座者の大腿部を下側から支持するように構成された、腿下部311tと、腿下部311tに対し後側に位置し、着座者の尻部を下側から支持するように構成された尻下部311hと、からなる。
【0067】
バックパッド320は、着座者の背中を後側から支持するように構成されたメインパッド部321と、メインパッド部321の左右両側に位置し、メインパッド部321よりも前側へ盛り上がり、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部322と、を有している。
【0068】
本明細書において、「シートパッド(302)の延在方向(LD)」とは、シートパッド302の左右方向及び厚さ方向(TD)に対して垂直な方向であり、クッションパッド310の場合は前後方向を指しており(
図17)、バックパッド320の場合はバックパッド320のメインパッド部321の下面から上面までにわたってメインパッド部321が延在する方向を指している(
図17)。
また、「シートパッド(302)の厚さ方向(TD)」とは、クッションパッド310の場合、上下方向を指しており(
図17)、バックパッド320の場合、バックパッド320のメインパッド部321の着座者側の面(表面)FSから裏面BSまでにわたってメインパッド部321が延在する方向である(
図17)。
また、シートパッド(302)の「着座者側の面(表面、FS)」は、クッションパッド310の場合は上面を指しており(
図17)、バックパッド320の場合は前面を指している(
図17)。シートパッド(302)の「裏面(BS)」は、シートパッド(302)の着座者側の面(FS)とは反対側の面であり、クッションパッド310の場合は下面を指しており(
図17)、バックパッド320の場合は後面を指している(
図17)。シートパッド(302)の「側面(SS)」は、シートパッド(302)の着座者側の面(FS)と裏面(BS)との間の面であり、クッションパッド310の場合は前面、後面、左面及び右面のうちいずれかを指しており(
図17)、バックパッド320の場合は下面、上面、左面及び右面のうちいずれかを指している(
図17)。
【0069】
多孔質構造体1は、所定荷重入力方向IDが、シートパッド302の厚さ方向TDとなるように指向されていると、好適である。
【0070】
なお、
図17に示す例では、多孔質構造体1は、シートパッド302のクッションパッド310、バックパッド320のそれぞれの全体を構成している。
ただし、多孔質構造体1は、シートパッド302のクッションパッド310、バックパッド320、又は、ヘッドレスト340のいずれか一つのみを構成してもよい。
また、多孔質構造体1は、シートパッド302のクッションパッド310の一部のみ、バックパッド320の一部のみ、かつ/又は、ヘッドレスト340の一部のみを、構成してもよい。これにより、多孔質構造体1の大きさを小さくすることができ、ひいては、比較的小型の3Dプリンタによっても製造することが可能になる。その場合、シートパッド302のクッションパッド310、バックパッド320、ヘッドレスト340のうち、多孔質構造体1によって構成された部分以外の部分については、例えば金型成形又はスラブ成形等において化学反応により発泡させる工程を経て製造されることにより、上述したような従来の一般的な多孔質構造体(発泡体)で構成するとよい。例えば、図示は省略するが、シートパッド302のクッションパッド310、バックパッド320、かつ/又は、ヘッドレスト340は、それぞれ、互いに別体に構成された複数のクッション部を備え、当該複数のクッション部のうち一部(1つ又は複数)のクッション部のみが、多孔質構造体1から構成され、他のクッション部が、例えば金型成形又はスラブ成形等において化学反応により発泡させる工程を経て製造された多孔質構造体(発泡体)からなってもよい。より具体的には、例えば、シートパッド302のクッションパッド310、バックパッド320、かつ/又は、ヘッドレスト340は、それぞれ、1つ又は複数の多孔質構造体1からなる挿填体と、当該1つ又は複数の挿填体とは別体に構成され、当該1つ又は複数の挿填体を収容する凹部を有し、例えば金型成形又はスラブ成形等において化学反応により発泡させる工程を経て製造された多孔質構造体(発泡体)からなる、本体部と、を備えてもよい。
あるいは、シートパッド302のクッションパッド310、バックパッド320、かつ/又は、ヘッドレスト340は、互いに別体に構成された複数のクッション部からなり、当該複数のクッション部のそれぞれが、多孔質構造体1から構成されてもよい。これによっても、多孔質構造体1の大きさを小さくすることができ、ひいては、比較的小型の3Dプリンタによっても製造することが可能になる。
多孔質構造体1は、クッションパッド310又はバックパッド320のメインパッド部311、321の少なくとも一部を構成していると、好適である。
【0071】
〔多孔質構造体の製造方法〕
つぎに、
図18を参照しつつ、本発明の多孔質構造体1の製造方法を例示説明する。以下に説明する方法は、多孔質構造体1を3Dプリンタを用いて製造する方法であり、本明細書で説明する任意の実施形態の多孔質構造体1を製造するために好適に用いることができる。
図18は、シートパッドを構成する多孔質構造体1を製造する様子を示している。
まず、事前に、コンピュータを用いて、多孔質構造体1の3次元形状を表す3次元形状データ(例えば、3次元CADデータ)を作成する。
つぎに、コンピュータを用いて、上記3次元形状データを、3D造形用データ500に変換する。3D造形用データ500は、3Dプリンタ400の造形部420が造形を行う際に3Dプリンタ400の制御部410に読み込まれるものであり、制御部410が、造形部420に、多孔質構造体1を、造形させるように構成されている。3D造形用データ500は、例えば、多孔質構造体1の各層の2次元形状を表すスライスデータを含む。
つぎに、3Dプリンタ400によって多孔質構造体1の造形を行う。3Dプリンタ400は、例えば、光造形方式、粉末焼結積層方式、熱溶融積層方式(FDM方式)、インクジェット方式等、任意の造形方式を用いて造形を行ってよい。生産性の観点からは、光造形方式が好適である。
図18では、光造形方式によって造形を行う様子を示している。
3Dプリンタ400は、例えば、CPU等によって構成された制御部410と、制御部410による制御に従って造形を行う造形部420と、造形される造形物(すなわち、多孔質構造体1)を載せるための支持台430と、液体樹脂LR、支持台430及び造形物が収容される収容体440と、を備える。造形部420は、本例のように光造形方式を用いる場合、紫外線レーザ光LLを照射するように構成されたレーザ照射器421を有する。収容体440には、液体樹脂LRが充填されている。液体樹脂LRは、レーザ照射器421から照射される紫外線レーザ光LLが当たると、硬化し、可撓性のある樹脂となる。
このように構成された3Dプリンタ400は、まず、制御部410が、3D造形用データ500を読み込み、読み込んだ3D造形用データ500に含まれる3次元形状に基づいて、造形部420に紫外線レーザ光LLを照射するよう制御しながら、各層を順次造形していく。
3Dプリンタ400による造形が完了した後は、造形物を収容体440から取り出す。それにより、最終的に、造形物として、多孔質構造体1が得られる。
3Dプリンタを用いて多孔質構造体1を製造することにより、多孔質構造体1を、1つの工程で、簡単かつ精度良く、所期したとおりに実現できる。
なお、多孔質構造体1を樹脂で構成する場合、3Dプリンタ400による造形が完了した後に、造形物としての多孔質構造体1を、オーブンの中で加熱してもよい。その場合、多孔質構造体1を構成する各層どうしの結合を強化し、それにより多孔質構造体1の異方性を低減できるので、多孔質構造体1のクッション性をさらに向上できる。
また、多孔質構造体1をゴムで構成する場合、3Dプリンタ400による造形が完了した後に、造形物としての多孔質構造体1を加硫してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の多孔質構造体、及び、多孔質構造体の製造方法は、クッション材に用いられると好適であり、例えば任意の乗り物用シート及び任意の乗り物用シートパッド(シートパッド)に用いられると好適であり、特に、車両用シート及び車両用シートパッドに用いられると好適なものである。
【符号の説明】
【0073】
1:多孔質構造体、
2:骨格部、
2B:骨部、 2Be:骨部の端部、 2BA:連続骨部、 2BB:非連続骨部、 51:第1分割骨部、 51t:先端部、 51r:根元部、 51S:第1側面、 511:幅広側面、 512:幅狭側面、 51E:第1端面、 52:第2分割骨部、 52t:先端部、 52r:根元部、 52S:第2側面、 521:幅広側面、 522:幅狭側面、 52E:第2端面、 52D:エッジ部、 P:突起、
2J:結合部、
21、21A、21B:セル区画部、 211:環状部、 211L:大環状部、 211S:小環状部、 2111:環状部の内周側縁部、
23:橋部、
3:膜、
C:セル孔、 O:骨格線、 V1:仮想面、 V1L:大仮想面、 V1S:小仮想面、 ID:所定荷重入力方向、
300:車両用シート、
302:シートパッド、
310:クッションパッド、 311:メインパッド部(着座部)、 311t:腿下部、 311h:尻下部、 312:サイドパッド部、
320:バックパッド、 321:メインパッド部、 322:サイドパッド部、
330:表皮、
340:ヘッドレスト、
FS:着座者側の面(表面)、 SS:側面、 BS:裏面、 TD:厚さ方向、 LD:延在方向、
400:3Dプリンタ、 410:制御部、 420:造形部、 421:レーザ照射器、 430:支持台、 440:収容体、 LL:紫外線レーザ光、 LR:液体樹脂、 500:3D造形用データ