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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20241209BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20241209BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20241209BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20241209BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241209BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241209BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L21/28 301B
H01L29/58 G
H01L29/78 617N
H01L29/78 617T
H01L29/78 617U
H01L29/78 619A
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020120378
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2021019197
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2019133334
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】島 行徳
(72)【発明者】
【氏名】大野 正勝
(72)【発明者】
【氏名】重信 匠
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-232867(JP,A)
【文献】特開2018-133508(JP,A)
【文献】特開2018-121049(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130073(WO,A1)
【文献】特開2017-120896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/28
H01L 21/336
H01L 29/423
H01L 29/49
H05B 33/14
H10K 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁層、第2の絶縁層、半導体層及び第1の導電層を有し、
前記第1の絶縁層上に、前記半導体層、前記第2の絶縁層及び前記第1の導電層が、この順で積層されており、
前記第1の絶縁層は、第1の絶縁膜、第2の絶縁膜及び第3の絶縁膜が、この順で積層された積層構造を有し、
前記第2の絶縁膜の膜厚は、前記第1の絶縁膜の膜厚よりも大きく、
前記第2の絶縁膜の膜厚は、前記第3の絶縁膜の膜厚よりも大きく、
前記第2の絶縁層は、酸化物を含み、
前記半導体層は、インジウムと、酸素と、を含み、
前記第3の絶縁膜は、前記半導体層と接する部分を有し、
前記第1の絶縁膜は、シリコンと、窒素と、を含み、
前記第3の絶縁膜は、シリコンと、酸素と、を含み、
前記第2の絶縁膜は、シリコンと、窒素と、酸素と、を含み、
前記第2の絶縁膜が含有する当該酸素は、前記第1の絶縁膜よりも多く、且つ、前記第3の絶縁膜よりも少なく、
前記第2の絶縁膜が含有する当該窒素は、前記第1の絶縁膜よりも少なく、且つ、前記第3の絶縁膜よりも多い、半導体装置。
【請求項2】
第1の絶縁層、第2の絶縁層、半導体層及び第1の導電層を有し、
前記第1の絶縁層上に、前記半導体層、前記第2の絶縁層及び前記第1の導電層が、この順で積層されており、
前記第1の絶縁層は、第1の絶縁膜、第2の絶縁膜及び第3の絶縁膜が、この順で積層された積層構造を有し、
前記第2の絶縁層は、第4の絶縁膜、第5の絶縁膜及び第6の絶縁膜が、この順で積層された積層構造を有し、
前記第2の絶縁膜の膜厚は、前記第1の絶縁膜の膜厚よりも大きく、
前記第2の絶縁膜の膜厚は、前記第3の絶縁膜の膜厚よりも大きく、
前記半導体層は、インジウムと、酸素と、を含み、
前記第3の絶縁膜は、前記半導体層と接する部分を有し、
前記第4の絶縁膜は、前記半導体層と接する部分を有し、
前記第1の絶縁膜は、シリコンと、窒素と、を含み、
前記第3の絶縁膜は、シリコンと、酸素と、を含み、
前記第2の絶縁膜は、シリコンと、窒素と、酸素と、を含み、
前記第2の絶縁膜が含有する当該酸素は、前記第1の絶縁膜よりも多く、且つ、前記第3の絶縁膜よりも少なく、
前記第2の絶縁膜が含有する当該窒素は、前記第1の絶縁膜よりも少なく、且つ、前記第3の絶縁膜よりも多く、
前記第4の絶縁膜は、酸化物を含み、
前記第5の絶縁膜は、酸化物を含み、
前記第6の絶縁膜は、酸化物を含み、
前記第4の絶縁膜の膜密度は、前記第5の絶縁膜の膜密度よりも高く、
前記第6の絶縁膜の膜密度は、前記第5の絶縁膜の膜密度よりも高い、半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第2の絶縁膜の厚さは、前記第1の絶縁膜の厚さに対して、2倍以上20倍以下であり、
前記第2の絶縁膜の厚さは、前記第3の絶縁膜の厚さに対して、2倍以上20倍以下であり、
前記第2の絶縁膜の厚さは、前記第1の絶縁層の総厚に対して、50%以上95%以下である、半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれか一において、
前記半導体層は、M(前記Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム及びスズから選ばれた一種または複数種)と、亜鉛と、を有し、
前記半導体層は、インジウムの含有率が、前記Mの含有率よりも高い領域を有する、半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれか一において、
前記第2の絶縁層と、前記第1の導電層との間に、金属酸化物層を有し、
前記金属酸化物層は、アルミニウム、ハフニウム、スズ、インジウム、ガリウム及び亜鉛から選ばれる一以上の元素を含む、半導体装置。
【請求項6】
第1の絶縁層、第2の絶縁層、半導体層及び第1の導電層を有し、
前記第1の絶縁層上に、前記半導体層、前記第2の絶縁層及び前記第1の導電層が、この順で積層されており、
前記第1の絶縁層は、第1の絶縁膜、第2の絶縁膜及び第3の絶縁膜が、この順で積層された積層構造を有し、
前記半導体層は、第1の金属酸化物膜及び第2の金属酸化物膜が、この順で積層された積層構造を有し、
前記第2の絶縁膜の膜厚は、前記第1の絶縁膜の膜厚よりも大きく、
前記第2の絶縁膜の膜厚は、前記第3の絶縁膜の膜厚よりも大きく、
前記第2の絶縁層は、酸化物を含み、
前記第1の金属酸化物膜及び前記第2の金属酸化物膜は、それぞれインジウムと、酸素と、を含み、
前記第2の絶縁層は、前記第2の金属酸化物膜と接する部分を有し、
前記第3の絶縁膜は、前記第1の金属酸化物膜と接する部分を有し、
前記第1の絶縁膜は、シリコンと、窒素と、を含み、
前記第3の絶縁膜は、シリコンと、酸素と、を含み、
前記第2の絶縁膜は、シリコンと、窒素と、酸素と、を含み、
前記第2の絶縁膜が含有する当該酸素は、前記第1の絶縁膜よりも多く、且つ、前記第3の絶縁膜よりも少なく、
前記第2の絶縁膜が含有する当該窒素は、前記第1の絶縁膜よりも少なく、且つ、前記第3の絶縁膜よりも多い、半導体装置。
【請求項7】
第1の絶縁層、第2の絶縁層、半導体層及び第1の導電層を有し、
前記第1の絶縁層上に、前記半導体層、前記第2の絶縁層及び前記第1の導電層が、この順で積層されており、
前記第1の絶縁層は、第1の絶縁膜、第2の絶縁膜及び第3の絶縁膜が、この順で積層された積層構造を有し、
前記第2の絶縁層は、第4の絶縁膜、第5の絶縁膜及び第6の絶縁膜が、この順で積層された積層構造を有し、
前記半導体層は、第1の金属酸化物膜及び第2の金属酸化物膜が、この順で積層された積層構造を有し、
前記第2の絶縁膜の膜厚は、前記第1の絶縁膜の膜厚よりも大きく、
前記第2の絶縁膜の膜厚は、前記第3の絶縁膜の膜厚よりも大きく、
前記第2の絶縁層は、酸化物を含み、
前記第1の金属酸化物膜及び前記第2の金属酸化物膜は、それぞれインジウムと、酸素と、を含み、
前記第2の絶縁層は、前記第2の金属酸化物膜と接する部分を有し、
前記第3の絶縁膜は、前記第1の金属酸化物膜と接する部分を有し、
前記第1の絶縁膜は、シリコンと、窒素と、を含み、
前記第3の絶縁膜は、シリコンと、酸素と、を含み、
前記第2の絶縁膜は、シリコンと、窒素と、酸素と、を含み、
前記第2の絶縁膜が含有する当該酸素は、前記第1の絶縁膜よりも多く、且つ、前記第3の絶縁膜よりも少なく、
前記第2の絶縁膜が含有する当該窒素は、前記第1の絶縁膜よりも少なく、且つ、前記第3の絶縁膜よりも多く、
前記第4の絶縁膜は、酸化物を含み、
前記第5の絶縁膜は、酸化物を含み、
前記第6の絶縁膜は、酸化物を含み、
前記第4の絶縁膜の膜密度は、前記第5の絶縁膜の膜密度よりも高く、
前記第6の絶縁膜の膜密度は、前記第5の絶縁膜の膜密度よりも高い、半導体装置。
【請求項8】
請求項または請求項において、
前記第2の絶縁膜の厚さは、前記第1の絶縁膜の厚さに対して、2倍以上20倍以下であり、
前記第2の絶縁膜の厚さは、前記第3の絶縁膜の厚さに対して、2倍以上20倍以下であり、
前記第2の絶縁膜の厚さは、前記第1の絶縁層の総厚に対して、50%以上95%以下である、半導体装置。
【請求項9】
請求項乃至請求項のいずれか一において、
前記第1の金属酸化物膜は、ガリウムと、亜鉛と、を含み、
前記第2の金属酸化物膜は、ガリウムと、亜鉛と、を含み、
前記第2の金属酸化物膜は、前記第1の金属酸化物膜と比較して、インジウムの含有率が高く、且つガリウムの含有率が低い領域を有する、半導体装置。
【請求項10】
請求項乃至請求項のいずれか一において、
前記第1の金属酸化物膜は、ガリウムと、亜鉛と、を含み、
前記第2の金属酸化物膜は、ガリウムを含まない、半導体装置。
【請求項11】
請求項乃至請求項10のいずれか一において、
前記第2の絶縁層と、前記第1の導電層との間に、金属酸化物層を有し、
前記金属酸化物層は、アルミニウム、ハフニウム、スズ、インジウム、ガリウム及び亜鉛から選ばれる一以上の元素を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置、及びその作製方法に関する。本発明の一態様は、表示装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置、入出力装置、それらの駆動方法、又はそれらの製造方法、を一例として挙げることができる。半導体装置は、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。
【背景技術】
【0003】
トランジスタに適用可能な半導体材料として、金属酸化物を用いた酸化物半導体が注目されている。例えば、特許文献1では、複数の酸化物半導体層を積層し、当該複数の酸化物半導体層の中で、チャネルとなる酸化物半導体層がインジウム及びガリウムを含み、且つインジウムの割合をガリウムの割合よりも大きくすることで、電界効果移動度(単に移動度、またはμFEという場合がある)を高めた半導体装置が開示されている。
【0004】
半導体層に用いることのできる金属酸化物は、スパッタリング法などを用いて形成できるため、大型の表示装置を構成するトランジスタの半導体層に用いることができる。また、多結晶シリコンや非晶質シリコンを用いたトランジスタの生産設備の一部を改良して利用することが可能なため、設備投資を抑えられる。また、金属酸化物を用いたトランジスタは、非晶質シリコンを用いた場合に比べて高い電界効果移動度を有するため、駆動回路を設けた高性能の表示装置を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-7399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、電気特性の良好な半導体装置を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、電気特性の安定した半導体装置を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、信頼性の高い表示装置を提供することを課題の一とする。
【0007】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、第1の絶縁層、第2の絶縁層、半導体層、及び第1の導電層を有する半導体装置である。第1の絶縁層上に、半導体層、第2の絶縁層、及び第1の導電層が、この順で積層される。第1の絶縁層は、第1の絶縁膜、第2の絶縁膜、及び第3の絶縁膜が、この順で積層された積層構造を有する。第2の絶縁層は、酸化物を含む。半導体層は、インジウムと、酸素と、を含む。第3の絶縁膜は、半導体層と接する部分を有する。第1の絶縁膜は、シリコンと、窒素と、を含む。第3の絶縁膜は、シリコンと、酸素と、を含む。第2の絶縁膜は、シリコンと、窒素と、酸素と、を含む。第2の絶縁膜が含有する当該酸素は、第1の絶縁膜よりも多く、且つ、第3の絶縁膜よりも少ない。第2の絶縁膜が含有する当該窒素は、第1の絶縁膜よりも少なく、且つ、第3の絶縁膜よりも多い。
【0009】
また、上記において、半導体層は、M(Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、及びスズから選ばれた一種または複数種)と、亜鉛と、を有することが好ましい。このとき、半導体層は、インジウムの含有率が、Mの含有率よりも高い領域を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、第1の絶縁層、第2の絶縁層、半導体層、及び第1の導電層を有する半導体装置である。第1の絶縁層上に、半導体層、第2の絶縁層、及び第1の導電層が、この順で積層される。第1の絶縁層は、第1の絶縁膜、第2の絶縁膜、及び第3の絶縁膜が、この順で積層された積層構造を有する。半導体層は、第1の金属酸化物膜、及び第2の金属酸化物膜が、この順で積層された積層構造を有する。第2の絶縁層は、酸化物を含む。第1の金属酸化物膜、及び第2の金属酸化物膜は、それぞれインジウムと、酸素と、を含む。第2の絶縁層は、第2の金属酸化物膜と接する部分を有する。第3の絶縁膜は、第1の金属酸化物膜と接する部分を有する。第1の絶縁膜は、シリコンと、窒素と、を含む。第3の絶縁膜は、シリコンと、酸素と、を含む。第2の絶縁膜は、シリコンと、窒素と、酸素と、を含む。第2の絶縁膜が含有する当該酸素は、第1の絶縁膜よりも多く、且つ、第3の絶縁膜よりも少ない。第2の絶縁膜が含有する当該窒素は、第1の絶縁膜よりも少なく、且つ、第3の絶縁膜よりも多い。
【0011】
また、上記において、第2の導電層を有することが好ましい。このとき、第1の絶縁層は、第2の導電層と半導体層との間に位置する。また、第2の導電層は、半導体層及び第1の導電層と重なる領域を有する。また、第1の絶縁膜は、第2の導電層と接する部分を有する。
【0012】
また、上記において、第2の絶縁膜は、第1の絶縁膜よりも厚く、第2の絶縁膜は、第3の絶縁膜よりも厚いことが好ましい。
【0013】
また、上記において、第2の絶縁膜の厚さは、第1の絶縁膜の厚さに対して、2倍以上20倍以下であることが好ましい。また、第2の絶縁膜の厚さは、第3の絶縁膜の厚さに対して、2倍以上20倍以下であることが好ましい。また、第2の絶縁膜の厚さは、第1の絶縁層の総厚に対して、50%以上95%以下であることが好ましい。
【0014】
また、上記において、第2の絶縁層は、第4の絶縁膜、第5の絶縁膜、及び第6の絶縁膜が、この順で積層された積層構造を有することが好ましい。このとき、第4の絶縁膜は、半導体層と接する領域を有する。また、第4の絶縁膜、第5の絶縁膜、及び第6の絶縁膜は、それぞれ酸化物を含むことが好ましい。
【0015】
また、上記において、第1の金属酸化物膜は、ガリウムと、亜鉛と、を含み、第2の金属酸化物膜は、ガリウムと、亜鉛と、を含むことが好ましい。このとき、第2の金属酸化物膜は、第1の金属酸化物膜と比較して、インジウムの含有率が高く、且つガリウムの含有率が低い領域を有することが好ましい。
【0016】
または、上記において、第1の金属酸化物膜は、ガリウムと、亜鉛と、を含み、第2の金属酸化物膜は、ガリウムを含まないことが好ましい。
【0017】
また、上記において、第2の絶縁層と、第1の導電層との間に、金属酸化物層を有することが好ましい。このとき、金属酸化物層は、アルミニウム、ハフニウム、スズ、インジウム、ガリウム、及び亜鉛から選ばれる一以上の元素を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、電気特性の良好な半導体装置を提供できる。または、信頼性の高い半導体装置を提供できる。または、電気特性の安定した半導体装置を提供できる。または、信頼性の高い表示装置を提供できる。
【0019】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(A)及び図1(B)は、トランジスタの構成例を示す図である。
図2図2(A)及び図2(B)は、トランジスタの構成例を示す図である。
図3図3(A)及び図3(B)は、トランジスタの構成例を示す図である。
図4図4(A)乃至図4(C)は、トランジスタの構成例を示す図である。
図5図5(A)乃至図5(C)は、トランジスタの構成例を示す図である。
図6図6(A)乃至図6(C)は、トランジスタの構成例を示す図である。
図7図7(A)乃至図7(C)は、トランジスタの構成例を示す図である。
図8図8(A)乃至図8(D)は、トランジスタの構成例を示す図である。
図9図9(A)乃至図9(D)は、トランジスタの構成例を示す図である。
図10図10(A)乃至図10(D)は、トランジスタの構成例を示す図である。
図11図11(A)乃至図11(E)は、トランジスタの作製方法を説明する図である。
図12図12(A)乃至図12(D)は、トランジスタの作製方法を説明する図である。
図13図13(A)及び図13(B)は、トランジスタの作製方法を説明する図である。
図14図14(A)乃至図14(D)は、トランジスタの作製方法を説明する図である。
図15図15(A)乃至図15(C)は、表示装置の上面図である。
図16図16は、表示装置の断面図である。
図17図17は、表示装置の断面図である。
図18図18は、表示装置の断面図である。
図19図19は、表示装置の断面図である。
図20図20(A)は、表示装置のブロック図である。図20(B)及び図20(C)は、表示装置の回路図である。
図21図21(A)、図21(C)、及び図21(D)は、表示装置の回路図である。図21(B)は、タイミングチャートである。
図22図22(A)及び図22(B)は、表示モジュールの構成例を示す図である。
図23図23(A)及び図23(B)は、電子機器の構成例を示す図である。
図24図24(A)乃至図24(E)は、電子機器の構成例を示す図である。
図25図25(A)乃至図25(G)は、電子機器の構成例を示す図である。
図26図26(A)乃至図26(D)は、電子機器の構成例を示す図である。
図27図27(A)乃至図27(F)は、TDS分析結果を示す図である。
図28図28(A)乃至図28(D)は、トランジスタのId-Vg特性を示す図である。
図29図29は、トランジスタの信頼性試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0022】
また、本明細書で説明する各図において、各構成要素の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。
【0023】
また、本明細書等にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。
【0024】
また、本明細書等において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成要素同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成要素同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0025】
また、本明細書等において、トランジスタが有するソースとドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0026】
なお、本明細書等において、トランジスタのチャネル長方向とは、ソース領域とドレイン領域との間を最短距離で結ぶ直線に平行な方向のうちの1つをいう。すなわち、チャネル長方向は、トランジスタがオン状態のときに半導体層を流れる電流の方向のうちの1つに相当する。また、チャネル幅方向とは、当該チャネル長方向に直交する方向をいう。なお、トランジスタの構造や形状によっては、チャネル長方向及びチャネル幅方向は1つに定まらない場合がある。
【0027】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0028】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」や「絶縁層」という用語は、「導電膜」や「絶縁膜」という用語に相互に交換することが可能な場合がある。
【0029】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い(pチャネル型トランジスタでは、Vthよりも高い)状態をいう。
【0030】
本明細書等において、表示装置の一態様である表示パネルは表示面に画像等を表示(出力)する機能を有するものである。したがって表示パネルは出力装置の一態様である。
【0031】
また、本明細書等では、表示パネルの基板に、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)もしくはTCP(Tape Carrier Package)などのコネクターが取り付けられたもの、または基板にCOG(Chip On Glass)方式等によりIC(Integrated Circuit)が実装されたものを、表示パネルモジュール、表示モジュール、または単に表示パネルなどと呼ぶ場合がある。
【0032】
なお、本明細書等において、表示装置の一態様であるタッチパネルは表示面に画像等を表示する機能と、表示面に指やスタイラスなどの被検知体が触れる、押圧する、または近づくことなどを検出するタッチセンサとしての機能と、を有する。したがってタッチパネルは入出力装置の一態様である。
【0033】
タッチパネルは、例えばタッチセンサ付き表示パネル(または表示装置)、タッチセンサ機能付き表示パネル(または表示装置)とも呼ぶことができる。タッチパネルは、表示パネルとタッチセンサパネルとを有する構成とすることもできる。または、表示パネルの内部または表面にタッチセンサとしての機能を有する構成とすることもできる。
【0034】
また、本明細書等では、タッチパネルの基板に、コネクターやICが実装されたものを、タッチパネルモジュール、表示モジュール、または単にタッチパネルなどと呼ぶ場合がある。
【0035】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置、およびその作製方法について説明する。特に本実施の形態では、半導体装置の一例として、チャネルが形成される半導体層に酸化物半導体を用いたトランジスタについて説明する。
【0036】
[構成例1]
〔構成例1-1〕
図1(A)に、トランジスタ10のチャネル長方向の断面概略図を示している。
【0037】
トランジスタ10は、絶縁層103と、半導体層108と、絶縁層110と、金属酸化物層114と、導電層112を有する。絶縁層110は、ゲート絶縁層として機能する。導電層112は、ゲート電極として機能する。
【0038】
導電層112として、金属または合金を含む導電膜を用いると、電気抵抗が抑制できるため好ましい。なお、導電層112に酸化物を含む導電膜を用いてもよい。
【0039】
金属酸化物層114は、絶縁層110中に酸素を供給する機能を有する。また、導電層112として酸化されやすい金属または合金を含む導電膜を用いた場合には、金属酸化物層114は、絶縁層110中の酸素により導電層112が酸化されることを防ぐバリア層として機能させることもできる。なお、金属酸化物層114を導電層112の形成前に除去することで、導電層112と絶縁層110とが接する構成としてもよい。なお、金属酸化物層114は、不要であれば設けない構成としてもよい。
【0040】
半導体層108と接する絶縁層110は、酸化物絶縁膜を有することが好ましい。また絶縁層110は、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域を有することがより好ましい。別言すると、絶縁層110は、酸素を放出することが可能な絶縁膜を有することが好ましい。例えば、酸素雰囲気下にて絶縁層110を形成すること、成膜後の絶縁層110に対して酸素雰囲気下での熱処理、プラズマ処理等を行うこと、または、絶縁層110上に酸素雰囲気下で酸化物膜を成膜することなどにより、絶縁層110中に酸素を供給することもできる。
【0041】
絶縁層110は、例えば、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法等を用いて形成することができる。また、CVD法としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法や、熱CVD法などがある。
【0042】
特に、絶縁層110は、PECVD法により形成することが好ましい。
【0043】
半導体層108は、半導体特性を示す金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう)を含む。半導体層108は、少なくともインジウムと酸素とを含むことが好ましい。半導体層108がインジウムの酸化物を含むことで、キャリア移動度を高めることができる。例えばアモルファスシリコンを用いた場合よりも大きな電流を流すことのできるトランジスタを実現できる。
【0044】
半導体層108の、導電層112と重なる領域が、チャネル形成領域として機能する。また半導体層108は、チャネル形成領域を挟んで、一対の低抵抗領域108nを有することが好ましい。低抵抗領域108nは、チャネル形成領域よりもキャリア濃度の高い領域であり、ソース領域、及びドレイン領域として機能する。
【0045】
低抵抗領域108nは、チャネル形成領域よりも、低抵抗な領域、キャリア濃度の高い領域、酸素欠損量の多い領域、水素濃度の高い領域、または、不純物濃度の高い領域とも言うことができる。
【0046】
絶縁層103は、絶縁膜103a、絶縁膜103b、及び絶縁膜103cが積層された積層構造を有する。絶縁膜103cは、半導体層108と接する。
【0047】
絶縁層103は、被形成面側から不純物が半導体層108等に拡散することを抑制するバリア層として機能することが好ましい。絶縁層103は、膜の応力が小さいこと、水素や水を放出しにくいこと、水素や水を拡散しにくいこと、のうち、1つ以上を満たすことが好ましく、これら全てを満たすことが好ましい。
【0048】
絶縁層103が有する3つの絶縁膜のうち、最も被形成面側に位置する絶縁膜103aには、窒素を含む絶縁膜を用いることが好ましい。一方、半導体層108と接する絶縁膜103cには、酸素を含む絶縁膜を用いることが好ましい。また、絶縁層103が有する3つの絶縁膜は、それぞれプラズマCVD装置を用いて、大気に触れることなく連続して成膜することが好ましい。
【0049】
絶縁膜103aは、これよりも下側からの不純物の拡散を防止できる、緻密な膜であることが好ましい。絶縁膜103aは、絶縁膜103aの被形成面側の部材(例えば基板など)に含まれる金属元素、水素、水などをブロックできる膜であることが好ましい。そのため、絶縁膜103aには、絶縁膜103bよりも成膜速度の低い条件で成膜した絶縁膜を適用することができる。
【0050】
絶縁膜103aとしては、例えば窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化ハフニウム膜などの窒素を含む絶縁膜を用いることができる。特に、絶縁膜103aとして、プラズマCVD装置を用いて成膜した、緻密な窒化シリコン膜を用いることが好ましい。このような窒素を含む絶縁膜を用いることで、厚さが薄い場合であっても、被形成面側から不純物が拡散することを好適に抑制することができる。
【0051】
なお、本明細書中において、酸化窒化物とは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化物とは、その組成として酸素よりも窒素の含有量が多い材料を指す。例えば、酸化窒化シリコンと記載した場合は、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンと記載した場合は、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。
【0052】
また、本明細書中において、それぞれ同じ元素を含む酸化窒化物と窒化酸化物とが記載された場合に、酸化窒化物には、窒化酸化物よりも、酸素の含有量が多いこと、及び、窒素の含有量が少ないことのうち、いずれか一方または両方を満たす材料が含まれる。同様に、窒化酸化物には、酸化窒化物よりも酸素の含有量が少ないこと、及び、窒素の含有量が多いことのうち、いずれか一方または両方を満たす材料が含まれる。例えば、酸化窒化シリコンと窒化酸化シリコンとが記載された場合に、酸化窒化シリコンには、窒化酸化シリコンよりも酸素の含有量が多く、且つ、窒素の含有量が少ない材料が含まれる。同様に、窒化酸化シリコンには、酸化窒化シリコンよりも酸素の含有量が少なく、且つ、窒素の含有量が多い材料が含まれる。
【0053】
半導体層108と接する絶縁膜103cとしては、酸化物を含む絶縁膜により形成されていることが好ましい。特に絶縁膜103cには、酸化物膜を用いることが好ましい。また、絶縁膜103cとしては、その表面に水などの不純物が吸着しにくい、緻密な絶縁膜を用いることが好ましい。また、可能な限り欠陥が少なく、水や水素などの不純物が低減された絶縁膜を用いることが好ましい。
【0054】
絶縁膜103cは、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域を有することがより好ましい。別言すると、絶縁膜103cは、加熱により酸素を放出することが可能な絶縁膜とすることが好ましい。例えば、酸素雰囲気下にて絶縁膜103cを形成すること、成膜後の絶縁膜103cに対して酸素雰囲気下での熱処理、プラズマ処理等を行うこと、または、絶縁膜103c上に酸素雰囲気下で酸化物膜を成膜することなどにより、絶縁膜103c中に酸素を供給することもできる。または、絶縁膜103c上に加熱により酸素を放出することが可能な絶縁膜を成膜した後に加熱処理を行うことで、当該絶縁膜から絶縁膜103c中に酸素を供給してもよい。
【0055】
また、半導体層108となる金属酸化物膜を、酸素を含む雰囲気下でスパッタリング法により形成する際に、絶縁膜103c中に酸素を供給することができる。そして、半導体層となる金属酸化物膜を形成した後に、加熱処理を行うことで、絶縁膜103c中の酸素を当該金属酸化物膜に供給し、金属酸化物膜中の酸素欠損を低減することができる。
【0056】
絶縁膜103cとしては、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種以上含む絶縁層を用いることができる。特に、絶縁膜103cとして、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を用いることが好ましい。
【0057】
絶縁膜103aと、絶縁膜103cとの間に位置する絶縁膜103bは、応力が小さく、成膜速度の高い条件で成膜された絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、絶縁膜103bは、絶縁膜103a及び絶縁膜103cよりも応力が小さい膜であることが好ましい。また、絶縁膜103bは、絶縁膜103a及び絶縁膜103cよりも成膜速度の高い条件で成膜される膜であることが好ましい。
【0058】
絶縁膜103bとしては、水素や水をできるだけ放出しない絶縁膜を用いることが好ましい。このような絶縁膜を用いることで、加熱処理や工程中にかかる熱などにより、絶縁膜103bから絶縁膜103cを介して半導体層108に水素や水が拡散することを防ぎ、半導体層108のチャネル形成領域におけるキャリア濃度を低くすることができる。
【0059】
さらに、絶縁膜103bは、酸素を吸引しにくい絶縁膜を用いることが好ましい。言い換えると、酸素が拡散しにくい絶縁膜を用いることが好ましい。これにより、絶縁膜103cから半導体層108(または半導体層108となる金属酸化物膜)に酸素を供給するための熱処理を行う際に、絶縁膜103cから絶縁膜103b側に酸素が拡散することで、半導体層108に供給される酸素の量が低減してしまうことを抑制することができる。
【0060】
絶縁膜103bとしては、例えば窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、窒化アルミニウム膜、窒化ハフニウム膜を一種以上含む絶縁層を用いることができる。特に、絶縁膜103bとして、窒化酸化シリコン膜または窒化シリコン膜を用いることが好ましい。
【0061】
絶縁層103を構成する絶縁膜103a、絶縁膜103b、及び絶縁膜103cのうち、絶縁膜103bの厚さを最も厚くすることが好ましい。なお、絶縁層103の厚さ(総厚)は、絶縁層103に要求される比誘電率の値と、絶縁層103に要求される絶縁耐圧の性能などを考慮し、各絶縁膜の比誘電率の値と各絶縁膜の厚さに基づいて決定することができる。すなわち、各絶縁膜の厚さは、上記要求を満たす範囲で互いに調整することができる。
【0062】
特に、絶縁膜103bは、絶縁膜103aよりも厚いことが好ましい。絶縁膜103bを絶縁膜103aよりも厚くすることで、絶縁膜103aとして加熱により水素を放出しやすい膜を用いた場合であっても、絶縁膜103cに到達しうる水素の量を低減することができる。また、絶縁膜103aを絶縁膜103bよりも薄くすることで、絶縁膜103aの体積を相対的に小さくできるため、絶縁膜103aが放出しうる水素の量自体を低減することができる。
【0063】
また、絶縁膜103bは、絶縁膜103cよりも厚いことが好ましい。絶縁膜103cが厚すぎる場合、絶縁膜103c中に酸素を供給する処理を行った場合に、加熱により絶縁膜103cから放出されずに残留する酸素の量が多くなるため、結果として半導体層108(または半導体層108となる金属酸化物膜)に供給しうる酸素の量が減ってしまう恐れがある。そのため、絶縁膜103cを絶縁膜103bよりも薄くする(体積を小さくする)ことで、加熱後に絶縁膜103c中に残留する酸素の量を低減できる。その結果、絶縁膜103cに供給された酸素のうち、半導体層108に供給される酸素の割合を大きくできるため、半導体層108に供給される酸素の量を効果的に増やすことができる。
【0064】
また、最も厚い絶縁膜103bを成膜速度の高い条件で形成し、これよりも薄い絶縁膜103a及び絶縁膜103cを、成膜速度の低い条件で緻密な膜となるように形成することで、信頼性を損なうことなく、絶縁層103の成膜時間を短縮でき、生産性を高めることができる。
【0065】
ここで、絶縁膜103aには、少なくともシリコンと、窒素と、を含む絶縁膜、代表的には窒化シリコン膜、または窒化酸化シリコン膜を用いることが好ましい。また、絶縁膜103bには、少なくともシリコンと、窒素と、酸素と、を含む絶縁膜、代表的には窒化酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を用いることが好ましい。また、絶縁膜103cには、少なくともシリコンと、酸素と、を含む絶縁膜、代表的には酸化シリコン膜、または酸化窒化シリコン膜を用いることが好ましい。このとき、絶縁膜103bに含まれる酸素の量は、絶縁膜103aよりも多く、且つ、絶縁膜103cよりも少ないことが好ましい。さらに、絶縁膜103bに含まれる窒素の量は、絶縁膜103aよりも少なく、且つ、絶縁膜103cよりも多いことが好ましい。
【0066】
絶縁膜103a、絶縁膜103b、及び絶縁膜103cに含まれる酸素及び窒素の含有量は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)や、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)等の分析法により分析することができる。膜中の目的の元素の含有率が高い(例えば0.5atoms/cm以上、または1atoms/cm以上)場合には、XPSが適している。一方、膜中の目的の元素の含有率が低い(例えば0.5atoms/cm以下、または1atoms/cm以下)場合には、SIMSが適している。膜中の元素の含有量を比較する際には、SIMSとXPSの両方の分析手法を用いた複合解析を行うことがより好ましい。
【0067】
絶縁膜103bの厚さは、絶縁膜103aの厚さに対して、2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上であって、20倍以下、好ましくは15倍以下であることが好ましい。また、絶縁膜103bの厚さは、絶縁膜103cの厚さに対して、2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上であって、20倍以下、好ましくは15倍以下であることが好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0068】
また、絶縁膜103bの厚さは、絶縁層103全体の厚さ(総厚ともいう)を100%としたときに、34%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であって、95%以下、または90%以下とすることができる。絶縁層103の総厚に対する絶縁膜103bの厚さの割合が高いほど、生産性を高めることができる。
【0069】
絶縁膜103aはできるだけ薄いことが好ましく、例えば5nm以上、好ましくは8nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上であって、50nm以下、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下とすることができる。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。代表的には、15nm以上50nm以下、または15nm以上20nm以下の膜厚とすることが好ましい。
【0070】
絶縁膜103cもできるだけ薄いことが好ましく、例えば5nm以上、好ましくは8nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上であって、50nm以下、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下とすることができる。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。代表的には、15nm以上50nm以下、または15nm以上20nm以下の膜厚とすることが好ましい。
【0071】
絶縁膜103a及び絶縁膜103cは、共に出来るだけ薄いことが好ましいが、成膜装置の性能に合わせて、ばらつきの小さい条件で成膜可能なことが極めて重要である。そのため、絶縁膜103a及び絶縁膜103cには、それぞれ十分にばらつきが小さくなるような、最低限度の厚さを選択することが好ましい。
【0072】
絶縁膜103bとしては、要求される比誘電率や耐圧などの物性値を満たすように決定される絶縁層103の総厚から、絶縁膜103aと絶縁膜103cの厚さを差し引いた厚さとすればよい。例えば、絶縁膜103bは、20nm以上、50nm以上、100nm以上、150nm以上、または200nm以上であって、500nm以下、400nm以下、または350nm以下の厚さとすることが好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0073】
なお、絶縁膜103a、絶縁膜103b、及び絶縁膜103cのうち、絶縁膜103bが、他の2つの絶縁膜よりも膜密度が小さい膜となりうる。したがって、絶縁層103の断面における透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy)像などにおいて、上記膜密度の違いにより、絶縁膜103a、絶縁膜103b、及び絶縁膜103cがコントラストの違いとして観察され、これらを区別できる場合がある。特に、絶縁膜103aと絶縁膜103bのそれぞれにプラズマCVD法で形成した窒化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜を用いた場合であっても、これらの境界を確認することができる場合がある。なお、組成や密度が近い場合などでは、これらの境界が不明瞭となる場合がある。
【0074】
半導体層108に用いる半導体材料の結晶性については特に限定されず、非晶質半導体、単結晶半導体、または単結晶以外の結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、または一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。単結晶半導体または結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0075】
トランジスタの半導体層は、金属酸化物(酸化物半導体ともいう)を有することが好ましい。または、トランジスタの半導体層は、シリコンを有していてもよい。シリコンとしては、アモルファスシリコン、結晶性のシリコン(低温ポリシリコン、単結晶シリコンなど)などが挙げられる。
【0076】
半導体層108として、金属酸化物を用いる場合、例えば、インジウムと、M(Mは、ガリウム、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、及びマグネシウムから選ばれた一種または複数種)と、亜鉛と、を有することが好ましい。特に、Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、及びスズから選ばれた一種または複数種であることが好ましい。
【0077】
特に、半導体層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物(IGZOとも記す)を用いることが好ましい。
【0078】
また、半導体層として、インジウム、ガリウム、及び亜鉛に加えて、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムのうち、一つ以上を含む酸化物を用いることもできる。特に、半導体層として、インジウム、ガリウム、及び亜鉛に加えて、スズ、アルミニウム、またはシリコンを含む酸化物を用いると、高い電界効果移動度が実現されたトランジスタとすることができるため好ましい。
【0079】
半導体層がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットは、Mに対するInの原子数比が1以上であることが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=10:1:3、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=5:2:5等が挙げられる。なお、上記において、元素Mとして2種類以上の元素を含む場合、上記原子数比におけるMの割合は、当該2以上の金属元素の原子数の和に対応するものとする。
【0080】
スパッタリングターゲットとしては、多結晶の酸化物を含むターゲットを用いると、結晶性を有する半導体層を形成しやすくなるため好ましい。なお、成膜される半導体層の原子数比は、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。例えば、半導体層に用いるスパッタリングターゲットの組成がIn:M:Zn=4:2:4.1[原子数比]の場合、成膜される半導体層の組成は、In:M:Zn=4:2:3[原子数比]の近傍となる場合がある。
【0081】
なお、原子数比がIn:M:Zn=4:2:3またはその近傍と記載する場合、Inを4としたとき、Mが1以上3以下であり、Znが2以上4以下である場合を含む。また、原子数比がIn:M:Zn=5:1:6またはその近傍であると記載する場合、Inを5としたときに、Mが0.1より大きく2以下であり、Znが5以上7以下である場合を含む。また、原子数比がIn:M:Zn=1:1:1またはその近傍であると記載する場合、Inを1としたときに、Mが0.1より大きく2以下であり、Znが0.1より大きく2以下である場合を含む。
【0082】
ここで、半導体層108の組成について説明する。半導体層108は、少なくともインジウムと酸素を含む金属酸化物を含むことが好ましい。また、半導体層108は、これらに加えて亜鉛を含んでいてもよい。また、半導体層108は、ガリウムを含んでいてもよい。
【0083】
ここで、半導体層108の組成は、トランジスタ10の電気的特性や、信頼性に大きく影響する。例えば、半導体層108中のインジウムの含有量を多くすることで、キャリア移動度が向上し、電界効果移動度の高いトランジスタを実現することができる。
【0084】
ここで、トランジスタの信頼性を評価する指標の1つとして、ゲートに電界を印加した状態で保持する、ゲートバイアスストレス試験(GBT:Gate Bias Stress Test)がある。その中でも、ソース電位及びドレイン電位に対して、ゲートに正の電位を与えた状態で、高温下で保持する試験をPBTS(Positive Bias Temperature Stress)試験、ゲートに負の電位を与えた状態で、高温下で保持する試験をNBTS(Negative Bias Temperature Stress)試験と呼ぶ。また、白色LED光などの光を照射した状態で行うPBTS試験及びNBTS試験を、それぞれPBTIS(Positive Bias Temperature Illumination Stress)試験、NBTIS(Negative Bias Temperature Illumination Stress)試験と呼ぶ。
【0085】
特に、酸化物半導体を用いたn型のトランジスタにおいては、トランジスタをオン状態(電流を流す状態)とする際にゲートに正の電位が与えられるため、PBTS試験でのしきい値電圧の変動量が、トランジスタの信頼性の指標として着目すべき重要な項目の1つとなる。
【0086】
ここで、半導体層108の組成として、ガリウムを含まない、またはガリウムの含有率の低い金属酸化物膜を用いることで、PBTS試験でのしきい値電圧の変動量を小さくすることができる。また、ガリウムを含む場合には、半導体層108の組成として、インジウムの含有量よりも、ガリウムの含有量を小さくすることが好ましい。これにより、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0087】
PBTS試験でのしきい値電圧の変動の1つの要因として、半導体層とゲート絶縁層の界面、または界面近傍における欠陥準位が挙げられる。欠陥準位密度が大きいほど、PBTS試験での劣化が顕著になる。半導体層の、ゲート絶縁層と接する部分におけるガリウムの含有量を小さくすることで、当該欠陥準位の生成を抑制することができる。
【0088】
ガリウムを含まない、またはガリウムの含有量を小さくすることでPBTS劣化を抑制できる理由としては、例えば以下のようなことが考えられる。半導体層108に含まれるガリウムは、他の金属元素(例えばインジウムや亜鉛)と比較して、酸素を誘引しやすい性質を有する。そのため、ガリウムを多く含む金属酸化物膜と、酸化物を含む絶縁層110との界面において、ガリウムが絶縁層110中の余剰酸素と結合することで、キャリア(ここでは電子)トラップサイトを生じさせやすくなることが推察される。そのため、ゲートに正の電位を与えた際に、半導体層とゲート絶縁層との界面にキャリアがトラップされることで、しきい値電圧が変動することが考えられる。
【0089】
より具体的には、半導体層108にIn-Ga-Zn酸化物を用いた場合、Inの原子数比が、Gaの原子数比よりも大きい金属酸化物膜を、半導体層108に適用することができる。また、Znの原子数比が、Gaの原子数比よりも大きい金属酸化物膜を用いることが、より好ましい。言い換えると、金属元素の原子数比が、In>Ga、且つZn>Gaを満たす金属酸化物膜を、半導体層108に適用することが好ましい。
【0090】
例えば、半導体層108として、金属元素の原子数比が、In:Ga:Zn=2:1:3、In:Ga:Zn=3:1:2、In:Ga:Zn=4:2:3、In:Ga:Zn=4:2:4.1、In:Ga:Zn=5:1:3、In:Ga:Zn=10:1:3、In:Ga:Zn=5:1:6、In:Ga:Zn=5:1:7、In:Ga:Zn=5:1:8、In:Ga:Zn=6:1:6、In:Ga:Zn=5:2:5、またはこれらの近傍である、金属酸化物膜を用いることができる。
【0091】
半導体層108として、インジウム及びガリウムを含む金属酸化物膜を用いた場合、金属酸化物に含まれる金属元素の原子数に対する、ガリウムの原子数の割合(原子数比)を、0より大きく50%未満、好ましくは0.05%以上30%以下、より好ましくは0.1%以上15%以下、より好ましくは0.1%以上5%以下とすることができる。なお、半導体層108にガリウムを含有させることで、酸素欠損が生じにくくなるといった効果を奏する。
【0092】
また、半導体層108に、ガリウムを含まない金属酸化物膜を適用してもよい。例えば、In-Zn酸化物を半導体層108に適用することができる。このとき、金属酸化物膜に含まれる金属元素の原子数に対するInの原子数比を高くすることで、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる。一方、金属酸化物に含まれる金属元素の原子数に対するZnの原子数比を高くすることで、結晶性の高い金属酸化物膜となるため、トランジスタの電気特性の変動が抑制され、信頼性を高めることができる。また、半導体層108には、酸化インジウムなどの、ガリウム及び亜鉛を含まない金属酸化物膜を適用してもよい。ガリウムを全く含まない金属酸化物膜を用いることで、特にPBTS試験におけるしきい値電圧の変動を極めて小さなものとすることができる。
【0093】
例えば、半導体層108に、インジウムと亜鉛を含む酸化物を用いることができる。このとき、金属元素の原子数比が、例えばIn:Zn=2:3、In:Zn=4:1、またはこれらの近傍の金属酸化物膜を用いることができる。
【0094】
本発明の一態様のトランジスタ10は、半導体層108にガリウムの含有量の小さい金属酸化物膜、またはガリウムを含有しない金属酸化物膜を適用し、さらに、半導体層108の上面に接する絶縁層110として、半導体層108に与えるダメージが低減された成膜方法で形成した膜が用いられている。そのため、半導体層108と絶縁層110の界面における欠陥準位密度が低減され、高い信頼性を有するトランジスタ10とすることができる。
【0095】
なお、ここでは代表的にガリウムについて説明したが、ガリウムに代えて元素M(Mは、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムから選ばれた一種または複数種)を用いた場合にも適用できる。特に、Mは、ガリウム、アルミニウム、イットリウム、またはスズから選ばれた一種または複数種とすることが好ましい。
【0096】
特に、半導体層108には、Inの原子数比が元素Mの原子数比よりも高い金属酸化物膜を適用することが好ましい。また、Znの原子数比が元素Mの原子数比よりも高い金属酸化物膜を適用することが好ましい。
【0097】
半導体層108には、結晶性を有する金属酸化物膜を用いることが好ましい。例えば、後述するCAAC(c-axis aligned crystal)構造、nc(nano crystal)構造、多結晶構造、微結晶構造等を有する金属酸化物膜を用いることができる。結晶性を有する金属酸化物膜を半導体層108に用いることにより、半導体層108中の欠陥準位密度を低減でき、信頼性の高い半導体装置を実現できる。
【0098】
半導体層108として、結晶性が高いほど、膜中の欠陥準位密度を低減できる。一方、結晶性の低い金属酸化物膜を用いることで、大きな電流を流すことのできるトランジスタを実現することができる。
【0099】
金属酸化物膜をスパッタリング法により成膜する場合、成膜時の基板温度(ステージ温度)が高いほど、結晶性の高い金属酸化物膜を成膜することができる。また、成膜時に用いる成膜ガス全体に対する酸素ガスの流量の割合(酸素流量比ともいう)が高いほど、結晶性の高い金属酸化物膜を成膜することができる。このように、成膜される金属酸化物膜の結晶性は、基板温度と成膜ガスにおける酸素流量比によって制御することができる。
【0100】
〔構成例1-2〕
図1(B)は、トランジスタ10Aの断面概略図である。トランジスタ10Aは、上記トランジスタ10と比較して、導電層106を有する点で、主に相違している。
【0101】
導電層106は、絶縁層103を介して半導体層108、絶縁層110、金属酸化物層114、及び導電層112と重畳する領域を有する。導電層106は、第1のゲート電極(バックゲート電極ともいう)として機能する。また絶縁層103は、第1のゲート絶縁層として機能する。このとき、導電層112が第2のゲート電極(トップゲート電極ともいう)、絶縁層110が第2のゲート絶縁層として機能する。
【0102】
例えば、トランジスタ10Aは、導電層112及び導電層106に同じ電位を与えることにより、オン状態のときに流すことのできる電流を大きくすることができる。また、トランジスタ10Aは、導電層112及び導電層106の一方に、しきい値電圧を制御するための電位を与え、他方にトランジスタ10Aのオン状態及びオフ状態を制御する電位を与えることもできる。また、導電層112及び導電層106の一方と、ソースとを電気的に接続することにより、トランジスタ10Aの電気特性の安定化を図ることもできる。
【0103】
絶縁層103は、導電層106側から、絶縁膜103a、絶縁膜103b、及び絶縁膜103cが積層された積層構造を有する。絶縁膜103aは導電層106と接する。また、絶縁膜103cは、半導体層108と接する。
【0104】
第1のゲート絶縁層として機能する絶縁層103は、耐圧が高いこと、膜の応力が小さいこと、水素や水を放出しにくいこと、膜中の欠陥が少ないこと、導電層106に含まれる金属元素の拡散を抑制すること、のうち、1つ以上を満たすことが好ましく、これら全てを満たすことが最も好ましい。
【0105】
絶縁膜103aは、これよりも下側からの不純物の拡散を防止できる、緻密な膜であることが好ましい。絶縁膜103aは、導電層106に含まれる金属元素をブロックできる膜であることが好ましい。そのため、絶縁膜103aには、絶縁膜103bまたは絶縁膜103cのいずれか一方、または両方よりも成膜速度の低い条件で成膜した絶縁膜を適用することができる。
【0106】
〔構成例1-3〕
図2(A)は、トランジスタ10Bの断面概略図である。トランジスタ10Bは、上記トランジスタ10と比較して、半導体層108の構成が異なる点で、主に相違している。
【0107】
トランジスタ10Bが有する半導体層108は、絶縁層103側から、半導体層108aと、半導体層108bとが積層された積層構造を有する。半導体層108aと半導体層108bとは、それぞれ金属酸化物膜を用いることが好ましい。
【0108】
なお、ここでは簡単のために、半導体層108aが有する低抵抗領域と、半導体層108bが有する低抵抗領域とを、まとめて低抵抗領域108nとし、同じハッチングパターンを付して明示している。実際には、半導体層108aと半導体層108bとで組成等が異なるため、低抵抗領域108nの電気抵抗率、キャリア濃度、酸素欠損量、水素濃度、または不純物濃度等が異なる場合がある。
【0109】
半導体層108bは、半導体層108aの上面、及び絶縁層110の下面とそれぞれ接する。半導体層108bには、上記構成例1-1で例示した、半導体層108に用いることのできる金属酸化物膜を適用することができる。
【0110】
一方、半導体層108aは、半導体層108bよりもMの原子数比の高い金属酸化物膜を用いることができる。特に、半導体層108aに、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含み、半導体層108bよりもガリウムの原子数比の高い金属酸化物膜を用いることが好ましい。
【0111】
ガリウムはインジウムと比較して酸素との結合力が強いため、ガリウムの原子数比の高い金属酸化物膜を半導体層108aに用いることで、酸素欠損が形成されにくくなる。半導体層108a中に酸素欠損が多く存在すると、トランジスタの電気特性や信頼性の低下に繋がる。したがって、半導体層108aとして、半導体層108bよりもガリウムの原子数比の高い金属酸化物膜を用いることで、電気特性が良好で、且つ信頼性の高いトランジスタ10Bを実現できる。
【0112】
より具体的には、半導体層108aとして、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む金属酸化物膜であって、ガリウムの原子数比が、半導体層108bよりも高く、且つ、インジウムの原子数比が、半導体層108bよりも低い領域を有する、金属酸化物膜を好適に用いることができる。言い換えると、半導体層108bとしては、半導体層108aと比較して、インジウムの原子数比が高く、且つ、ガリウムの原子数比が低い領域を有する、金属酸化物膜を用いることができる。
【0113】
また、半導体層108aとして、亜鉛の原子数比が半導体層108bと等しい領域、または亜鉛の原子数比が半導体層108bよりも低い領域を有する、金属酸化物膜を用いることが好ましい。
【0114】
半導体層108aとしては、例えば、金属元素の原子数比が、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:3:2、In:Ga:Zn=1:3:4、In:Ga:Zn=1:3:6、In:Ga:Zn=2:2:1、またはこれらの近傍である、金属酸化物膜を用いることができる。
【0115】
代表的には、半導体層108aに、金属元素の原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1またはその近傍の金属酸化物膜を用い、半導体層108bに、金属元素の原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3、In:Ga:Zn=5:1:6、またはこれらの近傍の金属酸化物膜を用いることが好ましい。
【0116】
または、半導体層108bに、ガリウムを含まない金属酸化物膜を用いることが好ましい。例えば、半導体層108bに、インジウムと亜鉛を含む酸化物を用いることが好ましい。このとき、金属元素の原子数比が、例えばIn:Zn=2:3、In:Zn=4:1、またはこれらの近傍の金属酸化物膜を用いることができる。
【0117】
また、半導体層108aに、酸素欠損が生じにくい金属酸化物膜を適用することで、上述したNBTIS試験における劣化を低減することができる。
【0118】
図2(A)に示すトランジスタ10Bは、絶縁層103側に位置する半導体層108aにガリウムの含有率が比較的大きな金属酸化物膜を用いることにより、半導体層108中の酸素欠損が低減される。さらに絶縁層110側に位置する半導体層108bに、ガリウムの含有率の低い、またはガリウムを含まない金属酸化物膜を用いることで、半導体層108と絶縁層110との界面欠陥密度が低減される。したがって、トランジスタ10Bは、極めて高い電気特性と、極めて高い信頼性とが両立したトランジスタである。
【0119】
ここで、半導体層108bを、半導体層108aよりも薄く形成することが好ましい。半導体層108bが、例えば0.5nm以上10nm以下の極めて薄い膜であっても、絶縁層110との界面欠陥密度を低減することができる。一方、酸素欠損が生じにくい半導体層108aを相対的に厚くすることで、より信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0120】
例えば、半導体層108bの厚さに対して、半導体層108aの厚さを1.5倍以上20倍以下、好ましくは2倍以上15倍以下、より好ましくは3倍以上10倍以下とすることができる。また、半導体層108bの厚さは、0.5nm以上30nm以下、好ましくは1nm以上20nm以下、より好ましくは2nm以上10nm以下とすることが好ましい。
【0121】
半導体層108a及び半導体層108bには、上述した結晶性を有する金属酸化物膜を用いることが好ましい。半導体層108aと半導体層108bの両方に、結晶性の高い金属酸化物膜を用いてもよいし、結晶性の低い金属酸化物膜を用いてもよい。または、半導体層108aと半導体層108bとは、異なる結晶性を有していてもよい。例えば、半導体層108aを半導体層108bよりも結晶性の高い膜としてもよいし、半導体層108bを半導体層108aよりも結晶性の高い膜としてもよい。半導体層108aと半導体層108bに用いる金属酸化物膜の結晶性は、要求されるトランジスタの電気特性及び信頼性や、成膜装置などの仕様に基づいて決定することができる。
【0122】
〔構成例1-4〕
図2(B)は、トランジスタ10Cの断面概略図である。トランジスタ10Cは、上記構成例1-3(図2(A))で例示したトランジスタ10Bに、上記構成例1-2(図1(B))で例示したトランジスタ10Aが有する導電層106を適用した場合の例である。
【0123】
このような構成とすることで、電気特性が良好で、且つ極めて信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0124】
〔構成例1-5〕
図3(A)は、トランジスタ10Dの断面概略図である。トランジスタ10Dは、上記トランジスタ10と比較して、絶縁層110の構成が異なる点で、主に相違している。
【0125】
絶縁層110は、絶縁層103側から絶縁膜110a、絶縁膜110b、及び絶縁膜110cがこの順に積層された積層構造を有する。絶縁膜110aは、半導体層108のチャネル形成領域と接する領域を有する。絶縁膜110cは、金属酸化物層114と接する領域を有する。絶縁膜110bは、絶縁膜110aと絶縁膜110cの間に位置する。
【0126】
絶縁膜110a、絶縁膜110b、及び絶縁膜110cは、それぞれ酸化物を含む絶縁膜であることが好ましい。このとき、絶縁膜110a、絶縁膜110b及び絶縁膜110cは、それぞれ同じ成膜装置で連続して成膜されることが好ましい。
【0127】
絶縁膜110a、絶縁膜110b、及び絶縁膜110cとしては、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種以上含む絶縁層を用いることができる。
【0128】
半導体層108と接する絶縁層110は、酸化物絶縁膜の積層構造を有することが好ましい。また絶縁層110は、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域を有することがより好ましい。別言すると、絶縁層110は、酸素を放出することが可能な絶縁膜を有する。例えば、酸素雰囲気下にて絶縁層110を形成すること、絶縁層110の成膜後に酸素雰囲気下での熱処理を行うこと、絶縁層110の成膜後に酸素雰囲気下でプラズマ処理等を行うこと、または、絶縁層110上に酸素雰囲気下で酸化物膜を成膜することなどにより、絶縁層110中に酸素を供給することもできる。なお、上記酸素を供給する各処理において、酸素に代えて、または酸素に加えて、酸化性ガス(例えば一酸化二窒素や、オゾンなど)を用いてもよい。
【0129】
絶縁膜110a、絶縁膜110b及び絶縁膜110cは、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、PLD法、ALD法等を用いて形成することができる。また、CVD法としては、プラズマCVD法や、熱CVD法などがある。
【0130】
特に、絶縁膜110a、絶縁膜110b及び絶縁膜110cは、プラズマCVD法により形成することが好ましい。
【0131】
絶縁膜110aは、半導体層108上に成膜されるため、出来るだけ半導体層108にダメージを与えない条件で成膜された膜であることが好ましい。例えば、成膜速度(成膜レートともいう)が十分に低い条件で成膜することができる。
【0132】
例えば、絶縁膜110aとして、プラズマCVD法により酸化窒化シリコン膜を形成する場合、低電力の条件で形成することにより、半導体層108に与えるダメージを極めて小さくすることができる。
【0133】
酸化窒化シリコン膜の成膜に用いる成膜ガスには、例えばシラン、ジシランなどのシリコンを含む堆積性ガスと、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素などの酸化性ガスと、を含む原料ガスを用いることができる。また原料ガスに加えて、アルゴン、ヘリウム、または窒素などの希釈ガスを含んでもよい。
【0134】
例えば、成膜ガスの全流量に対する堆積性ガスの流量の割合(以下、単に流量比ともいう)を小さくすることで、成膜速度を低くでき、緻密で欠陥の少ない膜を成膜することができる。
【0135】
絶縁膜110bは、絶縁膜110aよりも成膜速度の高い条件で成膜された膜であることが好ましい。これにより、生産性を向上させることができる。
【0136】
例えば絶縁膜110bは、絶縁膜110aよりも堆積性ガスの流量比を増やした条件とすることで、成膜速度を高めた条件で成膜することができる。
【0137】
絶縁膜110cは、その表面の欠陥が低減され、水などの大気中に含まれる不純物が吸着しにくい、極めて緻密な膜であることが好ましい。例えば、絶縁膜110aと同様に、成膜速度が十分に低い条件で成膜することができる。
【0138】
また、絶縁膜110cは絶縁膜110b上に成膜するため、絶縁膜110aと比較して絶縁膜110cの成膜時に半導体層108へ与える影響は小さい。そのため、絶縁膜110cは、絶縁膜110aよりも高い電力の条件で成膜することができる。堆積性ガスの流量比を減らし、比較的高い電力で成膜することで、緻密で表面の欠陥が低減された膜とすることができる。
【0139】
すなわち、成膜速度が、絶縁膜110bが最も高く、絶縁膜110a、絶縁膜110cの順で低くなるような条件で成膜された積層膜を、絶縁層110に用いることができる。また、絶縁層110は、ウェットエッチングまたはドライエッチングにおける同一条件下でのエッチング速度が、絶縁膜110bが最も高く、絶縁膜110a、絶縁膜110cの順で低くなる。
【0140】
また、絶縁膜110bは、絶縁膜110a及び絶縁膜110cよりも厚く形成することが好ましい。成膜速度の最も早い絶縁膜110bを厚く形成することで、絶縁層110の成膜工程に係る時間を短縮することができる。
【0141】
ここで、絶縁膜110aと絶縁膜110bの境界、及び絶縁膜110bと絶縁膜110cの境界は不明瞭である場合があるため、図3(A)等では、これらの境界を破線で明示している。なお、絶縁膜110aと絶縁膜110bは、膜密度が異なるため、絶縁層110の断面における透過型電子顕微鏡像などにおいて、これらの境界をコントラストの違いとして観察することができる場合がある。同様に、絶縁膜110bと絶縁膜110cの境界もコントラストの違いとして観察することができる場合がある。
【0142】
本発明の一態様のトランジスタ10Dは、半導体層108にガリウムの含有量の小さい金属酸化物膜、またはガリウムを含有しない金属酸化物膜を適用することが好ましい。さらに、半導体層108の上面に接する絶縁膜110aとして、半導体層108に与えるダメージが低減された成膜方法で形成した膜を用いることが好ましい。これにより、半導体層108と絶縁層110の界面における欠陥準位密度が低減され、高い信頼性を有するトランジスタ10Dとすることができる。
【0143】
〔構成例1-6〕
図3(B)は、トランジスタ10Eの断面概略図である。トランジスタ10Eは、上記構成例1-5(図3(A))で例示したトランジスタ10Dに、上記構成例1-2(図1(B))で例示したトランジスタ10Aが有する導電層106を適用した場合の例である。
【0144】
このような構成とすることで、電気特性が良好で、且つ極めて信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0145】
なお、構成例1-5で例示したトランジスタ10D、及び構成例1-6で例示したトランジスタ10Eに、構成例1-3で例示したトランジスタ10Bに適用された、積層構造を有する半導体層108を適用することもできる。これにより、さらに電気特性が良好で、且つ信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0146】
[構成例2]
以下では、より具体的なトランジスタの構成例について説明する。
【0147】
〔構成例2-1〕
図4(A)は、トランジスタ100の上面図であり、図4(B)は、図4(A)に示す一点鎖線A1-A2における切断面の断面図に相当し、図4(C)は、図4(A)に示す一点鎖線B1-B2における切断面の断面図に相当する。なお、図4(A)において、トランジスタ100の構成要素の一部(ゲート絶縁層等)を省略して図示している。また、一点鎖線A1-A2方向はチャネル長方向、一点鎖線B1-B2方向はチャネル幅方向に相当する。また、トランジスタの上面図については、以降の図面においても図4(A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示するものとする。
【0148】
トランジスタ100は、基板102上に設けられ、絶縁層103、半導体層108、絶縁層110、金属酸化物層114、導電層112、絶縁層118等を有する。島状の半導体層108は、絶縁層103上に設けられる。絶縁層110は、絶縁層103の上面、ならびに半導体層108の上面及び側面に接して設けられる。金属酸化物層114及び導電層112は、絶縁層110上にこの順に積層して設けられ、半導体層108と重畳する部分を有する。絶縁層118は、絶縁層110の上面、金属酸化物層114の側面、及び導電層112の上面を覆って設けられている。
【0149】
絶縁層103は、基板102側から絶縁膜103a、絶縁膜103b、及び絶縁膜103cが積層された、積層構造を有する。また、絶縁層110は、半導体層108側から絶縁膜110a、絶縁膜110b、及び絶縁膜110cが積層された、積層構造を有する。
【0150】
また、図4(A)及び図4(B)に示すように、トランジスタ100は、絶縁層118上に導電層120a及び導電層120bを有していてもよい。導電層120a及び導電層120bは、ソース電極またはドレイン電極として機能する。導電層120a及び導電層120bは、それぞれ絶縁層118、及び絶縁層110に設けられた開口部141aまたは開口部141bを介して、低抵抗領域108nに電気的に接続される。
【0151】
導電層112の一部は、ゲート電極として機能する。絶縁層110の一部は、ゲート絶縁層として機能する。トランジスタ100は、半導体層108上にゲート電極が設けられた、いわゆるトップゲート型のトランジスタである。
【0152】
導電層112、及び金属酸化物層114は、上面形状が互いに概略一致するように加工されている。
【0153】
なお、本明細書等において「上面形状が概略一致」とは、積層した層と層との間で少なくとも輪郭の一部が重なることをいう。例えば、上層と下層とが、同一のマスクパターン、または一部が同一のマスクパターンにより加工された場合を含む。ただし、厳密には輪郭が重なり合わず、上層が下層の内側に位置することや、上層が下層の外側に位置することもあり、この場合も「上面形状が概略一致」という。
【0154】
絶縁層110と導電層112との間に位置する金属酸化物層114は、絶縁層110に含まれる酸素が導電層112側に拡散することを防ぐバリア膜として機能する。さらに金属酸化物層114は、導電層112に含まれる水素や水が絶縁層110側に拡散することを防ぐバリア膜としても機能する。金属酸化物層114は、例えば少なくとも絶縁層110よりも酸素及び水素を透過しにくい材料を用いることが好ましい。
【0155】
金属酸化物層114により、導電層112にアルミニウムや銅などの酸素を吸引しやすい金属材料を用いた場合であっても、絶縁層110から導電層112へ酸素が拡散することを防ぐことができる。また、導電層112が水素を含む場合であっても、導電層112から絶縁層110を介して半導体層108へ水素が拡散することを防ぐことができる。その結果、半導体層108のチャネル形成領域におけるキャリア密度を極めて低いものとすることができる。
【0156】
金属酸化物層114としては、絶縁性材料または導電性材料を用いることができる。金属酸化物層114が絶縁性を有する場合には、金属酸化物層114はゲート絶縁層の一部として機能する。一方、金属酸化物層114が導電性を有する場合には、金属酸化物層114はゲート電極の一部として機能する。
【0157】
金属酸化物層114として、酸化シリコンよりも誘電率の高い絶縁性材料を用いることが好ましい。特に、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、またはハフニウムアルミネート膜等を用いると、駆動電圧を低減できるため好ましい。
【0158】
金属酸化物層114として、例えば酸化インジウム、インジウムスズ酸化物(ITO)、またはシリコンを含有したインジウムスズ酸化物(ITSO)などの、導電性酸化物を用いることもできる。特にインジウムを含む導電性酸化物は、導電性が高いため好ましい。
【0159】
また、金属酸化物層114として、半導体層108と同一の元素を一以上含む酸化物材料を用いることが好ましい。特に、上記半導体層108に適用可能な酸化物半導体材料を用いることが好ましい。このとき、金属酸化物層114として、半導体層108と同じスパッタリングターゲットを用いて形成した金属酸化物膜を適用することで、装置を共通化できるため好ましい。
【0160】
また、金属酸化物層114は、スパッタリング装置を用いて形成すると好ましい。例えば、スパッタリング装置を用いて酸化物膜を形成する場合、酸素ガスを含む雰囲気で形成することで、絶縁層110や半導体層108に好適に酸素を添加することができる。
【0161】
なお、金属酸化物層114に用いることのできる金属酸化物膜を成膜し、絶縁層110や半導体層108に対して酸素を供給したのちに、当該金属酸化物膜を除去してもよい。また、金属酸化物層114または金属酸化物層114に用いることのできる金属酸化物膜は、不要であれば設けなくてもよい。
【0162】
半導体層108は、導電層112と重畳する領域と、当該領域を挟む一対の低抵抗領域108nを有する。半導体層108の、導電層112と重畳する領域は、トランジスタ100のチャネル形成領域として機能する。一方、一対の低抵抗領域108nは、トランジスタ100のソース領域及びドレイン領域として機能する。
【0163】
また低抵抗領域108nは、チャネル形成領域よりも、低抵抗な領域、キャリア濃度が高い領域、酸素欠陥密度の高い領域、不純物濃度の高い領域、またはn型である領域ともいうことができる。
【0164】
半導体層108の低抵抗領域108nは、不純物元素を含む領域であってもよい。当該不純物元素としては、例えば水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、ヒ素、アルミニウム、または希ガスなどが挙げられる。なお、希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。特に、ホウ素またはリンを含むことが好ましい。またこれら元素を2以上含んでいてもよい。
【0165】
後述するように、低抵抗領域108nに不純物を添加する処理は、導電層112をマスクとして、絶縁層110を介して行うことができる。
【0166】
低抵抗領域108nは、不純物濃度が、1×1019atoms/cm以上、1×1023atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以上、5×1022atoms/cm以下、より好ましくは1×1020atoms/cm以上、1×1022atoms/cm以下である領域を含むことが好ましい。
【0167】
低抵抗領域108nに含まれる不純物の濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)や、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)等の分析法により分析することができる。XPS分析を用いる場合には、表面側または裏面側からのイオンスパッタリングとXPS分析を組み合わせることで、深さ方向の濃度分布を知ることができる。
【0168】
また、低抵抗領域108nにおいて、不純物元素は酸化した状態で存在していることが好ましい。例えば不純物元素としてホウ素、リン、マグネシウム、アルミニウム、及びシリコンなどの酸化しやすい元素を用いることが好ましい。このような酸化しやすい元素は、半導体層108中の酸素と結合して酸化した状態で安定に存在しうるため、後の工程で高い温度(例えば400℃以上、600℃以上、または800℃以上)がかかった場合であっても、脱離することが抑制される。また、不純物元素が半導体層108中の酸素を奪うことで、低抵抗領域108n中に多くの酸素欠損が生成される。この酸素欠損と、膜中の水素とが結合することでキャリア供給源となるため、低抵抗領域108nは極めて低抵抗な状態となる。
【0169】
例えば、不純物元素としてホウ素を用いた場合、低抵抗領域108nに含まれるホウ素は酸素と結合した状態で存在しうる。このことは、XPS分析において、B結合に起因するスペクトルピークが観測されることで確認できる。また、XPS分析において、ホウ素元素が単体で存在する状態に起因するスペクトルピークが観測されない、または測定下限付近に観測されるバックグラウンドノイズに埋もれる程度にまでピーク強度が極めて小さくなる。
【0170】
絶縁層110は、半導体層108のチャネル形成領域と接する領域、すなわち導電層112と重畳する領域を有する。また、絶縁層110は、半導体層108の低抵抗領域108nと接し、且つ導電層112と重畳しない領域を有する。
【0171】
絶縁層110の、低抵抗領域108nと重畳する領域には、上述した不純物元素が含まれる場合がある。このとき、低抵抗領域108nと同様に、絶縁層110中の不純物元素も酸素と結合した状態で存在することが好ましい。このような酸化しやすい元素は、絶縁層110中の酸素と結合して酸化した状態で安定に存在しうるため、後の工程で高い温度がかかった場合でも脱離することが抑制される。また特に絶縁層110中に加熱により脱離しうる酸素(過剰酸素ともいう)が含まれる場合には、当該過剰酸素と不純物元素とが結合して安定化するため、絶縁層110から低抵抗領域108nへ酸素が供給されることを抑制することができる。また、酸化した状態の不純物元素が含まれる絶縁層110の一部は、酸素が拡散しにくい状態となるため、絶縁層110よりも上側から当該絶縁層110を介して低抵抗領域108nに酸素が供給されることが抑制され、低抵抗領域108nが高抵抗化することも防ぐことができる。
【0172】
絶縁層118は、トランジスタ100を保護する保護層として機能する。絶縁層110としては、例えば酸化物または窒化物などの無機絶縁材料を用いることができる。より具体的な例としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネートなどの無機絶縁材料を用いることができる。
【0173】
〔構成例2-2〕
図5(A)は、トランジスタ100Aの上面図であり、図5(B)はトランジスタ100Aのチャネル長方向の断面図であり、図5(C)はトランジスタ100Aのチャネル幅方向の断面図である。
【0174】
トランジスタ100Aは、基板102と絶縁層103との間に導電層106を有する点で、構成例2-1と主に相違している。導電層106は半導体層108及び導電層112と重なる領域を有する。
【0175】
トランジスタ100Aにおいて、導電層112は、第2のゲート電極(トップゲート電極ともいう)としての機能を有し、導電層106は、第1のゲート電極(ボトムゲート電極ともいう)としての機能を有する。また、絶縁層110の一部は、第2のゲート絶縁層として機能し、絶縁層103の一部は、第1のゲート絶縁層として機能する。
【0176】
半導体層108の、導電層112及び導電層106の少なくとも一方と重なる部分は、チャネル形成領域として機能する。なお以下では説明を容易にするため、半導体層108の導電層112と重なる部分をチャネル形成領域と呼ぶ場合があるが、実際には導電層112と重ならずに、導電層106と重なる部分(低抵抗領域108nを含む部分)にもチャネルが形成しうる。
【0177】
また、図5(C)に示すように、導電層106は、金属酸化物層114、絶縁層110、及び絶縁層103に設けられた開口部142を介して、導電層112と電気的に接続されていてもよい。これにより、導電層106と導電層112には、同じ電位を与えることができる。
【0178】
導電層106は、導電層112、導電層120a、または導電層120bと同様の材料を用いることができる。特に導電層106に銅を含む材料を用いると、配線抵抗を低減できるため好ましい。
【0179】
また、図5(A)及び図5(C)に示すように、チャネル幅方向において、導電層112及び導電層106が、半導体層108の端部よりも外側に突出していることが好ましい。このとき、図5(C)に示すように、半導体層108のチャネル幅方向の全体が、絶縁層110と絶縁層103を介して、導電層112と導電層106に覆われた構成となる。
【0180】
このような構成とすることで、半導体層108を一対のゲート電極によって生じる電界で、電気的に取り囲むことができる。このとき特に、導電層106と導電層112に同じ電位を与えることが好ましい。これにより、半導体層108にチャネルを誘起させるための電界を効果的に印加できるため、トランジスタ100Aのオン電流を増大させることができる。そのため、トランジスタ100Aを微細化することも可能となる。
【0181】
なお、導電層112と導電層106とを接続しない構成としてもよい。このとき、一対のゲート電極の一方に定電位を与え、他方にトランジスタ100Aを駆動するための信号を与えてもよい。このとき、一方のゲート電極に与える電位により、トランジスタ100Aを他方のゲート電極で駆動する際のしきい値電圧を制御することもできる。
【0182】
また、導電層106は、導電層120aまたは導電層120bと電気的に接続されていてもよい。このとき、絶縁層118、絶縁層110、及び絶縁層103に設けられた開口部を介して、導電層120aまたは導電層120bと、導電層106とが電気的に接続する構成とすればよい。
【0183】
〔構成例2-3〕
図6(A)は、トランジスタ100Bの上面図であり、図6(B)はトランジスタ100Bのチャネル長方向の断面図であり、図6(C)はトランジスタ100Bのチャネル幅方向の断面図である。
【0184】
トランジスタ100Bは、構成例2-1で例示したトランジスタ100と比較して、絶縁層110の構成が異なる点、及び絶縁層116を有する点で、主に相違している。
【0185】
絶縁層110は、導電層112及び金属酸化物層114と上面形状が概略一致するように加工されている。絶縁層110は、例えば導電層112及び金属酸化物層114を加工するためのレジストマスクを用いて加工することにより形成することができる。
【0186】
絶縁層116は、半導体層108の導電層112、金属酸化物層114、及び絶縁層110に覆われていない上面及び側面に接して設けられている。また絶縁層116は、絶縁層103の上面、絶縁層110の側面、金属酸化物層114の側面、及び導電層112の上面及び側面を覆って設けられている。
【0187】
絶縁層116は、低抵抗領域108nを低抵抗化させる機能を有する。このような絶縁層116としては、絶縁層116の成膜時、または成膜後に加熱することにより、低抵抗領域108n中に不純物を供給することのできる絶縁膜を用いることができる。または、絶縁層116の成膜時、または成膜後に加熱することにより、低抵抗領域108n中に酸素欠損を生じさせることのできる絶縁膜を用いることができる。
【0188】
例えば、絶縁層116として、低抵抗領域108nに不純物を供給する供給源として機能する絶縁膜を用いることができる。このとき、絶縁層116は、加熱により水素を放出する膜であることが好ましい。このような絶縁層116を半導体層108に接して形成することで、低抵抗領域108nに水素などの不純物を供給し、低抵抗領域108nを低抵抗化させることができる。
【0189】
絶縁層116は、成膜の際に用いる成膜ガスに、水素元素などの不純物元素を含むガスを用いて成膜される膜であることが好ましい。また絶縁層116の成膜温度が低いほど、半導体層108に効果的に多くの不純物元素を供給することができる。絶縁層116の成膜温度としては、例えば200℃以上500℃以下、好ましくは220℃以上450℃以下、より好ましくは230℃以上400℃以下とすることができる。
【0190】
また、絶縁層116の成膜を減圧下で、且つ加熱して行うことで、半導体層108中の低抵抗領域108nとなる領域からの酸素の脱離を促進することができる。酸素欠損が多く形成された半導体層108に、水素などの不純物を供給することで、低抵抗領域108n中のキャリア密度が高まり、より効果的に低抵抗領域108nを低抵抗化させることができる。
【0191】
絶縁層116としては、例えば、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの、窒化物を含む絶縁膜を好適に用いることができる。特に窒化シリコンは、水素や酸素に対するブロッキング性を有するため、外部から半導体層への水素の拡散と、半導体層から外部への酸素の脱離の両方を防ぐことができ、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0192】
また、絶縁層116は、半導体層108中の酸素を吸引し、酸素欠損を生成する機能を有する絶縁膜としてもよい。特に、絶縁層116には、例えば窒化アルミニウムなどの金属窒化物を用いることが特に好ましい。
【0193】
また、金属窒化物を用いる場合、アルミニウム、チタン、タンタル、タングステン、クロム、またはルテニウムの窒化物を用いることが好ましい。特に、アルミニウムまたはチタンを含むことが好ましい。例えば、アルミニウムをスパッタリングターゲットに用い、成膜ガスとして窒素を含むガスを用いた反応スパッタリング法により形成した窒化アルミニウム膜は、成膜ガスの全流量に対する窒素ガスの流量を適切に制御することで、極めて高い絶縁性と、水素や酸素に対する極めて高いブロッキング性とを兼ね備えた膜とすることができる。そのため、このような金属窒化物を含む絶縁膜を、半導体層に接して設けることで、半導体層を低抵抗化できるだけでなく、半導体層から酸素が脱離すること、及び半導体層へ水素が拡散することを好適に防ぐことができる。
【0194】
金属窒化物として、窒化アルミニウムを用いた場合、当該窒化アルミニウムを含む絶縁層の厚さを5nm以上とすることが好ましい。このように薄い膜であっても、水素及び酸素に対する高いブロッキング性と、半導体層の低抵抗化の機能とを両立できる。なお、当該絶縁層の厚さはどれだけ厚くてもよいが、生産性を考慮し、500nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは50nm以下とすることが好ましい。
【0195】
絶縁層116に窒化アルミニウム膜を用いる場合、組成式がAlN(xは0より大きく2以下の実数、好ましくは、xは0.5より大きく1.5以下の実数)を満たす膜を用いることが好ましい。これにより、絶縁性に優れ、且つ熱伝導性に優れた膜とすることができるため、トランジスタ100Bを駆動したときに生じる熱の放熱性を高めることができる。
【0196】
または、絶縁層116として、窒化アルミニウムチタン膜、窒化チタン膜などを用いることができる。
【0197】
このような絶縁層116を低抵抗領域108nに接して設けることで、絶縁層116が低抵抗領域108n中の酸素を吸引し、低抵抗領域108n中に酸素欠損を形成させることができる。またこのような絶縁層116を形成した後に、加熱処理を行うことで、低抵抗領域108nにより多くの酸素欠損を形成することができ、低抵抗化を促進することができる。また、絶縁層116に金属酸化物を含む膜を用いた場合、絶縁層116が半導体層108中の酸素を吸引した結果、絶縁層116と低抵抗領域108nとの間に、絶縁層116に含まれる金属元素(例えばアルミニウム)の酸化物を含む層が形成される場合がある。
【0198】
ここで、半導体層108として、インジウムを含む金属酸化物膜を用いた場合、低抵抗領域108nの絶縁層116側の界面近傍に、酸化インジウムが析出した領域、または、インジウム濃度の高い領域が形成されている場合がある。これにより、極めて低抵抗な低抵抗領域108nを形成することができる。このような領域の存在は、例えば、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)等の分析法で観測できる場合がある。
【0199】
なお、ここでは半導体層108の一部を低抵抗化させるための膜として、絶縁層116を用いる例を示したが、絶縁層118を半導体層108の一部に接して設けることにより、半導体層108の一部を低抵抗化させてもよい。すなわち、絶縁層116を設けない構成とすることもできる。このとき、半導体層108の一部と接する絶縁層118として、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜などの酸化物を含む絶縁膜を用いることもできる。
【0200】
〔構成例2-4〕
図7(A)は、トランジスタ100Cの上面図であり、図7(B)はトランジスタ100Cのチャネル長方向の断面図であり、図7(C)はトランジスタ100Cのチャネル幅方向の断面図である。
【0201】
トランジスタ100Cは、構成例2-3で例示したトランジスタ100Bに、構成例2-2で例示した、第1のゲート電極として機能する導電層106を設けた場合の例である。
【0202】
このような構成とすることで、オン電流の高いトランジスタとすることができる。または、しきい値電圧を制御することのできるトランジスタとすることができる。
【0203】
[構成例2の変形例1]
上記構成例2-1乃至2-4では、半導体層108を単層として示していたが、半導体層108を、半導体層108aと半導体層108bとが積層した積層構造とすることが好ましい。
【0204】
図8(A)に示すトランジスタ100_aは、構成例2-1で例示したトランジスタ100の、半導体層108を積層構造とした場合の例である。図8(A)では、一点鎖線よりも左側にチャネル長方向の断面を、右側にチャネル幅方向の断面を、並べて明示している。
【0205】
同様に、図8(B)に示すトランジスタ100A_a、図8(C)に示すトランジスタ100B_a、及び図8(D)に示すトランジスタ100C_aは、それぞれトランジスタ100A、トランジスタ100B、またはトランジスタ100Cの、半導体層108を積層構造とした場合の例である。
【0206】
[構成例2の変形例2]
上述のように、絶縁層110と導電層112との間に位置する金属酸化物層114は、絶縁層110へ酸素を供給した後に、除去することもできる。または、金属酸化物層114を用いない構成とすることもできる。
【0207】
図9(A)に示すトランジスタ100_bは、図8(A)で例示したトランジスタ100_aにおける、金属酸化物層114を除去した場合、または金属酸化物層114を用いない場合の例である。
【0208】
同様に、図9(B)に示すトランジスタ100A_b、図9(C)に示すトランジスタ100B_b、及び図9(D)に示すトランジスタ100C_bは、それぞれトランジスタ100A_a、トランジスタ100B_a、またはトランジスタ100C_aにおける、金属酸化物層114を除去した場合、または金属酸化物層114を用いない場合の例である。
【0209】
[構成例2の変形例3]
上述のように、トランジスタ100B及びトランジスタ100Cにおいて、絶縁層116を設けずに、絶縁層118が半導体層108の一部と接する構成とすることもできる。
【0210】
図10(A)に示すトランジスタ100B_c、図10(B)に示すトランジスタ100C_cは、それぞれトランジスタ100B、トランジスタ100Cにおける、絶縁層116を設けない場合の例である。また、図10(C)に示すトランジスタ100B_d、図10(D)に示すトランジスタ100C_dは、それぞれ絶縁層116と、金属酸化物層114を有さない場合の例である。
【0211】
[作製方法例1]
以下では、本発明の一態様のトランジスタの作製方法の例について説明する。ここでは、構成例2-2で例示したトランジスタ100Aを例に挙げて説明する。
【0212】
なお、半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、PLD法、ALD法等を用いて形成することができる。CVD法としては、PECVD法や、熱CVD法などがある。また、熱CVD法のひとつに、有機金属化学気相堆積(MOCVD:Metal Organic CVD)法がある。
【0213】
また、半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、ナイフコート等の方法により形成することができる。
【0214】
また、半導体装置を構成する薄膜を加工する際には、フォトリソグラフィ法等を用いて加工することができる。それ以外に、ナノインプリント法、サンドブラスト法、リフトオフ法などにより薄膜を加工してもよい。また、メタルマスクなどの遮蔽マスクを用いた成膜方法により、島状の薄膜を直接形成してもよい。
【0215】
フォトリソグラフィ法としては、代表的には以下の2つの方法がある。一つは、加工したい薄膜上にレジストマスクを形成して、エッチング等により当該薄膜を加工し、レジストマスクを除去する方法である。もう一つは、感光性を有する薄膜を成膜した後に、露光、現像を行って、当該薄膜を所望の形状に加工する方法である。
【0216】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、またはこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外(EUV:Extreme Ultra-violet)光やX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に代えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線または電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビームなどのビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0217】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、サンドブラスト法などを用いることができる。
【0218】
図11(A)乃至図13(B)には、トランジスタ100Aの作製工程の各段階におけるチャネル長方向及びチャネル幅方向の断面を並べて示している。
【0219】
〔導電層106の形成〕
基板102上に導電膜を成膜し、これをエッチングにより加工して、ゲート電極として機能する導電層106を形成する(図11(A))。
【0220】
このとき、図11(A)に示すように、導電層106の端部がテーパ形状となるように加工することが好ましい。これにより、次に形成する絶縁層103の段差被覆性を高めることができる。
【0221】
また、導電層106となる導電膜として、銅を含む導電膜を用いることで、配線抵抗を小さくすることができる。例えば大型の表示装置に適用する場合や、解像度の高い表示装置とする場合には、銅を含む導電膜を用いることが好ましい。また、導電層106に銅を含む導電膜を用いた場合であっても、絶縁層103により銅が半導体層108側に拡散することが抑制されるため、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0222】
〔絶縁層103の形成〕
続いて、基板102及び導電層106を覆って、絶縁層103を形成する(図11(B))。絶縁層103は、PECVD法、ALD法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
【0223】
ここでは、絶縁層103として、絶縁膜103a、絶縁膜103b、及び絶縁膜103cを積層して形成する。
【0224】
特に、絶縁層103を構成する各絶縁膜は、PECVD法により形成することが好ましい。絶縁層103の形成方法としては、上記構成例1の記載を援用することができる。
【0225】
絶縁層103を形成した後に、絶縁層103に対して酸素を供給する処理を行ってもよい。例えば、酸素雰囲気下でのプラズマ処理または加熱処理などを行うことができる。または、プラズマイオンドーピング法やイオン注入法により、絶縁層103に酸素を供給してもよい。
【0226】
〔半導体層108の形成〕
続いて、絶縁層103上に金属酸化物膜108fを成膜する(図11(C))。
【0227】
金属酸化物膜108fは、金属酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法により形成することが好ましい。
【0228】
金属酸化物膜108fは、可能な限り欠陥の少ない緻密な膜とすることが好ましい。また、金属酸化物膜108fは、可能な限り水素や水などの不純物が低減され、高純度な膜であることが好ましい。特に、金属酸化物膜108fとして、結晶性を有する金属酸化物膜を用いることが好ましい。
【0229】
また、金属酸化物膜を成膜する際に、酸素ガスと、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガスなど)とを混合させてもよい。なお、金属酸化物膜を成膜する際の成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合(以下、酸素流量比ともいう)が高いほど、金属酸化物膜の結晶性を高めることができ、信頼性の高いトランジスタを実現できる。一方、酸素流量比が低いほど、金属酸化物膜の結晶性が低くなり、オン電流が高められたトランジスタとすることができる。
【0230】
金属酸化物膜を成膜する際、基板温度が高いほど、結晶性が高く、緻密な金属酸化物膜とすることができる。一方、基板温度が低いほど、結晶性が低く、電気伝導性の高い金属酸化物膜とすることができる。
【0231】
金属酸化物膜の成膜条件としては、基板温度を室温以上250℃以下、好ましくは室温以上200℃以下、より好ましくは基板温度を室温以上140℃以下とすればよい。例えば基板温度を、室温以上140℃未満とすると、生産性が高くなり好ましい。また、基板温度を室温とする、または意図的に加熱しない状態で、金属酸化物膜を成膜することにより、結晶性を低くすることができる。
【0232】
また、金属酸化物膜108fを成膜する前に、絶縁層103の表面に吸着した水や水素、有機物等を脱離させるための処理、及び絶縁層103中に酸素を供給する処理のうち、少なくとも一方を行うことが好ましい。例えば、減圧雰囲気下にて70℃以上200℃以下の温度で加熱処理を行うことができる。または、酸素を含む雰囲気下におけるプラズマ処理を行ってもよい。または、一酸化二窒素(NO)などの酸化性気体を含む雰囲気下におけるプラズマ処理により、絶縁層103に酸素を供給してもよい。一酸化二窒素ガスを含むプラズマ処理を行うと、絶縁層103の表面の有機物を好適に除去しつつ、酸素を供給することができる。このような処理の後、絶縁層103の表面を大気に暴露することなく、連続して金属酸化物膜108fを成膜することが好ましい。
【0233】
なお、半導体層108として、複数の半導体層を積層した積層構造とする場合には、先に形成する金属酸化物膜を成膜した後に、その表面を大気に曝すことなく連続して、次の金属酸化物膜を成膜することが好ましい。
【0234】
続いて、金属酸化物膜108fの一部をエッチングすることにより、島状の半導体層108を形成する(図11(D))。
【0235】
金属酸化物膜108fの加工には、ウェットエッチング法またはドライエッチング法のいずれか一方、または双方を用いればよい。このとき、半導体層108と重ならない絶縁層103の一部がエッチングされ、薄くなる場合がある。例えば、絶縁層103のうち、絶縁膜103cがエッチングにより消失し、絶縁膜103bの表面が露出する場合もある。
【0236】
ここで、金属酸化物膜108fの成膜後、または金属酸化物膜108fを半導体層108に加工した後に、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理により、金属酸化物膜108fまたは半導体層108中に含まれる、または表面に吸着した水素または水を除去することができる。また、加熱処理により、金属酸化物膜108fまたは半導体層108の膜質が向上する(例えば欠陥の低減、結晶性の向上など)場合がある。
【0237】
また、加熱処理により、絶縁層103から金属酸化物膜108f、または半導体層108に酸素を供給することもできる。このとき、半導体層108に加工する前に加熱処理を行うことがより好ましい。
【0238】
加熱処理の温度は、代表的には150℃以上基板の歪み点未満、または200℃以上500℃以下、または250℃以上450℃以下、または300℃以上450℃以下とすることができる。
【0239】
加熱処理は、希ガス、または窒素を含む雰囲気で行うことができる。または、当該雰囲気で加熱した後、酸素を含む雰囲気で加熱してもよい。または、乾燥空気雰囲気で加熱してもよい。なお、上記加熱処理の雰囲気に水素、水などができるだけ含まれないことが好ましい。該加熱処理は、電気炉、またはRTA(Rapid Thermal Anneal)装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、加熱処理時間を短縮することができる。
【0240】
なお、当該加熱処理は不要であれば行わなくてもよい。また、ここでは加熱処理は行わず、後の工程で行われる加熱処理と兼ねてもよい。また、後の工程での高温下の処理(例えば成膜工程など)などで、当該加熱処理と兼ねることができる場合もある。
【0241】
〔絶縁層110の形成〕
続いて、絶縁層103及び半導体層108を覆って、絶縁層110を形成する(図11(E))。
【0242】
ここでは、絶縁層110として、絶縁膜110a、絶縁膜110b、及び絶縁膜110cを積層して形成する。
【0243】
特に、絶縁層110を構成する各絶縁膜は、PECVD法により形成することが好ましい。絶縁層110を構成する各層の形成方法としては、上記構成例1の記載を援用することができる。
【0244】
また、絶縁層110の成膜前に、半導体層108の表面に対してプラズマ処理を行なうことが好ましい。当該プラズマ処理により、半導体層108の表面に吸着する水などの不純物を低減することができる。そのため、半導体層108と絶縁層110との界面における不純物を低減できるため、信頼性の高いトランジスタを実現できる。特に、半導体層108の形成から、絶縁層110の成膜までの間に半導体層108の表面が大気に曝される場合には好適である。プラズマ処理としては、例えば酸素、オゾン、窒素、一酸化二窒素、アルゴンなどの雰囲気下で行うことができる。また、プラズマ処理と絶縁層110の成膜とは、大気に曝すことなく連続して行われることが好ましい。
【0245】
ここで、絶縁層110を成膜した後に、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理により、絶縁層110中に含まれる、または表面に吸着した水素または水を除去することができる。また、絶縁層110中の欠陥を低減することができる。
【0246】
加熱処理の条件は、上記記載を援用することができる。
【0247】
なお、当該加熱処理は不要であれば行わなくてもよい。また、ここでは加熱処理は行わず、後の工程で行われる加熱処理と兼ねてもよい。また、後の工程での高温下の処理(例えば成膜工程など)などで、当該加熱処理と兼ねることができる場合もある。
【0248】
〔金属酸化物膜114fの形成〕
続いて、絶縁層110上に、金属酸化物膜114fを形成する(図12(A))。
【0249】
金属酸化物膜114fは、例えば酸素を含む雰囲気下で成膜することが好ましい。特に、酸素を含む雰囲気下でスパッタリング法により形成することが好ましい。これにより、金属酸化物膜114fの成膜時に絶縁層110に酸素を供給することができる。なお、金属酸化物膜114fの成膜時に、半導体層108に酸素が供給されてもよい。
【0250】
金属酸化物膜114fを、上記半導体層108の場合と同様の金属酸化物を含む酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法により形成する場合には、上記記載を援用することができる。
【0251】
例えば金属酸化物膜114fの成膜条件として、成膜ガスに酸素を用い、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法により、金属酸化物膜を形成してもよい。金属ターゲットとして、例えばアルミニウムを用いた場合には、酸化アルミニウム膜を成膜することができる。
【0252】
金属酸化物膜114fの成膜時に、成膜装置の成膜室内に導入する成膜ガスの全流量に対する酸素流量の割合(酸素流量比)、または成膜室内の酸素分圧が高いほど、絶縁層110中に供給される酸素を増やすことができる。酸素流量比または酸素分圧は、例えば50%以上100%以下、好ましくは65%以上100%以下、より好ましくは80%以上100%以下、さらに好ましくは90%以上100%以下とする。特に、酸素流量比を100%とし、成膜室内の酸素分圧を100%にできるだけ近づけることが好ましい。
【0253】
このように、酸素を含む雰囲気下でスパッタリング法により金属酸化物膜114fを形成することにより、金属酸化物膜114fの成膜時に、絶縁層110へ酸素を供給するとともに、絶縁層110から酸素が脱離することを防ぐことができる。その結果、絶縁層110に極めて多くの酸素を閉じ込めることができる。
【0254】
金属酸化物膜114fの成膜後に、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理により、絶縁層110に含まれる酸素を、半導体層108に供給することができる。金属酸化物膜114fが絶縁層110を覆った状態で加熱することにより、絶縁層110から外部へ酸素が脱離することを防ぎ、半導体層108に多くの酸素を供給することができる。その結果、半導体層108中の酸素欠損を低減でき、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0255】
加熱処理の条件は、上記記載を援用することができる。
【0256】
なお、当該加熱処理は不要であれば行わなくてもよい。また、ここでは加熱処理は行わず、後の工程で行われる加熱処理と兼ねてもよい。また、後の工程での高温下の処理(例えば成膜工程など)などで、当該加熱処理と兼ねることができる場合もある。
【0257】
また、金属酸化物膜114fの成膜後、または当該加熱処理後に、金属酸化物膜114fを除去してもよい。
【0258】
〔開口部142の形成〕
続いて、金属酸化物膜114f、絶縁層110、及び絶縁層103の一部をエッチングすることで、導電層106に達する開口部142を形成する(図12(B))。これにより、導電層106と、後に形成する導電層112とを、開口部142を介して電気的に接続することができる。
【0259】
〔導電層112、金属酸化物層114の形成〕
続いて、金属酸化物膜114f上に、導電層112となる導電膜112fを成膜する(図12(C))。
【0260】
導電膜112fとしては、低抵抗な金属または合金材料を用いることが好ましい。また、導電膜112fとして、水素を放出しにくい材料であり、また水素が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。また、導電膜112fとして、酸化しにくい材料を用いることが好ましい。
【0261】
例えば導電膜112fは、金属または合金を含むスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により成膜することが好ましい。
【0262】
例えば、導電膜112fとして、酸化しにくく、水素が拡散しにくい導電膜と、低抵抗な導電膜とを積層した積層膜とすることが好ましい。
【0263】
続いて、導電膜112f及び金属酸化物膜114fの一部をエッチングすることで、導電層112及び金属酸化物層114を形成する。導電膜112f及び金属酸化物膜114fは、それぞれ同じレジストマスクを用いて加工することが好ましい。または、エッチング後の導電層112をハードマスクとして用いて、金属酸化物膜114fをエッチングしてもよい。
【0264】
導電膜112f及び金属酸化物膜114fのエッチングとして、特にウェットエッチング法を用いることが好ましい。
【0265】
これにより、上面形状が概略一致した導電層112及び金属酸化物層114を形成することができる。
【0266】
このように、絶縁層110をエッチングせずに、半導体層108の上面及び側面、並びに絶縁層103を覆った構造とすることで、導電膜112f等のエッチングの際に、半導体層108や絶縁層103の一部がエッチングされ、薄膜化することを防ぐことができる。
【0267】
〔不純物元素の供給処理〕
続いて、導電層112をマスクとして、絶縁層110を介して半導体層108に不純物元素140を供給(添加、または注入ともいう)する処理を行う(図12(D))。これにより、半導体層108の導電層112に覆われない領域に、低抵抗領域108nを形成することができる。このとき、半導体層108の導電層112と重なる領域に、不純物元素140ができるだけ供給されないように、マスクとなる導電層112等の材料や厚さを考慮して、不純物元素140の供給処理の条件を決定することが好ましい。これにより、半導体層108の導電層112と重なる領域に、不純物濃度が十分に低減されたチャネル形成領域を形成することができる。
【0268】
不純物元素140の供給は、プラズマイオンドーピング法、またはイオン注入法を好適に用いることができる。これらの方法は、深さ方向の濃度プロファイルを、イオンの加速電圧とドーズ量等により、高い精度で制御することができる。プラズマイオンドーピング法を用いることで、生産性を高めることができる。また質量分離を用いたイオン注入法を用いることで、供給される不純物元素の純度を高めることができる。
【0269】
不純物元素140の供給処理において、半導体層108と絶縁層110との界面、または半導体層108中の当該界面に近い部分、または絶縁層110中の当該界面に近い部分が、最も高い濃度となるように、処理条件を制御することが好ましい。これにより、一度の処理で半導体層108と絶縁層110の両方に、最適な濃度の不純物元素140を供給することができる。
【0270】
不純物元素140としては、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、ヒ素、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、または希ガスなどが挙げられる。なお、希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。特に、ホウ素、リン、アルミニウム、マグネシウム、またはシリコンを用いることが好ましい。
【0271】
不純物元素140の原料ガスとしては、上記不純物元素を含むガスを用いることができる。ホウ素を供給する場合、代表的にはBガスやBFガスなどを用いることができる。またリンを供給する場合には、代表的にはPHガスを用いることができる。また、これらの原料ガスを希ガスで希釈した混合ガスを用いてもよい。
【0272】
その他、原料ガスとして、CH、N、NH、AlH、AlCl、SiH、Si、F、HF、H、(CMg、及び希ガス等を用いることができる。また、イオン源は気体に限られず、固体や液体を加熱して気化させたものを用いてもよい。
【0273】
不純物元素140の添加は、絶縁層110及び半導体層108の組成や密度、厚さなどを考慮して、加速電圧やドーズ量などの条件を設定することで制御することができる。
【0274】
例えば、イオン注入法またはプラズマイオンドーピング法でホウ素の添加を行う場合、加速電圧は例えば5kV以上100kV以下、好ましくは7kV以上70kV以下、より好ましくは10kV以上50kV以下の範囲とすることができる。またドーズ量は、例えば1×1013ions/cm以上1×1017ions/cm以下、好ましくは1×1014ions/cm以上5×1016ions/cm以下、より好ましくは1×1015ions/cm以上、3×1016ions/cm以下の範囲とすることができる。
【0275】
また、イオン注入法またはプラズマイオンドーピング法でリンイオンの添加を行う場合、加速電圧は、例えば10kV以上100kV以下、好ましくは30kV以上90kV以下、より好ましくは40kV以上80kV以下の範囲とすることができる。またドーズ量は、例えば1×1013ions/cm以上1×1017ions/cm以下、好ましくは1×1014ions/cm以上5×1016ions/cm以下、より好ましくは1×1015ions/cm以上3×1016ions/cm以下の範囲とすることができる。
【0276】
なお、不純物元素140の供給方法としてはこれに限られず、例えばプラズマ処理や、加熱による熱拡散を利用した処理などを用いてもよい。プラズマ処理法の場合、添加する不純物元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、プラズマ処理を行うことによって、不純物元素を添加することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置、アッシング装置、プラズマCVD装置、高密度プラズマCVD装置等を用いることができる。
【0277】
本発明の一態様では、絶縁層110を介して不純物元素140を半導体層108に供給することができる。そのため、半導体層108が結晶性を有する場合であっても、不純物元素140の供給の際に半導体層108が受けるダメージが軽減され、結晶性が損なわれてしまうことを抑制できる。そのため、結晶性の低下により電気抵抗が増大してしまうような場合には好適である。
【0278】
〔絶縁層118の形成〕
続いて、絶縁層110、金属酸化物層114、及び導電層112を覆って、絶縁層118を形成する(図13(A))。
【0279】
絶縁層118をプラズマCVD法により形成する場合、成膜温度が高すぎると、低抵抗領域108n等に含まれる不純物が、半導体層108のチャネル形成領域を含む周辺部に拡散する恐れや、低抵抗領域108nの電気抵抗が上昇してしまう恐れがある。そのため、絶縁層118の成膜温度は、これらのことを考慮して決定すればよい。
【0280】
例えば、絶縁層118の成膜温度としては、例えば150℃以上400℃以下、好ましくは180℃以上360℃以下、より好ましくは200℃以上250℃以下とすることが好ましい。絶縁層118を低温で成膜することにより、チャネル長の短いトランジスタであっても、良好な電気特性を付与することができる。
【0281】
また、絶縁層118の形成後、加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理により、低抵抗領域108nを、より安定して低抵抗なものとすることができる場合がある。例えば、加熱処理を行うことにより、不純物元素140が適度に拡散して局所的に均一化され、理想的な不純物元素の濃度勾配を有する低抵抗領域108nが形成されうる。なお、加熱処理の温度が高すぎる(例えば500℃以上)と、不純物元素140がチャネル形成領域内にまで拡散し、トランジスタの電気特性や信頼性の悪化を招く恐れがある。
【0282】
加熱処理の条件は、上記記載を援用することができる。
【0283】
なお、当該加熱処理は不要であれば行わなくてもよい。また、ここでは加熱処理は行わず、後の工程で行われる加熱処理と兼ねてもよい。また、後の工程での高温下の処理(例えば成膜工程など)がある場合には、当該加熱処理と兼ねることができる場合もある。
【0284】
〔開口部141a、開口部141bの形成〕
続いて、絶縁層118及び絶縁層110の一部をエッチングすることで、低抵抗領域108nに達する開口部141a及び開口部141bを形成する。
【0285】
〔導電層120a、導電層120bの形成〕
続いて、開口部141a及び開口部141bを覆うように、絶縁層118上に導電膜を成膜し、当該導電膜を所望の形状に加工することで、導電層120a及び導電層120bを形成する(図13(B))。
【0286】
以上の工程により、トランジスタ100Aを作製することができる。例えば、トランジスタ100Aを表示装置の画素に適用する場合には、この後に、保護絶縁層、平坦化層、画素電極、または配線のうち1以上を形成する工程を追加すればよい。
【0287】
以上が、作製方法例1についての説明である。
【0288】
なお、構成例2-1で例示したトランジスタ100を作製する場合には、上記作製方法例1における導電層106の形成工程、及び開口部142の形成工程を省略すればよい。また、トランジスタ100とトランジスタ100Aとは、同じ工程を経て同一基板上に形成することができる。
【0289】
[作製方法例2]
以下では、上記作製方法例1とは一部の工程が異なる例を説明する。ここでは、上記構成例2-4で例示したトランジスタ100Cを例に挙げて説明する。
【0290】
なお以下では、上記作製方法例1と重複する部分については説明を省略し、相違する部分について詳細に説明することとする。
【0291】
まず、上記作製方法例1と同様に、導電層106、絶縁層103、半導体層108、絶縁層110、金属酸化物膜114f、及び導電膜112fを、順に形成する。この段階における断面図を図14(A)に示す。
【0292】
続いて、導電膜112f、及び金属酸化物膜114fの一部をエッチングして導電層112及び金属酸化物層114を形成し、さらに絶縁層110の一部をエッチングして、半導体層108の一部を露出させる(図14(B))。これにより、上面形状が概略一致した導電層112、金属酸化物層114、及び絶縁層110を形成することができる。
【0293】
絶縁層110のエッチングは、導電膜112fをエッチングするためのレジストマスクを用いて行うことが好ましい。また、絶縁層110のエッチングは、導電膜112f、金属酸化物膜114fのエッチングと同じ工程で行ってもよいし、導電膜112f及び金属酸化物膜114fをエッチングした後に、これらとは異なるエッチング方法によりエッチングしてもよい。
【0294】
例えば、導電膜112fと金属酸化物膜114fとを、同じエッチャントを用いたウェットエッチング法によりエッチングした後、絶縁層110をドライエッチング法によりエッチングすることができる。特に導電膜112f及び金属酸化物膜114fは、ドライエッチング法により加工すると、金属を含む反応生成物が生じることにより、半導体層108や絶縁層110を汚染する恐れがある。そのため、絶縁層110をエッチングする前に、導電膜112fと金属酸化物膜114fとをウェットエッチング法により加工することが好ましい。
【0295】
なお、エッチング条件によっては、導電層112、金属酸化物層114、及び絶縁層110の端部が一致しない場合がある。例えば、絶縁層110の端部よりも、導電層112及び金属酸化物層114の少なくとも一方の端部が内側、または外側に位置する形状となる場合がある。
【0296】
また、絶縁層110のエッチング時に、露出した半導体層108の一部がエッチングされ、薄膜化する場合がある。このとき、半導体層108は、低抵抗領域108nの厚さが、チャネル形成領域の厚さよりも薄い形状となりうる。
【0297】
また、絶縁層110のエッチング時に、半導体層108に覆われない絶縁層103の一部がエッチングされ、薄膜化する場合がある。例えば絶縁層103の絶縁膜103cが消失する場合もある。
【0298】
続いて、半導体層108の露出した部分に接して、絶縁層116を形成し、続けて絶縁層118を形成する(図14(C))。絶縁層116の形成により、半導体層108の露出した部分が低抵抗化し、低抵抗領域108nが形成される。
【0299】
絶縁層116としては、半導体層108を低抵抗化させる機能を有する不純物元素を放出する絶縁膜を用いることができる。特に、水素を放出することのできる窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等の無機絶縁膜を用いることが好ましい。このとき、水素を含有する成膜ガスを用いたプラズマCVD法を用いることで、絶縁層116の成膜時にも半導体層108に水素を供給することができるため好ましい。
【0300】
例えば絶縁層116として、窒化シリコンを用いる場合には、シランなどのシリコンを含むガスと、アンモニアや一酸化二窒素などの窒素を含むガスを含む混合ガスを成膜ガスに用いたPECVD法により形成することが好ましい。このとき、成膜される窒化シリコン中に水素が含まれていることが好ましい。これにより、絶縁層116中の水素が半導体層108に拡散することで、半導体層108の一部を低抵抗化することが容易となる。
【0301】
または、半導体層108中に酸素欠損を生じさせる機能を有する絶縁膜を用いることもできる。特に、金属窒化物を含む絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、金属を含むスパッタリングターゲットを用い、窒素ガスと、希釈ガスである希ガス等との混合ガスを成膜ガスとして用いた反応性スパッタリング法により形成することが好ましい。これにより、成膜ガスの流量比を制御することで、絶縁層116の膜質を制御することが容易となる。
【0302】
例えば、絶縁層116としてアルミニウムターゲットを用いた反応性スパッタリングにより形成した窒化アルミニウム膜を用いる場合、成膜ガスの全流量に対する窒素ガスの流量を30%以上100%以下、好ましくは40%以上100%以下、より好ましくは50%以上100%以下とすることが好ましい。
【0303】
ここで、絶縁層116と絶縁層118とは、大気に曝すことなく連続して成膜することが好ましい。
【0304】
なお、絶縁層118を半導体層108に接して設ける場合には、上記絶縁層116の形成工程を省略すればよい。
【0305】
絶縁層116の成膜後、または絶縁層118の成膜後に、加熱処理を行なってもよい。加熱処理により、低抵抗領域108nの低抵抗化を促進させることができる。
【0306】
加熱処理の条件は、上記記載を援用することができる。
【0307】
なお、当該加熱処理は不要であれば行わなくてもよい。また、ここでは加熱処理は行わず、後の工程で行われる加熱処理と兼ねてもよい。また、後の工程での高温下の処理(例えば成膜工程など)などで、当該加熱処理と兼ねることができる場合もある。
【0308】
続いて、絶縁層118及び絶縁層116に、低抵抗領域108nに達する開口部141a及び開口部141bを形成する。
【0309】
続いて、絶縁層118上に、作製方法例1と同様に、導電層120a及び導電層120bを形成する(図14(D))。
【0310】
以上の工程により、トランジスタ100Cを作製することができる。
【0311】
なお、構成例2-3で例示したトランジスタ100Bを作製する場合には、上記作製方法例2における導電層106の形成工程、及び開口部142の形成工程を省略すればよい。また、トランジスタ100Bとトランジスタ100Cとは、同じ工程を経て同一基板上に形成することができる。
【0312】
[半導体装置の構成要素]
以下では、本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について説明する。
【0313】
〔基板〕
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、シリコンや炭化シリコンを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板等を、基板102として用いてもよい。また、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板102として用いてもよい。
【0314】
また、基板102として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、半導体装置を形成してもよい。または、基板102と半導体装置の間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102より分離し、他の基板に転載するために用いることができる。その際、半導体装置は耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
【0315】
〔導電膜〕
ゲート電極として機能する導電層112及び導電層106、並びにソース電極またはドレイン電極の一方として機能する導電層120a、及び他方として機能する導電層120bは、クロム、銅、アルミニウム、金、銀、亜鉛、モリブデン、タンタル、チタン、タングステン、マンガン、ニッケル、鉄、コバルトから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いてそれぞれ形成することができる。
【0316】
また、導電層112、導電層106、導電層120a、及び導電層120bには、In-Sn酸化物、In-W酸化物、In-W-Zn酸化物、In-Ti酸化物、In-Ti-Sn酸化物、In-Zn酸化物、In-Sn-Si酸化物、In-Ga-Zn酸化物等の酸化物導電体または金属酸化物を適用することもできる。
【0317】
ここで、酸化物導電体(OC:Oxide Conductor)について説明を行う。例えば、半導体特性を有する金属酸化物に酸素欠損を形成し、該酸素欠損に水素を添加すると、伝導帯近傍にドナー準位が形成される。この結果、金属酸化物は、導電性が高くなり導電体化する。導電体化された金属酸化物を、酸化物導電体ということができる。
【0318】
また、導電層112等として、上記酸化物導電体(金属酸化物)を含む導電膜と、金属または合金を含む導電膜の積層構造としてもよい。金属または合金を含む導電膜を用いることで、配線抵抗を小さくすることができる。このとき、ゲート絶縁膜として機能する絶縁層と接する側には酸化物導電体を含む導電膜を適用することが好ましい。
【0319】
また、導電層112、導電層106、導電層120a、導電層120bには、上述の金属元素の中でも、特にチタン、タングステン、タンタル、及びモリブデンの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有すると好適である。特に、窒化タンタル膜を用いると好適である。当該窒化タンタル膜は、導電性を有し、銅、酸素、または水素に対して高いバリア性を有し、さらに自身からの水素の放出が少ないため、半導体層108と接する導電膜、または半導体層108の近傍の導電膜として、好適に用いることができる。
【0320】
〔半導体層〕
半導体層108がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:6、In:M:Zn=2:2:1、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=10:1:3、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=5:2:5等が挙げられる。なお、上記において、元素Mとして2種類以上の元素を含む場合、上記原子数比におけるMの割合は、当該2以上の金属元素の原子数の和に対応するものとする。
【0321】
また、スパッタリングターゲットとしては、多結晶の酸化物を含むターゲットを用いると、結晶性を有する半導体層108を形成しやすくなるため好ましい。なお、成膜される半導体層108の原子数比は、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。例えば、半導体層108に用いるスパッタリングターゲットの組成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の場合、成膜される半導体層108の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の近傍となる場合がある。
【0322】
なお、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3またはその近傍と記載する場合、Inを4としたとき、Gaが1以上3以下であり、Znが2以上4以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:6またはその近傍であると記載する場合、Inを5としたときに、Gaが0.1より大きく2以下であり、Znが5以上7以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1またはその近傍であると記載する場合、Inを1としたときに、Gaが0.1より大きく2以下であり、Znが0.1より大きく2以下である場合を含む。
【0323】
また、半導体層108は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上である。このように、シリコンよりもエネルギーギャップの広い金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0324】
また、半導体層108は、非単結晶構造であると好ましい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC構造、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC構造は最も欠陥準位密度が低い。
【0325】
以下では、CAAC(c-axis aligned crystal)について説明する。CAACは結晶構造の一例を表す。
【0326】
CAAC構造とは、複数のナノ結晶(最大径が10nm未満である結晶領域)を有する薄膜などの結晶構造の一つであり、各ナノ結晶はc軸が特定の方向に配向し、かつa軸及びb軸は配向性を有さずに、ナノ結晶同士が粒界を形成することなく連続的に連結しているといった特徴を有する結晶構造である。特にCAAC構造を有する薄膜は、各ナノ結晶のc軸が、薄膜の厚さ方向、被形成面の法線方向、または薄膜の表面の法線方向に配向しやすいといった特徴を有する。
【0327】
CAAC-OS(Oxide Semiconductor)は結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。
【0328】
ここで、結晶学において、単位格子を構成するa軸、b軸、及びc軸の3つの軸(結晶軸)について、特異的な軸をc軸とした単位格子を取ることが一般的である。特に層状構造を有する結晶では、層の面方向に平行な2つの軸をa軸及びb軸とし、層に交差する軸をc軸とすることが一般的である。このような層状構造を有する結晶の代表的な例として、六方晶系に分類されるグラファイトがあり、その単位格子のa軸及びb軸は劈開面に平行であり、c軸は劈開面に直交する。例えば層状構造であるYbFe型の結晶構造をとるInGaZnOの結晶は六方晶系に分類することができ、その単位格子のa軸及びb軸は層の面方向に平行となり、c軸は層(すなわちa軸及びb軸)に直交する。
【0329】
微結晶構造を有する酸化物半導体膜(微結晶酸化物半導体膜)は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することができない場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrystal)を有する酸化物半導体膜を、nc-OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、TEMによる観察像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
【0330】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。従って、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD装置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対し、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径(例えば1nm以上30nm以下)の電子線を用いる電子線回折(ナノビーム電子線回折ともいう。)を行うと、円を描くように輝度の高いリング状の領域が観測され、当該リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
【0331】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低い。ただし、nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。従って、nc-OS膜はCAAC-OS膜と比べて、キャリア密度が高く、電子移動度が高くなる場合がある。従って、nc-OS膜を用いたトランジスタは、高い電界効果移動度を示す場合がある。
【0332】
nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比較して、成膜時の酸素流量比を小さくすることで形成することができる。また、nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比較して、成膜時の基板温度を低くすることでも形成することができる。例えば、nc-OS膜は、基板温度を比較的低温(例えば130℃以下の温度)とした状態、または基板を加熱しない状態でも成膜することができるため、大型のガラス基板や、樹脂基板などを使う場合に適しており、生産性を高めることができる。
【0333】
金属酸化物の結晶構造の一例について説明する。In-Ga-Zn酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて、基板温度を100℃以上130℃以下として、スパッタリング法により形成した金属酸化物は、nc(nano crystal)構造及びCAAC構造のいずれか一方の結晶構造、またはこれらが混在した構造をとりやすい。一方、基板温度を室温(R.T.)として形成した金属酸化物は、ncの結晶構造をとりやすい。なお、ここでいう室温(R.T.)とは、基板を意図的に加熱しない場合の温度を含む。
【0334】
[金属酸化物の構成]
以下では、本発明の一態様で開示されるトランジスタに用いることができるCAC(Cloud-Aligned Composite)-OSの構成について説明する。
【0335】
なお、CAAC(c-axis aligned crystal)は結晶構造の一例を表し、CAC(Cloud-Aligned Composite)は機能、または材料の構成の一例を表す。
【0336】
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与できる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0337】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0338】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0339】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0340】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0341】
以上が、金属酸化物の構成についての説明である。
【0342】
本実施の形態で例示した構成例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0343】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0344】
(実施の形態2)
本実施の形態では、先の実施の形態で例示したトランジスタを有する表示装置の一例について説明する。
【0345】
[構成例]
図15(A)に、表示装置700の上面図を示す。表示装置700は、シール材712により貼り合された第1の基板701と第2の基板705を有する。また第1の基板701、第2の基板705、及びシール材712で封止される領域において、第1の基板701上に画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706が設けられる。また画素部702には、複数の表示素子が設けられる。
【0346】
また、第1の基板701の第2の基板705と重ならない部分に、FPC716(FPC:Flexible printed circuit)が接続されるFPC端子部708が設けられている。FPC716によって、FPC端子部708及び信号線710を介して、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706のそれぞれに各種信号等が供給される。
【0347】
ゲートドライバ回路部706は、複数設けられていてもよい。また、ゲートドライバ回路部706及びソースドライバ回路部704は、それぞれ半導体基板等に別途形成され、パッケージされたICチップの形態であってもよい。当該ICチップは、第1の基板701上、またはFPC716に実装することができる。
【0348】
画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲートドライバ回路部706が有するトランジスタに、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタを適用することができる。
【0349】
画素部702に設けられる表示素子としては、液晶素子、発光素子などが挙げられる。液晶素子としては、透過型の液晶素子、反射型の液晶素子、半透過型の液晶素子などを用いることができる。また、発光素子としては、LED(Light Emitting Diode)、OLED(Organic LED)、QLED(Quantum-dot LED)、半導体レーザなどの、自発光性の発光素子が挙げられる。また、シャッター方式または光干渉方式のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子や、マイクロカプセル方式、電気泳動方式、エレクトロウェッティング方式、または電子粉流体(登録商標)方式等を適用した表示素子などを用いることもできる。
【0350】
図15(B)に示す表示装置700Aは、第1の基板701に代えて、可撓性を有する樹脂層743が適用され、フレキシブルディスプレイとして用いることのできる表示装置の例である。
【0351】
表示装置700Aは、画素部702が矩形形状でなく、角部が円弧状の形状を有している。また、図15(B)中の領域P1に示すように、画素部702、及び樹脂層743の一部が切り欠かれた切欠き部を有する。一対のゲートドライバ回路部706は、画素部702を挟んで両側に設けられる。またゲートドライバ回路部706は、画素部702の角部において、円弧状の輪郭に沿って設けられている。
【0352】
樹脂層743は、FPC端子部708が設けられる部分が突出した形状を有している。また樹脂層743のFPC端子部708を含む一部は、図15(B)中の領域P2で裏側に折り返すことができる。樹脂層743の一部を折り返すことで、FPC716を画素部702の裏側に重ねて配置した状態で、表示装置700Aを電子機器に実装することができ、電子機器の省スペース化を図ることができる。
【0353】
また表示装置700Aに接続されるFPC716には、IC717が実装されている。IC717は、例えばソースドライバ回路としての機能を有する。このとき、表示装置700Aにおけるソースドライバ回路部704は、保護回路、バッファ回路、デマルチプレクサ回路等の少なくとも一を含む構成とすることができる。
【0354】
図15(C)に示す表示装置700Bは、大型の画面を有する電子機器に好適に用いることのできる表示装置である。例えばテレビジョン装置、モニタ装置、パーソナルコンピュータ(ノート型またはデスクトップ型を含む)、タブレット端末、デジタルサイネージなどに好適に用いることができる。
【0355】
表示装置700Bは、複数のソースドライバIC721と、一対のゲートドライバ回路部722を有する。
【0356】
複数のソースドライバIC721は、それぞれFPC723に取り付けられている。また、複数のFPC723は、一方の端子が第1の基板701に、他方の端子がプリント基板724にそれぞれ接続されている。FPC723を折り曲げることで、プリント基板724を画素部702の裏側に配置して、電子機器に実装することができ、電子機器の省スペース化を図ることができる。
【0357】
一方、ゲートドライバ回路部722は、第1の基板701上に形成されている。これにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0358】
このような構成とすることで、大型で且つ高解像度の表示装置を実現できる。例えば画面サイズが対角30インチ以上、40インチ以上、50インチ以上、または60インチ以上の表示装置を実現することができる。また、解像度が4K2K、または8K4Kなどといった極めて高解像度の表示装置を実現することができる。
【0359】
[断面構成例]
以下では、表示素子として液晶素子を用いる構成、及びEL素子を用いる構成について、図16乃至図19を用いて説明する。なお、図16乃至図18は、それぞれ図15(A)に示した表示装置700の一点鎖線Q-Rにおける断面図である。また図19は、図15(B)に示した表示装置700Aの一点鎖線S-Tにおける断面図である。図16及び図17は、表示素子として液晶素子を用いた構成であり、図18及び図19は、EL素子を用いた構成である。
【0360】
〔表示装置の共通部分に関する説明〕
図16乃至図19に示す表示装置は、引き回し配線部711と、画素部702と、ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、を有する。引き回し配線部711は、信号線710を有する。画素部702は、トランジスタ750及び容量素子790を有する。ソースドライバ回路部704は、トランジスタ752を有する。図17では、容量素子790が無い場合を示している。
【0361】
トランジスタ750及びトランジスタ752は、実施の形態1で例示したトランジスタを適用できる。
【0362】
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ電流を低くできる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くでき、画像信号等の書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくできるため、消費電力を低減する効果を奏する。
【0363】
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、シリコンウェハ等により形成された駆動回路を適用しない構成も可能であり、表示装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0364】
図16図18、及び図19に示す容量素子790は、トランジスタ750が有する第1のゲート電極と同一の膜を加工して形成される下部電極と、半導体層と同一の金属酸化物を加工して形成される上部電極と、を有する。上部電極は、トランジスタ750のソース領域及びドレイン領域と同様に低抵抗化されている。また、下部電極と上部電極との間には、トランジスタ750の第1のゲート絶縁層として機能する絶縁膜の一部が設けられる。すなわち、容量素子790は、一対の電極間に誘電体膜として機能する絶縁膜が挟持された積層型の構造である。また、上部電極には、トランジスタのソース電極及びドレイン電極と同一の膜を加工して得られる配線が接続されている。
【0365】
また、トランジスタ750、トランジスタ752、及び容量素子790上には平坦化絶縁膜770が設けられている。
【0366】
画素部702が有するトランジスタ750と、ソースドライバ回路部704が有するトランジスタ752とは、異なる構造のトランジスタを用いてもよい。例えば、いずれか一方にトップゲート型のトランジスタを適用し、他方にボトムゲート型のトランジスタを適用した構成としてもよい。なお、上記ゲートドライバ回路部706についてもソースドライバ回路部704と同様に、トランジスタ750と同じ構造のトランジスタを用いてもよいし、異なる構造のトランジスタを用いてもよい。
【0367】
信号線710は、トランジスタ750やトランジスタ752のソース電極及びドレイン電極等と同じ導電膜で形成されている。このとき、銅元素を含む材料等の低抵抗な材料を用いると、配線抵抗に起因する信号遅延等が少なく、大画面での表示が可能となるため好ましい。
【0368】
FPC端子部708は、一部が接続電極として機能する配線760、異方性導電膜780、及びFPC716を有する。配線760は、異方性導電膜780を介してFPC716が有する端子と電気的に接続される。ここでは、配線760は、トランジスタ750やトランジスタ752のソース電極及びドレイン電極等と同じ導電膜で形成されている。
【0369】
第1の基板701及び第2の基板705としては、例えばガラス基板、またはプラスチック基板等の可撓性を有する基板を用いることができる。第1の基板701に可撓性を有する基板を用いる場合には、第1の基板701とトランジスタ750等との間に、水や水素に対するバリア性を有する絶縁層を設けることが好ましい。
【0370】
また、第2の基板705側には、遮光膜738と、着色膜736と、これらに接する絶縁膜734と、が設けられる。
【0371】
〔液晶素子を用いる表示装置の構成例〕
図16に示す表示装置700は、液晶素子775を有する。液晶素子775は、導電層772、導電層774、及びこれらの間に液晶層776を有する。導電層774は、第2の基板705側に設けられ、共通電極としての機能を有する。また、導電層772は、トランジスタ750が有するソース電極またはドレイン電極と電気的に接続される。導電層772は、平坦化絶縁膜770上に形成され、画素電極として機能する。
【0372】
導電層772には、可視光に対して透光性の材料、または反射性の材料を用いることができる。透光性の材料としては、例えば、インジウム、亜鉛、スズ等を含む酸化物材料を用いるとよい。反射性の材料としては、例えば、アルミニウム、銀等を含む材料を用いるとよい。
【0373】
導電層772に反射性の材料を用いると、表示装置700は反射型の液晶表示装置となる。一方、導電層772に透光性の材料を用いると、透過型の液晶表示装置となる。反射型の液晶表示装置の場合、視認側に偏光板を設ける。一方、透過型の液晶表示装置の場合、液晶素子を挟むように一対の偏光板を設ける。
【0374】
図17に示す表示装置700は、横電界方式(例えば、FFSモード)の液晶素子775を用いる例を示す。導電層772上に絶縁層773を介して、共通電極として機能する導電層774が設けられる。導電層772と導電層774との間に生じる電界によって、液晶層776の配向状態を制御することができる。
【0375】
図17において、導電層774、絶縁層773、導電層772の積層構造により保持容量を構成することができる。そのため、別途容量素子を設ける必要がなく、開口率を高めることができる。
【0376】
また、図16及び図17には図示しないが、液晶層776と接する配向膜を設ける構成としてもよい。また、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)、及びバックライト、サイドライトなどの光源を適宜設けることができる。
【0377】
液晶層776には、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。
【0378】
また、液晶素子のモードとしては、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、ゲストホストモードなどを用いることができる。
【0379】
また、液晶層776に高分子分散型液晶や、高分子ネットワーク型液晶などを用いた、散乱型の液晶を用いることもできる。このとき、着色膜736を設けずに白黒表示を行う構成としてもよいし、着色膜736を用いてカラー表示を行う構成としてもよい。
【0380】
また、液晶素子の駆動方法として、継時加法混色法に基づいてカラー表示を行う、時間分割表示方式(フィールドシーケンシャル駆動方式ともいう)を適用してもよい。その場合、着色膜736を設けない構成とすることができる。時間分割表示方式を用いた場合、例えばR(赤色)、G(緑色)、B(青色)のそれぞれの色を呈する副画素を設ける必要がないため、画素の開口率を向上させることや、精細度を高められることなどの利点がある。
【0381】
〔発光素子を用いる表示装置〕
図18に示す表示装置700は、発光素子782を有する。発光素子782は、導電層772、EL層786、及び導電膜788を有する。EL層786は、有機化合物、または無機化合物などの発光材料を有する。
【0382】
発光材料としては、蛍光材料、燐光材料、熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料、無機化合物(量子ドット材料など)などを用いることができる。
【0383】
図18に示す表示装置700には、平坦化絶縁膜770上に導電層772の一部を覆う絶縁膜730が設けられる。ここで、発光素子782は透光性の導電膜788を有し、トップエミッション型の発光素子である。なお、発光素子782は、導電層772側に光を射出するボトムエミッション構造や、導電層772側及び導電膜788側の双方に光を射出するデュアルエミッション構造としてもよい。
【0384】
また、着色膜736は発光素子782と重なる位置に設けられている。また遮光膜738は絶縁膜730と重なる位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に設けられている。また、着色膜736及び遮光膜738は、絶縁膜734で覆われている。また、発光素子782と絶縁膜734の間は封止膜732で充填されている。なお、EL層786を画素毎に島状または画素列毎に縞状に形成する、すなわち塗り分けにより形成する場合においては、着色膜736を設けない構成としてもよい。
【0385】
図19には、フレキシブルディスプレイに好適に適用できる表示装置の構成を示している。図19は、図15(B)に示した表示装置700A中の一点鎖線S-Tにおける断面図である。
【0386】
図19に示す表示装置700Aは、図18で示した第1の基板701に代えて、支持基板745、接着層742、樹脂層743、及び絶縁層744が積層された構成を有する。トランジスタ750や容量素子790等は、樹脂層743上に設けられた絶縁層744上に設けられている。
【0387】
支持基板745は、有機樹脂やガラス等を含み、可撓性を有する程度に薄い基板である。樹脂層743は、ポリイミドやアクリルなどの有機樹脂を含む層である。絶縁層744は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン等の無機絶縁膜を含む。樹脂層743と支持基板745とは、接着層742によって貼り合わされている。樹脂層743は、支持基板745よりも薄いことが好ましい。
【0388】
また、図19に示す表示装置700Aは、図18で示した第2の基板705に代えて保護層740を有する。保護層740は、封止膜732と貼り合わされている。保護層740としては、ガラス基板や樹脂フィルムなどを用いることができる。また、保護層740として、偏光板、散乱板などの光学部材や、タッチセンサパネルなどの入力装置、またはこれらを2つ以上積層した構成を適用してもよい。
【0389】
また、発光素子782が有するEL層786は、絶縁膜730及び導電層772上に島状に設けられている。EL層786を、副画素毎に発光色が異なるように作り分けることで、着色膜736を用いずにカラー表示を実現することができる。また、発光素子782を覆って、保護層741が設けられている。保護層741は発光素子782に水などの不純物が拡散することを防ぐ機能を有する。保護層741は、無機絶縁膜を用いることが好ましい。また、無機絶縁膜と有機絶縁膜をそれぞれ一以上含む積層構造とすることがより好ましい。
【0390】
また、図19では、折り曲げ可能な領域P2を示している。領域P2では、支持基板745、接着層742のほか、絶縁層744等の無機絶縁膜が設けられていない部分を有する。また、領域P2において、配線760を覆って樹脂層746が設けられている。折り曲げ可能な領域P2に無機絶縁膜をできるだけ設けず、且つ、金属または合金を含む導電層と、有機材料を含む層のみを積層した構成とすることで、曲げた際にクラックが生じることを防ぐことができる。また、領域P2に支持基板745を設けないことで、極めて小さい曲率半径で、表示装置700Aの一部を曲げることができる。
【0391】
〔表示装置に入力装置を設ける構成例〕
また、図16乃至図19に示す表示装置700または表示装置700Aに、入力装置を設けてもよい。当該入力装置としては、例えば、タッチセンサ等が挙げられる。
【0392】
例えばセンサの方式としては、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、光学方式、感圧方式など様々な方式を用いることができる。または、これら2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0393】
なお、タッチパネルの構成は、入力装置を一対の基板の間に形成する、所謂インセル型のタッチパネル、入力装置を表示装置700上に形成する、所謂オンセル型のタッチパネル、または入力装置を表示装置700に貼り合わせて用いる、所謂アウトセル型のタッチパネルなどがある。
【0394】
本実施の形態で例示した構成例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0395】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0396】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置について、図20(A)乃至図20(C)を用いて説明を行う。
【0397】
図20(A)に示す表示装置は、画素部502と、駆動回路部504と、保護回路506と、端子部507と、を有する。なお、保護回路506は、設けない構成としてもよい。
【0398】
画素部502や駆動回路部504が有するトランジスタに、本発明の一態様のトランジスタを適用することができる。また保護回路506にも、本発明の一態様のトランジスタを適用してもよい。
【0399】
画素部502は、X行Y列(X、Yはそれぞれ独立に2以上の自然数)に配置された複数の画素回路501を有する。各画素回路501は、それぞれ表示素子を駆動する回路を有する。
【0400】
駆動回路部504は、ゲート線GL_1乃至ゲート線GL_Xに走査信号を出力するゲートドライバ504a、データ線DL_1乃至データ線DL_Yにデータ信号を供給するソースドライバ504bなどの駆動回路を有する。ゲートドライバ504aは、少なくともシフトレジスタを有する構成とすればよい。またソースドライバ504bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。また、シフトレジスタなどを用いてソースドライバ504bを構成してもよい。
【0401】
端子部507は、外部の回路から表示装置に電源、制御信号、及び画像信号等を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0402】
保護回路506は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該配線と別の配線とを導通状態にする回路である。図20(A)に示す保護回路506は、例えば、ゲートドライバ504aと画素回路501の間の配線であるゲート線GL、またはソースドライバ504bと画素回路501の間の配線であるデータ線DL等の各種配線に接続される。なお図20(A)では、保護回路506と画素回路501とを区別するため、保護回路506にハッチングを付している。
【0403】
また、ゲートドライバ504aとソースドライバ504bは、それぞれ画素部502と同じ基板上に設けられていてもよいし、ゲートドライバ回路またはソースドライバ回路が別途形成された基板(例えば、単結晶半導体または多結晶半導体で形成された駆動回路基板)をCOGやTAB(Tape Automated Bonding)によって、画素部502が設けられる基板に実装する構成としてもよい。
【0404】
図20(B)及び図20(C)に、画素回路501に適用することのできる画素回路の構成の一例を示す。
【0405】
図20(B)に示す画素回路501は、液晶素子570と、トランジスタ550と、容量素子560と、を有する。また画素回路501には、データ線DL_n、ゲート線GL_m、電位供給線VL等が接続されている。
【0406】
液晶素子570の一対の電極の一方の電位は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される。液晶素子570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複数の画素回路501のそれぞれが有する液晶素子570の一対の電極の一方に共通の電位(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路501の液晶素子570の一対の電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
【0407】
また、図20(C)に示す画素回路501は、トランジスタ552と、トランジスタ554と、容量素子562と、発光素子572と、を有する。また画素回路501には、データ線DL_n、ゲート線GL_m、電位供給線VL_a、及び電位供給線VL_b等が接続されている。
【0408】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。トランジスタ554のゲートに与えられる電位に応じて、発光素子572に流れる電流が制御されることにより、発光素子572からの発光輝度が制御される。
【0409】
本実施の形態で例示した構成例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0410】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0411】
(実施の形態4)
以下では、画素に表示される階調を補正するためのメモリを備える画素回路と、これを有する表示装置について説明する。実施の形態1で例示したトランジスタは、以下で例示する画素回路に用いられるトランジスタに適用することができる。
【0412】
[回路構成]
図21(A)に、画素回路400の回路図を示す。画素回路400は、トランジスタM1、トランジスタM2、容量C1、及び回路401を有する。また画素回路400には、配線S1、配線S2、配線G1、及び配線G2が接続される。
【0413】
トランジスタM1は、ゲートが配線G1と、ソース及びドレインの一方が配線S1と、他方が容量C1の一方の電極と、それぞれ接続する。トランジスタM2は、ゲートが配線G2と、ソース及びドレインの一方が配線S2と、他方が容量C1の他方の電極、及び回路401と、それぞれ接続する。
【0414】
回路401は、少なくとも一の表示素子を含む回路である。表示素子としては様々な素子を用いることができるが、代表的には有機EL素子やLED素子などの発光素子、液晶素子、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子等を適用することができる。
【0415】
トランジスタM1と容量C1とを接続するノードをノードN1、トランジスタM2と回路401とを接続するノードをノードN2とする。
【0416】
画素回路400は、トランジスタM1をオフ状態とすることで、ノードN1の電位を保持することができる。また、トランジスタM2をオフ状態とすることで、ノードN2の電位を保持することができる。また、トランジスタM2をオフ状態とした状態で、トランジスタM1を介してノードN1に所定の電位を書き込むことで、容量C1を介した容量結合により、ノードN1の電位の変位に応じてノードN2の電位を変化させることができる。
【0417】
ここで、トランジスタM1、トランジスタM2のうちの一方または両方に、実施の形態1で例示した、酸化物半導体が適用されたトランジスタを適用することができる。そのため極めて低いオフ電流により、ノードN1またはノードN2の電位を長期間に亘って保持することができる。なお、各ノードの電位を保持する期間が短い場合(具体的には、フレーム周波数が30Hz以上である場合等)には、シリコン等の半導体を適用したトランジスタを用いてもよい。
【0418】
[駆動方法例]
続いて、図21(B)を用いて、画素回路400の動作方法の一例を説明する。図21(B)は、画素回路400の動作に係るタイミングチャートである。なおここでは説明を容易にするため、配線抵抗などの各種抵抗や、トランジスタや配線などの寄生容量、及びトランジスタのしきい値電圧などの影響は考慮しない。
【0419】
図21(B)に示す動作では、1フレーム期間を期間T1と期間T2とに分ける。期間T1はノードN2に電位を書き込む期間であり、期間T2はノードN1に電位を書き込む期間である。
【0420】
〔期間T1〕
期間T1では、配線G1と配線G2の両方に、トランジスタをオン状態にする電位を与える。また、配線S1には固定電位である電位Vrefを供給し、配線S2には第1データ電位Vを供給する。
【0421】
ノードN1には、トランジスタM1を介して配線S1から電位Vrefが与えられる。また、ノードN2には、トランジスタM2を介して配線S2から第1データ電位Vが与えられる。したがって、容量C1には電位差V-Vrefが保持された状態となる。
【0422】
〔期間T2〕
続いて期間T2では、配線G1にはトランジスタM1をオン状態とする電位を与え、配線G2にはトランジスタM2をオフ状態とする電位を与える。また、配線S1には第2データ電位Vdataを供給する。配線S2には所定の定電位を与える、またはフローティング状態としてもよい。
【0423】
ノードN1には、トランジスタM1を介して配線S1から第2データ電位Vdataが与えられる。このとき、容量C1による容量結合により、第2データ電位Vdataに応じてノードN2の電位が電位dVだけ変化する。すなわち、回路401には、第1データ電位Vと電位dVを足した電位が入力されることとなる。なお、図21(B)では電位dVが正の値であるように示しているが、負の値であってもよい。すなわち、第2データ電位Vdataが電位Vrefより低くてもよい。
【0424】
ここで、電位dVは、容量C1の容量値と、回路401の容量値によって概ね決定される。容量C1の容量値が回路401の容量値よりも十分に大きい場合、電位dVは第2データ電位Vdataに近い電位となる。
【0425】
このように、画素回路400は、2種類のデータ信号を組み合わせて表示素子を含む回路401に供給する電位を生成することができるため、画素回路400内で階調の補正を行うことが可能となる。
【0426】
また画素回路400は、配線S1及び配線S2に接続されるソースドライバが供給可能な最大電位を超える電位を生成することも可能となる。例えば発光素子を用いた場合では、ハイダイナミックレンジ(HDR)表示等を行うことができる。また、液晶素子を用いた場合では、オーバードライブ駆動等を実現できる。
【0427】
[適用例]
〔液晶素子を用いた例〕
図21(C)に示す画素回路400LCは、回路401LCを有する。回路401LCは、液晶素子LCと、容量C2とを有する。
【0428】
液晶素子LCは、一方の電極がノードN2及び容量C2の一方の電極と、他方の電極が電位Vcom2が与えられる配線と接続する。容量C2は、他方の電極が電位Vcom1が与えられる配線と接続する。
【0429】
容量C2は保持容量として機能する。なお、容量C2は不要であれば省略することができる。
【0430】
画素回路400LCは、液晶素子LCに高い電圧を供給することができるため、例えばオーバードライブ駆動により高速な表示を実現すること、駆動電圧の高い液晶材料を適用することなどができる。また、配線S1または配線S2に補正信号を供給することで、使用温度や液晶素子LCの劣化状態等に応じて階調を補正することもできる。
【0431】
〔発光素子を用いた例〕
図21(D)に示す画素回路400ELは、回路401ELを有する。回路401ELは、発光素子EL、トランジスタM3、及び容量C2を有する。
【0432】
トランジスタM3は、ゲートがノードN2及び容量C2の一方の電極と、ソース及びドレインの一方が電位Vが与えられる配線と、他方が発光素子ELの一方の電極と、それぞれ接続される。容量C2は、他方の電極が電位Vcomが与えられる配線と接続する。発光素子ELは、他方の電極が電位Vが与えられる配線と接続する。
【0433】
トランジスタM3は、発光素子ELに供給する電流を制御する機能を有する。容量C2は保持容量として機能する。容量C2は不要であれば省略することができる。
【0434】
なお、ここでは発光素子ELのアノード側がトランジスタM3と接続する構成を示しているが、カソード側にトランジスタM3を接続してもよい。そのとき、電位Vと電位Vの値を適宜変更することができる。
【0435】
画素回路400ELは、トランジスタM3のゲートに高い電位を与えることで、発光素子ELに大きな電流を流すことができるため、例えばHDR表示などを実現することができる。また、配線S1または配線S2に補正信号を供給することで、トランジスタM3や発光素子ELの電気特性のばらつきを補正することもできる。
【0436】
なお、図21(C)及び図21(D)で例示した回路に限られず、別途トランジスタや容量などを追加した構成としてもよい。
【0437】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0438】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様を用いて作製することができる表示モジュールについて説明する。
【0439】
図22(A)に示す表示モジュール6000は、上部カバー6001と下部カバー6002との間に、FPC6005が接続された表示装置6006、フレーム6009、プリント基板6010、及びバッテリー6011を有する。
【0440】
例えば、本発明の一態様を用いて作製された表示装置を、表示装置6006に用いることができる。表示装置6006により、極めて消費電力の低い表示モジュールを実現することができる。
【0441】
上部カバー6001及び下部カバー6002は、表示装置6006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0442】
表示装置6006はタッチパネルとしての機能を有していてもよい。
【0443】
フレーム6009は、表示装置6006の保護機能、プリント基板6010の動作により発生する電磁波を遮断する機能、放熱板としての機能等を有していてもよい。
【0444】
プリント基板6010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信号処理回路、バッテリー制御回路等を有する。
【0445】
図22(B)は、光学式のタッチセンサを備える表示モジュール6000の断面概略図である。
【0446】
表示モジュール6000は、プリント基板6010に設けられた発光部6015及び受光部6016を有する。また、上部カバー6001と下部カバー6002により囲まれた領域に一対の導光部(導光部6017a、導光部6017b)を有する。
【0447】
表示装置6006は、フレーム6009を間に介してプリント基板6010やバッテリー6011と重ねて設けられている。表示装置6006とフレーム6009は、導光部6017a、導光部6017bに固定されている。
【0448】
発光部6015から発せられた光6018は、導光部6017aにより表示装置6006の上部を経由し、導光部6017bを通って受光部6016に達する。例えば指やスタイラスなどの被検知体により、光6018が遮られることにより、タッチ操作を検出することができる。
【0449】
発光部6015は、例えば表示装置6006の隣接する2辺に沿って複数設けられる。受光部6016は、発光部6015と対向する位置に複数設けられる。これにより、タッチ操作がなされた位置の情報を取得することができる。
【0450】
発光部6015は、例えばLED素子などの光源を用いることができ、特に、赤外線を発する光源を用いることが好ましい。受光部6016は、発光部6015が発する光を受光し、電気信号に変換する光電素子を用いることができる。好適には、赤外線を受光可能なフォトダイオードを用いることができる。
【0451】
光6018を透過する導光部6017a、導光部6017bにより、発光部6015と受光部6016とを表示装置6006の下側に配置することができ、外光が受光部6016に到達してタッチセンサが誤動作することを抑制できる。特に、可視光を吸収し、赤外線を透過する樹脂を用いると、タッチセンサの誤動作をより効果的に抑制できる。
【0452】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0453】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置を適用可能な、電子機器の例について説明する。
【0454】
図23(A)に示す電子機器6500は、スマートフォンとして用いることのできる携帯情報端末機である。
【0455】
電子機器6500は、筐体6501、表示部6502、電源ボタン6503、ボタン6504、スピーカ6505、マイク6506、カメラ6507、及び光源6508等を有する。表示部6502はタッチパネル機能を備える。
【0456】
表示部6502に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0457】
図23(B)は、筐体6501のマイク6506側の端部を含む断面概略図である。
【0458】
筐体6501の表示面側には透光性を有する保護部材6510が設けられ、筐体6501と保護部材6510に囲まれた空間内に、表示パネル6511、光学部材6512、タッチセンサパネル6513、プリント基板6517、バッテリー6518等が配置されている。
【0459】
保護部材6510には、表示パネル6511、光学部材6512、及びタッチセンサパネル6513が図示しない接着層により固定されている。
【0460】
また、表示部6502よりも外側の領域において、表示パネル6511の一部が折り返されている。また、当該折り返された部分に、FPC6515が接続されている。FPC6515には、IC6516が実装されている。またFPC6515は、プリント基板6517に設けられた端子に接続されている。
【0461】
表示パネル6511には本発明の一態様のフレキシブルディスプレイパネルを適用することができる。そのため、極めて軽量な電子機器を実現できる。また、表示パネル6511が極めて薄いため、電子機器の厚さを抑えつつ、大容量のバッテリー6518を搭載することもできる。また、表示パネル6511の一部を折り返して、画素部の裏側にFPC6515との接続部を配置することにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0462】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0463】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様を用いて作製された表示装置を備える電子機器について説明する。
【0464】
以下で例示する電子機器は、表示部に本発明の一態様の表示装置を備えるものである。したがって、高い解像度が実現された電子機器である。また高い解像度と、大きな画面が両立された電子機器とすることができる。
【0465】
本発明の一態様の電子機器の表示部には、例えばフルハイビジョン、4K2K、8K4K、16K8K、またはそれ以上の解像度を有する映像を表示させることができる。
【0466】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、ノート型のパーソナルコンピュータ、モニタ装置、デジタルサイネージ、パチンコ機、ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。
【0467】
本発明の一態様が適用された電子機器は、家屋やビルの内壁または外壁、自動車等の内装または外装等が有する平面または曲面に沿って組み込むことができる。
【0468】
図24(A)は、ファインダー8100を取り付けた状態のカメラ8000の外観を示す図である。
【0469】
カメラ8000は、筐体8001、表示部8002、操作ボタン8003、シャッターボタン8004等を有する。またカメラ8000には、着脱可能なレンズ8006が取り付けられている。
【0470】
なおカメラ8000は、レンズ8006と筐体とが一体となっていてもよい。
【0471】
カメラ8000は、シャッターボタン8004を押す、またはタッチパネルとして機能する表示部8002をタッチすることにより撮像することができる。
【0472】
筐体8001は、電極を有するマウントを有し、ファインダー8100のほか、ストロボ装置等を接続することができる。
【0473】
ファインダー8100は、筐体8101、表示部8102、ボタン8103等を有する。
【0474】
筐体8101は、カメラ8000のマウントと係合するマウントにより、カメラ8000に取り付けられている。ファインダー8100はカメラ8000から受信した映像等を表示部8102に表示させることができる。
【0475】
ボタン8103は、電源ボタン等としての機能を有する。
【0476】
カメラ8000の表示部8002、及びファインダー8100の表示部8102に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。なお、ファインダーが内蔵されたカメラ8000であってもよい。
【0477】
図24(B)は、ヘッドマウントディスプレイ8200の外観を示す図である。
【0478】
ヘッドマウントディスプレイ8200は、装着部8201、レンズ8202、本体8203、表示部8204、ケーブル8205等を有している。また装着部8201には、バッテリー8206が内蔵されている。
【0479】
ケーブル8205は、バッテリー8206から本体8203に電力を供給する。本体8203は無線受信機等を備え、受信した映像情報を表示部8204に表示させることができる。また、本体8203はカメラを備え、使用者の眼球やまぶたの動きの情報を入力手段として用いることができる。
【0480】
また、装着部8201には、使用者に触れる位置に、使用者の眼球の動きに伴って流れる電流を検知可能な複数の電極が設けられ、視線を認識する機能を有していてもよい。また、当該電極に流れる電流により、使用者の脈拍をモニタする機能を有していてもよい。また、装着部8201には、温度センサ、圧力センサ、加速度センサ等の各種センサを有していてもよく、使用者の生体情報を表示部8204に表示する機能や、使用者の頭部の動きに合わせて表示部8204に表示する映像を変化させる機能を有していてもよい。
【0481】
表示部8204に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0482】
図24(C)、図24(D)、及び図24(E)は、ヘッドマウントディスプレイ8300の外観を示す図である。ヘッドマウントディスプレイ8300は、筐体8301と、表示部8302と、バンド状の固定具8304と、一対のレンズ8305と、を有する。
【0483】
使用者は、レンズ8305を通して、表示部8302の表示を視認することができる。なお、表示部8302を湾曲して配置させると、使用者が高い臨場感を感じることができるため好ましい。また、表示部8302の異なる領域に表示された別の画像を、レンズ8305を通して視認することで、視差を用いた3次元表示等を行うこともできる。なお、表示部8302を1つ設ける構成に限られず、表示部8302を2つ設け、使用者の片方の目につき1つの表示部を配置してもよい。
【0484】
なお、表示部8302に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置は、極めて精細度が高いため、図24(E)のようにレンズ8305を用いて拡大したとしても、使用者に画素が視認されることなく、より現実感の高い映像を表示することができる。
【0485】
図25(A)乃至図25(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0486】
図25(A)乃至図25(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して処理する機能、等を有することができる。なお、電子機器の機能はこれらに限られず、様々な機能を有することができる。電子機器は、複数の表示部を有していてもよい。また、電子機器にカメラ等を設け、静止画や動画を撮影し、記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0487】
図25(A)乃至図25(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0488】
図25(A)は、テレビジョン装置9100を示す斜視図である。テレビジョン装置9100は、大画面、例えば、50インチ以上、または100インチ以上の表示部9001を組み込むことが可能である。
【0489】
図25(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は、例えばスマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、スピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を設けてもよい。また、携帯情報端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。図25(B)では3つのアイコン9050を表示した例を示している。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することもできる。情報9051の一例としては、電子メール、SNS、電話などの着信の通知、電子メールやSNSなどの題名、送信者名、日時、時刻、バッテリーの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報9051が表示されている位置にはアイコン9050などを表示してもよい。
【0490】
図25(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状態で、携帯情報端末9102の上方から観察できる位置に表示された情報9053を確認することもできる。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく表示を確認し、例えば電話を受けるか否かを判断できる。
【0491】
図25(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うことや、充電を行うこともできる。なお、充電動作は無線給電により行ってもよい。
【0492】
図25(E)、図25(F)、及び図25(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、図25(E)は携帯情報端末9201を展開した状態、図25(G)は折り畳んだ状態、図25(F)は図25(E)と図25(G)の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。例えば、表示部9001は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0493】
図26(A)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7500が組み込まれている。ここでは、スタンド7103により筐体7101を支持した構成を示している。
【0494】
図26(A)に示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7111により行うことができる。または、表示部7500にタッチパネルを適用し、これに触れることでテレビジョン装置7100を操作してもよい。リモコン操作機7111は、操作ボタンの他に表示部を有していてもよい。
【0495】
なお、テレビジョン装置7100は、テレビ放送の受信機や、ネットワーク接続のための通信装置を有していてもよい。
【0496】
図26(B)に、ノート型パーソナルコンピュータ7200を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7500が組み込まれている。
【0497】
図26(C)、及び図26(D)に、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)の一例を示す。
【0498】
図26(C)に示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7500、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0499】
また、図26(D)は円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7500を有する。
【0500】
表示部7500が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができ、また人の目につきやすいため、例えば広告の宣伝効果を高める効果を奏する。
【0501】
表示部7500にタッチパネルを適用し、使用者が操作できる構成とすると好ましい。これにより、広告用途だけでなく、路線情報や交通情報、商用施設の案内情報など、使用者が求める情報を提供するための用途にも用いることができる。
【0502】
また、図26(C)、及び図26(D)に示すように、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400は、ユーザが所持するスマートフォン等の情報端末機7311と無線通信により連携可能であることが好ましい。例えば、表示部7500に表示される広告の情報を情報端末機7311の画面に表示させることや、情報端末機7311を操作することで、表示部7500の表示を切り替えることができる。
【0503】
また、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400に、情報端末機7311を操作手段(コントローラ)としたゲームを実行させることもできる。これにより、不特定多数のユーザが同時にゲームに参加し、楽しむことができる。
【0504】
図26(A)乃至図26(D)における表示部7500に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0505】
本実施の形態の電子機器は表示部を有する構成としたが、表示部を有さない電子機器にも本発明の一態様を適用することができる。
【0506】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例1】
【0507】
以下では、本発明の一態様のトランジスタに適用可能な絶縁膜を成膜した試料を作製し、昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Desorption Spectrometry)により、絶縁膜からの水素の脱離量、及び絶縁膜の酸素の透過性を評価した結果について説明する。
【0508】
[実施例1-1]
〔試料の作製〕
まず、ガラス基板上に絶縁膜として、プラズマCVD法により、厚さ約100nmの窒化酸化シリコン膜を成膜した。ここでは、絶縁膜の成膜条件を異ならせた3つの試料(試料A1乃至A3)を作製した。
【0509】
試料A1の窒化酸化シリコン膜は、シランガス、窒素ガス、アンモニアガス、及び一酸化二窒素ガスの流量をそれぞれ150sccm、5000sccm、100sccm、及び100sccmとし、圧力200Pa、成膜電力2000W、基板温度350℃の条件で成膜した。
【0510】
試料A2及び試料A3の窒化酸化シリコン膜は、上記試料A1の成膜条件における一酸化二窒素ガスの流量を、それぞれ500sccm、1000sccmとした条件で成膜した。
【0511】
以上により、ガラス基板上に絶縁膜が成膜された試料A1乃至試料A3を作製した。
【0512】
〔TDS分析〕
上記試料A1乃至A3について、それぞれTDS分析を行った。TDS分析は、30℃/min.の昇温速度で行った。
【0513】
図27(A)乃至図27(C)に、それぞれ試料(Sampleと表記)A1乃至A3におけるTDS分析結果を示す。図27(A)乃至図27(C)には、水素分子に相当する質量電荷比(M/z)2の結果を示している。それぞれ横軸は基板温度(Sub. Temp.)であり、縦軸は検出強度(Intensity)である。また、各図には、単位体積あたりの脱離量の定量値を合わせて示している。
【0514】
各試料において、絶縁膜からの水素分子の脱離量は小さいことが確認できた。また、成膜時の一酸化二窒素ガスの流量が多いほど、水素分子の脱離量が低減することが確認できた。
【0515】
[実施例1-2]
以下では、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン膜上に、窒化酸化シリコン膜を形成した試料を作製し、TDS分析により、窒化酸化シリコン膜の酸素の透過性について評価した。
【0516】
〔試料の作製〕
まず、ガラス基板上にプラズマCVD法により、厚さ約100nmの酸化窒化シリコン膜を成膜した。
【0517】
続いて、酸化窒化シリコン膜上に、スパッタリング法により金属酸化物膜を成膜した後に、酸素ラジカル処理を行うことで、酸化窒化シリコン膜中に酸素を供給した。その後、金属酸化物膜をエッチングにより除去した。
【0518】
続いて、酸化窒化シリコン膜上に、プラズマCVD法により、厚さ約100nmの窒化酸化シリコン膜を成膜した。ここでは、窒化酸化シリコン膜の成膜条件を異ならせた3つの試料(試料B1乃至試料B3)を作製した。
【0519】
試料B1、試料B2、試料B3の窒化酸化シリコン膜は、それぞれ上記試料A1、試料A2、試料A3と同様の条件で成膜した。
【0520】
以上により、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン膜上に、窒化酸化シリコン膜が積層された試料を作製した。
【0521】
〔TDS分析〕
図27(D)乃至図27(F)に、それぞれ試料B1乃至試料B3におけるTDS分析結果を示す。図27(D)乃至図27(F)には、酸素分子に相当する質量電荷比32の結果を示している。また各図には、単位体積当たりの脱離量の定量値を合わせて示している。また、各図には、窒化酸化シリコン膜を形成しない場合の、酸化窒化シリコン膜のTDS分析結果を破線で示している。
【0522】
各試料において、窒化酸化シリコン膜を形成することにより、酸素分子の脱離を抑制できていることが確認できる。すなわち、窒化酸化シリコン膜が酸素ブロッキング性を有することが分かる。特に、成膜時の一酸化二窒素ガスの流量が最も少ない試料B1は、極めて高い酸素ブロッキング性を示すことが確認できた。
【0523】
以上から、本実施例で作製した窒化酸化シリコン膜は、水素の脱離量が極めて小さく、且つ、酸素ブロッキング性を備える膜であることが確認できた。このような窒化酸化シリコン膜を、実施の形態1で示した絶縁層103、特に絶縁膜103aに適用することにより、極めて信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【実施例2】
【0524】
以下では、半導体層の被形成面を成す絶縁層の構成を異ならせたトランジスタを作製し、それらの電気特性および信頼性を評価した結果について説明する。
【0525】
[試料の作製]
作製したトランジスタの構成は、実施の形態1で例示したトランジスタ100Cを援用できる。
【0526】
まず、ガラス基板上に厚さ約100nmのタングステン膜をスパッタリング法により形成し、これを加工して第1のゲート電極を得た。
【0527】
続いて、第1のゲート絶縁層を形成した。ここで、第1のゲート絶縁層の構成を異ならせた4つの試料(試料C1乃至C4)を作製した。
【0528】
試料C1乃至試料C3の第1のゲート絶縁層は、それぞれ厚さ約30nmの窒化シリコン膜と、厚さ約280nmの窒化酸化シリコン膜と、厚さ約20nmの酸化窒化シリコン膜の積層構造とした。
【0529】
窒化シリコン膜は、シランガス、窒素ガス、アンモニアガスの流量をそれぞれ290sccm、2000sccm、2000sccmとし、圧力200Pa、成膜電力3000W、基板温度350℃の条件で成膜した。
【0530】
酸化窒化シリコン膜は、シランガス、一酸化二窒素ガスの流量をそれぞれ100sccm、4000sccmとし、圧力200Pa、成膜電力2000W、基板温度350℃の条件で成膜した。
【0531】
試料C1の窒化酸化シリコン膜は、上記実施例1-1で説明した試料A1と同様の条件で成膜した。試料C2の窒化酸化シリコン膜は、試料A2と同様の条件で成膜した。試料C3の窒化酸化シリコン膜は、試料A3と同様の条件で成膜した。
【0532】
試料C4の第1のゲート絶縁層は、厚さ約200nmの第1の窒化シリコン膜と、厚さ約100nmの第2の窒化シリコン膜と、厚さ約20nmの酸化窒化シリコン膜の積層構造とした。
【0533】
第1の窒化シリコン膜は、上記試料C1等における窒化シリコン膜と同様の条件で成膜した。
【0534】
第2の窒化シリコン膜は、シランガス、窒素ガス、アンモニアガスの流量をそれぞれ150sccm、5000sccm、100sccmとし、圧力200Pa、成膜電力2000W、基板温度350℃の条件で成膜した。
【0535】
酸化窒化シリコン膜は、上記試料C1等における酸化窒化シリコン膜と同様の条件で成膜した。
【0536】
続いて、第1のゲート絶縁層上に、厚さ約30nmの金属酸化物膜を成膜し、これを加工して半導体層を得た。金属酸化物膜は、金属元素の原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1であるスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により成膜した。その後、370℃で1時間の加熱処理を行った。
【0537】
続いて、第2のゲート絶縁層となる、厚さ約140nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により成膜した。
【0538】
続いて、第2のゲート電極となる導電膜として、厚さ約20nmのインジウム亜鉛酸化物膜と、厚さ約100nmの銅膜と、厚さ約30nmのインジウム亜鉛酸化物膜とを、それぞれスパッタリング法により成膜した。その後、各導電膜と、酸化窒化シリコン膜とを加工して、第2のゲート電極と第2のゲート絶縁層を得た。
【0539】
続いて、トランジスタを覆う保護絶縁層として、厚さ約300nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により形成した。その後、保護絶縁層の一部をエッチングにより開口し、モリブデン膜をスパッタリング法により成膜した後、これを加工してソース電極及びドレイン電極を得た。その後、平坦膜として厚さ約1.5μmのアクリル膜を形成し、窒素雰囲気下、温度250℃、1時間の条件で加熱処理を行った。
【0540】
以上の工程により、それぞれガラス基板上に形成されたトランジスタを有する、試料C1乃至C4を得た。
【0541】
[トランジスタのId-Vg特性]
続いて、上記で作製した試料C1乃至試料C4について、トランジスタのId-Vg特性を測定した。
【0542】
トランジスタのId-Vg特性の測定条件としては、ゲート電極に印加する電圧(以下、ゲート電圧(VG)ともいう)を、-15Vから+20Vまで0.25V刻みで印加した。また、ソース電極に印加する電圧(以下、ソース電圧(VS)ともいう)を0V(comm)とし、ドレイン電極に印加する電圧(以下、ドレイン電圧(VD)ともいう)を、0.1V及び10Vとした。
【0543】
ここでは、第1のゲート電極と、第2のゲート電極とに同じゲート電圧を与えた場合のId-Vg特性を測定した。
【0544】
また、測定したトランジスタは、設計値がチャネル長2μm、チャネル幅が3μmのデュアルゲート構造のトランジスタとした。また測定数は各試料につき20とした。
【0545】
図28(A)乃至図28(D)に、それぞれ試料C1乃至試料C4のId-Vg特性を示す。各図において、ドレイン電圧が0.1Vのときと10Vのときの、2つのId-Vg特性を合わせて示している。
【0546】
図28(A)乃至図28(D)に示すように、いずれの試料においても、ばらつきの少ない良好な電気特性が得られていることが確認できる。
【0547】
[信頼性の評価]
続いて、上記トランジスタの信頼性の評価として、GBT試験を行った。GBT試験では、トランジスタが形成されている基板を60℃に保持し、トランジスタのソースとドレインに0V、ゲートには20Vまたは-20Vの電圧を印加し、この状態を一時間保持した。ここでは特に、PBTS試験について示す。
【0548】
図29に、試料C1乃至試料C4における、PBTS試験後のしきい値電圧の変動量(ΔVth)を示している。図29では、各試料において、第1のゲート電極と第2のゲート電極に同じストレスを与えた場合(Dual Stress)、第2のゲート電極にのみストレスを与えた場合(Top Stress)、及び第1のゲート電極にのみストレスを与えた場合(Bottom Stress)について、それぞれ示している。
【0549】
図29より、試料C1、試料C2、及び試料C3は、試料C4よりも、しきい値電圧の変動量が小さいことが分かる。このことから、第1のゲート絶縁層に窒化酸化シリコン膜を適用することで、信頼性の高いトランジスタを実現できることが確認できた。
【0550】
また、試料C1、試料C2、及び試料C3のBottom Stressの結果を比較すると、この順にしきい値電圧の変動量が小さくなる傾向がみられる。この結果と、上記実施例1-1の結果から、窒化酸化シリコン膜として、より水素の放出量の少ない膜とすることで、しきい値電圧の変動を抑制できることが推察される。
【0551】
以上のことから、第1のゲート絶縁層として、水素を放出しにくく、且つ酸素が拡散しにくい窒化酸化シリコン膜を適用することで、特性ばらつきが小さく、電気特性が良好で、且つ信頼性の高いトランジスタを実現できることが確認できた。
【符号の説明】
【0552】
10、10A~10E:トランジスタ、100、100A~100C:トランジスタ、102:基板、103:絶縁層、103a~103c:絶縁膜、106:導電層、108、108a、108b:半導体層、108f:金属酸化物膜、108n:低抵抗領域、110、110a~110c:絶縁膜、112:導電層、112f:導電膜、114:金属酸化物層、114f:金属酸化物膜、116、118:絶縁層、120a、120b:導電層、140:不純物元素、141a、141b、142:開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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