(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20241209BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20241209BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G03G15/00 303
B41J29/393 107
H04N1/00 Z
(21)【出願番号】P 2020158690
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002767
【氏名又は名称】弁理士法人ひのき国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹村 太一
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-001023(JP,A)
【文献】特開2005-316063(JP,A)
【文献】特開2006-343679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0085809(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
B41J 29/00-29/70
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する感光体と、前記感光体を帯電させる帯電部と、前記帯電部により帯電された前記感光体を露光する露光部と、前記露光部により露光されることにより前記感光体上に形成される静電潜像をトナーにより現像する現像スリーブを備え、画像をシートに形成する像形成手段を有する画像形成装置であって、
前記像形成手段によってシート上にテストパターンを形成させるパターン形成手段と、
前記パターン形成手段により形成された前記シート上の前記テストパターンを読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた前記テストパターンの読取結果に基づき、前記像形成手段により形成される画像の前記感光体の軸線方向である第1方向における濃度ムラを補正する補正手段と、を有し、
前記テストパターンは、
同一色成分のパターンが前記第1方向に複数の測定点を持ち、前記第1方向に直交する第2方向において異なる位置に形成された
同一色成分の第1テスト画像と第2テスト画像と第3テスト画像とを含み、
前記第2方向において前記第1テスト画像と前記第2テスト画像との第1間隔と、前記第2方向において前記第2テスト画像と前記第3テスト画像との第2間隔とは異なり、前記第1間隔と前記第2間隔との両方は、前記感光体の周長の整数倍と異なることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記像形成手段は、複数の色成分のトナーからなるトナー像を形成可能であり、
前記テストパターンは、一の色成分のパターンで構成されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像形成手段は、複数の色成分のトナーからなるトナー像を形成可能であり、
前記テストパターンは、複数の色成分のパターンで構成されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記テストパターンは、複数の色成分のパターンを一色成分につき3以上、前記第2方向に配列したものであり、その配列の順序は、同一色成分のパターンの前記第2方向の間隔が複数種になる順序であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
回転する感光体と、前記感光体を帯電させる帯電部と、前記帯電部により帯電された前記感光体を露光する露光部と、前記露光部により露光されることにより前記感光体上に形成される静電潜像をトナーにより現像する現像スリーブを備え、画像をシートに形成する像形成手段を有する画像形成装置であって、
前記像形成手段によってシート上にテストパターンを形成させるパターン形成手段と、
前記パターン形成手段により形成された前記シート上の前記テストパターンを読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた前記テストパターンの読取結果に基づき、前記像形成手段により形成される画像の前記感光体の軸線方向である第1方向における濃度ムラを補正する補正手段と、を有し、
前記テストパターンは、
同一色成分のパターンが前記第1方向に複数の測定点を持ち、前記第1方向に直交する第2方向において異なる位置に形成された
同一色成分の第1テスト画像と第2テスト画像と第3テスト画像とを含み、
前記第2方向において前記第1テスト画像と前記第2テスト画像との第1間隔と、前記第2方向において前記第2テスト画像と前記第3テスト画像との第2間隔とは異なり、
前記第1間隔と前記第2間隔との両方は、前記現像スリーブの周長の整数倍と異なることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記像形成手段は、複数の色成分のトナーからなるトナー像を形成可能であり、
前記テストパターンは、複数の色成分のパターンで構成されることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記テストパターンは、複数の色成分のパターンを一色成分につき3以上、前記第2方向に配列したものであり、その配列の順序は、同一色成分のパターンの前記第2方向の間隔が複数種になる順序であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
回転する感光体と、前記感光体を帯電させる帯電ローラと、前記帯電ローラにより帯電された前記感光体を露光する露光部と、前記露光部により露光されることにより前記感光体上に形成される静電潜像をトナーにより現像する現像スリーブを備え、画像をシートに形成する像形成手段を有する画像形成装置であって、
前記像形成手段によってシート上にテストパターンを形成させるパターン形成手段と、
前記パターン形成手段により形成された前記シート上の前記テストパターンを読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた前記テストパターンの読取結果に基づき、前記像形成手段により形成される画像の前記感光体の軸線方向である第1方向における濃度ムラを補正する補正手段と、を有し、
前記テストパターンは、
同一色成分のパターンが前記第1方向に複数の測定点を持ち、前記第1方向に直交する第2方向において異なる位置に形成された
同一色成分の第1テスト画像と第2テスト画像と第3テスト画像とを含み、
前記第2方向において前記第1テスト画像と前記第2テスト画像との第1間隔と、前記第2方向において前記第2テスト画像と前記第3テスト画像との第2間隔とは異なり、
前記第1間隔と前記第2間隔との両方は、前記帯電ローラの周長の整数倍と異なることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記像形成手段は、複数の色成分のトナーからなるトナー像を形成可能であり、
前記テストパターンは、複数の色成分のパターンで構成されることを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記テストパターンは、複数の色成分のパターンを一色成分につき3以上、前記第2方向に配列したものであり、その配列の順序は、同一色成分のパターンの前記第2方向の間隔が複数種になる順序であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置により形成される画像の主走査方向の濃度ムラ補正に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置にあっては、レーザー光等による感光体の走査によって画像形成を行う。電子写真方式のプリントエンジンでは、まずレーザスキャナ等により画像信号に基づくレーザー光を、帯電器により帯電された感光ドラムに照射し、感光ドラム上に静電潜像を形成する。そして、感光ドラム上に形成された静電潜像をトナーにより現像して感光ドラム上にトナー像を形成し、トナー像をシートに転写して定着器によって溶融熱定着することで、シート上に画像を形成する。
【0003】
このような画像形成装置においては、感光体ドラムを帯電する帯電器の劣化による帯電ムラ、感光体ドラムに潜像を書き込むレーザスキャナ等の露光ムラ、あるいは感光体ドラムに形成された潜像を現像する現像器の現像ムラ等が発生する場合がある。これらのムラは、形成される画像の主走査方向(シート搬送方向と直交するシート幅方向)に濃度ムラを発生させる要因になり得る。
【0004】
特許文献1では、主走査方向に伸びたパターン画像を印刷したシートをテストプリントとして出力し、パターン画像の異なる位置の濃度をハンディ濃度計等で読み取って、主走査方向の濃度ムラを補正する技術が提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、副走査方向に複数のパターン画像を配置し、副走査方向の濃度ムラを加味して主走査方向の濃度ムラを補正する技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-163216号公報
【文献】特開2007-264364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子写真方式を利用した画像形成装置においては、感光体ドラム等の回転体が原因となる濃度ムラが発生する場合がある。すなわち、副走査方向に周期をもった濃度ムラが発生する場合がある。これは、主走査方向の濃度の傾き(主走査方向の空間的な濃度の濃淡)で考えれば、濃度が傾いている箇所(濃淡がある箇所)と傾いていない箇所(濃淡がない箇所)とが、副走査方向に周期的に発生するということである。
【0008】
例えば、Φ30mmの感光体ドラムが原因の濃度ムラであれば、シートの副走査方向に約94mm(≒直径30mm×π)ピッチで前述したような濃度ムラが発生する。また、Φ25mmの現像スリーブが原因の濃度ムラであれば、約79mm(≒25mm×π)ピッチで濃度ムラが発生する。なお、複数の原因が重なれば、複数のピッチで濃度ムラが発生する。
【0009】
特許文献1或いは特許文献2の技術により上記のような濃度ムラを補正しようとした場合、濃度が傾いている箇所に作成されたパターン画像を使用した補正結果と、傾いていない箇所に作成されたパターン画像を使用した補正結果では補正精度が異なってくる。
【0010】
特許文献2のように、副走査方向に複数の同一色のパターン画像がある場合においても、同一色のパターン画像間の間隔と副走査方向の濃度ムラの周期が重なる、あるいは近くなってしまう場合である。この場合、複数の同一色のパターン画像を用いたとしても、そのいずれもが、濃度が傾いている箇所、あるいは、傾いていない箇所に作成されることになる。このように従来の技術では、主走査方向の濃度ムラ補正を精度良く行うことができなかった。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、主走査方向の濃度ムラの補正を高精度に実行することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、回転する感光体と、前記感光体を帯電させる帯電部と、前記帯電部により帯電された前記感光体を露光する露光部と、前記露光部により露光されることにより前記感光体上に形成される静電潜像をトナーにより現像する現像スリーブを備え、画像をシートに形成する像形成手段を有する画像形成装置であって、前記像形成手段によってシート上にテストパターンを形成させるパターン形成手段と、前記パターン形成手段により形成された前記シート上の前記テストパターンを読み取る読取手段と、前記読取手段により読み取られた前記テストパターンの読取結果に基づき、前記像形成手段により形成される画像の前記感光体の軸線方向である第1方向における濃度ムラを補正する補正手段と、を有し、前記テストパターンは、同一色成分のパターンが前記第1方向に複数の測定点を持ち、前記第1方向に直交する第2方向において異なる位置に形成された同一色成分の第1テスト画像と第2テスト画像と第3テスト画像とを含み、前記第2方向において前記第1テスト画像と前記第2テスト画像との第1間隔と、前記第2方向において前記第2テスト画像と前記第3テスト画像との第2間隔とは異なり、前記第1間隔と前記第2間隔との両方は、前記感光体の周長の整数倍と異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、主走査方向の濃度ムラの補正を高精度に実行することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の画像形成装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図2】画像形成装置のソフトウェア構成の一例を示す図。
【
図4】プリンタエンジンの内部構成の一部を示す図。
【
図5】プリンタエンジンの作像部分の一例を示す断面図。
【
図6】主走査シェーディング処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】第1実施形態の主走査シェーディングにおける補正用テストパターンの一例を示す図。
【
図8】第1実施形態における濃度ムラ補正前の濃度測定結果を示す図。
【
図9】第1実施形態における濃度ムラ補正前の濃度測定結果を示す図。
【
図10】第1実施形態における濃度ムラ補正前の差分濃度結果を示す図。
【
図11】第1実施形態における各帯各領域必要補正量の算出結果を示す図。
【
図12】第1実施形態における濃度ムラ補正時の露光補正レベルを示す図。
【
図13】第1実施形態における濃度ムラ補正後の濃度測定結果を示す図。
【
図14】第1実施形態における濃度ムラ補正後の濃度測定結果を示す図。
【
図15】従来の濃度ムラ補正後の濃度測定結果を示す図。
【
図16】従来の濃度ムラ補正後の濃度測定結果を示す図。
【
図17】第2実施形態における濃度ムラ補正用テストパターンの一例を示す図
【
図18】第2実施形態における濃度ムラ補正用テストパターンの色毎の帯間隔の一例を示す図。
【
図19】副走査方向に周期的な濃度ムラを生じた出力画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
本実施形態では、電子写真方式のレーザビームプリンタを用いて上記課題の解決方法を説明するが、電子写真方式であればレーザビームプリンタ以外のプリンタでもよく、例えばLEDプリンタであってもよい。
【0016】
<画像形成装置>
[ハードウェア構成]
図1は、本発明の一実施形態を示す画像形成装置の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、画像形成装置100では、画像入力デバイスであるスキャナ101や、画像出力デバイスであるプリンタエンジン102が内部で接続されている。
【0017】
スキャナ101は、スキャナ画像処理部118を介してデバイスI/F117に接続されている。また、プリンタエンジン102は、プリンタ画像処理部119を介して、デバイスI/F117に接続されている。そして、スキャナ画像処理部118が画像データの読み取りのための制御を行う。また、プリンタ画像処理部119がプリント出力のための制御を行う。
【0018】
また、画像形成装置100は、後述するネットワークI/F111やモデム112によりLAN10や公衆回線104と接続し、画像情報やデバイス情報をLAN10や公衆回線104経由で入出力するための制御を行う。
【0019】
CPU105は、画像形成装置100を制御するための中央処理装置である。RAM106は、CPU105が動作するためのシステムワークメモリであり、入力された画像データを一時記憶するための画像メモリでもある。さらに、ROM107はブートROMであり、システムのブートプログラムが格納されている。
【0020】
HDD108はハードディスクドライブであり、各種処理のためのシステムソフトウェア及び入力された画像データ等を格納する。なお、ハードディスクドライブの代わりに又は併用してソリッドステートドライブ(SSD)等の他の記憶装置を備える構成でもよい。
【0021】
操作部I/F109は、画像データ等を表示可能な表示画面を有する操作部110に対するインタフェースであり、操作部110に対して操作画面データを出力する。また、操作部I/F109は、操作部110から操作者が入力した情報をCPU105に伝える役割を担う。
【0022】
ネットワークI/F111は、例えばLANカード等で実現され、LAN10に接続して外部装置(不図示)との間で情報の入出力を行う。また、モデム112は公衆回線104に接続し、外部装置(不図示)との間で情報の入出力を行う。
以上のユニットがシステムバス113上に配置されている。
【0023】
イメージバスI/F114は、システムバス113と画像データを高速で転送する画像バス115とを接続するためのインタフェースであり、データ構造を変換するバスブリッジである。画像バス115には、ラスタイメージプロセッサ(RIP)部116、デバイスI/F117、画像編集用画像処理部120、画像圧縮部103、画像伸張部121、カラーマネージメントモジュール(CMM)130が接続される。
【0024】
RIP部116は、ページ記述言語(PDL:Page Description Language)コードをイメージデータに展開する。
デバイスI/F117は、スキャナ画像処理部118やプリンタ画像処理部119を介してスキャナ101やプリンタエンジン102を接続し、画像データの同期系/非同期系の変換を行う。なお、スキャナ画像処理部118は、スキャナ101から入力した画像データに対して、補正、編集等の各種処理を行う。プリンタ画像処理部119は、プリント出力する画像データに対して、プリンタエンジンに応じたγ補正や中間調処理等の画像処理を行う。
【0025】
画像編集用画像処理部120は、画像データの回転や、色処理、2値変換、多値変換等の各種画像処理を行う。画像圧縮部103は、RIP部116やスキャナ画像処理部118、画像編集用画像処理部120で処理された画像データをHDD108で一度格納する際に所定の圧縮方式で符号化する。
【0026】
画像伸張部121は、HDD108で圧縮されている画像データを必要に応じて画像編集用画像処理部120での処理やプリンタ画像処理部119で画像処理しプリンタエンジン102で出力する場合に、圧縮され符号化されているデータを復号化し伸張する。
【0027】
CMM130は、画像データに対して、プロファイルやキャリブレーションデータに基づいた、色変換処理(色空間変換処理ともいう)を施す専用ハードウェアモジュールである。ここでプロファイルとは、機器に依存した色空間で表現したカラー画像データを機器に依存しない色空間(例えばLab色空間など)に変換するための関数のような情報である。キャリブレーションデータは、スキャナ101やプリンタエンジン102の色再現特性を修正するためのデータである。
【0028】
[ソフトウェア構成]
図2は、画像形成装置100のソフトウェア構成の一例を示す図である。なお、
図2に示される各ソフトウェアモジュールは、CPU105がROM107又はHDD108に格納されたプログラムを必要に応じてRAM106にロードして実行することにより機能する。
【0029】
ジョブコントロール処理部201は、図示又は不図示の各ソフトウェアモジュールを統括・制御し、コピー、プリント、スキャン、FAX送受信など、画像形成装置100内で発生するあらゆるジョブの制御を行う。
【0030】
ネットワーク処理部202は、主にネットワークI/F111を介して行われる外部との通信を制御するモジュールであり、LAN10上の各機器との通信制御を行う。
UI処理部203は、主に操作部110および操作部I/F109に係る制御を行う。
FAX処理部204は、FAX機能の制御を行う。FAX処理部204は、モデム112を介してFAX受信/送信を行う。
【0031】
機器情報送信処理部205は、ジョブコントロール処理部201の指示に基づいて、ネットワーク処理部202により、所定の外部装置に機器情報を送信するソフトウェアモジュールである。機器情報には、プリンタエンジン102のタイプ(カラー/モノクロ)、プリンタエンジン102の解像度、プリンタエンジン102の印刷速度、色変換処理部209による処理時間、出力プロファイル等の画像形成装置100の能力や特性を表す情報が含まれる。
機器情報取得処理部206は、ジョブコントロール処理部201の指示に基づいて、ネットワーク処理部202により、所定の外部機器に機器情報取得リクエストを送信するソフトウェアモジュールである。
【0032】
プリント処理部207は、ジョブコントロール処理部201の指示に基づいて、画像編集用画像処理部120、プリンタ画像処理部119およびプリンタエンジン102を制御し、指定画像の印刷処理を行う。プリント処理部207は、ジョブコントロール処理部201から、画像データ、画像情報(画像データのサイズ、カラーモード、解像度等)、レイアウト情報(オフセット、拡大縮小、面つけ等)、及び出力用紙情報(サイズ、印字方向等)の情報を受け付ける。そして、プリント処理部207は、画像圧縮部103、画像伸張部121、画像編集用画像処理部120およびプリンタ画像処理部119を制御して、画像データに対して適切な画像処理を施す。さらに、プリント処理部207は、画像データに対し、プリンタエンジン102を制御して指定用紙への印刷を行わせる。
【0033】
スキャン処理部210は、ジョブコントロール処理部201の指示に基づいて、スキャナ101およびスキャナ画像処理部118を制御して、スキャナ101上にある原稿の読み込みを行わせる。スキャン処理部210は、スキャナ101の原稿台にある原稿のスキャンを実行し、デジタルデータとして画像の入力を行う。入力した画像のカラー情報は、ジョブコントロール処理部201へ通知される。さらに、スキャン処理部210は入力画像に対し、スキャナ画像処理部118を制御して画像の圧縮等、適切な画像処理を施した後、ジョブコントロール処理部201へ画像処理済みの入力画像を通知する。
【0034】
色変換処理部209は、ジョブコントロール処理部201の指示に基づいて、指示画像に対して色変換処理を行い、色変換処理後の画像をジョブコントロール処理部201へ通知する。
【0035】
RIP処理部211は、ジョブコントロール処理部201の指示に基づいて、PDL解釈(インタプリット)を行い、RIP部116を制御してレンダリングすることで、ビットマップイメージへの展開を行う。
【0036】
[画像データ処理フロー]
以上のような構成により、本実施形態の画像処理システムは、LAN10より印刷ジョブを受けて、プリントするまでの動作を行う。
まず、上述したように、外部装置からLAN10を介して送信されてきたPDLデータは、ネットワークI/F111にて受信され、イメージバスI/F114よりRIP部116へ入力される。RIP部116は、受信したPDLの解釈を行い、RIP部116にて処理できるコードデータへ変換する。さらに、RIP部116は、変換したコードデータに基づいてレンダリングを実行する。RIP部116でレンダリングされたページデータは、後段の画像圧縮部103にて圧縮され、HDD108に順次格納される。
【0037】
次にHDD108に格納された圧縮データは、ジョブコントロール処理部201からの指示によるプリント動作において読み出され、画像伸張部121にて圧縮データの伸長処理が行われる。画像伸張部121で伸長された画像データは、デバイスI/F117を介してプリンタ画像処理部119へ入力される。
【0038】
[プリンタ画像処理部]
続いて、上記構成に基づき、プリンタ画像処理部119へ入力された画像データの処理フローについて説明する。
図3は、プリンタ画像処理部119の構成の一例を示す図である。
プリンタ画像処理部119は、色変換部301、濃度段差補正部302、γ補正回路309、中間調処理部304、ページバッファメモリ306、ドラム間遅延メモリ制御部305を有する。
【0039】
色変換部301は、画像データを輝度値(RGB、YUVなど)から濃度値(CMYKなど)に変換するものであり、入力した画像データを後段のプリンタエンジン102で印字できる色成分に対応した色空間に変換する。
【0040】
濃度段差補正部302は、色変換部301で濃度値にされた多値の画像データを、同一ページ内の濃度段差の補正をした信号値に変換する。濃度段差補正部302は、後段のγ補正回路309と同じ入出力信号を変化させる一次元テーブルを持ち、そのテーブルにページ内の位置に合わせて、段差補正のための段差補正係数を乗じて作用させる。
【0041】
γ補正回路309(以下「γLUT309」)は、濃度段差補正部302で濃度段差補正された画像データの濃度信号を、プリンタエンジンでその濃度を再現するための信号値に変換する。γLUTは、プリンタエンジンのγ特性に合わせて作られた入出力信号を変換するテーブルであり、本実施形態においては予め記憶しているテーブルを設定して処理させるが、既知の階調制御等を用いて作成してそれを設定し用いてもよい。
【0042】
中間調処理部304は、γLUT309で補正された画像データに対して中間調処理を行い、1画素の各色成分が2値(1ビット)で表現される画像データへ変換する。中間調処理には、一般にディザ法や誤差拡散法などが挙げられ、本実施形態においてもどちらの方法でも構わない。なお、中間調処理については、上記方法に限定するものではなく、他の方法を用いても構わない。
【0043】
中間調処理部304での変換処理により生成された2値の画像データは、ドラム間遅延メモリ制御部305を介し、画像データ内の各画素の色成分ごとに分離されページバッファメモリ306に一時的に格納される。ドラム間遅延メモリ制御部305は、プリンタエンジン102より送信される各色成分に対応するビデオデータ要求信号(VREQ_*(*はY/M/C/Kのいずれか))が入力されたタイミングで対応する色成分のデータを読み出す。なお、ビデオデータ要求信号は、各色成分に対し、VREQ_Y、VREQ_M、VREQ_C、VREQ_Kとする。これはプリンタエンジン102内の各色成分に対応する感光ドラム1401~1404が配置された上流から下流までの距離に応じて、感光ドラム1401~1404それぞれに露光するタイミングが異なるため、各色成分のデータの読み出すタイミングも異なる。読み出された色成分のデータは、プリンタエンジン102に出力される。
【0044】
次にプリンタ画像処理部119より出力された色成分データがプリンタエンジン102に入力されたときの動作について説明する。
【0045】
[プリンタエンジン動作]
次にプリンタ画像処理部119より出力された色成分データがプリンタエンジン102に入力されたときの動作について説明する。
図4は、プリンタエンジン102の内部構成の一部を示す図である。
プリンタI/F部1201は、プリンタエンジン102において印字動作の準備が可能となった場合に各色成分のデータを要求するビデオデータ要求信号であるVREQ_*(*はY/M/C/Kのいずれか)を発行する。プリンタI/F部1201は、プリンタ画像処理部119から順次送信されてくる色成分データを受信する。プリンタI/F部1201が受信した色成分データは、パルス幅変調回路1203に入力される。
【0046】
パルス幅変調回路1203は、入力した実際の色成分データに基づいて、後段の各色の各レーザー駆動部1212~1215を駆動させるためのパルス信号(駆動信号)を生成し、各レーザー駆動部1212~1215へ送信する。
各色成分に対応した各レーザー駆動部1212~1215は、パルス幅変調回路1203より受信したパルス信号に基づいて、各色成分に対応するレーザー露光装置を駆動する。
【0047】
図5は、プリンタエンジン102の作像部分の一例を示す断面図である。
プリンタエンジン102は、いわゆる電子写真方式のプリンタエンジンである。この種のプリンタエンジンは、感光体と、感光体を帯電させる帯電部と、帯電された感光体を露光する露光部と、露光されることで感光体上に形成される静電潜像をトナーにより現像する現像部と、現像されたトナー像を像担持体上に転写する転写部を有する。本実施形態のプリンタエンジン102は、複数の色成分(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))のトナーを備え、像担持体上に複数の色成分からなるトナー像を形成可能である。以下、主にイエロー(Y)の作像部分について説明するが、他の色成分のマゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の作像部分についても同様の構成である。なお、本実施形態においては、プリンタエンジン102として、YMCKの4色からなるタンデム式エンジンを用いた画像形成装置を対象としているが、これに限定されるものではない。
【0048】
プリンタエンジン102は、イエロー(Y)の作像部分として、例えばΦ32mmの感光ドラム1401、例えばΦ10mmの帯電ローラ1205、Yレーザー露光装置1406、現像装置1416、1次転写装置1408を備える。また、プリンタエンジン102は、2次転写装置1413、定着装置1414、クリーニング装置1415、及び画像濃度センサ400を備える。
【0049】
Yレーザー露光装置1406は、Yレーザー駆動部1212より駆動され、レーザ光を感光ドラム1401に照射して感光ドラム1401上に静電潜像を形成する。現像装置1416は、感光ドラム1401上の静電潜像をトナーにより現像する。1次転写装置1408は、可視化されたトナー像を転写材(像担持体である中間転写ベルト1412)上に転写する(1次転写)。2次転写装置1413は、中間転写ベルト1412上に形成されたトナー像を像担持体であるシートに転写する(2次転写)。
【0050】
定着装置1414は、シート上に転写されたトナー像を定着する。クリーニング装置1415は、2次転写後に中間転写ベルト1412に残った転写残トナーを除去する。
画像濃度センサ400は、中間転写ベルト1412上に形成されたパッチ画像の濃度を計測する。
【0051】
なお、現像装置1416は現像剤容器を備え、二成分現像剤としてトナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とが混合された現像剤が収容されている。Aスクリュー1420とBスクリュー1421はそれぞれトナー粒子の搬送と磁性キャリア粒子との混合を行う。例えばΦ13mmの現像スリーブ1422は、感光ドラム1401に近接に配置され、感光ドラム1401と従動するように回転して、トナーとキャリアとが混合された現像剤を担持する。現像スリーブ1422に担持された現像剤は感光ドラム1401に接触し、感光ドラム1401上の静電潜像が現像される。
【0052】
なお、プリンタエンジン102には、
図5の構成以外にも印字用紙を搬送する搬送部(不図示)等があるが、本実施形態においては説明を省略する。
【0053】
以上のようなプリンタエンジンの構成において、イエローを印字する場合には、Yレーザー駆動部1212より駆動されるYレーザー露光装置1406により感光ドラム1401を露光し、感光ドラム1401上に静電潜像を形成する。形成された静電潜像は、現像装置1416内の現像スリーブ1422上に担持されているイエローの現像剤によりトナー像として可視化され、可視化されたトナー像は中間転写ベルト1412上に1次転写装置1408によって転写される。
【0054】
このようにしてマゼンタ、シアン、ブラックの各色成分も同様に各現像装置1417、1418、1419により現像され、感光ドラム1402、1403、1404にそれぞれトナー像として可視化される。そして、可視化されたトナー像は直前に転写された色成分のトナー像と同期して、それぞれ1次転写装置1409、1410、1411により順次転写され、中間転写ベルト1412上には4色のトナー像により形成された最終的なトナー画像が形成される。中間転写ベルト1412に形成されたトナー画像は、2次転写装置1413にて同期して搬送されてくるシートに転写され、定着装置1414にてトナー像を定着される。
【0055】
[主走査シェーディング]
次に、主走査方向の濃度ムラ補正(以下「主走査シェーディング」)について説明する。
図6は、主走査シェーディング処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、CPU105がROM107又はHDD108に格納されたプログラムを必要に応じてRAM106にロードして実行することにより実現されるものである。例えば、ジョブコントロール処理部201により実行される処理でも、図示しない他のソフトウェアモジュールにより実行される処理でもよい。
【0056】
まず、主走査シェーディング処理が開始されると、CPU105は、プリント処理部207等を制御し、主走査方向の濃度を補正するためのテストパターン画像を出力する(S101)。なお、本実施形態におけるテストパターン画像の詳細については後述する。
【0057】
CPU105は、操作部110の表示部を介してユーザに対して指示し、ユーザはテストパターン画像が形成されたシートをスキャナ101を用いて読み取るための操作を行う。この操作に応じて、スキャナ101は該シートを読み取り、テストパターン画像に関する読取データをCPU105へ出力する。CPU105は、テストパターン画像に関する読取データを取得し、テストパターン画像の濃度を読取データに基づき測定する(S102)。
次に、CPU105は、上記S102で測定した濃度から、主走査方向の濃度分布を算出し、濃度ムラがなくなるようにシェーディング補正量を決定する(S103)。なお、濃度ムラ補正量の決定方法についての詳細は、後述する。
【0058】
次に、CPU105は、上記S103で決定した色成分ごとのシェーディング補正量を、プリンタ画像処理部119を介してプリンタエンジン102に送信して設定するように制御する(S104)。シェーディング補正の方法としては、露光光のパルス幅変調(PWM)の変調度を走査位置により変える方法や、露光光の強度の変調度を走査位置により変える方法が知られているが、この二つの方法に限るものではない。例えば、露光光のパルス幅変調の変調度を走査位置により変える方法の場合、上記S103で決定した色成分ごとのシェーディング補正量をパルス幅変調回路1203に送信して、パルス幅変調回路1203内の図示しないメモリに記憶させる。これにより、パルス幅変調回路1203は、プリント実行時に、この色成分ごとのシェーディング補正量に基づき露光光のパルス幅変調の変調度を走査位置により変更する。この結果、主走査方向の濃度ムラが補正される。
【0059】
[テストパターン]
次に、主走査シェーディングにおける補正用テストパターンについて、
図7を用いて説明する。
図7は、第1実施形態の主走査シェーディングにおける補正用テストパターンの一例を示す図である。ここでは一例として、シアンのテストパターンについて説明するが、その他の色成分についても同様のテストパターンを用いることによって同じ効果を得ることができる。
【0060】
本実施形態では、A4サイズ(210mm×297mm)のシートにテストパターンを形成する。テストパターン形成時の主走査方向、副走査方向(中間転写ベルト1412の搬送方向(移動方向))は図中の矢印で示す通りである。主走査方向と副走査方向は直交する。なお、テストパターンを形成するシートのサイズはA4サイズに限定されるものではない。また、本実施形態の画像形成装置は、シート上にテストパターンを形成し、スキャナ101にシート上のテストパターンを読み取らせる。これによって、テストパターンの濃度に関する情報が取得される。しかし、シート上にテストパターンを形成し、このシート上のテストパターンの画像濃度を、例えば外部測色器で測定してもよい。
【0061】
図7に示すように、本実施形態のテストパターンには、主走査方向に沿って伸びた帯画像(パターン)が複数含まれる。本実施形態における効果を発揮するためには、これらの帯画像の間隔(隣り合う帯画像の副走査方向における間隔)が複数種あることが必要である。本実施形態のテストパターンは、帯画像の数が3つとする。しかし、1枚のシートに形成される帯画像の数は本実施形態の数に限定されない。
【0062】
図7では、一例として、3本の帯画像が配置され、第1帯と第2帯の間隔(帯画像中心位置の間隔)が30mm、第2帯と第3帯の間隔が50mmのテストパターンを示している。主走査方向においてテストパターンの複数の領域(濃度測定点)の濃度から濃度ムラを検出する。本実施形態のテストパターンは、例えば、主走査方向に領域Aから領域Eまで5つの領域の濃度を求めている。CPU105は領域毎の濃度をスキャナ101の読取データから取得する。なお、主走査方向の領域の分割数はこれに限定されるものではない。また、帯画像の寸法は20mm×280mmとしたが、これに限定されるものではない。
【0063】
帯画像の間隔が複数種必要であるのは、前述したように、電子写真を用いた画像形成装置では、副走査方向に周期を持った濃度ムラが発生しやすいためである。以下、
図19を用いて一例を説明する。
【0064】
図19は、あるA3サイズの紙に印刷された出力画像をスキャナで取り込み、濃度のムラを明暗で表現した画像である。濃度ムラを明確にするために特殊な画像処理を行っている。
図19に示す画像は、副走査方向に濃度が周期的に変動しており、主走査方向に濃度ムラを生じた出力画像の一例を示す図である。
【0065】
出力画像に生じる周期的な濃度ムラは、特に感光体ドラムや、現像スリーブ、帯電ローラの周長に対応する周期で発生する。例えば
図19の画像は、約40mm周期のムラと約102mm周期のムラが混在したような画像である。本実施形態の画像形成装置100では現像スリーブがΦ13mm、感光ドラムがΦ32mmである。よって、現像スリーブの周長は約41mm(≒13mm×π)、感光ドラムの周長は約101mm(≒32mm×π)となり、上述したムラの周期である約40mm、約102mmに近い値となる(略一致する)。よって、これらの回転体が約40mm周期のムラ、約102mm周期のムラの原因となっていると考えられる。
【0066】
以下、このような周期ムラを持つ画像に対して、主走査方向の濃度ムラを軽減するようなシェーディング補正を実行するために必要なテストパターンについて考察する。
【0067】
まず、パターン1として、帯画像を1色で1本持つ補正用テストパターンの場合を考える。主走査方向の濃度ムラが強く発生する箇所(例えば、
図19中の実線部、点線部)に帯画像が形成された場合と、主走査方向の濃度ムラが強く発生しない箇所に帯画像が形成された場合で、測定される濃度が異なる。そのため、シェーディング補正量も帯画像が形成される場所によって異なってしまう。濃度ムラが強く発生する箇所に帯画像が形成されていれば、そのムラを補正するようにシェーディング補正量が決定される。そのため、もともと濃度のズレ量が大きい箇所はズレ量が抑制されるが、もともと濃度のズレ量が小さい箇所は、過剰な補正量が原因で大きな濃度ズレを生じてしまう。
【0068】
次に、パターン2として、帯画像を1色で2本以上、等間隔で持つ場合を考える(2本を含む)。この場合は、ある一部だけ突発的に濃度が傾いている場合は、補正量が平均化される、あるいは処理方法によっては突発箇所を除く等などの処理で補正量が適正化されることもある。一方で、副走査方向の周期的な濃度ムラに対しては、該周期(又は該周期の整数倍)に帯画像の間隔が略一致する場合とそうでない場合で、やはり大きく補正量が異なり、パターン1と同じ傾向になる。
【0069】
最後に、パターン3として、本実施形態のように帯画像を1色で3本以上、複数種の帯画像間隔を持つような補正用テストパターンの場合を考える。この場合は、帯画像の間隔を変えているため、パターン1やパターン2のように、副走査方向の周期的な濃度ムラに対して、全ての帯画像が略一致するということはない。本実施形態のテストパターンは、隣り合う帯画像の間隔が、感光体ドラム、帯電ローラ、及び現像スリーブの周長の整数倍に対応しない間隔が含まれるように、複数の異なる間隔になっている。従って、主走査方向の濃度ムラに対して過補正することなく適正な補正が可能になる。
【0070】
以上のように、本実施形態における主走査シェーディング補正用テストパターンは、帯画像が1色で3本、2種類の間隔を持つテストパターンで説明したが、これに限定されるものではなく、さらに多くの本数や間隔の種類を持ってもよい。さらに、主走査シェーディング補正用テストパターンを、1色で3本以上の帯画像とし、該3本以上の帯画像の副走査方向の間隔が互いに素(公約数が1のみ)な2種類以上の間隔となるようにしてもよい。例えば、
図7の第1帯と第2帯の間隔を30mm、第2帯と第3帯の間隔を49mmのように、3本の帯画像がなす2つの間隔が互いに素な関係(30と49の公約数は1のみ)となるようにしてもよい。これにより、副走査方向の周期的な濃度ムラに対して、全ての帯画像が略一致するということがなくなる。
【0071】
[シェーディング補正量決定方法]
次に、
図6のステップS103におけるシェーディング補正量決定方法について説明する。すなわち画像形成装置の主走査方向の濃度ムラ補正方法について説明する。なお、補正方法としては、露光光のPWM変調の変調度を走査位置により変える方法や、露光光の強度の変調度を走査位置により変える方法が知られているが、この二つの方法に限るものではない。
【0072】
図6のステップS101で出力された主走査シェーディング補正用チャートでは、
図7に示すように主走査方向に領域が分割され、各々の領域において、各々の帯に対して濃度測定が行われる。測定結果の例を
図8、
図9に示す。
図8は、ステップS102において、テストパターンの濃度を測定した結果の一例を示すグラフである。
図9は、ステップS102において、テストパターンの濃度を測定した結果の一例を示す図である。
【0073】
次に、各々の帯の平均濃度を算出し、平均濃度に対する各領域の濃度差分ΔDensを算出する。算出結果の例を
図10に示す。
図10は、第1実施形態における濃度ムラ補正前の差分濃度結果の一例を示す図である。
【0074】
次に、濃度差分結果に対する必要補正量を算出する。必要補正量は、数1によって算出される。
【数1】
【0075】
数1における補正係数Nは、濃度差分に対して、どの程度露光光のPWM変調や露光光強度の変調度のレベルを変化させるか、を決める係数である。例えば補正係数N=100であれば、濃度差分ΔDensが「0.01」の時、変調度のレベルを「1」変化させることを示している。本実施形態においては、補正係数N=200とした。なお、補正係数Nは、これに限定されるものではない。なお、ここでは、数1の右辺の計算結果を四捨五入したものは必要補正量として算出しているが、これに限定されるものではない。
図11は、第1実施形態における各帯各領域必要補正量の算出結果の一例を示す図である。
【0076】
次に、上記のようにして算出した各帯、各領域の必要補正量から、各領域における露光補正レベルを決定する。露光補正レベルは、同じ領域の各帯の濃度差分結果の平均値として算出する。
図12は、第1実施形態における濃度ムラ補正時の露光補正レベルの一例を示す図である。
【0077】
なお、本実施形態においては、露光補正レベルを領域ごとの平均値として算出したが、これに限定されるものではない。例えば中間値でも他の統計処理で求められた値でもよい。
このようにして、補正に必要な露光レベルの変調度を算出し、露光レベルを調整することによって、主走査方向の濃度ムラを補正することが可能になる。
【0078】
[効果説明]
次に、本実施形態のような主走査シェーディングパターンを用いて濃度ムラ補正を行った場合の効果について説明する。
前述のような補正を行った後に、再度同一のテストパターンを出力したときの各帯各領域も測定濃度を
図13および
図14に示す。
図13は、第1実施形態における濃度ムラ補正後の濃度測定結果の一例を示すグラフである。
図14は、第1実施形態における濃度ムラ補正後の濃度測定結果の一例を示す図である。
【0079】
図8、
図9のように、本実施形態の主走査シェーディング補正を行う前は、
最大濃度Dmax=0.83
最小濃度Dmin=0.72
差分濃度ΔD=0.11
各帯濃度傾き 第1帯=0.11/第2帯=0.03/第3帯=0.05
である。
【0080】
これに対し、
図13、
図14のように、本実施形態の主走査シェーディング補正を行った後は、
最大濃度Dmax=0.795
最小濃度Dmin=0.73
差分濃度ΔD=0.065
各帯濃度傾き 第1帯=0.055/第2帯=0.025/第3帯=0.03
となり、主走査方向の濃度ムラを軽減できていることがわかる。
【0081】
また、比較例1として、帯の間隔を等間隔で作成し、濃度の傾きが大きい箇所に形成されたテストパターンを用いて主走査シェーディングを行った場合の、補正後の濃度結果を
図15に示す。
【0082】
図15のように、従来の濃度ムラ補正後では、濃度の傾きが大きい箇所に形成されたテストパターンを用いて主走査シェーディングを行った場合、
最大濃度Dmax=0.8
最小濃度Dmin=0.71
差分濃度ΔD=0.09
各帯濃度傾き 第1帯=0/第2帯=0.08/第3帯=0.08
となり、ある領域においては適正な補正がなされているものの、別の領域では補正過多になり、結果として補正の効果が少ないことがわかる。
【0083】
また、比較例2として、帯の間隔を等間隔で作成し、濃度の傾きが小さい箇所に形成されたテストパターンを用いて主走査シェーディングを行った場合の、補正後の濃度結果を
図16に示す。
【0084】
図16のように、従来の濃度ムラ補正後では、濃度の傾きが小さい箇所に形成されたテストパターンを用いて主走査シェーディングを行った場合、
最大濃度Dmax=0.82
最小濃度Dmin=0.73
差分濃度ΔD=0.09
各帯濃度傾き 第1帯=0.08/第2帯=0/第3帯=0.03
となり、ある領域においては適正な補正がなされているものの、別の領域では補正不足になり、結果として補正の効果が少ないことがわかる。
【0085】
以上のように、主走査方向の濃度ムラを補正するテストパターンにおいて、濃度測定を行うための帯画像を副走査方向に3本以上持ち、帯画像と帯画像の間隔の種類が2種類以上となるようなテストパターンを用いて、主走査方向の濃度ムラ補正を行う。このように、テストパターンを1色成分で3本以上の帯画像で構成して、隣り合う帯画像の間隔に、作像部内の回転体(感光体、帯電ローラ、現像スリーブ等)の周長の整数倍に対応しない間隔が含まれることになる。よって、作像部内の回転体に起因して副走査方向に周期的に発生する濃度ムラと、主走査シェーディングに用いるテストパターン内の各帯画像の形成位置が全て一致することを防止できる。これによって、副走査方向に周期的に濃度ムラが発生している場合においても、主走査方向の濃度ムラ補正を、高精度に実行することが可能となる。
【0086】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では、主走査方向の濃度ムラを補正するテストパターンにおいて、濃度測定を行うための帯画像を副走査方向に3本以上持ち、帯画像と帯画像の間隔の種類が2種類以上となるような単色(一色成分)のテストパターンを用いた。そして主走査シェーディングが必要な色成分について上記単色のテストパターンを用いてシェーディング補正量を設定する構成について説明した。第2実施形態では、テストパターンとして、Y、M、C、Kの4色を用いた場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した画像形成装置の説明、主走査シェーディングにおけるフローチャート、補正方法については本第2実施形態においても同様であるため、説明を省略する。
【0087】
[テストパターン]
本第2実施形態における主走査シェーディング補正用テストパターンについて、
図17を用いて説明する。
図17は、第2実施形態の主走査シェーディングにおける補正用テストパターンの一例を示す図である。ここでは一例として、副走査方向に各色4本ずつの帯画像が配列されたテストパターンについて説明するがこれに限定されるものではない。
【0088】
本実施形態の画像形成装置では、A4サイズ(210mm×297mm)のシートにテストパターンを形成する。テストパターン形成時の主走査方向、副走査方向(中間転写ベルト1412の搬送方向(移動方向))は図中の矢印で示す通りである。なお、テストパターンを形成するシートのサイズはA4サイズに限定されるものではない。
【0089】
図17に示すように、テストパターンは搬送方向の先頭から、
Y→M→C→K→M→Y→K→C→M→Y→C→K→Y→M→C→K
の順に、合計16本の帯画像が配列されている。このテストパターンは、複数の色成分の帯画像を一色成分につき4本、副走査方向に配列したものであり、その配列の順序は、同一色成分の帯画像の間隔が複数種になる配列順になっている。
【0090】
また、各色の帯画像の間隔を
図18に示す。
図18は、第2実施形態の主走査シェーディングにおける補正用テストパターンの色毎の帯間隔の一例を示す表である。
【0091】
図18からわかるように、各色の帯画像の間隔は、第1帯~第2帯の間隔、第2帯~第3帯の間隔、第3帯~第4帯の間隔が、それぞれ異なるように設定されている。なお、帯画像は10mm×280mmとしたが、これに限定されるものではない。本実施形態のテストパターンは、複数の色成分のパターンを一色成分につき3以上、副走査方向に配列したものであり、その配列の順序は、同一色成分のパターンの副走査方向の間隔が複数種になる順序となっている。
【0092】
第1実施形態において説明したが、電子写真を用いた画像形成装置では、副走査方向に周期を持った濃度ムラが発生しやすい。そのため、主走査方向の濃度ムラを補正する場合、副走査方向に各色1本あるいは2本の帯画像で補正しようとすると、副走査方向の周期の影響を受けやすく、3本以上であっても帯画像の間隔が同じであれば、副走査方向の周期の影響を受けやすくなってしまう。
従って、第2実施形態で示すような帯画像の配列で形成された補正用テストパターンを用いれば、副走査方向に周期的に濃度ムラの強弱が発生している場合においても、濃度ムラの強弱の影響が緩和され、全色適正に濃度ムラ補正を行うことが可能になる。
【0093】
なお、本実施形態では、帯画像の配列をY→M→C→K→M→Y→K→C→M→Y→C→K→Y→M→C→Kの順になる補正用パターンの説明をした。しかし、配列は、これに限定されるものではなく、各色の帯画像の間隔が複数種あるような順序の配列であれば、同じ効果を得ることが可能である。
【0094】
また、本実施形態では、全色(ここではYMCKの4色)をA4サイズ1枚の領域に配列した補正用パターンの説明を行ったが、これに限定されるものではない。例えば、A4サイズ複数枚の領域にわたって形成されたテストパターンを用いることも可能で、各色の帯画像の間隔が複数種あれば、同じ効果を得ることが可能である。
【0095】
また、2色あるいは3色の補正用パターンであっても、各色の帯画像の間隔が複数種あれば、当該色に関して、同じ効果を得ることが可能である。CPU105は、主走査シェーディングを行う色成分の帯画像を配列した補正用パターンを用いて
図6に示した主走査シェーディング処理を行う。例えば、Y,Cの2色の主走査シェーディングを行う場合には、CPU105は、Y,Cの2色を配列した補正用パターンを用いて
図6に示した主走査シェーディング処理を行う。
また、5色以上の色成分を用いて画像形成する画像形成装置の場合には5色以上の補正用パターンを用いてもよい。
【0096】
以上、各実施形態によれば、副走査方向に周期的にムラが発生している場合においても、主走査方向の濃度ムラの補正を高精度に実行することが可能になる。
【0097】
なお、上述した各種データの構成及びその内容はこれに限定されるものではなく、用途や目的に応じて、様々な構成や内容で構成されることは言うまでもない。
以上、一実施形態について示したが、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
また、上記各実施形態を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【0098】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。即ち、上述した各実施形態及びその変形例を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0099】
100 画像形成装置
102 プリンタエンジン
105 CPU
400 画像濃度センサ
1203 パルス幅変換回路
1412 中間転写ベルト(転写材)