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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】電界紡糸装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/04 20060101AFI20241209BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20241209BHJP
【FI】
D01D5/04
D04H1/728
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020167123
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059401
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 寛太
(72)【発明者】
【氏名】大城 健一
(72)【発明者】
【氏名】内田 健哉
(72)【発明者】
【氏名】木下 静雄
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145551(JP,A)
【文献】特開2012-158837(JP,A)
【文献】特開2017-166090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0268131(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00-13/02
D01F1/00-6/96
9/00-9/04
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料を含む原料液を噴出可能なノズルを備え、第1の移動位置と第2の移動位置との間で移動可能な電界紡糸ヘッドと、
前記電界紡糸ヘッドの前記ノズルを収納可能な収納空洞が内部に形成され、前記収納空洞の外部への開口が形成される収納ケースであって、前記電界紡糸ヘッドが前記第1の移動位置に位置する状態において、前記ノズルから離間した位置に前記収納空洞が位置する収納ケースと、
前記電界紡糸ヘッドが前記第2の移動位置へ移動することにより前記電界紡糸ヘッドから力が作用し、前記電界紡糸ヘッドからの前記力によって前記収納ケースを移動させることにより、前記収納ケースの前記収納空洞に前記開口から前記ノズルを挿入させ、前記第2の移動位置に位置する前記電界紡糸ヘッドの前記ノズルを前記収納空洞の内部に収納するケース移動部と、
を具備する、電界紡糸装置。
【請求項2】
前記電界紡糸ヘッドから前記ケース移動部に力が作用していない状態において、前記第2の移動位置に位置する前記電界紡糸ヘッドの前記ノズルを収納する収納位置から離れた位置で、前記収納ケースを保持するケース保持部をさらに具備する、請求項1の電界紡糸装置。
【請求項3】
前記収納ケースの前記収納空洞に設けられ、前記収納空洞に前記ノズルが収納された状態において前記ノズルが密着する密着部をさらに具備する、請求項1又は2の電界紡糸装置。
【請求項4】
前記密着部は、ゴムを含むキャップ、又は、前記原料液に含まれる前記高分子材料を溶解可能な溶液を保持するスポンジである、請求項の電界紡糸装置。
【請求項5】
前記電界紡糸ヘッドに前記原料液を供給する供給部と、
前記原料液を帯電させ、帯電した前記原料液を前記ノズルから噴出させる電源と、
をさらに具備する、請求項1乃至のいずれか1項の電界紡糸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電界紡糸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電界紡糸法(電荷誘導紡糸法等とも称されることもある)により、微細なファイバーを収集体又は基材の表面に堆積させ、ファイバーの膜を形成する電界紡糸装置がある。電界紡糸装置では、電界紡糸ヘッドに高分子材料を含む原料液が供給される。そして、電界紡糸ヘッド等に電圧を印加することにより、原料液を帯電させ、電界紡糸ヘッドのノズルから帯電した原料液を収集体又は基材の表面に向かって噴出させる。これにより、ファイバーが、収集体又は基材の表面に堆積される。
【0003】
前述のような電界紡糸装置では、ファイバーの膜を形成する作業が行われていない状態において、電界紡糸ヘッドのノズルは、収納ケースの内部に収納される等して、保護される。収納ケースの内部へノズルの収納する作業は、可能な限り自動化されることが、求められている。また、収納ケースの内部へノズルの収納する作業が自動化されても、収納ケースにノズルを収納する構成が複雑化しないことが、求められている。すなわち、収納ケースへノズルを収納する作業の自動化が簡単な構成で実現されることが、求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-155457号公報
【文献】特開2017-145533号公報
【文献】特開2018-145551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、収納ケースへノズルを容易に収納することができる電界紡糸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、電界紡糸装置は、電界紡糸ヘッド、収納ケース及びケース移動部を備える。電界紡糸ヘッドは、高分子材料を含む原料液を噴出可能なノズルを備え、第1の移動位置と第2の移動位置との間で移動可能である。収納ケースの内部には、電界紡糸ヘッドのノズルを収納可能な収納空洞が形成され、収納ケースには、収納空洞の外部への開口が形成される。電界紡糸ヘッドが第1の移動位置に位置する状態では、収納ケースの収納空洞は、ノズルから離間した位置に位置する。電界紡糸ヘッドが第2の移動位置へ移動することにより、電界紡糸ヘッドからケース移動部に力が作用する。ケース移動部は、電界紡糸ヘッドからの力によって収納ケースを移動させことにより、収納ケースの収納空洞に開口からノズルを挿入させ、第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッドのノズルを収納空洞の内部に収納する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置において、電界紡糸ヘッドが第1の移動位置に位置する状態を、電界紡糸ヘッドの中心軸に対して交差し、かつ、ノズルの突出方向に対して交差する方向から視た概略図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置において、電界紡糸ヘッドが第1の移動位置に位置する状態を、ノズルの突出方向とは反対側から視た概略図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置において、電界紡糸ヘッドが第2の移動位置に位置する状態を、電界紡糸ヘッドの中心軸に対して交差し、かつ、ノズルの突出方向に対して交差する方向から視た概略図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置において、第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッドのノズルが収納ケースに収納された状態を示す概略図である。
図5図5は、第1の変形例に係る電界紡糸装置において、第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッドのノズルが収納ケースに収納された状態を示す概略図である。
図6図6は、第2の変形例に係る電界紡糸装置において、第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッドのノズルが収納ケースに収納された状態を示す概略図である。
図7図7は、第3の変形例に係る電界紡糸装置において、第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッドのノズルが収納ケースに収納された状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1乃至図3は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置1の一例を示す。図1乃至図3に示すように、電界紡糸装置1は、電界紡糸ヘッド2、移動駆動部3、原料液の供給部4、電源5、収集体6、制御部7及び収納ケース8を備える。
【0010】
電界紡糸ヘッド2は、ヘッド本体11と、1つ以上(本実施形態では4つ)のノズル12と、を備える。ここで、ヘッド本体11(電界紡糸ヘッド2)の中心軸を規定し、ヘッド本体11において中心軸に沿う方向を長手方向とする。ヘッド本体11は、中心軸に沿って延設され、長手方向に沿って延設される。本実施形態では、ヘッド本体11及びノズル12のそれぞれは、導電材料から形成される。なお、ノズル12の数は、特に限定されるものではなく、ノズル12は、1つ以上設けられていればよい。また、ヘッド本体11及びノズル12のそれぞれは、原料液に対して耐性を有する材料から形成されることが好ましく、例えば、ステンレスから形成される。
【0011】
ノズル12のそれぞれは、ヘッド本体11の外周面に設けられる。複数のノズル12のそれぞれは、外周側へ、すなわち、ヘッド本体11の中心軸から離れる側へ、ヘッド本体11の外周面から突出する。本実施形態では、複数のノズル12は、ヘッド本体11の中心軸の軸回りについて、互いに対して同一又は略同一の角度位置に配置される。このため、本実施形態では、複数のノズル12は、電界紡糸ヘッド2の長手方向に沿って配列され、1つのノズル列を形成する。なお、図1及び図3では、電界紡糸ヘッド2の中心軸(長手方向)に対して交差し、かつ、ノズル12の突出方向に対して交差する方向から視た状態が、示される。そして、図2は、ノズル12の突出方向とは反対側から視た状態が、示される。
【0012】
ヘッド本体11の内部には、内部空洞(図示しない)が形成される。そして、ノズル12のそれぞれの内部には、流路(図示しない)が形成され、ノズル12のそれぞれのヘッド本体11からの突出端(先端)には、噴出口13が形成される。ノズル12のそれぞれでは、噴出口13は、流路を通して、ヘッド本体11の内部空洞と連通する。ノズル12のそれぞれは、噴出口13から原料液を噴出可能である。ノズル12のそれぞれでは、ヘッド本体11から突出する側、すなわち、噴出口13が開口する側に向かって、原料液を噴出可能である。
【0013】
移動駆動部3は、電動モータ等の駆動部材を備え、駆動部材は、電力が供給されることにより、駆動される。移動駆動部3には、支持体31及び可動体32を間に介して、電界紡糸ヘッド2が連結される。可動体32は、電界紡糸ヘッド2と一緒に支持体31及び移動駆動部3に対して移動可能な状態で、支持体31に接続される。図1乃至図3の一例では、電界紡糸ヘッド2及び可動体32は、電界紡糸ヘッド2の長手方向(電界紡糸ヘッド2の中心軸)に沿って、支持体31及び移動駆動部3に対して移動可能である(矢印X1及び矢印X2)。また、電界紡糸ヘッド2は、第1の移動位置と第2の移動位置との間で、移動可能である。
【0014】
ここで、図1及び図2では、電界紡糸ヘッド2は、第1の移動位置に位置し、図3では、電界紡糸ヘッド2は、第2の移動位置に位置する。本実施形態では、移動駆動部3が駆動されることにより、支持体31を介して可動体32及び電界紡糸ヘッド2に動力が伝達され、可動体32及び電界紡糸ヘッド2が移動する。また、電界紡糸ヘッド2は、支持体31及び可動体32を間に介して移動駆動部3に連結されるため、電界紡糸ヘッド2がいずれの位置に位置する状態でも、移動駆動部3は、電界紡糸ヘッド2から離れて位置する。したがって、電界紡糸ヘッド2がいずれの位置に位置する状態でも、移動駆動部3に設けられる電動モータ等の駆動部材は、電界紡糸ヘッド2から離れて位置する。また、電界紡糸ヘッド2は、第1の移動位置に位置する状態において、第2の移動位置に位置する状態に比べて、移動駆動部3から離れて位置する。
【0015】
原料液の供給部4は、電界紡糸ヘッド2が第1の移動位置に位置する状態において、原料液を電界紡糸ヘッド2に供給可能である。電界紡糸ヘッド2が第2の移動位置に位置する状態等、電界紡糸ヘッド2が第1の移動位置以外に位置する状態では、供給部4は、電界紡糸ヘッド2に原料液を供給しない。供給部4は、原料液の供給源、及び、供給源から電界紡糸ヘッド2への原料液の供給経路を構成する。原料液の供給部4は、収納部41、供給駆動部42、供給調整部43及び供給配管45を備える。収納部41、供給駆動部42、供給調整部43及び供給配管45のそれぞれは、原料液に耐性を有し、ある一例では、収納部41及び供給配管45のそれぞれは、フッ素樹脂等の電気的絶縁性を有する材料から形成される。
【0016】
収納部41は、原料液を収納するタンク等である。原料液は、高分子材料を溶媒に溶解したものである。原料液に含まれる高分子、及び、高分子を溶解させる溶媒は、収集体6の表面に堆積させるファイバー10の種類等に対応させて、適宜に決定される。高分子材料は、特に限定されるものではなく、形成するファイバー10の材質に対応させて適宜に変更可能である。高分子材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ナイロン、アラミド等を用いることができる。原料液に用いられる溶媒は、高分子材料を溶解することができるものであればよい。溶媒は、溶解させる高分子材料に対応させて適宜に変更可能である。溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ベンゼン、トルエン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びジメチルアセトアミド(DMAc)等を用いることができる。
【0017】
供給配管45は、収納部41と電界紡糸ヘッド2との間を接続し、原料液の供給流路を形成する。供給駆動部42は、駆動等されることにより、収納部41から供給配管45を通して原料液を電界紡糸ヘッド2に供給する。ある一例では、供給駆動部42は、ポンプである。供給調整部43は、電界紡糸ヘッド2に供給される原料液の流量及び圧力等を調整する。ある一例では、供給調整部43は、原料液の流量及び圧力等を制御可能な制御弁を備える。この場合、供給調整部43は、原料液の粘度及びノズル12の構造等に基づいて、原料液を適宜の流量及び圧力等に調整する。また、ある一例では、供給調整部43は、収納部41から電界紡糸ヘッド2への原料液の供給及び供給停止を切替え可能である。この場合、供給調整部43は、例えば、切替え弁を備える。
【0018】
本実施形態において、電源5は、電界紡糸ヘッド2が第1の移動位置に位置する状態において、電界紡糸ヘッド2に電圧を印加する。この際、電界紡糸ヘッド2では、ヘッド本体11を介して、所定の極性の電圧が、ノズル12のそれぞれに印加される。そして、複数のノズル12では、互いに対して同一の極性の電圧が印加される。供給部4によって電界紡糸ヘッド2に原料液が供給された状態において、電源5によって電界紡糸ヘッド2に前述のように電圧が印加されることにより、原料液がノズル12(電界紡糸ヘッド2)と同一の極性に帯電する。本実施形態では、電界紡糸ヘッド2が第2の移動位置に位置する状態等、電界紡糸ヘッド2が第1の移動位置以外に位置する状態では、電源5によって、ノズル12(電界紡糸ヘッド2)に電圧が印加されない。ただし、電界紡糸ヘッド2が第1の移動位置と第2の移動位置との間に位置する状態において、電源5が電界紡糸ヘッド2に電圧を印加するように運用してもよい。
【0019】
なお、ある一例では、ノズル12のそれぞれに電気的に接続される端子(図示しない)が設けられ、電源5は、端子を介してノズル12のそれぞれに電圧を印加してもよい。この場合、ヘッド本体11を導電材料から形成する必要がなくなる。また、ノズル12のそれぞれに印加される電圧の極性は、プラスであってもよく、マイナスであってもよい。図1等の一例では、電源5は、直流電源であり、ノズル12のそれぞれにプラスの電圧を印加する。
【0020】
収集体6は、導電材料から形成される。また、収集体6は、原料液に対して耐性を有し、ある一例では、ステンレスから形成される。電界紡糸ヘッド2が第1の移動位置に位置する状態では、収集体6は、電界紡糸ヘッド2に対して、ノズル12が突出する側に配置され、電界紡糸ヘッド2に対して、ノズル12から原料液が噴出される側に配置される。図1の一例では、収集体6は接地され、収集体6の対地電圧は0V又は略0Vになる。別のある一例では、電源5又は電源5とは別の電源によって、原料液及び電界紡糸ヘッド2(ノズル12)とは反対の極性の電圧が、収集体6に印加される。
【0021】
本実施形態では、電界紡糸ヘッド2に電圧が印加されることにより、電界紡糸ヘッド2へ供給された原料液は、電界紡糸ヘッド2と同一の極性に帯電する。そして、電界紡糸ヘッド2が第1の移動位置に位置する状態では、原料液が電界紡糸ヘッド2と同一の極性に帯電することにより、電界紡糸ヘッド2(ノズル12)の原料液と収集体6との間の電位差によって、原料液は、ノズル12のそれぞれの噴出口13から収集体6に向かって噴出される。電界紡糸ヘッド2から原料液が収集体6に向かって噴出されることにより、ファイバー10が収集体6の表面に堆積され、堆積されたファイバー10によってファイバー10の膜が形成される。すなわち、電界紡糸法(電荷誘導紡糸法等とも称されることもある)によって、ファイバー10の膜が形成される。なお、ノズル12(電界紡糸ヘッド2)に印加される電圧、及び、収集体6に印加される電圧等は、原料液に含まれる高分子材料の種類及び電界紡糸ヘッド2の収集体6に対する距離等に対応させて、適宜の大きさに調整される。
【0022】
収集体6は、例えば、板状又はシート状に形成される。収集体6がシート状に形成される場合、ロール等の外周面に巻かれた収集体6にファイバー10を堆積させてもよい。また、収集体6は、移動可能であってもよい。ある一例では、一対の回転ドラム、及び、回転ドラムを駆動させる駆動源が設けられる。駆動源によって回転ドラムが駆動されることにより、ベルトコンベヤーと同様にして、一対の回転ドラムの間を収集体6が移動する。収集体6が移動する(搬送される)ことにより、収集体6の表面においてファイバー10が堆積される領域を経時的に変化させることが、可能になる。収集体6の表面に形成されたファイバー10の膜は、収集体6から取外される。ファイバー10の膜は、これらに限定されないが、例えば、不織布及びフィルタ等に用いられる。
【0023】
また、ある一例では、収集体6が設けられない。この場合、導電材料から形成される基材が用いられる。そして、前述のように原料液が電界紡糸ヘッド2に供給された状態で電界紡糸ヘッド2に電圧を印加することにより、ノズル12のそれぞれの噴出口13から基材に向かって原料液が噴出される。これにより、基材の表面にファイバー10が堆積され、基材の表面にファイバー10の膜が形成される。この場合、基材は、接地されていてもよく、電源5又は電源5とは別の電源によって、電界紡糸ヘッド2(ノズル12)及び原料液とは反対の極性の電圧が基材に印加されてもよい。
【0024】
また、別のある一例では、収集体6上に基材が設置される。そして、前述のように原料液が電界紡糸ヘッド2に供給された状態で電界紡糸ヘッド2に電圧を印加することにより、ノズル12のそれぞれの噴出口13から収集体6及び基材に向かって原料液が噴出される。これにより、収集体6上に設置される基材の表面にファイバー10が堆積され、基材の表面にファイバー10の膜が形成される。この場合、基材が電気的絶縁性を有する場合でも、基材の表面にファイバー10の膜を形成可能になる。
【0025】
また、収集体6上に基材が設置される場合、基材は、収集体6上を移動可能であってもよい。ある一例では、シート状の基材が巻かれた回転ドラムと、表面にファイバー10の膜が形成された基材を巻き取る回転ドラムと、が設けられる。そして、回転ドラムのそれぞれを回転することにより、収集体6上を基材が移動する。基材が移動する(搬送される)ことにより、基材の表面においてファイバー10が堆積される領域を経時的に変化させることが、可能になる。なお、基材の表面上にファイバー10の膜を形成する例としては、これに限定されないが、例えば、電池のセパレータ一体型電極の製造が挙げられる。この場合、電極群の負極及び正極の一方が基材として用いられる。そして、基材の表面に形成されるファイバー10の膜が、負極又は正極と一体のセパレータとなる。
【0026】
制御部(コントローラ)7は、例えば、コンピュータ等である。制御部7は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含むプロセッサ又は集積回路(制御回路)、及び、メモリ等の記憶媒体を備える。制御部7は、集積回路等を1つのみ備えてもよく、集積回路等を複数備えてもよい。制御部7は、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。制御部7は、供給駆動部42の駆動、供給調整部43の作動、及び、電源5からの出力等を制御する。また、制御部7は、移動駆動部3の駆動を制御することにより、電界紡糸ヘッド2の第1の移動位置と第2の移動位置との間での移動を制御する。
【0027】
収納ケース8は、中継リンク81及び軸部材82を間に介して、支持体83に取付けられる。収納ケース8は、中継リンク81と一緒に、軸部材82を中心として、支持体83に対して回動可能である。収納ケース8の回動軸は、電界紡糸ヘッド2の移動方向に対して交差する(垂直又は略垂直である)。また、中継リンク81には、ばね部材85の一端が接続され、ばね部材85の他端は、支持体83に接続される。
【0028】
本実施形態では、電界紡糸ヘッド2が第2の移動位置に移動することにより、電界紡糸ヘッド2が中継リンク81に当接する。これにより、電界紡糸ヘッド2から中継リンク81に力が作用し、電界紡糸ヘッド2からの力によって、中継リンク81及び電界紡糸ヘッド2が軸部材82を中心として、回動する。これにより、第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッド2のノズル12が、収納ケース8の内部に挿入される。したがって、本実施形態では、中継リンク81及び軸部材82等は、電界紡糸ヘッド2から作用する力によって収納ケース8を移動させるケース移動部を構成する。そして、電界紡糸ヘッド2が第2の移動位置に位置する状態では、電界紡糸ヘッド2からケース移動部の中継リンク81に作用する機械的な力によって、収納ケース8は、第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッド2のノズル12を内部に収納する収納位置へ、移動する。すなわち、収納ケース8は、第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッド2のノズル12を、収納ケース8の内部(すなわち収納空洞86の内部)に収納する。
【0029】
また、電界紡糸ヘッド2が第1の移動位置に位置する状態等、電界紡糸ヘッド2が第2の移動位置から離れた位置に位置する状態では、電界紡糸ヘッド2は、中継リンク81に接触せず、ケース移動部の中継リンク81に、電界紡糸ヘッド2から力が作用しない。中継リンク81に電界紡糸ヘッド2から力が作用していない状態では、ばね部材85から中継リンク81に作用する弾性力等によって、収納ケース8は、第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッド2のノズル12を収納する収納位置から離れた位置で、保持される。すなわち、中継リンク81に電界紡糸ヘッド2から力が作用していない状態では、収納ケース8は、ばね部材85によって、前述の収納位置から離れた位置に位置する状態に付勢される。すなわち、収納ケース8は、第1の移動位置に位置する電界紡糸ヘッド2のノズル12を、収納ケース8の内部(すなわち収納空洞86)から離間した位置に配置させる。
【0030】
したがって、本実施形態では、ばね部材85等は、ケース移動部の中継リンク81に電界紡糸ヘッド2から力が作用していない状態において、収納ケース8を収納位置から離れた位置で保持するケース保持部を構成する。また、本実施形態では、中継リンク81に電界紡糸ヘッド2から力が作用することにより、収納ケース8は、ばね部材85からの弾性力等に反して、収納位置へ移動する。
【0031】
図4は、第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッド2のノズル12が収納ケース8に収納された状態を示す。図4では、電界紡糸ヘッド2は、長手方向の一方側から視た状態で示される。図4に示すように、収納ケース8の内部には、収納空洞86が形成され、電界紡糸ヘッド2のノズル12は、収納空洞86に収納可能である。また、収納ケース8には、収納空洞86の外部への開口87が形成される。電界紡糸ヘッド2が第2の移動位置に移動し、電界紡糸ヘッド2からケース移動部の中継リンク81に作用する力によって収納ケース8が前述のように移動することにより、ノズル12は、開口87から収納空洞86に挿入される。
【0032】
収納ケース8では、長手方向が規定される。収納ケース8では、収納空洞86及び開口87は、長手方向に沿って形成される。第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッド2のノズル12が収納された状態では、収納ケース8の長手方向は、電界紡糸ヘッド2の長手方向と一致又は略一致し、電界紡糸ヘッド2の移動方向と一致又は略一致する。また、収納ケース8では、長手方向に対して交差する(垂直又は略垂直な)方向へ向かって、収納空洞86が開口87において開口する。そして、収納ケース8では、長手方向に交差する(垂直又は略垂直な)方向について、開口87とは反対側に底面(底部)が形成される。すなわち、収納ケース8では、周方向について開口87から180°程度離れた位置に、底面が形成される。第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッド2のノズル12が収納された状態では、収納空洞86は、ノズル12の突出方向とは反対側へ、開口87において開口する。
【0033】
また、収納ケース8の収納空洞86には、ノズル12と同一の数のキャップ88が設けられる。収納空洞86にノズル12が収納された状態では、キャップ88のそれぞれにノズル12の対応する1つが密着する。したがって、本実施形態では、キャップ88のそれぞれが、収納空洞86にノズル12が収納された状態においてノズル12の対応する1つが密着する密着部を形成する。ノズル12のそれぞれは、ヘッド本体11からの突出端(先端)で、すなわち、噴出口13及びその近傍で、キャップ88の対応する1つである密着部に密着する。
【0034】
また、ノズル12のそれぞれは、キャップ88の対応する1つに密着した状態において、キャップ88の対応する1つによって、外周側が覆われる。キャップ88は、柔軟性を有し、ゴムから形成される。キャップ88を形成するゴムとしては、シリコーンゴム及びエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。なお、図4の一例では、キャップ88のそれぞれの断面が、凹部を有する形状となり、キャップ88のそれぞれの凹部の底部に、ヘッド本体11から突出するノズル12の対応する1つの先端である突出端(すなわち、噴出口13及びその近傍)が密着するが、キャップ88の形状等は、これに限るものではない。特に、キャップ88を形成する材料としてシリコーンゴム及びエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のゴムを用いる場合は、キャップ88のそれぞれの断面を矩形に形成し、キャップ88のそれぞれの表面にノズル12の対応する1つの先端が密着してもよい。
【0035】
前述のようにノズル12のそれぞれをキャップ88の対応する1つに密着させた状態で収納ケース8の収納空洞86にノズル12が収納されることにより、キャップ(密着部)88によって、ノズル12が適切に保護される。すなわち、電界紡糸法によるファイバー10の膜の形成が行われていない状態において、ノズル12は、適切に保護された状態で収納される。また、ノズル12のそれぞれは、ゴムから形成されるキャップ88の対応する1つに、噴出口13及びその近傍で密着するため、ノズル12のそれぞれにおいて、流路(内部)に滞留している原料液の固化が、有効に防止される。
【0036】
本実施形態では、前述のように、電界紡糸ヘッド2を第2の移動位置に移動させることにより、電界紡糸ヘッド2からケース移動部の中継リンク81に力が作用し、電界紡糸ヘッド2からの力によって、収納ケース8が移動(回動)する。そして、収納ケース8が移動することにより、収納ケース8の収納空洞86へノズル12が挿入される。このため、収納ケース8へノズル12を収納する作業の自動化が実現される。
【0037】
また、電界紡糸ヘッド2から中継リンク81に作用する力によって収納ケース8が移動するため、収納ケース8の移動によってノズル12を収納ケース8の内部に収納する構成が、複雑にならない。このため、収納ケース8へノズル12を収納する作業の自動化が、簡単な構成で実現される。
【0038】
前述のようにノズル12を収納ケース8の内部に収納する構成が複雑化しないため、ノズル12を収納ケース8の内部に収納する構成の大型化が有効に防止される。また、電界紡糸ヘッド2から中継リンク81に作用する力によって収納ケース8が移動するため、電動モータ等の電力によって駆動される駆動部材を、収納ケース8を移動させる駆動源として設ける必要がない。したがって、電界紡糸法によるファイバー10の膜の形成時等において、電界紡糸ヘッド2及びその近傍に形成される電界に対するノズル12を収納ケース8の内部に収納する構成(収納ケース8を移動する構成)の影響が、低減される。
【0039】
また、電界紡糸ヘッド2が第2の移動位置から離れた位置に位置する状態では、ケース移動部の中継リンク81に、電界紡糸ヘッド2から力が作用せず、収納ケース8は、ばね部材(ケース保持部)85によって、ノズル12を収納する収納位置から離れた位置で保持される。そして、電界紡糸ヘッド2を第2の移動位置に移動させ、中継リンク81に電界紡糸ヘッド2から力が作用することにより、収納ケース8は、ばね部材85からの弾性力等に反して、収納位置へ移動する。このため、電界紡糸ヘッド2を第2の移動位置に移動することにより、中継リンク81及び収納ケース8が適切に移動し、ノズル12が収納ケース8に適切に収納される。
【0040】
また、本実施形態では、電界紡糸ヘッド2がいずれの位置に位置する状態においても、移動駆動部3に設けられる電動モータ等の駆動部材は、電界紡糸ヘッド2から離れて位置する。そして、電界紡糸ヘッド2は、第1の移動位置に位置する状態において、第2の移動位置に位置する状態に比べて、移動駆動部3から離れて位置する。このため、第1の移動位置に位置する電界紡糸ヘッド2を用いたファイバー10の膜の形成時等において、電界紡糸ヘッド2及びの近傍に形成される電界に対する移動駆動部3の影響が、低減される。
【0041】
(変形例)
なお、前述の実施形態等では、複数のノズル12が、電界紡糸ヘッド2の長手方向に沿って配列され、1つのノズル列が形成されるが、ヘッド本体11の外周面におけるノズル12の配置は、前述の実施形態等の配置に限るものではない。また、前述の実施形態等では、収納空洞86にノズル12が収納された状態において、ノズル12のそれぞれはキャップ88の対応する1つに密着するが、収納空洞86においてノズル12が密着する密着部の構成は、前述の実施形態等の構成に限るものではない。
【0042】
図5に示す第1の変形例では、ヘッド本体11の外周面に、1つ以上のノズル12A、及び、1つ以上のノズル12Bが設けられる。ノズル12A,12Bのそれぞれは、ヘッド本体11の外周面から外周側へ突出する。ノズル12A,12Bは、電界紡糸ヘッド2の周方向について、すなわち、ヘッド本体11の中心軸の軸回りについて、互いに対して離れて配置される。ただし、電界紡糸ヘッド2が第1の移動位置に位置する状態では、ノズル12A,12Bのいずれもが、ヘッド本体11の中心軸に対して、収集体6が位置する側に配置される。そして、電界紡糸ヘッド2が第1の移動位置に位置する状態では、ノズル12A,12Bのそれぞれから、収集体6に向かって、原料液が噴出される。
【0043】
ある一例では、複数のノズル12Aが電界紡糸ヘッド2の長手方向に沿って配列され、複数の12Aのノズル列が形成される。そして、複数のノズル12Bが電界紡糸ヘッド2の長手方向に沿って配列され、複数の12Bのノズル列が形成される。この場合、ノズル12Aのノズル列、及び、ノズル12Bのノズル列は、電界紡糸ヘッド2の周方向について、互いに対して離れて配置される。
【0044】
また、本変形例では、前述の実施形態等と同様にして、ノズル12A,12Bは、収納ケース8の収納空洞86に収納される。本変形例では、キャップ88の代わりにスポンジ89A,89Bが、収納空洞86に設けられる。収納空洞86にノズル12A,12Bが収納された状態では、ノズル12Aのそれぞれは、スポンジ89Aに密着し、ノズル12Bのそれぞれは、スポンジ89Bに密着する。したがって、本変形例では、スポンジ89A,89Bのそれぞれが、収納空洞86にノズル12A,12Bが収納された状態においてノズル12A,12Bの対応する一方が密着する密着部を形成する。ノズル12A,12Bのそれぞれは、ヘッド本体11からの突出端(先端)で、すなわち、噴出口13及びその近傍で、スポンジ89A,89Bの対応する一方である密着部に密着する。
【0045】
スポンジ89A,89Bのそれぞれは、柔軟性を有し、溶液を保持する。また、スポンジ89A,89Bのそれぞれは、例えば、樹脂多孔質体及び高分子多孔質体等の多孔質体を用いて形成される。スポンジ89A,89Bを形成する多孔質体としては、発泡体等が挙げられる。また、溶液を保持する観点から、スポンジ89A,89Bを形成する発泡体は、連続気泡構造体であることが好ましい。スポンジ89A,89Bを形成する発泡体としては、発泡メラミン及び発泡ポリウレタン等が挙げられる。
【0046】
また、スポンジ89A,89Bのそれぞれでは、溶液は、内部の孔又は隙間で保持される。スポンジ89A,89Bに保持される溶液は、原料液に含まれる高分子材料を溶解可能であれば、特に限定されるものではない。ある一例では、スポンジ89A,89Bに保持される溶液として、原料液の溶媒と同一の液体が用いられる。したがって、スポンジ89A,89Bに保持される溶液として、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ベンゼン、トルエン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びジメチルアセトアミド(DMAc)等を用いることができる。
【0047】
前述のようにノズル12A,12Bのそれぞれをスポンジ89A,89Bの対応する一方に密着させた状態で収納ケース8の収納空洞86にノズル12A,12Bが収納されることにより、前述の実施形態等と同様に、スポンジ(密着部)89A,89Bによって、ノズル12が適切に保護される。すなわち、電界紡糸法によるファイバー10の膜の形成が行われていない状態において、ノズル12A,12Bは、適切に保護された状態で収納される。また、ノズル12A,12Bのそれぞれは、スポンジ89A,89Bの対応する一方に、噴出口13及びその近傍で密着するため、前述の実施形態等と同様に、ノズル12A,12Bのそれぞれにおいて、流路(内部)に滞留している原料液の固化が、有効に防止される。
【0048】
さらに、本変形例では、スポンジ89A,89Bに保持される溶液によって、ノズル12A,12Bのそれぞれに付着した原料液の液滴及び原料液の高分子材料等が、溶解される。これにより、ノズル12A,12Bのそれぞれにおいて、付着した原料液の液滴及び原料液の高分子材料等が、適切に除去される。すなわち、スポンジ89A,89Bに保持される溶液等によって、ノズル12A,12Bの清掃が行われる。
【0049】
図6に示す第2の変形例でも、第1の変形例等と同様に、ヘッド本体11の外周面に、ノズル12A,12Bが配置される。本変形例では、収納ケース8の収納空洞86にスポンジ89が1つのみ配置される。スポンジ89は、スポンジ89A,89Bと同様に、柔軟性を有し、溶液を保持する。本変形例では、収納空洞86にノズル12A,12Bが収納された状態において、ノズル12A,12Bのそれぞれは、スポンジ89に密着する。したがって、本変形例では、スポンジ89が、収納空洞86にノズル12A,12Bが収納された状態においてノズル12A,12Bが密着する密着部を形成する。
【0050】
また、前述の実施形態等では、収納ケース8の底面は曲面状に形成されるが、本変形例では、収納ケース8の底面は、平面状に形成される。したがって、本変形例では、前述の実施形態等とは、収納ケース8の形状が異なる。ただし、本変形例でも、収納ケース8に、収納空洞86の開口87が形成される。そして、電界紡糸ヘッド2が第2の移動位置に移動し、電界紡糸ヘッド2から中継リンク81等のケース移動部に作用する力によって収納ケース8が移動することにより、ノズル12A,12Bは、開口87から収納空洞86に挿入される。
【0051】
図7に示す第3の変形例でも、第1の変形例等と同様に、ヘッド本体11の外周面に、ノズル12A,12Bが配置される。ただし、本変形例では、2つの収納ケース8A,8Bが設けられる。収納ケース8Aの内部には、収納空洞86Aが形成され、収納ケース8Aには、収納空洞86Aの外部への開口87Aが形成される。そして、収納ケース8Bの内部には、収納空洞86Bが形成され、収納ケース8Bには、収納空洞86Bの外部への開口87Bが形成される。また、本変形例では、収納ケース8Aの収納空洞86Aに前述のスポンジ89Aが配置され、収納ケース8Bの収納空洞86Bに前述のスポンジ89Bが配置される。
【0052】
本変形例では、電界紡糸ヘッド2が第2の移動位置に移動し、電界紡糸ヘッド2から中継リンク81等のケース移動部に力が作用することにより、収納ケース8A,8Bが移動する。電界紡糸ヘッド2から作用する力によって収納ケース8Aが移動することにより、ノズル12Aは、開口87Aから収納空洞86Aに挿入され、収納空洞86Aに収納される。また、電界紡糸ヘッド2から作用する力によって収納ケース8Bが移動することにより、ノズル12Bは、開口87Bから収納空洞86Bに挿入され、収納空洞86Bに収納される。
【0053】
また、本変形例では、収納空洞86Aにノズル12Aが収納された状態において、ノズル12Aのそれぞれは、スポンジ89Aに密着する。このため、スポンジ89Aが、収納空洞86Aにノズル12Aが収納された状態においてノズル12Aが密着する密着部を形成する。そして、収納空洞86Bにノズル12Bが収納された状態では、ノズル12Bのそれぞれは、スポンジ89Bに密着する。このため、スポンジ89Bが、収納空洞86Bにノズル12Bが収納された状態においてノズル12Bが密着する密着部を形成する。
【0054】
また、前述の実施形態等では、電源5によってノズル(12;12A,12B)に電圧が印加されることにより、原料液が帯電するが、原料液を帯電させる構成は、これに限るものではない。ある変形例では、電界紡糸ヘッド2への原料液の供給源、及び、供給源と電界紡糸ヘッド2との間の供給経路のいずれかに、導電部が設けられる。この場合、例えば、供給部4の収納部41を導電材料から形成する、又は、供給配管45の一部を導電材料から形成する等して、供給部4に導電部が形成される。本変形例では、電源5は、供給部4の導電部に電圧を印加することにより、導電部と同一の極性に原料液が帯電される。そして、帯電した原料液が、電界紡糸ヘッド2へ供給され、ノズル(12;12A,12B)のそれぞれの噴出口13から原料液が噴出される。
【0055】
前述したいずれの変形例でも、電界紡糸ヘッド2を第2の移動位置に移動させることにより、電界紡糸ヘッド2から中継リンク81等のケース移動部に力が作用し、電界紡糸ヘッド2からの力によって、収納ケース(8;8A,8B)が移動する。そして、収納ケース(8;8A,8B)が移動することにより、収納ケース(8;8A,8B)の収納空洞(86;86A,86B)へ、第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッド2のノズル(12;12A,12B)が挿入される。このため、いずれの変形例でも、第1の実施形態等と同様に、収納ケース(8;8A,B)へノズル(12;12A,12B)を収納する作業の自動化が、簡単な構成で実現される。
【0056】
これらの少なくとも一つの実施形態又は実施例によれば、電界紡糸ヘッドは、第1の移動位置と第2の移動位置との間で移動可能である。そして、収納ケースは、第1の移動位置に位置する電界紡糸ヘッドのノズルを収納空洞から離間した位置に配置させ、かつ、第2の移動位置に位置する電界紡糸ヘッドのノズルを収納空洞の内部に収納する。これにより、収納ケースへノズルを容易に収納することができる電界紡糸装置を提供することができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、付記を記載する。
[1]高分子材料を含む原料液を噴出可能なノズルを備え、第1の移動位置と第2の移動位置との間で移動可能な電界紡糸ヘッドと、
前記電界紡糸ヘッドの前記ノズルを収納可能な収納空洞が内部に形成され、前記収納空洞の外部への開口が形成される収納ケースと、
を具備し、
前記収納ケースは、前記第1の移動位置に位置する前記電界紡糸ヘッドの前記ノズルを前記収納空洞から離間した位置に配置させ、かつ、前記第2の移動位置に位置する前記電界紡糸ヘッドの前記ノズルを前記収納空洞の内部に収納する、
電界紡糸装置。
[2]前記電界紡糸ヘッドが前記第2の移動位置へ移動することにより前記電界紡糸ヘッドから力が作用し、前記電界紡糸ヘッドからの前記力によって前記収納ケースを移動させることにより、前記収納ケースの前記収納空洞に前記開口から前記ノズルを挿入させるケース移動部、をさらに具備する、[1]の電界紡糸装置。
[3]前記電界紡糸ヘッドから前記ケース移動部に力が作用していない状態において、前記第2の移動位置に位置する前記電界紡糸ヘッドの前記ノズルを収納する収納位置から離れた位置で、前記収納ケースを保持するケース保持部をさらに具備する、[2]の電界紡糸装置。
[4]前記収納ケースの前記収納空洞に設けられ、前記収納空洞に前記ノズルが収納された状態において前記ノズルが密着する密着部をさらに具備する、[1]乃至[3]のいずれか1つの電界紡糸装置。
[5]前記密着部は、ゴムを含むキャップ、又は、前記原料液に含まれる前記高分子材料を溶解可能な溶液を保持するスポンジである、[4]の電界紡糸装置。
[6]前記電界紡糸ヘッドに前記原料液を供給する供給部と、
前記原料液を帯電させ、帯電した前記原料液を前記ノズルから噴出させる電源と、
をさらに具備する、[1]乃至[5]のいずれか1つの電界紡糸装置。
【符号の説明】
【0058】
1…電界紡糸装置、2…電界紡糸ヘッド、3…移動駆動部、4…供給部、5…電源、6…収集体、7…制御部、8…収納ケース、11…ヘッド本体、12,12A,12B…ノズル、13…噴出口、81…中継リンク、82…軸部材、85…ばね部材、86,86A,86B…収納空洞、87,87A,87B…開口、88…キャップ、89,89A,89B…スポンジ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7