(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】魚釣用電動リールのパラメータ設定装置及びそれを備えた魚釣用電動リール、パラメータ設定方法、及びパラメータ設定プログラム
(51)【国際特許分類】
A01K 89/017 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
A01K89/017
(21)【出願番号】P 2020167638
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2023-08-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】森 成秀
(72)【発明者】
【氏名】林 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】原口 仁志
(72)【発明者】
【氏名】村山 聡
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-146025(JP,A)
【文献】特開2014-050368(JP,A)
【文献】特開2006-246813(JP,A)
【文献】特許第2839297(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/017
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって回転駆動されるスプールに所定の回転状態
を与えるための所定の複数のパラメータ
を設定する魚釣用電動リールのパラメータ設定装置であって、
前記所定の複数のパラメータは、
所定の回転速度にそれぞれ対応させた所定数の速度段階を示す速度のパラメータと、
前記スプールの回転駆動を開始させてから前記
速度のパラメータが示す一定の回転速度に到達させるまでの初動期間における前記スプールの回転の加速度
を示す加速度のパラメータと、を含み、
前記加速
度のパラメータを、操作に応じて変更するパラメータ設定部
を備える魚釣用電動リールのパラメータ設定装置。
【請求項2】
前記スプールの回転を開始させてから前記一定の回転速度に到達させるまでの初動期間において前記モータに印加するモータ駆動信号の周期ごとのパルス幅のデューティ比を、前記加速度のパラメータ
における加速度パラメータ値に基づいて設定するスプール駆動制御部を備える
請求項1に記載のパラメータ設定装置。
【請求項3】
前記スプール駆動制御部は、前記加速度のパラメータに対応させて、前記初動期間における時間経過に従って所定のパターンで前記デューティ比を変化させる
請求項2に記載のパラメータ設定装置。
【請求項4】
前記加速度のパラメータにおいて複数の異なる所定の加速度パラメータ値が定められ、前記パラメータ設定部は、
定められた複数の加速
度パラメータ
値のうちから
、いずれか1つの加速
度パラメータ
値を
操作に応じて選択することで、加速度のパラメータを変更する
請求項1から3のいずれか一項に記載のパラメータ設定装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のパラメータ設定装置を備えた魚釣用電動リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用電動リールのパラメータ設定装置及びそれを備えた魚釣用電動リール、パラメータ設定方法、及びパラメータ設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが、自動によるシャクリ釣りのために、スプール駆動の作動時間、作動停止時間、作動速度、釣糸の繰出し量、巻き上げ量を適当に組み合わせて所望の作動パターンを作成し、その作動パターンを記憶手段に入力して記憶させておく。そして、作動パターンが選択された場合、制御手段が、その作動パターンに従ってスプールを駆動するようにされた魚釣用電動リールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような魚釣用電動リールでは、作動パターンに従ったスプール駆動の開始にあたり、例えば設定された作動速度に対応するデューティ比でモータを駆動させることが行われる。このため、例えばスプールの回転が開始されてから目標速度となるまでの釣糸の巻き上げの挙動がユーザの意図に沿わない場合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、スプールを回転駆動させて行う自動のさそいの動作を、ユーザの意図に近づけられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、モータによって回転駆動されるスプールに所定の回転状態を与えるための所定の複数のパラメータのうち、前記スプールの回転駆動を開始させてから所定の回転速度に到達させるまでの初動期間における前記スプールの回転の加速度のパラメータを、操作に応じて変更するパラメータ設定部を備える魚釣用電動リールのパラメータ設定装置である。
上記構成によれば、スプールの回転駆動を開始させてから所定の回転速度に到達させるまでの初動期間における加速度のパラメータについて、ユーザの操作に応じて変更することができる。このようにして加速度のパラメータが変更されることで、自動のさそいの動作におけるはじめのシャクリ具合を変化させることが可能になる。これにより、スプールを回転駆動させて行う自動のさそいの動作を、ユーザの意図に近づけることが可能となる。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記のパラメータ設定装置であって、前記スプールの回転を開始させてから所定の回転速度に到達させるまでの初動期間において前記モータに印加するモータ駆動信号の周期ごとのパルス幅のデューティ比を、前記加速度のパラメータの値に基づいて設定するスプール駆動制御部を備える。
上記構成によれば、加速度の変更を、モータ駆動信号のパルス幅のデューティ比の変更によって実現できる。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記のパラメータ設定装置であって、前記スプール駆動制御部は、前記加速度のパラメータに対応させて、前記初動期間における時間経過に従って所定のパターンで前記デューティ比を変化させる。
上記構成によれば、時間経過に従ってデューティ比を変化させることで、初動期間におけるスプールの回転速度変化のバリエーションを多様にすることができる。また、所望の回転速度変化に近づけることも可能となる。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記のパラメータ設定装置であって、前記パラメータ設定部は、操作に応じて、複数の段階ごとに対応する複数の加速度のパラメータのうちから1の加速度のパラメータを選択することで、加速度のパラメータを変更する。
上記構成によれば、ユーザは、例えば加速度に応じた数値によるのではなく、複数段階のうちから1つの段階を選択することで、加速度のパラメータを簡易に設定することが可能になる。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記のパラメータ設定装置を備えた魚釣用電動リールである。
【0011】
また、本発明の一態様は、モータによって回転駆動されるスプールに所定の回転状態を与えるための所定の複数のパラメータのうち、前記スプールの回転を開始させてから所定の回転速度に到達させるまでの初動期間における前記スプールの回転の加速度のパラメータを、操作に応じて変更するパラメータ設定ステップを備える魚釣用電動リールのパラメータ設定方法である。
【0012】
また、本発明の一態様は、魚釣用電動リールのパラメータ設定装置としてのコンピュータを、モータによって回転駆動されるスプールに所定の回転状態を与えるための所定の複数のパラメータのうち、前記スプールの回転を開始させてから所定の回転速度に到達させるまでの初動期間における前記スプールの回転の加速度のパラメータを、操作に応じて変更するパラメータ設定部として機能させるためのパラメータ設定プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、スプールを回転駆動させて行う自動のさそいの動作を、ユーザの意図に近づけられるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の魚釣用電動リールの外観例を示す図である。
【
図2】本実施形態の魚釣用電動リールの外観例を示す図である。
【
図3】本実施形態の魚釣用電動リールにおける表示操作パネルの一例を示す図である。
【
図4】本実施形態の自動巻き上げ動作における時間経過に応じたスプール挙動とモータ駆動信号のデューティ比との変化例を示す図である。
【
図5】本実施形態の表示部における表示態様例を示す図である。
【
図6】本実施形態の魚釣用電動リールの機能構成例を示す図である。
【
図7】本実施形態における魚釣用電動リールが、自動巻き上げ動作の駆動制御パラメータ設定に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態における魚釣用電動リールが加速度パラメータ値をインクリメントする場合の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態における魚釣用電動リールが加速度パラメータ値をデクリメントする場合の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態における魚釣用電動リールが、巻き上げ操作に応じて実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【
図11】本実施形態における魚釣用電動リールが、駆動制御パラメータ対応スプール駆動制御として実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【
図12】本実施形態の変形例における時間経過に応じたスプール挙動とモータ駆動信号のデューティ比との変化例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、図面を参照して、本実施形態のパラメータ設定装置としての魚釣用電動リール1について説明する。
本実施形態において、スプールの駆動とは、例えばモータ等を駆動して得られる動力によりスプールを回転させることをいう。
また、本実施形態において、スプールの駆動制御とは、スプールの駆動に関する制御をいう。このようなスプールの駆動制御には、スプールを回転させる制御、スプールの回転を停止させる制御、スプールの回転速度を変更する制御等が含まれる。
また、以降の説明において、スプールの「駆動」について、回転の動作を与えることを明確にすることなどを目的として「回転駆動」と記載する場合がある。
なお、以下の説明では、魚釣用電動リール1が両軸受リールである場合を例に挙げる。なお、
図1、
図2において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0016】
[魚釣用電動リールの構造例]
図1、2は、本実施形態の魚釣用電動リール1の外観例を示している。本実施形態の魚釣用電動リール1は、図示しない釣竿に装着可能なリール本体2と、リール本体2に対してハンドル軸線O1回りに回転可能に取り付けられたハンドル3と、リール本体2に対してハンドル軸線O1と平行なスプール軸線O2回りに回転可能とされ、且つ図示しない釣糸が巻かれるスプール4と、クラッチ操作レバー5を有するクラッチ機構6と、を主に備えている。
【0017】
また、本実施形態の魚釣用電動リール1は、リール本体2に設けられたモータ収容筒7内に配置され、スプール4を回転駆動するモータ(図示せず)を備える。
また、魚釣用電動リール1は、モータ収容筒7を塞ぐようにリール本体2に組み合わされ、リール本体2に対してモータを固定するモータホルダ9と、を備えている。
【0018】
本実施形態では、ハンドル軸線O1及びスプール軸線O2は互いに平行に配置され、これらの軸線に沿った方向を左右方向L1として定義する。さらに左右方向L1に直交し、且つスプール4に巻かれた釣糸が繰り出される方向に沿った方向を前後方向L2として定義する。
さらに、前後方向L2においてスプール4から釣糸が繰り出される方向を前方、その反対方向を後方として定義するとともに、魚釣用電動リール1を後方側(釣り人側)から見た視点で左右を定義する。従って、
図1は、魚釣用電動リール1を斜め上、左後方から見た斜視図である。
【0019】
リール本体2は、本体フレーム10と、本体フレーム10の左右両側を覆うサイドカバー20と、本体フレーム10の前部側を覆う前カバー30とを備えている。
【0020】
本体フレーム10は、例えば合成樹脂あるいは金属製(例えばアルミニウムダイキャスト製)の成形部品とされている。本体フレーム10は、スプール4を挟んで左右方向L1に向かい合うように配置された第1側壁11及び第2側壁12と、第1側壁11及び第2側壁12同士を左右方向L1に連結する連結部材13とを備えている。
【0021】
第1側壁11は、スプール4に対して左側(LH)に配置された左側壁とされている。これに対して第2側壁12は、スプール4に対して右側(RH)に配置された右側壁とされている。なお、ハンドル3は、第2側壁12よりもさらに右側(RH)に配置され、第2側壁12を利用して本体フレーム10に取り付けられている。
従って、本実施形態の魚釣用電動リール1は、右側ハンドルタイプのリールとされている。なお、第2側壁12は、コネクタ部23等が取り付けられる関係上、第1側壁11よりも下方に向けて突出するように形成されている。
【0022】
連結部材13は、第1側壁11及び第2側壁12同士を左右方向L1に連結する板状に形成され、第1側壁11の下部付近に配置されている。これにより、第1側壁11及び第2側壁12は、連結部材13を介して強固に連結されている。
なお、連結部材13における左右方向L1の中央部分には、魚釣用電動リール1を釣竿に装着するための装着脚片14が前後方向L2に沿って延びるように形成されている。
【0023】
上述のように構成された本体フレーム10において、第1側壁11と第2側壁12との間には、モータを内部に収容するモータ収容筒7、スプール4及びクラッチ操作レバー5等が少なくとも配置されている。
【0024】
スプール4は、ハンドル軸線O1よりも後方側に位置するように第1側壁11と第2側壁12との間に配置されている。モータ収容筒7は、ハンドル軸線O1よりも前方側に位置するように第1側壁11と第2側壁12との間に配置されている。そのため、本実施形態の魚釣用電動リール1は、モータがスプール4よりも前方側に配置された、いわゆるスプールアウトモータタイプとされている。
【0025】
サイドカバー20は、モータ収容筒7の開口部が形成された第1側壁11を左側(LH)から覆うように本体フレーム10に組み合わされた第1サイドカバー21と、第2側壁12を右側(RH)から覆うように本体フレーム10に組み合わされた第2サイドカバー22と、を備えている。
【0026】
第1サイドカバー21は、左側(LH)に向けて膨らむように形成され、第1側壁11に対して例えばネジ止めされている。
第2サイドカバー22は、右側(RH)に向けて膨らむように形成され、第2側壁12に対して例えばネジ止めされている。
第2サイドカバー22のうち、前方下部に位置する部分には、外部電源からの電力を供給するための電源リールコード、あるいは携帯用バッテリーを接続するためのコネクタ部23が図示しない接続端を下向きにした状態で装着されている。なお各図面では、保護キャップ24によって接続端が保護されている状態を図示している。
【0027】
前カバー30は、本体フレーム10の前部を前方から覆うように本体フレーム10に組み合わされている。具体的には、前カバー30は、モータ収容筒7を前方から覆うように第1側壁11及び第2側壁12の前部に組み合わされるとともに、第1側壁11及び第2側壁12に対して例えばネジ止めされている。なお、前カバー30は、後述するレベルワインド55の移動領域を塞がないように取り付けられている。
【0028】
上述のように構成された本体フレーム10の上部には、カウンターケース40が設けられている。カウンターケース40は、第1側壁11と第2側壁12との間に配置された状態で、第1側壁11の上部及び第2側壁12の上部に例えばネジ止め等によって固定されている。
【0029】
カウンターケース40の本体の上面は、表示操作パネル41として構成されている。表示操作パネル41は、魚釣用電動リール1を使用するユーザに向けての表示と、ユーザによるボタン、スイッチ等の操作子に対する操作が行われる部位である。
【0030】
図3は、魚釣用電動リール1における表示操作パネル41を示している。同図に示されるように、表示操作パネル41は、操作部101と表示部102とを備える。
【0031】
操作部101は、ユーザによるボタン操作が行われる部位である。同図の例では、操作部101において、ボタン操作が行われるボタンとして、第1ボタン111-1(第1操作子の一例)、第2ボタン111-2(第2操作子の一例)、第3ボタン111-3(第2操作子の一例)、の3つのボタンが配置されている。なお、以降の説明にあたり、第1ボタン111-1、第2ボタン111-2、第3ボタン111-3について特に区別しない場合には、ボタン111と記載する。
【0032】
同図におけるボタン111の配置の態様としては、第2ボタン111-2が上で第3ボタン111-3が下となる位置関係により上下方向に沿って配置されている。第1ボタン111-1は、第2ボタン111-2と第3ボタン111-3とが配置される位置よりも左であって、上下方向においては、第2ボタン111-2と第3ボタン111-3との中間に対応する位置にて配置されている。
このようなボタン111の配置における第2ボタン111-2と第3ボタン111-3は、それぞれ、パラメータ値の変更や項目選択等の操作におけるアップボタン、ダウンボタンとして機能させても、ユーザの操作感覚としてなじみやすい。
【0033】
また、操作部101においては、巻き上げスイッチ112が設けられている。巻き上げスイッチ112は、スプール4を回転させて釣糸を巻き上げるための操作が行われる操作子である。
巻き上げスイッチ112は、釣糸を自動で巻き上げるための操作が行われるスイッチである。巻き上げスイッチ112は、シーソー式の感圧スイッチであり、上側スイッチ部112aを押下する操作と、下側スイッチ部112bを押下する操作とが可能とされている。
【0034】
表示部102は、魚釣用電動リール1の動作に応じて所定の内容の表示が行われる部位である。表示部102として備えられる表示デバイスについては特に限定されないが、例えば液晶表示デバイス、有機EL表示デバイス等を挙げることができる。
【0035】
説明を
図1、
図2に戻す。ハンドル3は、手動により釣糸を巻き上げる操作に用いられる。ハンドル3は、本体フレーム10及び第1サイドカバー21よりも右側(RH)に配置されている。ハンドル3は、ハンドル軸線O1回りに回転可能に配置されたハンドル軸部50と、ハンドル軸部50に回転不能に装着されたハンドルアーム51と、ハンドルアーム51の端部にハンドル軸線O1と平行な軸線回りに回転可能に装着されたハンドルノブ52と、を備えている。
ハンドルアーム51と第1サイドカバー21との間には、ハンドル軸線O1と同軸に配置されたドラグ53(スタードラグ)が設けられている。このドラグ53は、釣糸の巻取りに際して、スプール4に対して任意のドラグ力を付与することでスプール4の回転制動を行い、釣糸の切断抑制に寄与する働きをしている。
【0036】
このように構成されたハンドル3からの回転トルクは、クラッチ機構6がクラッチオン状態にあるときに、図示しない回転伝達機構を介してスプール4に直接伝達される。
なお、本実施形態では、ハンドルアーム51の一端部にハンドルノブ52が装着された、いわゆるシングルハンドルタイプを例に挙げて説明しているが、この場合に限定されるものではない。例えば、ハンドルアーム51の両端部にハンドルノブ52を装着し、且つハンドルアーム51の中央部をハンドル軸部50に回転不能に装着した、いわゆるダブルハンドルタイプの魚釣用電動リール1としても構わない。
【0037】
スプール4は、フレーム本体における第1側壁11と第2側壁12との間に配置されているとともに、第1側壁11及び第2側壁12のそれぞれに図示しない軸受を介してスプール軸線O2回りに回転可能に支持されている。
スプール4は、スプール軸線O2回りに回転する図示しないスプール回転軸部と、スプール回転軸部と同軸に配置されるとともに、スプール回転軸部と連動して回転する糸巻胴部4aとを備えている。
【0038】
クラッチ機構6は、クラッチ操作レバー5の操作によって、ハンドル3からの回転トルクを図示しない回転伝達機構を介してスプール4に伝達可能なクラッチオン状態と、伝達不能なクラッチオフ状態とに切換可能とされている。従って、クラッチオン状態において、ハンドル3を回転操作することで、ハンドル3の回転操作に伴う回転トルクをスプール4に伝達することができ、スプール4をスプール軸線O2回りに回転させることが可能とされている。これにより、手巻き操作が可能となる。
なお、クラッチ機構6がクラッチオフ状態である場合には、ハンドル3の回転操作に伴う回転トルクがスプール4に伝達されず、該スプール4は自由回転可能な状態(スプールフリーな状態)となる。
【0039】
クラッチ操作レバー5は、クラッチ機構6をクラッチオン状態とクラッチオフ状態とに切り換え操作するための切換レバーである。クラッチ操作レバー5は、スプール4よりも後方において、第1側壁11と第2側壁12との間に配置されているとともに、スプール軸線O2回りに揺動するように上下に移動可能とされている。
【0040】
なお、回転伝達機構は、ハンドル3の回転を増速した状態で回転トルクをスプール4に伝達するように構成されている。さらに回転伝達機構は、クラッチ機構6がクラッチオン状態にある場合、ハンドル3の回転操作に伴う回転トルクをスプール4に伝達するだけでなく、レベルワインド機構(不図示)にも伝達するように構成されている。レベルワインド機構は、釣糸をスプール4に偏りなく均等に巻き取らせるための機構である。
【0041】
さらに回転伝達機構は、クラッチ機構6がクラッチオン状態にある場合においてモータが駆動されたときに、当該モータの駆動に伴う回転トルクをスプール4に伝達することが可能とされている。これにより、自動巻操作が可能となる。なお、回転伝達機構は、モータの回転を減速した状態で回転トルクをスプール4に伝達する。
【0042】
[電動ジギングモードについて]
本実施形態の魚釣用電動リール1は、電動ジギングモードがオンの状態では、以下のようにしてユーザが行う巻き上げスイッチ112の操作に応じて、釣糸の巻き上げ動作を実行することができる。
【0043】
電動ジギングモードでは、巻き上げスイッチ112の上側スイッチ部112aは、釣糸の巻き上げのためのスプール4の回転駆動をオンオフする操作に割り当てられる。
つまり、ユーザが上側スイッチ部112aの押圧を開始すると、スプール4の回転駆動が開始され、釣糸の巻き上げも開始される。そのままユーザが上側スイッチ部112aの押圧を継続している間は、スプール4も回転駆動が継続され、釣糸の巻き上げも継続される。ユーザが上側スイッチ部112aの押圧を解除すると、スプール4の回転駆動が停止され、釣糸の巻き上げも停止される。
電動ジギングモードにおいて、はじめに上側スイッチ部112aの押圧が行われたときには、予め設定された最大速度未満のスプールの回転速度(中間巻き上げ速度)で釣糸の巻き上げが行われる。その後において、上側スイッチ部112aの押圧が継続されたままさらに押し込まれるようにして操作が行われると、巻き上げ速度が最大にまで増加した状態で釣糸の巻き上げが行われる。
【0044】
また、電動ジギングモードでは、巻き上げスイッチ112の下側スイッチ部112bは、自動さそい動作(自動ジャーク)を実行させるための操作が割り当てられる。
つまり、ユーザが下側スイッチ部112bを1回押圧する操作(1クリック操作)を行うことに応じて、予め設定された駆動制御情報に従って、或る期間にわたってスプール4が回転駆動され、釣糸を巻き上げる動作が行われる。
【0045】
本実施形態の自動さそい動作に対応する駆動制御情報を構成する駆動制御パラメータ(モータによって回転駆動されるスプールに所定の回転状態を与えるための所定の複数のパラメータの一例)は、巻き上げ長さ[LENGTH]、速度[SPEED]、及び加速度[ACCEL]の3つである。
巻き上げ長さ[LENGTH]は、1回の自動さそい動作において巻き上げられる釣糸の長さである。
速度[SPEED]は、自動さそい動作において釣糸を巻き上げる際のスプール4の回転速度である。
加速度[ACCEL]は、自動さそい動作においてスプール4が回転を開始してから速度[SPEED]に到達させる際の加速度(角加速度)である。
【0046】
巻き上げ長さ[LENGTH]のパラメータ値(巻上げ長さパラメータ値VL)、速度[SPEED]のパラメータ値(速度パラメータ値VS)、加速度[ACCEL]のパラメータ値(加速度パラメータ値VA)は、それぞれ、後述するようにしてユーザが操作を行うことによって変更可能とされる。
【0047】
巻き上げ長さパラメータ値VLは、例えばm(メートル)単位による長さに応じた値とされてよい。
速度パラメータ値VSは、例えば所定の速度にそれぞれ対応させた所定数の速度段階(例えば、30段階程度)ごとに応じた値とされてよい。
【0048】
加速度パラメータ値VAは、所定の加速度にそれぞれ対応させた段階数に応じた値とされてよい。具体的に、本実施形態においては、加速度パラメータ値VAは、高加速度としての所定の加速度に対応するVA_H、中加速度として所定の加速度に対応するVA_M、低下速度に対応する所定の加速度に対応するVA_Lの3段階とした場合を例に挙げる。
【0049】
例えば、加速度パラメータ値VAについて、加速度の値を指定するなどして細かに設定可能なようにされてもよい。しかしながら、この場合には、かえってユーザは、どの値が適正であるのかを判断しにくくなる。そこで、本実施形態においては、3段階程度の少なめの段階数により加速度パラメータ値VAを変更するようにして、各段階でのスプールの回転の挙動の違いがユーザにとって明確に把握されるようにしている。なお、加速度パラメータ値VAの段階数については特に限定されない。
【0050】
図4(A)は、上記の巻き上げ長さ[LENGTH]、速度[SPEED]、及び加速度[ACCEL]の駆動制御パラメータの設定による1回の自動さそい動作に対応するスプール4の挙動の例を示している。同図においては、横軸が時間であり、縦軸が回転速度である。
同図においては、加速度パラメータ値VA_Hが設定された場合のスプール挙動GH、加速度パラメータ値VA_Mが設定された場合のスプール挙動GM、加速度パラメータ値VA_Lが設定された場合のスプール挙動GLのそれぞれが示されている。
【0051】
加速度パラメータ値VA_Hが設定された場合のスプール挙動GHは以下のようになっている。
時刻t0において、ユーザにより巻き上げスイッチ112の下側スイッチ部112bを1回押圧する操作が行われたことに応じて、魚釣用電動リール1は、スプールの回転駆動を開始させる。つまり、魚釣用電動リール1は、時刻t0からモータを駆動するための電圧(モータ駆動信号)の印加を開始する。ただし、時刻t0にてスプールの回転駆動を開始させたとしても、スプール4に回転が伝達されるまでには或る一定のタイムラグ(遅延)が生じる。このため、スプール4は、時刻t0から或る時間を経た時刻t1から回転を開始する。
【0052】
時刻t1にて回転が開始されたスプール4は、設定された加速度パラメータ値VA_Hのパラメータ値に従った加速度で回転速度を増加させていく。そして、時刻t2(1)に至ってスプール4の回転速度が、設定された速度パラメータ値VSに対応する回転速度(目標回転速度vtg)に到達する。時刻t2(1)以降において、スプール4は、速度パラメータ値VSに対応する一定の回転速度で回転するように制御される。
【0053】
魚釣用電動リール1は、時刻t1にてスプール4の回転が開始されて以降、スプール4に巻き取られていく釣糸の長さを計測している。そして、時刻t3に至って巻き取られた釣糸の長さが巻き上げ長さVLに達すると、スプール4の回転駆動を停止させるため、モータへの電流の供給を停止させる。
【0054】
モータは、電流の供給を停止しても慣性により即座に停止せずに或る程度回転してから停止する、オーバーランと呼ばれる現象が生じる。同図の例では、時刻t3以降のオーバーランが生じた期間においてスプール4の回転速度が減速され、時刻t4にてスプール4の回転が停止している。
【0055】
また、加速度パラメータ値VA_Mが設定された場合のスプール挙動GMは以下のようになる。
この場合にも、時刻t0において、ユーザにより巻き上げスイッチ112の下側スイッチ部112bを1回押圧する操作が行われたことに応じて、スプールの回転駆動を開始させるためのモータ駆動信号の印加が開始される。そして、時刻t0から或る一定の時間を経た時刻t1からスプール4が回転を開始する。
【0056】
時刻t1にて回転が開始されたスプール4は、設定された加速度パラメータ値VA_Mのパラメータ値に従った加速度で回転速度を増加させていく。この場合には、時刻t(1)よりも後の時刻t2(2)に至ってスプール4の回転速度が、目標回転速度vtgに到達する。時刻t2(2)以降において、スプール4は、速度パラメータ値VSに対応する一定の回転速度で回転するように制御される。
【0057】
そして、時刻t3に至って、巻き取られた釣糸の長さが巻き上げ長さVLに達すると、モータへの電流の供給が停止され、オーバーランの期間を経た時刻t4にてスプール4の回転が停止される。
【0058】
また、加速度パラメータ値VA_Lが設定された場合のスプール挙動GLは以下のようになる。
この場合にも、時刻t0において、ユーザにより巻き上げスイッチ112の下側スイッチ部112bを1回押圧する操作が行われると、モータ駆動信号の印加が開始された時刻t0から或る一定のタイムラグ(遅延)を経た時刻t1からスプール4の回転が開始される。
【0059】
時刻t1にて回転が開始されたスプール4は、設定された加速度パラメータ値VA_Lのパラメータ値に従った加速度で回転速度を増加させていく。この場合には、時刻t2(2)よりもさらに後の時刻t2(3)に至ってスプール4の回転速度が、目標回転速度vtgに到達する。時刻t2(3)以降において、スプール4は、速度パラメータ値VSに対応する一定の回転速度で回転するように制御される。
【0060】
そして、時刻t3に至って、巻き取られた釣糸の長さが巻き上げ長さVLに達すると、モータへの電流の供給が停止され、オーバーランの期間を経た時刻t4にてスプール4の回転が停止される。
【0061】
なお、加速度パラメータ値VAが異なることに応じてスプール4が回転を開始する時刻t1は異なりうる。しかしながら、同図においては図示を分かりやすくする便宜から、加速度パラメータ値VAにかかわらず、スプール挙動GH、GM、GLの時刻t1を同じタイミングとした例を示している。
また、加速度パラメータ値VAが異なることに応じて、巻き取られた釣糸の長さが巻き上げ長さVLに達する時刻t3は異なりうるものであり、スプール4が回転を停止する時刻t4も異なりうる。しかしながら、同図においては図示を分かりやすくする便宜から、加速度パラメータ値VAにかかわらず、スプール挙動GH、GM、GLの時刻t3、t4を同じタイミングとした例を示している。
【0062】
本実施形態の魚釣用電動リール1はPWM(Pulse Width Modulation)制御によりモータを駆動することでスプール4を回転駆動させる。従って、魚釣用電動リール1は、モータの駆動にあたり、モータに印加する電圧(モータ駆動信号)について周期ごとのパルス幅のデューティ比を設定するようにされる。
【0063】
図4(B)は、
図4(A)に示したスプール挙動GH、GM、GLごとに対応するモータ駆動信号のデューティ比遷移DH、DM、DLの一例を示している。同図においては、横軸が時間であり、縦軸がデューティ比である。
【0064】
スプール挙動GHに対応するデューティ比遷移DHとして、まず、時刻t0からスプールの回転速度が目標回転速度vtgに到達するまでの期間(初動期間の一例)は、加速度パラメータ値VA_Hに対応する初期デューティ比dhによるモータ駆動信号の印加が開始される。これにより、スプール4は、タイムラグを経た時刻t1から回転を開始し、初期デューティ比dhのモータ駆動信号に応じた加速度により回転速度が上昇していく。そして、時刻t2(1)に至り、スプール4の回転速度が目標回転速度vtgに到達すると、目標回転速度vtgで一定にスプール4を回転駆動させるための定速対応デューティ比dsに変化する。
時刻t2(1)以降においては、スプール4の回転速度を検出し、検出した回転速度が目標回転速度vtgとなるように定速対応デューティ比dsを変化させるフィードバック制御が行われる。同図では、図示を明解なものとすることの便宜上、定速対応デューティ比dsが事件経過に応じて変化せずに一定の状態デ示されているが、定速対応デューティ比dsはフィードバック制御により変動する。例えば、目標回転速度vtgを保たせるための定速対応デューティ比dsは、水中の仕掛けの状態や、糸巻径に応じたスプール4の一回転あたりの糸巻長さ等の影響で変動する。
【0065】
ただし、速度パラメータ値VSの段階ごとに対応して制御可能な定速対応デューティ比dsの範囲は予め定められている。このように速度パラメータ値VSごとに定速対応デューティ比dsの範囲が定められていることで、低速設定のもとでモータに高荷重がかかる状態となっても、定速対応デューティ比dsが100%とならないように制限できる。これにより、速度パラメータ値VSを変更したのに実際の巻き上げ速度が変化しないという状態となることが避けられる。
【0066】
なお、例えば張力一定で釣糸を巻き上げる張力一定モードのもとでは、デューティ比が所定値で一定となるように制御するようにされる。ただし、張力一定モードのもとでもスプール4の糸巻径によって張力が変化することから、このような張力変化に応じてデューティ比が変化するように制御される。
【0067】
その後、時刻t3に至り、巻き取られた釣糸の長さが巻き上げ長さVLとなると、モータ駆動信号の印加が停止される。
【0068】
また、スプール挙動GMに対応するデューティ比遷移DMとしては、まず、時刻t0から加速度パラメータ値VA_Mに対応する初期デューティ比dmによるモータ駆動信号の印加が開始される。初期デューティ比dmは中加速度に対応することから、高加速度に対応する加速度パラメータ値VA_Hに対応する初期デューティ比dhより小さくなる。この場合の時刻t1以降におけるスプール4の回転の加速度は、高加速度に対応する初期デューティ比dhの場合よりも低くなる。そして、目標回転速度vtgに到達した時刻t(2)以降において、定速対応デューティ比dsが維持される。その後、時刻t3に至り、巻き取られた釣糸の長さが巻き上げ長さVLとなると、モータ駆動信号の印加が停止される。
【0069】
また、スプール挙動GLに対応するデューティ比遷移DLとしては、まず、時刻t0から加速度パラメータ値VA_Lに対応する初期デューティ比dlによるモータ駆動信号の印加が開始される。初期デューティ比dlは低加速度に対応することから、中加速度に対応する加速度パラメータ値VA_Mに対応する初期デューティ比dmより小さくなる。この場合の時刻t1以降におけるスプール4の回転の加速度は、中加速度に対応する初期デューティ比dmの場合よりも低くなる。そして、目標回転速度vtgに到達した時刻t(3)以降において、定速対応デューティ比dsが維持される。その後、時刻t3に至り、巻き取られた釣糸の長さが巻き上げ長さVLとなると、モータ駆動信号の印加が停止される。
【0070】
同図から理解されるように、魚釣用電動リール1は、駆動制御パラメータにおける各パラメータ値(巻き上げ長さパラメータ値VL、速度パラメータ値VS、加速度パラメータ値VA)に応じて、時間経過に応じてモータ駆動信号のデューティ比を変化させることで、自動さそい動作に応じたスプール4の回転駆動を行うようにされている。
【0071】
駆動制御パラメータとして、加速度[ACCEL]を設けずに、例えば固定のデューティ比に応じた加速度であるとか、速度パラメータ値VSに対応するデューティ比ではじめからスプール4の回転を開始させるようにされてもよい。
しかしながら、例えば実際にユーザが釣竿を動かしながら行うさそい動作においては、状況に応じて、さそいにおけるはじめのシャクリの鋭さを変えることが釣果につながる場合がある。そこで、本実施形態のように加速度[ACCEL]の駆動制御パラメータを設けるようにすれば、自動さそい動作において、上記のようなさそいにおけるシャクリはじめの鋭さをユーザの意図に応じて変更できる。
【0072】
巻き上げスイッチ112の下側スイッチ部112bが1回操作されたことに応じて、魚釣用電動リール1は、
図4(B)に示されるようにして、駆動制御パラメータの各パラメータ値に従ってモータ駆動信号のデューティ比を変更させていくようにする。これにより、
図4(A)のようにしてスプール4の回転速度が変化し、1回の自動さそい動作が実行される。このようなスプール4の回転速度に応じて変化する巻き上げ速度で釣糸の巻き上げが行われることで、自動によるさそいの動きが得られる。
【0073】
[自動さそい動作に対応する駆動制御パラメータの設定について]
次に、自動さそい動作に対応する駆動制御パラメータ(巻き上げ長さ[LENGTH]、速度[SPEED]、及び加速度[ACCEL])の各パラメータ値(巻き上げ長さパラメータ値VL、速度パラメータ値VS、加速度パラメータ値VA)の設定操作の手順例について説明する。本実施形態において、自動さそい動作に対応する駆動制御パラメータの設定操作は、電動ジギングモードがオンとされた状態のもとで行うことが可能とされている。
本実施形態における駆動制御パラメータの設定は、パラメータ値の変更対象とする駆動制御パラメータの選択と、変更対象として選択された駆動制御パラメータのパラメータ値の変更とを含む。
【0074】
図5は、電動ジギングモードがオンの状態における表示部102の表示例を示している。同図の表示部102においては、速度エリアAR10、水深エリアAR20、及びパラメータ表示エリアAR30が配置される。
速度エリアAR10は、現在において設定されているスプール4の回転速度が段階数により表示されるエリアである。
水深エリアAR20は、現在において仕掛けが位置している水深を表示するエリアである。
【0075】
パラメータ表示エリアAR30は、駆動制御パラメータごとの現在において設定されているパラメータ値が表示されるエリアである。パラメータ表示エリアAR30においては、巻き上げ長さ表示エリアAR31-1、速度表示エリアAR31-2、加速度表示エリアAR31-3が含まれる。巻き上げ長さ表示エリアAR31-1、速度表示エリアAR31-2、加速度表示エリアAR31-3について、特に区別しない場合には、個別パラメータ表示エリアAR31と記載する。
巻き上げ長さ表示エリアAR31-1は、現在において設定されている巻き上げ長さパラメータ値VLが表示されるエリアである。
速度表示エリアAR31-2は、現在において設定されている速度パラメータ値VSが表示されるエリアである。
加速度表示エリアAR31-3は、現在において設定されている加速度パラメータ値VAが表示されるエリアである。
【0076】
同図においては、パラメータ表示エリアAR30において巻き上げ長さ表示エリアAR31-1が強調表示された状態となっている例が示されている。このように巻き上げ長さ表示エリアAR31-1が強調表示された状態は、駆動制御パラメータ(巻き上げ長さ[LENGTH]、速度[SPEED]、及び加速度[ACCEL])のうち、巻き上げ長さ[LENGTH]がパラメータ値の変更対象として選択されていることを示す。
パラメータ表示エリアAR30は、駆動制御パラメータ(巻き上げ長さ[LENGTH]、速度[SPEED]、及び加速度[ACCEL])のいずれが変更対象として選択されているかに応じて、巻き上げ長さ表示エリアAR31-1、速度表示エリアAR31-2、加速度表示エリアAR31-3のうちのいずれかが強調表示されている状態にある。
【0077】
なお、強調表示の態様として、同図では、選択対象の個別パラメータ表示エリアAR31を他の個別パラメータ表示エリアAR31に対して明暗を反転させた表示としている。強調表示の態様としては、特に限定されるものではなく、例えば、選択対象の個別パラメータ表示エリアAR31の枠や文字を太くするなどしたり、カラー表示の場合には、背景色あるいは文字色を変更したりしてもよい。
【0078】
なお、電動ジギングモードがオンとされたことに応じて初期表示されたときのパラメータ表示エリアAR30においては、例えば、最後に電動ジギングモードをオフとしたときの状態を引き継いで個別パラメータ表示エリアAR31の強調表示が行われるようにされてよい。あるいは、予め定められた特定の駆動制御パラメータに対応する個別パラメータ表示エリアAR31が強調表示されていてもよい。
【0079】
電動ジギングモードにおいて同図の状態のパラメータ表示エリアAR30が表示されているとき、ユーザは、以下に説明する操作によって、変更対象として選択されている巻き上げ長さ[LENGTH]のパラメータ値(巻き上げ長さパラメータ値VL)を変更することができる。
この場合、ユーザは、操作部101における第1ボタン111-1を押圧した状態を継続させる。つまり、ユーザは、第1ボタン111-1について押圧操作が継続される操作継続状態とする。これにより、魚釣用電動リール1は、第2ボタン111-2または第3ボタン111-3に対する操作を、パラメータ値を変更する操作として受け付け可能となる。
【0080】
ユーザは、巻き上げ長さパラメータ値VLを増加させる場合には、第1ボタン111-1を押圧した状態を継続させながら、第2ボタン111-2を操作する。第2ボタン111-2が1回押圧されるごとに、巻き上げ長さパラメータ値VLがインクリメントされるように増加する。
また、ユーザは、巻き上げ長さパラメータ値VLを減少させる場合には、第1ボタン111-1を押圧した状態を継続させながら、第3ボタン111-3を操作する。第3ボタン111-3が1回押圧されるごとに、巻き上げ長さパラメータ値VLがデクリメントされるように減少する。
【0081】
なお、ユーザが第2ボタン111-2を長押ししたことに応じて、第2ボタン111-2の押圧が解除されるまで巻き上げ長さパラメータ値VLが連続的にインクリメントされてよい。また、ユーザが第3ボタン111-3を長押ししたことに応じて、第3ボタン111-3の押圧が解除されるまで巻き上げ長さパラメータ値VLが連続的にデクリメントされてよい。
【0082】
巻き上げ長さ表示エリアAR31-1においては、上記の操作により変更された巻き上げ長さパラメータ値VLが反映されるようにして表示が行われる。これにより、ユーザは、自分の操作によって変更された巻き上げ長さパラメータ値VLを確認できる。
【0083】
ユーザは、上記のように巻き上げ長さパラメータ値VLを所望の値に変更すると、これまで継続させていた第1ボタン111-1の押圧を解除する。これにより、魚釣用電動リール1は、巻き上げ長さパラメータ値VLを変更する第2ボタン111-2と第3ボタン111-3に対する操作を受け付け不可とする。また、魚釣用電動リール1は、巻き上げ長さパラメータ値VLを、第1ボタン111-1の押圧が解除されたときに巻き上げ長さ表示エリアAR31-1にて表示されていた値で確定させて、駆動制御パラメータの設定を完了させる。
【0084】
なお、第1ボタン111-1が押圧されている状態においては、魚釣用電動リール1は、巻き上げスイッチ112に対する操作を無効としてよい。つまり、第1ボタン111-1が押圧されている状態においては、ユーザが上側スイッチ部112aを操作してもスプール4は回転せず、下側スイッチ部112bを操作しても自動さそい動作は行われないようにされてよい。
これにより、スプール4が回転中の状態において駆動制御パラメータが変更されることによりスプール4の回転が不安定となることを防ぐことができる。
【0085】
また、電動ジギングモードにおいて、ユーザは、パラメータ値の変更対象とする駆動制御パラメータを以下の操作によって選択することができる。
ユーザは、電動ジギングモードにおいて、第1ボタン111-1については押圧せずに、第2ボタン111-2または第3ボタン111-3に対する操作を行う。
【0086】
ユーザが第2ボタン111-2を1回押圧するごとに、パラメータ表示エリアAR30において、これまで強調表示されていた個別パラメータ表示エリアAR31の1つ上段の個別パラメータ表示エリアAR31が強調表示される状態に変化する。新たに強調表示された個別パラメータ表示エリアAR31に対応する駆動制御パラメータが、パラメータ値の変更対象として選択されることになる。
【0087】
なお、最も上段の個別パラメータ表示エリアAR31が強調表示された状態において、第2ボタン111-2を1回押圧する操作が行われた場合、当該操作は無効とされてもよいし、巡回により最も下段の個別パラメータ表示エリアAR31が強調表示される状態に変化してもよい。
【0088】
また、ユーザが第3ボタン111-3を1回押圧するごとに、パラメータ表示エリアAR30において、これまで強調表示されていた個別パラメータ表示エリアAR31の1つ下段の個別パラメータ表示エリアAR31が強調表示される状態に変化する。この場合にも、新たに強調表示された個別パラメータ表示エリアAR31に対応する駆動制御パラメータが、パラメータ値の変更対象として選択されることになる。
【0089】
なお、最も下段の個別パラメータ表示エリアAR31が強調表示された状態において、第3ボタン111-3を1回押圧する操作が行われた場合、当該操作は無効とされてもよいし、巡回により最も上段の個別パラメータ表示エリアAR31が強調表示される状態に変化してもよい。
【0090】
このようにして、本実施形態の魚釣用電動リール1は、巻き上げ長さ[LENGTH]、速度[SPEED]、及び加速度[ACCEL]それぞれの駆動制御パラメータのパラメータ値を変更する操作(パラメータ変更操作)が可能とされている。
そのうえで、上記の駆動制御パラメータのパラメータ値を変更する操作は、電動ジギングモードがオンとされている状態のもとで行われる。つまり、ユーザは、例えば電動ジギングモードから駆動制御パラメータを変更する設定モードに変更する操作を行うことなく、電動ジギングモードのもとで駆動制御パラメータのパラメータ値を変更する操作を行うことができる。これにより、ユーザは、実釣中においても自動さそい動作の駆動制御パラメータを迅速に変更できる。
【0091】
また、パラメータ値を変更する操作と、パラメータ値の変更対象となる駆動制御パラメータを選択する操作とは、いずれも第2ボタン111-2と第3ボタン111-3とを用いるようにされている。このようにパラメータ値を変更する操作と、駆動制御パラメータを選択する操作とで共通の操作子が用いられるようにすることで、魚釣用電動リール1に設ける操作子の数を節減できる。
【0092】
[魚釣用電動リールの機能構成例]
図6を参照して、魚釣用電動リール1の機能構成例について説明する。同図において、
図1、
図2と同一部分には、同一符号を付して適宜説明を省略する。
同図の魚釣用電動リール1は、操作部101、表示部102、制御部103、記憶部104、モータ駆動回路105、モータ8、スプール4、回転センサ106を備える。
【0093】
制御部103は、魚釣用電動リール1における各種の制御を実行する。制御部103としての機能は、魚釣用電動リール1が備えるCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することにより実現される。
制御部103は、パラメータ設定部131、及びスプール駆動制御部132を備える。
パラメータ設定部131は、操作部101に対して行われた操作に応じて、駆動制御パラメータの各パラメータ値を設定する。
スプール駆動制御部132は、駆動制御情報に基づいて、スプール4の駆動制御を実行する。
【0094】
記憶部104は、魚釣用電動リール1に対応する各種の情報を記憶する。記憶部104は、駆動制御情報記憶部141、デューティ比記憶部142、及び中間巻き上げ速度記憶部143を備える。
【0095】
駆動制御情報記憶部141は、駆動制御情報を記憶する。駆動制御情報は、自動さそい動作においてスプール4を駆動制御するのに利用される情報である。駆動制御情報には、前述のように、巻き上げ長さ[LENGTH]、速度[SPEED]、及び加速度[ACCEL]の駆動制御パラメータが含まれる。
【0096】
デューティ比記憶部142は、加速度パラメータ値VAに対応するモータ駆動信号のデューティ比を記憶する。具体的に、デューティ比記憶部142は、加速度パラメータ値VA_H、VA_M、VA_Lごとに対応させて初期デューティ比dh、dm、dlを記憶する。
なお、デューティ比記憶部142は、速度パラメータ値VSごとに対応して定速対応デューティ比が定められている場合には、速度パラメータ値VSごとに定速対応デューティ比を対応付けて記憶してもよい。
【0097】
中間巻き上げ速度記憶部143は、中間巻き上げ速度を記憶する。中間巻き上げ速度は、電動ジギングモードにおいて、上側スイッチ部112aが押圧されたことに応じてスプール4を回転駆動させる際に指定されるスプール4の回転速度についてのパラメータである。中間巻き上げ速度は、例えば、ユーザが操作を行うことで、スプール4の最大回転速度よりも低い範囲で任意に設定可能とされる。
【0098】
モータ駆動回路105は、スプール駆動制御部132の制御に応じてモータ8を駆動する。スプール駆動制御部132は、PWM制御によりモータ駆動信号のパルス幅のデューティ比を変化させることでモータ8の回転速度を変化させる。
【0099】
[処理手順例]
図7のフローチャートを参照して、魚釣用電動リール1が、自動さそい動作に対応する駆動制御パラメータを設定するための処理手順例について説明する。同図の処理は、電動ジギングモードがオンとされている状態のもとで実行される。
【0100】
ステップS101:魚釣用電動リール1におけるパラメータ設定部131は、第2ボタン111-2に対する1回の押圧操作が行われたか否かを判定する。
【0101】
ステップS102:パラメータ設定部131は、第2ボタン111-2に対する1回の押圧操作が行われたことを判定すると、当該第2ボタン111-2に対する1回の押圧操作が行われたときに、第1ボタン111-1が押圧された状態にあったか否かについて判定する。
【0102】
ステップS103:ステップS102にて第1ボタン111-1が押圧された状態にあったことが判定された場合、パラメータ設定部131は、現在において変更対象として選択されている駆動制御パラメータの現在のパラメータ値をインクリメントする。
パラメータ設定部131は、インクリメントしたパラメータ値を、例えばRAM(Random Access Memory)やレジスタ等に暫定値として記憶させてよい。
また、パラメータ設定部131は、インクリメントにより変更されたパラメータ値が、対応の個別パラメータ表示エリアAR31にて表示されるように表示制御を実行する。
なお、ステップS103に至った段階で、現在のパラメータ値が既に最大値である場合には、ステップS103の処理はスキップされてよい。この場合、第2ボタン111-2は1回の押圧操作が行われたのであるが、パラメータ値は最大のまま変化しない。あるいは、ステップS103に至った段階で、現在のパラメータ値が既に最大値である場合には、巡回して最小のパラメータ値に変更されるようにしてもよい。
【0103】
ステップS104:ステップS102にて第1ボタン111-1が押圧された状態になかったことが判定された場合、パラメータ設定部131は、変更対象として選択される駆動制御パラメータを変更する。
駆動制御パラメータには選択順が設定されている。当該ステップS104において、パラメータ設定部131は、これまで変更対象として選択されていた駆動制御パラメータに対して選択順が1つ逆順となる駆動制御パラメータを、新たに変更対象として選択する。
具体的に、駆動制御パラメータの選択順は、
図5に例示した巻き上げ長さ表示エリアAR31-1、速度表示エリアAR31-2、加速度表示エリアAR31-3の順に応じて、巻き上げ長さ[LENGTH]、速度[SPEED]、及び加速度[ACCEL]の順で設定されてよい。この場合、例えば、これまで速度[SPEED]が変更対象として選択されていた場合、ステップS104によっては、巻き上げ長さ[LENGTH]が新たに変更対象として選択されることになる。
なお、選択順が1番目の巻き上げ長さ[LENGTH]が選択された状態のもとでステップS104に至った場合、パラメータ設定部131は、駆動制御パラメータの選択を変更せずに巻き上げ長さ[LENGTH]のままとしてもよいし、選択順を巡回して、選択順が最後(3番目)の加速度[ACCEL]を新たに選択してもよい。
【0104】
ステップS105:ステップS101にて第2ボタン111-2に対する1回の押圧操作が行われなかったことが判定された場合、あるいはステップS103、S104の処理の後、パラメータ設定部131は、第3ボタン111-3に対する1回の押圧操作が行われたか否かを判定する。
【0105】
ステップS106:パラメータ設定部131は、第3ボタン111-3に対する1回の押圧操作が行われたことを判定すると、今回の第3ボタン111-3に対する1回の押圧操作が行われたときに、第1ボタン111-1が押圧された状態にあったか否かについて判定する。
【0106】
ステップS107:ステップS106にて第1ボタン111-1が押圧された状態にあったことが判定された場合、パラメータ設定部131は、現在において変更対象として選択されている駆動制御パラメータの現在のパラメータ値をデクリメントする。
パラメータ設定部131は、デクリメントしたパラメータ値を、例えばRAMやレジスタ等に暫定値として記憶させてよい。
また、パラメータ設定部131は、デクリメントにより変更されたパラメータ値が、対応の個別パラメータ表示エリアAR31にて表示されるように表示制御を実行する。
なお、ステップS107に至った段階で、現在のパラメータ値が既に最小値である場合には、ステップS107の処理はスキップされてよい。この場合、第3ボタン111-3は1回の押圧操作が行われたのであるが、パラメータ値は最小のまま変化しない。あるいは、ステップS103に至った段階で、現在のパラメータ値が既に最小値である場合には、巡回して最大のパラメータ値に変更されるようにしてもよい。
【0107】
ステップS108:ステップS106にて第1ボタン111-1が押圧された状態になかったことが判定された場合、パラメータ設定部131は、これまで変更対象として選択されていた駆動制御パラメータに対して選択順が1つ正順となる駆動制御パラメータを、新たに変更対象として選択する。
なお、選択順が最後(3番目)の加速度[ACCEL]が選択された状態のもとでステップS108に至った場合、パラメータ設定部131は、駆動制御パラメータの選択を変更せずに加速度[ACCEL]のままとしてもよいし、選択順を巡回して、選択順が1番目の巻き上げ長さ[LENGTH]を新たに選択してもよい。
【0108】
ステップS109:ステップS105にて第3ボタン111-3に対する1回の押圧操作が行われなかったことが判定された場合、あるいはステップS107、S108の処理の後、パラメータ設定部131は、第1ボタン111-1について、これまで押圧されていた状態から押圧が解除された状態に変化したか否かを判定する。
第1ボタン111-1について押圧が解除された状態に変化していないと判定された場合には、ステップS101に処理が戻される。
【0109】
ステップS110:ステップS109にて第1ボタン111-1について押圧が解除された状態に変化したと判定されると、パラメータ設定部131は、駆動制御情報記憶部141に記憶されている駆動制御パラメータのうち、現在において変更対象として選択されている駆動制御パラメータのパラメータ値を、現在において暫定値として記憶させているパラメータ値により更新する。これにより、ステップS103またはステップS107により変更された駆動制御パラメータのパラメータ値が確定される。
なお、ステップS109にて第1ボタン111-1について押圧が解除された状態に変化したと判定されたとき、駆動制御情報記憶部141に記憶されているパラメータ値と、個別パラメータ表示エリアAR31にて表示されているパラメータ値とが同じであった場合には、ステップS110はスキップされてよい。ステップS110の処理の後は、ステップS101に処理が戻される。
【0110】
図8は、
図7のステップS103の処理として、加速度[ACCEL]が変更対象として選択されていたことに応じて、魚釣用電動リール1が加速度パラメータ値VAをインクリメントする場合の処理手順例を示している。
【0111】
ステップS1301:パラメータ設定部131は、現在における加速度パラメータ値VAが[VA_H]であるか否かを判定する。
加速度パラメータ値VAが[VA_H]であると判定された場合には、同図の処理を終了し、ステップS105に移行する。
なお、加速度パラメータ値VAが[VA_H]であると判定された場合に、パラメータ設定部131は、巡回して、加速度パラメータ値VAを[VA_L]に変更してもよい。
【0112】
ステップS1302:加速度パラメータ値VAが[VA_H]ではないと判定された場合、パラメータ設定部131は、現在における加速度パラメータ値VAが[VA_M]であるか否かを判定する。
【0113】
ステップS1303:現在における加速度パラメータ値VAが[VA_M]であると判定された場合、パラメータ設定部131は、加速度パラメータ値VAを[VA_H]に変更する。つまり、パラメータ設定部131は、加速度パラメータ値VAをインクリメントする。
【0114】
ステップS1304:ステップS1302において加速度パラメータ値VAが[VA_M]ではないと判定された場合には、現在の加速度パラメータ値VAは[VA_L]であることになる。そこで、パラメータ設定部131は、加速度パラメータ値VAを[VA_M]に変更するようにしてインクリメントを行う。
【0115】
図9は、
図7のステップS107の処理として、加速度[ACCEL]が変更対象として選択されていたことに応じて、魚釣用電動リール1が加速度パラメータ値VAをデクリメントする場合の処理手順例を示している。
【0116】
ステップS1701:パラメータ設定部131は、現在における加速度パラメータ値VAが[VA_L]であるか否かを判定する。
加速度パラメータ値VAが[VA_L]であると判定された場合には、同図の処理を終了し、ステップS109に移行する。
なお、加速度パラメータ値VAが[VA_L]であると判定された場合に、パラメータ設定部131は、巡回して、加速度パラメータ値VAを[VA_H]に変更してもよい。
【0117】
ステップS1702:加速度パラメータ値VAが[VA_L]ではないと判定された場合、パラメータ設定部131は、現在における加速度パラメータ値VAが[VA_M]であるか否かを判定する。
【0118】
ステップS1703:現在における加速度パラメータ値VAが[VA_M]であると判定された場合、パラメータ設定部131は、加速度パラメータ値VAを[VA_L]に変更する。つまり、パラメータ設定部131は、加速度パラメータ値VAをデクリメントする。
【0119】
ステップS1704:ステップS1702において加速度パラメータ値VAが[VA_M]ではないと判定された場合には、現在の加速度パラメータ値VAは[VA_H]であることになる。そこで、パラメータ設定部131は、加速度パラメータ値VAを[VA_M]に変更するようにしてデクリメントを行う。
【0120】
図10のフローチャートを参照して、魚釣用電動リール1が、電動ジギングモードがオンとされた状態のもとでの巻き上げスイッチ112に対する操作に応じて実行する処理手順例について説明する。
ステップS201:魚釣用電動リール1においてスプール駆動制御部132は、巻き上げスイッチ112における上側スイッチ部112aに対する押圧操作が開始されたか否かを判定する。電動ジギングモードにおいては、前述のように、上側スイッチ部112aに対する押圧が継続されている間において、スプール4が回転駆動され、釣糸の巻き上げが行われる。
【0121】
ステップS202:上側スイッチ部112aに対する押圧操作が開始されたことを判定すると、スプール駆動制御部132は、上側スイッチ部112aに対する押圧操作とともに、第1ボタン111-1が押圧された状態にあるか否かを判定する。
第1ボタン111-1が押圧された状態にないと判定された場合には、ステップS208に処理が遷移する。この場合には、次に説明するステップS203がスキップされることになるため、スプール4が回転駆動されないため、釣糸の巻き上げは行われない。つまり、スプール駆動制御部132は、第1ボタン111-1が押圧された状態のもとでは、上側スイッチ部112aを押圧する操作を、スプール4を回転させる操作として受け付けないようにされる。
【0122】
ステップS203:第1ボタン111-1が押圧された状態にないと判定された場合、スプール駆動制御部132は、中間巻き上げ速度記憶部143が記憶する中間巻き上げ速度でスプール4を回転駆動するための駆動制御を開始する。
【0123】
ステップS204:中間巻き上げ速度でステップS203によりスプール4を回転駆動するための駆動制御を開始させた後、スプール駆動制御部132は、押圧された状態にある上側スイッチ部112aにて検出される押力が増加するように変化したか否かを判定する。
【0124】
ステップS205:押力が増加するように変化したことが判定された場合、スプール駆動制御部132は、スプール4の回転速度について現在よりも高い所定値を設定し、スプール4を回転駆動する。なお、現在のスプール4の回転速度が最大となっている場合には、ステップS205の処理がスキップされてよい。
【0125】
ステップS206:スプール駆動制御部132は、これまで継続されていた上側スイッチ部112aの押圧された状態が解除されたか否かを判定する。
上側スイッチ部112aの押圧された状態が解除されていないと判定された場合には、ステップS204に処理が戻される。
【0126】
ステップS207:ステップS206にて上側スイッチ部112aの押圧された状態が解除されたことが判定されると、スプール駆動制御部132は、スプール4の回転駆動を停止させる。
【0127】
ステップS208:ステップS201にて上側スイッチ部112aに対する押圧操作が開始されないことが判定された場合、あるいはステップS202にて第1ボタン111-1が押圧された状態にないことが判定された場合、あるいはステップS207の処理の後、スプール駆動制御部132は、下側スイッチ部112bを1回押圧する操作が行われたか否かについて判定する。下側スイッチ部112bを1回押圧する操作は、1回の自動さそい動作の実行を指示する操作である。
下側スイッチ部112bを1回押圧する操作が行われないと判定された場合には、ステップS201に処理が戻される。
【0128】
ステップS209:下側スイッチ部112bを1回押圧する操作が行われたことが判定された場合、スプール駆動制御部132は、下側スイッチ部112bを1回押圧する操作とともに、第1ボタン111-1が押圧された状態にあったか否かを判定する。
第1ボタン111-1が押圧された状態にあったことが判定された場合には、ステップS201に処理が戻される。つまり、スプール駆動制御部132は、第1ボタン111-1が押圧された状態のもとでは、下側スイッチ部112bを1回押圧する操作を、自動さそい動作の実行を指示する操作として受け付けないようにされる。
【0129】
ステップS210:ステップS209にて第1ボタン111-1が押圧された状態にないことが判定された場合、スプール駆動制御部132は、駆動制御情報記憶部141が記憶する駆動制御情報に含まれる駆動制御パラメータと、デューティ比記憶部142が記憶する加速度パラメータ値VA対応のデューティ比とに従ってスプール4を回転駆動させる。これにより、下側スイッチ部112bを1回押圧する操作に応じた1回の自動さそい動作が実行される。ステップS210の処理の後は、ステップS201に処理が戻される。
【0130】
図11のフローチャートは、
図10のステップS210としての駆動制御パラメータ対応スプール駆動制御の処理手順例を示している。
ステップS2101:スプール駆動制御部132は、現在設定されている加速度パラメータ値VAに対応する初期デューティ比を、デューティ比記憶部142から取得する。
ステップS2102:スプール駆動制御部132は、取得した初期デューティ比によりモータ8の駆動を開始させる。
図4(A)、
図4(B)に示されるように、時刻t0にてモータ8の駆動が開始されることに応じて、タイムラグを経た時刻t1からスプール4が回転を開始する。
ステップS2103:また、ステップS2102によるモータ8の駆動の開始とともに、スプール駆動制御部132は、スプール4の回転に応じて巻き上げられる釣糸の長さ(実巻き上げ長さL)の検出を開始する。
【0131】
ステップS2104:スプール駆動制御部132は、現在において検出される実巻き上げ長さLが、巻き上げ長さパラメータ値VL以上となったか否かを判定する。つまり、スプール駆動制御部132は、実巻き上げ長さLが巻き上げ長さパラメータ値VLに到達したか否かを判定する。
【0132】
ステップS2105:実巻き上げ長さLが巻き上げ長さパラメータ値VLに到達していないと判定された場合、スプール駆動制御部132は、現在において検出されるスプールの回転速度vspが目標回転速度vtgに到達したか否かを判定する。
スプールの回転速度vspが目標回転速度vtgに到達していないと判定された場合には、ステップS2104に処理が戻される。
【0133】
ステップS2106:スプールの回転速度vspが目標回転速度vtgに到達した場合には、スプール駆動制御部132は、そのままスプールの回転速度vspが目標回転速度vtgで維持されるように定速制御を実行する。この際、スプール駆動制御部132は、スプールの回転速度vspが目標回転速度vtgとなるようにモータ駆動信号のデューティ比を制御する。当該ステップS2106の処理の後は、ステップS2104に処理が戻される。
【0134】
ステップS2107:ステップS2104にて実巻き上げ長さLが巻き上げ長さパラメータ値VLに到達したと判定された場合、スプール駆動制御部132は、モータ駆動を停止させる。
【0135】
<変形例>
以下、本実施形態の変形例について説明する。
[第1変形例]
図4(A)では、スプール4が回転を開始してから目標回転速度vtgに到達する期間t1~t2(t2(1)、t2(2)、t2(3))において、等加速度(変化率一定)でスプールの回転速度が増加していくようなイメージが示されている。
しかしながら、例えば
図12(A)に示されるように、期間t1~t2での時間経過に応じて加速度が変化するようにしてスプール4が回転駆動されてよい。同図では、スプール挙動GH、GM、GLのそれぞれについて、二次曲線的に速度が上昇していくようにされた態様を示している。
【0136】
また、期間t1~t2における所望のスプールの加速度変化を生じさせるために、期間t0~t2におけるモータ駆動信号のデューティ比を時間経過に従って所定のパターンで変化させてもよい。
一例として、
図12(B)に示すように、デューティ比遷移DH、DM、DLのそれぞれについて、時刻t0から一定時間を経過するごとに段階的に高くしてくようにしてよい。
なお、期間t0~t2においてデューティ比を変化させる段階数や経過時間については特に限定されるものではなく、適宜変更されてよい。
なお、期間t0~t2においてデューティ比を段階的に減少させていくようにしてもよい。
なお、期間t0~t2における段階ごとのデューティ比の増減量は適宜変更されてよい。
なお、デューティ比を変化させる段階数、経過時間、増減量等は、デューティ比遷移DH、DM、DLの間で適宜異ならせるようにされてよい。
【0137】
また、
図12(B)に示されるように、デューティ比遷移DH、DM、DLのそれぞれについて、期間t0~t2において連続的にデューティ比が変化するようにされてもよい。この場合におけるデューティ比の変化率も一定ではなく時間経過に応じて変化するようにされてよい。なお、同図では期間t0~t2における時間経過に応じて、デューティ比が連続的に大きくなっていくように変化する例であるが、デューティ比が或る値から連続的に減少していくように変化するようにされてもよい。
【0138】
[第2変形例]
上記実施形態の駆動制御情報において、第3ボタン111-3の操作に応じて開始されたスプール4の回転を停止させる条件の判定に用いられる条件判定値としての駆動制御パラメータは、巻き上げ長さ[LENGTH]である。
しかしながら、条件判定値としての駆動制御パラメータは、巻き上げ長さ[LENGTH]以外に、例えば、駆動時間[TIME]であってよい。駆動時間[TIME]は、スプール4を回転駆動させる時間である。具体的には、駆動時間[TIME]は、例えば第3ボタン111-3の操作が検知されてスプール4を駆動するモータ8への電流の供給を開始してから、モータ8への電流の供給を停止させるまでの時間であってよい。
また、ユーザの操作により、条件判定値である駆動制御パラメータとして、巻き上げ長さ[LENGTH]と駆動時間[TIME]とのいずれかを選択可能なようにされてもよい。
【0139】
[第3変形例]
上記実施形態において、変更対象のパラメータの選択や変更対象の駆動制御パラメータのパラメータ値の変更の操作には、2つの第2ボタン111-2及び第3ボタン111-3がそれぞれアップボタン、ダウンボタンとして用いられていた。
しかしながら、変更対象のパラメータの選択や変更対象の駆動制御パラメータのパラメータ値の変更の操作に用いられる操作子の数は、2つに限定されるものではなく、例えば1つであってもよい。
操作子が1つである場合として、当該操作子がボタンである場合には、1回押圧操作されるごとに、選択される変更対象のパラメータ、あるいはパラメータ値が巡回的に変更されるようにしてよい。また、当該操作子がレバー等である場合には、所定の一方向にレバーを位置させることに応じて正順で変更対象のパラメータ、あるいはパラメータ値が変更され、もう1つの方向にレバーを位置させることに応じて逆順で変更対象のパラメータ、あるいはパラメータ値が変更されてよい。
【0140】
[第4変形例]
上記実施形態においては、ボタン111(第1ボタン111-1、第2ボタン111-2、第3ボタン111-3)は、物理的な操作子として設けられた例を挙げている。しかしながら、ボタン111は、例えばタッチパネルとしての表示部102において表示される画像としての操作子であってよい。
【0141】
[第5変形例]
なお、魚釣用電動リール1は、外部の端末装置と通信可能に接続されてよい。魚釣用電動リール1と外部の端末装置との通信は、無線であっても有線であってもよい。また、外部の端末装置は、例えば魚群探知の情報をユーザに向けて表示するようなものであってもよいし、魚釣用電動リール1を用いた釣りに関して所定のサポートを行うアプリケーションが動作するスマートフォン等であってもよい。
そのうえで、本実施形態の自動さそい動作に対応する駆動制御情報や中間巻き上げ速度の情報は、外部の端末装置に記憶されるようにしてもよい。この場合、駆動制御情報における駆動制御パラメータや中間巻き上げ速度の変更に関する操作が、外部の端末装置に対する操作として可能なようにされてよい。
このように駆動制御情報や中間巻き上げ速度の情報を外部の端末装置が記憶する場合、自動さそい動作や中間巻き上げ速度によるスプール4の駆動制御を実行させるためには、外部の端末装置の制御によって魚釣用電動リール1に駆動制御情報や中間巻き上げ速度の情報が設定される。魚釣用電動リール1は、設定された駆動制御情報や中間巻き上げ速度の情報に基づいてスプール4を駆動制御することで、自動さそい動作を行う。
【0142】
なお、上記実施形態における魚釣用電動リール1としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の魚釣用電動リール1としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0143】
1 魚釣用電動リール、4 スプール、8 モータ、41 表示操作パネル、101 操作部、102 表示部、103 制御部、104 記憶部、105 モータ駆動回路、106 回転センサ、131 パラメータ設定部、132 スプール駆動制御部、141 駆動制御情報記憶部、142 デューティ比記憶部、143 中間巻き上げ速度記憶部