(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】未加硫ゴム用防着剤組成物及びその利用
(51)【国際特許分類】
C08J 7/04 20200101AFI20241209BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20241209BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241209BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20241209BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20241209BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20241209BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20241209BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20241209BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20241209BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
C08J7/04 Z CEQ
B05D7/02
B05D7/24 303B
C08K3/00
C08K3/26
C08K3/34
C08K5/098
C08L21/00
C08L91/06
C09K3/00 R
(21)【出願番号】P 2020168180
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉本 元
(72)【発明者】
【氏名】武市 賢治
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-247864(JP,A)
【文献】特開2013-209658(JP,A)
【文献】特開2020-041089(JP,A)
【文献】特開2020-158622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 21/00
C09K 3/00
C08K 3/00
C08K 5/098
C08L 91/06
B05D 7/02
B05D 7/24
C08J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機成分と、界面活性剤と、金属石鹸及び/又はワックスと、を含有する未加硫ゴム用防着剤組成物であって、
前記無機成分が、珪酸塩と、酸化鉄及び硫化鉄から選ばれる少なくとも1種とを必須に含み、
前記未加硫ゴム用防着剤組成物を100重量部としたときに、前記珪酸塩が10~
32.5重量部
、前記金属石鹸及び/又は前記ワックスの合計が10~65重量部であり、
前記珪酸塩、前記酸化鉄及び前記硫化鉄の合計に対する前記酸化鉄及び前記硫化鉄の重量割合の合計が2重量%未満であり、
前記界面活性剤がグリフィン法によるHLB3~13のノニオン界面活性剤を必須に含む、未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項2】
炭酸塩をさらに含有する、請求項
1に記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の未加硫ゴム用防着剤組成物を、成型加工された未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む、防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は未加硫ゴム用防着剤組成物及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品の生産加工工程において、未加硫ゴムを次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵することがあり、この場合にゴムの密着を防止する目的で密着防止剤(防着剤)が使用されている。
防着剤としては、無機粉末と界面活性剤を主成分とする防着剤が広く用いられており、一般に、これらは水分散液の形態でゴム表面に塗布し乾燥させることが行われている。塗布方法としては、水分散液をスプレーしたり、水分散液に浸漬したりする。
【0003】
ゴム製品の生産加工工程において、未加硫ゴムを次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵することがあり、この場合にゴムの密着を防止する目的で密着防止剤(防着剤)が使用されている。
防着剤としては、無機粉末と界面活性剤を主成分とする防着剤が広く用いられており、一般に、これらは水分散液の形態でゴム表面に塗布し乾燥させることが行われている。無機粉末としては、ベントナイトなどの水膨潤性無機粉末が一般的に使用される。水膨潤性無機粉末は水中で膨潤し微粒子になることから、ゴムへの付着性に優れる。しかし、微粒子となるために乾燥時の粒子間の凝集力が強く、乾燥固化物の硬さは著しく増大する。
この対策として、乾燥固化物の崩壊性を向上させた防着剤が開発されているが、上記問題を解決し、防着剤に要求される各特性を十分に満たす防着剤はこれまでにない。
【0004】
特許文献1では、造膜性を有する水溶性高分子と陰イオン活性剤または非イオン活性剤とからなる防着用組成物が開示されている。この防着用組成物は無機粉体を使用しないことを特徴としており、乾燥固化物の形成を抑制できる。しかし、
十分な防着性能を発揮させるためには、高濃度で使用することが必要であり、その場合、水溶性高分子の保水性が著しく高くなり、防着剤組成物を塗布した後の乾燥工程に時間がかかり、生産性を悪化させる。
特許文献2では、ベンナイト以外の特定の無機粉体を主体とし、乾燥固化物の崩壊性を向上させたゴム用密着防止剤が開示されている。しかし、ベントナイトなどの水膨潤性無機粉末を主体としない防着剤では付着性に劣るため、十分な防着性を得るには高濃度で使用する必要がある。高濃度となると、乾燥固化物の崩壊性が向上したとしても、ゴムへの異物となる防着剤塊の形成リスクが増大してしまう。
以上のように、崩壊性を向上させた防着剤が特許文献1、2に示されているが、同時に、十分な防着性を満たすものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-32127号公報
【文献】特開平14-363532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、防着性と崩壊性が同時に優れる未加硫ゴム用防着剤組成物と、その未加硫ゴム用防着剤組成物を使用して行われる防着処理された未加硫ゴムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のグリフィン法によるHLBを示すノニオン界面活性剤を含む界面活性剤と、特定の鉄化合物を含む無機成分と、金属石鹸及び/又はワックスと、を含有する未加硫ゴム用防着剤組成物であれば、解決できることを見出した。
すなわち、本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、無機成分と、界面活性剤と、金属石鹸及び/又はワックスと、を含有する未加硫ゴム用防着剤組成物であって、
前記無機成分が、珪酸塩と、酸化鉄及び硫化鉄から選ばれる少なくとも1種とを必須に含み、前記未加硫ゴム用防着剤組成物を100重量部としたときに、前記珪酸塩が10~32.5重量部、前記金属石鹸及び/又は前記ワックスの合計が10~65重量部であり、前記珪酸塩、前記酸化鉄及び前記硫化鉄の合計に対する前記酸化鉄及び前記硫化鉄の重量割合の合計が2重量%未満であり、
前記界面活性剤がグリフィン法によるHLB3~13のノニオン界面活性剤を必須に含む。
【0008】
炭酸塩をさらに含有すると好ましい。
【0009】
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、上記未加硫ゴム用防着剤組成物を、成型加工された未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、防着性と崩壊性が同時に優れるため、未加硫ゴム製造工程で生産性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔未加硫ゴム用防着剤組成物〕
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、珪酸塩を必須とする無機成分と、グリフィン法によるHLBが3~13であるノニオン界面活性剤を必須とする界面活性剤と、金属石鹸及び/又はワックスと、を含有する未加硫ゴム用防着剤組成物である。
以下、各成分を詳しく説明する。
【0012】
〔無機成分〕
無機成分は、未加硫ゴム表面に被膜を形成して防着性を発揮する材料の成分である。
本発明の未加硫ゴム用防着剤では、無機成分は珪酸塩を必須成分として含有する。
珪酸塩は、一般に、4個の酸素原子から形成される三角錐の真ん中の隙間に1個の珪素原子が入り込んでできる珪酸四面体が連結して形成される構造である。珪酸塩は、珪酸四面体の連結方式により、さらにネソ珪酸塩、ソロ珪酸塩、サイクロ珪酸塩、イノ珪酸塩、フィロ珪酸塩およびテクト珪酸塩等に分類され、本発明の未加硫ゴム用防着剤では、これらの珪酸塩を1種または2種以上を併用してもよい。
【0013】
ネソ珪酸塩は、独立型連結方式の珪酸塩と分類され、(SiO4)4-の化学式で表される構造を基本組成とする。ネソ珪酸塩としては、特に限定はないが、たとえば、フォルステライト、ファヤライト、マンガンカンラン石等のかんらん石;ヒューマイト;パイロープ、アルマンディン、スペサルティン、グロッシュラー、アンドラダイト、ウバロバイト等のざくろ石;ダトーライト、珪線石等のガドリン石等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用してもよい。
【0014】
ソロ珪酸塩は、複合型連結方式の珪酸塩と分類され、(Si2O7)6-及び(Si5O16)12-の化学式で表される構造から選ばれる少なくとも1種を基本組成とする。ネソ珪酸塩としては、特に限定はないが、たとえば、ゾイサイト、クリノゾイサイト等の緑レン石;オケルマナイト、ゲーレナイト等のメリライト;ベスビアナイト等のパンペリー石等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用してもよい。
サイクロ珪酸塩は、環状連結方式の珪酸塩と分類され、(Si3O9)6-、(Si4O12)8-、(Si6O18)12-の化学式で表される構造を基本組成とする。ネソ珪酸塩としては、特に限定はないが、たとえば、ベニト石;斧石;緑柱石;鉄電気石、苦土電気石、リシア電気石等の電気石;大隅石等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用してもよい。
【0015】
イノ珪酸塩は、単鎖状連結方式の珪酸塩と分類され、(Si2O6)4-、(Si3O9)6-、(Si4O11)6-、(Si5O15)10-、(Si7O21)14-の化学式で表される構造を基本組成とする。イノ珪酸塩としては、特に限定はないが、たとえば、透輝石、クリノエンスタタイト、エンスタタイト、アクマイト、スポジューメン等の輝石;直閃石、透閃石、藍閃石、ロードナイト等の角閃石等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用してもよい。
【0016】
フィロ珪酸塩は、層状連結方式の珪酸塩と分類され、SiO2の化学式で表される構造を基本組成とする。フィロ珪酸塩としては、特に限定はないが、たとえば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト;ジ-バーミキュライト、トリ-バーミキュライト等のバーミキュライト;ハロイサイト、カオリン、エンデライト、ディッカイト、ナクライト、クリソタイル等のカオリナイト;タルク;テトラシリリックマイカ等のマイカ;パイロフィライト;マーガライト;クリントナイト;白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、フッ素雲母等の雲母鉱物;パラゴライト;フロゴパイト;レピドライト;アンチゴライト等のジャモン石;ドンパサイト、スドウ石、クッカイト、クリノクロア、シャモサイト、クロライト、ナンタイト等の緑泥石;セピオライト、パリゴルスカイト等のピオライト-パリゴスカイト等が挙げられ、これらを1種または2種以上を併用してもよい。
【0017】
テクト珪酸塩は、網状連結方式の珪酸塩と分類され、SiO2の化学式で表される構造を基本組成とする。テクト珪酸塩としては、特に限定はないが、たとえば、サニディン、アルバイト、アノーサイト、ネフェリン等の長石;白榴石、スコレス沸石、輝沸石等の沸石;柱石等が挙げられ、これらを1種または2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明で用いる無機成分に含まれる珪酸塩は、フィロ珪酸塩を含有すると好ましく、水分散性が良好で防着性に優れた被膜を形成することができる。なかでも、フィロ珪酸塩が、スメクタイト、カオリナイト、タルクおよびマイカから選ばれる少なくとも1種であると、防着性に優れた被膜を形成するので好ましい。
【0019】
スメクタイトは、水と接触すると、層間の交換性陽イオンに水分子が次々に水和して膨潤するため、水中で効果的に分散することができる。したがって、フィロ珪酸塩がスメクタイトであると、水に配合した際の分散性に優れ被膜性が向上するのでさらに好ましい。また、スメクタイトのうちでも、水膨潤性が特に著しいことから、モンモリロナイトが好ましい。
【0020】
モンモリロナイトは2八面体型含水層状珪酸塩の鉱物であり、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、水素イオン等を交換陽イオンとして含有する。これらの陽イオンは容易に交換される性質を有しており、かつ容易に水を取り込める性質も有している。交換陽イオンがナトリウムイオンであると、水和力で水分子を取り込みやすく、層間隔が増大し膨潤が著しい。
【0021】
一般に、モンモリロナイトを主成分として含有する層状粘土鉱物をベントナイトと呼ぶ。ベントナイトは、無機成分の一例として挙げられ、未加硫ゴム表面に容易に吸着し、被膜を形成することができる。ベントナイトの被膜は、防着性及び滑性に優れることから、本発明の未加硫ゴム用防着剤における珪酸塩がベントナイトを必須成分とするとさらに好ましい。また、ベントナイトがナトリウムベントナイトを高い純度で含有すると、水膨潤性の効果が著しく最も好ましい。
【0022】
また、本発明で用いる無機成分は、珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄の合計に対する酸化鉄及び硫化鉄の重量割合が少ないほうが好ましい。珪酸塩は微量の炭酸塩や鉄化合物と共に存在することが多いが、鉄化合物は、珪酸塩と比べると比重が大きく、水分散性に優れない。したがって、珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄の合計に対する鉄化合物の重量割合が大きいと、珪酸塩のゴムへの均一な付着を妨げ防着性悪化の原因となる。したがって、防着剤の均一な付着を促し、防着性を高めるという観点からは、できるだけ鉄化合物の重量割合は少ないほうが好ましい。
【0023】
珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄の合計に対する酸化鉄及び硫化鉄の重量割合については、好ましくは2%未満、より好ましくは1.8%未満、さらに好ましくは1.6%未満、特に好ましくは1.4%未満、最も好ましくは1.2%未満である。
【0024】
珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄の合計に対する酸化鉄及び硫化鉄の重量割合の好ましい下限値は、0.1重量%、より好ましくは0.05重量%、さらに好ましくは0.01重量%、よりさらに好ましくは0.001重量%、特に好ましくは0.0001重量%、最も好ましくは0重量%超である。
【0025】
珪酸塩、酸化鉄及び硫化鉄の合計に対する酸化鉄及び硫化鉄の重量割合を調整する方法としては、共に存在する鉄化合物の重量割合が2重量%未満の珪酸塩は、その市販品を入手することもできるが、共に存在する鉄化合物を含む珪酸塩に対して遠沈法や遠心分離法等の処理を行ったり、鉄化合物を混合したりしてもよい。
本発明における鉄化合物とは、酸化鉄及び硫化鉄から選ばれる少なくとも一つであり、両方含んでいてもよい。
【0026】
〔鉄化合物の重量割合の分析方法〕
珪酸塩と共に存在する鉄化合物の重量割合を粉末X線回折により測定する。測定値が検出限界未満である時は0重量%とした。
また、無機成分の平均粒子径については、特に限定はないが、未加硫ゴムへの付着性等を考慮すると、好ましくは0.1~200μm、より好ましくは0.1~100μm、さらに好ましくは0.1~50μm、特に好ましくは0.1~40μm、最も好ましくは0.1~30μmである。
【0027】
未加硫ゴム用防着剤組成物の合計重量に対する珪酸塩の重量割合については、好ましくは、未加硫ゴム用防着剤組成物を100重量部としたときに、前記珪酸塩が10~35重量部が好ましい。さらに好ましくは12.5~32.5重量部、特に好ましくは15~30重量部である。
【0028】
〔界面活性剤〕
界面活性剤は、本発明に必須の成分であり、防着剤組成物の未加硫ゴムへの付着を補助する成分である。界面活性剤が本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物に含まれていることによって、未加硫ゴムへの付着性が向上することで、より均一に未加硫ゴム表面に被膜化し防着性が向上する。
【0029】
本発明で用いられる界面活性剤は、グリフィン法によるHLBが3~13であるノニオン界面活性剤を必須に含む。ノニオン界面活性剤は防着剤組成物の未加硫ゴムへの付着を向上させる。
【0030】
ここで、グリフィン法によるHLBとは、分子構造に基づき、下記(I)により算出できる数値である。すなわち、グリフィン法によるHLBとは、0から20までの数値をとり、数値が小さいほど親油性で、数値が大きいほど親水性であることの指標となる。
HLB=20×(親水部の式量の総和/分子量)(I)
グリフィン法によるHLBが3~13であるノニオン界面活性剤については特に限定は無く、1種又は2種以上を含んでいてもよい。グリフィン法によるHLBが3~13であるノニオン界面活性剤の役割は、珪酸塩と金属石鹸及び/又はワックスを含む防着剤の分散液の循環中にスカムを発生させることで、ゴム表面上に波状の防着剤膜を形成することにある。
グリフィン法によるHLBが3未満の場合、ゴムへの濡れ性が不足し、13を超える場合、抑泡性が不足する。
グリフィン法によるHLBは、防着性と崩壊性の観点から、4~12が好ましく、5~11がさらに好ましく、6~10が特に好ましい。
【0031】
グリフィン法によるHLBが3~13であるノニオン界面活性剤については、例えば、下記化学式(1)で表されるノニオン界面活性剤を用いることができる。
RO-(AO)n-H (1)
前記化学式(1)中、Rは脂肪族炭化水素基である。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。AOは、炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を表し、nは、AOの平均付加モル数である。
【0032】
炭素原子数2~4のオキシアルキレン基とは、例えば、炭素原子数2~4のアルキレンオキサイドが付加してなる重合単位である。オキシアルキレン基を複数種類含む場合は、これらの基がブロック状に配列していても、ランダム状に配列していてもよい。
未加硫ゴム用防着剤組成物の合計重量に対する界面活性剤の重量割合については、特に限定はないが、付着性および水分散液の泡立ちの観点から、好ましくは1~30重量%である。さらに好ましくは1~28重量%、特に好ましくは1~26重量%、最も好ましくは、1~24重量%である。
【0033】
〔金属石鹸〕
金属石鹸は、未加硫ゴム表面に付着し、未加硫ゴム間の摩擦を軽減する成分である。また、防着剤の乾燥固化物の凝集を弱め、崩壊性を向上させる成分である。
金属石鹸としては、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸カルシウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オクタデカン酸バリウム等が挙げられる。
前記金属石鹸としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種であると、未加硫ゴム間の摩擦を軽減する効果が高く好ましい。
未加硫ゴム用防着剤組成物の合計重量に対する金属石鹸の重量割合については、本願効果を奏する観点から、好ましくは、未加硫ゴム用防着剤組成物を100重量部としたときに、前記金属石鹸が10~70重量部が好ましい。さらに好ましくは12.5~67.5重量部、特に好ましくは15~65重量部である。
【0034】
金属石鹸の平均粒子径については、特に限定はないが、摩擦軽減効果および崩壊性向上効果、未加硫ゴム表面に付着した金属石鹸の粉落ちの観点から、好ましくは0.1~200μm、より好ましくは0.1~100μm、さらに好ましくは0.1~50μm、特に好ましくは0.1~40μm、最も好ましくは0.1~30μmである。
【0035】
[ワックス]
ワックスは、金属石鹸同様に、未加硫ゴム表面に付着し、未加硫ゴム間の摩擦を軽減する成分である。また、防着剤の乾燥固化物の凝集を弱め、崩壊性を向上させる成分である。
ワックスとしては、特に限定はないが、たとえば、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックス、合成炭化水素系ワックス、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸アミドおよび無水フタル酸イミド等からなる粒子が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0036】
植物系ワックスとしては、特に限定はないが、たとえば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ほほば油、シュガーワックス、ベイベリーワックス、オーキュリーワックス、エスパルトワックス等が挙げられる。
動物系ワックスとしては、特に限定はないが、たとえば、みつろう、ラノリン、鯨蝋等、昆虫ろう、セラックろう等が挙げられる。
鉱物系ワックスとしては、特に限定はないが、たとえば、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等が挙げられる。
石油ワックスとしては、特に限定はないが、たとえば、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、ペトロラクタム等が挙げられる。
合成炭化水素系ワックスとしては、特に限定はないが、たとえば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
変性ワックスとしては、特に限定はないが、たとえば、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタンワックス誘導体等が挙げられる。
【0037】
水素化ワックスとしては、特に限定はないが、たとえば、硬化ひまし油、12-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、N-ヒドロキシエチル-12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N’-エチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N’-ヘキサメチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N’-キシリレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、メチル-12-ヒドロキシステアレート、プロピレングリコール-モノ-12-ヒドロキシステアレート、エチレングリコール-モノ-12-ヒドロキシステアレート等が挙げられる。
脂肪酸アミドとしては、特に限定はないが、たとえば、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、N,N’-キシリレンビスステアリン酸アミド、やし油脂肪酸モノエタノールアミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド等が挙げられる。
上記で説明したワックスのなかでも、植物系ワックス、石油ワックス、合成炭化水素系ワックス、水素化ワックスから選ばれた少なくとも1種が好ましい。
未加硫ゴム用防着剤組成物の合計重量に対するワックスの重量割合については、本願効果を奏する観点から、好ましくは、未加硫ゴム用防着剤組成物を100重量部としたときに、前記ワックスが10~70重量部が好ましい。さらに好ましくは12.5~67.5重量部、特に好ましくは15~65重量部である。
【0038】
ワックスの平均粒子径については、特に限定はないが、摩擦軽減効果および崩壊性向上効果、ワックスの粉落ちの観点から、好ましくは0.1~200μm、より好ましくは0.1~100μm、さらに好ましくは0.1~50μm、特に好ましくは0.1~40μm、最も好ましくは0.1~30μmである。
【0039】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、上記で説明した成分以外に、下記成分をさらに含有していてもよい。
〔その他の無機成分〕
その他の無機成分は、未加硫ゴム表面に付着し、未加硫ゴム間の密着を防止したり、未加硫ゴム間の摩擦を軽減したりする成分である。
その他の無機粉体としては、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;非晶質シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;カーボンブラック;グラファイト等が挙げられる
前記その他の無機成分としては、炭酸塩が好ましく、未加硫ゴム間の摩擦を軽減する効果の高い炭酸カルシウム、ベントナイトの水への膨潤を促進し防着性をより向上させる炭酸ナトリウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種であると、さらに好ましい。
【0040】
〔アニオン界面活性剤〕
アニオン界面活性剤としては、たとえば、カプリン酸カリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、プルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、パーム核油脂肪酸ナトリウム、パーム核油脂肪酸カリウム、パームステアリン酸カリウム、パームステアリン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム、牛脂脂肪酸カリウム等の脂肪酸石鹸;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、2-エチルヘキシルスルホコハク酸Na等の長鎖スルホコハク酸塩;オレオイルザルコシンナトリウム、ラウロイルザルコシンナトリウム等のN‐アシルサルコシン塩;ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N-アシルグルタミン酸塩等が挙げられる。
【0041】
〔水溶性高分子〕
水溶性高分子は未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散液に粘性を付与し、未加硫ゴム表面への付着性を向上させる成分である。
水溶性高分子としては、特に限定はないが、たとえば、酸化でんぷん、酢酸でんぷん、燐酸でんぷん、カルボキシメチルスターチ、カルボキシエチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、陽性でんぷん、シアノエチル化でんぷん、ジアルデヒドでんぷん等のでんぷん類;マンナン;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエーテル類;タラカントガム、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ブリティッシュガム、グルコマンナン、ジェランガム、タラガム、ローカストビーンガム、カラギーナン等の天然ガム類;ポリアクリル酸ソーダ;ポリビニルアルコール;ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシド;水溶性アクリル樹脂;水溶性ウレタン樹脂;水溶性メラミン樹脂;水溶性エポキシ樹脂;水溶性ブタジエン樹脂;水溶性フェノール樹脂等が挙げられる。
【0042】
〔多価アルコール〕
多価アルコールは未加硫ゴム表面に付着し、未加硫ゴム間に潤滑性を付与し、未加硫ゴム間の摩擦を軽減する成分である。
多価アルコールとしては特に限定はないが、たとえば、グリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、マルトトリオース、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0043】
〔消泡剤〕
消泡剤としては、たとえば、ポリメチルシロキサン、ポリエーテル変性シリコー等のシリコーン系消泡剤;ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、コハク酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール3-ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3-ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フオスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミン等のアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレン系消泡剤;鉱物油等が挙げられる。
【0044】
〔防腐剤〕
防腐剤としては、たとえば、チアゾール、2-メルカプトチアゾール等のチアゾール類;メチレンビスチオシアネート、アンモニウムチオシアネート等のチオシアネート類;o-ベンゾイックスルフィミド、フェニルマーキュリック-o-ベンゾイックスルフィミド等のスルフィミド類;メチルジメチルチオカルバメート、エチルジエチルジチオカルバメート等のアルキルジアルキルチオカルバメート類;テトラメチルチラウムスルフィド、テトラエチルチラウムスルフィド等のチラウムスルフィド類;テトラメチルチラウムジスルフィド、テトラエチルチラウムジスルフィド等のチラウムジスルフィド類;フェリックジエチルジチオカルバメート、リードジメチルジチオカルバメート等のジチオカルバメート類;o-トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルフォンアニリド等のスルファミド類;1-アミノナフチル-4-スルホン酸、1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸等のアミノスルホン酸類;ペンタクロロフェノール、o-フェニルフェノール等のフェノール類及びこれらのアルカリ金属塩類;;テトラクロロ-p-ベンゾキノン、2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン等の塩化キノン類;ジニトロカプリルフェニルクロトネート、ジニトロ-o-クレゾール等のニトロ基含有化合物類;1,3,5-トリヒドロキシエチルヘキサハイドロ-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリエチルヘキサハイドロ-1,3,5-トリアジン等のトリアジン類;フェニルマーキュリックフタレート、o-ヒドロキシフェニルマーキュリッククロライド等の有機水銀化合物;p-アミノアゾベンゼン、ジフェニルアミン等のアミン類;シンナムアニリド等のアミド類;1,3-ジヨード-2-プロパノール等のヨウ素含有化合物等が挙げられる。
【0045】
〔水〕
水は、水道水、イオン交換水、蒸留水等のいずれでもよく、特に限定はないが、イオン交換水や蒸留水等が好ましい。また、水の硬度の観点からは、水が軟水であると、品質管理の観点から好ましい。
【0046】
〔未加硫ゴム用防着剤の製造方法〕
本発明の未加硫ゴム用防着剤の製造方法については、無機粉末、界面活性剤、金属石鹸又はワックス、さらにその他の成分等を混合する工程を含むものであれば、混合順序や使用する混合設備等について特に限定はない。未加硫ゴム用防着剤は、たとえば、リボン型混合機等の粉体混合機に各成分を順次添加し、混合することで製造することができる。
【0047】
〔防着処理された未加硫ゴムの製造方法〕
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、上記未加硫ゴム用防着剤組成物を、未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む。ここで、未加硫ゴムは、成形加工されたものであるとよい。
処理工程では、ウェット法、すなわち、未加硫ゴム用防着剤組成物として水が配合された水分散液を用いる方法が好ましい。
ウェット法で処理工程を行う場合、未加硫ゴム用防着剤組成物(水分散液)をスプレーする方法や、細流にてゴムに吹き付ける方法や分散液中に浸漬する方法等が挙げられる。水分散液中に浸漬する方法では、均一に未加硫ゴム用防着剤組成物を付着させることができるため好ましい。本発明の製造方法で用いる未加硫ゴムは、通常、100~180℃に加熱された状態にあり、水分散液中に浸漬する方法で未加硫ゴムを冷却することができる。水分散液の温度は特に限定はないが、0~60℃であると好ましい。次いで、水分散液を付着後に未加硫ゴムを乾燥する工程を実施してもよい。乾燥の方法としては、特に限定はないが熱風機やブローヒーターにより熱風を送ることで強制的に乾燥させる方法であると、コストが安くてよい。
当該水分散液の濃度は、良好な防着性と乾燥性を発揮しやすい観点から、0.01~10%が好ましく、0.05~7.5%がより好ましく、0.1~5.0%がさらに好ましい。0.01%未満では、防着性が悪化する可能性があり、10%超では、乾燥性が悪化する可能性がある。
処理工程では、ドライ法、すなわち、水が配合されていない未加硫ゴム用防着剤組成物を用いる方法を行ってもよい。
このようにして製造された、防着処理された未加硫ゴムでは、次の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵する場合に、未加硫ゴム同士の密着を防止することができる。
【実施例】
【0048】
以下に、本発明を実施例及び比較例を示して具体的に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における各物性の評価は、以下のようにして行った。
【0049】
[防着性]
未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散液(2.0%濃度)に対して、100℃に加熱したNR/BR試験片(天然ゴム/ブタジエンゴム;厚み0.5cm×縦5cm×横3cm)を浸漬して直ちに引き上げる。浸漬させたゴム試験片を2枚作製し、風乾したら重ね合わせ、1000kg/m2の荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置する。恒温槽から取出した試験片を室温まで空冷し、引張り試験機を用いて100mm/minの速度下で剥離抗力(N/cm)を測定した。剥離抗力が小さいほど剥がしやすく、防着性が高い。評価基準は次の通りであり、剥離抗力が2N/cm未満の場合を合格とした。
剥離抗力が1N/cm以下:防着性は非常に良好(容易に未加硫ゴム同士を剥がすことができる、指標は◎)
剥離抗力が1N/cm超2N/cm未満:防着性は良好(負荷なく未加硫ゴム同士を剥がすことができる、指標は○)
剥離抗力が2N/cm以上3N/cm以下:防着性は不良(未加硫ゴム同士を剥がす時の負荷が大きく、防着性が低い、指標は△)
剥離抗力が3N/cm超:防着性が非常に不良(ゴム同士が密着して剥離が困難である。防着性が非常に低い、指標は×)
【0050】
[崩壊性]
未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散液を濃縮乾固し、10mm角の乾燥固化物を作製した。各乾燥固化物についてデュロメーターで硬さを測定し、数値が70未満の場合を合格とした。
数値が60未満:崩壊性は非常に良好(乾燥固化物は容易に崩壊する、指標は◎)
数値が60以上70未満:崩壊性は良好(乾燥固化物は崩壊する、指標は○)
数値が70以上80未満:崩壊性は不良(乾燥固化物はやや崩壊し難い、指標は△)
数値が80以上または測定不可:崩壊性は非常に不良(乾燥固化物は崩壊しにくい、指標は×)
【0051】
(実施例1)
ベントナイト1 20g、ステアリン酸亜鉛60g、POE(3)トリデシルエーテル20gを均一に混合して、未加硫ゴム用防着剤を得た。
次いで、水道水294gに上記防着剤組成物を6g加え、水中に均一分散させて、未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散液を得た。得られた水分散液を用いて、防着性、脱落防止性を評価した。評価の結果は表1に示すとおりで、防着性、崩壊性に優れた。
【0052】
(実施例2~16)
実施例2~16では、表1および2に示すように組成を変更した以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散液を得て、評価した。評価の結果は表1および2に示す。
(比較例1)
ベントナイト5 20g、ステアリン酸亜鉛60g、POE(3)トリデシルエーテル20gを均一に混合して、未加硫ゴム用防着剤を得た。
次いで、水道水294gに上記防着剤組成物を6g加え、水中に均一分散させて、未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散液を得た。得られた水分散液を用いて、防着性、崩壊性を評価した。評価の結果は表3に示すとおりで、防着性が不良であった。
【0053】
(比較例2~9)
比較例2~9では、表3に示すように組成を変更した以外は、比較例1と同様にして未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散液を得て評価した。その結果を表3にそれぞれ示す。
上記実施例及び比較例において、POE(m)とはポリオキシエチレン(オキシエチレンの繰返し単位数:m)を意味する。POP(n)とはポリオキシプロピレン(オキシプロピレンの繰返し単位数:n)を意味する。
また、使用した珪酸塩に含有する鉄化合物の種類と鉄化合物の珪酸塩に対する重量割合は以下の通りである。
ベントナイト1:酸化鉄が0.1重量%、珪酸塩が99.9重量%
ベントナイト2:酸化鉄が0.5重量%、珪酸塩が99.5重量%
ベントナイト3:酸化鉄及び硫化鉄が1重量%、珪酸塩が99重量%
ベントナイト4:酸化鉄及び硫化鉄が2重量%、珪酸塩が98重量%
カオリン:酸化鉄が0.1重量%、珪酸塩が99.9重量%
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
表1および2からわかるように、実施例1~16の未加硫ゴム用防着剤組成物は、無機成分と界面活性剤と金属石鹸及び/又はワックスを含有する未加硫ゴム用防着剤組成物であって、前記無機成分が、珪酸塩と、酸化鉄及び硫化鉄から選ばれる少なくとも1種とを必須に含み、前記未加硫ゴム用防着剤組成物を100重量部としたときに、前記珪酸塩が10~35重量部であって、前記珪酸塩、前記酸化鉄及び前記硫化鉄の合計に対する前記酸化鉄及び前記硫化鉄の重量割合の合計が2重量%未満であって、前記界面活性剤がHLB3~13であるノニオン界面活性剤を含むために、本願の課題である、防着性と崩壊性の両性能を満たす。
一方、表3からわかるように、珪酸塩、前記酸化鉄及び前記硫化鉄の合計に対する酸化鉄及び硫化鉄の重量割合の合計が2重量%以上の場合(比較例1及び2)、珪酸塩がない場合(比較例3及び4)、金属石鹸及びワックスがない場合(比較例5)、ノニオン界面活性剤がない場合(比較例6及び7)、ノニオン界面活性剤のHLBが3~13でない場合(比較例8及び9)には、本願の課題である、防着性または崩壊性のいずれか一つが満たされない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、未加硫ゴム製品の生産加工工程に用いられ、未加硫ゴムを次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵する場合にゴムの密着を防止することができる。その際、防着剤の乾燥固化物の崩壊性が良好であり、ゴム製品の不良の低減が可能となる。