(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 U
H02M3/28 V
(21)【出願番号】P 2020172778
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 佑介
(72)【発明者】
【氏名】馬場 俊之
(72)【発明者】
【氏名】真木 康臣
(72)【発明者】
【氏名】野崎 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 常仁
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-88043(JP,A)
【文献】特開2001-78449(JP,A)
【文献】特開2016-1980(JP,A)
【文献】特開2019-83658(JP,A)
【文献】特許第6569839(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力を直流電力に変換して出力するチョッパと、
前記チョッパの直流出力側に接続される上アームを構成するスイッチング素子と下アームを構成するスイッチング素子と、二直列に接続される複数の共振コンデンサとを有し、前記チョッパが出力した直流電力を交流電力に変換する
共振インバータ
と、
一次巻線が前記
上アームを構成するスイッチング素子と下アームを構成するスイッチング素子との中点と前記
二直列の共振コンデンサの中点
とに接続されて前記インバータの交流電力を変換する複数の高周波変圧器と、
前記複数の高周波変圧器の二次巻線から供給される交流電力を直流電力に変換する複数の整流器と、
前記複数の整流器のうちいずれかの出力電圧を検出する一または複数の電圧検出器と、
前記電圧検出器の出力に基づいて前記直流電力の出力電圧が所定の電圧値となるように前記チョッパを制御する制御装置と、
を備え、
前記インバータを構成しているスイッチング素子がオンする期間を、前記複数の高周波変圧器の一次巻線に流れる共振電流の導通期間よりも長くする、
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記電圧検出器の検出値に基づいて、特定の周波数帯のリプル電圧を抽出し、前記直流電力の出力電圧に含まれる前記リプル電圧を低減するように前記チョッパを制御する、
請求項
1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記複数の整流器のうち、複数の整流器の出力電圧をそれぞれ検出する複数の電圧検出器を備え、
前記制御装置は、複数の前記電圧検出器の検出値に基づいて、それぞれ特定の周波数帯のリプル電圧を抽出し、前記直流電力の出力電圧に含まれる前記リプル電圧を低減するように前記チョッパを制御する、
請求項
1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記直流電力の出力電流に含まれるリプル電流を検出する電流検出器を備え、
前記制御装置は、前記電流検出器により検出されたリプル電流に基づいて、特定の周波数帯のリプル電流を抽出し、前記直流電力の出力電圧に含まれるリプル電圧を低減するように前記チョッパを制御する、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧の電圧系統から低圧の負荷に電力を供給する場合、電圧値の変換だけでなく、変圧器(絶縁トランス)による絶縁が必要となる。絶縁トランスを用いた電力変換装置では、直流電力を交流電力に変換して絶縁トランスの一次側に入力し、二次側の出力を整流することで再度直流電力に変換する。絶縁トランスに入力する交流電力を高周波化するほど、絶縁トランスを小型化でき、システムの小型化が可能となる。
高周波絶縁方式の電力変換装置の一つの構成として、電源回路から供給される電力を所望の直流電力に変換するチョッパと、チョッパの直流電力を高周波数の交流電力に変換するインバータと、インバータから供給される高周波数の交流電流により励磁される高周波変圧器(絶縁トランス)と、高周波の交流電力を直流電力に変換する整流器を備える。また、回路上の静電容量とインダクタンスによる共振動作を利用した共振回路を適用することによって、インバータのスイッチング損失を大幅に低減でき、インバータの高周波スイッチングが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電力変換装置のシステムによっては、定格電圧が異なる複数の負荷があることで、複数系統の異なる電圧の出力が求められる場合がある。それに対して、電力変換装置を複数台設けると、システムの大型化、高コスト化となるという問題点があった。
また一台の電力変換装置で複数系統の出力電圧を制御する場合、制御系の複雑化や共振回路の電流遮断によるインバータの損失増加やサージ電圧の発生の虞があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、一台で複数系統の異なる電圧を簡易な制御によって出力可能であり、かつ、インバータの電流遮断を回避することが可能な高周波絶縁方式の電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る電力変換装置は、電源からの電力を直流電力に変換して出力するチョッパと、チョッパの直流出力側に接続される上アームを構成するスイッチング素子と下アームを構成するスイッチング素子と、二直列に接続される複数の共振コンデンサとを有し、チョッパが出力した直流電力を交流電力に変換する共振インバータと、一次巻線が上アームを構成するスイッチング素子と下アームを構成するスイッチング素子との中点と二直列の共振コンデンサの中点とに接続されてインバータの交流電力を変換する複数の高周波変圧器と、複数の高周波変圧器の二次巻線から供給される交流電力を直流電力に変換する複数の整流器と、複数の整流器のうちいずれかの出力電圧を検出する一または複数の電圧検出器と、電圧検出器の出力に基づいて直流電力の出力電圧が所定の電圧値となるようにチョッパを制御する制御装置と、を備え、インバータを構成しているスイッチング素子がオンする期間を、複数の高周波変圧器の一次巻線に流れる共振電流の導通期間よりも長くする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る電力変換装置の共振インバータの上アームのオン期間の電流経路の説明図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る電力変換装置の共振インバータの下アームのオン期間の電流経路の説明図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る電力変換装置の共振インバータの上アームおよび下アームオン期間の電流波形の説明図である。
【
図5】
図5は、従来のチョッパの制御の説明図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る電力変換装置の各部の電圧の説明図である。
【
図7】
図7は、リプル電圧の発生を抑制する第1実施形態に係る電力変換装置のチョッパの制御を説明する図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る電力変換装置のチョッパ制御の説明図である。
【
図10】
図10は、第3の実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る電力変換装置のチョッパ制御の説明図である。
【
図12】
図12は、第4実施形態に係る電力変換装置のチョッパ制御の説明図である。
【
図13】
図13は、第4の実施形態に係る電力変換装置のチョッパの制御の説明である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
一次側と二次側との絶縁を確保するために、電磁結合する一対の巻線(コイル)を備える変圧器を用いて、一次側と二次側とを絶縁する変圧器が知られている。
実施形態の電力変換システム100は、変圧器を有する電力変換装置1と、電源装置2と、を備えている。
【0008】
ところで、変圧器は、励磁周波数が低くなる程大型化する。例えば、商用電源の50Hz/60Hzの周波数に対応する励磁周波数が設定された変圧器では、大型になる。そこで、本実施形態の電力変換装置1は、高周波変圧器を用いることにより、一次側と二次側とを絶縁し、且つ小型化を実現している。
【0009】
ここで、電力変換装置1の構成について詳細に説明する。
電力変換装置1は、共振インバータ11と、第1ダイオード整流器12と、第2ダイオード整流器13と、第1高周波変圧器21と、第2高周波変圧器22と、チョッパ31と、電力変換装置1の入力系統の入力端子TIと、電力変換装置1の第1出力系統の出力端子TO1と、電力変換装置1の第2出力系統の出力端子TO2と、出力端子TO1の電圧を検出する電圧検出器51と、電圧検出器51の電圧検出信号DS51が入力されて共振インバータ11及びチョッパ31を制御する制御装置41と、を備えている。
【0010】
入力端子TIは、電源2A、変圧器2B及び整流器2Cを有する電源回路2と接続されている。
ここで、整流器2Cがダイオードブリッジで構成される場合には入力端子TIの電圧が変動するため、電源回路2から入力された電力をチョッパ31で所定の電圧の直流電力に変換して共振インバータ11に出力することで、電圧変動を抑制している。
【0011】
共振インバータ11は、チョッパ31から供給される直流電力を用いて、第1高周波変圧器21および第2高周波変圧器22に交流電力を供給する。共振インバータ11は、例えば、共振方式単相ハーフブリッジインバータとして構成される。
【0012】
共振インバータ11は、フィルタコンデンサC1と、第1スイッチングトランジスタS1と、第2スイッチングトランジスタS2と、第1共振コンデンサRC1と、第2共振コンデンサRC2と、第3共振コンデンサRC3と、第4共振コンデンサRC4と、を備えている。
【0013】
第1スイッチングトランジスタS1と第2スイッチングトランジスタS2との中点には、第1高周波変圧器21の一次巻線が接続されている。同様に二直列の第1共振コンデンサRC1と第2共振コンデンサRC2との中点には、第1高周波変圧器21の一次巻線が接続されている。
【0014】
そして、共振インバータ11は、制御装置41の制御に基づいて、第1スイッチングトランジスタS1及び第2スイッチングトランジスタS2を交互にオンオフ制御することにより、第1高周波変圧器21に交流電力を供給する。
【0015】
第1スイッチングトランジスタS1と第2スイッチングトランジスタS2と、の中点には、第2高周波変圧器22の一次巻線が接続されている。同様に二直列の第3共振コンデンサRC3と第4の振コンデンサRC4と、の中点には、第2高周波変圧器22の一次巻線が接続されている。
【0016】
そして、共振インバータ11は、制御装置41の制御に基づいて、スイッチングトランジスタS1及び第2スイッチングトランジスタS2を交互にオンオフ制御することにより、第2高周波変圧器22に交流電力を供給する。
【0017】
以下の説明においては、共振インバータ11の第1スイッチングトランジスタS1側を、共振インバータ11の上アームとする。また、共振インバータ11の第2スイッチングトランジスタS2側を、共振インバータ11の下アームとする。
【0018】
第1高周波変圧器21は、磁束を発生させる一次側の巻線(一次巻線)と、一次巻線と絶縁され、且つ一次巻線に生じた磁束により励磁される二次側の巻線(二次巻線)とを有する絶縁トランスとして構成されている。
この第1高周波変圧器21の一次巻線に共振インバータ11から交流電流が供給された場合、一次巻線に磁束が生じる。一次巻線に生じた磁束は、二次巻線に誘導電流を発生させる。これにより、第1高周波変圧器21は、一次側から入力された交流電流に応じた電力を二次側に供給する。
【0019】
ダイオード整流器12は、第1高周波変圧器21の二次巻線に生じた電力を整流する回路であり、
図1においては、複数のダイオードが組み合わされたダイオードブリッジ(整流ブリッジ)と、フィルタコンデンサ21と、を備えている。ここで、フィルタコンデンサC21は、ダイオード整流器12で整流した直流電圧の平滑化を行う。
【0020】
またリアクトル23は、ダイオード整流器12で整流した直流電流を平滑化する。
フィルタコンデンサC22は、出力端子TO1における電圧を安定化する。
【0021】
第2高周波変圧器22は、磁束を発生させる一次側の巻線(一次巻線)と、一次巻線と絶縁され、且つ一次巻線に生じた磁束により励磁される二次側の巻線(二次巻線)とを有する絶縁トランスである。第2高周波変圧器22の一次巻線に共振インバータ11から交流電流が供給された場合、一次巻線に磁束が生じる。一次巻線に生じた磁束は、二次巻線に誘導電流を発生させる。これにより、第2高周波変圧器22は、一次側から入力された交流電流に応じて、二次側に電力を供給する。
【0022】
ダイオード整流器13は、第2高周波変圧器22の二次巻線に生じた電力を整流する回路であり、例えば、複数のダイオードが組み合わされたダイオードブリッジ(整流ブリッジ)と、フィルタコンデンサC31と、を備えている。ここで、フィルタコンデンサC31は、ダイオード整流器13で整流した直流電圧を平滑化する。
【0023】
またリアクトル24は、ダイオード整流器13で整流した直流電流を平滑化する。
フィルタコンデンサC32は出力端子TO2の電圧を安定化する。
出力端子TO1及び出力端子TO2からそれぞれ出力された直流電力は、直流負荷に電力を直接供給し、あるいは、図示されないインバータ等の変換器によって電圧を変換して負荷に電力を供給する。
【0024】
この場合において、電圧検出器51は、出力端子TO1の出力電圧値を検出し、制御装置41に電圧検出信号DS51として入力する。
【0025】
これにより制御装置41は、電圧検出信号DS51に基づいて、共振インバータ11及びチョッパ31を制御する。
この場合において、制御装置41は、例えば、パルス信号を生成する論理回路として構成される。あるいは、制御装置41は、演算処理を実行する演算素子(コンピュータ)であるマイクロプロセッサと、プログラム及びプログラムで用いられるデータなどを記憶するメモリとを備え、マイクロプロセッサがプログラムを実行することにより、パルス信号を生成する構成を採ることも可能である。
【0026】
制御装置41は、出力端子TO1の出力電圧を所定の電圧値となるようにチョッパ31の通流率を制御する。また本実施形態においては、制御装置41は、共振インバータ11の上アームと下アームの通流率、すなわち、各アームのオン期間を一定として制御を行っている。
【0027】
この場合、出力端子TO2の出力電圧が一定とならずに多少変動することとなるが、インバータなどの変換器が出力端子TO2に接続されるシステムでは、出力電圧の電圧変動が可制御範囲内にあれば問題ない。
【0028】
以上の説明は、電力変換装置の出力が二系統の場合であったが、さらに第1共振コンデンサRC1及び第2共振コンデンサRC2と同様に、フィルタコンデンサC1と並列に直列に接続された一対の共振コンデンサと、高周波変圧器と、を設けることにより三系統以上の場合も同様の構成とすることが可能である。
【0029】
次に第1実施形態の動作を説明する。
図2は、第1実施形態に係る電力変換装置の共振インバータの上アームのオン期間の電流経路の説明図である。
【0030】
図2に示すように、第1共振コンデンサRC1、第2共振コンデンサRC2、フィルタコンデンサC1、共振インバータ11の第1スイッチングトランジスタS1(上アーム)、第1高周波変圧器21及び第1ダイオード整流器12が共振回路を形成している。
【0031】
このとき、第1高周波変圧器21に流れる共振電流の共振周波数に寄与する回路定数は、第1共振コンデンサRC1および第2共振コンデンサRC2の静電容量と、第1高周波変圧器21の漏れインダクタンスおよび電流経路の導体インダクタンスが支配的となる。
【0032】
同様に第3共振コンデンサRC3および第4共振コンデンサRC4、フィルタコンデンサC1、共振インバータ11の第1スイッチングトランジスタS1(上アーム)、第2高周波変圧器22、第2ダイオード整流器13が共振回路を形成している。
【0033】
このとき、第2高周波変圧器22に流れる共振電流の共振周波数に寄与する回路定数は、第3共振コンデンサRC3および第4共振コンデンサRC4の静電容量と、第2高周波変圧器22の漏れインダクタンスおよび電流経路の導体インダクタンスが支配的となる。
【0034】
図3は、第1実施形態に係る電力変換装置の共振インバータの下アームのオン期間の電流経路の説明図である。
【0035】
第1共振コンデンサRC1および第2共振コンデンサRC2、フィルタコンデンサC1、共振インバータ11の第2スイッチングトランジスタS2(下アーム)、第1高周波変圧器21、第1ダイオード整流器12が共振回路を形成している。
【0036】
このとき、第1高周波変圧器21に流れる共振電流の共振周波数に寄与する回路定数は、第1共振コンデンサRC1および第2共振コンデンサRC2の静電容量と、第1高周波変圧器21の漏れインダクタンスおよび電流経路の導体インダクタンスが支配的となる。
【0037】
同様に第3共振コンデンサRC3および第4共振コンデンサRC4、フィルタコンデンサC1、共振インバータ11の第2スイッチングトランジスタS2(下アーム)、第2高周波変圧器22、第2ダイオード整流器13が共振回路を形成している。
【0038】
このとき、第2高周波変圧器22に流れる共振電流の共振周波数に寄与する回路定数は、第3共振コンデンサRC3および第4共振コンデンサRC4の静電容量と、第2高周波変圧器22の漏れインダクタンスおよび電流経路の導体インダクタンスが支配的となる。
【0039】
図2及び
図3に示したように、電流経路には、ダイオード整流器12、13が存在する。このため、共振電流の極性が反転するとダイオード極性と反対になるため、共振電流が0に達すると共振電流が流れなくなる。
【0040】
また、第1高周波変圧器21に流れる共振電流と第2高周波変圧器22に流れる共振電流は、共振インバータ11と共振インバータのフィルタコンデンサC1でのみ電流経路が重なっているが、共振周波数に寄与する共振コンデンサと高周波変圧器が分離されている。
このため、共振動作の相互干渉は無視でき、共振電流の導通期間はそれぞれ一定とみなせる。
【0041】
図4は、第1実施形態に係る電力変換装置の共振インバータの上アームおよび下アームオン期間の電流波形の説明図である。
以下の説明においては、第1高周波変圧器21の一次巻線に流れる共振電流の方が第2高周波変圧器22の一次巻線に流れる共振電流よりも導通期間は長いものとする。
【0042】
共振インバータ11の出力電流は、第1高周波変圧器21の一次巻線に流れる共振電流と、第2高周波変圧器22の一次巻線に流れる共振電流の和となる。
【0043】
従って、共振インバータ11の出力電流の導通期間は、導通期間の長い変圧器21の一次巻線に流れる共振電流で決まる。
【0044】
このため、共振インバータ11の第1スイッチングトランジスタS1(上アーム)のオン期間および第2スイッチングトランジスタS2(下アーム)のオン期間を、変圧器に流れる全ての共振電流の導通期間よりも長くすれば、共振インバータ11での電流遮断は発生しない。
【0045】
また共振インバータ11の第1スイッチングトランジスタS1(上アーム)のオン期間および第2スイッチングトランジスタS2(下アーム)のオン期間を共振電流の導通期間に近い値に固定する。
これにより、共振電流のRMS値が低減し、回路の損失を低減することができる。
なお、共振インバータ11のオン期間を固定すると制御に用いることができないため、前述のように、チョッパ31で出力端子TO1の出力電圧を所定の電圧値となるように通流率を制御している。
【0046】
ここで、従来のチョッパ制御について説明する。
図5は、従来のチョッパの制御の説明図である。
図5においては、理解の容易のため、第1実施形態と同様の符号を付するものとする。
従来のチョッパ制御においては、電圧指令値と電圧検出器51の出力した電圧検出信号DS51の値の差分を、比例積分制御を行うPI制御部61に入力し、その演算結果を三角波比較62に入力することで、チョッパ31のゲート信号GSが得られる。
【0047】
ところで、制御装置41の性能の制約等でPI制御部のゲインを大きくできない場合、出力端子TO1の平均電圧は一定にできるが、周期的に変動するリプル電圧は抑制できず、電圧変動の仕様値を超えるおそれがある。
【0048】
図6は、第1実施形態に係る電力変換装置の各部の電圧の説明図である。
例えば、出力端子TO2に単相インバータが接続されて、50Hzまたは60Hzの単相交流電圧を出力する場合、
図6に示すように、交流電力は出力交流電圧の2倍の周波数である100Hzまたは120Hzで脈動する。
【0049】
この電力脈動の影響で、出力端子TO2の出力電圧VTO2にも100Hzまたは120Hzのリプル電圧が発生する可能性がある。また、電力脈動は、電力供給源である共振インバータ11のフィルタコンデンサC1の電圧VC1にもリプル電圧を発生させ、結果として出力端子TO1の出力電圧VTO1にもリプル電圧が発生することになる。
そこで、本第1実施形態においては、リプル電圧の発生を抑制している。
【0050】
図7は、リプル電圧の発生を抑制する第1実施形態に係る電力変換装置のチョッパの制御を説明する図である。
リプル電圧抽出部63は、電圧検出器51で検出した出力端子TO1の電圧に相当する電圧検出信号DS51に含まれる特定のリプル電圧周波数帯のリプル電圧を抽出する。
【0051】
この場合において、リプル電圧の抽出の方法としては、バンドパスフィルタやFFTなどを用いることが挙げられる。
そして、リプル電圧抑制制御部64は、抽出されたリプル電圧値を入力とし、リプル電圧が低減するようにリプル電圧周波数帯の出力値を演算し、加算器65に出力し、PI制御61の出力値に加算する。
【0052】
この結果、三角波比較部62に入力される実効的な電圧指令値は、リプル電圧の影響を抑制するものとなる。
したがって、本第1実施形態においては、三角波比較部62から出力されるチョッパ31のゲート信号GSは、電力脈動に起因するリプル電圧の発生を抑制するものとなる。
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、出力端子TO2の電圧VTO2、フィルタコンデンサC1の電圧VC1及び出力端子TO1の出力電圧VTO1のリプル電圧を抑制しつつ電力変換を行うことができる。
【0053】
[2]第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。
図8は、第2実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
図8において、
図1の第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
本第2実施形態が、第1実施形態と異なる点は、出力端子TO2の電圧VTO2を検出して電圧検出信号DS52を出力する電圧検出器52を設けた点である。
【0054】
図9は、第2実施形態に係る電力変換装置のチョッパ制御の説明図である。
第1実施形態において、
図6により説明した通り、出力端子TO2でもリプル電圧が発生する虞がある。このため、本第2実施形態においては、リプル電圧抽出部63の入力値として、電圧検出器52が出力した電圧検出信号DS52を用いている。
【0055】
リプル電圧抽出部63は、電圧検出器52で検出した出力端子TO2の出力電圧VTO2に相当する電圧検出信号DS52に含まれる特定のリプル電圧周波数帯のリプル電圧を抽出する。
【0056】
そして、リプル電圧抑制制御部64は、抽出されたリプル電圧値を入力とし、リプル電圧が低減するようにリプル電圧周波数帯の出力値を演算し、加算器65に出力し、PI制御61の出力値に加算する。
【0057】
この結果、三角波比較部62に入力される実効的な電圧指令値は、第2出力端子TO2に現れるリプル電圧の影響を抑制するものとなる。
【0058】
したがって、本第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、三角波比較部62から出力されるチョッパ31のゲート信号GSは、第2出力端子TO2の出力電圧VTO2に現れるリプル電圧の影響をより確実に抑制できる。
【0059】
[3]第3実施形態
次に第3実施形態について説明する。
図10は、第3の実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
図10において、
図1の第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
本第3実施形態が、第1実施形態と異なる点は、共振インバータ11のフィルタコンデンサC1の電圧を検出して電圧検出信号DS53を出力する電圧検出器53を追加した点である。
【0060】
図11は、第3実施形態に係る電力変換装置のチョッパ制御の説明図である。
第1実施形態において、
図6により説明した通り、共振インバータ11のフィルタコンデンサC1にもリプル電圧が発生する虞がある。
【0061】
このため、本第3実施形態においては、リプル電圧抽出部63の入力値として、電圧検出器53が出力した電圧検出信号DS53を用いている。
リプル電圧抽出部63は、電圧検出器53で検出した共振インバータ11のフィルタコンデンサC1の出力電圧VC1に相当する電圧検出信号DS53に含まれる特定のリプル電圧周波数帯のリプル電圧を抽出する。
【0062】
そして、リプル電圧抑制制御部64は、抽出されたリプル電圧値を入力とし、リプル電圧が低減するようにリプル電圧周波数帯の出力値を演算し、加算器65に出力し、PI制御61の出力値に加算する。
【0063】
この結果、三角波比較部62に入力される実効的な電圧指令値は、共振インバータ11のフィルタコンデンサC1の出力電圧VC1に現れるリプル電圧の影響を抑制するものとなる。
【0064】
したがって、本第3実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、三角波比較部62から出力されるチョッパ31のゲート信号GSは、共振インバータ11のフィルタコンデンサC1の出力電圧VC1に現れるリプル電圧の影響をより確実に抑制できる。
【0065】
[4]第4実施形態
図12は、第4実施形態に係る電力変換装置のチョッパ制御の説明図である。
図12は、第4の実施形態に係る電力変換装置の概要構成説明図である。
図12において、
図1の第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
【0066】
本第4実施形態が、第1実施形態と異なる点は、第2のリアクトル24の電流を検出して電流検出信号DS54を出力する電流検出器54を追加した点である。
【0067】
図13は、第4の実施形態に係る電力変換装置のチョッパの制御の説明である。
ところで、リプル電圧と同様に、リアクトル24の電流にもリプル電流が発生するが、直流値に対する割合としてはリプル電圧よりもリプル電流の方が大きくなる。またリプル電圧を低減しても電力脈動によってリプル電流は発生する。
【0068】
そこで、本第4実施形態においては、リプル電圧抽出部63は、電圧検出器51で検出した出力端子TO1の電圧に相当する電圧検出信号DS51に含まれる特定のリプル電圧周波数帯のリプル電圧を抽出してリプル電圧抑制制御64の第1の入力値としている。
【0069】
さらに電流検出器54が出力した電流検出信号DS54に基づいて、リプル電流をリプル電流抽出部65で抽出してリプル電圧抑制制御64の第2入力値としている。
これらの結果、リプル電圧抑制制御部64は、抽出されたリプル電圧値を第1入力とし、抽出されたリプル電流値を第2入力とし、リプル電圧が低減するようにリプル電圧周波数帯の出力値を演算し、加算器65に出力し、PI制御61の出力値に加算する。
【0070】
この結果、三角波比較部62に入力される実効的な電圧指令値は、リプル電流も考慮することで、出力端子TO2の電圧VTO2、フィルタコンデンサC1の電圧VC1及び出力端子TO1の出力電圧VTO1に現れるリプル電圧の影響を高い精度で抑制するものとなる。
したがって、本第4実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、三角波比較部62から出力されるチョッパ31のゲート信号GSは、リプル電流の影響を考慮したものとなり、より確実にリプル電圧の発生を抑制できる。
【0071】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0072】
例えば、電源からの電力を直流電力に変換して出力するチョッパと、前記チョッパが出力した直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの直流入力部に二直列に接続される複数の共振コンデンサと、一次巻線が前記インバータと前記複数の共振コンデンサの中点に接続されて前記インバータの交流電力を変換する複数の高周波変圧器と、前記複数の高周波変圧器の二次巻線から供給される交流電力を直流電力に変換する複数の整流器と、を備えた電力変換装置で実行される方法であって、前記複数の整流器のうちいずれかの出力電圧を検出する過程と、前記電圧検出の結果に基づいて前記直流電力の出力電圧が所定の電圧値となるように前記チョッパを制御する過程と、を備えるようにしてもよい。
【0073】
また、電源からの電力を直流電力に変換して出力するチョッパと、前記チョッパが出力した直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの直流入力部に二直列に接続される複数の共振コンデンサと、一次巻線が前記インバータと前記複数の共振コンデンサの中点に接続されて前記インバータの交流電力を変換する複数の高周波変圧器と、前記複数の高周波変圧器の二次巻線から供給される交流電力を直流電力に変換する複数の整流器と、を備えた電力変換装置をコンピュータにより制御するためのプログラムであって、コンピュータを、前記複数の整流器のうちいずれかの出力電圧を検出する手段と、電圧検出の結果に基づいて直流電力の出力電圧が所定の電圧値となるようにチョッパを制御する手段と、して機能させてもよい。
【符号の説明】
【0074】
100…電力変換システム
1…電力変換装置
2…電源回路
11…共振インバータ
12…第1ダイオード整流器
13…第2ダイオード整流器
21…第1高周波変圧器
22…第2高周波変圧器
23…第1リアクトル
24…第2リアクトル
31…チョッパ
41…制御装置
51~53…電圧検出器
54…電流検出器
61…PI制御部
62…三角波比較部
63…リプル電圧抽出部
64…リプル電圧抑制制御部
65…リプル電流抽出部
C1、C21、C22、C31、C32…フィルタコンデンサ
RC1~RC4…第1共振コンデンサ~第4共振コンデンサ
S1…第1スイッチングトランジスタ(上アーム)
S2…第2スイッチングトランジスタ(下アーム)
TI…入力端子
TO1,TO2…出力端子。