IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝テック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-情報処理装置及び情報処理プログラム 図1
  • 特許-情報処理装置及び情報処理プログラム 図2
  • 特許-情報処理装置及び情報処理プログラム 図3
  • 特許-情報処理装置及び情報処理プログラム 図4
  • 特許-情報処理装置及び情報処理プログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/70 20170101AFI20241209BHJP
   G06T 11/60 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G06T7/70 Z
G06T11/60 300
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020175332
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066793
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 功一
【審査官】菊池 伸郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-327938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/70-7/77
G06T 11/60
G06Q 10/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの測定位置から対象空間内に配置される物体までの距離及び方向を表す複数の距離点データを含んだ点群データを、それぞれ異なる複数の測定位置のそれぞれに関して取得する第1の取得部と、
前記第1の取得部により取得される点群データに関する測定位置を表す位置データを取得する第2の取得部と、
前記第2の取得部により取得された位置データに関する誤差範囲を表す範囲データを取得する第3の取得部と、
前記第1の取得部により取得された点群データに含まれる距離点データで特定される位置の誤差を、当該距離点データを含む点群データに関して前記第2の取得部により取得された位置データに関して前記第3の取得部により取得された範囲データに基づいて算出する算出部と、
予め定められた条件に合致する誤差が前記算出部により算出された複数の位置に基づいて、前記物体の前記対象空間内での配置状況を表した3次元データを生成する生成部と、
を具備した情報処理装置。
【請求項2】
前記第1の取得部は、1つの測定位置から複数の方向についての物体までの距離をそれぞれ測定する測定器である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第2の取得部は、前記測定器が物体までの距離を測定する際の前記測定器の位置を測定位置として検出する検出部である、
をさらに備える請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第3の取得部は、前記検出部により検出される位置の誤差範囲を表すものとして前記範囲データを生成する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
1つの測定位置から対象空間内に配置される物体までの距離及び方向を表す複数の距離点データを含んだ点群データを、それぞれ異なる複数の測定位置のそれぞれに関して取得する第1の取得部と、
前記第1の取得部により取得される点群データに関する測定位置を表す位置データを取得する第2の取得部と、
前記第2の取得部により取得された位置データに関する誤差範囲を表す範囲データを取得する第3の取得部と、
ともに情報処理装置に備えられるコンピュータを、
前記第1の取得部により取得された点群データに含まれる距離点データで特定される位置の誤差を、当該距離点データを含む点群データに関して前記第2の取得部により取得された位置データに関して前記第3の取得部により取得された範囲データに基づいて算出する算出部と、
予め定められた条件に合致する誤差が前記算出部により算出された複数の位置に基づいて、前記物体の前記対象空間内での配置状況を表した3次元データを生成する生成部と、
して機能させるための情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体が位置する3次元の対象空間に関する複数の点群データから、前記物体の存在状況を表した3次元データを生成する技術は既に知られている。ここで点群データは、1つの測定位置から、対象空間内に位置する物体の測定位置側に露出している表面に位置する複数の点までの距離及び方向をそれぞれ表す複数の距離点データの集合である。
このような技術では、点群データに含まれる距離点データの数が多いほど、また点群データの数が多いほど、生成できる3次元データの精度が向上する。
しかしながら距離点データの数が多いほど、3次元データの生成に係る情報処理の処理量が増大してしまう。
このような事情から、3次元データの生成に係る処理量を抑えながらも、精度良く3次元データを生成できることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-237848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、3次元データの生成に係る処理量を抑えながらも、精度良く3次元データを生成できる情報処理装置及び情報処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の情報処理装置は、第1の取得部、第2の取得部、第3の取得部、算出部及び生成部を備える。第1の取得部は、1つの測定位置から対象空間内に配置される物体までの距離及び方向を表す複数の距離点データを含んだ点群データを、それぞれ異なる複数の測定位置のそれぞれに関して取得する。第2の取得部は、第1の取得部により取得される点群データに関する測定位置を表す位置データを取得する。第3の取得部は、第2の取得部により取得された位置データに関する誤差範囲を表す範囲データを取得する。算出部は、第1の取得部により取得された点群データに含まれる距離点データで特定される位置の誤差を、当該距離点データを含む点群データに関して第2の取得部により取得された位置データに関して第3の取得部により取得された範囲データに基づいて算出する。生成部は、予め定められた条件に合致する誤差が算出部により算出された複数の位置に基づいて、物体の前記対象空間内での配置状況を表した3次元データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係る3次元測定装置の要部回路構成を示すブロック図。
図2図1に示される3次元測定装置の外観を示す斜視図。
図3】2次元地図データの一例を示す図。
図4図1に示されるプロセッサによる情報処理のフローチャート。
図5】誤差範囲の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態の一例について図面を用いて説明する。なお、本実施の形態では、情報処理装置としての機能を備えた3次元測定装置を例に説明する。
本実施形態の3次元測定装置は、倉庫又は店舗内の空間等における物体の存在状況を検出し、それを3次元的に表した3次元データを生成するものである。
【0008】
図1は本実施形態に係る3次元測定装置100の要部回路構成を示すブロック図である。図2は3次元測定装置100の外観を示す斜視図である。図1及び図2に示される共通の要素には共通の符号を付している。なお図2は、陳列棚の棚板BOに陳列されている商品COの陳列状況を表した3次元データを生成するために3次元測定装置100が用いられる状況を表している。
3次元測定装置100は図1に示すように、レーザレンジファインダ(以下、LRFと称する)1、エンコーダ2、地図メモリ3、位置検出ユニット4、駆動機構5、移動コントローラ6、距離センサ7及び情報処理ユニット8を備える。
また3次元測定装置100は図2に示すように、台車9及び筐体10を備える。台車9は、車輪91を備え、走行可能である。
【0009】
LRF1は、台車9の進行方向の前方側に取り付けられている。そしてLRF1は、台車9の前方に存在する物体までの距離を測定する。
エンコーダ2は、車輪91の1つに取り付けられている。エンコーダ2は、車輪の回転量を測定する。
【0010】
地図メモリ3は、筐体10に収容されている。地図メモリ3は、3次元データの生成の対象空間に定常的に存在し、LRF1にて検出され得る物体の存在状況を2次元的に表した2次元地図データを記憶している。2次元地図データは、対象空間を形成する壁面及び柱面、あるいは対象空間内に固定的に配置される棚などを表すものとして、予め生成されて地図メモリ3に書き込まれる。
図3は2次元地図データの一例を示す図である。
【0011】
位置検出ユニット4は、筐体10に収容されている。位置検出ユニット4は、LRF1で測定された距離、エンコーダ2で測定された回転量及び地図メモリ3に記憶された2次元地図データに基づいて、対象空間内での3次元測定装置100の現在位置の2次元座標及び向きを検出し、出力する。位置検出ユニット4は、座標の検出に際して当該座標の信頼度を表すものとして得られる共分散行列を出力する。位置検出ユニット4としては、周知のAMCL(adaptive Monte Carlo localization)ユニットを用いることができる。
【0012】
駆動機構5は、図2では示されないが、例えば台車9に取り付けられる。駆動機構5は、モータ及び操舵機構などを含み、車輪91を回転させるとともに、車輪91の向きを変化させ、3次元測定装置100を移動させる。
移動コントローラ6は、筐体10に収容されている。移動コントローラ6は、位置検出ユニット4で検出された座標及び向きを参照しつつ、予め定められたルートで3次元測定装置100を移動させるように駆動機構5を制御する。
【0013】
距離センサ7は、対象空間内に位置する物体の測定位置側に露出している表面に位置する複数の点までの距離及び向きをそれぞれ計測し、当該距離及び向きを示した距離点データを生成する。そして距離センサ7は、これら複数の距離点データの集合である点群データを出力する。距離センサ7としては、例えば周知のステレオカメラを用いることができる。このような距離センサ7は、1つの測定位置から複数の方向についての物体までの距離をそれぞれ測定する測定器の一例である。そして距離センサ7は、測定によって距離点データを取得しているのであり、第1の取得部に相当する。
【0014】
情報処理ユニット8は、筐体10に収容されている。情報処理ユニット8は、位置検出ユニット4から出力される2次元座標及び向きと共分散行列、ならびに距離センサ7から出力される点群データに基づいて、3次元データを生成するための情報処理を行う。情報処理ユニット8は、プロセッサ81、メインメモリ82、補助記憶ユニット83、インタフェースユニット84及び伝送路85を含む。
【0015】
プロセッサ81、メインメモリ82及び補助記憶ユニット83を伝送路85で接続することによって、上記の情報処理を行うコンピュータを構成する。
プロセッサ81は、上記コンピュータの中枢部分に相当する。プロセッサ81は、オペレーティングシステム、ミドルウェア及びアプリケーションプログラム等の情報処理プログラムに従って、後述する情報処理を実行する。
【0016】
メインメモリ82は、上記コンピュータの主記憶部分に相当する。メインメモリ82は、不揮発性のメモリ領域と揮発性のメモリ領域とを含む。メインメモリ82は、不揮発性のメモリ領域では情報処理プログラムを記憶する。またメインメモリ82は、プロセッサ81が各部を制御するための処理を実行する上で必要なデータを不揮発性又は揮発性のメモリ領域で記憶する場合もある。メインメモリ82は、揮発性のメモリ領域を、プロセッサ81によってデータが適宜書き換えられるワークエリアとして使用する。
【0017】
補助記憶ユニット83は、上記コンピュータの補助記憶部分に相当する。補助記憶ユニット83は、例えばEEPROM(electric erasable programmable read-only memory)である。補助記憶ユニット83は、HDD(hard disc drive)又はSSD(solid state drive)等の周知の別の記憶デバイスであってもよい。補助記憶ユニット83は、プロセッサ81が各種の処理を行う上で使用するデータや、プロセッサ81での処理によって生成されたデータを保存する。補助記憶ユニット83は、情報処理プログラムを記憶する。
【0018】
補助記憶ユニット83が記憶する情報処理プログラムの1つは、3次元データを生成するためのデータ処理のためのアプリケーションプログラム(以下、処理プログラムと称する)PAである。補助記憶ユニット83の記憶領域の一部は、設定値テーブルTA及び点群データベースDAとして利用される。設定値テーブルTAは、3次元データの生成のための各種の設定値を記憶する。設定値テーブルTAが記憶する設定値は、例えば3次元測定装置100の設計者、処理プログラムPAの作成者、あるいは3次元測定装置100の利用者などにより適宜に定められてよい。点群データベースDAは、距離センサ7から出力され、後述のように処理された点群データを蓄積して記憶する。
【0019】
インタフェースユニット84は、位置検出ユニット4から出力される2次元座標及び向きと共分散行列、ならびに距離センサ7から出力される点群データをそれぞれ取り込む。インタフェースユニット84としては、例えばUSB(universal serial bus)用のインタフェースデバイスなどの周知のデバイスを用いることができる。
伝送路85は、アドレスバス、データバス及び制御信号線等を含み、接続された各部の間で授受されるデータ及び制御信号を伝送する。
【0020】
情報処理ユニット8は、例えば汎用のコンピュータ装置を基本ハードウェアとして用いることができる。このときに典型的には、処理プログラムPAが補助記憶ユニット83に記憶されない状態のコンピュータ装置と処理プログラムPAとが個別に利用者に譲渡される。処理プログラムPAの譲渡は、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどのようなリムーバブルな記録媒体に記録して、あるいはネットワークを介したダウンロードにより実現できる。そしてこの場合は、利用者又はメンテナンス作業者などによる操作に応じて、処理プログラムPAが補助記憶ユニット83に書き込まれる。しかしながら、処理プログラムPAが補助記憶ユニット83に記憶された状態のコンピュータ装置が利用者に譲渡されてもよい。
【0021】
次に以上のように構成された3次元測定装置100の動作について説明する。なお、以下に説明する処理の内容は一例であって、一部の処理の順序の変更、一部の処理の省略、あるいは別の処理の追加などは適宜に可能である。
【0022】
3次元測定装置100の利用者は、予め定められたルートの始点に3次元測定装置100を置き、測定開始を指示する。なお、この指示の入力は、例えば3次元測定装置100にユーザインタフェースユニットを設けて、このユーザインタフェースユニットでの予め定められた操作により行われてよい。あるいは上記の指示の入力は、別途の情報通信端末で行われてもよい。この場合は、情報通信端末と通信するための通信デバイスを3次元測定装置100に備えて、上記の指示がなされたことを情報通信端末から通信により3次元測定装置100へと通知する。
【0023】
測定開始が指示されると移動コントローラ6は、3次元測定装置100を予め定められたルートに沿って移動させるように駆動機構5を制御する。このときに移動コントローラ6は具体的には、位置検出ユニット4により検出される2次元座標及び向きが予め定められた遷移を示すように、駆動機構5を制御する。位置検出ユニット4は、3次元測定装置100が移動すると、LRF1で検出される物体までの離間距離と、エンコーダ2で測定された回転量から求まる移動距離とに基づいて3次元測定装置100の移動状況を判定し、それを地図メモリ3に記憶された2次元地図データと照合することで、3次元測定装置100が位置している2次元座標と3次元測定装置100の向きとを検出する。このため、位置検出ユニット4により検出される2次元座標は、3次元測定装置100が位置している実際の2次元座標に対して誤差を含んでいる場合がある。そしてこの誤差は、刻々と変化する。
【0024】
一方、測定開始が指示されるとプロセッサ81は、データ処理プログラムPAに従った情報処理を開始する。
図4はプロセッサ81による情報処理のフローチャートである。
【0025】
ACT11としてプロセッサ81は、位置検出ユニット4が出力する2次元座標を取得する。
ACT12としてプロセッサ81は、予め定められた測定状態であるか否かを確認する。測定状態とは、予め定められた測定位置で予め定められた向きを向いている状態である。そしてプロセッサ81は、測定状態であることを確認できないならばNOと判定し、ACT13へと進む。
ACT13としてプロセッサ81は、ルートの終点に到達したか否かを確認する。そしてプロセッサ81は、終点への到達を確認できないならばNOと判定し、ACT11へと戻る。
かくしてプロセッサ81は、3次元測定装置100の移動に伴って、測定状態となるか、終点に到達するのを待ち受ける。
【0026】
プロセッサ81は、3次元測定装置100が移動するルート上に複数の測定位置が予め定められているならば、その測定位置のいずれかに関する測定状態を示す2次元座標及び向きをACT11で取得したならば、測定状態であると判定する。なおプロセッサ81は、移動距離又は経過時間などに基づいて測定位置への到達と判定してもよい。
かくしてLRF1、エンコーダ2、地図メモリ3及び位置検出ユニット4により測定位置を表す位置データを取得している。距離センサ7は3次元測定装置100に固定的に設けられたものであるから、3次元測定装置100の位置は距離センサ7の位置に相当する。従って、LRF1、エンコーダ2、地図メモリ3及び位置検出ユニット4は、測定器としての距離センサ7の位置を測定位置として検出しているのであり、これらLRF1、エンコーダ2、地図メモリ3及び位置検出ユニット4により検出部が構成され、かつ第2の取得部に相当する。
【0027】
ACT14としてプロセッサ81は、位置検出ユニット4から出力される共分散行列を取得する。
ACT15としてプロセッサ81は、上記の取得した共分散行列に基づいて誤差範囲を算出する。誤差範囲は、3次元測定装置100が予め定められた信頼度で存在し得る範囲である。信頼度は、設定値テーブルTAに含まれる。信頼度は、例えば90%などとすることが想定される。誤差範囲は、典型的にはACT11で取得した座標を中心とした楕円状の範囲として算出される。位置検出ユニット4でのAMCLにより得られた共分散行列に基づいて誤差範囲を算出する処理は周知である。かくしてプロセッサ81は、算出により範囲データとしての誤差範囲を取得している。従って処理プログラムPAに基づく情報処理をプロセッサ81が実行することによって、プロセッサ81を中枢部分とするコンピュータは範囲データを取得する第3の取得部として機能する。
【0028】
図5は誤差範囲の例を示す図である。
図中の曲線CUは、位置検出ユニット4により検出された座標の遷移を2次元地図データが表す2次元地図TM上に表したものである。×状のマークMAは、それぞれ測定位置を示す。楕円ELは、内在するマークMAで示される測定位置に関して算出された誤差範囲を表す。
【0029】
距離センサ7は、図2に一点鎖線で示す方向を中心とする予め定められた視野内を2つのカメラにより撮像し、これにより得られる2つの画像の視差に基づいて、画像内の複数の点に映り込んでいる物体の表面までの距離を測定する。例えば距離センサ7は、640×480画素の画像を撮影して、各画素に関して距離を測定する。つまりこの場合に距離センサ7は、視野内に映り込んだ640×480個の点に関する距離をそれぞれ測定する。距離センサ7は例えば、各点の向きは、その点に対応する画素の画像中央の画素からのずれに応じて一義的に定まる角度だけ図2に一点鎖線で示す方向からずれた方向として測定する。そして距離センサ7は、640×480個の点までの距離及び方向をそれぞれ表す640×480個の距離点データの集合である点群データを出力する。なお、物体が映り込んでいないなどの事情で、画素に関する距離を測定できないことがある。この場合に距離センサ7は、物体が存在しないことを表すものとして、有効な距離点データと区別可能に予め定められた無効データを、距離点データとして点群データに含める。
【0030】
ACT16としてプロセッサ81は、距離センサ7が出力する点群データを取得する。そしてプロセッサ81は、当該の点群データを点群データベースDAに追加する。なおプロセッサ81は、図4に示す情報処理を開始後に最初にACT16を実行する場合には、取得した点群データを含んだ点群データベースDAを新たに生成し、補助記憶ユニット83に書き込む。
【0031】
ACT17としてプロセッサ81は、上記の取得した点群データに含まれる有効な距離点データを1つ選択する。つまりプロセッサ81では、無効データとされている距離点データについては、ここでは選択しない。
ACT18としてプロセッサ81は、選択している距離点データに関する座標変換を行う。つまりプロセッサ81は、選択している距離点データに関する点の位置を表す3次元座標を求める。プロセッサ81は例えば、ACT11で取得した2次元座標が位置検出ユニット4で検出される時の距離センサ7の位置の3次元座標から、選択している距離点データが表す向きに、選択している距離点データが表す距離だけ離れた点の3次元座標を算出する。
【0032】
ACT19としてプロセッサ81は、上記の座標変換により得られた3次元座標についての誤差を算出する。座標変換により得られる3次元座標は、ACT11で取得した2次元座標と3次元測定装置100が実際に位置する2次元座標との間の誤差をそのまま含む。そこでプロセッサ81は例えば、ACT15で算出した誤差範囲に基づいて、座標変換により得られた座標についての誤差を算出する。かくして処理プログラムPAに基づく情報処理をプロセッサ81が実行することによって、プロセッサ81を中枢部分とするコンピュータは判定部として機能する。
【0033】
ACT20としてプロセッサ81は、低誤差状態であるか否かを確認する。プロセッサ81は例えば、ACT19で算出した誤差と設定値テーブルTAに含まれる閾値とを比較し、低誤差状態であるか否かを判定する。より具体的にはプロセッサ81は例えば、誤差が閾値以下であるならば、低誤差状態であると判定する。あるいはプロセッサ81は例えば、誤差が閾値未満であるならば、低誤差状態であると判定するのでもよい。そしてプロセッサ81は、低誤差状態であると判定できたならばACT20にてYESと判定し、ACT21へと進む。
ACT21としてプロセッサ81は、点群データベースDAにおけるACT17にて選択した距離点データを、ACT18で得た3次元座標を表した座標データに書き換える。
【0034】
一方でプロセッサ81は、低誤差状態であると判定できないならばACT20にてNOと判定し、ACT22へと進む。
ACT22としてプロセッサ81は、点群データベースDAにおけるACT17にて選択した距離点データを、無効データに書き換える。
【0035】
プロセッサ81は、ACT21又はACT22を終えると、ACT23へと進む。
ACT23としてプロセッサ81は、ACT16で取得した点群データの中に、まだ選択していない有効な距離点データが有るか否かを確認する。そしてプロセッサ81は、該当の距離点データが有るならばYESと判定し、ACT17以降を前述と同様に繰り返す。ただしプロセッサ81は、ACT17を再度実行するときにおいては、ACT16で取得した点群データの中でまだ選択していない有効な距離点データを選択する。かくしてプロセッサ81は、ACT16で取得した点群データの中の有効な距離点データのそれぞれに関して、ACT18~ACT20と、ACT21又はACT22とを実行し、該当の距離点データを座標データ又は無効データに書き換えてゆく。
【0036】
そしてプロセッサ81は、ACT16で取得した点群データの中の有効な距離点データの全てに関してACT21又はACT22を実行し終えた場合は、ACT23にてNOと判定し、ACT11~ACT13の待受状態に戻る。
かくしてプロセッサ81は、以降の3次元測定装置100の移動に伴って、3次元測定装置100が測定状態となる毎に、ACT14~ACT23の処理を実行し、座標データ及び無効データからなる点群データを点群データベースDAに蓄積してゆく。
【0037】
そしてプロセッサ81は、3次元測定装置100が予め定められたルートの終点に到達し、当該終点として予め定められた2次元座標をACT11にて取得すると、ACT13にてYESと判定し、ACT24へと進む。
ACT24としてプロセッサ81は、3次元地図を作成する。この処理には例えば、点群データベースDAに含まれる多数の座標データから、物体の3次元的な存在状況を表す3次元地図を再構成するための周知の処理を用いることができる。
【0038】
ACT25としてプロセッサ81は、ACT24で生成した3次元地図を表した3次元地図データを、補助記憶ユニット83に保存する。そしてプロセッサ81は、これをもって図4に示す情報処理を終了する。
かくして処理プログラムPAに基づく情報処理をプロセッサ81が実行することによって、プロセッサ81を中枢部分とするコンピュータは生成部として機能する。
【0039】
以上のように3次元測定装置100は、誤差が大きい可能性のある距離点データに基づく座標データは、3次元データの作成のための処理からは除外する。このため、点群データに含まれる全ての距離点データに基づく座標データの全てを3次元データの作成のための処理に用いる場合に比べて、3次元データの作成のために用いるデータ量を低減でき、この結果として3次元データの生成に係る処理量が抑えられる。しかも、距離点データに生じている大きな誤差の影響を受けないことにより、精度良く3次元データを生成できる。
【0040】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
LRF1、エンコーダ2、地図メモリ3、位置検出ユニット4、駆動機構5、移動コントローラ6、距離センサ7及び台車9からなる測定ユニットと、情報処理ユニット8とを別体として構成し、測定ユニットで得られた点群データ及び位置データを、通信又は記憶媒体を介して情報処理ユニット8にて取得するようにしてもよい。この場合は、情報処理ユニット8が情報処理装置に相当し、測定ユニットとの通信を行う通信ユニット又は記憶媒体から点群データ及び位置データを読み出す読出ユニットが、第1の取得部及び第2の取得部として機能する。またこの場合、誤差範囲の算出を位置検出ユニット4又は測定ユニットに備えた処理ユニットにより行って、当該誤差範囲のデータを通信又は記憶媒体を介して情報処理ユニット8にて取得するようにしてもよい。この場合は、測定ユニットとの通信を行う通信ユニット又は記憶媒体から誤差範囲のデータを読み出す読出ユニットが、第3の取得部として機能する。
【0041】
距離及び向きを示した距離点データの集合である点群データと、2次元座標、向き及び共分散行列とのデータ組を複数含んだデータ群を取り込んで、上記データ組のそれぞれに関して図4中のACT15,ACT17~ACT23を実行するようにした情報処理装置として実現することもできる。あるいは、距離及び向きを示した距離点データの集合である点群データと、2次元座標、向き及び誤差範囲とのデータ組を複数含んだデータ群を取り込んで、上記データ組のそれぞれに関して図4中のACT17~ACT23を実行するようにした情報処理装置として実現することもできる。
【0042】
情報処理によりプロセッサ81が実現する各機能は、その一部又は全てをロジック回路などのようなプログラムに基づかない情報処理を実行するハードウェアにより実現することも可能である。また上記の各機能のそれぞれは、上記のロジック回路などのハードウェアにソフトウェア制御を組み合わせて実現することも可能である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1] 1つの測定位置から対象空間内に配置される物体までの距離及び方向を表す複数の距離点データを含んだ点群データを、それぞれ異なる複数の測定位置のそれぞれに関して取得する第1の取得部と、
前記第1の取得部により取得される点群データに関する測定位置を表す位置データを取得する第2の取得部と、
前記第2の取得部により取得された位置データに関する誤差範囲を表す範囲データを取得する第3の取得部と、
前記第1の取得部により取得された点群データに含まれる距離点データで特定される位置の誤差を、当該距離点データを含む点群データに関して前記第2の取得部により取得された位置データに関して前記第3の取得部により取得された範囲データに基づいて判定する判定部と、
予め定められた条件に合致する誤差が前記判定部により判定された複数の位置に基づいて、前記物体の前記対象空間内での配置状況を表した3次元データを生成する生成部と、
を具備した情報処理装置。
[付記2] 前記第1の取得部は、1つの測定位置から複数の方向についての物体までの距離をそれぞれ測定する測定器である、
付記1に記載の情報処理装置。
[付記3] 前記第2の取得部は、前記測定器が物体までの距離を測定する際の前記測定器の位置を測定位置として検出する検出部である、
をさらに備える付記2に記載の情報処理装置。
[付記4] 前記第3の取得部は、前記検出部により検出される位置の誤差範囲を表すものとして前記範囲データを生成する、
付記3に記載の情報処理装置。
[付記5] 1つの測定位置から対象空間内に配置される物体までの距離及び方向を表す複数の距離点データを含んだ点群データを、それぞれ異なる複数の測定位置のそれぞれに関して取得する第1の取得部と、
前記第1の取得部により取得される点群データに関する測定位置を表す位置データを取得する第2の取得部と、
前記第2の取得部により取得された位置データに関する誤差範囲を表す範囲データを取得する第3の取得部と、
ともに情報処理装置に備えられるコンピュータを、
前記第1の取得部により取得された点群データに含まれる距離点データで特定される位置の誤差を、当該距離点データを含む点群データに関して前記第2の取得部により取得された位置データに関して前記第3の取得部により取得された範囲データに基づいて判定する判定部と、
予め定められた条件に合致する誤差が前記判定部により判定された複数の位置に基づいて、前記物体の前記対象空間内での配置状況を表した3次元データを生成する生成部と、
して機能させるための情報処理プログラム。
【符号の説明】
【0044】
1…レーザレンジファインダ、2…エンコーダ、3…地図メモリ、4…位置検出ユニット、5…駆動機構、6…移動コントローラ、7…距離センサ、8…情報処理ユニット、9…台車、10…筐体、81…プロセッサ、82…メインメモリ、83…補助記憶ユニット、84…インタフェースユニット、85…伝送路、100…3次元測定装置。
図1
図2
図3
図4
図5