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特許7599900フォーカス制御装置、光学装置、撮像装置およびフォーカス制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】フォーカス制御装置、光学装置、撮像装置およびフォーカス制御方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/08 20210101AFI20241209BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20241209BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20241209BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20241209BHJP
   H04N 23/67 20230101ALI20241209BHJP
【FI】
G02B7/08 C
G02B7/04 E
G02B7/28 Z
G03B13/36
H04N23/67
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020176327
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067565
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】竹花 瑛
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-099605(JP,A)
【文献】特開2014-016513(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051730(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
G02B 7/28 - 7/40
H04N 23/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカシングに際して第1光学素子と第2光学素子のそれぞれの制御周期ごとの目標位置を生成する生成手段と、
前記制御周期ごとに前記第1光学素子および前記第2光学素子をそれぞれの前記目標位置に向けて移動させる制御を行う制御手段とを有し、
前記生成手段は
前記第1光学素子および前記第2光学素子のうち少なくとも一方の第1制御周期での位置に関する情報と、前記第1光学素子および前記第2光学素子のうちいずれか一方の光学素子の前記第1制御周期での速度に関する情報と、被写体距離ごとの前記第1光学素子および前記第2光学素子のそれぞれのフォーカシング位置を示す第1位置データおよび第2位置データとを用いて、前記第2光学素子の前記第1制御周期の次の第2制御周期での前記目標位置を生成し、
前記速度の情報を、前記第1制御周期および該第1制御周期より前の制御周期のそれぞれでの前記いずれか一方の光学素子の前記位置に関する情報を用いて取得することを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項2】
前記生成手段は、
前記第1光学素子の前記第1制御周期での前記位置に関する情報と、該第1光学素子の前記第1制御周期および該第1制御周期より前の制御周期のそれぞれでの前記第1光学素子の前記位置に関する情報を用いて取得した前記速度に関する情報とを用いて、前記第1光学素子の前記第2制御周期での前記目標位置を生成し、
前記第1光学素子の前記第2制御周期での前記目標位置と、前記第1位置データおよび前記第2位置データとを用いて、前記第2光学素子の前記第2制御周期での前記目標位置を生成することを特徴とする請求項1に記載のフォーカス制御装置。
【請求項3】
前記第1光学素子の前記位置に関する情報と前記速度に関する情報はそれぞれ、前記制御手段から前記第1光学素子を駆動する駆動手段への指令位置と指令速度を示すことを特徴とする請求項2に記載のフォーカス制御装置。
【請求項4】
前記生成手段は、
前記第1光学素子の前記第1制御周期での前記位置に関する情報と、前記第1位置データおよび前記第2位置データと、前記第2光学素子の前記第1制御周期および該第1制御周期より前の制御周期のそれぞれでの前記位置に関する情報とを用いて、前記第2光学素子の前記第1制御周期での前記速度に関する情報を生成し、
前記第2光学素子の前記第制御周期での前記位置に関する情報と、前記第2光学素子の前記第1制御周期での前記速度に関する情報とを用いて、前記第2光学素子の前記第制御周期での前記目標位置を生成することを特徴とする請求項1に記載のフォーカス制御装置。
【請求項5】
前記第1光学素子の前記位置に関する情報は、前記制御手段から前記第1光学素子を駆動する駆動手段への指令位置を示し、
前記第2光学素子の前記位置に関する情報と前記速度に関する情報はそれぞれ、前記第2位置データから得られる位置と速度を示すことを特徴とする請求項4に記載のフォーカス制御装置。
【請求項6】
前記第1光学素子および前記第2光学素子を含む光学系はズーミングが可能であり、
前記第1位置データおよび前記第2位置データは、前記光学系の焦点距離ごとおよび被写体距離ごとのデータであり、
前記生成手段は、前記焦点距離に応じて、
前記第1光学素子の前記第1制御周期での前記位置に関する情報と、該第1光学素子の前記第1制御周期および該第1制御周期より前の制御周期のそれぞれでの前記第1光学素子の前記位置に関する情報を用いて取得した前記速度に関する情報とを用いて、前記第1光学素子の前記第2制御周期での前記目標位置を生成し、前記第1光学素子の前記第2制御周期での前記目標位置と、前記第1位置データおよび前記第2位置データとを用いて、前記第2光学素子の前記第2制御周期での前記目標位置を生成する第1生成方法と、
前記第1光学素子の前記第1制御周期での前記位置に関する情報と、前記第1位置データおよび前記第2位置データと、前記第2光学素子の前記第1制御周期および該第1制御周期より前の制御周期のそれぞれでの前記位置に関する情報とを用いて、前記第2光学素子の前記第1制御周期での前記速度に関する情報を生成し、前記第2光学素子の前記第制御周期での前記位置に関する情報と、前記第2光学素子の前記第1制御周期での前記速度に関する情報とを用いて、前記第2光学素子の前記第制御周期での前記目標位置を生成する第2生成方法のうち一方を選択することを特徴とする請求項1に記載のフォーカス制御装置。
【請求項7】
前記第2光学素子の移動に対する像面位置の移動の敏感度が、前記第1光学素子の移動に対する前記敏感度より低いことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフォーカス制御装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のフォーカス制御装置と、
前記第1光学素子および前記第2光学素子とを有することを特徴とする光学装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載のフォーカス制御装置を有し、
前記第1光学素子および前記第2光学素子を用いて撮像を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
フォーカシングに際して第1光学素子と第2光学素子のそれぞれの制御周期ごとの目標位置を生成するステップと、
前記制御周期ごとに前記第1光学素子および前記第2光学素子をそれぞれの前記目標位置に向けて移動させる制御を行うステップとを有し、
前記目標位置を生成するステップにおいて、前記第1光学素子および前記第2光学素子のうち少なくとも一方の第1制御周期での位置に関する情報と、前記第1光学素子および前記第2光学素子のうちいずれか一方の光学素子の前記第1制御周期での速度に関する情報と、被写体距離ごとの前記第1光学素子および前記第2光学素子のそれぞれのフォーカシング位置を示す第1位置データおよび第2位置データとを用いて、前記第2光学素子の前記第1制御周期の次の第2制御周期での前記目標位置を生成し、
前記速度の情報を、前記第1制御周期および該第1制御周期より前の制御周期のそれぞれでの前記いずれか一方の光学素子の前記位置に関する情報を用いて取得することを特徴とするフォーカス制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、請求項10に記載のフォーカス制御方法に従う処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカシングに際して光学素子の位置を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像におけるフォーカシングに際して2つの光学素子が互いに独立して光軸方向に移動するものがある。具体的には、第1フォーカスレンズは主としてフォーカシングのために移動し、第2フォーカスレンズ(フローティングレンズ)は第1フォーカスレンズの移動により生じるデフォーカスや収差を補正する。第1および第2フォーカスレンズの適切な位置関係は焦点距離と被写体距離に応じて定まっており、第1および第2フォーカスレンズの位置はその位置関係を示すレンズ位置データに基づいて制御される。
【0003】
特許文献1には、被写体距離が変化した場合の第1および第2フォーカスレンズの目標位置の算出方法が開示されている。具体的には、レンズ位置データから第1フォーカスレンズの目標位置とそれに対応する第2フォーカスレンズの目標位置を算出し、第1および第2フォーカスレンズをそれぞれ目標位置に駆動することで、目標位置にて最適な位置関係となるように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5948645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、第1および第2フォーカスレンズがそれぞれの目標位置に到達するまでの間(駆動中)の位置関係も適切に維持する方法については言及されていない。目標位置への駆動中に第1および第2フォーカスレンズの位置関係が適切なものからずれることで、目標位置にて合焦状態が得られるまでにデフォーカス量や収差が増加するおそれがある。
【0006】
本発明は、フォーカシングに際して第1および第2光学素子の目標位置への駆動中もそれらが適切な位置関係を維持するように制御可能なフォーカス装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのフォーカス制御装置は、フォーカシングに際して第1光学素子と第2光学素子のそれぞれの制御周期ごとの目標位置を生成する生成手段と、制御周期ごとに第1光学素子および第2光学素子をそれぞれの目標位置に向けて移動させる制御を行う制御手段とを有する。生成手段は、第1光学素子および第2光学素子のうち少なくとも一方の第1制御周期での位置に関する情報と、第1光学素子および第2光学素子のうちいずれか一方の光学素子の第1制御周期での速度に関する情報と、被写体距離ごとの第1光学素子および第2光学素子のそれぞれのフォーカシング位置を示す第1位置データおよび第2位置データとを用いて、第2光学素子の第1制御周期の次の第2制御周期での目標位置を生成する。速度の情報を、第1制御周期および該第1制御周期より前の制御周期のそれぞれでの上記いずれか一方の光学素子の位置に関する情報を用いて取得することを特徴とする。
【0008】
本発明の他の一側面としてのフォーカス制御方法は、フォーカシングに際して第1光学素子と第2光学素子のそれぞれの制御周期ごとの目標位置を生成するステップと、制御周期ごとに第1光学素子および第2光学素子をそれぞれの目標位置に向けて移動させる制御を行うステップとを有する。目標位置を生成するステップにおいて、第1光学素子および第2光学素子のうち少なくとも一方の第1制御周期での位置に関する情報と、第1光学素子および第2光学素子のうちいずれか一方の光学素子の第1制御周期での速度に関する情報と、被写体距離ごとの第1光学素子および第2光学素子のそれぞれのフォーカシング位置を示す第1位置データおよび第2位置データとを用いて、第2光学素子の第1制御周期の次の第2制御周期での目標位置を生成する。速度の情報を、第1制御周期および該第1制御周期より前の制御周期のそれぞれでの上記いずれか一方の光学素子の位置に関する情報を用いて取得することを特徴とする。なお、上記フォーカス制御方法に従う処理をコンピュータに実行させるプログラムも、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フォーカシングに際して第1および第2光学素子の目標位置への駆動中もそれらが適切な位置関係を維持するように制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例のカメラシステムの構成を示すブロック図。
図2】実施例におけるレンズ位置データを示す図。
図3】実施例における第1フォーカスレンズの駆動プロファイル例を示す図。
図4】実施例における第1および第2フォーカスレンズのプロファイル軌跡と第2フォーカスレンズの理想軌跡を示す図。
図5】実施例1におけるレンズ制御部の構成を示すブロック図。
図6】実施例1における第1フォーカスレンズの目標位置を生成する処理を示すフローチャート。
図7】実施例1における第2フォーカスレンズの目標位置を生成する処理を説明する図。
図8】実施例1における第2フォーカスレンズの目標位置を生成する処理を示すフローチャート。
図9】実施例2におけるレンズ制御部の構成を示すブロック図。
図10】実施例2における第2フォーカスレンズの目標位置を生成する処理を説明する図。
図11】実施例3におけるカメラシステムの構成を示すブロック図。
図12】実施例3におけるレンズ位置データを示す図。
図13】実施例3におけるレンズ制御部の構成を示すブロック図。
図14】実施例3における第2フォーカスレンズの目標位置を生成する処理を示すフローチャート。
図15】実施例3における第1フォーカスレンズの指令速度と第2フォーカスレンズの理想速度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例である光学装置としてのレンズ装置100と、該レンズ装置100が着脱可能に装着されるレンズ交換型撮像装置(以下、カメラ本体という)200とにより構成されるカメラシステムを示している。レンズ装置100とカメラ本体200は、マウントを介して機械的および電気的に接続される。マウントに設けられた電気端子を介して、カメラ本体200からレンズ装置100への電源供給とカメラ本体200とレンズ装置100間での通信が行われる。
【0012】
レンズ装置100は、第1光学素子としての第1フォーカスレンズ103、第2光学素子としての第2フォーカスレンズ104および絞り102を含む光学系101を有する。光学系101は、不図示の被写体からの光を結像させる。第1フォーカスレンズ103は、光軸方向に移動して主としてフォーカシングを行う。第2フォーカスレンズ104は、フォーカシングに際して光軸方向に移動してピントずれや収差の変動を補正する。なお、本実施例では、第2フォーカスレンズ104の移動に対する像面位置の移動の敏感度が、第1フォーカスレンズの移動に対する敏感度より低い。
【0013】
第1フォーカスレンズ103と第2フォーカスレンズ104はそれぞれ、ステッピングモータや振動型モータ等により構成されるアクチュエータを含む第1フォーカス駆動部107および第2フォーカス駆動部109により駆動される。第1フォーカス駆動部107および第2フォーカス駆動部109はそれぞれ、駆動手段に相当する。第1フォーカスレンズ103と第2フォーカスレンズ104の位置はそれぞれ、光学または磁気エンコーダ等により構成される第1フォーカス位置検出部108と第2フォーカス位置検出部110により検出される。
【0014】
絞り102は、複数の絞り羽根を開閉方向に移動させて絞り開口径を変化させることで光量を調節する。絞り102は、ステッピングモータ等のアクチュエータを含む絞り駆動部106によって駆動される。本実施例のレンズ装置100は、単焦点レンズである。
【0015】
メモリ206は、ROMやRAM等で構成されている。メモリ206には、被写体距離ごとに合焦状態が得られ、かつ収差が良好に補正される第1フォーカスレンズ103と第2フォーカスレンズ104のそれぞれの位置(フォーカシング位置)を示す第1レンズ位置データと第2レンズ位置データが格納されている。第1レンズ位置データと第2レンズ位置データはそれぞれ、第1位置データと第2位置データに相当する。
【0016】
レンズ制御部105は、CPU等により構成されるコンピュータであり、フォーカス制御装置に相当するとともに制御手段として機能する。レンズ制御部105は、コンピュータプログラムに従ってカメラ本体200と通信したり、カメラ本体200から受信した指令に応じて絞り駆動部106や第1フォーカス駆動部107を制御して絞り102や第1フォーカスレンズ103を駆動させたりする。さらにレンズ制御部105は、第1フォーカスレンズ103の駆動とともに、第2フォーカス駆動部109を制御して第2フォーカスレンズ104を駆動させる。
【0017】
カメラ本体200は、撮像素子201、信号処理部202、記録処理部203、デフォーカス検出部204、カメラ制御部205、メモリ206、電子ファインダ207および表示部208 によって構成されている。撮像素子201は、光学系101により形成される光学的な被写体像を撮像(光電変換)してアナログ撮像信号を出力する。信号処理部202は、撮像素子201から出力されたアナログ撮像信号をデジタル撮像信号に変換し、デジタル撮像信号に各種画像処理を行って画像データを生成する。記録処理部203は、生成された画像データを電子ファインダ207や表示部208に表示したり、記録用画像データを不図示の半導体メモリ等の記録媒体に記録したりする。
【0018】
デフォーカス検出部204は、撮像素子201に設けられた複数の位相差検出画素からの出力信号を用いて位相差検出方式によりデフォーカス量を検出する。カメラ制御部205は、CPU等により構成されるコンピュータであり、記録処理部203、デフォーカス検出部204およびメモリ206と電気的に接続されている。カメラ制御部205は、メモリ206に記録されたコンピュータプログラムを読み出して実行したり、オートフォーカス制御に必要な情報をレンズ制御部105から受信したりする。また、カメラ制御部205は、不図示の撮像スイッチや各種設定スイッチ等を含むカメラ操作部からの入力に応じて、カメラ本体200およびレンズ装置100を制御する。
【0019】
次に、カメラ本体200のカメラ制御部205からレンズ装置100のレンズ制御部105にフォーカス指令が送信されたときにレンズ制御部105が行う処理について説明する。フォーカス指令を受けたレンズ制御部105は、該フォーカス指令に含まれるフォーカス駆動量に基づいて第1フォーカスレンズ103の目標位置を算出し、さらに第1フォーカスレンズ103の目標位置に対応する第2フォーカスレンズ104の目標位置を算出する。図2(a)は、最至近距離(MOD)から無限遠距離(INF)までの被写体距離ごとに合焦状態が得られる第1フォーカスレンズ103のフォーカシング位置を示し、これをテーブルデータ等のデータ形式としたものが第1レンズ位置データである。図2(b)は、MODからINFまでの被写体距離ごとの第1フォーカスレンズ103のフォーカシング位置に対して合焦状態および良好な収差補正状態が得られる第2フォーカスレンズ104のフォーカシング位置を示す。これをテーブルデータ等のデータ形式としたものが第2レンズ位置データである。
【0020】
ここで、現在における第1フォーカスレンズ103の位置がMODに対する合焦位置であり、レンズ制御部105がカメラ制御部205から第1フォーカスレンズ103をINFに対する合焦位置まで駆動するフォーカス指令を受けた場合について説明する。
図2(a)において、第1フォーカスレンズ103の現在の位置はP1mであり、INFに対するフォーカス位置はP1iである。また図2(b)において、第2フォーカスレンズ104の現在の位置はP2mであり、INFに対するフォーカス位置はP2iである。フォーカス指令を受けたレンズ制御部105は、第1フォーカス駆動部107に第1フォーカスレンズ103をP1mからP1iまで駆動させる。第1フォーカスレンズ103は、図2(a)の曲線で示す位置(軌跡)を辿るように移動する。この際、レンズ制御部105は、第2フォーカスレンズ104を、図2(b)の曲線上の位置であって移動している第1フォーカスレンズ103の位置に対応する被写体距離に応じた位置に第2フォーカスレンズ104を移動させる必要がある。すなわち、第1フォーカスレンズ103に同期するようにP2mからP2iまで移動させる必要がある。つまり、第1フォーカスレンズ103と第2フォーカスレンズ104の位置関係は、第1および第2レンズ位置データによって、被写体距離ごとに一意に決まっている。以下では、第2フォーカスレンズ104を第1フォーカスレンズ103の移動に同期させて駆動する方法について説明する。
【0021】
まず、第1フォーカスレンズ103のプロファイル駆動について説明する。プロファイル駆動とは、レンズを予め決められた軌跡(位置プロファイル)を辿るように駆動して目標位置に到達させる駆動方法である。図3は、第1フォーカスレンズ103をP1mからP1iまでプロファイル駆動する場合の該第1フォーカスレンズ103の位置、速度および加速度の時間変化を示している。
【0022】
レンズ制御部105は、第1フォーカスレンズ103と第2フォーカスレンズ104の駆動量を算出する。第1フォーカスレンズ103の駆動量Dは、
1=|P1m-P1i| (1)
により算出され、第2フォーカスレンズ104の駆動量Dは、
2=|P2m-P2i| (2)
により算出される。
【0023】
次に、レンズ制御部105は、第1フォーカスレンズ103を駆動する速度Vを決定し、図3中の時刻Tにおいて第1フォーカスレンズ103の速度がVに達するまで一定の加速度αで第1フォーカスレンズ103を加速する。そして、時刻Tで第1フォーカスレンズ103の速度がVに達すると加速度を0にし、駆動残量が減速駆動量に達するまで速度Vを保つ。減速駆動量とは、現在の速度がVから加速度-αで減速した場合に速度が0になるまでに要する距離である。時刻Tでにて駆動残量が減速駆動量に達すると、レンズ制御部105は、第1フォーカスレンズ103を一定の減速度-αで減速し、目標位置P1iに時刻Tにて到達させる。レンズ制御部105は、駆動量Dに対してこのような位置プロファイルを生成する。
【0024】
そして、上述したプロファイル駆動を第2フォーカスレンズ104にも適用する場合について説明する。図4(a)、(b)はそれぞれ、第1フォーカスレンズ103と第2フォーカスレンズ104をプロファイル駆動するときの各レンズの位置を実線で表している。TMODは、第1フォーカスレンズ103がMODに対する合焦位置P1mから駆動を開始した時刻を表している。TINFは、第1フォーカスレンズ103がINFに対する合焦位置置P1iに到達した時刻を表している。
【0025】
図4(b)中の破線は、第2フォーカスレンズ104の理想軌跡を表している。理想軌跡は、第1フォーカスレンズ103の位置と第1レンズ位置データから算出され、ピントずれや収差が発生しにくいように光学的に設定された第2フォーカスレンズ104が辿るべき軌跡を示している。ただし、第2フォーカスレンズ104をP2mからP2iにプロファイル駆動により予め決められた実線で示すプロファイル軌跡を辿るように第1フォーカスレンズ103とは独立に駆動すると、第2フォーカスレンズ104が理想軌跡からずれて移動することになる。
【0026】
本実施例では、第2フォーカスレンズ104の位置の理想軌跡からのずれを抑えるため、第2フォーカスレンズ104をプロファイル駆動せず、第1フォーカスレンズ103の位置を予測しながら順次その予測結果に基づいて第2フォーカスレンズ104の位置を決めていく。
【0027】
なお、上述したプロファイル駆動では速度と加速度を一定としたが、速度や加速度を変更してもよい。
【実施例1】
【0028】
図5は、実施例1におけるレンズ制御部105の詳細な構成を示している。第1位置プロファイル生成部1051は、第1フォーカスレンズ103をプロファイル駆動するための位置プロファイルを生成する。第1位置プロファイル生成部1051で生成された位置プロファイルにおける目標位置は、第1フォーカスレンズ103の指令位置(位置に関する情報)として、制御周期ごとに第1減算器1056に送られる。第1フォーカスレンズ104の指令位置は、第1レンズ位置データから得られる位置である。第1減算器1056は、第1フォーカス位置検出部108により検出された第1フォーカスレンズ103の実際の位置(実位置)と第1位置プロファイル生成部1051から受けた指令位置との差分を演算し、該差分を位置偏差として第1位置制御器1052に送る。
【0029】
第1位置制御器1052は、PID制御のための演算を行う。具体的には、第1減算器1056から受けた位置偏差に応じて、第1フォーカスレンズ103を指令位置に移動させるための駆動量を演算して第1フォーカス駆動部107に出力する。第1フォーカスレンズ103は、上記のような演算が制御周期ごとに繰り返されることにより、第1位置プロファイル生成部1051からの指令位置に従ってP1mからP1iに向けて駆動される。
【0030】
第1レンズ目標位置生成部1053は、第1フォーカスレンズ103の次制御周期での指令位置を予測(算出)することで、該予測指令位置を次制御周期での第1フォーカスレンズ103の目標位置として生成する。第1レンズ目標位置生成部1053と後述する第2レンズ目標位置生成部1055は、生成手段を構成する。
【0031】
図6は、第1レンズ目標位置生成部1053が実行する処理(フォーカス制御方法)をフローチャートで表している。第1レンズ目標位置生成部1053は、ステップS301において、第1位置プロファイル生成部1051で生成された第1フォーカスレンズ103の現在の制御周期(第1制御周期:以下、現制御周期という)での指令位置である現周期指令位置を取得する。第1レンズ目標位置生成部1053は、制御周期ごとにその時点での現周期指令位置を上書き保存し、これを前制御周期の指令位置(以下、前周期指令位置という)として次制御周期にて参照できるようにする。
【0032】
次にステップS302において、第1レンズ目標位置生成部1053は、保存されていた前周期指令位置COMPOSpre1と、ステップS301にて取得した現周期指令位置COMPOSnow1との差分を用いて現制御周期での指令速度(速度に関する情報)である現周期指令速度Vcomを算出する。制御周期をTとすると、Vcomは、
Vcom=(COMPOSnow1―COMPOSpre1 )/T (2)
で算出される。
【0033】
次にステップS303では、第1レンズ目標位置生成部1053は、次制御周期(第2制御周期)での第1フォーカスレンズ103の予測指令位置を算出する。具体的には、第1フォーカスレンズ103の駆動方向に変化がない限り、第1フォーカスレンズ103が次制御周期も現制御周期と同じ速度(Vcom)で駆動されると想定して予測指令位置を算出する。第1フォーカスレンズ103の予測指令位置COMPOSnext1は、
COMPOSnext1=(Vcom×T)+COMPOSnow1 (3)
で算出される。
【0034】
第1レンズ目標位置生成部1053は、ステップS303にて算出された予測指令位置COMPOSnext1が第1フォーカスレンズ103の最終目標位置P1iを超えている場合は、第1フォーカスレンズ103の次制御周期の目標位置P1nextをP1iに設定する。一方、COMPOSnext1がP1iを超えていない場合は、P1nextをCOMPOSnext1に設定する。
【0035】
第2レンズ目標位置生成部1055は、第2フォーカスレンズ104の次制御周期での目標位置P2nextを算出する。第2フォーカスレンズ104の目標位置は、第2レンズ位置データから得られる位置である。図8は、第2レンズ目標位置生成部1055が実行する処理(フォーカス制御方法)をフローチャートで表している。
【0036】
第2レンズ目標位置生成部1055は、ステップS401において、第1レンズ目標位置生成部1053が生成した第1フォーカスレンズ103の目標位置P1nextと図2(a)に示した第1レンズ位置データを用いて次制御周期の被写体距離を算出する。第1レンズ位置データは、図2(a)では連続的なデータとして記載されているが、実際には代表的な複数の被写体距離に対して設けられた有限個のデータの集合である。第1レンズ位置データにP1nextがない場合は、P1nextに隣接する2つの第1フォーカスレンズ103の位置に対する被写体距離を用いた直線補間を行うことによりP1nextに対応する被写体距離を算出する。
【0037】
次にステップS402では、第2レンズ目標位置生成部1055は、図2(b)に示した第2レンズ位置データを用いて、ステップS401で算出した被写体距離に対応する第2フォーカスレンズ104の次制御周期での予測指令位置COMPOSnext2を算出する。そして第2レンズ目標位置生成部1055は、第2フォーカスレンズ104の駆動方向に変化がなく、COMPOSnext2が最終目標位置であるP2iを超えている場合は、第2フォーカスレンズ104の次制御周期での目標位置P2nextをP2iに設定する。一方、COMPOSnext2がP2iを超えていない場合は、P2nextをCOMPOSnext2に設定する。
【0038】
図7(a)、(b)は、上述した第2フォーカスレンズ104の目標位置P2next(=COMPOSnext2)の生成過程を示している。図7(a)は第1フォーカスレンズ103の各位置を、図7(b)は第2フォーカスレンズ104の各位置を示している。また、COMPOSpre2は前制御周期での第2フォーカスレンズ104の指令位置を、COMPOSnow2は現制御周期での第2フォーカスレンズ104の指令位置をそれぞれ示している。Tpre、Tnow、nextはそれぞれ、前制御周期の時刻、現在制御周期の時刻、次制御周期の時刻を示している。制御周期はTである。
【0039】
第2レンズ目標位置生成部1055によって生成された第2フォーカスレンズ104の目標位置は、第2減算器1057に送られる。第2減算器1057は、第2フォーカス位置検出部110により検出された第2フォーカスレンズ104の実位置と目標位置との差分を算出し、該差分を第2フォーカスレンズ104の位置偏差として第2位置制御器1054に送る。
【0040】
第2位置制御器1054は、第1位置制御器1052と同様にPID制御を行うために、第2フォーカスレンズ104を目標位置に向かわせる駆動量を演算して第2フォーカス駆動部109に出力する。これにより、第2フォーカスレンズ104が目標位置に向けて駆動される。
【0041】
以上説明したように、本実施例によれば、第2フォーカスレンズ104を第1フォーカスレンズ103に同期しながら第2レンズ位置データに従うように駆動する。これにより、被写体距離が変化する際の第1および第2フォーカスレンズ103、104の同期ずれによるピントずれの発生や収差の変動を抑制することができる。すなわち、フォーカシングに際して第1および第2フォーカスレンズ103、104の最終目標位置への駆動中もそれらが適切な位置関係を維持するように制御することができる。さらに、本実施例では、第1フォーカスレンズ103の位置を予測して第2フォーカスレンズ104の目標位置を算出する。このため、フィードバック制御により第2フォーカスレンズ104を駆動する際の第2フォーカスレンズ104の第2レンズ位置データに対する追従遅れを減少させることができる。
【実施例2】
【0042】
図9は、実施例2のレンズ制御部105′の詳細な構成を示している。図9において、図5と共通する構成要素には図5と同符号を付している。
【0043】
本実施例は、第1位置プロファイル生成部1051で第1フォーカスレンズ103の指令位置を生成し、その指令位置と第2レンズ位置データから第2レンズ理想位置生成部1058が第2フォーカスレンズ104の理想位置を生成する点で実施例1と異なる。また、第2レンズ目標位置生成部1059が、第2フォーカスレンズ104の現制御周期での理想位置(位置に関する情報)と理想速度(速度に関する情報)から、次制御周期の第2フォーカスレンズ104の目標位置を算出する点で実施例1と異なる。第2フォーカスレンズ104の理想位置、理想速度および目標位置は、第2レンズ位置データから得られる位置である。第2レンズ目標位置生成部1059は、後述する第2レンズ目標位置生成部1059とともに生成手段を構成する。
【0044】
図10(a)、(b)は、本実施例における、第2フォーカスレンズ104の目標位置を生成する過程を示している。図10(a)は図7(a)にも示した第1フォーカスレンズ103の各位置を示し、図10(b)は第2フォーカスレンズ104の各位置を示している。Idealpreは前制御周期での第2フォーカスレンズ104の理想位置(以下、前周期理想位置という)を示し、Idealnowは現制御周期での第2フォーカスレンズ104の理想位置(以下、現周期理想位置という)を示している。Idealnextは、次制御周期での第2フォーカスレンズ104の理想位置(以下、次周期理想位置という)を示している。
【0045】
第2レンズ理想位置生成部1058は、図8の処理と同様に、第1フォーカスレンズ103の現周期指令位置と第1レンズ位置データとを用いて現制御周期での被写体距離を算出する。さらに、現制御周期での被写体距離と第2レンズ位置データとを用いて第2フォーカスレンズ104の現周期理想位置Idealnowを算出する。そして、第2レンズ理想位置生成部1058は、算出した現周期理想位置Idealnowを第2レンズ目標位置生成部1059に送る。
【0046】
第2レンズ目標位置生成部1059は、図6の処理と同様に、第2レンズ理想位置生成部1058からの第2フォーカスレンズ104の現周期理想位置Idealnowと前周期理想位置Idealpreとを用いて現周期理想速度を算出する。また第2レンズ目標位置生成部1059は、現周期理想位置Idealnowと現周期理想速度とから第2フォーカスレンズ104の次周期理想位置Idealnextを予測する。
【0047】
そして第2レンズ目標位置生成部1059は、第2フォーカスレンズ104の駆動方向に変化がなく、Idealnextが第2フォーカスレンズ104の最終目標位置P2iを超えている場合は、第2フォーカスレンズ104の次制御周期での目標位置P2nextをP2iに設定する。一方、次周期理想位置IdealnextがP2iを超えていない場合には、目標位置P2nextをIdealnextに設定する。
【0048】
実施例1では第1フォーカスレンズ103の次制御周期での指令位置を予測したのに対して、本実施例では第2フォーカスレンズ104の次制御周期での理想位置を予測することに特徴がある。第1レンズ位置データでの第1フォーカスレンズ103の位置の変化が大きいとき等、第1フォーカスレンズ103の指令速度のばらつきよりも第2フォーカスレンズ104の理想速度のばらつきが小さい場合に本実施例を用いることが好ましい。これにより、第1フォーカスレンズ103の駆動に対する第2フォーカスレンズ104の駆動の同期精度を高めることができる。
【実施例3】
【0049】
図11は、実施例3のカメラシステムの構成を示している。本実施例におけるレンズ装置100″はズーミングが可能なレンズ装置であり、光学系101″は変倍レンズ112を含む。レンズ装置100″は、ズーム操作部113とズーム位置検出部114を有する。図11において、図1と共通する構成要素には図1と同符号を付している。
【0050】
変倍レンズ112は、ズーム操作部113のユーザ操作に応じて光軸方向に駆動され、光学系101″の焦点距離を変更する。ズーム位置検出部114は、変倍レンズ112の位置(ズーム位置)を検出し、該ズーム位置の情報をレンズ制御部105に送る。
【0051】
本実施例における第1および第2レンズ位置データは、図12(a)、(b)に示すように焦点距離ごとおよび被写体距離ごとの第1および第2フォーカスレンズ103、104の位置を示す。図12(a)、(b)では、MOD、0.7m、1.0m、3.0m、5.0m、INFの7つの代表的な被写体距離に対する第1および第2レンズ位置データを示している。このように第1および第2レンズ位置データの数を制限することで、これらを保存するメモリ111に必要な記憶容量を少なくすることができる。
【0052】
代表的ではない被写体距離、例えば2.0mに対する各フォーカスレンズの位置を求める場合は、1.0mと3.0mのレンズ位置データを用いた補間演算を行って求める。同様に4.0mに対する各フォーカスレンズの位置を求める場合は、3.0mと5.0mのレンズ位置データを用いた補間演算を行う。また、焦点距離についても図では連続的なレンズ位置データのように示されているが、実際には代表的な複数の焦点距離に対するレンズ位置データがメモリ111に保存されている。代表的ではない焦点距離での各フォーカスレンズの位置を求めるには、その焦点距離に隣接する焦点距離でのレンズ位置データを用いた補間演算を行えばよい。
【0053】
図13は、本実施例におけるレンズ制御部105″の詳細な構成を示している。図13において、図5と共通する構成要素には図5と同符号を付している。レンズ制御部105″は、予測手法選択部1060と第2レンズ目標位置生成部1061を有する。
【0054】
予測手法選択部1060は、ズーム位置検出部114によって検出された現制御周期でのズーム位置と、メモリ111に格納されていた予測手法データとを用いて予測手法を選択する。予測手法には、第1フォーカスレンズ103の次周期指令位置を予測する第1予測手法と、第2フォーカスレンズ104の次周期指令位置を予測する第2予測手法とがある。予測手法データは、ズーム位置ごとに第1および第2の予測手法のうちいずれを選択するかを示すデータである。予測手法選択部1060は、予測手法データに従って選択した予測手法の情報を第2レンズ目標位置生成部1061に送る。
【0055】
図14のフローチャートは、第2レンズ目標位置生成部1061が実行する処理を示している。ステップS501において、第2レンズ目標位置生成部1061は、予測手法選択部1060から取得した予測手法が第1予測手法であるか否かを判定し、第1予測手法である場合はステップS502とステップS503に進む。ステップS502、S503では、2レンズ目標位置生成部1061は、実施例1で説明した第1レンズ目標位置生成部1053と第2レンズ目標位置生成部1055による処理と同様の処理を行って第2フォーカスレンズ104の次制御周期での目標位置を算出する。一方、予測手法選択部1060から取得した予測手法が第2予測手法である場合は 第2レンズ目標位置生成部1061はステップS504とステップS505に進む。ステップS504、S505では、2レンズ目標位置生成部1061は、実施例2で説明した第2レンズ理想位置生成部1058と第2レンズ目標位置生成部1059による処理と同様の処理を行って第2フォーカスレンズ104の目標位置を生成する。
【0056】
以下、本実施例におけるズーム位置ごとの予測手法の決め方について説明する。ここでは、ズーム位置ごとに被写体距離がINFからMODまで変化する際に第1フォーカスレンズ103を指令位置に駆動する場合について説明する。また、ここでの第1フォーカスレンズ103の駆動方法は、実施例1で説明したように最大速度を一定に保つ駆動方法ではなく、例えばカメラ本体200から指定された像面速度(像面位置の移動速度)を一定に保つような駆動方法とする。この場合、メモリ111には、第1および第2フォーカスレンズ103、104の単位移動量に対する像面位置の移動量を表す敏感度データが保持され、該敏感度データを用いることで指定された像面速度を第1フォーカスレンズ103の指令速度に変換することができる。この指令速度を第1フォーカスレンズ103の目標速度として速度制御を行うと、第1フォーカスレンズ103の速度は一定にはならず変動する。
【0057】
図15(a)は、ズーム位置をTELE端としたときに像面速度を一定に保つように第1フォーカスレンズ103の指令位置をプロファイルした場合の第1フォーカスレンズ103の指令速度を示している。図15(b)は、同条件における制御周期ごとの第2フォーカスレンズ104の理想速度を示している。TINFは第1フォーカスレンズ103の被写体距離INFに対応する位置からの駆動が開始された時刻であり、TMODは第1フォーカスレンズ103が被写体距離MODの位置に到達した時刻である。また、図中の縦の破線は、TINFからTMODまでの各制御周期の開始時刻を示している。
【0058】
第1予測手法では、第1フォーカスレンズ103の指令速度に基づいて予測を行う。このため、第1予測手法での予測精度のばらつきの大きさDが基本的に第2フォーカスレンズ104の指令速度の各制御周期でのばらつきとなる。したがって、第1予測手法での予測精度のばらつきの大きさDAは、制御周期N(=a1~a5)での第2フォーカスレンズ104の指令速度のばらつきDa1~Da5を用いて、
A=Da1+…+Da5 (4)
として表される。
【0059】
また第2予測手法では、第2フォーカスレンズ104の理想速度に基づいて予測を行う。したがって、第2予測手法での予測精度のばらつきの大きさDBは、制御周期N(=b1~b5)での第2フォーカスレンズ104の理想速度のばらつきDb1~Db5を用いて、
B=Db1+…+Db4 (5)
と表される。
【0060】
本実施例では、TELE端においてはDAとDBのうち小さい方の予測手法を用いると決定する。上記指令位置と理想位置は、各レンズ位置特性データと敏感度データとを用いたシミュレーションにより得ることができる。このシミュレーションを全てのズーム位置で行い、各ズーム位置で第1予測手法と第2予測手法のいずれかを用いるかをDとDのうち小さい方を用いるというルールで決定する。そして、各ズーム位置での決定結果を示す予測手法データをメモリ111に記憶させる。
【0061】
本実施例によれば、ズーム位置ごとに適切な予測手法を用いることで、各ズーム位置での被写体距離の変化による第1フォーカスレンズ103の駆動に対する第2フォーカスレンズ104の駆動の同期精度が向上する。これにより、収差を良好に減少させることができるとともに、合焦状態が得られるまでの時間を短縮することができる。
【0062】
上記各実施例では、第1フォーカスレンズの駆動に同期して第2フォーカスレンズを駆動する場合について説明したが、第2光学素子として撮像素子を用い、該撮像素子を第1フォーカスレンズの駆動に同期するように光軸方向に駆動してもよい。
【0063】
また上記各実施例では、レンズ装置内にフォーカス制御装置(レンズ制御部)が設けられた場合について説明したが、フォーカス制御装置をカメラ本体内に設け、カメラ本体側からレンズ装置内の第1および第2フォーカスレンズの駆動を制御するようにしてもよい。さらに光学系を内蔵するレンズ一体型の撮像装置にフォーカス制御装置を設けてもよいし、レンズ装置または撮像装置に対して外付け可能なフォーカス制御装置としてもよい。
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0064】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
100,100″ レンズ装置
103 第1フォーカスレンズ
104 第2フォーカスレンズ
105,105′,105″ レンズ制御部
107 第1フォーカス駆動部
109 第2フォーカス駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15