IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-モータ 図1
  • 特許-モータ 図2
  • 特許-モータ 図3
  • 特許-モータ 図4
  • 特許-モータ 図5
  • 特許-モータ 図6
  • 特許-モータ 図7
  • 特許-モータ 図8
  • 特許-モータ 図9
  • 特許-モータ 図10
  • 特許-モータ 図11
  • 特許-モータ 図12
  • 特許-モータ 図13
  • 特許-モータ 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20241209BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20241209BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H02K3/46 C
H02K3/34 C
H02K3/52 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020178119
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022069126
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】田村 葉子
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓司
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163726(JP,A)
【文献】特開2019-110722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H02K 3/34
H02K 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトに固定されたロータと、
前記ロータと対向するステータコアと、
前記ステータコアに装着される絶縁部材と、
前記絶縁部材に巻き回されたコイルと、
を備え、
前記絶縁部材における径方向外側に、前記コイルの巻き終わりに接続された渡り線が周方向に延在して配置され、
前記絶縁部材は、径方向外側に、軸方向において、前記渡り線が延在する位置から径方向内側に突出した凸部と、前記渡り線が延在する位置から窪んだ凹部とを有し、
前記コイルの巻き始めに接続された引出線が、前記凹部に配置されており、
前記凹部に配置された前記渡り線の一部は、径方向内側に後退しており、
径方向において、前記引出線は、後退した前記渡り線の一部の径方向外側を通っており、
径方向において、後退した前記渡り線の一部が、前記凸部の内側に配置されている、モータ。
【請求項2】
前記引出線は、前記凹部において、前記絶縁部材と前記渡り線との間に配置されている
、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記絶縁部材は、径方向外側に、軸方向に突出し周方向に延在した壁部を有し、
前記壁部の径方向外側には、周方向に延在した1条または複数条の溝部を有し、
前記渡り線は、前記溝部に配置されている、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
周方向において、前記凹部と前記凸部とが隣接している、請求項1~3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記コイルの巻き始めに接続された前記引出線は、前記凹部において、径方向外側に向かって延在し軸方向における前記凹部から離れる方向に立ち上がっている、請求項1~4のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な装置の駆動源としてモータが用いられている。モータには様々な種類があり、目的や場面に応じて、使用するモータが選択されている。各種モータにおいては、モータとしての基本性能の向上の他、より一層の小型化への要求がある。
【0003】
例えば特許文献1に記載のモータでは、コイルの導線の巻き方によって、モータの小型化を実現している。このように、モータを少しでも小型化できるように様々な技術的な工夫が為されている。そして、様々な技術的な工夫を積み上げることによって、より一層の小型化を実現しようとの要求が、依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-204720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より一層小型化されたモータを提供することを課題の一例とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。即ち、本発明の一態様に係るモータは、シャフトと、
前記シャフトに固定されたロータと、
前記ロータと対向するステータコアと、
前記ステータコアに装着される絶縁部材と、
前記絶縁部材に巻き回されたコイルと、
を備え、
前記絶縁部材における径方向外側に、前記コイルの巻き終わりに接続された渡り線が周方向に延在して配置され、
前記絶縁部材は、径方向外側に、軸方向において、前記渡り線が延在する位置から突出した凸部と、前記渡り線が延在する位置から窪んだ凹部とを有し、
前記コイルの巻き始めに接続された引出線が、前記凹部に配置されており、
径方向において、前記渡り線が、前記凸部の内側に配置されている。
【0007】
前記引出線は、前記凹部において、前記絶縁部材と前記渡り線との間に配置されていてもよい。
【0008】
前記絶縁部材は、径方向外側に、軸方向に突出し周方向に延在した壁部を有し、
前記壁部の径方向外側には、周方向に延在した1条または複数条の溝部を有し、
前記渡り線は、前記溝部に配置されていてもよい。
【0009】
本発明の一態様においては、周方向において、前記凹部と前記凸部とが隣接していてもよい。
また、本発明の一態様においては、前記コイルの巻き始めに接続された前記引出線は、前記凹部において、径方向外側に向かい、その後、軸方向における前記凹部から離れる方
向に立ち上がっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るモータの縦断面図であり、図2におけるB-B断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るモータの横断面図であり、図1におけるA-A断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るモータからハウジングのカバーを除した状態で斜め上方から見た斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るモータが備える保持部材の斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係るモータの拡大縦断面図である。
図6】本発明の実施形態に係るモータからハウジングのカバーを除した状態の平面図である。
図7】本発明の実施形態に係るモータが備えるステータの上面図である。
図8】本発明の実施形態に係るモータが備えるコイルのうち、一端から引出線が引き出されている特定のコイルの拡大斜視図である。
図9図8におけるQ-Q断面の縦断面図である。
図10図8におけるQ-Q断面の断面斜視図である。
図11図8におけるP-P断面の縦断面図である。
図12】本発明の実施形態の変形例に係るモータの縦断面図である 。
図13】本発明の変形例に係るモータが備える保持部材の斜視図である。
図14】本発明の変形例に係るモータの拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るモータ1について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態におけるモータ1の縦断面図である。また、図2は、本実施形態におけるモータ1の横断面図である。図1図2におけるB-B断面図に相当し、図2図1におけるA-A断面図に相当する。なお、図1は、後述する図3におけるC-C断面図にも相当する。
モータ1は、インナーロータ型の3相モータであり、スポーク型のIPMモータである。
【0012】
なお、本実施形態の説明において、上方乃至下方と云う時は、図1における上下関係を意味し、重力方向における上下関係とは、必ずしも一致しない。
さらに、軸線x方向(以下、「軸方向」ともいう。)において矢印a方向を上側aとし、矢印b方向を下側bとする。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから遠ざかる方向(矢印c方向)を外周側cとし、軸線xに向かう方向(矢印d方向)を内周側dとする。そして、回転軸xを中心とする円周方向(上側aから見た円周方向)の時計回りを周方向e、及び、反時計回りを周方向fとする。
【0013】
IPMモータは同期モータに分類されるものであり、マグネットがロータに埋め込まれている。スポーク型のIPMモータにおいては、ロータの、モータの回転軸に垂直な断面において、複数のマグネットの断面が長方形としてあらわれる。そして、前記長方形の長手方向がロータの径方向と一致するよう、各マグネットが放射状に配置されている。スポーク型のIPMモータにおいては、各マグネットの、前記長方形の長辺側の面が磁極となっている。また、ロータの周方向において隣接するマグネットの対向する磁極面は同極になっている。
【0014】
図1に示すように、モータ1は、回転軸となるシャフト2と、ロータ3と、コイル42を含むステータ4と、ロータ3およびステータ4を収容するハウジング5と、コイル42
に電力を供給する複数(本実施形態においては3つ)の給電線6と、ハウジング5内で給電線6を保持する保持部材7と、を有する。
【0015】
ハウジング5は、ロータ3、ステータ4及び保持部材7等のモータ1の構成部品の一部を内部に収容する。ハウジング5は、円形の開口部105を有するハウジング本体5Aと、ハウジング本体5Aの開口部105の少なくとも一部を塞ぐカバー5Bと、を有する。
ハウジング本体5Aは、筒部51、底部52およびフランジ部53を備える。筒部51は円筒状を成しており、上側aの端部が開口部105になっている。フランジ部53は筒部51の上側aの端部に連なり、底部52は筒部51の下側bの端部に連なっている。底部52は、底面部52aおよび突出部52bを有する。
【0016】
底面部52aは、筒部51の底側(下側b)の端部を覆う環状の平板部である。突出部52bは、底面部52aの中央部から上側aに向かって突出する円筒状の部位である。突出部52bの内側には、軸受81が圧入等により固定されている。なお、底面部52aの中央部には、突出部52bの内径よりも小さい内径を有する円形の孔部が設けられていてもよい。
【0017】
カバー5Bは、平板部5Ba、突出部5Bb及びフランジ部5Bcを有する。
平板部5Baは、シャフト2が貫通する孔部5Bdを備える環状の部位である。
突出部5Bbは、平板部5Baの内側の面に接続され、モータ1の内部に向けて突出する円筒状の部位である。突出部5Bbの内側には、軸受82が圧入などにより固定されている。
【0018】
フランジ部5Bcは、平板部5Baの外周に設けられている。ハウジング本体5Aのフランジ部53と、カバー5Bのフランジ部5Bcとが、締結などにより固定されることによって、ハウジング本体5Aの開口部の少なくとも一部がカバー5Bにより塞がれている。
【0019】
孔部5Bdは、平板部5Baに設けられた円形の孔である。孔部5Bdの径は、突出部5Bbの内径よりも小さい。平板部5Ba、突出部5Bbおよび孔部5Bdの軸線はモータ1の回転軸線(シャフト2の軸線)と一致する。シャフト2は、端部2a付近において、軸受82によりカバー5Bに対して回転可能に支持されている。シャフト2の端部2aは、孔部5Bdに挿通され、カバー5Bから突き出している。
【0020】
シャフト2は、略円柱状を成しており、2つの端部2aおよび2bを有する。シャフト2は、上側aの端部2a付近において、後述する軸受82によりハウジング5のカバー5Bに対して回転可能に支持されている。また、シャフト2は、下側bの端部2b付近において、軸受81によりハウジング5のハウジング本体5Aに対して回転可能に支持されている。よって、シャフト2は、軸受81および軸受82を介してハウジング5に、回転自在に支持されている。
【0021】
シャフト2の端部2aは、ハウジング5のカバー5Bから突き出している。シャフト2の端部2aから回転力を外部に取り出すことができるようになっている。シャフト2は、ロータ3に固定されており、ステータ4とロータ3との電磁気的作用によってロータ3が回転すると、ロータ3とともに回転するようになっている。
【0022】
ステータ4は、ステータコア41およびコイル42からなる。ステータコア41は、珪素鋼板等の磁性体の積層体となっている。ステータコア41は、シャフト2と同軸上に配された環状部44、および、環状部44からシャフト2側(内周側d)へ向かって延びるように形成された複数(例えば12個)の磁極部であるティース部43からなる。環状部
44の外周が、ハウジング本体5Aの筒部51の内周面に固定されていることにより、ステータ4は、ハウジング5に固定されている。
【0023】
ステータコア41のティース部43には、絶縁部材となるインシュレータ45が装着されており、コイル42は、複数のティース部43の各々の周囲に装着されたインシュレータ45に巻き回されている。ステータコア41とコイル42とは、このインシュレータ45によって絶縁されている。
【0024】
ロータ3は、ロータコア31および複数のマグネット32を有する。ロータコア31は、複数の磁性体の積層体により形成されている。ロータコア31は、全体として略円筒状を成している。ロータコア31の外周面には、ロータコア31の軸方向(軸線x方向)の一方側(上側a)の端部から他方側(下側b)の端部へと貫通するスリットが複数(例えば図2に示されるように14個)、放射状に設けられている。マグネット32は、直方体状をなしており、前記スリットの内部に固定されている。マグネット32の数は、前記スリットの数と一致する。
【0025】
ロータ3の、軸方向(軸線x方向)に垂直な断面において、複数のマグネット32の断面が長方形として表れる(図2参照)。複数のマグネット32の前記断面の長手方向は、ロータ3の径方向cdと一致している。複数のマグネット32は、前記断面の長辺側の面が磁極面となっている。また、ロータ3の周方向において、隣接するマグネット32の、対向する磁極面は同極になっている。ロータコア31の内周面には、シャフト2が固定されている。
【0026】
ハウジング5内におけるカバー5Bとステータ4との間の空間には、保持部材7が配されている。図3に、モータ1からハウジング5のカバー5Bを除した状態で斜め上方から見た斜視図を示す。
保持部材7は、筒部51の内周面より外径がやや小径の大リング部71、大リング部71よりも小径の小リング部72、及び、大リング部71と小リング部72とを連結する複数(図3においては、それらの一部のみが現れている。)の連結部73を有する。大リング部71及び小リング部72は、シャフト2を軸として同心円上に配されている。
【0027】
連結部73は、シャフト2を軸として径方向cdに延在している。連結部73の上側aには、下側bに向けて半円状に陥没した凹形状で周方向efに延在する2つの溝73c,73dが、径方向cdに並んで設けられている。
【0028】
図4は、モータ1が備える保持部材7の斜視図である。図5は、モータ1の拡大縦断面図である。
【0029】
図4及び図5に示すように、保持部材7は、軸方向においてカバー5Bとステータ4との間で挟持されている。具体的には、保持部材7は、軸方向においてカバー5Bの下側の面と、ステータ4に設けられている絶縁部材としてのインシュレータ45との間に挟持されている。保持部材7において、大リング部71が大円環部として機能し、小リング部72が小円環部として機能する。保持部材7は、金属製のカバー5Bよりも剛性の低い樹脂製である。保持部材7のヤング率は、カバー5Bのヤング率よりも低い。なお、インシュレータ45は、保持部材7とヤング率が同等または高い材料であればよい。
【0030】
大リング部71は、軸線を中心とした円盤状の円盤面部111を有する。図4に示すように、円盤面部111は、大リング部71の軸方向上側または下側を向く面である。軸方向上側の円盤面部111は、カバー5Bの下面に向かい合う面である。また、軸方向下側の円盤面部111は、インシュレータ45の上面に向かい合う面である。軸方向上側の円
盤面部111には、軸方向に突出した突出部107が設けられている。
【0031】
突出部107は、軸方向上側の円盤面部111から軸方向上側に突出している。突出部107は、平面形状が円盤面部111の形状に対応して円弧状に形成されている。突出部107は、突出部107を含めた大リング部71の軸方向の高さ(厚さ)が、カバー5Bの下面とインシュレータ45との間の空間の高さよりも高くなっている。突出部107は、断面形状が円盤面部111から軸方向上側の端部112に向かって集束する台形状または略台形状に形成されている。
【0032】
図5に示すように、ハウジング本体5Aの開口部105がカバー5Bによって塞がれている状態において、突出部107は、端部112がカバー5Bの下面に接触している。上述したように、大リング部71は、突出部107を含めた軸方向の高さが、カバー5Bの下面とインシュレータ45との間の空間の高さよりも高い。このため、突出部107の端部112は、開口部105がカバー5Bによって塞がれることで、カバー5Bの下面によって潰される形で変形している。つまり、保持部材7は、軸方向において突出する突出部107の高さがカバー5Bの下面とインシュレータ45との間の空間の高さよりも高いことで、ハウジング5の内部においてステータ4に負荷をかけることなく、軸方向の位置を固定することができる。また、保持部材7は、モータ1からの振動や、ハウジング本体5Aの外部からの衝撃等によって力を受けた場合にも、軸方向の位置が固定されているため、位置ずれなどを防ぐとともに、カバー5B、もしくはステータ4、あるいはそれらの両方に接触しているため、モータ1から発生する力や、外部からの力を緩衝することができる他、モータ1の固有振動数を調整し、共振を防ぐことができる。
【0033】
小リング部72は、ステータコア41のティース部43の内周側dに取り付けることができるように、ティース部43よりも小径に形成されている。小リング部72は、軸線を中心とした円盤状の円盤面部113を有する。図4に示すように、円盤面部113は、小リング部72の軸方向上側または下側を向く面である。軸方向上側の円盤面部113は、カバー5Bの下面に向かい合う面である。また、軸方向下側の円盤面部113は、インシュレータ45の上面に向かい合う面である。小リング部72の軸方向下側の円盤面部113には、ティース部43の内周側dに取り付けられる際に、保持部材7が筒部51の内周側dで回転するのを防ぐために、軸方向下側bに伸びる複数の爪部114が設けられている。爪部114は、小リング部72の周方向に所定の間隔で設けられている。大リング部71及び小リング部72は、それぞれ円環状に形成されている。爪部114は、複数のティース部43の間に配置され、保持部材7の周方向の位置決めがされる。
【0034】
給電線6は、ステータ4のステータコア41に巻き回されたコイル42の引出線をモータ1の外部まで導いて、外部の三相交流電源(不図示)に繋ぐためのモータ1の内部配線である。給電線6は、ハウジング5内で筒部51の内側に配置された保持部材7の大リング部71の内周面に沿って3本延在している。
【0035】
3つの給電線6は、3相モータのそれぞれU相、V相及びW相のコイル42用の電源ラインであり、それぞれの引出線部61が、対応する相のコイル42の引出線と繋がっている。以下、U相、V相及びW相のコイル42の引出線に繋がっている給電線6をそれぞれ、給電線6U、給電線6V及び給電線6Wとする。
【0036】
それぞれの給電線6は、2本に分岐した導線からなる引出線部61と、三相交流電源に接続される口出線部62と、引出線部61と口出線部62とを電気的に接続するスリーブ部63と、を有する。引出線部61は、コイル42の引出線と繋がっている。ただし、図3においては引出線部61の2本の導線は、コイル42の引出線とは繋がっておらず、切断された状態が図示されている。
【0037】
図6は、本発明の実施形態に係るモータからハウジングのカバーを除した状態の平面図である。但し、ここでは、便宜上、2本の給電線6(6U)、6(6V)だけを表示し、給電線6(6W)およびその他の部品等を除している。口出線部62は、円筒形状の被覆付き導線であり、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって内部の導線を被覆している。口出線部62の外径は、保持部材7の連結部73に形成された溝73c,73dの最大幅(この場合、半円の直径に相当する)とほぼ同じである。
【0038】
口出線部62は、スリーブ部63と外部の三相交流電源とを接続するものであり、保持部材7の連結部73の溝73cまたは73dに嵌め込まれている。なお、口出線部62の外径と、連結部73の溝73c,73dの最大幅とは必ずしも同じである必要はなく、口出線部62の外径が溝73c,73dの最大幅よりも僅かに大きくてもよい。この場合、口出線部62は表面の合成樹脂が僅かに潰れて溝73c,73dにはめ込まれる。
【0039】
スリーブ部63は、引出線部61と口出線部62とを互いに電気的に接続する銅からなる部材である。スリーブ部63の内部では、引出線部61(2本の導線)と口出線部62(1本の導線)とがヒュージング(熱圧着)により電気的に接続されている。
【0040】
また、スリーブ部63は、ヒュージング(熱圧着)によって2個の扁平部分63fが周方向efに沿って形成されており、スリーブ部63全体として扁平形状を有している。この扁平部分63fの径方向に沿う方向の最大幅は、円筒形状の口出線部62における外径よりも大きく、かつ、保持部材7の連結部73に設けられた半円状の溝73c、73dの最大幅(この場合、半円の直径に相当する)よりも大きい。
【0041】
さらに、スリーブ部63は、連結部73の上側aの面と、扁平部分63fの扁平面とが対向するように配置されている。これにより、給電線6の口出線部62が引っ張られた場合であっても、スリーブ部63の扁平部分63fが保持部材7の連結部73に形成された溝73c,73dに引っ掛かるため、それ以上引っ張られることがなく、引出線部61の導線の断線を防止することができる。
【0042】
口出線部62は、モータ1の外部まで引き出されて三相交流電源に接続される。図3に示されるように、口出線部62は、スリーブ部63からグロメット64まで延在し、モータ1の外部に引き出されている。保持部材7の大リング部71の内周面に沿って延在している口出線部62は、連結部73の溝73c,73dの何れか一方に嵌め込まれている。なお、口出線部62は保持部材7の連結部73の溝73cまたは73dに嵌め込まれているため、給電線6の口出線部62およびスリーブ部63が保持部材7の下側に存在するステータ4と非接触状態になっている。
【0043】
給電線6Uを例に挙げて説明すると、スリーブ部63から反時計回り方向fに延びた口出線部62は、スリーブ部63の近くにある連結部73Aの溝73cに嵌め込まれている。口出線部62は、そのまま保持部材7の大リング部71の内周面に沿って反時計回り方向fに延在し、連結部73Aの隣の連結部73Bの溝73dに嵌め込まれている。
【0044】
さらに、口出線部62は、そのまま保持部材7の大リング部71の内周面に沿って反時計回り方向fに延在し、連結部73Bの隣に設けられた連結部73C(図1参照)の内周側dの溝73dに嵌め込まれている。連結部73Cにおいては、外周側cの溝73cに、給電線6Vの口出線部62が嵌め込まれている。
【0045】
そして、給電線6U及び給電線6Vの口出線部62は、グロメット64で保持され上側a方向に立ち上げられて、モータ1の外部に引き出されている。給電線Wについても同様
に、連結部73の溝73c,73dに適宜嵌め込まれながら、保持部材7の大リング部71の内周面に沿って時計回り方向eに延在し、グロメット64で保持され上側a方向に立ち上げられて、モータ1の外部に引き出されている。
なお、グロメット64には、回転位置センサや温度センサ等のモータ1の内部に配されているセンサ(不図示)に繋がるリード線91も保持され、モータ1の外部に導き出されている。
【0046】
ここで、コイル42の両端から引き出される導線(後述する、引出線421及び渡り線422)の取り回しについて説明する。
図7は、本実施形態に係るモータ1が備えるステータ4の上面図であり、コイル42から引き出された引出線421及び渡り線422の取り回しを説明するための図である。
【0047】
ステータコア41のティース部43の各々の周囲に装着されたインシュレータ45には、コイル42が巻き回されている。コイル42の両端から引き出された導線は、その一方が渡り線422となって他のコイル42と繋がっており、他方は渡り線422または引出線421となる。他方の渡り線422は、さらに他のコイル42と繋がっており、引出線421は、既述の通り、対応する相の給電線6U,6V,6Wの引出線部61に繋がっている(図3参照)。以下、図7において、一端から引出線421が引き出されている特定のコイル42(図7中のコイル42x)を中心に、その両端から引き出される引出線421(同引出線421x)及び渡り線422(同渡り線422x)の取り回しを説明する。
【0048】
図8は、ステータ4におけるコイル42x及びその周辺を拡大した、上方からの拡大斜視図である。コイル42xの両端から引き出された導線の一方は、渡り線422xとなって他のコイル42と繋がっており、他方は引出線421xとなっている。引出線421xは、コイル42xの巻き始めに接続されたものであり、コイル42xの巻き終わりは渡り線422xに接続されている。
【0049】
インシュレータ45は、径方向cdの外側cに、軸線x方向の上側aに突出し周方向efに延在した壁部453を有する。
壁部453は、その径方向cdの外側に、周方向efに延在した溝を上下2条有している(以下、上側aの溝を「上溝453a」、下側bの溝を「下溝453b」とする。)。渡り線422は、この上溝453a及び下溝453bの何れかに配置され、周方向efに延在している。そして、渡り線422は、周方向efにいくつか(本実施形態では3個)離れたティース部43のコイル42同士を接続している。
【0050】
本実施形態においては、コイル42xに接続された渡り線422xは、図8に示されるように、上溝453aに配置され、時計回り方向eに向けて延在している。そして、コイル42xから時計回り方向eに3個離れたティース部43のコイル42(コイル42xとU,V,Wの相が同じ)に接続されている。
【0051】
渡り線422xが配置された上溝453aの直下の下溝453bには、コイル42xとは異なる同一の相のコイル42同士を接続する渡り線422yが配置され、周方向efの両側に延在している。
一方、コイル42xに接続(不図示)された引出線421xは、上側aに向けて立ち上げられて、既述の通り、対応する相の給電線6U,6V,6Wの引出線部61に繋がっている(不図示)。
【0052】
インシュレータ45は、ティース部43を囲む部位においてコイル42が巻き回されているが、コイル42が巻き回されていない径方向外側cに、壁部453を有している。この壁部453は、周方向efに断続的に形成されており、途切れた領域W(図7及び図8
参照)を介して、コイル42に接続された渡り線422が、壁部453の外側にある上溝453aや下溝453bに導き出されている。
【0053】
インシュレータ45は、径方向における外側cに、軸線x方向において、渡り線422が延在する位置(図8においては、下溝453bの下側bの内壁面)から突出した凸部451と、渡り線422が延在する位置(前記同様)から窪んだ凹部452とを有している。これら凸部451と凹部452とは、周方向efにおいて隣接している。
【0054】
図8におけるQ-Q断面の縦断面図を図9に、同じQ-Q断面の断面斜視図を図10に、それぞれ示す。また、図8におけるP-P断面の縦断面図を図11に示す。図9図11は、断面として切断する位置が僅かにずれている(図8におけるP-P及びQ-Q参照)ものの、ほぼ同様の位置で切り出した断面を180°逆方向から視た断面を示すものである。
【0055】
図8図10に示されるように、コイル42xの巻き始めに接続された引出線421xは、下側bから立ち上がり、途中で曲げられて径方向内側dから外側cに向けて延伸し、その先が凹部452に配置されている。
一方、図8及び図11に示されるように、コイル42xとは相が異なるコイル42同士を接続する渡り線422yは、径方向cdにおいて、凸部451の内側dに配置されている。即ち、下溝435bに配置され、周方向efに円弧を描いて延在している渡り線422yは、領域Wx(図8参照)において、凸部451の内側dに配置されることで、周方向efに延在している円弧から内側dに後退している。
【0056】
引出線421xは、凹部452において、インシュレータ45と渡り線422yとの間に配置された状態になっている。そして、凹部452において、引出線421xは、径方向外側cに向かい、その後、軸線x方向における凹部452から離れる方向(上側a方向)に立ち上がっている。このとき、引出線421xは、渡り線422yが前記円弧から内側dに後退している箇所を通って立ち上がっており、当該箇所で、引出線421xと渡り線422yとの干渉が避けられている。
【0057】
一般に、コイルを巻き回す際には、機械巻き、手巻きに関わらず、巻き始めの一端をステータコア(本実施形態では符号41)の環状部(同44)の外周側(同c)で何らかの手段によって保持(固定)してティース部(同43)に巻き回して行く。このとき、巻き始めの一端の先端は、環状部(同44)から突き出した位置に保持される。
【0058】
そして、渡り線(同422)を経て順次別のティース部(同43)に巻き回すことで、巻き回されたコイル(同42)が形成される。なお、巻き終わりの他端は、例えばY結線(スター結線)の三相モータであれば、他の相のコイル(同42)の巻き終わりの他端と接続される。
【0059】
以上のようにして巻き終えたコイル(同42)の巻き始めの一端は、引出線(同421)となるが、巻き終えた段階では、環状部(同44)から突き出した状態になっている。この状態でモータ(同1)内部の給電線(同6)に接続するためには、環状部(同44)から突き出した引出線(同421)をモータ(同1)の内部に引き込まなければならない。
【0060】
しかし、引出線(同421)のすぐ上側(同a)は、渡り線(同422)が交差した状態になっている。そのため、絶縁部材(同インシュレータ45)の外側で円弧を描いて周方向(同cd)に延在する渡り線(同422)を避けて引出線(同421)を上側(同a)に立ち上げてモータ(同1)内部に引き込むためには、引出線(同421)をいったん
環状部(同44)の外側(同c)に張り出させなければならなくなる。
【0061】
これに対して、本実施形態では、インシュレータ45に凸部451があり、渡り線422yがその凸部451の内側dに配置されるため、渡り線422yは、周方向efに延在している円弧から内側dに後退している。そのため、凹部452における径方向外側cにおいて、引出線421の直上には、渡り線422yが存在していない。
【0062】
よって、コイル42を巻き終えた際に、凹部452を通過して環状部44から突き出した引出線421xを、凹部452における径方向外側cで、軸線x方向における凹部452から離れる方向(上側a)に立ち上がらせても、渡り線422yと干渉することがない。そのため、引出線421が、ステータコア41の環状部44よりも外側cに張り出すことがない。
【0063】
したがって、本実施形態のモータ1によれば、環状部44から張り出す引出線421の分を考慮に入れた外径にする必要がなく(即ち、ステータコア41の環状部44と、ハウジング本体5Aの筒部51との間に、張り出した引出線421用の隙間を確保する必要がなく)、モータ1の小型化(小径化)を実現することができる。
【0064】
特に、コイルの巻線として、例えば、1mm前後といった太い導線を用いた場合には、周方向efに延在する渡り線422と、巻線後に環状部44から突き出した引出線421xとが干渉し易く、また、環状部44から引出線421が張り出した際の外側cへの張り出し量も大きくなってくる。そのため、コイルの巻線が太い場合に、本実施形態における凹部452及び凸部451に係る構成が有用である。なお、引出線421xの横には、隣のコイル42の引出線421yが並んでおり、軸方向(軸線x方向)の他方側から一方側へ(上側aに)立ち上がっている(図8参照)。
【0065】
凹部452における径方向外側cで立ち上げられた引出線421xは、図9図10に示されるように、周方向efに延在する渡り線422yを避けながら湾曲し、今度は径方向内側dに向かって延伸している。そして、引出線421xは、凸部451の径方向内側dに配置された渡り線422yよりもさらに径方向内側dで、再び上側a方向に立ち上がっている。その先は図示を省略しているが、引出線421xは、対応する相の給電線6U,6V,6Wの引出線部61に繋がっている(図3参照)。
【0066】
なお、本実施形態におけるインシュレータ45の構成は、あくまでも例示であり、本発明は本実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、インシュレータ45の外周にある溝は、本実施形態では上下に2条(上溝435a,下溝435b)設けられているが、1条のみでも3条以上でも構わない。Y結線の三相モータでは、溝が2条であることが好ましいが、他のタイプのモータであれば、好ましい溝の数が変わってくる。また、渡り線を周方向に導き得る外周構造を有していれば、そもそも溝がない構成であっても構わない。
【0067】
[変形例]
次に、以上説明した本発明のモータの変形例について説明する。以下、上述の実施の形態に係るモータ1と同一の又は類似する機能を有する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0068】
図12は、本発明の実施形態の変形例に係るモータ1Bの縦断面図である。図13は、モータ1Bが備える保持部材7Bの斜視図である。図14は、モータ1Bの拡大縦断面図である。
【0069】
先に説明したモータ1において、保持部材7の突出部107は、大リング部71の軸方向上側の円盤面部111に設けられていた。一方、図13及び図14に示すように、変形例のモータ1Bは、保持部材7Bの突出部107Bが、小リング部72Bの軸方向上側の円盤面部113Bに設けられている。突出部107Bは、突出部107Bを含めた小リング部72Bの軸方向の高さ(厚さ)が、カバー5Bの下面とインシュレータ45との間の空間の高さよりも高くなっている。また、モータ1Bは、大リング部71Bと小リング部72Bとを連結する複数の連結部73Bに、溝が設けられていない点が先に説明したモータ1の保持部材7と相違する。
【0070】
図13及び図14に示すように、保持部材7Bは、小リング部72Bの内周側に回路基板101が保持されている。回路基板101は、例えば、保持部材7Bに設けられているネジ孔106にネジ104が締結されることで、保持部材7Bに固定されている。回路基板101には、例えば、磁極センサなどの不図示の電子部品が搭載されている。
【0071】
先に説明した保持部材7と同様に、保持部材7Bは、開口部105がカバー5Bによって塞がれることで、突出部107Bの端部112Bが、カバー5Bの下面によって潰される。つまり、保持部材7Bは、軸方向において突出する突出部107Bの高さがカバー5Bの下面とインシュレータ45Bとの間の空間の高さよりも高いことで、ハウジング5の内部においてステータ4に負荷をかけることなく、軸方向の位置を固定することができる。また、保持部材7Bも、モータ1Bからの力などの何らかの力を受けた場合にも、軸方向の位置が固定されているため、位置ずれなどを防ぐことができる。
【0072】
図12及び図13に示すように、保持部材7Bは、大リング部71Bに孔103を有する。孔103には、保持部材7Bとインシュレータ45Bとを固定する固定部材としてのピン102が挿通される。ピン102は、インシュレータ45Bに設けられている。モータ1Bは、孔103にピン102を挿通して保持部材7Bとインシュレータ45Bとを固定することで、モータ1Bの回転方向において保持部材7Bを位置決めすることができる。
【0073】
なお、保持部材7Bにおいても、連結部73Bに対して上述した溝73c、73dを設けるようにしてもよい。これにより、保持部材7Bにおいて、口出線部62を連結部73Bの溝73c,73dにはめ込むことができるので、口出線部62が引っ張られた場合であっても、スリーブ部63の扁平部分63fが連結部73Bの溝73c,73dに引っ掛かり、引出線部61の導線の断線を防止することができる。
【0074】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のモータを適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1…モータ、2…シャフト、2a,2b…端部、3…ロータ、31…ロータコア、32…マグネット、4…ステータ、41…ステータコア、42,42x…コイル、43…ティース部、44…環状部、45…インシュレータ(絶縁部材)、5…ハウジング、5A…ハウジング本体、5B…カバー、5Ba…平板部、5Bb…突出部、5Bc…フランジ部、5Bd…孔部、51…筒部、52…底部、52a…底面部、52b…突出部、53…フランジ部、6…給電線、61…引出線部、62…口出線部、63…スリーブ部、63f…扁平部分、64…グロメット、7,7B…保持部材、71,71B…大リング部、72,72B…小リング部、73,73B…連結部、73c,73d…溝、81,82…軸受、91…リード線、101…回路基板、102…ピン、103…孔、104…ネジ、105…開口部、106…ネジ孔、107,107B…突出部、111,111B,113,113
B…円盤面部、112…端部、114…爪部、421,421x,421y…引出線、422,422x,422y…渡り線、451…凸部、452…凹部、453…壁部、453a…上溝(溝)、453b…下溝(溝)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14